セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒
【課題】耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物を提供する。
【解決手段】セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【解決手段】セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素を吸放出可能である(酸素貯蔵能を持つ)ためセリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究されており、種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、特開平8−109020号公報(特許文献1)においては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含有する複合酸化物であって、酸化セリウムを4.99〜98.99質量%、酸化ジルコニウムを1〜95質量%及び酸化ハフニウムを0.01〜20質量%含有し、結晶相としてφ’相を含有する複合酸化物が開示されている。そして、特許文献1に記載の複合酸化物の製造方法としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含む第1次複合酸化物を600〜1000℃で0.5〜10時間還元処理を施し、次いで加熱酸化処理する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平8−109021号公報(特許文献2)には、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含有する複合酸化物であって、酸化セリウムを4.99〜98.89重量%、酸化ジルコニウムを1〜95重量%及び酸化ハフニウムを0.01〜20重量%を含み、更に酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、セリウム以外の希土類金属酸化物又はこれらの混合物を0.1〜10重量%含み、結晶相としてφ相を含有する複合酸化物が開示されており、その複合酸化物の製造方法としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムに、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、セリウム以外の希土類金属の酸化物又はこれらの混合物を混合し、加圧成形した後、700〜1500℃(好ましくは900〜1300℃)で焼成してφ相を生成させる方法が開示されている。
【0005】
さらに、特開平8−103650号公報(特許文献3)においては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを必須成分として含有する複合酸化物を加熱還元処理し、次いで加熱酸化処理することを特徴とする複合酸化物の製造方法が開示されており、前記加熱還元処理としては、還元気体雰囲気中で、600〜1000℃、0.5〜10時間加熱する方法が好適な方法として開示されている。
【0006】
また、佐々木巌氏の2004年の学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」(非特許文献1)の150〜170頁の記載、並びに、日本金属学会2006年春期大会講演予稿集(非特許文献2)の140頁に記載された「セリア−ジルコニア固溶体の規則配列性に着目した材料設計と結晶構造解析」においては、共沈法により得られたセリア−ジルコニア複合酸化物を1673K(1400℃)で還元処理して得られたセリア−ジルコニア複合酸化物が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3及び非特許文献1〜2に記載のような製造方法を採用して得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は、高温の酸化雰囲気における耐久性を高めることを目的として製造されておらず、耐熱性が必ずしも十分なものではなかった。そのため、このような従来のセリア−ジルコニア複合酸化物は、高温に長時間晒された際の酸素貯蔵能が必ずしも十分なものとはならなかった。
【特許文献1】特開平8−109020号公報
【特許文献2】特開平8−109021号公報
【特許文献3】特開平8−103650号公報
【非特許文献1】佐々木巌著、学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」、2004年発行、150〜170頁
【非特許文献2】佐々木巌、野崎洋らによる共著、「セリア−ジルコニア固溶体の規則配列性に着目した材料設計と結晶構造解析」、日本金属学会2006年春期大会講演予稿集、2006年発行、140頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型に規則配列した結晶相が形成されており且つ前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後においても加熱前と比較して50%以上残存するようなセリア−ジルコニア系複合酸化物により、セリア−ジルコニア系複合酸化物の耐熱性が十分に向上し、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするものである。
【0011】
上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存しているものが好ましい。
【0012】
また、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、前記セリアと前記ジルコニアとの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあることが好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有するものが好ましい。
【0014】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0015】
上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、前記還元処理の温度条件が1700℃以上1800℃以下であることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、前記還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を更に含むことが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒は、セリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とするものである。
【0018】
なお、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、上記特許文献1〜3に記載のような従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物中の結晶相(例えば、上記文献中に記載のφ’相(κ相と同一の相)やφ相等)が、耐熱性が必ずしも十分なものとはならないということを見出した。例えば、従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、複合酸化物中の前記φ’相の耐熱性が約900℃であり、大気中で1000℃以上の加熱処理を施すと前記φ’相がほぼ消滅してしまっていた。また、上記非特許文献1〜2に記載のような従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物においても、耐熱性が必ずしも十分なものとはならないということを見出した。これは、従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、その製造時の還元処理に、1300℃程度以下(非特許文献1〜2では1400℃)の温度条件の加熱処理を好適に採用していたため、還元処理の温度条件が不十分で、形成される結晶子のサイズが十分に大きくならないことに起因するものと推察される。一方、本発明においては、セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を用い、これを1500℃以上という高温の温度条件下において還元処理を施す。本発明においては、このような高温の還元処理を施すため、形成される結晶子のサイズを、より安定な大きなサイズにすることができる。しかも、本発明においては、セリアとジルコニアの含有比率が55:45〜49:51の範囲にあるため、上述のような高温の還元処理によって焼結が進むと安定な結晶粒界が形成され、結晶子サイズが不必要に大きくなり過ぎることがない。これにより、還元処理により結晶子は、異常粒成長の少ない揃ったサイズのものとなる。特に、還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を含む場合には、結晶子サイズがより安定な大きさで、しかもより高度に均一なものとなることから、1000〜1100℃程度の温度条件の酸化雰囲気下でφ’相が崩れてしまうような微粒の結晶子を、複合酸化物中にほとんど含まない傾向にある。そのため、本発明の製造方法を採用した場合に形成されるセリウムイオンとジルコニウムイオンの結晶相は、上記特許文献1〜3に記載されているようなφ’相やφ相等と同じ結晶相を持つにもかかわらず、結晶構造を保ち易い必要十分なサイズの結晶子からなるため、1100℃までφ’相を十分に保つことができ、十分に優れた酸素貯蔵能を発揮できるものと推察される。更に、上述のような高温の還元処理により結晶性がよくなるため、形成されたパイロクロア相型の規則配列相(φ’相(カッパー相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)は高温でより安定化されたものとなる。そのため、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物について説明する。すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとがパイロクロア相型に規則配列した結晶相が形成されている。本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、このようなパイロクロア相型の規則配列相が形成されているため、高温に対する耐熱性が向上し、高温に晒された後においても十分に高い酸素吸放出能を発揮できる。そのため、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、比較的高温の条件下において用いる排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として好適に利用することが可能である。
【0023】
ここで、本発明にいう「パイロクロア相型の規則配列相」とは、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相(カッパー相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)である。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが100cps以上のものをいう。また、前記X線回折測定の方法として、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT2100」を用いて、CuKα線を用い、30KV、40mA、2θ=2°/minの条件で測定する方法を採用する。
【0024】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記X線回折パターンのピーク強度比により求まる全結晶相に対する前記パイロクロア相型に規則配列した結晶相の含有比率が、50〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましい。前記パイロクロア相型の規則配列相の含有比率が前記下限未満では、パイロクロア相型の規則配列相の割合が少ないため、耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する加熱処理を施した後においても、加熱前と比較して50%以上(好ましくは50〜100%)残存する。また、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、より高い耐熱性を発揮させるという観点から、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱する加熱処理を施した後に、前記パイロクロア相型の規則配列相が、加熱前と比較して50%以上(更に好ましくは50〜100%)残存するものがより好ましい。このようなパイロクロア相型の結晶相の残存率が前記下限未満では、高温耐久後(高温に晒された後)に酸素貯蔵能が十分なものとならない。なお、このようなパイロクロア相型の規則配列相の残存率は、X線回折パターンのピーク強度比により求めることができる。
