説明

セレンの湿式法による精製方法

【課題】白金族を含有するセレンの湿式法による精製方法を提供する。
【解決手段】10〜40質量%の白金族及び40〜70質量%のSeを含有する第一の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を360〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離によってSeを含有する浸出後液を得る工程1と、工程1で得られた浸出後液に対して還元性ガスを吹き込むことによって、Seを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る工程2とを含むセレンの精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンの湿式法による精製方法に関し、とりわけ銅電解殿物からの有価金属回収工程で回収されたセレンの湿式法による精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の電解精製では、電解槽中で純度99%程度の粗銅を陽極として陰極に純銅を電着させる。この際、電解槽の底には陽極に含まれる不純物が泥状で沈積し、これは銅電解殿物(アノードスライム)と呼ばれている。銅電解殿物には、銅に加えて、金を始めとする貴金属、セレン及びテルルなどの有価金属が濃縮しており、銅電解殿物からこれらの有価金属を効率的に回収することが求められている。銅電解殿物から有価金属を回収する方法としては、乾式法及び湿式法が知られているが、設備コストや作業負担の観点から湿式法の方が有用性は高いと考えられている。
【0003】
銅電解沈殿物から有価金属を回収するための全体的な湿式プロセスは、例えば特開2001−316735号公報(特許文献1)に記載されている。当該文献では、銅電解殿物に脱銅工程、塩化浸出工程及び金抽出工程を経由する予備処理を施し、得られた金抽出後液から白金族・金含有還元物を得る第1還元段階と、次いでセレン含有還元物を得る第2還元段階と、次いでテルル含有還元物を得る第3還元段階という3段階を経由することにより、白金族・金含有還元物、セレン含有還元物、及びテルル含有還元物の回収効率を高めている。
【0004】
当該文献では、白金族・金含有還元物は、白金・パラジウム精製工程の原料となり、白金・パラジウムの精製は溶媒抽出を使用して従来方式で実施できること、精製工程からの金含有溶液は別途処理して金を回収することが記載されている。
【0005】
また、当該文献によれば、テルル浸出槽において水酸化ナトリウム溶液に空気を吹き込むことにより、テルル含有還元物からテルルを浸出することが記載されている。浸出は、75〜85℃の温度において行い、浸出後、フィルタープレスにより固液分離を行い、亜酸化銅主体の浸出残査は銅製錬工程に戻し、浸出後液は中和槽に送り、硫酸中和によりテルルを二酸化テルルとして分離回収することが記載されている。
【0006】
また、セレン含有還元物は真空蒸留を経てセレン製品とすることが記載されている。セレンの真空蒸留については、例えば特開2005−1906号公報(特許文献2)に詳細が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−316735号公報
【特許文献2】特開2005−1906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2001−316735号公報に記載の方法によれば、高い効率で有価金属の回収を行うことが可能である。セレンについても、セレン含有還元物からの真空蒸留を用いた精製方法が知られている。しかしながら、銅電解殿物中に含まれるセレンは未だ十分に回収されているとはいえず、セレンの回収効率の向上が望まれる。また、回収されるセレンの純度も高いことが望まれる。従来、白金族・金含有還元物から価値の高い白金族及び金を回収することは着目されていたが、セレンを回収することについては着目されていなかった。白金族・金含有還元物にはセレンが主成分として含まれており、これからセレンを効率的に分離・回収し、製品化することができれば有利であると考えられる。更に、硫酸中和によりテルルを二酸化テルルとして分離回収した後の中和後液にはセレンが比較的多く含まれており、当該中和後液を還元処理することによって、微量のテルルを含有するセレンが得られることを見出した。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、白金族を含有するセレンの湿式法による精製方法を提供することを課題とする。とりわけ、本発明は銅電解殿物からの有価金属回収工程で回収された白金族を含有するセレンの湿式法による精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は一側面において、10〜40質量%の白金族及び40〜70質量%のSeを含有する第一の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を360〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離によってSeを含有する浸出後液を得る工程1と、
工程1で得られた浸出後液に対して還元性ガスを吹き込むことによって、Seを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る工程2と、
を含むセレンの精製方法である。
【0011】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、第一の粗セレンは0.1〜1質量%のAuを含有する。
【0012】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、第一の粗セレンは、銅電解殿物スラリーから少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣である。
【0013】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、第一の粗セレンは、銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を順に行って少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣である。
