説明

セルロースパルプ製造中のチップ連続スチーム前処理構造及び方法

【課題】セルロースパルプ製造中のチップのスチーム前処理構造及び方法に関し、スチーム吹き抜けの危険を最低限に低減し、周囲への悪臭ガスの放出を最低限に維持できるようにすること。
【解決手段】スチーム前処理容器1におけるガスの吹き抜けを回避し、悪臭ガスが大気中に解放されることを防止することを目的として、冷却流体を噴射する散布ノズル10がスチーム前処理容器のガス相に配置されている。スチームの吹き抜けの危険が始まった場合には、危険に比例した冷却が行われる。このシンプルな方法で、処理の中断が生じた時に、チップ容器からガスが放出することを回避することができ、それにより、周囲への臭気の解放を最低限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び5の前文に従ってセルロースパルプの製造中にチップを連続スチーム前処理するための構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップからのセルロースパルプの製造に関して、空気が放出できるように、スチームを使ってチップを始めに前処理することが通常望まれる。この処理が満足のいくやり方で実行されると、チップの均等な含浸が促進され、より良い均等な品質を持つチップが得られ、不良品の量が減る。また、全ての空気が放出されていると、チップのカラムを連続蒸解釜に良好に通すことが可能になる。幾つかの旧い従来のシステムでは、大気圧でチップ容器が使用され、その中で、空気を放出させるためにスチームを使ってチップが予め加熱される。これらのシステムからは大量の放出空気が得られ、この空気は、テレビン油、メタノール及び他の爆発性ガスによって汚染されている。仮に、黒液の圧力開放から得られたスチームを使用したとしても、このスチームも、「TRSガス」として知られている硫化物を大量に含んでいる(ここで、「TRS」は、「total reduced sulphur(完全な還元硫黄)」の略称である。)。これらの硫化物は非常に悪臭である。これらのTRSガスは、幾つかある化合物の中で特に、硫化水素(HS)、メチルメルカプタン(CHSH)、硫化ジメチル(CHSCH)、ジメチルジスルフィド(CHSSCH)及び強い悪臭を持つか又は爆発性がある他のガスを含んでいる。硫化水素及びメチルメルカプタンは、黒液の蒸発から大きな度合いで発生し、これらの沸点は、それぞれ−60℃及び+6℃である。このことは、凝縮によってガスからこれらの化合物を分離することが困難であることを意味する。
凝縮によって容易に取り除くことができないガスは、「NCGs」として知られている(ここで「NCG」は、「non-condensable gas(非凝縮性ガス)」の略称である。)。
TRSガスの放出を最低限に抑えるために、しばしば、純粋なスチームが、チップ容器内で加熱のために用いられ、黒液スチームは、チップ容器の後ろに配置された加圧スチーム前処理容器内で最初に使用される。たとえ、黒液スチームを、連続加圧スチーム前処理容器内だけで使用したとしても、これらTRSガスは、例えば、作業の中断中に、チップ容器まで漏れ得る。しかし、スチーム前処理用に純粋なスチームを使用すると、この場合、パルプミルで電気を作るのに利用できるスチームの量が減少するので、費用がかかる。
【0003】
スチームは、特定のスチーム前処理システムにおいてチップベッド全体を通して動かされる。このことは、大量の低濃度弱ガスが得られることを意味しており、前記弱ガスは、「弱ガスシステム」として公知の方法で管理しなければならない。これらのスチーム前処理システムは、しばしば、「吹き抜け(blow-through)」システムとして公知であり、このシステムでは、チップベッドの最上位表面の温度、又はチップの上にあるガス層の温度、若しくはその両方の温度が、周囲温度より相当に高く、通常、60〜100℃である。
これらのシステムの一つ重大な欠点は、供給されるスチームエネルギの主要な部分が、放出ガスと共に放出されることにある。これらのガスは、弱ガスシステムにおいて凝縮され、その結果、大量の低級温水が得られ、しばしば、これらは排水システムに送られ、結果として大きなエネルギ損失になる。
【0004】
従来技術は、ホットスチームを使用するスチーム前処理中に生じる有害で有毒なガスの漏れを最低限に抑えるために必要な課題として、この問題を確認した。通常、チップ容器から破壊システムへの弱ガスの移動と、スチーム前処理容器からのガスの別の排出移動とがあり、後者のガスは、しばしば強ガスとみなされる。通常、弱ガスの濃度は、4容量%より十分に低い値に維持するようにされ、強ガスの濃度は、40容量%より十分に低い値に維持するようにされる。