【0026】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、より確実に、前記加熱処理後の前記パイロクロア相型の規則配列相の残存率を50%以上とするという観点から、セリア及びジルコニアの含有比率は、モル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51(特に好ましくは53:47〜50:50)の範囲とすることが好ましい。このようなセリアの含有比率が前記下限未満では、複合酸化物の製造時にジルコニアが遊離してパイロクロア相型の規則配列相が減少してしまう(不要なジルコニアが増加する)傾向にある。他方、セリアの含有比率が前記上限を超えると、複合酸化物の製造時に酸素吸放出に寄与しない遊離したセリアが増加する傾向にある。
【0027】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記パイロクロア相型の規則配列相を形成する結晶子の平均粒子径が1〜30μm(より好ましくは3〜10μm)であることが好ましい。このような結晶子の平均粒子径が前記下限未満では、φ’相の熱安定性が低下し、前記加熱処理後の前記パイロクロア相型の規則配列相の残存率を50%以上とすることが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えると、均一なサイズに粉砕することが困難となり、耐熱性に劣る微小粒子が増加する傾向にある。なお、このような結晶子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて焼結したセリア−ジルコニア系複合酸化物の粒子の断面を観察し、断面の結晶粒子径を測定することにより求めることができる。なお、ここにいう粒子径は断面が円形でない場合には、最大外接円の直径をいう。
【0028】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有してもよい。このような元素を含有させることで、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能を発揮できる傾向にある。このようなセリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、La、Ce、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Ce、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
【0029】
さらに、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、セリア−ジルコニア系複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることが好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
【0030】
さらに、このようなセリア−ジルコニア複合酸化物の比表面積としては特に制限されないが、0.1〜2m2/gであることが好ましく、0.5〜1m2/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では、貴金属との相互作用が小さくなるとともに、酸素貯蔵能が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、耐熱性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0031】
次に、上記本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物を製造するための方法として好適に採用することが可能な本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法について説明する。
【0032】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程(第一工程)と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程(第二工程)とを含むことを特徴とする方法である。
【0033】
本発明にかかるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末は、セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるものである。このようなセリアとジルコニアの含有比率が前記範囲外となる場合には、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物において、遊離したセリアあるいはジルコニアがパイロクロア相型の規則配列相以外の別の相として共存し、パイロクロア相の形成のために何ら寄与しない。すなわち、このようなセリアの含有比率が前記下限未満では、ジルコニアの含有比率が高くなり過ぎて、還元処理工程においてジルコニアが遊離し、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相を十分に形成させることが困難となり、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素貯蔵能が低下する。他方、前記セリアの含有比率が前記上限を超えると、遊離したセリアが混在した状態となる。なお、このような遊離したセリアは酸素貯蔵能にはほとんど寄与しない。
【0034】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末としては、セリアとジルコニアとが共存したものであればよく、特に制限されず、セリア−ジルコニア固溶体の粉末であっても、セリア粉末とジルコニア粉末の混合物であってもよい。このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末として、セリア粉末とジルコニア粉末の混合物を用いる場合には、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点から、セリア粉末及びジルコニア粉末が十分に微粉砕された微細なものであって且つその微細な各粉末が高度に分散、混合された状態のものを用いることが好ましい。なお、このようなセリア粉末及びジルコニア粉末の混合物を用いる場合には、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点から、各粉末の平均粒子径は100〜1000nm程度であることが好ましい。
【0035】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末としては、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点からは、セリアとジルコニアとが原子レベルで混合された固溶体を用いることがより好ましい。また、このようなセリアとジルコニアの固溶体の粉体としては、平均粒子径が2〜100nm程度であることが好ましい。
【0036】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を製造する方法は特に制限されず、例えば、いわゆる共沈法を採用して、セリアとジルコニアの含有比率が上記含有比率の範囲内となるようにして前記複合酸化物粉末を製造する方法や、微細なセリア粉末とジルコニア粉末とをセリアとジルコニアの含有比率が上記含有比率の範囲内となるようにして混合して前記複合酸化物粉末を製造する方法等が挙げられる。前記共沈法としては、例えば、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)とジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)とを含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成後、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して、セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を得る方法等が挙げられる。なお、前記セリウムの塩とジルコニウムの塩とを含有する水溶液は、得られる複合酸化物粉末中のセリアとジルコニアの含有比率が55:45〜49:51となるようにして調製する。また、このような水溶液には、必要に応じて、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩や、界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)等を添加してもよい。
【0037】
次に、各工程について説明する。本発明においては、先ず、前記複合酸化物粉末を還元処理して複合酸化物前駆体を得る(第一工程)。
【0038】
このような還元処理の温度条件は、1500℃以上1900℃以下であり、1600℃以上1850℃以下とすることがより好ましく、1650℃以上1800℃以下とすることが更に好ましく、1700℃以上1800℃以下とすることが特に好ましい。このような還元処理の温度条件が前記下限未満では、パイロクロア相型の規則配列相は形成されるが、結晶子の平均粒子径を十分な大きさとすることができないため、形成される結晶相の構造安定性が低下し、耐熱性が低下する。すなわち、前記温度条件が前記下限未満では、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物を、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱した場合に、前記パイロクロア相型の規則配列相が加熱前と比較して50%以上残存するようなセリア−ジルコニア系複合酸化物を得ることができなくなる。なお、このような加熱処理の際の温度条件は、前記温度範囲内において、より高温にする程、より安定化された結晶構造を持つセリア−ジルコニア系複合酸化物が得られる傾向にある。また、このような還元処理の温度条件が前記上限を超えると、還元ガスのCOとジルコニア(ZrO2)が反応してパイロクロア相が分解してしまう傾向にある。
【0039】
また、前記還元処理の方法は、還元性雰囲気下で前記複合酸化物粉末を1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱処理することが可能な方法であればよく、特に制限されず、例えば、真空加熱炉内に前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を設置し、真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元性雰囲気とし、1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱して還元処理を施す方法や、黒鉛製の炉を用い、炉内に前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を設置し、真空引きした後、1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱して、炉体及び加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元性雰囲気とし、還元処理を施す方法等が挙げられる。なお、前述の黒鉛炉を用いる場合においても、還元性ガスを炉内に流入させて還元性雰囲気しながら加熱してもよい。
【0040】
