説明

セルロース繊維又はセルロース繊維製品及びそれらの製造方法

【課題】本発明は、形態安定性に優れ、しかも吸水性及び熱伝導性に優れたセルロース繊維又はセルロース繊維製品及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロースにエステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースが結合している。セルロース繊維又はセルロース繊維製品に形態安定加工処理を施すと、吸水性及び熱伝導性の低下が避けられないが、トレハロース処理を行うことにより、形態安定性を損なうことなく、吸水性及び熱伝導性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コットン繊維は、吸水性が良好で、また熱伝導性が高いことから、衣類等の分野において春夏用素材として広く用いられている。コットン繊維は、洗濯乾燥時にしわになりやすく、アイロンがけが必要になるため、コットン繊維に形態安定加工処理を施すのが一般的であった(非特許文献1)。形態安定加工処理には、通常、グリオキザール樹脂が使用されている。
【0003】
しかしながら、グリオキザール樹脂をコットン繊維に反応させると、防しわ効果が発現されるものの、その一方において吸水性及び熱伝導性が低下するのが避けられない。従って、夏の暑い時期に、形態安定加工処理された衣類を着用すると、非常に蒸し暑く感じ、着用感が著しく損なわれる。
【0004】
このような実情のもと、形態安定性に優れ、しかも吸水性及び熱伝導性に優れたコットン繊維の開発が要望されている。
【非特許文献1】架橋剤ハンドブック,初版,山下晋三,金子東助編,大成社発行,第421〜463頁,昭和56年10月20日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、形態安定性に優れ、しかも吸水性及び熱伝導性に優れたセルロース繊維又はセルロース繊維製品及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、形態安定性に優れ、しかも吸水性及び熱伝導性に優れたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、セルロース繊維及びセルロース繊維製品にトレハロースを化学結合を介して結合させることにより、上記課題を達成できることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0007】
本発明は、下記項1〜3に係るセルロース繊維又はセルロース繊維製品及びその製造方法を提供する。
【0008】
項1.エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースが結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
【0009】
項2.セルロース繊維又はセルロース繊維製品に、(1)エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに(2)トレハロースを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理することにより得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
【0010】
項3.セルロース繊維又はセルロース繊維製品に(1)エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに(2)トレハロースを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理することにより、前記化学結合によりトレハロースが結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。
【0011】
本発明において、セルロース繊維は、従来公知のセルロース繊維であり、例えば木綿、麻等の天然セルロース、レーヨン等の再生セルロース、又はこれらの混紡品である。本発明のセルロース繊維には、これら繊維の他、これら繊維の一次加工品、例えば糸、ニット、織物、編物、不織布等が包含される。特に木綿の場合、原綿そのもの、苛性マーセル化した木綿、液体アンモニアで処理した木綿等も、本発明のセルロース繊維に包含される。
【0012】
本発明においては、本発明のセルロース繊維に非セルロース系合成繊維を混紡、交撚、混編させることもできる。
【0013】
非セルロース系合成繊維としては、従来公知のものを広く例示でき、例えばポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等を挙げることができる。上記合成繊維の中でも、ポリエステル、ポリアミド、アクリル及びポリプロピレンが好ましく、ポリエステルが特に好ましい。
【0014】
セルロース繊維に上記合成繊維が混紡される場合、混紡割合は特に限定されるものではない。セルロース繊維の混紡割合が多い方が、本発明の効果(優れた吸水性及び熱伝導性)がより一層発現されるが、混紡繊維及び繊維製品の特徴である繊維強度等の合成繊維の性能を損なわないように具現する為には、通常合成繊維が全繊維中に1〜90重量%、好ましくは20〜66重量%の割合で混紡されるのがよい。
【0015】
本発明において、セルロース繊維製品とは、上記セルロース繊維を更に加工したもの、例えば外衣、中衣、内衣等の衣料、寝装品、インテリア等の製品を意味する。本発明のセルロース繊維製品としては、具体的にはコート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、サポーター、靴下、タイツ、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、布団地、布団綿、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ等の製品を例示できる。また、本発明のセルロース繊維製品には、例えば壁布、フロア外張り等の産業資材分野で使用される繊維製品の形態のものも包含される。
【0016】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースがセルロースに結合したセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
【0017】
本発明において用いられるトレハロースは、一般名がα−D−グルコピラノシル α−D−グルコピラノシドフラボノイドと呼ばれる非還元性二糖であり、キノコ類及び酵母類に多く含まれる化合物である。
