説明

セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置

【課題】逆波長分散であり、かつ、ヘイズが小さいセルロースアシレートフィルムの提供。
【解決手段】総アシル置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートと、ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有し、両末端がともに−OH基であり、かつ25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである高分子量添加剤とを含有し、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) ΔRe>0
式(2) ΔRe=Re(630)−Re(430)
(式(2)中、Re(630)は波長630nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re(430)は波長430nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。詳しくは、波長分散性およびヘイズを改良した、セルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、光学補償フィルムを用いた楕円偏光板を組み込んだ液晶表示装置が知られている。このような光学用途のフィルムの中でも、総アシル置換度が低いセルロースアシレート系のフィルムは光学特性が良好であるため用いられてきている。このような総アシル置換度が低いセルロースアシレート系のフィルムを液晶表示装置用の偏光板保護フィルム等として用いるためには、所望の光学特性を発現させるために各種添加剤を加えることが一般的であった。例えば光漏れ、気泡発生および位置ずれを解消するために、偏光板保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムにグリコールエステル系の可塑剤を加えてもよいことが記載されている(特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1では、インヘレント粘度が0.2〜2.0である特定の脂肪族−芳香族ポリエステル共重合体を添加剤として用いる態様が開示されており、このような特性を満たすポリエステル系添加剤はセルロースアシレートとの相溶性が良好であることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、特定の構造であり、特定の分子量の範囲のジカルボン酸とジオールからなる高分子量可塑剤を用いる態様が開示されており、このような特性を満たす高分子量可塑剤はヘイズがある程度改善されることが開示されている。一方、高分子量可塑剤の両末端はカルボン酸や−OH基が残らないように封止されていることが好ましいことが開示されており、また、該高分子量可塑剤のインヘレント粘度や、高分子量可塑剤とセルロースアシレート樹脂の総アシル置換度との好ましい組合せについては検討されていなかった。
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載されている添加剤を用いたフィルムはヘイズの改善が依然として満足いくものではなかった。また、近年、波長630nmにおける面内方向のレターデーションの値から、波長430nmにおける面内方向のレターデーションの値を引いた値(以下、波長分散とも言う)が正であること(いわゆる逆波長分散であること)が、パネル形態でのカラーシフト改良の観点から求められてきているが、いずれの文献においても添加剤の選択の検討がまだまだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5559171号
【特許文献2】特開2009−1555454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、これまで特許文献1および2においてヘイズの改良についてはある程度議論されてきたが、波長分散が大きく、かつ、ヘイズが小さいフィルムを得ることができる添加剤については検討されておらず、また選択基準の手掛かりとなるパラメータについても知られていなかった。
【0008】
そこで、本発明者らは、逆波長分散性と低ヘイズ化とを両立したフィルムを得ることを目的として、鋭意検討することとした。すなわち、本発明の目的は、逆波長分散であり、かつ、ヘイズが小さいセルロースアシレートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、添加剤を鋭意検討した結果、添加剤として特定の範囲にインヘレント粘度を制御し、両末端がいずれも封止されていないポリエステル系添加剤と、特定の範囲の置換度のセルロースアシレートの組み合わせにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、以下の構成によって上記課題が達成されることを見出した。
【0010】
[1] 総アシル置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートと、ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有し、両末端が−OH基または−COOH基のいずれかであり、かつ25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである高分子量添加剤とを含有し、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) ΔRe>0
式(2) ΔRe=Re(630)−Re(430)
(式(2)中、Re(630)は波長630nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re(430)は波長430nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[2] 前記高分子添加剤の数平均分子量が650〜5000であることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[2−1] 前記高分子添加剤が、数平均分子量が500以下の成分を5〜20質量%含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[2−2] 前記セルロースアシレートに対する前記高分子量添加剤の添加量が10質量部を超えることを特徴とする[1]〜[2−1]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3] 波長590nmにおける面内方向のレターデーションReが30nm<Re<100nmであり、波長590nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが80nm<Rth<300nmであることを特徴とする[1]〜[2−2]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[4] ヘイズが1.0以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする偏光板。
[6] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逆波長分散であり、かつ、ヘイズが小さい本発明のセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムやその製造方法、それに用いる添加剤などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。なお、本明細書中、ポリエステルポリオールとは、2価アルコールであるグリコールユニットと、2価カルボン酸であるジカルボン酸ユニットとが交互にエステル結合により重合している化合物を表す。
【0013】
[セルロースアシレートフィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、総アシル置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートと、ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有し、両末端が−OH基または−COOH基のいずれかであり、かつ25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである高分子量添加剤とを含有し、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1) ΔRe>0