また、このような還元性雰囲気を達成させるために用いる還元性ガスとしては、特に制限されず、CO、HC、H2、その他の炭化水素ガス等の還元ガスを適宜用いることができる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元性処理をした場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点からは、炭素(C)を含まないものを用いることがより好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いた場合には、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度条件での還元処理が可能となるため、結晶相の構造安定性をより十分に向上させることが可能となる。
【0041】
また、このような還元処理の際の加熱時間としては特に制限されないが、0.5〜5時間程度であることが好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では、前記複合酸化物粉末の結晶子径を十分に大きくすることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分に粒成長が進み、それ以上の操作が無駄となるため経済性が低下する傾向にある。
【0042】
また、本発明においては、前記還元処理を施す前に、前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を100MPa以上(より好ましくは200〜400MPa)の圧力でプレスすることが好ましい。このようにしてプレスした後の前記複合酸化物粉末(プレス成形体)を用いることで、前記複合酸化物粉末の粒度の均一性が向上し、前記還元処理中の加熱によって、より焼結が進み易くなり、表面エネルギーが放出され易くなって結晶構造がより安定化される傾向にある。また、前記プレス圧が前記下限未満では、プレスによる効果を十分に得られない傾向にある。なお、このようなプレスの方法としては特に制限されず、静水圧プレス等の公知のプレス方法を適宜採用できる。
【0043】
次に、第二工程について説明する。すなわち、本発明においては、前記還元処理(第一工程)後に、得られた複合酸化物前駆体に対して、酸化処理を施し、セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る(第二工程)。
【0044】
このような酸化処理の方法は特に制限されず、還元処理して得られた複合酸化物前駆体中の金属元素を酸化することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、酸化雰囲気(例えば、空気)中において前記複合酸化物前駆体を加熱処理する方法を好適に採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度の条件としては特に制限されないが300〜800℃程度であることが好ましい。さらに、前記酸化処理の際の加熱時間としては特に制限されないが0.5〜5時間であることが好ましい。
【0045】
このようにして得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が十分に形成され、しかも、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱した場合においても、前記パイロクロア相型の規則配列相が加熱前と比較して50%以上残存する。従って、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なものとなる。
【0046】
以上、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法について説明したが、以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0047】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とするものである。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、高温条件下で使用した場合においても含有するセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素の吸放出能の十分に維持されることから、高い触媒活性を発揮できる。
【0048】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の好適な例としては、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含む担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられる。また、このような担体に貴金属を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記セリア−ジルコニア系複合酸化物の粉末(担体)を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成する方法を採用してもよい。また、前記担体に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0049】
さらに、上記本発明の排ガス浄化用触媒の好適な他の例としては、触媒担体微粒子と、前記触媒担体微粒子に担持された貴金属とからなる第一触媒の周囲に、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置してなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような触媒担体微粒子としては特に制限されず、排ガス浄化用触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物や金属酸化物複合体からなる担体(例えば、アルミナ粒子、アルミナ/セリ
アからなる粒子、アルミナ/セリア/ジルコニアからなる粒子等)を適宜用いることができる。また、このような触媒担体微粒子の平均粒子径としては特に制限されないが5〜100nmであることが好ましい。また、このような触媒担体微粒子に貴金属を担持させる方法としては、前述の方法を採用することができる。また、前記触媒担体微粒子に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。また、このような第一触媒の周囲に上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置する方法は特に制限されず、例えば、第一触媒と上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物とを混合する方法を採用することができる。さらに、より高い触媒活性を得るという観点からは、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物が高度に分散された状態で前記第一触媒の周囲に配置されていることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(合成例1)
セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50のセリアジルコニア固溶体粉末を調製した。すなわち、先ず、CeO2換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液49.1gと、ZrO2換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液54.7gと、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)1.2gとをイオン交換水90ccに溶解し後、NH3が25質量%のアンモニア水を陰イオンに対して1.2倍当量添加し、共沈殿を生成し、得られた共沈物を濾過、洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウムとジルコニウムの固溶体を得た。その後、前記固溶体を粉砕機(アズワン社製の商品名「ワンダーブレンダー」)を用いて平均粒子径が1000nmとなるように粉砕して、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50のセリアジルコニア固溶体粉末を得た。
【0052】
(合成例2)
硝酸セリウム水溶液の使用量を58.9gとし、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液の使用量を43.7gとした以外は合成例1と同様にして、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が60:40のセリアジルコニア固溶体粉末を調製した。
【0053】
(実施例1)
先ず、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50である合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末50gを、ポリエチレン製のバッグ(容量0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。次に、静水圧プレス装置(日機装社製の商品名「CK4−22−60」)を用いて、前記バッグに対して静水圧プレス(CIP)を300MPaの圧力で1分間行って成形し、セリアジルコニア固溶体粉末の固形状原料を得た。なお、この操作を複数回行って10個の固形状原料を成形した。
【0054】
次に、プレス後のバッグからそれぞれ取り出した前記固形状原料10個を、黒鉛製の円筒形容器(内容積:直径15cm、高さ20cm)に詰め、黒鉛製の蓋をした。次いで、前記円筒形容器を、炉内が黒鉛性の断熱材及び発熱体からなる炉内(黒鉛炉)に設置した。その後、前記炉内をディフュージョンポンプで0.01Torrまで真空引きした後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス100容量%の還元雰囲気とした。次に、前記炉内の温度を1700℃にして前記固形状試料を5時間加熱して還元処理を施し、複合酸化物前駆体を得た。その後、炉内の温度が50℃となるまで炉冷し、炉から前記複合酸化物前駆体を取り出した。そして、得られた複合酸化物前駆体を、大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、セリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が5μmの粉末とした。
【0055】
(実施例2)
前記還元処理時の炉内の温度を1500℃とした以外は、実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が2μmの粉末とした。
【0056】
(実施例3)
静水圧プレス(CIP)を行わず、合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末500gを前記円筒形容器に直接詰めた以外は、実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0057】
(比較例1)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が5μmの粉末とした。
【0058】
(比較例2)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例2と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が2μmの粉末とした。
【0059】
(比較例3)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0060】
(比較例4)
静水圧プレス(CIP)を行わずに合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末500gを前記円筒形容器に直接詰め、前記還元処理時の炉内の温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0061】
(実施例4〜6及び比較例5〜8)
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物をそれぞれ担体として用い、各複合酸化物に対して、蒸発乾固法により担持量が0.2質量%となるようにして貴金属をそれぞれ担持して排ガス浄化用触媒を製造した。
【0062】
[セリア−ジルコニア複合酸化物の特性評価]
