説明

セルロース系樹脂組成物の製造方法及び製造装置

【課題】混練機でセルロース系樹脂組成物を、粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で行うようにし、製造のコストダウンやプロセスの簡素化を図ると共に、品質を向上した前記組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】粒状のセルロース系樹脂を含む樹脂材料と可塑剤を含む原料を、混練機から押し出して樹脂組成物を製造するセルロース系樹脂組成物の製造方法において、混練機として、スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機10を用い、前記2箇所の混練部の原料の供給口を有する入口側混練部の直後にマテリアルシール32を備えるとともにベント口30を設け、前記入口側の混練部のバレル温度を樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満に設定し、前記ベント口設置部のバレル温度を樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上に設定し、出口側混練部のバレル温度を樹脂材料の軟化温度以上に設定し、前記原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系樹脂組成物の製造方法及び製造装置に係り、特に、射出成形、押出成形、ブロー成形等の溶融成形する原料としての品質を高めることができるセルロース系樹脂組成物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形原料や押出成形原料等の溶融成形する原料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリスチレン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の石油系の合成樹脂が広く使用されている。
【0003】
かかる石油系の合成樹脂で製造された容器やフィルム等の生活必需品や工業製品の廃棄物は、一部はリサイクルされるものの、多くが焼却や埋め立て等によって処分されることで、地球温暖化の原因物質として考えられているCOを多く排出することにつながっている。このような背景から、これ以上COを大気中に増やさないカーボンニュートラルという考え方が重要視され始めており、樹脂材料を石油原料から天然原料に変えて合成された材料への代替が進みつつある。特に、とうもろこしやサトウキビを原料として、発酵・合成されたポリ乳酸樹脂は優れた力学物性を有しており、最も利用が進んでいる。その他にもとうもろこしの発酵によって、得られるエタノールをガソリンの代替として燃料の一部として利用されたりしている。
【0004】
しかし、原料のとうもろこしは農業用飼料として家畜を育てたり、人が食用として利用したりすることから、今後利用量が増加した場合、食料不足を生じる原因となる可能性がある。但し、厳密には食用のとうもろこしと、樹脂原料用のとうもろこしとは異なるため問題にはならないという意見もある。しかし、米国やオーストラリアなどの穀倉地帯での生産量は温暖化による影響と考えられる気候変動の影響と考えられる渇水によるとうもろこし生産量の大幅な減少が発生したり、投機的な取引の影響を受けたりすることで流通量が不足するという問題が発生する可能も考えられる。
【0005】
このような背景から、非可食性原料を使った天然原料由来の樹脂が求められている。その中でも、セルロース系材料は古くから利用されており、供給に問題がない。また、既にディスプレイ用材料としても多量に利用されており、通常の高分子材料としての利用実績も十分である上、ポリ乳酸がもつ耐熱性の不足や、使用環境化における加水分解などの課題をセルロース系樹脂は解決できる可能性がある。したがって、いままでポリ乳酸樹脂が利用できなかった分野へも用途が広げられる可能性がある。
【0006】
しかし、セルロース系樹脂は溶融粘度が大きく、単独使用は勿論のこと、他の石油系樹脂と混合しても射出成形等の原料として使用しにくい。このため、セルロース系樹脂を溶融成形のための原料として使用するには、可塑剤を加えて熱可塑性をもたせる必要がある。
【0007】
また、セルロース系樹脂は衝撃に弱く破壊され易い。よって、セルロース系樹脂にはない特性を有する石油系樹脂を加えることでセルロース系樹脂の物性を用途に合わせて変えることも重要になる。このため、セルロース系樹脂に可塑剤、更には石油系樹脂を加えたセルロース系樹脂組成物を製造することはセルロース系樹脂の用途拡大にとって極めて重要である。
【0008】
ところで、セルロース系樹脂の製造メーカは、セルロース系樹脂の製造方法上の理由から粉状体での供給はしておらず、1mm〜30mm程度の不揃いな粒状体の形態で供給している。セルロース系樹脂(セルロースエステル、セルロースエーテル)の中では特にジアセチルセルロース(DAC)が広い粒度分布を有している。このため、セルロース系樹脂に可塑剤あるいは石油系樹脂と混練機で均一に混ぜ合わせるには、混合する前に、セルロース系樹脂を粉状体にするための粉砕が必要になる。
【0009】
また、セルロース系樹脂を射出成形等の原料として使用するには、セルロース系樹脂が石油系樹脂に比べて樹脂中の含有水分が多く、混練機で分散・混合する際に樹脂中に気泡を噛み込み易いという問題がある。特に上記したジアセチルセルロース(DAC)は水分が3質量%程度と多く、これは石油系樹脂の1種であるPET(ポリエチレンテレフタレート)の10倍程度になる。
【0010】
石油系樹脂のように溶融粘度が低いものであれば、射出成形等で溶融成形する際に噛み込んだ気泡が抜けるので、成形品の品質を損ねることはないが、セルロース系樹脂は溶融粘度が高いために気泡が抜けきらない。また、残留水分により材料自体が加水分解を起こし、劣化や、力学物性の低下を招く恐れがある。したがって、混練機で分散・混合する前にセルロース系樹脂を十分に乾燥しておく必要がある。
【0011】
このように、セルロース系樹脂を射出成形等の溶融成形の原料として使用するためには、セルロース系樹脂の粉砕と乾燥とを製造されるセルロース系樹脂組成物の品質を損ねることなく如何に効果的に行うかが重要である。
【0012】
例えば、従来、セルロース系樹脂の粉砕に関しては、粉砕装置(例えばミル式、パドル式等)で予めセルロース系樹脂原料を粉状体に粉砕してから可塑剤や石油系樹脂と混ぜ合わせ、混ぜ合わせたものを混練機、例えば一軸又は二軸混練機に供給して分散・混合することによりセルロース系樹脂組成物を製造していた(例えば特許文献1〜4)。
【0013】
しかし、セルロース系樹脂は加熱により劣化(分子量低下、着色)し易いため、混練機に供給する前のセルロース系樹脂を粉砕装置で予め粉砕する従来のセルロース系樹脂組成物の製造方法では、混練機から吐出されるまでに熱劣化が生じ、セルロース系樹脂が黄色く着色したり、分子量が低下したりするという欠点がある。逆に、セルロース系樹脂と、分散剤や石油系樹脂との分散・混合が十分に行われないと、組成物中に未溶融物が残存したり、所望の物性の組成物が得られなかったりする等の欠点が生じる。この結果、射出成形や押出成形の原料として溶融成形する分野の成形材料としての品質が低下するという問題がある。
【0014】
一方、セルロース系樹脂の乾燥に関しては、特許文献5のように、ベントを設けた混練機とサイクロンとを組み合わせることで含水原料を安価に乾燥処理することが提案されている。また、特許文献6では、脱水部及び加熱・脱揮部を有する二軸混練機の上流から水を含む離解パルプを供給し、該パルプを脱水部のフライトスクリューにより圧縮脱水し、次いで加熱・脱揮部で加熱吸引することで更に水分を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−84713号公報