式(2) ΔRe=Re(630)−Re(430)
(式(2)中、Re(630)は波長630nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re(430)は波長430nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
以下、本発明のフィルムの好ましい態様を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0014】
<セルロースアシレート樹脂>
前記セルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートは、全アシル基の置換度が2.0〜2.60であれば特に定めるものではない。セルロースアシレートのアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0015】
(セルロースアシレート)
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がエステル化している割合(各位において100%エステル化している場合は、合計して全アシル置換度3)を意味する。
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.0〜2.6であり、2.1〜2.6であることが好ましく、2.2〜2.6であることがより好ましく、特に好ましくは2.35〜2.50である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.08〜0.66が好ましく、より好ましくは0.15〜0.60、さらに好ましくは0.20〜0.45である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は全アシル置換度に対する6位のアシル置換度の割合であり、以下「6位のアシル置換率」とも言う。
【0016】
前記セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。前記セルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、その他のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。2位、3位および6位の水酸基のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位および6位の水酸基のプロピオニル基またはブチリル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.0〜2.6であり、2.1〜2.6であることが好ましい。DSA+DSBの値は2.2〜2.6、かつDSBの値は0.10〜1.70であることがより好ましく、さらに好ましくはDSA+DSBの値は2.35〜2.50、かつDSBの値は0.5〜1.2である。DSAとDSBの値を上記の範囲にすることで波長分散のある程度大きいフィルムが得ることができ、好ましい。
さらにDSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。これらのフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0017】
本明細書におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0018】
本明細書におけるセルロースアシレートのアシル基はアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)であることが好ましい。
【0019】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0020】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0021】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0022】
本発明に用いるセルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0023】
本発明では、アシル置換度が上記のように低いセルロースアシレートを含むセルロースアシレートフィルムの波長分散特性を改善することができる。
【0024】
<高分子量添加剤>
本発明のフィルムは、ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有し、両末端が−OH基または−COOH基のいずれかであり、かつ25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである高分子量添加剤を含む。
【0025】
本発明に用いられる高分子量添加剤は、ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有する。前記高分子量添加剤は、ジカルボン酸を構成するグリコールユニットと、ジオールを構成するグリコールユニットを含むポリエステルポリオール類であることが好ましい。
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれるジオール類との反応によって得られるものなどが挙げられる。
これに対し、本発明では上述の一般的なポリエステルポリオール類の中からインヘレント粘度が特定の範囲であり、両末端の封止がされていないポリエステルポリオールを選択することで、セルロースアシレートフィルムを逆波長分散とし、かつヘイズを小さくすることができ、より好ましくは波長分散を大きくすることができる。
【0026】
(インヘレント粘度)
前記高分子量添加剤は、25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである。このようなインヘレント粘度の範囲の高分子量添加剤を前記総アシル置換度の範囲のセルロースアシレートと併用することで、フィルムのヘイズを小さくすることができる。
前記インヘレント粘度は、溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)を用いて、前記高分子量添加剤の濃度が0.5g/100mlとなるように溶解させ、温度25℃において測定した。
【0027】
前記高分子量添加剤は25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.15dl/gであることが好ましく、0〜0.1dl/gであることが特に好ましい。
【0028】
(グリコールユニット)
本発明に用いられる高分子量添加剤のグリコールユニットは、平均炭素数が2.0〜3.0であることが好ましく、2.2〜3.0であることがより好ましく、2.4〜3.0であることが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いられる高分子量添加剤のグリコールユニットとは、隣り合うエステル結合の間に存在するジオール残基のことを言う。この中でも、本発明に用いられる高分子量添加剤のグリコールユニットは、脂肪族ジオール残基、アルキルエーテルジオール残基および芳香族環含有ジオール残基であることが好ましく、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるグリコールを反応して得られるものであることがより好ましい。
【0030】
前記炭素数2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、より好ましくはエチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエチレングリコール(1,2−エタンジオール)およびプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール)である。すなわち、前記ポリエステルポリオールがエチレングリコールユニットおよびポリエチレングリコールユニットを含むことがグリコールユニットの平均炭素数を2.3〜3.0に調整する観点やセルロースエステルとの相溶性、光学発現性の観点から特に好ましい。また、プロピレングリコールの中でも1,2−プロパンジオールのみを含むことが、エチレングリコールとプロピレングリコールを併用した際にジカルボン酸ユニット間の間隔をグリコールユニットの炭素鎖の長さを炭素数2と一定にでき、ジカルボン酸ユニットの結晶化を抑制し易くできる観点から好ましい。