内部でスチームがチップベッドに吹きかけられる公知のチップ容器では、大量のガスが発生させられ、純粋なスチームか、又は、これらのガスを処置し得る特別なシステムが必要とされる。放出されたガスは、非常に爆発性のある組成物を容易に補足し得る。ガスの濃度が、約4容量%未満か、又は、40容量%を十分に超えている限りは、爆発の危険はない。従って、濃度を4容量%未満に、典型的には、1〜2容量%に維持する弱ガスシステムか、又は、濃度を40容量%より十分に上に維持する強ガスシステムが使用される。従って、弱ガスシステムでは、濃度が4容量%より十分に低く維持され、これには、大量の空気の移動を伴うことが確実にされる。ガスの量を増やすと直ぐに、濃度を臨界レベルに維持するために、それに相当する量の空気を増加しなければならない。
例えば、チップ容器内でスチーム前処理によって1kg/minのNCGsが生成されると、約2容量%の濃度を維持するために、空気の量を、約50kg/minにしなければならない。処理中に何らかの外乱があって、NCGsの量が2又は3kg/minに増加すると、空気の量を、一時的に100又は150kg/minにそれぞれ増加させなければならない。通常、システムは、普通の流れに対応できるように寸法決めされているので、作業の中断中に生じる過剰ガスが、ベントパイプを通して周囲に直接漏れることになる。
【0005】
弱ガスの量を最低限に抑える別の解決手段は、チップ容器を通るチップの流れを制御して、チップ容器を通して適当な栓流が確立するようにすることである。ここで、チップ容器へのスチームの添加は、容器の下方部分にあるチップだけが100℃まで加熱され、同時に、スチーム前処理容器内で確立されているチップレベルの上方のガス層の温度が、本質的に周囲温度に対応するような制御方法で行われる。
この技術は、「コールドトップ」制御として公知であり、それは、Metso Paper社によってDUALSTEAM(商標)容器の名前で市販されているチップ容器及びIMPBIN(商標)の名前で市販されている含浸容器で使用されているチップ容器で使用される。これらのシステムの重大な利点は、これらのシステムが効率的な方法で加熱を行うことにあり、そこでは、供給される熱は全て、処理によって吸収される。これは、スチームが、チップベッドの上側表面を通って吹きぬけてしまい、放出されたスチームを凝縮しなければならず、大きなエネルギ損失が生じる加熱方法とは大違いである。「コールドトップ」制御の別の利点は、処理中に、チップからのテレビン油の損失が生じ得る別のロケーションが確立しないことにあり、このため、本質的に、全てのテレビン油が、蒸解処理から回収される黒液についていくことにある。その後、この黒液の圧力は、フラッシュタンク内で、又は蒸発処理において、従来の方法で解放され得る。
【0006】
爆発性があり毒性があるガスを減らすために、多数の非常に高価な解決方法が明らかにされている。例えば、国際特許公開WO96/32531及び米国特許US6,176,971は、蒸解釜から排出される蒸解液が通常の水から純粋なスチームを発生させる、異なるシステムを開示している。弱ガスのTRS含有量は、チップのスチーム前処理のために完全に純粋なスチームを使用することによって、純粋なスチームがTRSを何も含んでいないので、低減される。しかし、これらのシステムは、必然的に、エネルギ損失を生じさせ、処理装置をより高価なものにする。
【0007】
スウェーデン国特許SE528116(国際公開WO2007/64296)は、コールドトップ制御を使ってチップ容器から放出される弱ガスを処理する実施例を開示している。この場合、吹き抜けの度合いに比例した量で、空気が弱ガスシステムに添加され、弱ガスが、常に、
それらが爆発物となる濃度範囲の低濃度側に留まるようにされている。ここでは、ガス洗浄作業が弱ガスシステムに含まれている。
【0008】
従来技術におけるチップのスチーム処理は、チップから空気を放出することを主目的とし、このため、スチーム処理で直接、冷却流体を使用することは考えられない。冷却技術は、もっぱら、スチーム前処理容器とは独立した後の弱ガスシステムだけに使用され、ここで、ガスが冷却されて凝縮される。しかし、スチーム処理中に冷却流体を使用することが非常に効果的であり、臭気を伴う問題を取り除くために比較的少ない量の冷却流体が必要とされるケースが立証されている。システムでは外乱が散発的に生じるので、直接冷却を使用して、上述の弱ガスシステムにおいて希釈効果を回避することは簡単である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開WO96/32531
