説明

セラミック画像形成システム用カバーシート及びセラミック画像形成システム並びにセラミック画像形成方法

【課題】転写シートとコーティング層と転写シートとの間に介在した空隙や気泡が、画像をセラミック製品へ焼き付ける際に破裂して白抜けを発生させる点を解消する。
【解決手段】電子写真式の印刷装置に用いられるトナーにより転写シート上に画像層を形成し、この転写シート上の該画像層をカバーシートによって保護した状態でセラミック製品に焼き付ける本発明のセラミック画像形成システム用カバーシートを、基材層から順に、釉薬と酸化鉛と粘性のある第1有機媒介物を混練し、該基材層に塗布乾燥により設けられた釉薬層と、前記転写シートの画像層との密着を図るために前記釉薬層で用いた第1有機媒介物と同種の粘度のある第2有機媒介物を該釉薬層に塗布乾燥により設けた密着層と、により構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便かつ再現性の高い状態でセラミック製品等に任意の画像を形成するセラミック画像形成システム及びセラミック画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の公知文献1〜10には、例えば現像済みの任意の写真(以下、画像という)を、いわゆる電子写真式の複写装置を含む「印刷装置」によって、台紙層と糊層を主構成とする「転写シート」上に画像層を形成し、該転写シートから台紙層を分離して陶器等のセラミック製品に画像層を転写し、セラミック製品と画像層を焼き付ける、といった技術(以下、セラミック製品画像形成システムという)について、開示されている。
【0003】
なお、セラミック製品への画像の焼き付け時に画像層を保護する技術としては、主だっては次の手法が存在する。シルクのメッシュ上からコーティング溶剤をへらなどで画像層表面に塗布するシルクスクリーン方式。コーティング溶剤を含有したコーティングシートを転写シートに載せてラミネータによって該転写シート上の画像層上に転写するラミネート方式。転写シートからセラミック製品に画像を転写した後、コーティング溶剤をスプレーにて噴霧塗布するスプレー方式。
【0004】
特許文献1,2には、「トナー」において、該トナー中の色素(顔料)成分をセラミック表面に定着させるための融剤を含有することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、「トナー」において、ガラス成分でなる窯業界でいう上薬(以下、釉薬という)を含有することが記載されている。
【0006】
特許文献4,7及び8には、「転写シート」において、転写シートに釉薬を含有することが記載されている。
【0007】
特許文献5には、「転写シート」において、該転写シートの糊層の表面側(台紙層とは反対面)に可塑剤と共に樹脂成分を含有した層を形成することが記載されている。
【0008】
特許文献6には、「転写シート」において、糊層の表面側に順に樹脂成分を含有した層、釉薬を含んだトナー成分を含有した層、を形成することが記載されている。
【0009】
特許文献9には、「コーティング層」に関して、上記の転写シート上に融剤をスプレー方式で噴霧することが記載されている。
【0010】
しかし、これら特許文献1〜9の技術は、それぞれ次の課題があった。
すなわち、特許文献1〜3は「トナー」に関する技術であるが、トナーに融剤や釉薬を含有する構成であるため、そもそもの色素成分の割合が低下することとなり、画像の濃度が低く(薄く)なり、鮮明さを欠くといった問題があると共に、トナー自体が高価になるといった問題もある。
【0011】
特に、トナーに釉薬を含有すると釉薬成分がトナーの帯電性を不安定にするため、印刷される転写シートの白色部分に不要な着色をしてしまったり、焼き付けた画像の濃色部に白く脱色した現象が生じる(以下、白抜けという)こともある。
【0012】
特許文献4〜8は「転写シート」に関する技術である。特許文献4,7,8は、釉薬の層の上に画像層が形成される構成であったため、セラミック製品に焼き付けを行うと釉薬の層の流動で画像層のトナー成分もまた流動し、滲んだように画像が崩れる(意図した状態とならない)ことがある。
