説明

セルロースファイバー系断熱材を充填した断熱用袋体、その製造方法及び製造装置

【課題】 セルロースファイバー系断熱材の吸放湿機能を有効に保持し、難燃剤などの添加物の飛散を防止するとともに時系列な沈降現象を抑制して均一な断熱効果及び防音効果が得られる断熱用袋体、その製造方法及び製造装置を提供することにある。
【解決手段】 通気性を有する微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布又はその他の布状体を積層した通気性複合材からなる袋体にセルロースファイバー系断熱材を充填してなることを特徴とする断熱用袋体。前記セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に応じた形状に圧縮したものを前記袋体に充填し開口部をヒートシールにより封じてなることを特徴とする請求項1記載の断熱用袋体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として断熱材や防音材として用いられるセルロースファイバー系断熱材を充填した断熱用袋体に関し、より詳細には、通気性を有する微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布、織布又は編布を貼り合わせた通気性複合材からなる袋体にセルロースファイバー系断熱材を充填してなる断熱用袋体、その製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題が脚光を浴びるに至り、建物に断熱材や防音材を用いて生活環境の向上を図り、省エネルギー対策を講じる試みが盛んに行われている。例えば、断熱材としては、ガラスウールやセルロースファイバーを用いたものがある。しかし、ガラスウールは吸放湿性や防音性に欠けるばかりでなく、コスト的にも難点がある。そこで、難燃性、防虫・防カビ性を付与する目的で、セルロースファイバーに難燃剤や防カビ剤などの添加物を加えたセルロースファイバー系断熱材が提案されている。
【0003】
従来、セルロースファイバー系断熱材を建造物の断熱材として用いる場合、通常、柱と間柱に不織布のみからなる専用シートをタッカーで留め張りし、その専用シートで囲った空間にポンプで空気圧送してセルロースファイバー系断熱材を吹き込んで施工していた。しかし、従来のセルロースファイバー系断熱材は、フワフワした綿状のものであり、ポンプで吹き込むだけではかさ密度が不足するので、吹き込みホースの先端部で押し付けながら充填していた。それでも充分なかさ密度を得るのは困難で、後々セルロースファイバー系断熱材が沈降して断熱機能が損なわれる恐れがあった。更に、難燃性や防カビ性を確保するためにホウ酸系化合物が添加されており、吹き込みの際に、これらの添加物が飛散して皮膚に付着すると肌荒れの原因となり、或いは性能低下の原因になるとも云われている。
【0004】
一方、本願出願人は、先に、古紙または石膏ボードから分離された分離古紙を原料とする難燃性、防虫性を備えたセルロースファイバー系断熱材およびその製造方法についての特許を取得している(特許文献1参照)。この断熱材は廃石膏ボードを有効利用する点で優れているばかりでなく、石膏を含有しているため、難燃剤の添加が極少量でよく、難燃剤の飛散やセルロースファイバー系断熱材の時系列な沈降も従来品に比較して少ない。そして、製造過程でホウ酸系化合物を噴霧しているために製品に多少の水分が含まれる。この水分の影響でかさ比重が僅かに重くなるために、吹き込みの際に、短時間に、より多くのセルロースファイバー系断熱材が充填し易くなり、時系列な沈降現象が抑制され、水分は数日後に蒸発乾燥する特徴を有する。
【0005】
また、2枚合わせした不織布、紙、布の3方を縫合した袋にセルロースファイバーと添加物を混合した充填材を封入し、開口部を縫合してマット状とし、このマット状の上面より下面にタグピンを定間隔で複数列取り付けたセルロースファイバーのマット状成形体に係る発明が公知である(特許文献2参照)。しかし、この発明に用いられる袋の材質として、不織布、紙、布が挙げられているが、不織布及び布製袋の場合は、繊維の目の間隙から難燃剤等の紛状の添加剤が漏れて飛散する恐れがあり、一方、紙の場合は特に水分により強度が低下する問題がある。また、従来のフワフワした綿状のセルロースファイバーを袋詰めするのは困難で時間が掛かる上、充填後にセルロースファイバーと添加物が分離してそれぞれ時系列な沈降現象を起こし不均一な断熱性をもたらす恐れがある点で問題があった。更に、この沈降現象を抑えるためにタグピンを定間隔で複数列取り付けるのは無駄な手間を要し且つコストアップを招く点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4065879号公報