【特許文献2】米国特許US6,176,971
【特許文献3】スウェーデン国特許SE528116(国際公開WO2007/64296)
【発明の概要】
【0010】
本発明の第一の目的は、チップの吹き抜けの危険を最低限に低減させるようにした安全なスチーム前処理方法を達成し、周囲への悪臭ガスの放出を最低限に維持できるようにすることを保証することにある。
【0011】
第二の目的は、チップベッドにおける凝縮物層を、チップの体積の安全レベルに維持し、凝縮物が、チップの体積の凝縮物がガスに変換され得る上側表面に達しないようにすることを確実にすることにある。
【0012】
第三の目的は、チップのスチーム前処理中の公知の「コールドトップ」制御中に、安全なシステムが好ましく使用されるようにすることであり、ここで、チップの容量中に温度勾配が形成されるようにチップが加熱され、チップ容器の頂部にあるチップの温度を、周囲温度、典型的には0℃〜50℃、好ましくは、20℃〜40℃にし、チップ容器の底部に向かって温度を除々に高くし、チップ容器の底部の温度を、有利には約90℃〜110℃の温度にする。このシステムは、チップ容器内のチップから放出されるガスの容量が非常に低くなるという効果を有し、かつ、連続平衡動作中に弱ガスシステムの負荷を最小にするという効果を有する。しかし、このシステムの一つの特性は、チップの体積の範囲内にある凝縮層において、放出されたガスを凝縮することである。しかし、チップに対して簡単な冷却処理を使用することで、スチーム吹き抜けの危険を著しく低減させることができる。
【0013】
第四の目的は、吹き抜けの影響を最低限に抑えることにあり、チップの冷却表面を、ある量の冷却流体に置き換えることによって、そこで解放される悪臭ガスの量を最低限に低減させることができ、同時に、解放の総持続時間を十分に低減させることができる。
【0014】
上述した目的は、請求項1の特徴部分に従った構造及び請求項5の特徴部分に従った方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】チップをスチーム前処理するための本発明による構造を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には適当な容器として、含浸容器1が図式的に示されている。前記含浸容器1には、含浸容器の頂部で、流量調整弁、即ち、供給水門34を通して刻んだチップCHが供給される。このタイプの含浸容器は、IMPBIN(商標)の名前でMetso Paper社によって市販されている容器に相当するものである。
【0017】
「スチーム前処理容器」の概念は、以下のように使用される。この概念は、DUALSTEAM(商標)タイプのスチーム前処理付きのチップ容器だけでなく、スチーム前処理が一体化されたIMPBIN(商標)タイプの含浸容器をも含む。スチーム前処理付きチップ容器と、スチーム前処理付き含浸容器との間の大きな違いは、後者における含浸が、含浸容器の底部で、典型的には黒液である含浸流体を使用して行われ、この黒液が、スチームを生じさせるために含浸容器に添加される時に、充分に加熱されていることにある。完全なスチーム前処理のために要求される純粋なスチームの量は、この方法により減少され得る。
【0018】
チップの上方レベルは、通常、スチーム前処理容器の頂部に確立され、ここでは、このレベルが最下レベルと最高レベルとの間で確立するような方法で、送り込みが制御される。ガス相は、この上方チップレベルと容器の頂部との間で、容器内に確立される。
図1に示されたスチーム前処理容器は、図面に示すように、その中の容器の下方部分でチップの含浸が行われる容器である。このチップの含浸は、例えば、IMPBIN(商標)の名前でMetso Paper社によって販売されている技法に従って実行され得る。加圧された加熱黒液BLは、好ましくは、この技法の間に、容器に添加され、それにより、この加熱黒液にかけられた圧力が解放され、チップのスチーム前処理に必要なスチームの重要なフラクションを生じさせる。
黒液の表面BLLEVから放出されるスチームは、符号BLSTで示されている。
【0019】
また、スチームSTも、適当な出口ノズル又は付加ノズルを通して、スチーム前処理容器の下方部分で添加され得る。スチームSTが添加される位置は、確立されている上方チップレベルより十分に下方であり、スチームの量は、チップのカラム内温度の検知を受けて調整される。図面には、測定プローブ32が示されており、このプローブ32は、プローブの長手方向に沿った平均値を測定し、プローブからの出力信号は、スチーム供給ラインにある弁33を調整する制御ユニット31に送られる。