【0013】
特許文献5は、可塑剤を含有する構成であるから、帯電性の強い該可塑剤が印刷装置における画像形成時に不要に帯電してトナーを転写シート上に移動させてしまい、転写シート上の例えば白い部分に意図しない着色が生じるという問題がある。
【0014】
特許文献6は、結果的に、転写シートにおけるトナーの色素成分と同層あるいは下層に釉薬の層が形成されるから、特許文献4と同じく、セラミック製品に転写後の焼き付けを行うと釉薬の層の流動で画像層のトナー成分もまた流動し、滲んだように画像が崩れる(意図した状態とならない)ことがある。
【0015】
特許文献9はコーティング層の形成手法に関するが、まず、特許文献9のスプレー方式であるとコーティング溶剤が不均一となることがあり、不均一であるとセラミック製品への焼き付けで例えばトナーが十分に保護されず焼けて白く抜けてしまうなど画像欠陥が生じる。さらには、スプレー方式は乾燥時間を要し、手間がかかると共に、人体への吸い込みの危険性もある。
【0016】
また、シルクスクリーン方式は、乾燥時間を要すると共に、塗布の個人差やむらが生じる可能性がある。また、シルクスクリーン方式は、場合によっては厚くコーティング溶剤を塗布してしまい、画像層の剛性が高くなって(硬くなって)、曲面上のセラミック製品に転写した際に、コーティング層と共に画像層がひび割れたりする可能性がある。
【0017】
これら特許文献1〜9における上記課題を解消するために本出願人は特許文献10を出願している。特許文献10には、上記課題を解消し、かつ簡便かつ再現性の高い状態でセラミック製品等に任意の画像を形成することを目的として、次の構成としている。
【0018】
すなわち特許文献10には、樹脂、無機顔料、外添剤を、100:40〜110:0.5〜1.0の割合で含有してなるトナー、台紙層から順に糊層、樹脂層が5:7〜10の含有割合で積層された転写シート、かつ基材層上に少なくとも釉薬を含有した層が形成されたカバーシート、を用いたセラミック画像形成システムが示されている。
【0019】
ところが、特許文献10を含む従来の技術においては、上記特許文献9で言う「コーティング層」(セラミック製品へ転写された画像層を保護するための層)と、「転写シート」をラミネータにより一体化する時に転写シートに対するコーティング層の密着性に欠け、該コーティング層と転写シート(の樹脂層)との間に空隙や気泡が生じることがある。この空隙や気泡は、画像(転写シート)のセラミック製品への焼き付け時に膨張して破裂し、その部位だけ白抜け(色の存在しない部分)が生じることとなり、品質上の問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第3482453号公報
【特許文献2】特許第3259026号公報
【特許文献3】特許第3520890号公報
【特許文献4】特開平10−129198号公報
【特許文献5】特許第3897217号公報
【特許文献6】特許第3871099号公報
【特許文献7】伊国特許出願第2005TO0769号公報
【特許文献8】伊国特許出願第2006TO0123号公報
【特許文献9】伊国特許出願第2007BI0013号公報
【特許文献10】特開2010−276984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
解決しようとする問題点は、従来周知の技術では、コーティング層と転写シートとの間に空隙や気泡が生じ、この空隙や気泡が画像をセラミック製品へ焼き付ける際に破裂して白抜けが生じるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のセラミック画像形成システム用カバーシートは、基材層から順に、釉薬と酸化鉛と粘性のある第1有機媒介物を混練し、該基材層に塗布乾燥により設けられた釉薬層と、前記転写シートの画像層との密着を図るために前記釉薬層で用いた第1有機媒介物と同種の粘度のある第2有機媒介物を該釉薬層に塗布乾燥により設けた密着層と、により構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のセラミック画像形成システム用カバーシートは、釉薬層には釉薬と酸化鉛を含んでいるから、酸化鉛により転写シート上の画像層をセラミック製品に定着できると共に、釉薬により光沢のある綺麗な画像を得ることができる。