【特許文献2】特開平11−58483号公報
【特許文献3】特開2008−93873号公報
【特許文献4】特開2003−128791号公報
【特許文献5】特開2003−326230号公報
【特許文献6】特開2001―234493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1〜6は、セルロース系樹脂を射出成形等の溶融成形の原料として使用する上で重要な粉砕と乾燥の問題を生産性、プロセスの簡素化、及び品質の点から総合的に解決したものではなく、更なる技術的な改良が要望されている。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、混練機でセルロース系樹脂組成物を製造する際に、粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で行うようにしたので、製造のコストダウンやプロセスの簡素化を図ることができると共に、製造されたセルロース系樹脂組成物の品質を向上できるセルロース系樹脂組成物の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも粒状のセルロース系樹脂を含む樹脂材料と、可塑剤と、を含む原料を、混練機から押し出して樹脂組成物を製造するセルロース系樹脂組成物の製造方法において、前記混練機として、スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機を用いると共に前記2箇所の混練部のうち、前記原料の供給口を有する入口側の混練部の直後にマテリアルシールを備えると共にバレルにベント口を設け、前記入口側の混練部のバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満に設定し、前記ベント口設置部のバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上に設定し、前記ベント口設置部後から樹脂吐出口までのバレル温度を前記樹脂材料の軟化温度を超える温度に設定することにより、前記入口側の混練部を前記原料の粉砕ゾーンとして使用し、前記ベント口設置部を前記粉砕した原料の乾燥ゾーンとして使用し、前記出口側の混練部を前記原料の混合ゾーンとして使用することにより、前記原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うことを特徴とするセルロース系樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0019】
ここで混練部とは、2本のスクリュー軸にニーディングディスクと呼ばれるスクリューエレメントを備えた処理ゾーンを言う。また、マテリアルシールとは、ベント部に粉砕された原料を一時的に滞留させて充満率を上げることにより、粉状の原料がバレル内の隙間に対してシール材として作用し、ベント口から粉状の原料が漏れるのを制限する部材を言う。
【0020】
請求項1の発明では、混練機として、スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機を用いると共に前記2箇所の混練部の間にベント口とマテリアルシールを備えたベント部を設けた。そして、入口側の混練部を粉砕ゾーンとして使用し、ベント部を乾燥ゾーンとして使用し、出口側の混練部を混合ゾーンとして使用することで、原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うようにした。
【0021】
このように、本発明によれば、1つの混練機で原料の粉砕、乾燥、分散・混合を連続して行うことができるので、セルロース系樹脂組成物を製造する際の生産性を上げることができると共に、従来のように粉砕、乾燥が混練機と別装置である場合に比べてプロセスの簡素化を図ることができる。
【0022】
また、本発明では、1つの混練機で原料の粉砕、乾燥、分散・混合を連続して行うことができるので、1度の熱履歴で粉砕〜分散・混合までを行うことができる。これにより、粉砕、乾燥が混練機と別装置であることにより複数回の熱履歴を受ける従来に比べて粉砕開始から分散・混合終了までに原料に加わるトータルの熱量を従来よりも顕著に低減することができる。しかも、粉砕から分散・混合までを1つの混練機で連続して行うことで原料を十分に分散・混合することができるので、未溶融物が残存したりすることもなく、所望の物性の組成物を得ることができる。
【0023】
したがって、本発明は、混練機でセルロース系樹脂組成物を製造する際に、従来問題とされていた樹脂組成物の着色、分子量の低下とそれに伴う物性低下や、未溶融物の残存などの問題も合わせて解決することができる。
【0024】
本発明は、セルロース系樹脂の種類の中でも含水分が多く、混練成形時に残水分や剪断発熱による加水分解や着色、更には分子量低下が懸念されるジアセチルセルロース(DAC)において特に有効である。
【0025】
本発明においては、前記供給口位置から前記粉砕ゾーン開始位置までの搬送ゾーンに設けられるスクリューエレメントのうち、前記供給口位置からスクリュー径(D)の2〜4倍に相当するスクリュー長さ(L)位置までは少なくとも、角フライト又は半角フライトスクリューを使用することが好ましい。
【0026】
ここで角フライトとは、原料の流れ方向から見てフライトの前面部(下流側)が垂直面形状に形成され、フライトの後面部(上流側)も同様に垂直面形状に形成されたフライトを言う。
【0027】
また、半角フライトとは、角フライトの後面部(上流側)が曲面形状に形成されたフライトを言う。
【0028】
搬送ゾーンのうち供給口位置からスクリュー径(D)の2〜4倍に相当するスクリュー長さ位置まではスクリューエレメントを角フライト又は半角フライトにすることにより、原料が噛み合い部を通過する際に受ける剪断速度をフライトに比べて小さくすることができる。これにより剪断発熱を抑制して、熱に弱いセルロース系樹脂の樹脂温度が搬送ゾーンでの搬送時に高くなり過ぎないようにできる。
【0029】
また、搬送ゾーンにおけるセルロース系樹脂の温度上昇は、二軸混練機の吐出口からの吐出樹脂温度を高くする要因になる。その結果、粉砕ゾーンでの剪断速度を高くすることができなくなる。これにより、製造されるセルロース系樹脂組成物に未溶融物が発生しないための粉砕ゾーンでの剪断速度範囲が制限される。特に、ジアセチルセルロース(DAC)は、粗大粒子が多く、搬送ゾーンにおいて粗大粒子同士が詰まることによって接触や粉砕が生じ、発熱し易い。
【0030】
角フライト又は半角フライトとしては、噛み合わせ時の隣り合うフライト同士の間隙が2〜15mmの範囲であることが好ましい。2mm未満では搬送能力が著しく悪くなり、15mm以上では搬送効率が落ち、粉砕ゾーンでの粉砕効率が小さくなる。
【0031】
本発明においては、前記供給口位置から前記ベント口設置位置までのバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満にすることが好ましい。更には、50℃以下にすることがより好ましい。
【0032】