<X線回折(XRD)測定>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、測定に際しては、測定試料として、複合酸化物の初期品(試料1)、大気中950℃で5時間酸化したもの(試料2)、大気中1000℃で5時間酸化したもの(試料3)、大気中1100℃で5時間酸化したもの(試料4)をそれぞれ準備した。そして、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−2100」を用いて、各実施例及び各比較例で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを測定した。得られた結果を図1〜図6(図1:実施例1、図2:実施例2、図3:実施例3、図4:比較例1、図5:比較例2、図6:比較例3)に示す。なお、残存率は、初期品(試料1)のX線回折パターンの2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置におけるベースラインからのピークの高さをそれぞれ100とした場合に、試料2〜4のX線回折パターンにおいて、それらの位置におけるピークの高さが初期品と比較して何%残存するかをそれぞれ求め、これを平均化することによって算出する。
【0063】
図1〜3に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、それぞれ初期品(試料1)において、2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相型の規則配列相)が確認された。また、実施例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、初期品(試料1)と比較した試料2〜3のφ’相型の規則配列相の残存率が、それぞれ50%以上となっていることがX線回折パターンから確認された。更に、実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、1100℃で5時間加熱した試料4においても、φ’相型の規則配列相の残存率が、初期品(試料1)と比較して50%以上となっていることがX線回折パターンから確認された。一方、比較例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、図4〜6に示す結果からも明らかなように、それぞれ初期品(試料1)ではφ’相型の規則配列相を有することが確認されたが、大気中950℃で5時間酸化した後の試料2のφ’相型の規則配列相の残存率が、試料1と比較して50%未満となっていた。このような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)は、結晶相の安定性が十分に高いことが確認された。
【0064】
なお、同様の測定を比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して行ったところ、初期品ではφ’相型の規則配列相を有することが確認されたが、大気中1000℃で5時間酸化した後に、φ’相型の規則配列相の残存率が初期品と比較して50%未満であった。
【0065】
<走査型電子顕微鏡(SEM)による観察>
実施例1〜3及び比較例4で得られた粉砕前のセリア−ジルコニア複合酸化物を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。各セリア−ジルコニア複合酸化物のSEM像を図7〜14(図7及び8:実施例1、図9及び10:実施例2、図11及び12:実施例3、図13及び14:比較例4)に示す。
【0066】
図7〜14に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3及び比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の結晶子の平均粒子径は、それぞれ5μm(実施例1)、3μm(実施例2)、8μm(実施例3)、0.1μm(比較例4)であることが確認された。このような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、結晶子のサイズが大きく、これにより結晶構造の安定化が向上されるものと推察される。
【0067】
<酸素吸放出量の測定試験1>
実施例4〜6及び比較例5〜8で得られた排ガス浄化用触媒(初期品)をそれぞれ熱量分析計(TG:島津製作所社製の商品名「TGA−5D」)の試料セルに設置し、500℃の温度条件下において、触媒15mgに対して100ml/minの流量で、H2(20容量%)及びN2(80容量%)からなる還元ガスと、O2(25%)容量%及びN2(75容量%)からなる酸化ガスを10分ごとに交互に10分間流し、前述の熱重量分析計を用いて、可逆的重量変化から500℃におけるセリウム1mol当りの酸素の吸放出量(mol−O2/mol−Ce)を算出した。得られた結果を表1に示す。また、実施例4〜6で得られた排ガス浄化用触媒及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒のセリウム1mol当りの酸素の吸放出量のグラフを図15に示す。
【0068】
<酸素吸放出量の測定試験2>
先ず、実施例4〜6及び比較例5〜8で得られた排ガス浄化用触媒に対して、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する耐久試験を行った。次に、耐久試験後の各触媒を用い、上述の酸素吸放出量の測定試験1と同様にして500℃における酸素の吸放出量(耐久試験後)を算出した。得られた結果を表1に示す。また、実施例4〜6で得られた排ガス浄化用触媒及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒の酸素の吸放出量のグラフを図15に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1及び図15に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られた本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物を担体として用いて得られた排ガス浄化用触媒(実施例4〜6)は、耐久試験後においても十分に高い酸素吸放出能を発揮できることが確認された。これに対して、比較例1〜4で得られた比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を用いて得られた排ガス浄化用触媒(比較例5〜8)においては、耐久試験後に酸素吸放出量が低下し、十分な酸素吸放出能が得られなくなることが確認された。また、図15に示す結果から、還元処理時の温度条件が1200℃と低い場合には、耐久試験後において酸素吸放出能の低下を抑制できないことが分かった。
【0071】
以上のような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、セリア−ジルコニア複合酸化物中にパイロクロア相型の規則配列相が形成され、且つその規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する耐久試験後において加熱前と比較して50%以上残存していることから、結晶相の安定性が高いことが確認された。また、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することができることが確認された。更に、製造時にセリア−ジルコニア複合体粉末をプレス加工することにより、より高い効果が得られることが確認された。このような結果は、プレスを行うことにより、原料のセリア−ジルコニア複合体粉末の粒度分布がより均一なものとなって、形成される結晶相の安定性が向上するためであると推察される。
【0072】
なお、上述の非特許文献1(佐々木巌著、学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」、2004年発行、150〜170頁)の記載から、セリアとジルコニアの複合酸化物においては、セリアの含有率が49モル%未満になると、セリア(CeO2)と化合してCe2Zr2O7になるジルコニア(ZrO2)以外の過剰のジルコニアは、遊離のZrO2となることが分かる。なお、このような遊離のZrO2は、酸素貯蔵能の発現に全く関与しない相である。そのため、セリアとジルコニアの複合酸化物においては、セリアの含有比率が49モル%未満になると酸素貯蔵能が低下する傾向にあることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【0074】
したがって、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、耐熱性に優れるため、300℃以上の温度条件で用いる排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図3】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】比較例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図5】比較例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】比較例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図7】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(反射電子像)である。
【図8】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(二次射電子像)である。
【図9】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(反射電子像)である。
【図10】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(二次射電子像)である。
【図11】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図13】比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図15】実施例4〜6及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒のセリウム1mol当りの酸素の吸放出量を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒用の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素を吸放出可能である(酸素貯蔵能を持つ)ためセリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究されており、種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、特開平8−109020号公報(特許文献1)においては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含有する複合酸化物であって、酸化セリウムを4.99〜98.99質量%、酸化ジルコニウムを1〜95質量%及び酸化ハフニウムを0.01〜20質量%含有し、結晶相としてφ’相を含有する複合酸化物が開示されている。そして、特許文献1に記載の複合酸化物の製造方法としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含む第1次複合酸化物を600〜1000℃で0.5〜10時間還元処理を施し、次いで加熱酸化処理する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平8−109021号公報(特許文献2)には、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを含有する複合酸化物であって、酸化セリウムを4.99〜98.89重量%、酸化ジルコニウムを1〜95重量%及び酸化ハフニウムを0.01〜20重量%を含み、更に酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、セリウム以外の希土類金属酸化物又はこれらの混合物を0.1〜10重量%含み、結晶相としてφ相を含有する複合酸化物が開示されており、その複合酸化物の製造方法としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムに、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、セリウム以外の希土類金属の酸化物又はこれらの混合物を混合し、加圧成形した後、700〜1500℃(好ましくは900〜1300℃)で焼成してφ相を生成させる方法が開示されている。