【0024】
焼成トナーに使用されるクロム系複合酸化物顔料は単位濃度が濃く、シアン、ブラック用焼成顔料として用いられているが、特定量以上の酸化鉛と接触した状態で焼成すると、酸化して例えばシアンの青色が緑色になるなどに変色することが知られている。本発明では、釉薬層に釉薬と酸化鉛を特定の割合で同一層に含有させることにより、焼成時の画質変色を抑制するといった効果を得ることができる。
【0025】
また、密着層を構成する粘性のある第2有機媒介物と釉薬層で含有する第1有機媒介物とを、同種とすることで、密着層と釉薬層との一体性を良好に保つことができる。そして釉薬層における粘性のある第1有機媒介物は釉薬と酸化鉛とを均一的に分散させることができ、密着層の第2有機媒介物はラミネート時の熱で軟化することにより密着性を高め、転写シートの樹脂層及び該樹脂層上のトナーに隙間なく密着させることができる。
【0026】
したがって、本発明のセラミック画像形成システム用カバーシートは、転写シートとカバーシートとの間の空隙や気泡が低減し、セラミック製品への焼き付け時の白抜けの画像劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明のカバーシートの効果を確認するために行った実施例に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための具体的な態様について以下に説明する。なお、以下では、本発明のセラミック画像形成システム用カバーシートを「カバーシート」と、セラミック画像形成システムを「画像形成システム」と、セラミック画像形成方法を「画像形成方法」と略記する。
【0029】
本発明の画像形成システムは、電子写真式の印刷装置に用いられるトナーと、該印刷装置によってトナー画像でなる画像層が形成される転写シートと、この転写シート上の該画像層を保護するカバーシートとが用いられ、カバーシートによって保護された状態の転写シートの画像層をセラミック製品に焼き付けるものであり、前記トナーとして、樹脂、無機顔料、外添剤を、例えば100:40〜110:0.5〜2.0の割合で含有してなるものを用い、前記転写シートとして、台紙層から順に糊層、樹脂層が、例えば5:7〜10の含有割合で積層されたものを用い、かつ前記カバーシートとして後述の本発明構成のものを用いることで実施される。
【0030】
トナーは、樹脂、無機顔料、外添剤を主成分とし、特許文献1〜3のように融剤や釉薬を含んでいない。そして、トナーは、樹脂、無機顔料、外添剤の含有比率を100:40〜110:0.5〜2.0の割合で含有することとしている。
【0031】
トナーの各材料の含有比率を上記のようにした理由は、次のとおりである。無機顔料が40の割合より少ないと画像濃度が低く着色部が全て薄くなり、無機顔料が110の割合より多いとトナーの帯電性が乱れて、転写シートの意図しない部分に着色してしまう。
【0032】
また、外添剤が、0.5の割合より少ないとトナーの流動性が悪く、印刷装置内部でトナーが固まって補給が困難となり、外添剤が2.0の割合より多いと印刷装置内部の現像部位で凝集物を発生させ良好が画像が得られない。
【0033】
転写シートは、例えば紙を材料とする台紙層から順に糊層、樹脂層を形成してなり、糊層、樹脂層の含有割合が例えば5:7〜10とされている。この転写シートは、樹脂層上にトナーによる画像層が形成される。樹脂層上に画像層を形成する理由は、台紙を接着するための糊層上に画像層を形成すると、凹凸が激しく画像が粗くなり、これを改善(光沢度を高く)しようとすると多量のトナーを有するからである。
【0034】