【0018】
トレハロースは、化学結合を介してセルロース繊維に結合している。
【0019】
本発明では、トレハロースは、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の割合で、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に結合しているのがよい。
【0020】
トレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品との化学結合は、エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合が挙げられる。これらの化学結合は、1種類だけであってもよいし、2種以上組み合わされていてもよい。
【0021】
本発明において、エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えば下記に示す各種の化合物を例示することができる。
【0022】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品にエステル結合(−COO−)を介してトレハロースを結合させるには、ポリカルボン酸が使用される。
【0023】
本発明において、ポリカルボン酸としては、例えば分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用することができる。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0024】
分子中に2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、例えば飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0025】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等を例示できる。
【0026】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等を例示できる。
【0027】
芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等を例示できる。
【0028】
脂環式ジカルボン酸としては、具体的にはヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等を例示できる。
【0029】
本発明において、ポリカルボン酸として、分子中に少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用するのが好ましい。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0030】
少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等を例示できる。
【0031】
脂肪族トリカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等を例示できる。
【0032】
脂肪族テトラカルボン酸としては、具体的には、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等を例示できる。
【0033】
脂肪族ペンタカルボン酸としては、具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸等を例示できる。
【0034】
脂肪族ヘキサカルボン酸としては、具体的には、トリエチレンテトラミン六酢酸等を例示できる。
【0035】
芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等を例示できる。
【0036】
カルボン酸ポリマーとしては、具体的には、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等を例示できる。
【0037】
これらポリカルボン酸は夫々単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0038】
これらのポリカルボン酸のうち、トリカルバリル酸、アコニチン酸、クエン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の水溶性のポリカルボン酸は作業性が良好であることから好ましく、特に水溶性で四塩基酸の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が最も効果が優れており好ましい。
【0039】
アセタール結合(−OCH2O−)によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えば分子内にアルデヒド基を有する化合物が挙げられ、具体的にはアルデヒド化合物等を挙げることができる。
【0040】
アルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、ジアルデヒド(グリオキザール)等が挙げられる。
【0041】
エーテル結合(−O−)によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えばN−メチロール化合物、分子内にエポキシ基(グリシジル基)やビニル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0042】
N−メチロール化合物としては、例えばジメチロール尿素及びそのメチル化物、ジメチロールエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールウロン及びそのメチル化物、ジメチロールトリアゾン及びそのメチル化物、ジメチロールプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、メチル化ジメチロールジメトキシエチレン尿素、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロール−4−メトキシ−5,5−ジメチルプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールアルキルカーバメイト及びそのメチル化物、テトラメチロールグリオキザールモノウレイン及びそのメチル化物等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素が好ましい。
