説明

セル用包装材及びその製造方法

セル用包装材であって、前記セル用包装材は、1層以上の層構造からなり、前記1層以上に難燃剤が含まれるか、難燃性が与えられたコーティング層が形成されるか、またはこれらが併用されたセル用包装材及びその製造方法が開示される。このようなセル用包装材は、セル自体に難燃フィルムや難燃剤を含ませるものではないため、セルの体積を増加させたり、セルの作動に影響を及ぼしたりすることなく、セルに難燃性を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル用包装材及びその製造方法に係り、より詳しくは、リチウム2次電池や携帯用蓄電池などのセルの外部包装材に難燃性を与えたセル用包装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池などのような2次電池や携帯用蓄電池などのような各種の電池(以下、「セル」という)では、内部短絡や外部短絡または過充放電などによって電圧が急上昇することがあり、これにより電池が過熱されることがある。
【0003】
このような危険を防止するために、セルをPTC(positive temperature coefficient)素子、サーマルヒューズ(thermal fuse)、保護回路などといった安全装置に電気的に接続して使用することがある。該安全装置は、セルの電圧や温度が急上昇すると電流を遮断することで、電池の過熱を防止することができるものである。 一方、外部の衝撃からセルを保護するために、アルミニウム材料またはニッケルメッキが施された鉄などでセルを梱包する、いわゆるインナーパックバッテリー形態でセルを製造することができる。 また、セルと保護回路とを組み付け、最終的にセルと保護回路とを一体で金型に入れてモールディング処理を施すことにより、保護回路も衝撃に耐えられるように設計することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルに対する前記のような危険を防止する安全装置や保護用包装体を備えた場合であっても、短絡や電圧の急上昇に起因した電池の過熱などの内的要因や外的要因によって、セルが爆発したり、火事などが発生する可能性が存在する。自己消火機能によりセルの燃焼による火事などを最小化するか、または防止するために、セルに難燃性を与える必要がある。本発明者らは、セル自体の体積を増加させたり、セルの作動に影響を及ぼしたりすることなく、セルに難燃性を与えることができる方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の具現例では、セル用包装材であって、前記セル用包装材は、1層以上の層構造からなり、前記1層以上に難燃剤が含まれるか、難燃剤のコーティング層が形成されるか、またはこれらが併用されたことを特徴とするセル用包装材及びその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の具現例によると、セル自体に難燃フィルムや難燃剤を含ませるものではないため、セルの体積を増加させたり、セルの作動に影響を及ぼしたりすることなく、セルに難燃性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な具現例を説明する。
セルは、一般に、正極、負極、セパレータ、電解質などを含む電池部からなり、このような電池部の外部を包装材によって包装することができ、これをセル用包装材という。
【0008】
本発明の例示的な具現例では、セルの電池部自体内に難燃フィルムを別個に設けたり、電解質中に難燃剤を添加したりするなどの方法に代えて、セルを外部包装する包装材を構成する一つ以上の層に難燃剤を含有させたり、前記一つ以上の層に難燃剤のコーティング層を形成したりすることにより、セルの体積や作動に影響を及ぼすことなくセルに難燃性を与えることができるようにする。
【0009】
本発明の例示的な具現例によるセル用包装材は、例えば、合成樹脂からなる最外層と、前記最外層の下部に形成されるバリアー層、及び前記バリアー層の下部に形成される最内層であるシーラント層とを含んでなるものであってよい。
【0010】
前記最外層と前記バリアー層との間には接着剤層が形成されていてよく、前記バリアー層と前記シーラント層との間には溶融押出樹脂層が更に形成されていてよい。
本発明の例示的な具現例では、前記最外層、前記バリアー層、前記溶融押出樹脂層、前記シーラント層のうちから選択されるいずれか一つ以上の層に難燃剤が含有されていてよい。または、前記いずれか一つ以上の層上に難燃剤のコーティング層が形成されていてよい。または、前記層内に難燃剤を含有する方法と難燃剤のコーティング層を形成する方法とを併用していてよい。
【0011】
前記難燃剤を含有させる方法は、当該層中に難燃剤を添加剤として添加する方法だけでなく、当該層がプラスチック樹脂を含む場合であれば、難燃成分をプラスチック樹脂構造内に化学的に結合させることも含み得る。