好ましくは、スチームは、NCGsガス及びTRSガスが完全に無い純粋なスチームであり得、また、それは、一定量のTRSガスを含んだ黒液スチームであり得る。
【0020】
従って、スチーム前処理に要求されるスチームは、(純粋なスチームか、又はTRSガスを含んだスチームであり得る)直接添加の形態か、又は、その圧力が解放された時にチップベッドにスチームを生じさせる加熱黒液の形態の適当なスチーム発生手段から得られる。また、スチーム発生手段は、これら二つの発生源の両方でもあり得る。
【0021】
コールドトップ(cold-top)の概念に従って図示された実施例では、チップがスチームを使って前処理され、ここでは、チップ容器内で温度勾配を確立することが試みられる。チップのカラムの上側表面におけるチップは、理想的には、周囲温度、典型的には、0℃〜50℃の間の範囲、好ましくは、20℃〜40℃の間の範囲を維持するべきである。コールドトップ制御の一つの効果は、凝縮物の層CLがチップのカラム内にでき、そこに高いフラクションのNCGsガス及びTRSガスが集まることにある。この凝縮物の層を、チップの体積における十分に下方の安全な深さに維持し、これらのガスが上方に向けて放出されることを防止して、チップのカラムの上側表面を低温に保持することを可能にする。
【0022】
生成された弱ガスを除去するために、換気通路2が容器の上側部分に配置される。この換気通路2は弱ガスシステムNCGに接続されている。前記弱ガスシステムNCGに弱ガスが排出され破壊される。
【0023】
本発明によれば、冷却流体源CSからの冷却流体を直接噴射する手段10があり、これらの噴射手段10はスチーム前処理容器の頂部に配置されている。さらにまた、少なくとも一つの調整弁11が、冷却流体源C3と噴射手段10との間の連結ラインに配置されている。制御ユニット31は、起動手段を通して調整弁11を開弁し、少なくとも一つの検出された作動パラメータが、吹き抜けが行われていることを示した時に、冷却を行うように配置されている。
少なくとも一つの散布ノズル10が噴霧手段の出口に設けられている。好ましくは、散布ノズル10は高圧ノズルであり、細かく分散された冷却流体を、スチーム前処理容器の頂部に散布する。ガス相におけるガスを凝縮するために、冷却流体を、細かく分散された液滴又は細かく分散された霧として噴射すると、ガス相と冷却流体との間の接触領域が増えるので有利である。冷却流体の圧力を、スチーム前処理容器の頂部の圧力に対して少なくとも3バールの過剰圧力に対応するレベルに維持することが好ましい。
【0024】
多数の散布ノズルをスチーム前処理容器の頂部に配置し、冷却流体を噴射している間、スチーム前処理容器の全流れ断面をそれらが覆うように散布ノズルを配置することが適当である。3〜8mの直径を有するスチーム前処理容器に対しては、4個の散布ノズルを、隣接する散布ノズル間の間隔が90°になるように円周上に均等に配置することが可能であり、これらの散布ノズルは、容器の中心から、容器の直径の40〜60%に対応する間隔を開けて配置される。
【0025】
8〜10mの直径を有するスチーム前処理容器に対しては、6〜8個の散布ノズルを、隣接する散布ノズル間の間隔が60°又は45°になるように円周上に均等に配置することが可能であり、これらの散布ノズルは、容器の中心から、容器の直径の40〜60%に対応する間隔を開けて配置される。
【0026】
好ましくは、このシステムは、セルロースパルプの製造のためにチップを連続スチーム前処理している間に作動される。ここで、周囲温度に対応する温度を保持する未処理チップがスチーム前処理容器内に供給される。前記スチーム前処理容器内には、チップを予め加熱し、かつ、チップに含まれている空気を放出するために、スチームによって処理されるべきチップがある。スチーム前処理容器は、頂部にチップ入口を有し、底部にチップ出口を有する。スチーム前処理容器内に確立されたチップベッドに、スチーム発生手段を通してスチームが添加され、チップベッドにおける下方に確立された高温から、チップベッドの上側表面に確立された低温までの温度勾配がチップベッドに確立するようにされている。その後、運転状態が、チップベッドを通って上方へのスチームの吹き抜けが始まる危険があることを示した時に、冷却流体がスチーム前処理容器の頂部に噴射される。
吹き抜けの危険は、その上側表面に関するチップベッドの温度(又は、チップのレベルより上にあるガス相の温度)が閾値を越えた時に検出され、それにより噴射が行われる。