【0044】
市販品としては、住友化学工業社製のスミテックスレジンシリーズ、三木理研社製のリケンレジンシリーズ等が挙げられる。
【0045】
分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物としては、例えば脂肪族エポキシ化合物、ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物、ポリグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、活性ビニル化合物の他、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン化合物、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物及びそのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0046】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化オレイルオレート等が挙げられる。
【0047】
ジグリシジル化合物としては、一般式(1)
【0048】
【化1】

【0049】
[式中、Rは−O−R1−O−又は−O(R2O)n−を示す。ここでR1は炭素数2〜12の直鎖又は分枝鎖状アルキレン基を示す。R2は−CH2CH2−、−CH2−CH(CH3)−又は−(CH24−を示し、nは4〜50の整数を示す。]
で表されるジグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0050】
トリグリシジル化合物としては、例えばグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0051】
ポリトリグリシジル化合物としては、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0052】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0053】
異節環状型エポキシ化合物としては、例えばトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0054】
上記一般式(1)で表されるジグリシジルエーテルの中でも、R1がエチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、グリセリン系であるものが好ましい。
【0055】
市販品としては、ナガセ化成工業社製のデナコールEXシリーズ等が挙げられる。
【0056】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物、分子内にジメタクリロイル基を有する化合物、分子内にトリアリル基を有する化合物、分子内にテトラアリル基を有する化合物、分子内にペンタアリル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0057】
分子内にジアクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等を例示できる。
【0058】
分子内にジメタクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸ジアリル、ジアリルクロレンデート、N,N−メチレンビスアクリルアミド等を例示できる。
【0059】
分子内にトリアリル基を有する化合物としては、具体的にはトリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレートとそのエチレンオキシド変性物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリメタアリルイソシアヌレート等を例示できる。
【0060】
分子内にテトラアリル基を有する化合物としては、具体的にはジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を例示できる。
【0061】
分子内にペンタアリル基を有する化合物としては、具体的にはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示できる。
【0062】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物や分子内にジメタクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)やポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)が好ましい。
【0063】
ウレタン結合(−NCOO−)によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えばジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等の他、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を挙げることができる。
【0064】
ジイソシアネート化合物としては、具体的にはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を例示できる。
【0065】
トリイソシアネート化合物としては、具体的にはトリフェニルメタントリイソシアネート等を例示できる。
【0066】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的にはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を例示できる。
【0067】
本発明では、上記ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等は、活性イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたものであってもよい。ブロック剤としては、例えばオキシム(アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(ε−カプロラクタム)、ジエチルマロネート、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、重亜硫酸塩等を挙げることができる。
【0068】