したがって、転写シートは、樹脂層により糊層の凹凸性状が均されて少量のトナーで光沢度の高い良好な画像層が形成される。また、樹脂層は焼き付け時にセラミック製品側の凹凸を均したうえで燃えて存在しなくなることでセラミック製品に確実に転写されることとなり、かつ後述するカバーシートが画像層を覆ってセラミック製品へ該画像層が焼き付けられるまでトナーの移動を規制するから、画像が崩れることもない。
【0035】
転写シートにおいて糊層と樹脂層の含有割合を5:7〜10とする理由は、樹脂層が7の割合より低いとトナーによる画像層の均一性が不十分となり、光沢性に欠ける場合があり、樹脂層が10の割合より多いと転写シート全体の剛性が高くなって樹脂層ごと画像層にひびが生じたり、また、電気抵抗が高くなって画像の濃度が低く(薄く)なる。
【0036】
転写シートはセラミック製品に画像層と樹脂層が糊層により転写され、焼き付けにより樹脂層及び糊層は焼けて消滅し、画像層だけが該セラミック製品に焼き付くことになる。セラミック製品に画像層が焼き付けられる際には、カバーシート上の釉薬も流動しようとするが、セラミック製品に焼き付いた画像層が伴わないので画像が崩れることがない。
【0037】
ここで、本発明のカバーシートにおいて、第1及び第2有機媒介物としては次のものを使用することができる。ナフサ等の石油類、動物系油脂、植物系油脂といったように、焼成時に焼失する有機物を採用する。
【0038】
そして、第1及び第2有機媒介物として最も好適なのは上記のうちナフサである。この理由は、ナフサであれば、焼成時にガスが溜まって画像の白抜けを発生させたり、焼成後に残骸を残して画像に悪影響をおよぼすことが少ないからである。また、第2有機媒介物としては、該ナフサの固形分がカバーシートと転写シートとをラミネータにより一体化する際に、この温度において適度に軟化してカバーシートの密着層と転写シートのトナー(の面)に密着性に優れているからである。また、第1有機媒介物として、釉薬と酸化鉛を混練する際に適しているからである。
【0039】
カバーシートの具体的な製造方法としては、釉薬と酸化鉛を第1有機媒介物で混練し、基材に塗布し、乾燥させ、基材上に釉薬層を設け、続いて、第2有機媒介物を前記釉薬層上に塗布し、乾燥させ、密着層を設ける、ことで行う。
【0040】
上記カバーシートの製造方法において、釉薬層の乾燥後に、粘度が高い第2有機媒介物(密着層)を塗布するのは、同じく第2有機媒介物中の固形分により固形化して安定状態にある該釉薬層上に固形状の密着層を薄く形成することができるからである。
【0041】
本発明のカバーシートにおいて、釉薬層と密着層とで同じ第1及び第2有機媒介物を用いる理由は、釉薬層と密着層との界面で相溶性がよいため、両層が界面で適度に一体的となって空気を混入するといったことがないためである。
【0042】
また、釉薬層の第1有機媒介物より密着層の第2有機媒介物の粘度を高くしている理由は、釉薬層は釉薬と酸化鉛を均一に分散させておく必要があるために第1有機媒介物の粘度が適度に低い方がよく、一方、密着層の第2有機媒介物はカバーシートと転写シートとをラミネータにより一体化する際に、該転写シートと密着させる必要、すなわち一体化時に空気が混入して気泡を形成しないようにするため、である。なお、第2有機媒介物の粘度が第1有機媒介物の粘度と同等以下の場合は、釉薬層側に第2有機媒介物が浸透しやすくなり、密着層が形成しにくくなる。
【0043】
そして、カバーシートの釉薬層は、釉薬と酸化鉛を第1有機媒介物と共に混練しているから、第1有機媒介物による釉薬と酸化鉛を均一に分散させた状態で転写シート上の画像層を含めた全域を覆うことができる。これにより釉薬による画像の鮮やかさや酸化鉛による光沢性を失うことなく、セラミック製品に画像を優れた再現性にて形成することが可能となる。
【0044】
さらに、カバーシートの釉薬層における転写シートに接触させる側(この反対には基材層が位置する)には、密着層が形成されていることで、この密着層が転写シートとラミネートする際にラミネート時の熱により軟化して該転写シートにおける画像層のトナー及び樹脂層)と密着し、該転写シートとカバーシート間の空隙や気泡が生じることが抑制でき、よって白抜けのない良質な画像をセラミック製品に形成することができる。
【0045】