【0012】
前記難燃剤を含有させる方法において、前記溶融押出樹脂層及びシーラント層の少なくともいずれか一方に難燃剤を含有させることが、難燃性の面で好ましい。
シーラント層や溶融押出樹脂層は、一般に合成樹脂からなり、且つ内側に存在するため、これらの層に難燃剤を含有させることは難燃性の面で好ましい。また、当該層に難燃剤を含有させると、電池部側からの燃焼を遮断することができる。さらには、別途のコーティング及びラミネーション工程を追加することなく済むため、コスト上昇を抑えることができる。
【0013】
前記難燃剤のコーティング層を形成する方法において、最外層上に難燃剤のコーティング層を形成することが、難燃性の面で好ましい。最外層は、一般に合成樹脂からなり且つ最外側に存在する。最外層に難燃剤のコーティング層を形成すると、外部からの燃焼があった場合、それを遮断することができる。
【0014】
前記難燃剤コーティング層を形成する一つの例として、難燃剤コーティング用組成物を調製し、それを塗布すればよい。
前記難燃剤コーティング用組成物の非制限的な例示として、前記難燃剤コーティング用組成物は、バインダー、難燃剤、スリップ剤、溶媒を含んでなるものであればよい。
【0015】
前記バインダーは、最外層に難燃剤のコーティング層の密着性を高めるために使用することができる。前記バインダーの非制限的な例示として、アクリル酸アルキルエステルモノマーとアクリル酸などの官能基含有モノマーとの共重合体、またはウレタン系ポリマーなどのバインダーを使用すればよい。
【0016】
前記溶媒の非制限的な例示として、エチレンアルコール(EA)、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)などのような有機溶媒を使用すればよい。
前記難燃剤としては、特定の難燃剤に制限されるものではなく、一般的な難燃剤を使用すればよい。なお、最外層、シーラント層、溶融押出樹脂層などの各樹脂層に使用される樹脂と相溶性を有し、且つ、当該層の接合性などを低下させないものを使用することが好ましい。また、最終製品の機械的な性質に影響を及ぼさず、且つ燃焼時の発煙や毒性ガスの発生も少ないものを使用することが好ましい。
【0017】
前記難燃剤の非制限的な例示として、例えば、リン系、ハロゲン系、メラミン系などの有機難燃剤や、水酸化アルミニウム、アンチモン系製品、水酸化マグネシウムなどの無機難燃剤を使用すればよい。 前記ハロゲン系難燃剤は、一般に気体相で発生するラジカルを安定化させることで難燃効果を発揮することができるものである。
【0018】
前記ハロゲン系難燃剤の非制限的な例示として、トリブロモフェノキシエタン、テトラブロモビスフェノール−A(TBBA)、オクタブロモジフェニルエーテル(OBDPE)、臭素化エポキシ、臭素化ポリカーボネートオリゴマー、臭素化ベンジルアルキルエーテル、臭素化安息香酸エステル、臭素化フタル酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、脂環式塩素系難燃剤などが挙げられる。 環境的な面を考慮して、非ハロゲン系難燃剤を使用するのが好ましい。このような難燃剤として、リン系、メラミン系などの有機難燃剤や無機難燃剤を使用すればよい。
【0019】
前記リン系難燃剤は、一般に熱分解によってポリメタリン酸を生成し、これが保護層を形成することにより、またはポリメタリン酸が生成されるときの脱水作用によって生成される炭素被膜が酸素を遮断することにより、難燃効果を発揮できるものである。
【0020】
前記リン系難燃剤の非制限的な例示として、赤リン、リン酸アンモニウムなどのホスフェート(phosphates)、アンモニウムポリホスフェート、トリオクチルホスフェート(trioctyl phosphate)、ジメチルメチルホスフェート(dimethyl methylphosphate)、トリメチロールプロパンメチルホスホン酸オリゴマー(trimethylolpropane methylphosphonic oligomer)、ペンタエリスリトールホスフェート(pentaerythritol phosphate)、環状ネオペンチルチオホスホン酸無水物(cyclic neopentyl thio phosphoric anhydride)、トリフェニルホスフェート(triphenyl phosphate)、トリクレシルホスフェート(tricresyl phosphate)、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート(tert−butylphenyl diphenyl phosphate)、テトラフェニル m−p−フェニレンジホスフェート(tetraphenyl m−p−phenylene