【0031】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
これらのアルキルエーテルジオールや芳香族ジオールは、前記脂肪族ジオールとの混合物として用いることができる。この場合、例えばエチレングリコールとジエチレングリコールの混合物を用いることで前記高分子量添加剤のグリコールユニットの平均炭素数の好ましい範囲を満たすようにしてもよい。
【0032】
(ジカルボン酸ユニット)
本発明に用いられる高分子量添加剤のジカルボン酸ユニットとは、隣り合うエステル結合の間に存在するジカルボン酸残基のことを言う。この中でも、本発明に用いられる高分子量添加剤のジカルボン酸ユニットは、脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸を反応して得られるものであることがより好ましい。
【0033】
本発明に用いられる高分子量添加剤のジカルボン酸ユニットは、脂肪族ジカルボン酸ユニットでも、芳香族ジカルボン酸ユニットでも、両者を組み合わせてもよく、その組み合せは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。本発明に用いられる高分子量添加剤のジカルボン酸ユニットは、芳香族ジカルボン酸ユニットであることが光学発現性および偏光子耐久性の観点から好ましい。
本発明に用いられる高分子量添加剤のグリコールユニットは、ジカルボン酸ユニットの平均炭素数が5.6以上であることが光学発現性の観点から好ましく、5.6〜8.0であることがより好ましく、5.8〜7.5であることが特に好ましい。
【0034】
本発明で好ましく用いられる炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0035】
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
【0036】
(封止)
本発明に用いられる高分子両添加剤は、両末端に−OH基または−COOH基のいずれかを有する。従来、ポリエステルポリオールの両末端はさらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、−OH基または−COOH基(特に−OH基)末端の封止を実施することが、保存性などの点で好ましいとされていた。しかしながら本発明では、両末端の−OH基または−COOH基がいずれも封止されていないことが、フィルムのヘイズを小さくする観点から好ましい。
さらに、本発明にでは、特定の置換度の範囲のセルロースアシレート樹脂と、このような態様の高分子可塑剤を組み合わせたことで、相溶性および光学発現性の観点からも好ましいフィルムを得ることができる。
【0037】
一方、前記高分子両添加剤は、下記式(11)で表される両末端ヒドロキシル基封止率は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましく、0%であることが最も好ましい。
【0038】
式(11):
両末端ヒドロキシル基封止率(%)=100×(ポリエステルポリオールの両末端に存在する封止ヒドロキシル基の総数)/{(ポリエステルポリオールの両末端に存在する未封止ヒドロキシル基の総数)+(ポリエステルポリオールの両末端に存在する封止ヒドロキシル基の総数)}
【0039】
【表1】

【0040】
表1中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、BGはブチレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、をそれぞれ示している。
【0041】
セルロースアシレート樹脂に対する前記高分子量可塑剤の使用量(含有量でもよい)は、10質量%より多いことがセルロースアシレートフィルムの波長分散をより大きくする観点から好ましく、10質量%を超え30質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは15質量%〜25質量%の範囲であり、特に好ましくは15質量%〜20質量%の範囲である。
【0042】
前記高分子量可塑剤の分子量は特に制限はないが、重量平均分子量で650〜5000であることが好ましく、650〜3500であることがより好ましく、650〜3000であることが特に好ましい。
なお、前記高分子量可塑剤の重量平均分子量の測定は、下記方法により測定および算出した。
分子量の異なるポリスチレンを標準物質としてHPLC(GPC)にて測定する。
カラム : Shodex KF−802(L300mm×φ8.0mm)
移動相 : THF
検出器 : RI
カラムオーブン: 40℃
RI : 40℃
【0043】
(その他の添加剤)
前記セルロースアシレートフィルム中には、本発明の趣旨に反しない限りにおいてその他の添加剤、例えば前記高分子量添加剤以外の低分子のRth制御剤、Re制御剤、剥離防止剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を加えることもできる。ここで、本発明における添加剤とは、前記セルロースアシレートフィルムの諸機能の向上等を目的として添加される成分であり、セルロース樹脂に対し、1質量%以上の範囲で含まれている成分をいう。すなわち、不純物や残留溶媒等は、本発明における添加剤ではない。以下に本発明に含まれていてもよい添加剤について具体的に説明するが、本発明は以下の態様に限定されない。すなわち、本発明の趣旨に反しない限りにおいてさらにその他公知の添加剤を含んでいてもよく、例えば特開2006−64803号、特開2007−3767号、特開2007−86254号公報に含まれる添加剤を用いることができる。
【0044】
前記高分子量添加剤以外の低分子のRth制御剤:
前記セルロースアシレートフィルム中には、前記高分子量添加剤以外の低分子のRth制御剤を含んでいてもよく、例えば、5〜25重量%の割合で含んでいてもよく、さらには、10〜20重量%の割合で含んでいてもよい。Rth制御剤を含めることにより、延伸時にReが高く、Rthの低いNzファクター(Nz=Rth/Re+0.5)の低いフィルムを作製することができる。Rth制御剤としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り公知のものを採用できる。例えば、エステル系可塑剤が挙げられ、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のセルロースアシレートよりも疎水的なものを単独あるいは併用するのが好ましい。これらの可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0045】
Re発現剤:
本発明では、レターデーション発現剤を含んでいてもよい。レターデーション発現剤を採用することにより、低延伸倍率で高いRe発現性を得られる。レターデーション発現剤の種類としては、特に定めるものではないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0046】
レターデーション発現剤としては、例えば特開2004−50516号公報、特開2007−86748号公報に記載されている化合物を用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
円盤状化合物としては、例えば欧州特許出願公開第0911656A2号明細書に記載の化合物、特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2008−150592号公報[0097]〜[0108]に記載されるトリフェニレン化合物も好ましく用いることもできる。
【0047】
円盤状化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
【0048】
前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができ、例えば特開2008−150592号公報[0110]〜[0127]に記載される棒状化合物を好ましく用いることができる。