【特許文献2】特開2010−43507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、前記の問題点を解消するために鋭意研究した結果、通気性を有して且つ難燃剤などの添加物が通過しない大きさの微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルム又は該熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布その他の布状体を積層した通気性複合材からなる袋を用いることによって、前記添加物が袋の外へ漏れて飛散することを防止できるばかりでなく、セルロースファイバー系断熱材特有の吸放湿機能を有効に保持することが可能となることを知見し、更に、本出願人の保有する前記特許に係る廃石膏ボードから得られるセルロースファイバー系断熱材(アースファイバー:登録商標)を用いた場合に、該断熱材に含まれる水分が充填後に微細孔を通じてほどよく蒸発乾燥することにより時系列な沈降現象が抑制されることを知見して本発明に至ったものであり、本発明の主たる目的は、セルロースファイバー系断熱材の吸放湿機能を有効に保持し、難燃剤などの添加物の飛散を防止するとともに時系列な沈降現象を抑制して均一な断熱効果及び防音効果が得られる断熱用袋体、その製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、通気性を有して且つ難燃剤などの添加物が通過しない大きさの微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布又はその他の布状体を積層した通気性複合材からなる袋体にセルロースファイバー系断熱材を充填してなることを特徴とする断熱用袋体とする(請求項1)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に応じた形状に圧縮したものを前記袋体に充填し開口部をヒートシールにより封じてなることを特徴とする前記の断熱用袋体とすることが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記熱可塑性樹脂製有孔フィルムに設けられた微細孔は、最大部の孔径が30〜500μmの範囲内で、且つ、空孔面積率が0.7〜12%の範囲内であることを特徴とする前記の断熱用袋体とすることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記セルロースファイバー系断熱材は、ドライベースの解繊古紙100質量部と、石膏二水塩50〜100質量部と、ホウ素(B)として1〜3質量部のホウ素化合物を含有することを特徴とする前記の断熱用袋体とすることが好ましい(請求項4)。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記解繊古紙が、廃石膏ボードから分離された分離古紙を解繊した解繊古紙を含み、又は/及び前記石膏二水塩が、廃石膏ボードから分離した廃石膏を含むことを特徴とする前記の断熱用袋体とすることが好ましい(請求項5)。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記セルロースファイバー系断熱材をかさ密度が50〜150kg/mになるように前記袋体に充填したことを特徴とする前記の断熱材用及び防音材用の断熱用袋体とすることが好ましい(請求項6)。
【0014】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、圧縮装置に前記通気性複合材からなる袋体をセットする行程と、定量供給機でセルロースファイバー系断熱材の質量を計量する行程と、圧縮装置の定形枠に計量したセルロースファイバー系断熱材を供給する行程と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材を圧縮する行程と、前記供給行程と圧縮行程を1回または複数回繰り返した後に圧縮されたセルロースファイバー系断熱材を定形枠から吐出する行程と、吐出された圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に袋詰めする行程と、前記袋体の開口部をヒートシールする行程とを備えたことたことを特徴とする断熱用袋体の製造方法とする(請求項7)。