また、吹き抜けの危険は、例えば、スチーム前処理容器内へ入る又はそこから出るチップの流れが、閾値より下に落ちた時にも検出され得、それにより噴射が行われる。
セルロースパルプ製造処理からの水又は冷却済処理流体が冷却流体として使用される。これらの冷却済処理流体は、冷却済白液、冷却済黒液、又は次の洗浄処理からの冷却済ろ液等であり得る。
噴射される冷却流体の量は、好ましくは、吹き抜けの危険の度合いに比例するように制御され、この制御は、異なる数の噴射ノズルを作動させることを通して行うことができ、又、パルス幅によって変調される作動される各噴射ノズルの開口度合いを用いて行うことができる。
【0027】
冷却調整の一つのシンプルな形態では、冷却の作動は、チップの体積中の温度に依存するように制御される。前記温度は、測定プローブ32又はチップのレベルの上方にあるガス相に配置された温度センサ(図示せず)によって検出される。制御手段31は、少なくとも第一又は第二の閾値を越えた分に比例した度合いまで弁11を開くか、又は、一つの閾値を超えた分に比例した度合いまで弁11を開く。第一閾値は、予め決められた第一温度Tniva1であり得、第二閾値は、予め決められた第二温度Tniva2であり得、ここで両者の関係はTniva1<Tniva2である。
【0028】
また、冷却流体の流れの調整は、好ましくは、他の調整装置の作動との組合せによっても行われ得る。例えば、温度が非常に高くなってきた時にスチームの供給を停止してもよい。また、温度が非常に高くなってきた時に、供給される冷却チップの量はそのままでもよく、より高いレベルまで増やすこともできる。
【0029】
底部に一体化された含浸処理部を有するスチーム前処理容器において冷却を実行する時、このシステムは、冷却流体の噴射による生じる希釈を、簡単に補償することができる。例えば、含浸流体における正確なアルカリ濃度を確立し直すために、より多くの白液を黒液に添加することができる。これは、図面に示されているように、白液用の供給ラインに配置され、黒液の添加用ラインBLに接続された弁WLを、制御ユニット31によって操作できるようにすることで達成される。
【0030】
冷却の作動度合いの実施例
散布ノズル10の一部は、第一閾値が越えられた場合に作動させられ、ここで、開き度合いは、パルス幅によって変調され得る。例えば、散布ノズル10は、300秒の間の時間遅延の20%の間、開かれ得る。
残りの散布ノズル10は、第二閾値が超えられた場合に、同じパルス幅変調(300秒の20%)で作動され得る。
散布ノズルの開き度合いは、例えば、第三閾値が越えられた場合に、300秒の間の時間遅延の40%のパルス幅変調の間、開かれたままになるように増やされ得る。
散布ノズルの開き度合いは、さらに高い温度では、全ての散布ノズルが連続して開いた状態に保持されるまで、20%のステップで増加され得る。
有利には、冷却効果が幾つかのステージで連結できると、制御不能になって圧力を急速に落とし、内破の危険があるスチーム前処理容器を危険で良くない圧力にし得る突然の急激な冷却効果が、過熱ガス層に導入されない。
【0031】
この冷却効果が得られる温度制御動作の実施例から、冷却のための他の制御原理が実行され得ることが理解されることになる。例えば、スチーム前処理容器内に入る流れ及びスチーム前処理容器から出る流れがモニターされ得、例えば、冷却チップの流入が止まったり減ったりした場合、容器の底部で熱が上方に送られる危険が増大する。同じことが、スチーム処理後のチップの流出が劇的に止まったり減ったりした場合に当てはまる。
【0032】
また、このシステム及び方法は、容器内のチップのレベルを測定することによっても補完され得る。この場合、チップのレベルはレベル検出器40によって検出され、このレベルの信号は制御ユニットCPUに送られる。チップのレベルが最低レベルより下まで除々に下がる場合、冷却流体は除々量を増やして添加され得る。
各散布ノズルには、個別調整のために、個別の調整弁11が設けられ得る。
【0033】
本発明は、添付した特許請求の範囲の思想の範囲内で様々な形で変形可能である。容器への入力構造は様々な形式であり得、(図面に概略的に示した)回転セグメントを有する簡単なチップ供給構造でもよく、また、しばしば水平ハウジングに配置される様々な形態の供給スクリューの形態でもよく、入口に逆止弁を設けていても、設けていなくてもよい。その最も簡単な形態では、チップは単に、移送ベルトからシュートを通して容器の中に落とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプ製造中のチップ連続スチーム前処理構造であって、