diphosphate)、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート(tris(2,4−dibromophenyl)phosphate)、N,N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホナート(N,N'−bis(2−hydoxyethyl)aminomethyl phosphonate)、ホスフィンオキシド(phosphine oxide)、ホスフィンオキシドジオール(phosphine oxide diols)、ホスファイト(phosphites)、ホスホナート(phosphonates)、トリアリールホスフェート(triaryl phosphate)、アルキルジアリールホスフェート(alkyldiaryl phosphate)、トリアルキルホスフェート(trialkyl phosphate)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(resorcinol bis(diphenyl phosphate);RDP)などが挙げられる。
【0021】
メラミンは、大部分の有機酸や無機酸と安定した塩の形態をなし、難燃剤として使用できる。このようなメラミン系難燃剤は、煙りが少なく且つ生分解可能である。前記メラミン系化合物の非制限的な例示として、メラミンシアヌール酸塩などが挙げられる。
【0022】
前記無機化合物難燃剤は熱によって分解され、水、二酸化炭素、二酸化硫黄、塩化水素などの不燃性ガスを放出し、且つ吸熱反応を誘発することで、可燃性ガスを希釈させて酸素の接近を防止し、吸熱反応によって冷却及び熱分解生成物の生成を減少させることで難燃効果を発揮することができる。
【0023】
前記無機化合物難燃剤の非制限的な例示として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化スズ、酸化スズ、酸化モリブデン、ジルコニウム化合物、酒石酸亜鉛、グアニジン系化合物、ホウ酸塩、カルシウム塩などが挙げられる。 以上のような難燃剤を使用してコーティングする場合、最外層の摩擦係数が高くなり、最終製品での成形特性が悪くなることがある。このため、難燃剤と混入が可能で、且つ難燃性に影響しないスリップ剤を添加することが好ましい。
【0024】
前記スリップ剤は、加工途中または直後に、その表面から滲み出て塗布されつつ、フィルム同士の接着を防止するとともに、フィルムやシートが滑りやすくすることができるものである。
【0025】
前記スリップ剤としては、一般的なものを使用することができ、シリコン、シロキサン、シラン、ワックス系などのようにスリップ性を与える高分子物質を含み得る。また、スリップ剤の非制限的な例示としては、オレイン酸アミド、メルカプツール酸アミドなどの脂肪酸アミドが挙げられる。このようなスリップ剤を含むコーティング層は、摩擦系数を下げて潤滑作用を付与するようになる。 前記スリップ剤の代わりに、またはそれとブロッキング防止剤を併用することも可能である。例えば、スリップ剤の代わりにブロッキング防止剤を使用する場合、前記ブロッキング防止剤の含有量は、スリップ剤の含有量と等しい含有量で使用すればよい。また、前記ブロッキング防止剤と前記スリップ剤とを併用する場合、ブロッキング防止剤とスリップ剤との総含有量は、前記スリップ剤を単独で使用する場合の含有量と等しい含有量で使用すればよい。
【0026】
前記ブロッキング防止剤として、シリカ、珪藻土、カオリン及びタルクなどのような無機物質粒子を使用することができる。これらの粒子は、当該コーティング層に含有されることで、隣接するフィルムとの間に薄い空間を形成し、これにより、フィルム同士の接着を防止することができる。
【0027】
バインダー、難燃剤、スリップ剤を含む難燃剤コーティング用組成物において、前記バインダー100重量部に対し、難燃剤20〜80重量部及びスリップ剤3〜20重量部を使用することが、難燃性、スリップ性、透明性、コーティング性の面で好ましい。 また、バインダー100重量部に対し、難燃剤30〜60重量部及びスリップ剤7〜12重量部を使用することがより好ましく、バインダー100重量部に対し、難燃剤50〜60重量部及びスリップ剤10〜12重量部を使用することが最も好ましい。 前記難燃剤コーティング用組成物における溶媒は、前記バインダー100重量部、難燃剤20〜80重量部及びスリップ剤3〜20重量部の難燃剤コーティング用組成物に対し、300〜2500重量部の割合で含まれていてよく、これにより製造されたコーティング用組成物の固形分が5〜40重量%になるようにすることが、一定のコーティング厚さ、コーティング温度及びコーティング速度を保てるようにするため好ましい。
【0028】
以下、セル用包装材の各層について詳述する。
前記最外層フィルムとしては、耐電解液性に優れたポリエステルフィルムを単独で使用するか、特に成形性補強が可能なポリアミドフィルムを単独で使用するか、前記ポリエステルフィルムをポリアミドフィルムと積層してなるもの(積層の上下順序は変更することができる)を使用することができ、また、後述するように耐電解液性と成形性を併せ持つポリエステルフィルムを使用することができる。