これらの中でも、ジイソシアネート化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0069】
市販品としては、第一工業製薬社製のエラストロンシリーズ等が挙げられる。
【0070】
エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物(以下これらの化合物を「化学結合形成化合物」という)としては、上記に例示した化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0071】
本発明では、化学結合形成化合物は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品中に0.1〜40重量%、好ましくは1〜15重量%含有されているのがよい。
【0072】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、例えば下記に示す方法により製造される。
【0073】
方法A:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にトレハロース及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理することにより製造される。
【0074】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品へトレハロース及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させるに当たっては、従来公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、コーティング法等従来公知の各種の方法を広く適用することができる。本発明では、トレハロース及び化学結合形成化合物を含有する処理液中に処理すべきセルロース繊維又はセルロース繊維製品を浸漬する、いわゆる、浸漬法を採用するのが好ましい。
【0075】
以下、浸漬法につき詳述する。
【0076】
処理液中のトレハロース濃度及び化学結合形成化合物濃度は、処理液の絞り率と必要とする担持量より算出した濃度に設定すればよい。
【0077】
本発明では、一つの処理液中に所定濃度のトレハロース及び化学結合形成化合物が全て含有されていてもよいし、これらトレハロース及び化学結合形成化合物が別個の処理液中に含有されていてもよい。
【0078】
上記処理液のpHは0〜6、好ましくは2〜5に調整されていることが好ましい。処理液のpHがこの範囲であれば、本発明で所望するセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることができる。当該範囲のpHは処理液に対して中和剤、即ち適当なアルカリ又は塩を添加することにより調整できる。
【0079】
pHの調整に使用される中和剤として、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記のナトリウム塩に代わり、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用できる。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
上記中和剤の添加量は、使用されるトレハロース及び化学結合形成化合物の溶解量や種類にもよるが、処理液中の濃度として通常0.1〜10重量%程度とするのがよい。
【0081】
上記処理液を構成する溶媒としては有機溶媒でも差支えないが、安全、価格を考慮すれば水を溶媒にするのが好ましい。また処理液の形態は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、溶液の形態であっても乳化液の形態であってもよいが、処理効率及び安全性の観点から水溶液であることが好ましい。
【0082】
上記処理液のセルロース繊維又はセルロース繊維製品に対する浸透速度は充分に速く、浸漬時間、浴温度に特に制限はない。通常、浸漬時間0.1〜300秒、浴温は10〜40℃で行われる。絞りは加工する製品によって異なり、夫々に適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、絞り率は30〜200%で行うのが好ましい。
【0083】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行う。工業的には、乾燥温度は40〜150℃、時間は温度に応じて選定すればよい。
【0084】
本発明においては、トレハロース及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を次いで加熱処理する。
【0085】
加熱処理の温度は、通常100〜250℃、好ましくは120〜200℃、処理時間は20秒〜1時間である。
【0086】
方法B:
本発明のセルロース繊維製品は、セルロース繊維にトレハロースを付着及び/又は含浸させ、更に乾燥した後、縫製等によりセルロース繊維製品とし、次いで該セルロース繊維製品を気相ホルマリン加工処理することにより製造される。
【0087】
セルロース繊維にセルロース繊維にトレハロースを付着及び/又は含浸させる工程、及び乾燥工程の各手段や条件は、方法Aと同じでよい。
【0088】
気相ホルマリン加工処理につき、以下に説明する。
【0089】
ホルマリンを吸着させるために適度な水分率に調節した後、気相ホルマリン加工処理すべきセルロース繊維製品にホルムアルデヒドガスを吸着させ、熱処理してホルムアルデヒドを架橋せしめる。
【0090】
架橋反応をさせる際に用いる触媒は、予めセルロース繊維製品に触媒溶液をパディングした後に気相処理を行ってもよいし、触媒溶液又は液化している触媒を気化又はミスト化してセルロース繊維製品に吸着させてもよい。或いは、セルロース繊維にトレハロースを付着及び/又は含浸させる際に、触媒をセルロース繊維に吸着させておいてもよい。
【0091】
触媒としては、例えば塩化水素ガス、亜硫酸ガス等のガス、塩酸、硝酸、硫酸、りん酸等の無機酸、グリコール酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸等の有機酸等を挙げることができる。また、例えば塩化アルミニウム 、硫酸アルミニウム 、塩基性塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム 、リン酸二水素マグネシウム 、ホウフッ化亜鉛 、硝酸亜鉛 、塩化亜鉛 、ホウフッ化マグネシウム 、過塩素酸マグネシウム等の各種金属塩(結晶水含有物も含む)類、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸等の強酸のアンモニウム塩類、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの塩酸塩等の各種アルカノールアミンの酸性塩及びこれらの混合物等のルイス酸も触媒として使用可能である。