【0015】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、セルロースファイバー系断熱材を圧縮する装置において、前記袋体セット部と、計量したセルロースファイバー系断熱材の供給部と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材を圧縮する定形枠と、シリンダーによりセルロースファイバー系断熱材を圧縮する圧縮部と、圧縮セルロースファイバー系断熱材を横方向シリンダーによって定形枠から吐出する吐出部と、コンベアにより圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に投入する袋詰め手段とを備えたことたことを特徴とするセルロースファイバー系断熱材圧縮装置とする(請求項8)。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る断熱用袋体は、前記のように通気性を有する微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布その他の布状体を積層した通気性複合材からなり以下の効果を奏する。
(1)熱可塑性樹脂製フィルム面同士を合わせて容易にヒートシールができるので、作業性とシール性が向上する。
(2)前記熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布その他の布状体を積層した通気性複合材は、建築部材として充分な強度を保持しつつ、微細孔を通じて吸放湿性能に優れた断熱・防音材を提供する。
(3)セルロースファイバー系断熱材の時系列な沈降現象が抑制されるので、タグピンで留める必要もなく経済的に優位である。
(4)従来の吹き込み法に比較して施工現場での粉塵等の飛散がなく、新築での施工に加えて在宅中のリフォームでも問題なく施工可能であり、用途の拡大が見込まれる。
(5)従来の吹き込み法では、セルロースファイバー系断熱材の充填度合いは職人の経験や勘に頼るところが大であるのに対して、本発明によれば、予め計量した一定かさ密度のセルロースファイバー系断熱材が充填されるので施工によるブレがなく、ほぼ均一な性能が保持できる。
(6)従来の吹き込み法で施工したセルロースファイバー系断熱材の詰め替えに当たってセルロースファイバー系断熱材を取り除く際に吹き込み時以上に粉塵等が飛散するので、より充分な注意が必要であるのに対して、本発明によれば、袋ごと撤去するので粉塵は殆どなく現場作業は格段に向上する。しかも、袋ごと回収できるので異物の混入もなく、再利用が容易である。
(7)本出願人の保有する前記特許に係る廃石膏ボードから得られるセルロースファイバー系断熱材を用いれば、該断熱材に含まれる水分が充填後に微細孔を通じて容易に蒸発乾燥し、時系列な沈降現象が抑制され、より均一な断熱・防音効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は実施例に係る断熱用袋体の斜視図であり、(b)は同じく平面図であり、(c)は同じく正面図である。
【図2】(a)は実施例に係る断熱用袋体を柱の間に配置固定した断面図であり、(b)は(a)のX部を拡大して示した説明図である。
【図3】実施の形態に係る断熱用袋体の製造工程図である。
【図4】(a)は実施の形態に係るセルロースファイバー系断熱材圧縮装置の平面図であり、(b)は同じく正面図である。
【図5】実施の形態に係るセルロースファイバー系断熱材圧縮装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、以下に詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。本発明の実施の形態に係る断熱用袋体は、前面に通気性を有して且つセルロースファイバー系断熱材を通さない大きさの微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布、織布又は編布等の布状体を積層した通気性複合材からなり、該袋体の開口部からセルロースファイバー系断熱材を充填して開口部を封じてなることを特徴とする。本発明における「フィルム」には、厚さに関係なくシートも含まれるものとする。
【0019】
図1または図2に示す本発明の実施の形態において、1は断熱用袋体であり、11は袋本体であり、12は正面部であり、13は背面部であり、14は側面部(マチ部)であり、15は上面部(開口部ヒートシール部)であり、16は底面部(底面ヒートシール部)であり、対向する両側には耳部17が設けられている。袋本体11は、熱可塑性樹脂製有孔フィルム19の片面に不織布、その他の織布又は編布等の布状体20を積層した通気性複合材23からなり、熱可塑性樹脂製有孔フィルムにはほぼ全面に多数の通気性微細孔21が穿設してあることを特徴とする。
【0020】