【0029】
前記ポリエステルフィルムは、電解液耐性に優れたものであって、使用可能なポリエステルフィルム樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate;PBT)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate;PEN)、ポリブチレンナフタレート(polybutylene naphthalate;PBN)、共重合ポリエステル及びポリカーボネート(polycarbonate;PC)などからなる群より選択された一つ以上のものを使用する。
【0030】
前記ポリエステルフィルムが包装材の表面を効率よく保護するためには、フィルムの厚さを、一般的に1.2ないし25μmに、好ましくは1.2ないし9.0μmになるようにする。 前記ポリアミドフィルムは、成形性を補強するためのものであるが、成形性は特に成形タイプのパウチに要求される。成形タイプの場合、電池の容量と大きさなどを勘案して成形可能な二軸延伸ポリアミド(polyamides)フィルムを使用する。
【0031】
前記二軸延伸ポリアミド(polyamides)フィルム樹脂としては、ナイロン(nylon)6、ナイロン6.6、ナイロン6とナイロン6.6との共重合体、ナイロン6.10及びポリメタキシレンアジパミド(MXD6)などからなる群より選択された一つ以上のものを使用する。前記ポリアミドフィルムの厚さは、15ないし50μm、好ましくは、15ないし25μmになるようにする。
【0032】
前記ポリエステルフィルムとポリアミドフィルム間、ひいてはポリアミドフィルムとその下部層間を接着剤を介して貼り合わせる。このときに使用される接着剤は、耐熱性に優れたポリウレタン接着剤であればよく、特にウレタンベースの2液型接着剤を使用することが好ましい。内部包装されたセルにおいて電池の移動時に発熱による高温が発生するため、耐熱性が悪い接着剤が使用された場合、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムとの間、及びポリアミドフィルムとその下部層との間において剥離現象が生じる。したがって、耐熱性に優れた接着剤を使用することが望ましい。
【0033】
前記接着剤の耐熱性は、貼り合わせ状態または製品化された状態で、所定の温度条件のドライオーブン中に入れ、所定時間の経過後に取り出して剥離が生じたか否かを確認することで測定する。一般に、前記接着剤は、150℃で5分以上または260℃で10秒経過後も層剥離が生じない程度の耐熱性を有するものを使用する。
【0034】
前記最外層に難燃剤コーティング層が形成される場合、外面コロナ層を更に含んでいてよい。このような外面コロナ層は、コーティング層を形成及び保持しやすくする。
前記バリアー層は、湿気やガスなどを遮断する層であって、例えば、アルミニウム箔を使用する。 さらに、前記アルミニウム箔は鉄を含有していてよく、このように鉄を含有する場合、アルミニウム箔の絶縁性が良くなり、且つ曲げによるピンホールの発生が少なくなり、特にエンボスタイプの外装体を成形する場合、側壁を形成しやすくする。このとき、前記鉄の含有量が0.6重量%未満である場合は、ピンホールの発生防止、エンボス成形性の改善などの効果がなく、鉄の含有量が2.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層材にて袋材を成形するにあたって加工性が悪くなる。また、前記アルミニウム箔には珪素が含有されることが好ましいが、このとき、珪素の含有量が0.9重量%を超えると、磁気的性質は向上するものの、袋形態に成形する際の加工性が悪くなり、また、珪素の含有量が0.05重量%未満では、製品の強度が弱くなり且つ延伸率が低くなってしまい、袋形態に成形する際の加工性が悪くなる。
【0035】
したがって、前記アルミニウム箔は、珪素(Si)及び鉄(Fe)を含有し、特に成形性と加工性などの観点から、珪素の含有量が0.05ないし0.9重量%であるのが好ましく、鉄の含有量が0.6ないし2.0重量%であることが好ましい。
【0036】
一方、前記アルミニウム箔は、その片面または両面に腐食防止及び接着強度の向上のためのノンクロメート処理が施されていてよい。前記ノンクロメート処理としては、チタン系樹脂、ジルコニウム、リン酸塩などの有機系、及び無機系と有機系の複合物からなる群より選択された一つ以上の化合物で耐酸性被膜を形成する。このとき、前記アルミニウム箔への前記ノンクロメート処理は、その両面に施したほうが塩分抵抗性を更に高めることができる。前記のような処理方式の他、アルミニウム箔をアクリル系、フェノール系、エポキシ系、フッ素系樹脂などの高分子樹脂でコーティング処理することも可能である。
【0037】