【0005】
さらに、特開平8−103650号公報(特許文献3)においては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムを必須成分として含有する複合酸化物を加熱還元処理し、次いで加熱酸化処理することを特徴とする複合酸化物の製造方法が開示されており、前記加熱還元処理としては、還元気体雰囲気中で、600〜1000℃、0.5〜10時間加熱する方法が好適な方法として開示されている。
【0006】
また、佐々木巌氏の2004年の学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」(非特許文献1)の150〜170頁の記載、並びに、日本金属学会2006年春期大会講演予稿集(非特許文献2)の140頁に記載された「セリア−ジルコニア固溶体の規則配列性に着目した材料設計と結晶構造解析」においては、共沈法により得られたセリア−ジルコニア複合酸化物を1673K(1400℃)で還元処理して得られたセリア−ジルコニア複合酸化物が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3及び非特許文献1〜2に記載のような製造方法を採用して得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は、高温の酸化雰囲気における耐久性を高めることを目的として製造されておらず、耐熱性が必ずしも十分なものではなかった。そのため、このような従来のセリア−ジルコニア複合酸化物は、高温に長時間晒された際の酸素貯蔵能が必ずしも十分なものとはならなかった。
【特許文献1】特開平8−109020号公報
【特許文献2】特開平8−109021号公報
【特許文献3】特開平8−103650号公報
【非特許文献1】佐々木巌著、学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」、2004年発行、150〜170頁
【非特許文献2】佐々木巌、野崎洋らによる共著、「セリア−ジルコニア固溶体の規則配列性に着目した材料設計と結晶構造解析」、日本金属学会2006年春期大会講演予稿集、2006年発行、140頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型に規則配列した結晶相が形成されており且つ前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後においても加熱前と比較して50%以上残存するようなセリア−ジルコニア系複合酸化物により、セリア−ジルコニア系複合酸化物の耐熱性が十分に向上し、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするものである。
【0011】
上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存しているものが好ましい。
【0012】
また、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、前記セリアと前記ジルコニアとの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあることが好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物としては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有するものが好ましい。
【0014】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0015】
上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、前記還元処理の温度条件が1700℃以上1800℃以下であることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、前記還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を更に含むことが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒は、セリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とするものである。
【0018】
なお、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、上記特許文献1〜3に記載のような従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物中の結晶相(例えば、上記文献中に記載のφ’相(κ相と同一の相)やφ相等)が、耐熱性が必ずしも十分なものとはならないということを見出した。例えば、従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、複合酸化物中の前記φ’相の耐熱性が約900℃であり、大気中で1000℃以上の加熱処理を施すと前記φ’相がほぼ消滅してしまっていた。また、上記非特許文献1〜2に記載のような従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物においても、耐熱性が必ずしも十分なものとはならないということを見出した。これは、従来のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、その製造時の還元処理に、1300℃程度以下(非特許文献1〜2では1400℃)の温度条件の加熱処理を好適に採用していたため、還元処理の温度条件が不十分で、形成される結晶子のサイズが十分に大きくならないことに起因するものと推察される。一方、本発明においては、セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を用い、これを1500℃以上という高温の温度条件下において還元処理を施す。本発明においては、このような高温の還元処理を施すため、形成される結晶子のサイズを、より安定な大きなサイズにすることができる。しかも、本発明においては、セリアとジルコニアの含有比率が55:45〜49:51の範囲にあるため、上述のような高温の還元処理によって焼結が進むと安定な結晶粒界が形成され、結晶子サイズが不必要に大きくなり過ぎることがない。これにより、還元処理により結晶子は、異常粒成長の少ない揃ったサイズのものとなる。特に、還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を含む場合には、結晶子サイズがより安定な大きさで、しかもより高度に均一なものとなることから、1000〜1100℃程度の温度条件の酸化雰囲気下でφ’相が崩れてしまうような微粒の結晶子を、複合酸化物中にほとんど含まない傾向にある。そのため、本発明の製造方法を採用した場合に形成されるセリウムイオンとジルコニウムイオンの結晶相は、上記特許文献1〜3に記載されているようなφ’相やφ相等と同じ結晶相を持つにもかかわらず、結晶構造を保ち易い必要十分なサイズの結晶子からなるため、1100℃までφ’相を十分に保つことができ、十分に優れた酸素貯蔵能を発揮できるものと推察される。更に、上述のような高温の還元処理により結晶性がよくなるため、形成されたパイロクロア相型の規則配列相(φ’相(カッパー相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)は高温でより安定化されたものとなる。そのため、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮できるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物について説明する。すなわち、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとがパイロクロア相型に規則配列した結晶相が形成されている。本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、このようなパイロクロア相型の規則配列相が形成されているため、高温に対する耐熱性が向上し、高温に晒された後においても十分に高い酸素吸放出能を発揮できる。そのため、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、比較的高温の条件下において用いる排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として好適に利用することが可能である。
【0023】
ここで、本発明にいう「パイロクロア相型の規則配列相」とは、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相(カッパー相と同一の相)型の規則配列相:蛍石構造の中に生ずる超格子構造)である。なお、ここにいう「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが100cps以上のものをいう。また、前記X線回折測定の方法として、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT2100」を用いて、CuKα線を用い、30KV、40mA、2θ=2°/minの条件で測定する方法を採用する。
【0024】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記X線回折パターンのピーク強度比により求まる全結晶相に対する前記パイロクロア相型に規則配列した結晶相の含有比率が、50〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましい。前記パイロクロア相型の規則配列相の含有比率が前記下限未満では、パイロクロア相型の規則配列相の割合が少ないため、耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する加熱処理を施した後においても、加熱前と比較して50%以上(好ましくは50〜100%)残存する。また、このようなセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、より高い耐熱性を発揮させるという観点から、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱する加熱処理を施した後に、前記パイロクロア相型の規則配列相が、加熱前と比較して50%以上(更に好ましくは50〜100%)残存するものがより好ましい。このようなパイロクロア相型の結晶相の残存率が前記下限未満では、高温耐久後(高温に晒された後)に酸素貯蔵能が十分なものとならない。なお、このようなパイロクロア相型の規則配列相の残存率は、X線回折パターンのピーク強度比により求めることができる。
【0026】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、より確実に、前記加熱処理後の前記パイロクロア相型の規則配列相の残存率を50%以上とするという観点から、セリア及びジルコニアの含有比率は、モル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51(特に好ましくは53:47〜50:50)の範囲とすることが好ましい。このようなセリアの含有比率が前記下限未満では、複合酸化物の製造時にジルコニアが遊離してパイロクロア相型の規則配列相が減少してしまう(不要なジルコニアが増加する)傾向にある。他方、セリアの含有比率が前記上限を超えると、複合酸化物の製造時に酸素吸放出に寄与しない遊離したセリアが増加する傾向にある。
【0027】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、前記パイロクロア相型の規則配列相を形成する結晶子の平均粒子径が1〜30μm(より好ましくは3〜10μm)であることが好ましい。このような結晶子の平均粒子径が前記下限未満では、φ’相の熱安定性が低下し、前記加熱処理後の前記パイロクロア相型の規則配列相の残存率を50%以上とすることが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えると、均一なサイズに粉砕することが困難となり、耐熱性に劣る微小粒子が増加する傾向にある。なお、このような結晶子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて焼結したセリア−ジルコニア系複合酸化物の粒子の断面を観察し、断面の結晶粒子径を測定することにより求めることができる。なお、ここにいう粒子径は断面が円形でない場合には、最大外接円の直径をいう。