二軸混練機に原料を投入してから粉砕が終了するまでのバレル温度が樹脂材料中の蒸発温度以上になると、粉砕ゾーンでの剪断発熱と相俟って原料樹脂の温度が高くなる。これにより、原料の中でも石油系樹脂に比べて含水分の多いセルロース系樹脂中の水分が蒸発して搬送ゾーン内に滞留する。特に、搬送ゾーンに角フライトや半角フライトを使用した場合には、噛み合わせ部が減って剪断発熱を抑制する反面、原料の一部が滞留し易いので、蒸発した水分が入口側で結露し、原料の供給口を閉塞させる恐れがある。
【0033】
本発明においては、前記乾燥ゾーンでは、前記原料の水分を1000ppm以下に低減することが好ましく、300ppm以下がより好ましく、50ppm以下が特に好ましい。これにより、混合ゾーンの分散・混合時に溶融された組成物中に気泡が噛み込み難くなる。
【0034】
また、本発明においては、乾燥ゾーンでは、前記バレル設定温度を150℃以下にすることが好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が特に好ましい。乾燥ゾーンのバレル温度は樹脂材料の蒸発成分が蒸発する温度以上であることが必要である。しかし、原料に含まれるセルロース系樹脂は熱に弱く、乾燥ゾーンを150℃を超えて高くすると、水分の蒸発と同時にセルロース系樹脂の分解が起こり、分子量が低下する。これにより、製造されるセルロース系樹脂組成物の力学物性(強度)を低下させる。
【0035】
したがって、乾燥ゾーンのバレル温度を150℃以下にすることが好ましい。樹脂材料中の蒸発成分の大部分は水分であるので、乾燥ゾーンの好ましいバレル設定温度は100〜150℃になる。
【0036】
また、本発明においては、前記混合ゾーンの剪断速度は140〜436sec−1であることが好ましい。これは、剪断速度が140sec−1を下回ると、混合ゾーンでの分散・混合の性能が悪くなり、製造される組成物中に未溶融物が残存し易くなる。逆に、剪断速度が436sec−1を超えると、混合ゾーンでの剪断による発熱が大きくなり過ぎて、セルロース系樹脂が着色し易くなる。
【0037】
また、本発明においては、前記二軸混練機に投入する前の前記セルロース系樹脂の粒径は1〜30mmの範囲であることが好ましい。これは、セルロース系樹脂メーカからユーザに供給されるセルロース系樹脂の粒径を示したものであり、粉砕しないと可塑剤や他の樹脂との分散・混合を十分に行うことができない。したがって、このような粒径範囲のセルロース系樹脂が原料に含まれる場合に、本発明は一層効果を発揮する。
【0038】
また、本発明においては、前記粉砕ゾーンでは、前記樹脂材料に前記可塑剤が添加された状態で粉砕することが好ましい。粉砕される際に発生する剪断発熱で樹脂材料の品温が上がるので、可塑剤が樹脂材料に浸透し易くなる。
【0039】
前記目的を達成するために、請求項11の発明は、少なくとも粒状のセルロース系樹脂を含む樹脂材料と、可塑剤と、を含む原料を、混練機から押し出して樹脂組成物を製造するセルロース系樹脂組成物の製造装置において、前記混練機は、スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機であって、前記入口側の混練部のバレル温度を第1の温度調整手段で前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満に調整することにより前記原料を粉砕する粉砕ゾーンと、前記出口側の混練部のバレル温度を第2の温度調整手段で前記樹脂材料の軟化温度を超える温度に調整することにより前記原料を分散・混合する混合ゾーンと、前記粉砕ゾーンと前記混合ゾーンとの間にベント口が形成されると共に前記粉砕ゾーン直後にマテリアルシールが設けられ、前記バレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上に調整することにより前記粉砕された原料を乾燥する乾燥ゾーンと、を備え、前記原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うことを特徴とするセルロース系樹脂組成物の製造装置を提供する。
【0040】
請求項11の発明は、本発明を製造装置として構成したものであり、これにより請求項1の製造方法を実施することができる。したがって、混練機でセルロース系樹脂組成物を製造する際に、粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で行うようにしたので、製造のコストダウンやプロセスの簡素化を図ることができると共に、製造されたセルロース系樹脂組成物の品質を向上できる。
【0041】
この場合、前記マテリアルシールは、逆フライト、シールリング、逆ニーディング、ニュウトラルニーディング等の何れかで構成されることが好ましい。
【0042】
このように、本発明では、セルロース系樹脂が二軸混練機のバレル内を通過する際の熱履歴をできるだけ少なくすることで熱劣化を抑制するように構成されている。したがって、粉砕、乾燥、分散・混合を1回で行うために、二軸混練機のバレル長が適度に長いことが好ましく、L(スクリュー長さ)/D(スクリュー径)が25〜45の範囲であることが好ましい。L/Dが45を超えると、二軸混練機内での滞留時間が長くなり過ぎることにより、セルロース系樹脂が熱劣化し易くなる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、混練機でセルロース系樹脂組成物を製造する際に、粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で行うようにしたので、製造のコストダウンやプロセスの簡素化を図ることができると共に、製造されたセルロース系樹脂組成物の品質(力学物性、外観等)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のセルロース系樹脂組成物の製造装置に用いる混練機である二軸混練機の構成を説明する説明図
【図2】半角フライトを説明する説明図であり、図2(B)は図2(A)の2−2線に沿った断面図
【図3】角フライトを説明する説明図であり、図3(B)は図3(A)の3−3線に沿った断面図
【図4】混練部のスクリューエレメント構造を説明する説明図
【図5】乾燥ゾーンのスクリュー構成である逆フライトを説明する説明図
【図6】本発明と従来法との原料の熱履歴の違いを説明する説明図
【図7】実施例と比較例とを対比した実施例Aの実験条件と結果を示す表図
【図8】混合ゾーンにおける剪断速度の影響を調べた実施例Bの実験条件と結果を示す表図
【図9】搬送ゾーンに角フライトを用いた場合とボールフライトを用いた場合の比較試験を示したグラフ
【図10】乾燥ゾーンのバレル温度が150℃の場合と180℃の場合での比較試験を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面に従ってセルロース系樹脂組成物の製造方法及び製造装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0046】
図1は、本発明のセルロース系樹脂組成物の製造装置の混練機である二軸混練機の構成を示した概略図である。図1の(A)は側面図、(B)が二軸スクリューを示す上面図である。
【0047】
図1に示すように、二軸混練機10のバレル12内部には2本のスクリュー14、14が並列され、各スクリューは図示しないモータにより回転される。2本のスクリュー14、14は同方向回転でも異方向回転でもよいが、同方向回転がより好ましい。
【0048】