【0092】
ホルムアルデヒドガスを吸着させた後、セルロース繊維製品を熱処理して架橋反応を行うが、この熱処理は、100〜180℃の範囲の温度、0.5〜10分間の処理を行うことにより架橋反応を完結することができる。
【0093】
方法C:
本発明のセルロース繊維製品は、セルロース繊維製品にトレハロースを付着及び/又は含浸させ、必要に応じて乾燥した後、該セルロース繊維製品を気相ホルマリン加工処理することにより製造される。
【0094】
セルロース繊維製品にトレハロースを付着及び/又は含浸させる工程、及びホルマリン加工処理工程の各手段や条件は、方法Aや方法Bと同じでよい。
【0095】
本発明では、方法Aに従いセルロース繊維又はセルロース繊維製品を製造するのが特に好ましい。方法Aに従い製造されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、一段と優れた形態安定性、吸水性及び熱伝導性を発現する。
【発明の効果】
【0096】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、形態安定性に優れている。本発明セルロース繊維又はセルロース繊維製品の形態安定性は、形態安定加工処理したセルロース繊維又はセルロース繊維製品と同等レベルである。
【0097】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、吸水性及び熱伝導性に優れている。本発明セルロース繊維又はセルロース繊維製品の吸水性及び熱伝導性は、未処理のセルロース繊維又はセルロース繊維製品と同等レベル又はそれ以上である。
【0098】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、油汚れが落ちやすいSR性に優れている。本発明セルロース繊維又はセルロース繊維製品のSR性は、未処理のセルロース繊維又はセルロース繊維製品と同等レベルである。
【0099】
特に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、加齢臭に対して優れた防臭性能を有している。
【0100】
人体から発生する臭気には、酸性臭、塩基性臭及び中性臭の性質の異なる臭気が存在している。更に、中高年の人の皮脂には、若い人には殆ど存在しないパルミトオレイン酸という脂肪酸が多く存在し、これが過酸化脂質によって酸化分解されたり、皮膚表面に常在している菌によって分解されて、ノネナールというアルデヒドが生成する。このノネナールという成分が加齢臭の原因となる臭気物質であることが突き止められている。
【0101】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品では、パルミトオレイン酸がノネナールに変化することを防止できるので、加齢臭の発生を抑制することができる。
【0102】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品では、ヒスチジン等のアミノ酸がアミン臭に変化することを防止できるので、塩基臭の発生を抑制することができる。
【0103】
更に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、洗濯を繰り返し行っても上記防臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えている。
【0104】
また、反応染料で着色されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品にトレハロースを化学結合を介して結合させることにより、汗耐光堅牢度を向上させることができる。
【0105】
従って、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、クールビズ用の涼感衣類又はその素材として好適に使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0106】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0107】
実施例1
目付125g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及びトレハロース(商品名:(株)林原商事製のトレハ)5重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、本発明の綿織物を得た。
【0108】
実施例2
目付125g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:SK−19、三木理研(株)製)10重量%、塩化マグネシウム触媒(商品名:MX−1、三木理研(株)製)4重量%及びトレハロース(商品名:(株)林原商事製のトレハ)5重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、本発明の綿織物を得た。
【0109】
実施例3
目付100g/m2のポリエステル/綿混紡織物(綿50%、ポリエステル50%)を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及びトレハロース(商品名:(株)林原商事製のトレハ)5重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、本発明の織物を得た。
【0110】
実施例4
目付100g/m2のポリエステル/綿混紡織物(綿50%、ポリエステル50%)を精練、漂白、シルケット処理の後、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:SK−19、三木理研(株)製)10重量%、塩化マグネシウム触媒(商品名:MX−1、三木理研(株)製)4重量%及びトレハロース(商品名:(株)林原商事製のトレハ)5重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、本発明の織物を得た。
【0111】
比較例1