前記最外層とバリアー層とは、接着剤層を挟んで接着されていてよい。
前記接着剤としては、エポキシ系、フェノール系、メラミン系、ポリイミド系、ポリエステル系、ウレタン系(polyurethane)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylrene terephthalate)共重合体、ポリエーテルウレタン系などの樹脂を含む1液型、または主剤と硬化剤とからなる2液型接着剤を使用すればよく、特に、耐熱性に優れたウレタン系接着剤を使用するのが好ましい。
【0038】
セル用包装材の難燃性を高めるために、難燃剤を含む接着剤を使用することが考えられる。しかし、接着剤層に難燃剤を添加する場合、所定量を超えると接着性が弱くなり、成形時に層間剥離現象や白化現象などが生じることがある。そのため、難燃剤を添加する場合、その量は、接着剤に対して0重量%を超えて30重量%以下に使用するのが好ましい。
【0039】
前記シーラント層は、5ないし120μmで形成することができ、前記バリアー層とシーラント層との間には溶融押出樹脂層を更に形成することができる。例えば、バリアー層/溶融押出樹脂層/シーラント層の順に積層されるようにすることができる。
【0040】
前記溶融押出樹脂層は、溶融押出コーティングにて被膜を形成して付着力を提供することで、上下の二つの層を貼り合わせる役割をするものである。前記溶融押出樹脂層は、例えば、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂を溶融押出して前記バリアー層にポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂被膜を形成してなり、シーラント層と貼り合わせることができる。 前記溶融押出樹脂層のコーティング厚さは、10〜80μm、好ましくは10〜40μmであってよい。
【0041】
前述したように、前記溶融押出樹脂層において難燃剤を添加して難燃性を与えることができる。難燃剤の含有量は、溶融押出樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲であればよい。難燃剤を適用するにあたって、溶融押出樹脂層において要求される接着力が落ちない水準に、適宜難燃剤の含有量を制限するのが好ましい。
【0042】
前記シーラント層は、包装材を熱にて封止するため、熱によって封止が可能な樹脂層を使用する。
このとき、使用する樹脂は、成形タイプの場合、成形時に成形機械における金型の表面との滑り性や熱封止強度特性、成形時に成形条件による熱封止層の割れ、白化、ピンホールなどを防止できるものを使用することが好ましい。
【0043】
このためにシーラント層として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーなどからなる群より選択された一つ以上に、エチレン、ブタジエン、エチレンプロピレンゴムなどからなる群より選択された一つ以上を添加して成膜したプラスチックフィルムを使用するか、変性ポリプロピレンフィルムを使用する。
【0044】
また、シーラント層として、エチレン、プロピレン、ブタジエンの3成分の共重合体であるターポリマーを使用するか、ホモプロピレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマーなどを使用することができる。ここで、前記ターポリマーを使用する場合、溶融温度が低くて140℃以下の熱を加えてもシーリングが可能であるという長所がある。
【0045】
このような点を考慮すると、シーラント層における最内層のシーリング面は低い溶融温度を考慮してターポリマーを使用するが、シーラント層が2層以上の多層積層構造、例えば3層からなる場合、シーリング面を除く他の層部分は、前記ターポリマーだけでなく、他のポリマー、例えばホモプロピレン、プロピレンとエチレンが不規則的に配列されたプロピレンブロック共重合体及びポリプロピレンランダムコポリマーなどを使用することができる。
【0046】
前述したように、前記シーラント層において難燃剤を添加して難燃性を与えることができる。難燃剤の添加量は、シーラント層樹脂に対して0.1〜20重量%の範囲であればよい。難燃剤を適用するにあたって、シーラント層のシーリング強度が落ちない水準に適宜難燃剤の含有量を制限することが好ましい。
【0047】
以下、本発明の好適な実施例及び実験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例は、本発明の開示が完全になるようにするとともに、当該技術分野における通常の知識を有する者が当該発明の実施を容易にできるようにするものであり、本発明が下記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の形態の実施例が具現できる。
【0048】
[実験1]