二軸混練機10のバレル長手方向の一端側上面には、原料供給口16が開口されると共に、原料供給口16に原料投入用のホッパー18が設けられる。バレル12内部は、ホッパー18側から順に、搬送ゾーン20、粉砕ゾーン(第1の混練ゾーン)22、ベントゾーン(ベント部)23、加熱・可塑化ゾーン24、混合ゾーン(第2の混練ゾーン)26、昇圧・排出ゾーン28に分かれる。なお、図1(B)では、2つの混練ゾーン22、26の位置を明確にするために、四角で示してある。このように、スクリュー14に2箇所の混練ゾーン22、26を有する二軸混練機としては、例えば東芝機械社製のTEMシリーズや日本製鋼社製のTEXシリーズ等を好適に利用することができる。
【0049】
上記各ゾーン20〜28を構成するバレル12外部には、各ゾーン20〜28の温度調整を行う温度調整手段(図示せず)がそれぞれ設けられ、各ゾーン20〜28の温度を個別に調整できるようになっている。温度調整手段としては、電気ヒータ、あるいは温水及び冷水が流れるジャケットを好適に使用することができる。
【0050】
搬送ゾーン20、加熱・可塑化ゾーン24及び昇圧・排出ゾーン28には、スクリュー軸に2条ネジ又は1条ネジと呼ばれるスクリューエレメントが設けられる。
【0051】
この場合、搬送ゾーン20のうち原料供給口16位置からスクリュー径(D)の2〜4倍に相当するスクリュー長さ(L)位置までの搬送ゾーン(以下、前段搬送ゾーン20Aと言う)は少なくとも、スクリューエレメントとして角フライト又は半角フライトスクリューを使用することが好ましい。
【0052】
図2は、2条型の半角フライトエレメント13の例である。
【0053】
図2(A)、(B)に示すように、半角フライトエレメント13は、フライト13Aの前面部13B(原料の送り方向Aから見て下流側)が、軸芯Oに対して略垂直(略90°)にスクリュー溝の底面から立ち上がって形成される。一方、フライト13Aの後面部13C(原料の送り方向Aから見て上流側)が、内側に湾曲して形成される。これにより、スクリュー溝13Dの溝深さがフライト13Aの前面部13Bが深くなり、互いに噛み合ったフライト13A、13A同士の間に形成される空間部15の容積が大きくなる。この結果、原料が噛み合い部17を通過する際に受ける剪断応力がボールフライトエレメント(図示せず)に比べて小さくなる。これにより、剪断発熱が小さくなるので、前段搬送ゾーン20Aを搬送される樹脂材料、特に熱に弱いセルロース系樹脂の温度上昇を抑制できる。
【0054】
ちなみに、ボールフライトエレメントのボールフライトは、前面部13B及び後面部13Cともに湾曲した曲面形状に形成される。
【0055】
図3は、2条型の角フライトエレメント13の例である。なお、図2と同様の部材については同じ符号を付して説明する。
【0056】
図3(A)、(B)に示すように、角フライトエレメント13は、フライト13Aの前面部13B(原料の送り方向Aから見て下流側)及び後面部13C(原料の送り方向Aから見て上流側)の両方が、軸芯Oに対して略垂直(略90°)にスクリュー溝の底面から立ち上がって形成される。これにより、スクリュー溝13Dの溝深さがフライト13Aの前面部13B及び後面部13Cの両方が深くなり、互いに噛み合ったフライト13A、13A同士の間に形成される空間部15の容積が、半角フライトよりも更に大きくなる。この結果、原料が噛み合い部17を通過する際に受ける剪断応力が半角フライトに比べて一層に小さくなる。これにより、剪断発熱がより小さくなるので、前段搬送ゾーン20Aを搬送される樹脂材料、特に熱に弱いセルロース系樹脂の温度上昇を半角フライトよりも更に抑制できる。
【0057】
角フライト及び半角フライトは、噛み合わせ時の隣り合うフライト13A、13A同士の間隙Cが2〜15mmの範囲であることが特に好ましい。2mm未満では搬送能力が著しく悪くなり、15mm以上では剪断発熱の抑制効果が小さい。
【0058】
また、原料供給口16の位置から粉砕ゾーン22の終了位置までのバレル温度は樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満であることが好ましく、50℃以下にすることがより好ましい。これは、原料供給口16からセルロース系樹脂等の原料を投入してから粉砕ゾーン22で粉砕が終了するまでのバレル温度が樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上になると、粉砕ゾーン22での剪断発熱と相俟って原料温度が高くなる。これにより、石油系樹脂に比べて熱に弱く、含水分の多いセルロース系樹脂が熱劣化し易くなると共に、水分が蒸発して搬送ゾーン20内に逆流するため、原料供給口16において結露し、供給される原料の流動性を低下させる。そして、最終的には原料供給口16を閉塞させる恐れがある。
【0059】
特に、前段搬送ゾーン20Aでは、原料供給口16から供給される常温のセルロース系樹脂の粗大粒子が、高速で回転する噛み合わせ部に詰まり易くなる。この粗大粒子は、温度が低く、材料が硬いために、接触や粉砕による発熱量が大きくなる。したがって、前段搬送ゾーン20Aに角フライト又は半角フライトを使用することによって、互いに噛み合ったフライト13A、13A同士の間に形成される空間部15の容積が大きくなり、自由体積が大きくなるので、材料同士の接触が低下し、粉砕が起こる頻度が減少する。これにより、温度が低く、材料が硬い前記粗大粒子が搬送される前段搬送ゾーン20Aにおける剪断発熱を効果的に抑制することができる。
【0060】
また、第1及び第2の混練ゾーン22、26のスクリュー14には、図4(A)、(B)に示すように、スクリュー軸14Aに楕円状のニーディングディスク14Bと呼ばれるスクリューエレメントが等間隔で複数設定されている。そして、2本のスクリュー14、14に設けられたニーディングディスク14Bの回転方位位相が連続的に、又は周期的に異なるように設定されている。連続的に位相差がずらされており、且つその位相のずれ方が樹脂の排出方向に対して順方向になっているものを図4(B)に示すように順ニーディングという。ニーディングディスク14Bはスクリュー軸14Aの回転方向と同方向に捻じる捩じれ角を有して順次ずらして配設され、捻じれ角は例えば45°程度に設定される。そして、2本のスクリュー軸14Aは、対応するニーディングディスク14B同士が図4(A)に示すように、回転周期を90°ずらした位置関係を保持する状態で回転駆動される。
【0061】
また、位相差のずれ方が樹脂の排出方向と逆方向になっているものを逆ニーディング(図示せず)といい、周期的にずらされているだけで搬送能力のないものをニュートラルニーディング(図示せず)という。これらにより、ニーディングディスク14Bの面相互間での剪断作用と、不連続なニーディングディスク14Bによる切返し効果による分散作用が発生し、原料の分散・混合を行う。なお、図4(A)の矢印は原料の動きを示す。
【0062】
また、ベントゾーン23には、図5(A)に示すように、ベント口30が設けられると共に、マテリアルシールが設けられる。図5(A)ではマテリアルシールの一例として逆フライト32の例で示したが、シールリング、逆ニーディング、ニュウトラルニーディング等を用いることもできる。なお、図5(B)は乾燥ゾーン23に逆フライト32を設けない場合の図である。
【0063】
そして、本発明では、原料を二軸混練機10から押し出して組成物を製造する際に、入口側の第1の混練ゾーン22のバレル温度を樹脂材料の軟化温度以下に設定することで、粉砕ゾーンとして使用するようにした。
【0064】
また、ベントゾーン23のバレル温度を樹脂材料中の水分等の蒸発成分の蒸発温度以上に設定することで、乾燥ゾーンとして使用するようにした。
【0065】
また、出口側の第2の混練ゾーン26のバレル温度を樹脂材料の軟化温度以上に設定することで、分散・混合を行う混合ゾーンとして使用するようにした。
【0066】