また、本発明のカバーシートにおいて、釉薬層に酸化鉛と釉薬を第1有機媒介物と共に含有させた理由は、酸化鉛は、釉薬と相溶性が良いので容易に均質に混じり合い、もともとセラミック製品の表面にある釉薬や釉薬層中の釉薬の作用を阻害せずに焼成時に融剤として働き、(密着層や転写シートにおける介在物が)融けて該酸化鉛成分がセラミック製品表面に付着し、セラミック製品表面に画像を定着させることができるからである。
【0046】
なお、酸化鉛が転写シートに用いられる焼成トナー(クロム系複合酸化物顔料)とが焼成時に変色する点に関しては、本発明では、釉薬層に釉薬と酸化鉛を特定の割合で同一層に含有させることにより画質変色を抑制するようにしている。
【0047】
また、本発明のカバーシートにおいて、釉薬層に含有される釉薬と酸化鉛の含有割合は90〜75:10〜25とすればよい。この理由は、酸化鉛が上記の割合より少ないと焼成時に融剤として働き、融けてセラミック製品上に付着する効果が小さくなって釉薬層が剥がれてしまう可能性があり、酸化鉛が上記の割合より多いとクロム系複合酸化物顔料を焼成時に変色させる可能性があり、また、相対的に釉薬層中の釉薬の割合が少なくなることにより、表面をガラス質にする効果が小さくなる可能性がある。
【0048】
さらに、本発明のカバーシートにおいて、釉薬層に含有される釉薬としては、アルミナや二酸化珪素を用いるとよい。この理由は、焼成時の溶融性に優れ、トナーの色剤を変色させることが少なく、また、酸化鉛との相溶性も良いからである。なお、二酸化珪素は、アルミナより前記効果に優れているので、より好ましい。
【0049】
また、本発明のカバーシートにおいて、釉薬層に含有される釉薬と酸化鉛に関しては、例えばこれら釉薬や酸化鉛に代えて、下記の化1の構造を示すホウ酸鉛を用いるとよい。
【0050】
【化1】

【0051】
この理由は、釉薬層における釉薬と酸化鉛に代えてホウ酸鉛を用いれば釉薬(二酸化珪素成分)と酸化鉛成分を構造上に有していることにより、釉薬と酸化鉛との均一性が問題にならなくなり、品質のばらつきを抑制することができる。つまり、上記では釉薬と酸化鉛とを第1有機媒介物により分散混練させるが、ホウ酸鉛を用いることで第1有機媒介物に単純に混練するだけでよいので分散性(成分の均一性)、製造効率、ひいては品質の安定面で有利となる。
【0052】
以上説明した本発明の画像形成システムは、次の本発明の画像形成方法の手順により実施される。すなわち、樹脂と無機顔料と外添剤とからなるトナーが用いられた印刷装置により、台紙層から順に糊層、樹脂層が形成された転写シートの該樹脂層上にトナーでなる印刷画像の画像層を形成する。
【0053】
続いて、基材層から順に釉薬層、密着層が形成された本発明のカバーシートの該密着層を転写シートの画像層に接触させてラミネータにより該転写シートと該カバーシートとを一体化する。
【0054】
上記の後、カバーシートから基材層のみを取り除くと共に転写シートから糊層と台紙層を取り除いて転写層を形成し、この転写層の該樹脂層をセラミック製品に転写し、セラミック製品ごと加熱して画像を該セラミック製品に焼き付ける。
【0055】
上記方法において転写シートとカバーシートとを一体化する際にラミネータを用いる理由は、シルクスクリーン方式やスプレー方式に比べてむらや作業技量の差が現れず、簡便かつ一定的に一体化が可能であることと、転写シートとカバーシートに対して適切な圧力を加えることができ、このとき画像層もこの段階で移動が確実に抑制されるからである。
【0056】
このように画像層の移動を抑制しておくことで、後の焼き付け時においては、転写層のうちの、釉薬の流動より先に、樹脂層が消滅し、画像層がセラミック製品へ焼き付き定着しつつあるので、後に釉薬が流動しても画像層は流動しないのである。
【0057】
上記手順は、具体的には、上記方法において、印刷装置では転写シートに対するトナーの定着温度を160〜180℃に設定すると共に該転写シートの送り速度を前記定着温度に対応して70〜100mm/secに設定し、ラミネータでは転写シートとカバーシートとを一体とするための加熱温度を150〜160℃に設定すると共に送り速度を前記加熱温度に対応して0.40〜0.60mm/secに設定し、転写層をセラミック製品に焼き付ける炉では800〜950℃のピーク温度に対して100〜200℃/時間で昇温する設定とすればよい。