【0028】
また、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物においては、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有してもよい。このような元素を含有させることで、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能を発揮できる傾向にある。このようなセリウム以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、La、Ce、Nd、Pr、Y、Scが好ましく、La、Ce、Y、Ndがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いセリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
【0029】
さらに、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、セリア−ジルコニア系複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜7質量%であることが好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
【0030】
さらに、このようなセリア−ジルコニア複合酸化物の比表面積としては特に制限されないが、0.1〜2m2/gであることが好ましく、0.5〜1m2/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では、貴金属との相互作用が小さくなるとともに、酸素貯蔵能が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粒子径が小さな粒子が増加し、耐熱性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0031】
次に、上記本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物を製造するための方法として好適に採用することが可能な本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法について説明する。
【0032】
本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程(第一工程)と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程(第二工程)とを含むことを特徴とする方法である。
【0033】
本発明にかかるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末は、セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるものである。このようなセリアとジルコニアの含有比率が前記範囲外となる場合には、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物において、遊離したセリアあるいはジルコニアがパイロクロア相型の規則配列相以外の別の相として共存し、パイロクロア相の形成のために何ら寄与しない。すなわち、このようなセリアの含有比率が前記下限未満では、ジルコニアの含有比率が高くなり過ぎて、還元処理工程においてジルコニアが遊離し、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相を十分に形成させることが困難となり、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素貯蔵能が低下する。他方、前記セリアの含有比率が前記上限を超えると、遊離したセリアが混在した状態となる。なお、このような遊離したセリアは酸素貯蔵能にはほとんど寄与しない。
【0034】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末としては、セリアとジルコニアとが共存したものであればよく、特に制限されず、セリア−ジルコニア固溶体の粉末であっても、セリア粉末とジルコニア粉末の混合物であってもよい。このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末として、セリア粉末とジルコニア粉末の混合物を用いる場合には、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点から、セリア粉末及びジルコニア粉末が十分に微粉砕された微細なものであって且つその微細な各粉末が高度に分散、混合された状態のものを用いることが好ましい。なお、このようなセリア粉末及びジルコニア粉末の混合物を用いる場合には、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点から、各粉末の平均粒子径は100〜1000nm程度であることが好ましい。
【0035】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末としては、パイロクロア相型の規則配列相をより十分に形成させるという観点からは、セリアとジルコニアとが原子レベルで混合された固溶体を用いることがより好ましい。また、このようなセリアとジルコニアの固溶体の粉体としては、平均粒子径が2〜100nm程度であることが好ましい。
【0036】
また、このようなセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を製造する方法は特に制限されず、例えば、いわゆる共沈法を採用して、セリアとジルコニアの含有比率が上記含有比率の範囲内となるようにして前記複合酸化物粉末を製造する方法や、微細なセリア粉末とジルコニア粉末とをセリアとジルコニアの含有比率が上記含有比率の範囲内となるようにして混合して前記複合酸化物粉末を製造する方法等が挙げられる。前記共沈法としては、例えば、セリウムの塩(例えば、硝酸塩)とジルコニウムの塩(例えば、硝酸塩)とを含有する水溶液を用い、アンモニアの存在下で共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を濾過、洗浄した後に乾燥し、更に焼成後、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕して、セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を得る方法等が挙げられる。なお、前記セリウムの塩とジルコニウムの塩とを含有する水溶液は、得られる複合酸化物粉末中のセリアとジルコニアの含有比率が55:45〜49:51となるようにして調製する。また、このような水溶液には、必要に応じて、セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩や、界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)等を添加してもよい。
【0037】
次に、各工程について説明する。本発明においては、先ず、前記複合酸化物粉末を還元処理して複合酸化物前駆体を得る(第一工程)。
【0038】
このような還元処理の温度条件は、1500℃以上1900℃以下であり、1600℃以上1850℃以下とすることがより好ましく、1650℃以上1800℃以下とすることが更に好ましく、1700℃以上1800℃以下とすることが特に好ましい。このような還元処理の温度条件が前記下限未満では、パイロクロア相型の規則配列相は形成されるが、結晶子の平均粒子径を十分な大きさとすることができないため、形成される結晶相の構造安定性が低下し、耐熱性が低下する。すなわち、前記温度条件が前記下限未満では、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物を、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱した場合に、前記パイロクロア相型の規則配列相が加熱前と比較して50%以上残存するようなセリア−ジルコニア系複合酸化物を得ることができなくなる。なお、このような加熱処理の際の温度条件は、前記温度範囲内において、より高温にする程、より安定化された結晶構造を持つセリア−ジルコニア系複合酸化物が得られる傾向にある。また、このような還元処理の温度条件が前記上限を超えると、還元ガスのCOとジルコニア(ZrO2)が反応してパイロクロア相が分解してしまう傾向にある。
【0039】
また、前記還元処理の方法は、還元性雰囲気下で前記複合酸化物粉末を1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱処理することが可能な方法であればよく、特に制限されず、例えば、真空加熱炉内に前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を設置し、真空引きした後に、炉内に還元性ガスを流入させて炉内の雰囲気を還元性雰囲気とし、1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱して還元処理を施す方法や、黒鉛製の炉を用い、炉内に前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を設置し、真空引きした後、1500℃以上1900℃以下の温度条件で加熱して、炉体及び加熱燃料等から発生するCOやHC等の還元性ガスにより炉内の雰囲気を還元性雰囲気とし、還元処理を施す方法等が挙げられる。なお、前述の黒鉛炉を用いる場合においても、還元性ガスを炉内に流入させて還元性雰囲気しながら加熱してもよい。
【0040】
また、このような還元性雰囲気を達成させるために用いる還元性ガスとしては、特に制限されず、CO、HC、H2、その他の炭化水素ガス等の還元ガスを適宜用いることができる。また、このような還元性ガスの中でも、より高温で還元性処理をした場合に炭化ジルコニウム(ZrC)等の複生成物が生成されることを防止するという観点からは、炭素(C)を含まないものを用いることがより好ましい。このような炭素(C)を含まない還元性ガスを用いた場合には、ジルコニウム等の融点に近いより高い温度条件での還元処理が可能となるため、結晶相の構造安定性をより十分に向上させることが可能となる。
【0041】
また、このような還元処理の際の加熱時間としては特に制限されないが、0.5〜5時間程度であることが好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では、前記複合酸化物粉末の結晶子径を十分に大きくすることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、十分に粒成長が進み、それ以上の操作が無駄となるため経済性が低下する傾向にある。
【0042】
また、本発明においては、前記還元処理を施す前に、前記セリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を100MPa以上(より好ましくは200〜400MPa)の圧力でプレスすることが好ましい。このようにしてプレスした後の前記複合酸化物粉末(プレス成形体)を用いることで、前記複合酸化物粉末の粒度の均一性が向上し、前記還元処理中の加熱によって、より焼結が進み易くなり、表面エネルギーが放出され易くなって結晶構造がより安定化される傾向にある。また、前記プレス圧が前記下限未満では、プレスによる効果を十分に得られない傾向にある。なお、このようなプレスの方法としては特に制限されず、静水圧プレス等の公知のプレス方法を適宜採用できる。
【0043】
次に、第二工程について説明する。すなわち、本発明においては、前記還元処理(第一工程)後に、得られた複合酸化物前駆体に対して、酸化処理を施し、セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る(第二工程)。
【0044】
このような酸化処理の方法は特に制限されず、還元処理して得られた複合酸化物前駆体中の金属元素を酸化することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、酸化雰囲気(例えば、空気)中において前記複合酸化物前駆体を加熱処理する方法を好適に採用することができる。また、このような酸化処理の際の加熱温度の条件としては特に制限されないが300〜800℃程度であることが好ましい。さらに、前記酸化処理の際の加熱時間としては特に制限されないが0.5〜5時間であることが好ましい。