これにより、原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うようにした。以下、第1の混練ゾーン22を粉砕ゾーン22として説明し、ベントゾーン23を乾燥ゾーン23として説明し、第2の混練ゾーン26を混合ゾーン26として説明する。
【0067】
上記構造の二軸混練機10において、混合ゾーン26の剪断速度は140〜436sec−1の範囲に調整可能であることが好ましい。ここでの剪断速度は、図3(A)におけるニーディングディスク14BのクリアランスCと垂直方向のクリアランスDを元に計算した。これは、セルロース系樹脂は熱に弱く、剪断速度が436sec−1を超えて剪断発熱が大きくなると黄色く着色し易くなる。一方、剪断速度が140sec−1を下回ると、分散・混合が十分に行われず、未溶融物が残存したり、所望の物性が得られなくなったりする。
【0068】
また、本発明においては、粉砕ゾーン22における最狭部分のチップクリアランスが、混合ゾーン26における最狭部分のチップクリアランスよりも広いことが好ましい。これは、粉砕ゾーン22は分散・混合を行う混合ゾーン26とは異なり、原料を均一粉砕できる程度にチップクリアランスを確保すれば良いからである。具体的には、粉砕ゾーン22の最狭部分のチップクリアランスは0.03〜2mm、好ましくは0.05〜2mmに設定することが好ましい。一方、混合ゾーンにおける最狭部分のチップクリアランスは0.01〜1mmに設定することが好ましい。
【0069】
なお、チップクリアランスとは、図4(A)に示すように、スクリュー14に備えられた楕円形状のニーディングディスク14Bとバレル12内壁面とのクリアランスのうちニーディングディスク14Bの楕円長手方向とバレル12内壁面とのクリアランスを指す。
【0070】
次に、上記の如く構成されたセルロース系樹脂組成物の製造装置を用いて本発明のセルロース系樹脂組成物の製造方法を説明する。
【0071】
ホッパー18からバレル12内に供給された原料(セルロース系樹脂単独又はセルロース系樹脂を含む樹脂材料、及び可塑剤)は、搬送ゾーン20を経て粉砕ゾーン22に送られる。なお、原料として難燃剤を添加してもよい。
【0072】
搬送ゾーン20の前段搬送ゾーン20Aには、上記の如く角フライト又は半角フライトスクリュー13を設けると共に、バレル温度を樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満(より好ましくは50℃以下)に設定し、セルロース系樹脂を粉砕ゾーン22へ搬送する。
【0073】
原料に含まれるセルロース系樹脂は通常1〜30mmの粒状の形態を有し、セルロース系樹脂の中でも特にジアセチルセルロース(DAC)は粒度分布が大きく、粗大粒子を多く含む。しかし、本実施の形態では、前段搬送ゾーン20Aに角フライト又は半角フライトスクリュー13を使用するようにしたので、ジアセチルセルロースの場合であっても、ジアセチルセルロースの粗大粒子同士が搬送ゾーン20において接触や粉砕により発熱することを防止できる。
【0074】
粉砕ゾーン22では、原料を粉砕する。特に、後段の混合ゾーン26において、樹脂材料と可塑剤等の添加物とを均一に分散・混合するには、粒状形態のみで樹脂メーカから供給される粗大粒子を含むセルロース系樹脂を粉砕し、添加剤が原材料へ分散・混合し易くしておく必要がある。
【0075】
粉砕ゾーン22では、バレル温度が樹脂材料の軟化温度以下の可塑化しない温度に設定され、回転するスクリュー14のニーディングディスク14Bによって原料が粉砕される。この場合、粉砕ゾーン22におけるバレル温度の好ましい温度は樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満(好ましくは50℃以下)である。これは、粉砕時の剪断発熱により原料温度が上昇すると共に、乾燥前の原料、特にセルロース系樹脂は含水分が多く、バレル温度が高過ぎると分解温度まで組成物の温度が上昇し、分解し易いためである。
【0076】
粉砕ゾーン22での原料粉砕は、樹脂材料に可塑剤が添加された状態で粉砕することが好ましい。これにより、粉砕による剪断発熱で可塑剤の樹脂材料への浸透速度が大きくなり、樹脂材料に可塑剤を均一混合することができるばかりでなく、可塑剤が浸透したセルロース樹脂は軟化するため、粉砕による剪断発熱も小さくすることができる。
【0077】
粉砕される際に発生する剪断発熱により発熱して品温が上昇した原料は一旦冷やすことなくそのまま乾燥ゾーン23に送られる。
【0078】
次に、乾燥ゾーン23では、原料から蒸発した水蒸気等の蒸発成分をベント口30から外部に排気する。この場合、乾燥ゾーン23のバレル温度を150℃以下に設定することが好ましい。原料に含まれるセルロース系樹脂は熱に弱く、150℃を超えて乾燥ゾーン23を高くすると、セルロース系樹脂が乾燥ゾーン23で水蒸気などと共存したまま、セルロース系樹脂の分解開始温度まで到達してしまう。これにより、セルロース系樹脂が着色したり分子量が低下したりし易い。したがって、乾燥ゾーン23のバレル温度上限を150℃とすることが好ましい。
【0079】
また、粉砕、乾燥、分散・混合を1つの工程で行うために、二軸混練機10は、L(スクリュー長さ)/D(スクリュー径)が25〜45の範囲であることが好ましい。L/Dが45を超えると、二軸混練機10内での原料の滞留時間が長くなり過ぎて却って原料劣化が起きる。
【0080】
かかる原料の乾燥において、粉砕された粉状の原料は乾燥ゾーン23に設けられた逆フライト32により、粉砕された原料をベント部に一時的に滞留させて充満率を上げることにより、粉状の原料がバレル内の隙間に対してシール材として作用する。これにより、粉状の原料がベント口30から蒸発成分に同伴して外部に排出されることが防止される。ベント口30は単に大気に開放されていてもよく、粉状の原料がベント口30から排出されない程度にベント口30を真空装置等で吸引してもよい。乾燥ゾーン23における乾燥後の原料水分としては1000ppm以下であることが好ましく、300ppmであることがより好ましく、50ppm以下であることが特に好ましい。これにより、後段の混合ゾーン26における原料の分散・混合時に気泡を噛み込むことを効果的に抑制できる。
【0081】
次に、乾燥された原料は加熱・可塑化ゾーン24を経て混合ゾーン26に送られる。混合ゾーン26では、バレル温度が樹脂材料の軟化温度以上の可塑化温度に設定されるので、回転するスクリュー14のニーディングディスク14Bによって原料が分散・混合される。混合ゾーン26の剪断速度は140〜436sec−1であることが好ましい。
【0082】
そして、混合ゾーン26で分散・混合された原料は昇圧・排出ゾーン28を経て二軸混練機10の吐出口10Aから外部に吐出される。
【0083】
このように、本発明によれば、1つの混練機(二軸混練機10)で原料の粉砕、乾燥、分散・混合を連続して行うことができるので、セルロース系樹脂組成物を製造する際の生産性を上げることができると共に、従来のように粉砕、乾燥が混練機と別装置である場合に比べてプロセスの簡素化を図ることができる。
【0084】
また、本発明では、1つの混練機(二軸混練機10)で原料の粉砕、乾燥、分散・混合を連続して行うことができるので、1度の熱履歴で粉砕〜分散・混合までを行うことができる。これにより、粉砕、乾燥が混練機と別装置であることにより複数回の熱履歴を受ける従来に比べて粉砕開始から分散・混合終了までに原料に加わるトータルの熱量を従来よりも顕著に低減することができる。
【0085】