下記の実施例において、難燃性が与えられたコーティング層は、アクリル酸アルキルエステルモノマーとアクリル酸官能基含有モノマーの共重合体であるバインダー90重量部、リン系難燃剤(ジメチルメチルホスフェート)10重量部、スリップ剤(脂肪酸アミド)1重量部、トルエン溶媒800重量部からなる難燃剤コーティング用組成物を最外層にコーティングして形成した。
【0049】
下記の実施例において、溶融押出樹脂層の溶融押出樹脂はポリプロピレンからなり、難燃剤が添加された溶融押出樹脂層は、溶融押出樹脂であるポリプロピレンに対して10重量%のリン系難燃剤(ジメチルメチルホスフェート)を添加してなる。
【0050】
下記の実施例において、シーラント層は、エチレン、プロピレン、ブタジエンのターポリマーからなり、難燃剤が添加されたシーラント層は、リン系難燃剤(ジメチルメチルホスフェート)を前記ターポリマーに対して8重量%添加してなる。
【0051】
実施例及び比較例の2次電池の包装材の層構成を次のようにした。
[実施例1]
難燃性が与えられたコーティング層/最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/溶融押出樹脂層/シーラント層
[実施例2]
難燃性が与えられたコーティング層/最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/難燃剤が添加された溶融押出樹脂層/シーラント層
[実施例3]
難燃性が与えられたコーティング層/最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/溶融押出樹脂層/難燃剤が添加されたシーラント層
[実施例4]
難燃性が与えられたコーティング層/最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/難燃剤が添加された溶融押出樹脂層/難燃剤が添加されたシーラント層
[実施例5]
最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/溶融押出樹脂層/難燃剤が添加されたシーラント層
[実施例6]
最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/難燃剤が添加された溶融押出樹脂層/難燃剤が添加されたシーラント層
[比較例1]
最外層(ナイロン層及びPET層)/接着層/バリアー層(アルミニウム層)/溶融押出樹脂層/シーラント層 [難燃性テスト] 難燃性テストを次のように実施した。
(1)試片大きさ:長さ5in.(127mm)、幅0.5in.(12.7mm)でサンプルを切り取った。
(2)前処理:23±2℃、相対湿度50±5RHの雰囲気下において、製造後48時間放置してから試験を実施した。
(3)試験に要されるサンプルの数を5個にした。
(4)試片に対して10秒間バーナーで火を付けてからバーナーを取り除き、試片に火が付いてから火が消えるまでの時間、すなわち試片が燃える時間を測定した。試片5個に対して同一試験を実施した。このとき、燃焼時に溶け落ちる飛び火によって約30cmの下に置かれている脱脂綿に発火が起こってはならない。
(5)測定結果を次のように評価した。
【0052】
○(10秒以下で消火)、△(20秒未満で消火)、×(20秒以上で消火)
前記実施例及び比較例に対して難燃性をテストした結果は、次の表1に示す通りである。
【0053】
【表1】

以上から分かるように、難燃剤のコーティング層を形成する実施例1の場合、またはシーラント層や溶融押出樹脂層に難燃剤を添加した実施例5、6の場合、比較例1に比べて難燃性が向上した。なお、難燃剤のコーティング層とともにシーラント層や溶融押出樹脂層に難燃剤を添加した場合(実施例2、3、4)、難燃性が一層向上した。
[シール強度テスト]
実施例6のパウチ(シーラント層の場合、ターポリマーに対して8重量%のリン系難燃剤添加)のシーラント層への難燃剤の添加量を以下の表2のように異ならせ、シール強度を測定した。 具体的にシール強度テストは、次のように実施した。
(1)シーラント層が相接するように折り畳んてなる適当な大きさ(横約150mm、縦約100mm)のサンプルを準備した。
(2)熱接着機で測定しようとする温度(180℃)、圧力(30kgf)、時間(3.0秒)を設定し、シールバーの温度が安定するまでの約15分程度安定させた。
(3)温度が安定した熱接着機のシールバーの間に試料を載置してシーリングした。(4)シーリングが完了した試料を所望の大きさ(15mm)に、カッターバーを利用して切断した。
(5)引張強度試験機の全スケールを試料のヒートシールの予想強度よりも20〜50%高く設定した後、カットティングしたサンプルの熱接着強度を測定した。
(6)3kgf/15mm以上の強度を示す場合が良好な水準である。
【0054】
【表2】

前記表から分かるように、10重量%以下では5.0kgf/15mm以上の高いシール強度を示した。20重量%を超えると、製品に要求されるシール強度の低下が見られた。