【0049】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0050】
剥離促進剤:
前記セルロースアシレートフィルムには、剥離促進剤を加えることが好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1重量%の割合で含めることができる。剥離促進剤としては、特開2006−45497号公報の段落番号0048〜0069に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0051】
マット剤:
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用されてもよい微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0052】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0053】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0054】
2次平均粒子径の小さな粒子を有するフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子がさらに再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gがさらに好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0055】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0056】
紫外線吸収剤:
前記セルロースアシレートフィルムには、紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10質量%以下であることが望ましく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。用いられるものとしては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸エステル系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレ−ト系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のド−プ(本発明では溶液流延に用いられるセルロースエステル溶液をドープということもある。)への添加方法は、アルコ−ルやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加するか、または直接ド−プ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロ−スエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからド−プに添加する。本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロ−スエステルに対し、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは、0.5〜2.0質量%、よりさらに好ましくは0.8〜2.0質量%である。
【0057】
(ヘイズ)
本発明のフィルムは、ヘイズが低いことを特徴とする。このようなヘイズが小さいフィルムは不均一構造が少なく、光漏れの少ないフィルムを作製できるため好ましい。
本発明のフィルムはヘイズが1.0%以下であり、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。
【0058】
(膜厚)
前記セルロースアシレートフィルムの厚さは、用いる偏光板の種類等によって適宜定めることができるが、好ましくは30〜100μmであり、より好ましくは40〜80μmである。フィルムの厚さを60μm以下とすることにより、コストを下げることができ好ましい。
【0059】
(光学特性)
・波長分散:
本発明のフィルムは、波長分散が下記式(1)を満たす。
式(1) ΔRe>0
式(2) ΔRe=Re(630)−Re(430)
(式(2)中、Re(630)は波長630nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re(430)は波長430nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
前記式(1)を満たすセルロースアシレートフィルムは、パネル形態でのカラーシフト改良の点で優れる。
本発明のフィルムは、前記波長分散がΔRe>2.0を満たすことがより好ましい。
【0060】
・ReおよびRth:
本発明のフィルムは、波長590nmにおける面内方向のレターデーションReが30nm<Re<100nmであり、波長590nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが80nm<Rth<300nmであることが好ましい。
前記Reは、30<Re<100nmであることが好ましく、40<Re<80nmであることがより好ましい。
また、Rthは、80<Rth<300nmを満たすことが好ましく、80<Rth<150nmを満たすことがより好ましい。
【0061】
ここで、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0062】
式(A)
【数1】

【0063】
ここで、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。dはフィルム厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d −−− 式(B)
なおこの際、パラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の「アッベ屈折計2−T」)により測定した値を用いた。
【0064】
前記セルロースアシレートフィルムは、延伸されてなることが好ましいが、延伸は、インライン(一貫)で製膜することが好ましい。また、必要に応じて、一旦巻き取ってから別工程で延伸してもよい。さらに、インラインで延伸した後、一旦巻き取り、さらに別工程で延伸してもよい。このような手段によって延伸することにより、ヘイズの低いフィルムを作製することができ、Re/Rthの値が低いフィルムを作製することができる。
【0065】
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、公知のセルロースエステルフィルムを作製する方法等を広く採用でき、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0066】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0067】
一般的な方法でセルロースアシレート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
【0068】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0069】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物は固化する。
【0070】
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアシレートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
【0071】
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアシレート(全アセチル置換度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアシレートの全アセチル置換度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0072】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0073】
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0074】