図6(A)は、1つの混練機(二軸混練機10)で原料の粉砕、乾燥、分散・混合を連続的に行う本発明における原料の温度変化を示したものである。一方、図6(B)は、混練機に供給する前の原料を粉砕装置及び乾燥装置で予め粉砕・乾燥する従来の方法による原料の温度変化を示したものである。
【0086】
図6(A)に示す本発明では、粉砕ゾーン22で粉砕される際に発生する剪断発熱による発熱で品温が上昇した原料を一旦冷やすことなく、そのまま乾燥ゾーン23で乾燥し、加熱・可塑化ゾーン24で混合ゾーン26での分散・混合温度である樹脂材料の軟化温度以上に上昇させることができる。したがって、本発明では、粉砕から分散・混合までを一度の熱履歴で行うことができる。
【0087】
これに対して、図6(B)に示す従来の方法では、粉砕装置で原料を予め粉砕することにより剪断発熱で品温が上昇した原料を一旦室温付近まで冷却する。次に、粉砕した原料を乾燥装置に供給して再び加熱して乾燥した後で一旦室温付近まで冷却し、その後に混練機に投入して分散・混合温度まで加熱・可塑化し、混合ゾーンで分散・混合する。この場合、乾燥により品温が上昇してある程度軟化した原料は一旦室温付近まで冷却して硬化しないと、混練機に安定供給することができない。したがって、従来の方法では、粉砕から分散・混合までの間に、粉砕時、乾燥時、及び分散・混合時の3度の熱履歴を受けることになる。図6(B)では、粉砕・乾燥を別々の装置で行ったが、粉砕と乾燥を1つの装置で行った場合には2度の熱履歴を受けることになる。
【0088】
また、図6(A)と図6(B)の分散・混合処理における樹脂到達温度の対比から分かるように、粉砕及び乾燥と分散・混合とを別装置で行った従来の方法は、粉砕から分散・混合までを1つの混練機で行う本発明に比べて樹脂到達温度が高くなる。これは、従来のように粉砕装置や乾燥装置で粉砕・乾燥して一旦冷えた樹脂材料を、混練機で再昇温させる場合には、樹脂材料が非常に高粘度の温度域を超える必要がある。この結果、従来の方法は剪断発熱量が粉砕から分散・混合までを1つの混練機で行う本発明に比べて増加し、これにより樹脂到達温度が高くなる。また、剪断発熱を抑えるために、混練機での剪断速度を低くすると、分散状態が悪くなり物性が低下してしまう。
【0089】
樹脂材料の着色は、どれだけ高温に達し、どれだけの時間その温度に滞留したかで決まる。したがって、図6(B)に示すように、従来の方法は樹脂到達温度が本発明よりも高くなった分だけ着色の原因となる発熱に曝されることになる。
【0090】
これにより、従来法では原料が熱を受けている時間が長くなると共に、一度冷却した原料を分散・混合温度まで再度上昇させるための大きな熱量が必要になる。したがって、従来法は粉砕から分散・混合までに受けるトータル熱量が本発明に比べて顕著に大きくなる。換言すると、本発明は、粉砕開始から分散・混合終了までに原料に加わるトータルの熱量を従来法よりも顕著に低減することができる。粉砕時の粉砕熱等による発熱を利用して原料を軟化温度以上にまで加熱できるので、その後の分散・混合温度まで上昇させるのに必要な熱量を小さくすることができる。よって、原料が受ける熱量を従来法に比べて大幅に低減できる。しかも、粉砕から分散・混合までを1つの混練機で連続して行うことで原料を十分に分散・混合することができるので、未溶融物が残存したりすることもなく、所望の物性の組成物を得ることができる。
【0091】
したがって、本発明は、混練機(二軸混練機10)でセルロース系樹脂組成物を製造する際に、樹脂組成物の着色、分子量の低下とそれに伴う物性低下や、未溶融物の残存等の問題を全て解決することができる。
【0092】
本実施の形態におけるセルロース系樹脂としては特に限定されないが、セルロースエステルやセルロースエーテルを使用することができ、例えばジアセチルセルロース(DAC)やトリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を好ましく使用できる。セルロース系樹脂メーカから供給されているセルロース系樹脂の粒径は、一般的に1〜30mmの範囲で不揃いな粒状体としてユーザに供給される。
【0093】
セルロース系樹脂の中でも特にジアセチルセルロース(DAC)は、粒度分布が大きいと共に、含水分が3質量%程度と多く、乾燥に時間がかかる。これにより、長い乾燥時間が必要になると共に、二軸混練機10を通過中の剪断発熱による着色や分子量の低下が懸念される。
【0094】
したがって、セルロース系樹脂として、ジアセチルセルロース(DAC)を使用する場合には、本発明は特に有効である。
【0095】
本実施の形態における石油系樹脂としては、セルロース系樹脂に不足する物性を補うものを使用することができればどのような樹脂でもよいが、ポリカーボネートを好ましく使用することができる。石油系樹脂の場合製造メーカーからは粉状体、粒状体の両方で供給されることが多い。
【0096】
本実施の形態における可塑剤としては特に限定されないが、トリメチルリン酸、ジエチレングリコールジベンゾエイトを好ましく使用できる。可塑剤は常温で粉状体、液状体のいずれもある。
【0097】
その他、原料として難燃剤を添加することが好ましく、難燃剤としては例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステルの少なくとも1つを用いることができる。
【0098】
[実施例]
[実施例A]
実施例Aでは、本発明のセルロース系樹脂組成物の製造方法を満足する実施例と、満足しない比較例とで、製造されたセルロース系樹脂組成物(以下、組成物という)の気泡の噛み込み、着色の程度、未溶融物の有無、及びベント口からの原料の同伴状態を調べた。なお、実験は二軸混練機の吐出口にストランドダイを取り付け、ストランドダイから押し出されるストランド(棒状)の組成物を冷却後にカットしてペレットを製造することにより実施した。
【0099】
[原料]
セルロース系樹脂としてセルロースアセテートブチレートを使用し、可塑剤としてジ-2-エチルヘキシルアジペートを使用した。
【0100】
そして、以下に示す実験条件で実施例1及び比較例1〜4を行った。
【0101】
(実施例1)
実施例1では、混練機として図1の二軸混練機10を用いて行った。原料組成として、セルロースアセテートブチレートを70質量%、ジ-2-エチルヘキシルアジペートを30質量%の組成比率になるようにした。混練機(二軸混練機10)の条件としては、粉砕ゾーン22でのバレル12設定温度をセルロースアセテートブチレートの軟化温度以下である30℃とし、乾燥ゾーン23でのバレル設定温度を150℃とし、混合ゾーン26でのバレル12設定温度をセルロースアセテートブチレートの軟化温度以上である220℃とした。そして、乾燥ゾーン23には図4(A)に示したように、ベント口30を設けると共にスクリュー構造として逆フライト32を設けた。混練部の剪断速度は140sec−1とした。
【0102】
(比較例1)
比較例1は、混練機のスクリュー構成として、分散・混合ゾーン26のみにニーディングディスク14Bを設け、粉砕ゾーン22にはニーディングディスク14Bではなく2条ネジを設けた場合である。即ち、混練部が1つの混練機を用いた場合である。その他の条件は実施例1と同様である。
【0103】
(比較例2)
比較例2は、粉砕ゾーン22の後に乾燥ゾーン23を設けない場合である。即ち原料から蒸発した蒸発成分を排出するベント口30を設けなかった。その他の条件は実施例1と同様である。
【0104】
(比較例3)
比較例3は、ベント口30を備えた乾燥ゾーン23は設けたが、乾燥ゾーン23のスクリュー構成として逆フライト32を設けない場合である。その他の条件は実施例1と同様である。
【0105】
(比較例4)