[層剥離テスト]
実施例6のパウチ(溶融押出樹脂層の場合、ポリプロピレンに対して10重量%のリン系難燃剤添加)の溶融押出樹脂層への難燃剤の添加量を以下の表3のように異ならせて製造し、バリアー層と溶融押出樹脂層間の層剥離テストを実施した。 具体的に、層剥離テストは次のように実施した。
(1)製造されたセルパウチをカッターバーを利用して横(15mm)×縦(150mm)にカッティングしてサンプルを準備した。
(2)所定の規格にカッティングされたパウチのバリアー層と溶融押出樹脂層とを、剃り刃を利用して所定の長さだけ層間剥離を行なった。
(3)所定の部分が分層間剥離されたサンプルを、標準電解液が入っている容器に含浸した後、該容器を密閉した。参考として、電解液の条件は次のとおりである。
EC:DEC:DMC=1:1:1、LiPF 1M
(4)サンプルが入っている電解液容器を85℃乾燥オーブン中で1日間放置した。
(5)1日後、試料を取り出して層間剥離強度を測定した。
(6)引張強度試験機の全スケールを、試料のヒートシールの予想強度よりも20〜50%高く設定した後、カットティングしたサンプルの剥離強度を測定した。
(7)0.5kgf/15mm以上の強度が良好な水準である。
【0055】
【表3】

前記表3から分かるように、15重量%以下の場合には、1日後においても0.83kgf/15mm以上と1kgf/15mmに近い強度を示したが、15重量%を超えると、強度の持続的な低下が生じた。
[実験2]
本実験では、難燃剤コーティング用組成物の配合比による難燃性、スリップ性、透明性及びコーティング性をテストした。 フィルムの構成は、前記実験1と同様にし、最外層上に形成されるコーティング層に使用されるコーティング用組成物から、溶媒を除いた3種の成分、即ちバインダー、難燃剤及びスリップ剤成分の配合比を、次の表のように調節した。
【0056】
【表4】

[スリップ性測定]
スリップ性の測定を次のように実施した。
(1)サンプルを、汚れがなく且つしわがない状態でMD方向(機械方向)にカッティングした。
(2)カッティング時の規格を120mm×250mmにし、15枚準備した。
(3)カッティング時の規格を75mm×100mmにし、15枚準備した。
(4)水平に移動する平面上に120mm×250mm試料を、所定の面(コーティング面)が表になるように固定させた。
(5)その上に75mm×100mm試料を規定された位置(測定紐が引っ張られない地点まで;ラインにて表示してある)まで載置した後、その上に200gのSLEDを十分に軽く(衝撃を与えないように)載置した。
(6)摩擦系数を測定し、測定結果を次のように評価した。
×(動摩擦係数0.3以上)、△(動摩擦系数0.2〜0.3以下)、○(動摩擦系数0.2以下)
難燃性測定:実験1の難燃性測定方法と同様に実施した。[透明性測定] 透明性の測定を次のように実施した。
(1)25mm×25mm大きさにサンプルを切り取った。
(2)基準面が所定の向きとなるようにし、それを保持させた。
(3)次式によって示される値を5回繰り返して測定し、平均値を求めた。
【0057】
全光線透過率(Tt、%)=全透過光量(T2)/全入射光量(T1)×100
拡散透過率(Td、%)=T2={(装置及び試料による拡散光量、T4)−[(装置による拡散光量、T3)×(全入射光量、T1)]}/(全入射光量、T1)×100
(4)透明性結果を次のように評価した。
【0058】
×(20以上)、△(10以上)、○(10以下)

[コーティング性測定]
コーティング性の測定を次のように実施した。
(1)綿棒は、直径約1mm、長さ約10cm程度の棒の先端に脱脂綿を巻いてなるものを使用した。
(2)コロナ液に指定された綿棒を液滴が落ちない程度に十分に浸し、綿棒を試料に水平になるようにして一直線の方向に移動させて塗布した。
(3)コロナ液を塗布してから2秒以上経過した時点で濡れていると評価した。2秒以上経過したとき、それより表面張力が一段階高い試薬を使用してチェックした。表面張力の低い標準液から高い液の順に順次実施した。
(4)サンプルの全部分、横方向、縦方向にそれぞれ実施し、その値の平均を求めて湿潤指数とした。
(5)コロナ液の構成は、ホルムアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルとした。
(6)コーティング結果を次のように評価した。
【0059】
×(コーティング不可能;35dyne以下)、△(コーティング性不十分;36〜37dyne)、○(コーティング性良好;38dyne以上)
同実験データを次の表に表した。
【0060】
【表5】