目付125g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%及び炭酸ソーダ1.2重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、比較のための綿織物を得た。
【0112】
比較例2
目付125g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理して比較のための綿織物を得た。
【0113】
比較例3
目付100g/m2のポリエステル/綿混紡織物(綿50%、ポリエステル50%)を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%及び炭酸ソーダ1.2重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、比較のための織物を得た。
【0114】
比較例4
目付100g/m2のポリエステル/綿混紡織物(綿50%、ポリエステル50%)を精練、漂白、シルケット処理して比較のための織物を得た。
【0115】
比較例5
目付125g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:SK−19、三木理研(株)製)10重量%及び塩化マグネシウム触媒(商品名:MX−1、三木理研(株)製)4重量%含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、比較のための綿織物を得た。
【0116】
参考例(綿織物の染色)
目付120g/m2の綿100%織物を精練、漂白、シルケット処理の後、スミテックスブルーR(反応染料、住友化学製)1.0重量%及びMSリキッド(還元防止剤、明成化学製)0.4重量%、ニッカガムC−150(マイグレーション防止剤、日華化学製)0.2重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率60%)、100℃で3分乾燥後、塩化ナトリウム25重量%、水酸化ナトリウム(48°Be)7.0重量%及びソーダ灰2.0重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率60%)、飽和蒸気105℃で1分間処理を行った。次いで、酢酸(80%水溶液)1ml/リットルを含む水溶液に30秒浸漬し、80℃で1分間湯洗い洗浄後、マングルで絞り(絞り率80%)、100℃で2分間乾燥し、染色織物を得た。
【0117】
実施例5
上記参考例で得られた染色織物を、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:SK−19、三木理研(株)製)10重量%、塩化マグネシウム触媒(商品名:MX−1、三木理研(株)製)4重量%及びトレハロース(商品名:(株)林原商事製のトレハ)5重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、50℃で1分湯洗い後、マングルで絞り(絞り率80%)、100℃で2分間乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0118】
比較例6
上記参考例で得られた染色織物を、比較のための綿織物とした。
【0119】
比較例7
上記参考例で得られた染色織物を、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:SK−19、三木理研(株)製)10重量%及び塩化マグネシウム触媒(商品名:MX−1、三木理研(株)製)4重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、50℃で1分湯洗い後マングルで絞り(絞り率80%)、100℃で2分間乾燥し、比較のための綿織物を得た。
【0120】
試験例1
実施例2、比較例1及び比較例2で得られた各綿織物について、吸水性及びSR性を調べた。吸水性の評価は、バイレック法(JIS L1907 繊維製品の吸水性試験法)により行った。SR性の評価は、綿織物に市販のラー油を1滴垂らして1分間放置した後、該綿織物を水中に1時間沈めておき、ラー油の剥離具合を目視観察することにより行った。
【0121】
バイレック法により吸水性を調べた結果、実施例2で得られた綿織物は22mm、比較例1で得られた綿織物(形態安定加工処理)は16mm、比較例2で得られた綿織物(未処理)は28mmであった。これらの結果から、次のことがわかる。形態安定加工処理した比較例1の綿織物は、未処理である比較例2の綿織物に比し、吸水性が大幅に低下したが、形態安定加工処理と共にトレハロース処理を行った実施例2の綿織物は、吸水性が著しく向上した。
【0122】
ラー油の剥離具合を目視観察した結果、実施例2で得られた綿織物及び比較例2で得られた綿織物では、ラー油の剥離状態は良好であったが、比較例1で得られた綿織物では、ラー油の剥離状態は不良であった。これらの結果から、次のことがわかる。形態安定加工処理した比較例1の綿織物は、未処理である比較例2の綿織物に比し、SR性が大幅に低下したが、形態安定加工処理と共にトレハロース処理を行った実施例2の綿織物は、SR性が著しく向上し、未処理である比較例2の綿織物のそれとほぼ同レベルまで改善された。
【0123】
試験例2
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた各織物について、熱伝導性を調べた。各織物の熱損失速度を、カトーテック(株)製のKES−F7 THERBO LABOII(ヒーター温度:37℃、循環水温度:20℃)を使用して測定した。この試験は、環境試験室(温度20℃、湿度65%)の中で行った。また、(株)ミツトヨ製の小型測厚器を用いて、各織物の厚みを測定した。
【0124】
上記各織物を10回洗濯を繰り返した後、上記と同様に各織物の熱損失速度及び厚みを測定した。洗濯は、JIS L0217で規定されている103法吊干しにより行った。
【0125】
更に次式を用いて、各織物の熱伝導率を算出した。
【0126】
【数1】

【0127】
上記式において、Kは熱伝導率(w/cm・℃)、Wは熱損失速度(w)、Dは織物の厚み(cm)、Aは接触面積(25cm2)、Tは熱板温度(37℃)、T0は循環水温度(20℃)である。
【0128】
結果を下記表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
綿織物は、熱損失速度が大きいほど、放熱性が高いために、涼しく感じる。また、綿織物の熱伝導率が大きいほど、熱が伝わりやすいために、涼しく感じる。
【0131】