比較例4は、ベント口30及び逆フライト32を備えた乾燥ゾーン23を設けたが、乾燥ゾーン23のバレル温度を原料中の蒸発成分が蒸発するには低過ぎる30℃に設定した場合である。即ち、乾燥ゾーン23のバレル温度を粉砕ゾーン22のバレル温度と同じにした場合である。
【0106】
[組成物品質の評価項目]
〈気泡の噛み込み〉
ストランドダイから吐出される棒状の組成物(冷却後のもの)の10cm当たり、噛み込まれている気泡が1個以下であれば○、1個を超えて多ければ×とした。気泡の数は目視にて数えた。
【0107】
〈原料樹脂の同伴〉
乾燥ゾーン23のベント口30から蒸発成分に同伴して粉状の原料が排出されない場合を○、排出される場合を×とした。原料の同伴は目視にて観察した。
【0108】
〈着色〉
ペレットのイエローインデックス(YI値)が50以下であれば○、50を超えていれば×とした。
【0109】
〈未溶融物〉
ストランドダイから吐出される棒状の組成物(冷却後のもの)中の未溶融物の数が、組成物10cm当たり2個以下であれば○、2個を超えて多ければ×とした。未溶融物は組成物を手で触った際に表面に突起する突起物として確認することができる。
【0110】
(実験結果)
実験結果を図7の表に示す。
【0111】
図7の表から分かるように、本発明のセルロース系樹脂組成物の製造方法を満足する実施例1は、全ての評価項目が○であった。
【0112】
一方、本発明のセルロース系樹脂組成物の製造方法を満足しない比較例1〜4は、4つの評価項目の少なくとも1つが×となった。
【0113】
例えば、混練部が1つの混練機を用いた比較例1では、樹脂材料が未粉砕の状態で乾燥されるため、混合ゾーンで十分に乾燥されないまま混合ゾーン26で分散・混合されることになる。この結果、分散・混合時に高熱で蒸発した水分等の蒸発成分が気泡となって組成物中に噛み込まれる。また、未粉砕の樹脂材料と可塑剤とが混合ゾーン26で混合されるため、十分な分散・混合がなされずに未溶融物が残存する。
【0114】
また、原料を粉砕しても乾燥ゾーンを設けない比較例2は、気泡の噛み込みの点で×になった。更に、乾燥ゾーン23を設けてもスクリュー構成として逆フライト32を設けない比較例3は、気泡の噛み込みと原料樹脂の同伴で×となった。また、乾燥ゾーン23を設けてもバレル温度が30℃と低過ぎる比較例4は、乾燥が不十分になるので、気泡の噛み込みの点で×となった。
【0115】
[実施例B]
実施例Bでは、混合ゾーン26における剪断速度の影響を調べた。
【0116】
実施例1は、実施例Aにおける実施例1と同様であり、剪断速度は140sec−1である。
【0117】
実施例2は、剪断速度は436sec−1にした以外は実施例1と同様である。
【0118】
比較例1は、剪断速度は130sec−1にした以外は実施例1と同様である。
【0119】
比較例2は、剪断速度は450sec−1にした以外は実施例1と同様である。
【0120】
(実験結果)
実験結果を図8の表に示す。
【0121】
図8の表から分かるように、剪断速度は140sec−1と436sec−1の実施例1と実施例2は4つの評価項目の全てが○であった。
【0122】
しかし、剪断速度が130sec−1の比較例5は未溶融物が×〜○の評価となった。これは、剪断速度が130sec−1では混合ゾーン26での分散・混合が十分に行われないためと考察される。また、剪断速度が450sec−1の比較例6は、着色が×〜○の評価であった。これは、剪断速度が450sec−1まで大きくなると、混合ゾーン26での剪断発熱による発熱が大きくなり、熱に弱いセルロース系樹脂が着色するものと考察される。なお、×〜○とは、繰り返し実験により×になったり○になったりすることで、試験結果が安定しなかったことを意味する。
【0123】
この結果から、混合ゾーン26の剪断速度は140sec−1〜436sec−1の範囲で行うことが好ましいことが分かる。
【0124】
[実施例C]
実施例Cでは、図1における二軸混練機10における前段搬送ゾーン20Aのスクリューエレメントのフライト形状を、角フライトにした場合(実施例)と、ボールフライト(比較例)にした場合とで、製造されるセルロース系樹脂組成物に未溶融物が残存しない粉砕ゾーン22の剪断速度範囲、即ち粉砕を十分に行うことができる加工範囲がどのように相違するかを調べた。
【0125】
実験には、セルロース系樹脂の中で含水分が多く加水分解し易いジアセチルセルロース(DAC)を使用した。また、各ゾーンのバレル温度は、下記の通りである。
【0126】
・搬送ゾーン20のバレル温度…30℃
・粉砕ゾーン22のバレル温度…30℃
・乾燥ゾーン23のバレル温度…150℃
・加熱・可塑化ゾーン24のバレル温度…220℃
・混合ゾーン26のバレル温度…220℃
・昇圧・排出ゾーン28のバレル温度…220℃
図9の横軸は粉砕ゾーン22の剪断速度(sec−1)であり、縦軸は二軸混練機10の吐出口から吐出されるセルロース系樹脂組成物の吐出樹脂温度である。そして、粉砕ゾーン22での剪断速度の上限は、剪断発熱によって上昇するジアセチルセルロースの吐出樹脂温度によって規定した。即ち、ジアセチルセルロースの着色開始温度は273℃であり、吐出樹脂温度が273℃となる剪断速度が粉砕ゾーン22での加工上限であると見做した。
【0127】
かかる観点から、半角フライトの場合について、乾燥ゾーン23の剪断速度と吐出樹脂温度との関係をプロットしたところ、図9の曲線Aとなった。一方、フルフライトの場合について、乾燥ゾーン23の剪断速度と吐出樹脂温度との関係をプロットしたところ、図9の曲線Bとなった。また、粉砕ゾーン22の剪断速度が30sec−1未満の矢印Cの領域では、未溶融物が発生した。
【0128】
曲線Aから分かるように、角フライトの場合には、粉砕ゾーン22の剪断速度が略150sec−1で着色温度の273℃に達する。したがって、角フライトの場合には、未溶融物が発生しない適切な剪断速度範囲は30〜150sec−1の範囲となる。
【0129】
一方、曲線Bから分かるように、ボールフライトの場合には、粉砕ゾーン22の剪断速度が略70sec−1で着色温度の273℃に達する。したがって、ボールフライトの場合には、未溶融物が発生しない適切な剪断速度範囲は30〜70sec−1の範囲となり、加工適正範囲が角フライトの半分になる。
【0130】
ジアセチルセルロースの加工適正範囲は元々狭く、製造されるセルロース系樹脂組成物の品質が安定しない要因になっていた。しかし、本発明のように前段搬送ゾーン20Aのフライト形状を角フライトに変えるだけで、ボールフライトよりも剪断発熱を小さくすることができる。これにより加工適正範囲を大幅に広げることができるので、製造されるセルロース系樹脂組成物の品質を安定化することができる。
【0131】
また、搬送ゾーン20に角フライトを用いると、フライト同士の噛み合わせ部が広くなり、原料が逆流したり滞留したりし易くなるが、搬送ゾーン20のバレル温度を樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満(好ましくは50℃以下)とすることで、ジアセチルセルロースの着色や分解を効果的に防止できる。
【0132】
[実施例D]
実施例Dでは、図1に示した二軸混練機10を用い、乾燥ゾーン23のバレル温度を150℃に設定した場合と180℃に設定した場合において、混合ゾーン26の分散・混合条件を高めるために剪断速度を上げていったときに、製造されるセルロース系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)のMw保持率がどのように変わるかを調べた。剪断速度を上げていったときの数値指標は、剪断発熱による吐出樹脂温度の上昇として把握した。実験には、セルロース系樹脂の中で含水分が多く加水分解し易いジアセチルセルロース(DAC)を使用した。