【0045】
このようにして得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が十分に形成され、しかも、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱した場合においても、前記パイロクロア相型の規則配列相が加熱前と比較して50%以上残存する。従って、得られるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なものとなる。
【0046】
以上、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法について説明したが、以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0047】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とするものである。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、高温条件下で使用した場合においても含有するセリア−ジルコニア系複合酸化物の酸素の吸放出能の十分に維持されることから、高い触媒活性を発揮できる。
【0048】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の好適な例としては、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含む担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられる。また、このような担体に貴金属を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記セリア−ジルコニア系複合酸化物の粉末(担体)を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成する方法を採用してもよい。また、前記担体に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0049】
さらに、上記本発明の排ガス浄化用触媒の好適な他の例としては、触媒担体微粒子と、前記触媒担体微粒子に担持された貴金属とからなる第一触媒の周囲に、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置してなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような触媒担体微粒子としては特に制限されず、排ガス浄化用触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物や金属酸化物複合体からなる担体(例えば、アルミナ粒子、アルミナ/セリ
アからなる粒子、アルミナ/セリア/ジルコニアからなる粒子等)を適宜用いることができる。また、このような触媒担体微粒子の平均粒子径としては特に制限されないが5〜100nmであることが好ましい。また、このような触媒担体微粒子に貴金属を担持させる方法としては、前述の方法を採用することができる。また、前記触媒担体微粒子に担持させる貴金属の量は特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量担持させればよく、0.01質量%以上とすることが好ましい。また、このような第一触媒の周囲に上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物を配置する方法は特に制限されず、例えば、第一触媒と上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物とを混合する方法を採用することができる。さらに、より高い触媒活性を得るという観点からは、上記本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物が高度に分散された状態で前記第一触媒の周囲に配置されていることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(合成例1)
セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50のセリアジルコニア固溶体粉末を調製した。すなわち、先ず、CeO2換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液49.1gと、ZrO2換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液54.7gと、ノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)1.2gとをイオン交換水90ccに溶解し後、NH3が25質量%のアンモニア水を陰イオンに対して1.2倍当量添加し、共沈殿を生成し、得られた共沈物を濾過、洗浄した。次に、得られた共沈物を110℃で乾燥した後、1000℃で5時間大気中にて焼成してセリウムとジルコニウムの固溶体を得た。その後、前記固溶体を粉砕機(アズワン社製の商品名「ワンダーブレンダー」)を用いて平均粒子径が1000nmとなるように粉砕して、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50のセリアジルコニア固溶体粉末を得た。
【0052】
(合成例2)
硝酸セリウム水溶液の使用量を58.9gとし、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液の使用量を43.7gとした以外は合成例1と同様にして、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が60:40のセリアジルコニア固溶体粉末を調製した。
【0053】
(実施例1)
先ず、セリアとジルコニアの含有モル比(CeO2:ZrO2)が50:50である合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末50gを、ポリエチレン製のバッグ(容量0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。次に、静水圧プレス装置(日機装社製の商品名「CK4−22−60」)を用いて、前記バッグに対して静水圧プレス(CIP)を300MPaの圧力で1分間行って成形し、セリアジルコニア固溶体粉末の固形状原料を得た。なお、この操作を複数回行って10個の固形状原料を成形した。
【0054】
次に、プレス後のバッグからそれぞれ取り出した前記固形状原料10個を、黒鉛製の円筒形容器(内容積:直径15cm、高さ20cm)に詰め、黒鉛製の蓋をした。次いで、前記円筒形容器を、炉内が黒鉛性の断熱材及び発熱体からなる炉内(黒鉛炉)に設置した。その後、前記炉内をディフュージョンポンプで0.01Torrまで真空引きした後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス100容量%の還元雰囲気とした。次に、前記炉内の温度を1700℃にして前記固形状試料を5時間加熱して還元処理を施し、複合酸化物前駆体を得た。その後、炉内の温度が50℃となるまで炉冷し、炉から前記複合酸化物前駆体を取り出した。そして、得られた複合酸化物前駆体を、大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、セリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が5μmの粉末とした。
【0055】
(実施例2)
前記還元処理時の炉内の温度を1500℃とした以外は、実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が2μmの粉末とした。
【0056】
(実施例3)
静水圧プレス(CIP)を行わず、合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末500gを前記円筒形容器に直接詰めた以外は、実施例1と同様にしてセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0057】
(比較例1)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が5μmの粉末とした。
【0058】
(比較例2)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例2と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が2μmの粉末とした。
【0059】
(比較例3)
合成例2で得られたセリアジルコニア固溶体粉末(CeO2:ZrO2=60:40)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0060】
(比較例4)
静水圧プレス(CIP)を行わずに合成例1で得られたセリアジルコニア固溶体粉末500gを前記円筒形容器に直接詰め、前記還元処理時の炉内の温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にして比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を得た。なお、得られたセリア−ジルコニア複合酸化物は乳鉢で粉砕し、平均粒子径が1μmの粉末とした。
【0061】
(実施例4〜6及び比較例5〜8)
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物をそれぞれ担体として用い、各複合酸化物に対して、蒸発乾固法により担持量が0.2質量%となるようにして貴金属をそれぞれ担持して排ガス浄化用触媒を製造した。
【0062】
[セリア−ジルコニア複合酸化物の特性評価]
<X線回折(XRD)測定>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、測定に際しては、測定試料として、複合酸化物の初期品(試料1)、大気中950℃で5時間酸化したもの(試料2)、大気中1000℃で5時間酸化したもの(試料3)、大気中1100℃で5時間酸化したもの(試料4)をそれぞれ準備した。そして、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−2100」を用いて、各実施例及び各比較例で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを測定した。得られた結果を図1〜図6(図1:実施例1、図2:実施例2、図3:実施例3、図4:比較例1、図5:比較例2、図6:比較例3)に示す。なお、残存率は、初期品(試料1)のX線回折パターンの2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置におけるベースラインからのピークの高さをそれぞれ100とした場合に、試料2〜4のX線回折パターンにおいて、それらの位置におけるピークの高さが初期品と比較して何%残存するかをそれぞれ求め、これを平均化することによって算出する。
【0063】
図1〜3に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、それぞれ初期品(試料1)において、2θ角が14°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有する結晶の配列構造(φ’相型の規則配列相)が確認された。また、実施例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、初期品(試料1)と比較した試料2〜3のφ’相型の規則配列相の残存率が、それぞれ50%以上となっていることがX線回折パターンから確認された。更に、実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、1100℃で5時間加熱した試料4においても、φ’相型の規則配列相の残存率が、初期品(試料1)と比較して50%以上となっていることがX線回折パターンから確認された。一方、比較例1〜3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物においては、図4〜6に示す結果からも明らかなように、それぞれ初期品(試料1)ではφ’相型の規則配列相を有することが確認されたが、大気中950℃で5時間酸化した後の試料2のφ’相型の規則配列相の残存率が、試料1と比較して50%未満となっていた。このような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)は、結晶相の安定性が十分に高いことが確認された。