【0058】
上記方法において、印刷装置の定着温度を160〜180℃に設定すると共に転写シートの送り速度を該定着温度に対応して70〜100mm/secした理由は次のとおりである。
【0059】
定着温度が160℃より低い温度であると、例え送り速度を70mm/secまで遅くしても、転写シートにトナーが定着せず、場合によっては擦るだけでトナーが剥げることがある。一方、定着温度が180℃より高い温度であると、例え送り速度を100mm/secまで速くしても、トナーが熱で溶けて転写シート上で滲んで汚れることがある。
【0060】
また、ラミネータの加熱温度を150〜160℃に設定すると共に送り速度を該加熱温度に対応して0.40〜0.60mm/secとした理由は次のとおりである。加熱温度が150℃より低い温度であると、例え送り速度を0.40mm/secまで遅くしても、カバーシート上の釉薬を含有した層が、転写シート上の画像層及び樹脂層に定着しないことがある。一方、加熱温度が160℃より高い温度であると、例え送り温度を0.60mm/secまで速くしても、転写シート上の樹脂層をこの段階で溶かしてしまうことがある。
【0061】
さらに、炉の設定を800〜950℃のピーク温度に対して100〜200℃/時間で昇温する設定とした理由は次のとおりである。炉の温度が、800℃より低い温度では画像層のセラミック製品への焼き付けができず、950℃より高い温度ではトナー(画像層)が焼けて、脱色もしくは黒みがかってしまう。
【0062】
一方、昇温ペースが、100℃/時間より遅いと、焼き付け完了までに時間がかかり、200℃/時間より速いペースで昇温すると、セラミック製品が急激な温度変化で割れてしまうことがある。
【0063】
以下に、主に本発明のカバーシートの効果を確認するために行った実験結果について説明する。実施例1〜9は本発明のカバーシートであり、比較例1は本発明ではないカバーシートの構成を示す。
【0064】
なお、実施例1〜9及び比較例1のカバーシート構成の相違を除いては、本発明の画像形成システムの構成(トナー及び転写シート)を用いて、本発明の画像形成方法により、セラミック製品への画像層の焼き付けを行った。まず、実施例1〜9と比較例1との共通条件について説明する。
【0065】
(トナー)
トナーはブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、を用い、各色トナーは次の成分を予備混合、混練、粉砕、分級高低を経て、粒径10μmとした。ブラックは、樹脂:スチレンアクリル樹脂を100部、顔料:酸化コバルトを70部、外添剤:疎水性シリカを1部で構成されている。イエローは、樹脂:スチレンアクリル樹脂を100部、顔料:五酸化アンチモンを80部、外添剤:疎水性シリカを1部で構成されている。シアンは、樹脂:スチレンアクリル樹脂を100部、顔料:酸化クロムを70部、外添剤:疎水性シリカを1部で構成されている。マゼンタは、樹脂:スチレンアクリル樹脂を100部、顔料:酸化鉄を70部、外添剤:疎水性シリカを1部で構成されている。
【0066】
(転写シート)
転写シートは、紙でなる台紙層から順に、デキストリン溶液を塗布した糊層、アルキルアセタール化ポリビニルアルコールを成分とする樹脂層の含有割合が5g/m2 、9g/m2 (5:7〜10)、厚みが2μm(1〜2μm)、17μm(15〜20μm)とされたものを用いている。
【0067】
(画像形成方法)
実施例1〜5、比較例1共に、トナーの定着温度を例えば170℃に設定すると共に転写シートの送り速度を例えば100mm/secに設定した印刷装置により、転写シートの該樹脂層上にトナーでなる印刷画像の画像層を形成し、加熱温度を例えば160℃に設定すると共に送り速度を例えば0.60mm/secに設定したラミネータにより該転写シートとカバーシートとを一体化し、転写層を形成した後、該転写層をセラミック製品に転写し、例えば850℃のピーク温度に対して例えば200℃/時間で昇温する設定とした炉で焼き付ける手順により、画像層をセラミック製品へ焼き付けた。