周囲温度に相当する温度である未処理チップが、スチーム前処理容器(1)に供給され、
前記容器(1)内で、チップを予め加熱して、チップに含まれている空気を放出するために、チップがスチーム(ST)を用いて前処理され、
スチーム前処理容器(1)が、その頂部にチップ入口を有し、その底部に出口を有し、
スチームが、スチーム前処理容器(1)内に確立されているチップベッドに、スチーム発生手段を通して加えられ、チップベッドの下方に確立された高い温度から、チップベッドの上側表面に確立された低い温度までの温度勾配が、チップベッド内に確立するようにされた
チップの連続スチーム前処理構造において、
制御ユニット(31)を配置して、ベッドの上側表面の低い温度が敷居値を越えた時に、チップベッドを通る上方へのスチームの吹き抜けを示す少なくとも一つの作動パラメータを検出手段(32)を介して検出するようにし、
冷却流体源(CS)からの冷却流体を噴射する噴射手段(10)を、スチーム前処理容器の頂部に配置し、
冷却流体源(CS)と噴射手段(10)との間の連結ラインに、少なくとも一つの調整弁(11)を配置し、
検出した作動パラメータが吹き抜けの発生を示した時に、作動手段を介して調整弁(11)を開くように前記制御ユニット(31)を構成する
ことを特徴とするチップの連続スチーム前処理構造。
【請求項2】
少なくとも一つの散布ノズル(10)が噴射手段の出口に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
散布ノズル(10)が高圧ノズルであり、冷却流体の微細分散ミストをスチーム前処理容器(1)の頂部に散布する
ことを特徴とする請求項2に記載の構造。
【請求項4】
複数の散布ノズルが、スチーム前処理容器の頂部に配置され、
これらの散布ノズルが、冷却流体を噴射している間、スチーム前処理容器の全流れ方向横断面を覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の構造。
【請求項5】
セルロースパルプ製造中のチップの連続スチーム前処理方法であって、
周囲温度に相当する温度である未処理チップが、スチーム前処理容器(1)に供給され、
前記容器(1)内で、チップを予め加熱して、チップに含まれている空気を放出するために、チップがスチーム(ST)を用いて前処理され、
スチーム前処理容器(1)が、その頂部にチップ入口を有し、その底部に出口を有し、
スチームが、スチーム前処理容器(1)内に確立されているチップベッドに、スチーム発生手段を通して加えられ、チップベッドの下方に確立された高い温度から、チップベッドの上側表面に確立された低い温度までの温度勾配が、チップベッド内に確立するようにされた
チップの連続スチーム前処理方法において、
作動状態が、チップベッドを通る上方へのスチームの吹き抜けの始まりの危険を示す時に、スチーム前処理容器の頂部に冷却流体を噴射する
ことを特徴とするチップの連続スチーム前処理方法。
【請求項6】
チップベッドの上側表面の温度が敷居値を超えた時に噴射処理を開示する
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
スチーム前処理容器へ入るチップの流れ又はスチーム前処理容器から出るチップの流れが、敷居値より下に落ちた時に噴射処理を開始する
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
セルロースパルプの製造処理から出る水、即ち、冷却済み処理流体が冷却流体として使用される
ことを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
噴射される冷却流体の量が、吹き抜けの危険に比例するよう制御される
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
噴射される冷却流体の量が、異なる数の噴射ノズルを作動させることによって、又は、パルス幅変調によって、若しくは、その両方の方法によって制御される
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−133056(P2009−133056A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−305983(P2008−305983)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(591014190)メッツオ ファイバー カルルスタード アクチボラグ (19)
【Fターム(参考)】