熱可塑性樹脂製有孔フィルムを構成する熱可塑性樹脂製フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、一般用ポリスチレン(GP−PS)フィルム、耐衝撃性ポリエチレン(HI−PS)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、ポリエステル(PET)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、アイオノマーフィルム、セルロース系プラスチックフィルム、熱可塑性エラストマーフィルム等から使用目的に応じて選択することができる。更に、前記のような単一フィルムの他に共押出しフィルムや接着用樹脂層を介したドライラミネーション又はサンドラミネーションで貼り合わせた多層フィルムであってもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂製フィルムに設けられる微細孔は、通気性を有し且つ難燃剤などの添加物が通過しない大きさが好ましく、微細孔の最大部の孔径が30μm、好ましくは70μm以上あれば通気性が確保できる反面、500μmを越えると透難燃剤などの添加物が通過する可能性があり、而して、微細孔の孔径は、30〜500μm、好ましくは70〜400μm、特に好ましくは100〜200μmの範囲がよい。且つ、空孔面積率が0.7〜12%の範囲内であることが好ましい。また、難燃剤などの添加物は用いられる難燃剤等の種類によって粒径が異なるので、微細孔の孔径は添加物の粒径に応じて選択できることは言うまでもない。ここで、空孔面積率とは、単位面積当たりの合計空孔面積の百分率で表される数値を言う。
【0022】
また、前記熱可塑性樹脂製有孔フィルムに積層する不織布、織布又は編布などの布状体は、通気性を有して強度を補強する機能を有する限りにおいて特に限定されないが、合繊繊維からなる不織布、例えば、ニードルパンチ法、スパンボンド法又はステッチボンド法等の乾式法或いは湿式法による不織布であって、熱溶融法によって前記熱可塑性樹脂製有孔フィルムと積層可能な不織布、つまり少なくとも前記有孔フィルムと不織布の接触面における素材が共通の熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。
【0023】
先ず、断熱用袋体の製造に先立って袋体を製造する。すなわち、例えば、布状体が表面に向くようにして通気性複合材を2枚重ね合わせて上下何れか一方をヒートシールするとともに、左右両側にマチ部をヒートシールして一方に開口部を有する袋体を形成する。左右両側にマチ部を設けることによって、断熱用袋体を建物に配置する際に両側のマチ部が柱に隙間なく納まり断熱効果が著しく向上するので好ましい。さらに、左右両側に伸びる耳部を形成し、この耳部を柱に係止すれば断熱用袋体を安定して固定できるので好ましい。また、前記有孔フィルムと不織布の接触面における素材が共通の熱可塑性樹脂で構成されていれば係る有孔フィルムと不織布面が接触するようにして熱溶着が可能である。
【0024】
次に、前記袋体にセルロースファイバー系断熱材を充填するのであるが、従来法によれば、吹き込み法によって直接袋体に封入するのが一般的であった。しかし、従来のセルロースファイバー系断熱材は、前述の通りフワフワした綿状のものであることから、吹き込み法で封入するのは困難で時間が掛かる上、充填後にセルロースファイバーと添加物が分離してそれぞれ時系列な沈降現象を起こし不均一な断熱性をもたらす恐れがあった。そこで、本実施の形態では、不均一な断熱性を防止するために、特に限定するものでないが、前記の廃石膏ボードから得られるセルロースファイバー系断熱材(アースファイバー:登録商標)を用いることが好ましい。
【0025】
前記セルロースファイバー系断熱材(アースファイバー:登録商標)は、廃石膏ボードの分離紙片を有効利用した断熱材としてJIS A 9523に適合するとともに、断熱性能として、熱伝導率:約0.030kcal/mh℃の要件を満たし、かつ、防虫性能として、インテリアファブリクス性能協議会指定のガラス管B法による忌避率;50%以上の要件を満たすものである。また、石膏を含有しているため、難燃剤の添加が極少量でよく性能が均一であり、難燃剤の飛散やセルロースファイバー系断熱材の時系列な沈降も従来品に比較して少ない。
【0026】
その上、製造過程でホウ酸系化合物を噴霧しているために製品に多少の水分が含まれる。この水分の影響で吹き込みによって効率よく袋体に充填されるばかりでなく、本発明の圧縮装置により袋体の形状にしたものを袋詰めすれば型くずれが殆どなくタグピンで留める必要もない。更に、袋詰め後に水分は袋体の微細孔より蒸散し数日でほぼ乾燥するとともに、その後は、図2(b)に示すように袋体の通気性微細孔21を通じて袋体の内外に空気流22が矢印方向に出入りすることにより、セルロースファイバー系断熱材18が特有の調湿機能を発揮する特徴を有するのでより好ましい。
【0027】
前記セルロースファイバー系断熱材(アースファイバー:登録商標)は、前記断熱効果に加えて、防音効果を奏する。以下に、防音性能の測定について説明する。
使用機材:有限会社環研保有のリオン社製普通騒音機により測定。