【0068】
(評価方法)
セラミック製品に形成された画像中の白抜けの有無を確認し、「○」白抜けなし、「△」わずかに白抜けがあったが実用上問題ない、「×」白抜けが多数あり実用上問題あり、の3段階評価とした。
【0069】
セラミック製品に形成された画像中のシアンの変色を確認し、「○」変色なし、「△」わずかに変色したが実用上問題ない、「×」明らかに変色して実用上問題ありた、の3段階評価とした。
【0070】
セラミック製品に形成された画像表面の釉薬層の定着性を確認し、「○」全く問題なかった、「△」画像表面の釉薬層がセラミック製品の表面からわずかに剥がれている部分があったが実用上問題ない、「×」は画像表面の釉薬層がセラミック製品の表面からかなり剥がれていて実用上問題あり、の3段階評価とした。
【実施例1】
【0071】
実施例1のカバーシートは、ポリスチレンを材料とする基材層から順に、釉薬:二酸化珪素と酸化鉛を90:10の割合とし、これらと、粘性のある第1有機媒介物:粘度:750mPa・s(at20℃)、固形分45%のナフサとを1:1の割合として混練し、基材層上に塗布乾燥させて設けた釉薬層、同種で第1有機媒介物より粘性の高い第2有機媒介物:粘度2200mPa・s(at20℃)、固形分35%のナフサを塗布乾燥させて釉薬層上に設けた密着層、を有した構成である。
【実施例2】
【0072】
実施例2のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を85:15とした。
【実施例3】
【0073】
実施例3のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を75:25とした。
【実施例4】
【0074】
実施例4のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛に代えてホウ酸鉛(化1)を用いた。
【実施例5】
【0075】
実施例5のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を95:5とした。
【実施例6】
【0076】
実施例6のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を70:30とした。
【実施例7】
【0077】
実施例7のカバーシートは、実施例1において酸化鉛の含有割合を85:15とすると共に釉薬層の第1有機媒介物と密着層の第2有機媒介物の粘度を(第1有機媒介物に合わせて)同じとした。
【0078】
(比較例1)
比較例1のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を85:15とすると共に密着層を設けない構成とした。
【0079】
(比較例2)
比較例2のカバーシートは、実施例1において釉薬層を釉薬と第1有機媒介物とで構成し、密着層を酸化鉛と第2有機媒介物とで構成した。
【0080】
(比較例3)
比較例3のカバーシートは、実施例1において釉薬と酸化鉛の含有割合を85:15とすると共に第1有機媒介物に代えてシリコーンオイルを用いた。
【0081】
以上の実験結果によれば、実施例1〜7は、白抜け、変色、定着性、いずれも実用上に問題とないレベルとなった。個別には、実施例1〜4は、白抜け、変色、定着性、いずれも全く問題がなく高品質となった。
【0082】
実施例5は釉薬と酸化鉛の含有割合が、釉薬は上限、酸化鉛は下限を超えて範囲外であったため、定着性は「△」となったが実用上は問題のないレベルであった。実施例6は、釉薬と酸化鉛の含有割合が、釉薬は下限、酸化鉛は上限を超えて範囲外であったため、変色は「△」となったが実用上は問題のないレベルであった。実施例7は、第1有機媒介物と第2有機媒介物の粘度を(第1有機媒介物と)同じにしたため、白抜けが「△」となったが、実用上は問題のないレベルであった。
【0083】