【0064】
なお、同様の測定を比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物に対して行ったところ、初期品ではφ’相型の規則配列相を有することが確認されたが、大気中1000℃で5時間酸化した後に、φ’相型の規則配列相の残存率が初期品と比較して50%未満であった。
【0065】
<走査型電子顕微鏡(SEM)による観察>
実施例1〜3及び比較例4で得られた粉砕前のセリア−ジルコニア複合酸化物を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。各セリア−ジルコニア複合酸化物のSEM像を図7〜14(図7及び8:実施例1、図9及び10:実施例2、図11及び12:実施例3、図13及び14:比較例4)に示す。
【0066】
図7〜14に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3及び比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の結晶子の平均粒子径は、それぞれ5μm(実施例1)、3μm(実施例2)、8μm(実施例3)、0.1μm(比較例4)であることが確認された。このような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、結晶子のサイズが大きく、これにより結晶構造の安定化が向上されるものと推察される。
【0067】
<酸素吸放出量の測定試験1>
実施例4〜6及び比較例5〜8で得られた排ガス浄化用触媒(初期品)をそれぞれ熱量分析計(TG:島津製作所社製の商品名「TGA−5D」)の試料セルに設置し、500℃の温度条件下において、触媒15mgに対して100ml/minの流量で、H2(20容量%)及びN2(80容量%)からなる還元ガスと、O2(25%)容量%及びN2(75容量%)からなる酸化ガスを10分ごとに交互に10分間流し、前述の熱重量分析計を用いて、可逆的重量変化から500℃におけるセリウム1mol当りの酸素の吸放出量(mol−O2/mol−Ce)を算出した。得られた結果を表1に示す。また、実施例4〜6で得られた排ガス浄化用触媒及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒のセリウム1mol当りの酸素の吸放出量のグラフを図15に示す。
【0068】
<酸素吸放出量の測定試験2>
先ず、実施例4〜6及び比較例5〜8で得られた排ガス浄化用触媒に対して、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する耐久試験を行った。次に、耐久試験後の各触媒を用い、上述の酸素吸放出量の測定試験1と同様にして500℃における酸素の吸放出量(耐久試験後)を算出した。得られた結果を表1に示す。また、実施例4〜6で得られた排ガス浄化用触媒及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒の酸素の吸放出量のグラフを図15に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1及び図15に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られた本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物を担体として用いて得られた排ガス浄化用触媒(実施例4〜6)は、耐久試験後においても十分に高い酸素吸放出能を発揮できることが確認された。これに対して、比較例1〜4で得られた比較のためのセリア−ジルコニア複合酸化物を用いて得られた排ガス浄化用触媒(比較例5〜8)においては、耐久試験後に酸素吸放出量が低下し、十分な酸素吸放出能が得られなくなることが確認された。また、図15に示す結果から、還元処理時の温度条件が1200℃と低い場合には、耐久試験後において酸素吸放出能の低下を抑制できないことが分かった。
【0071】
以上のような結果から、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、セリア−ジルコニア複合酸化物中にパイロクロア相型の規則配列相が形成され、且つその規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱する耐久試験後において加熱前と比較して50%以上残存していることから、結晶相の安定性が高いことが確認された。また、本発明のセリア−ジルコニア複合酸化物(実施例1〜3)においては、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することができることが確認された。更に、製造時にセリア−ジルコニア複合体粉末をプレス加工することにより、より高い効果が得られることが確認された。このような結果は、プレスを行うことにより、原料のセリア−ジルコニア複合体粉末の粒度分布がより均一なものとなって、形成される結晶相の安定性が向上するためであると推察される。
【0072】
なお、上述の非特許文献1(佐々木巌著、学位論文「Ce/Zr比を変化させたセリアジルコニア系化合物の酸素吸放出特性と結晶構造に関する研究」、2004年発行、150〜170頁)の記載から、セリアとジルコニアの複合酸化物においては、セリアの含有率が49モル%未満になると、セリア(CeO2)と化合してCe2Zr2O7になるジルコニア(ZrO2)以外の過剰のジルコニアは、遊離のZrO2となることが分かる。なお、このような遊離のZrO2は、酸素貯蔵能の発現に全く関与しない相である。そのため、セリアとジルコニアの複合酸化物においては、セリアの含有比率が49モル%未満になると酸素貯蔵能が低下する傾向にあることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、耐熱性が十分に高く、長時間高温に晒された後においても十分に優れた酸素貯蔵能を発揮することが可能なセリア−ジルコニア系複合酸化物及びその製造方法、並びにそのセリア−ジルコニア系複合酸化物を用いた排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【0074】
したがって、本発明のセリア−ジルコニア系複合酸化物は、耐熱性に優れるため、300℃以上の温度条件で用いる排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図3】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】比較例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図5】比較例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】比較例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の試料1〜4のX線回折パターンを示すグラフである。
【図7】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(反射電子像)である。
【図8】実施例1で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(二次射電子像)である。
【図9】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(反射電子像)である。
【図10】実施例2で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(二次射電子像)である。
【図11】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12】実施例3で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図13】比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図14】比較例4で得られたセリア−ジルコニア複合酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図15】実施例4〜6及び比較例8で得られた排ガス浄化用触媒のセリウム1mol当りの酸素の吸放出量を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項2】
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とする請求項1に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項3】
前記セリアと前記ジルコニアとの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項4】
セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項5】
セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程とを含むことを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記還元処理の温度条件が1700℃以上1800℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を更に含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項1】
セリア及びジルコニアの複合酸化物を含み、前記複合酸化物中にセリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されており、且つ、
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1000℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項2】
前記パイロクロア相型の規則配列相が、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後に、加熱前と比較して50%以上残存していることを特徴とする請求項1に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項3】
前記セリアと前記ジルコニアとの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項4】
セリウム以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物。
【請求項5】
セリウムイオンとジルコニウムイオンとによりパイロクロア相型の規則配列相が形成されたセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法であって、
セリアとジルコニアの含有比率がモル比([セリア]:[ジルコニア])で55:45〜49:51の範囲にあるセリア及びジルコニアの複合酸化物粉末を、1500℃以上1900℃以下の温度条件で還元処理して複合酸化物前駆体を得る工程と、前記複合酸化物前駆体を酸化処理して前記セリア−ジルコニア系複合酸化物を得る工程とを含むことを特徴とするセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記還元処理の温度条件が1700℃以上1800℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記還元処理前の前記複合酸化物粉末を100MPa以上の圧力でプレスする工程を更に含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図15】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図15】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−84061(P2009−84061A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251549(P2007−251549)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】
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