騒音の発生源:110dbの防犯ブザー
測定方法:(1)アースファイバー100kg/m相当を入れたケース(実施例)、(2)グラスウールを24kg/m相当を入れたケース(比較例)、(3)空のケース(比較例)、以上のアクリル板のケース3個をそれぞれ設置した。ケース内に前記防犯ブザーを音が出る面を上にして配置し、この防犯ブザーと同じ高さになるように、ケースの側面から50cm離れたところに集音マイクを設置した。ケースに蓋をして約5分間測定して平均値を求めた。測定した部屋内のブザーを作動しない状態での測定値は38dbであった。測定結果は、以下の表1の通りである。
【0028】
【表1】

【0029】
以下に本実施の形態に係る断熱用袋体の製造方法について図に基づいて説明する。図3は、本実施の形態に係る断熱用袋体の製造工程図であり、図4及び図5は、セルロースファイバー系断熱材圧縮装置の説明図である。図3の製造工程図において、圧縮装置に前記通気性複合材からなる袋体をセットする行程(101)と、定量供給機でセルロースファイバー系断熱材の質量を計量する行程(102)と、圧縮装置の定形枠に計量したセルロースファイバー系断熱材を供給する行程(103)と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材を圧縮する行程(104)と、前記供給行程と圧縮行程を1回または複数回繰り返した後に圧縮されたセルロースファイバー系断熱材を定形枠から吐出する行程(105)と、吐出された圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に袋詰めする行程(106)と、前記袋体の開口部をヒートシールする行程(107)を備えてなる。
【0030】
図4及び図5のセルロースファイバー系断熱材圧縮装置において、前記袋体セット部(201)と、セルロースファイバー系断熱材の質量を計量する計量装置(202)と、計量したセルロースファイバー系断熱材を定形枠に供給する供給部(203)と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材をシリンダーにより圧縮する圧縮部(204)と、圧縮セルロースファイバー系断熱材を横方向シリンダーによって定形枠から吐出する吐出部(205)と、コンベアにより圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に投入する袋詰め手段(206)を備えてなる。この圧縮装置によって得られた前記袋体の開口部をヒートシールすることによって所望の断熱用袋体1が得られる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。先ず、ポリエチレン素材からなる熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布を熱溶融法によって貼り合わせたニダイキ株式会社製の通気性複合材を用いて、前記実施の形態に従って所定の袋体を作成する。袋体のサイズ(縦L1×横L2×厚みL3)は、袋体を配置する柱と間柱の間隔を考慮して、500mm×500mm×100mm、500mm×450mm×100mm、500mm×500mm×50mm、500mm×450mm×50mm、の4種類とし、それぞれ横方向の両側にサイズ(L4=30〜50mm)の耳部を設けた。袋体のサイズは配置する柱と柱又は間柱の間隔に応じて適宜変更できることは言うまでもない。
【0032】
次に、前記袋体を前記圧縮装置にセットし、製造工程図に記載の行程に従って、前記袋体に吉田実業株式会社製のセルロースファイバー系断熱材であるアースファイバー(登録商標)を圧縮して所定サイズに形成したものを前記袋体に充填する。前記アースファイバー(登録商標)を充填した袋体を取り外して開口部をヒートシールして実施例に係る断熱用袋体を得た。この実施例における通気性複合材に代えて不織布のみから構成される袋体を用い、この袋体に市販のセルロースファイバー系断熱材を直接エアー吹き込み法で封入して得た断熱用袋体を比較例とした。
【0033】
前記実施例に係る断熱用袋体と比較例に係る断熱用袋体を建物の柱と柱又は間柱の中間部にそれぞれ5個ずつ積み重ねて配置して耳部を各柱に留めて固定した状態で観測した。その結果、実施例に係る断熱用袋体は、外観がほぼ所定サイズの立方体状に形成されており、柱と柱の中間部に隙間なくピッタリと収納されているのに対して、比較例に係る断熱用袋体は、セルロースファイバー系断熱材が下方に沈降し上方がスカスカの状態なために、両サイドの柱及び間柱との間に隙間が生じ、断熱効果又は遮音効果にムラが生じる可能性がある。更に、実施例に係る断熱用袋体は、袋体の外側に難燃剤等の添加剤の漏れや時系列な沈降現象も全然生じないのに対して、比較例に係る断熱用袋体は、不織布の袋体の外側に難燃剤等の添加剤の漏れと時系列な沈降現象が生じており難燃効果にバラツキが生じる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る断熱用袋体は、セルロースファイバー系断熱材の吸放湿機能を有効に保持し、難燃剤などの添加物の飛散を防止するとともに時系列な沈降現象を抑制して均一な断熱効果、防音効果及び湿度調節効果を奏するので、快適な生活空間が得られと共に省エネルギーと自然環境保護及び経済的に極めて有用である。