【0133】
なお、乾燥ゾーン23以外の各ゾーンのバレル温度は、実施例Cで示したと同様である。
【0134】
また、Mw保持率は、製造されたセルロース系樹脂組成物の重量平均分子量と、原料投入前の重量平均分子量とが変わらない場合を100%とし、重量平均分子量が半分になった場合を50%とした。また、Mw保持率の許容限界は90%であり、90%以上であればセルロース系樹脂組成物の力学物性を満足できる。
【0135】
(実験結果)
実験結果を図10の表に示す。
【0136】
その結果、乾燥ゾーン23のバレル温度が150℃の場合には、吐出温度が約255℃までMw保持率は略100%であり、吐出温度が271℃でMw保持率の合格ラインである90%に近づいた。
【0137】
これに対して、乾燥ゾーン23のバレル温度が180℃の場合には、バレル温度150℃の場合よりも約10℃低い略263℃でMw保持率が90%に達した。
【0138】
実施例Dの実験結果は、乾燥ゾーン23のバレル温度が150℃の場合には、吐出温度が271℃になるまで混合ゾーン26の剪断速度を上げることができるのに対して、乾燥ゾーン23のバレル温度が180℃の場合には、吐出温度で263℃になるまで混合ゾーン26の剪断速度を上げることができることを意味する。即ち、乾燥ゾーン23のバレル温度の上限を150℃にすることで、製造されるセルロース系樹脂組成物の力学物性の低下を抑制できるだけでなく、混合ゾーン26での分散・混合性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0139】
10…混練機(二軸混練機)、12…バレル、13…角フライト又は半角フライトのエレメント、13A…フライト、13B…フライトの前面部、13C…フライトの後面部、13D…スクリュー溝、14…スクリュー、14A…スクリュー軸、14B…ニーディングディスク、15…間隙、16…原料供給口、17…噛み合わせ部、18…ホッパー、20…搬送ゾーン、20A…前段搬送ゾーン、22…粉砕ゾーン(第1の混練ゾーン)、23…乾燥ゾーン、24…加熱・可塑化ゾーン、26…混合ゾーン(第2の混練ゾーン)、28…昇圧・排出ゾーン、30…ベント口、32…逆フライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粒状のセルロース系樹脂を含む樹脂材料と、可塑剤と、を含む原料を、混練機から押し出して樹脂組成物を製造するセルロース系樹脂組成物の製造方法において、
前記混練機として、スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機を用いると共に前記2箇所の混練部のうち、前記原料の供給口を有する入口側の混練部の直後にマテリアルシールを備えると共にバレルにベント口を設け、
前記入口側の混練部のバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満に設定し、前記ベント口設置部のバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上に設定し、前記ベント口設置部後から樹脂吐出口までのバレル温度を前記樹脂材料の軟化温度を超える温度に設定することにより、
前記入口側の混練部を前記原料の粉砕ゾーンとして使用し、前記ベント口設置部を前記粉砕した原料の乾燥ゾーンとして使用し、前記出口側の混練部を前記原料の混合ゾーンとして使用することにより、前記原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うことを特徴とするセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記セルロース系樹脂は、ジアセチルセルロース(DAC)であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記供給口位置から前記粉砕ゾーン開始位置までの搬送ゾーンに設けられるスクリューエレメントのうち、前記供給口位置からスクリュー径(D)の2〜4倍に相当するスクリュー長さ(L)位置までは少なくとも、角フライト又は半角フライトスクリューを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記角フライト又は半角フライトは、噛み合わせ時の隣り合うフライト同士の間隙が2〜15mmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記供給口位置から前記ベント口設置位置までのバレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満にすることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥ゾーンでは、前記原料の水分を1000ppm以下に低減することを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記乾燥ゾーンでは、前記バレル設定温度を150℃以下とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記混合ゾーンの剪断速度は140〜436sec−1であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記二軸混練機に投入する前の前記セルロース系樹脂の上限粒径が1〜30mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記粉砕ゾーンでは、前記樹脂材料に前記可塑剤が添加された状態で粉砕することを特徴とする請求項1〜9の何れか1に記載のセルロース系樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
少なくとも粒状のセルロース系樹脂を含む樹脂材料と、可塑剤と、を含む原料を、混練機から押し出して樹脂組成物を製造するセルロース系樹脂組成物の製造装置において、
前記混練機は、
スクリューに2箇所の混練部を有する二軸混練機であって、
前記入口側の混練部のバレル温度を第1の温度調整手段で前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度未満に調整することにより前記原料を粉砕する粉砕ゾーンと、
前記出口側の混練部のバレル温度を第2の温度調整手段で前記樹脂材料の軟化温度を超える温度に調整することにより前記原料を分散・混合する混合ゾーンと、
前記粉砕ゾーンと前記混合ゾーンとの間にベント口が形成されると共に前記粉砕ゾーン直後にマテリアルシールが設けられ、前記バレル温度を前記樹脂材料中の蒸発成分の蒸発温度以上に調整することにより前記粉砕された原料を乾燥する乾燥ゾーンと、を備え、
前記原料の粉砕、乾燥、分散・混合を1つの混練機で連続的に行うことを特徴とするセルロース系樹脂組成物の製造装置。
【請求項12】
前記マテリアルシールは、逆フライト、シールリングの何れかで構成されることを特徴とする請求項11に記載のセルロース系樹脂組成物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−202145(P2011−202145A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280744(P2010−280744)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】