上記試験結果より、次のことがわかる。形態安定加工処理した比較例1の織物は、未処理の比較例2の織物に比し、熱損失速度及び熱伝導率が共に小さいので、熱が逃げにくく、暑く感じる。これに対して、形態安定加工処理及びトレハロース処理した実施例2の織物は、形態安定加工処理した比較例1の織物は勿論、未処理の比較例2の織物に比べても、熱伝導率がより大きくなり、しかも繰り返しの洗濯によっても熱伝導率が殆ど低下しないので、熱が一層逃げやすくなり、より一層涼しく感じることができる。
【0132】
試験例3
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた各織物について、形態安定性(W・W性)を調べた。この試験は、JIS L 1096に従った。結果を下記表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
上記試験結果より、本発明の織物は、形態安定加工処理した比較例1及び比較例3の織物と、同レベルの形態安定性(W・W性)を備えていることがわかる。
【0135】
上記試験例1〜3から、セルロース繊維又は繊維製品にトレハロース処理を施すことにより、形態安定加工処理によって損なわれた吸水性や清涼感を回復でき、しかも優れた形態安定性を維持できることが明らかになった。
【0136】
試験例4
実施例2で得られた織物、実施例2で得られた織物を10回洗濯を繰り返した織物及び比較例5で得られた織物について、防臭性能を調べた。
【0137】
(1) パルミトオレイン酸官能試験
上記各織物を所定の大きさに裁断した試験布(2cm×2cm)を10枚重ね、容器に入れた。容器に入れた試験布にパルミトオレイン酸50mgを滴下し、その上から純水1mlを滴下した。容器の蓋を閉め、インキュベーターにて温度37℃、湿度80%の環境に保ち、2日間放置した。インキュベーターから試験布を取り出し、官能試験者9名に試験布の臭気を嗅がせ、下記に示す5段階基準に従い官能値を決定した。
官能値
1:無臭
2:かすかに臭う
3:やや臭う
4:かなり臭う
5:強烈に臭う
結果を下記表3に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
(2) 人工汗(ATTSアルカリ人工汗)官能試験
上記各織物を所定の大きさに裁断した試験布(2cm×2cm)を10枚重ね、容器に入れた。容器に入れた試験布に人工汗液1mlを滴下した。容器の蓋を閉め、インキュベーターにて温度37℃、湿度80%の環境に保ち、2日間放置した。インキュベーターから試験布を取り出し、官能試験者9名に試験布の臭気を嗅がせ、上記に示す5段階基準に従い官能値を決定した。
【0140】
結果を下記表4に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
試験例6
20〜40代の女性10名及び40〜50代の男性10名を対象に、以下の条件でTシャツ着用試験を行った。
【0143】
実施例2の条件で加工した綿100%のTシャツ(このTシャツを以下「TシャツA」という)及び比較例5の条件で加工した綿100%のTシャツ(このTシャツを以下「TシャツB」という)を試験に使用した。試験用Tシャツを1日着用後、脱衣時にTシャツの臭気を嗅ぐ。TシャツA及びTシャツBを交互に着用し、着用後洗濯し、次の試験時に着用する。これら一連の作業を8月上旬から中旬にかけて2週間実施した。
【0144】
その結果、20〜40代の女性10名のうち6名が、TシャツAを着用した場合は、TシャツBを着用した場合に比し、汗の臭いが低減したと認識した。また、40〜50代の男性10名のうち7名が、TシャツAを着用した場合は、TシャツBを着用した場合に比し、汗の臭いが低減したと認識した。
【0145】
これらのことから、トレハロースで処理した綿製品は、加齢臭が出やすい中高年の人はもちろん、若い人についても汗が付着した衣類が臭くなるのを防ぐ効果を発現することが明らかである。
【0146】
試験例7
実施例5、比較例6及び比較例7で得られた綿織物について、ATTS汗耐光堅牢度試験を行った。この試験は、JIS L 0888 8.1 A法に従った。
【0147】
アルカリ汗液の組成は、L−ヒスチジン0.5g/l、塩化ナトリウム5g/l、リン酸二水素ナトリウム・12水和物5g/l、85%乳酸5g/l、DL−アスパラギン酸0.5g/l、D−Fパントテン酸ナトリウム5g/l及びグルコース5g/lである。これを0.1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8に調整したものを、アルカリ汗液として使用した。
耐光試験機:スガ試験機(株)製のスタンダード紫外線ロングライフフェードメーター
結果を下記表5に示す。
【0148】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースが結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
【請求項2】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に、(1)エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに(2)トレハロースを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理することにより得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
【請求項3】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に(1)エステル結合、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合からなる群から選ばれた少なくとも1種の化学結合によりトレハロースとセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに(2)トレハロースを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理することにより、前記化学結合によりトレハロースが結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。

【公開番号】特開2007−270416(P2007−270416A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305280(P2006−305280)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】