前記結果から分かるように、実施例1、2は、スリップ性の項目と難燃性の項目とにおいて、実施例5、6は、透明性の項目とコーティング性の項目とにおいて評価が相対的に低かった。実施例2、3、4及び5は、スリップ性、難燃性、透明性、コーティング性の項目において良好または少なくとも中間程度の結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、セル用包装材及びその製造方法に係り、リチウム2次電池や携帯用蓄電池などのセルの外部包装材に難燃性を与えたセル用包装材の製造に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル用包装材であって、
前記セル用包装材は、1層以上の層構造からなり、
前記1層以上に難燃剤が含まれるか、難燃剤コーティング層が形成されるか、またはこれらが併用されたことを特徴とするセル用包装材。
【請求項2】
前記包装材は、合成樹脂からなる最外層を含み、
前記最外層上に難燃剤のコーティング層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセル用包装材。
【請求項3】
前記包装材は、最内層であるシーラント層及び前記シーラント層上に形成される溶融押出樹脂層を含み、 前記シーラント層または前記溶融押出樹脂層のいずれか一つ以上の層に難燃剤が含有されることを特徴とする請求項1または2に記載のセル用包装材。
【請求項4】
セル用包装材であって、
前記包装材は、合成樹脂からなる最外層、前記最外層の下部に形成されるバリアー層、前記バリアー層の下部に形成される溶融押出樹脂層、及び前記溶融押出樹脂層の下部に形成されるシーラント層を含み、
前記最外層、バリアー層、溶融押出樹脂層またはシーラント層のうちから選択されるいずれか一つ以上の層に難燃剤が含有されるか、または前記いずれか一つ以上の層に難燃剤コーティング層が形成されるか、または前記いずれか一つ以上の層に難燃剤が含有され、前記いずれか一つ以上の層に難燃剤のコーティング層が形成されたことを特徴とするセル用包装材。
【請求項5】
セル用包装材であって、
前記包装材は、合成樹脂からなる最外層、前記最外層の下部に形成されるバリアー層、前記バリアー層の下部に形成される溶融押出樹脂層、及び前記溶融押出樹脂層の下部に形成されるシーラント層を含み、
前記最外層上に難燃剤コーティング層が形成され、
前記シーラント層または前記溶融押出樹脂層のうちのいずれか一つ以上の層に難燃剤が含有されることを特徴とするセル用包装材。
【請求項6】
前記最外層と前記難燃剤コーティング層との間には表面コロナ層が更に形成されることを特徴とする請求項4または5に記載のセル用包装材。
【請求項7】
前記難燃剤コーティング層は、難燃剤コーティング用組成物からなり、
前記難燃剤コーティング用組成物は、バインダー100重量部に対し、難燃剤20〜80重量部及びスリップ剤3〜20重量部を含むことを特徴とする請求項1、2、4、及び5のいずれかに記載のセル用包装材。
【請求項8】
前記最外層及び前記バリアー層との間には接着剤層が更に形成され、
前記接着剤層には、難燃剤が接着剤層樹脂に対して0重量%を超えて30重量%以下の割合で含有されることを特徴とする請求項4または5に記載のセル用包装材。
【請求項9】
前記シーラント層には、難燃剤がシーラント層樹脂に対して0.1〜20重量%の割合で使用されることを特徴とする請求項4または5に記載のセル用包装材。
【請求項10】
前記シーラント層には、エチレン、プロピレン、ブタジエンのターポリマーが含まれることを特徴とする請求項9に記載のセル用包装材。
【請求項11】
前記溶融押出樹脂層には、難燃剤が溶融押出樹脂層樹脂に対して0.1〜30重量%の割合で使用されることを特徴とする請求項4または5に記載のセル用包装材。
【請求項12】
前記難燃剤として、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、メラミン系難燃剤または無機難燃剤のうちから選択される一つ以上の難燃剤を使用することを特徴とする請求項1、2、4、及び5のいずれかに記載のセル用包装材。
【請求項13】
セル用包装材の製造方法であって、 前記セル用包装材を構成する1層以上の層に難燃剤を含有させるか、難燃剤のコーティング層を形成するか、またはこれらの両方を実施することを特徴とするセル用包装材の製造方法。
【請求項14】
前記方法は、合成樹脂からなる最外層上に難燃剤のコーティング層を形成する段層、及び、最内層であるシーラント層または前記シーラント層上の溶融押出樹脂層のうちの一つ以上の層に難燃剤を含有させる段層を含むことを特徴とする請求項13に記載のセル用包装材の製造方法。

【公表番号】特表2012−507131(P2012−507131A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534400(P2011−534400)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006408
【国際公開番号】WO2010/062054
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】