【符号の説明】
【0035】
1:断熱用袋体、11:袋本体、12:正面部、13:背面部、14:マチ部、15:開口部ヒートシール部、16:底面ヒートシール部、17:耳部、18:セルロースファイバー系断熱材、19:熱可塑性樹脂製有孔フィルム、20:不織布(布状体)、21:通気性微細孔、22:空気流、23:通気性複合材、24:柱、25:合板、
201:袋体セット部、202:計量装置、203:供給部、204:圧縮部(圧縮シリンダー)、205:吐出部(吐出シリンダー)、206:袋詰め手段、207:定形枠
101:袋体セット工程
102:断熱材計量工程
103:断熱材供給工程
104:断熱材圧縮工程
105:圧縮断熱材吐出工程
106:圧縮断熱材袋詰工程
107:袋体のヒートシール工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する微細孔を備えた熱可塑性樹脂製有孔フィルムの片面に不織布又はその他の布状体を積層した通気性複合材からなる袋体にセルロースファイバー系断熱材を充填してなることを特徴とする断熱用袋体。
【請求項2】
前記セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に応じた形状に圧縮したものを前記袋体に充填し開口部をヒートシールにより封じてなることを特徴とする請求項1記載の断熱用袋体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂製有孔フィルムに設けられた微細孔は、最大部の孔径が30〜500μmの範囲内で、且つ、空孔面積率が0.7〜12%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の断熱用袋体。
【請求項4】
前記セルロースファイバー系断熱材は、ドライベースの解繊古紙100質量部と、石膏二水塩50〜100質量部と、ホウ素(B)として1〜3質量部のホウ素化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の断熱用袋体。
【請求項5】
前記解繊古紙が、廃石膏ボードから分離された分離古紙を解繊した解繊古紙を含み、又は/及び前記石膏二水塩が、廃石膏ボードから分離した廃石膏を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の断熱用袋体。
【請求項6】
前記セルロースファイバー系断熱材をかさ密度が50〜150kg/mになるように前記袋体に充填したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の断熱材用及び防音材用の断熱用袋体。
【請求項7】
圧縮装置に前記通気性複合材からなる袋体をセットする行程と、定量供給機でセルロースファイバー系断熱材の質量を計量する行程と、圧縮装置の定形枠に計量したセルロースファイバー系断熱材を供給する行程と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材を圧縮する行程と、前記供給行程と圧縮行程を1回または複数回繰り返した後に圧縮されたセルロースファイバー系断熱材を定形枠から吐出する行程と、吐出された圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に袋詰めする行程と、前記袋体の開口部をヒートシールする行程とを備えたことたことを特徴とする断熱用袋体の製造方法。
【請求項8】
セルロースファイバー系断熱材を圧縮する装置において、前記袋体セット部と、計量したセルロースファイバー系断熱材の供給部と、前記袋体のサイズに合わせてセルロースファイバー系断熱材を圧縮する定形枠と、シリンダーによりセルロースファイバー系断熱材を圧縮する圧縮部と、圧縮セルロースファイバー系断熱材を横方向シリンダーによって定形枠から吐出する吐出部と、コンベアにより圧縮セルロースファイバー系断熱材を前記袋体に投入する袋詰め手段とを備えたことたことを特徴とするセルロースファイバー系断熱材圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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