これに対し、比較例1は、密着層が存在しない構成であったため、転写シートとのラミネート時に空気が混入し、白抜けは「×」となった。比較例2は、酸化鉛を密着層側に有している構成であったため、転写シート上のクロム系複合酸化物顔料と焼成時に反応して画像が変色し、変色が「×」となった。比較例3は、釉薬層における第1有機媒介物に代えてシリコーンオイルを用いた構成であったため、比較例1と同様、転写シートとのラミネート時に空気が混入し、白抜けは「×」となった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明では、セラミック製品に限定しているが、この他にも例えば焼き付けにより図柄を付与する、例えばホーロー製品やガラス製品の画像形成にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真式の印刷装置に用いられるトナーにより転写シート上に画像層を形成し、この転写シート上の該画像層をカバーシートによって保護した状態でセラミック製品に焼き付けるセラミック画像形成システム用カバーシートであって、基材層から順に、釉薬と酸化鉛と粘性のある第1有機媒介物を混練し、該基材層に塗布乾燥により設けられた釉薬層と、前記転写シートの画像層との密着を図るために前記釉薬層で用いた第1有機媒介物と同種の粘度のある第2有機媒介物を該釉薬層に塗布乾燥により設けた密着層と、により構成したことを特徴とするセラミック画像形成システム用カバーシート。
【請求項2】
釉薬層の第1有機媒介物より密着層の第2有機媒介物の粘度を高くしていることを特徴とする請求項1記載のセラミック画像形成システム用カバーシート。
【請求項3】
カバーシートの釉薬層における釉薬と酸化鉛の含有割合を90〜75:10〜25としたことを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック画像形成システム用カバーシート。
【請求項4】
カバーシートの釉薬層において釉薬及び酸化鉛に代えてホウ酸鉛を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック画像形成システム用カバーシート。
【請求項5】
電子写真式の印刷装置に用いられるトナーと、該印刷装置によってトナー画像でなる画像層が形成される転写シートと、この転写シート上の該画像層を保護するカバーシートとが用いられ、カバーシートによって保護された状態の転写シートの画像層をセラミック製品に焼き付けるセラミック画像形成システムにおいて、前記トナーとして、樹脂、無機顔料、外添剤を含有してなるトナーを用い、前記転写シートとして、台紙層から順に糊層、樹脂層が積層された転写シートを用い、かつ前記カバーシートとして請求項1〜4のいずれかを用いることを特徴とするセラミック画像形成システム。
【請求項6】
電子写真式の印刷装置によって形成した画像をセラミック製品に焼き付けるセラミック画像形成方法であって、樹脂と無機顔料と外添剤とからなるトナーが用いられた印刷装置により、台紙層から順に糊層、樹脂層が形成された転写シートの該樹脂層上にトナーでなる印刷画像の画像層を形成し、請求項1〜4のいずれかのカバーシートの融剤層を前記転写シートの前記画像層に接触させてラミネータにより該転写シートと該カバーシートとを一体化した後、該カバーシートから該基材層のみを取り除くと共に転写シートから前記糊層と前記台紙層を取り除いて転写層を形成し、この転写層の該樹脂層をセラミック製品に転写し、焼き付けることを特徴とするセラミック画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−92690(P2013−92690A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235286(P2011−235286)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(306029349)ゼネラル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】