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0075】
(共流延)
本発明では得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上あるいはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
【0076】
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらの本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0077】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であった。複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。
【0078】
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。
【0079】
共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることが出来る。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていてもよく、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0080】
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。前記セルロースアシレートフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
【0081】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量のさらに好ましい範囲は70質量%以下であり、より好ましくは10質量%〜50質量%、特に好ましくは12質量%〜35質量%である。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
延伸倍率は、1.1〜1.5であることが好ましく、1.15〜1.4であることがより好ましい。また、延伸は縦方向に行っても横方向に行っても両方向に行ってもよく、好ましくは少なくとも縦方向に行う。延伸倍率を10%以上とすることにより、より適切にReを発現させることができ、ボーイングを良好なものとすることができる。また、延伸倍率を50%以下とすることにより、ヘイズを低下させることができる。
溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率Nx、Ny、Nzを本発明の好ましい光学特性の態様の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大きすぎると、Nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、例えばテンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボ−イング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボ−イング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。さらに、互いに直交する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。光学フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなる。光学フィルムの膜厚変動は、±3%、さらに±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ1.2〜2.0倍、0.7〜1.0倍の範囲とすることが好ましい。ここで、一方の方向に対して1.2〜2.0倍に延伸し、直交するもう一方を0.7〜1.0倍にするとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して0.7〜1.0倍の範囲にすることを意味している。
【0082】
一般に、2軸延伸テンターを用いて幅手方向に1.2〜2.0倍の間隔となるように延伸する場合、その直角方向である長手方向には縮まる力が働く。
したがって、一方向のみに力を与えて続けて延伸すると直角方向の幅は縮まってしまうが、これを幅規制せずに縮まる量に対して、縮まり量を抑制していることを意味しており、その幅規制するクリップやピンの間隔を延伸前に対して0.7〜1.0倍の範囲に規制していることを意味している。このとき、長手方向には、幅手方向への延伸によってフィルムが縮まろうとする力が働いている。長手方向のクリップあるいはピンの間隔をとることによって、長手方向に必要以上の張力がかからないようにしているのである。ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0083】
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロ−ル法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた光学フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲であることが好ましい。または、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、さらに±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
【0084】
[偏光板]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用保護フィルムに用いられる。すなわち、本発明の偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚含む。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んだ際に、本発明のセルロースアシレートフィルムの粘着剤層が該液晶表示装置の液晶セルと隣接できるような態様であることが好ましい。
偏光板は偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムのような親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロ−スエステルフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
【0085】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明のセルロースアシレートフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、もしくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明のセルロースアシレートフィルム/液晶セル/本発明のセルロースアシレートフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、さらに視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れた表示装置を提供することができる。特に前記偏光板用保護フィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができる。
【0086】
[液晶表示装置]
液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板であることを特徴とするIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0088】
[測定方法]
本発明では、下記の測定方法により測定を行った。
【0089】
(インヘレント粘度)
測定装置として、自動粘度測定装置(株式会社離合社製)を用いて、明細書中に記載の方法で測定した。
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40
濃度:試料/溶媒=0.5g/100ml
測定温度:25℃
【0090】
(ヘイズ)
セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)で、JIS K−6714に従って測定した。
【0091】
(光学発現性)
KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で上記の方法によりRe、Rthを波長590nmで計測した。
また、同様にしてReを波長440nmおよび630nmで計測し、得られた値からRe(630)−Re(440)の値を波長分散ΔReとして計算した。
【0092】
[実施例:セルロースアシレートフィルムの製膜]
<実施例1〜15および比較例1〜5>
(1)セルロースアシレート
特開平10−45804号、同08−231761号公報に記載の方法でセルロースアシレートを合成し、表2に記載のアシル置換度のセルロースアシレートを調製した。触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、カルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。その後、硫酸触媒量、水分量および熟成時間を調整することで全置換度と6位置換度を調整した。熟成温度は40℃で行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0093】
(2)ドープ調製
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
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表2に記載のセルロースアシレート 100.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0094】
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0095】
<1−3> 高分子量添加剤溶液
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、高分子量添加剤溶液を調製した。ここで、高分子量添加剤の添加量は、表2に示したとおりであり、セルロースアシレートに対する質量%で示している。
【0096】
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高分子量添加剤溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表1に示すA〜Hの高分子量添加剤 下記表2に記載の含有量となる量
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0097】
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、高分子量添加剤溶液をセルロースアシレート樹脂に対して高分子量添加剤が下記表2に記載の含有量となる量を混合し、製膜用ドープを調製した。前記高分子量添加剤やその他の添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部である。
【0098】
(流延)
上述のドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド上の給気温度80℃〜130℃(排気温度は75℃〜120℃)で乾燥させた後、残留溶剤量が25〜35質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、給気温度140℃(排気温度は90℃〜125℃の範囲)のテンターゾーンで、下記表2に記載の延伸倍率で幅方向に延伸して、セルロースアシレートフィルムを製造した。このとき、延伸後の膜厚が下記表2に記載の膜厚になるように、流延膜厚を調整した。その製造適性を判断する目的で、ロール幅1280mm、ロール長2600mmのロールを上記条件で最低24ロール作製した。連続で製造した24ロールの中の1ロールについて100m間隔で長手1mのサンプル(幅1280mm)を切り出して各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムとし、各測定を行った。
【0099】
【表2】

【0100】
表2より、本発明のセルロースアシレートフィルムはΔReが正、すなわち逆波長分散であり、ヘイズが小さいことが分かった。
一方、比較例1および4のフィルムはそれぞれ、実施例2および実施例9でそれぞれ用いた高分子量添加剤BおよびJの両末端をアセチル基で封止した、高分子量添加剤CおよびOをそれぞれ用いた比較例であり、いずれもヘイズが悪化することがわかった。比較例2および3のフィルムは本発明で規定するインヘレント粘度の範囲を上回る高分子量添加剤を用いた比較例であり、実施例11とあわせて比較すると、インヘレント粘度が本発明の範囲を上回ると顕著にヘイズが大きくなってしまうことがわかった。比較例5はセルロースアシレートの総アシル置換度が本発明の範囲を上回るものを用いた比較例であり、ΔReが0nm未満となり、いわゆる順波長分散になってしまうことがわかった。
【0101】
[実施例:偏光板の作成]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。実施例:セルロースアシレートフィルムの製膜、で作製した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。なお、ケン化処理は以下のような条件で行った。
1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。実施例Aで作製したセルロースアシレートフィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
市販のセルローストリアシレートフィルム(フジタックTD80UF、富士フィルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付け、70℃で10分以上乾燥した。
偏光子の透過軸と各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
【0102】
[液晶表示装置の製造]
各実施例のセルロースアシレートフィルムを用いた上記の偏光板を用いて、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成で液晶表示装置を製造した。その結果、色味変化が少なく、高コントラストであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総アシル置換度が2.0〜2.6のセルロースアシレートと、
ジカルボン酸とジオールからなる繰り返し単位を有し、両末端が−OH基または−COOH基のいずれかであり、かつ25℃におけるインヘレント粘度が−0.1〜0.2dl/gである高分子量添加剤とを含有し、
下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1) ΔRe>0
式(2) ΔRe=Re(630)−Re(430)
(式(2)中、Re(630)は波長630nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re(430)は波長430nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項2】
前記高分子添加剤の数平均分子量が650〜5000であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項3】
波長590nmにおける面内方向のレターデーションReが30nm<Re<100nmであり、波長590nmにおける膜厚方向のレターデーションRthが80nm<Rth<300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
ヘイズが1.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚有することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−118222(P2011−118222A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276494(P2009−276494)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】