【0014】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、工程2における固液分離によって得られたろ液に対して、還元性ガスを吹き込むことによって、ろ液中に残存していたSeを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る工程3を更に含む。
【0015】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、工程2及び/又は工程3によって得られた精製セレンを水洗及び乾燥する工程4を更に含む。
【0016】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、工程1における前記酸性水溶液のpHが3〜5である。
【0017】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、工程1における酸化還元電位の調整を前記酸性水溶液中への過酸化水素の吹き込みによって実施する。
【0018】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、工程2における還元性ガスが亜硫酸ガスである。
【0019】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、0.1〜30質量%のTe及び70〜99.9質量%のSeを含有する第二の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を570〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離することによって得られたSeを含有する浸出後液を、工程1で得られた浸出後液と混合し、当該混合液に対して工程2を実施する。
【0020】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、第二の粗セレンは、銅電解殿物に含まれるテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離する工程を経て得られた残渣である。
【0021】
本発明に係るセレンの精製方法の一実施形態においては、第二の粗セレンは、銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を順に行ってテルル含有還元物を得る工程と、当該テルル含有還元物から中和処理によってテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離する工程を経て得られた残渣である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、白金族とセレンを高効率で分離し、セレンを高純度で回収することが可能となる。とりわけ、本発明を銅電解殿物からの有価金属回収工程で回収された白金族を含有するセレン、更にはテルルを微量含有するセレンに適用することで、銅電解殿物からのセレンの回収効率を向上させることが可能となる。また、本発明が採用するセレンの湿式精製法は真空蒸留法に比べてセレン製品を得るまでの工程が短く、作業負荷及び設備のメンテナンスコストも低いというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第一の粗セレン>
本発明では10〜40質量%の白金族及び40〜70質量%のSeを含有する粗セレン、典型的には25〜35質量%の白金族及び50〜60質量%のSeを含有する粗セレンの精製を主目的としており、本発明ではこれを第一の粗セレンと呼ぶ。第一の粗セレンとしては上記濃度条件を満たす限り特に制限はないが、典型的には、銅電解殿物に対して種々の有価金属回収工程を行った後の残渣として得ることができる。例えば、第一の粗セレンは、硫酸や塩酸などの酸性水溶液などでリパルプした銅電解殿物スラリーから少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣とすることができる。
白金族にはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金が含まれるが、典型的には白金及びパラジウムの含有量が高く、その他の白金族元素は微量しか含まれない。従って、本発明のより典型的な実施形態においては、第一の粗セレンは白金及びパラジウムの合計量として10〜40質量%を含有し、更により典型的な実施形態においては、第一の粗セレンは白金及びパラジウムの合計量として25〜35質量%を含有する。
【0025】
より典型的には、第一の粗セレンは銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を順に行って少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣とすることができる。
【0026】
<第二の粗セレン>
本発明では0.1〜30質量%のTe及び70〜99.9質量%のSeを含有する粗セレン、典型的には0.1〜10質量%のTe及び90〜99.9質量%のSeを含有する粗セレン、より典型的には0.1〜1質量%のTe及び99〜99.9質量%のSeを含有する粗セレンの精製も目的としており、本発明ではこれを第二の粗セレンと呼ぶ。第二の粗セレンとしては上記濃度条件を満たす限り特に制限はないが、典型的には、銅電解殿物に対して種々の有価金属回収工程を行った後の残渣として得ることができる。例えば、銅電解殿物に含まれるテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離工程を経て得られた残渣を第二の粗セレンとすることができる。
【0027】
より典型的には、第二の粗セレンは銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を行ってテルル含有還元物を得る工程と、当該テルル含有還元物から中和処理によってテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離する工程を経て得られた残渣を粗セレンとすることができる。
【0028】
第一の粗セレン及び第二の粗セレンの典型的な由来を銅電解殿物の処理フローを図1に沿って説明する。
【0029】
(1)脱銅工程
脱銅工程は、銅電解殿物中に約25%含まれる銅を硫酸溶液で浸出除去する工程である。典型的には脱銅工程後の殿物中の銅品位は1質量%以下とすることができる。硫酸溶液は銅電解工程で使用する硫酸溶液を使用することができる。脱銅浸出は、常圧、空気吹き込み下、70〜85℃、特には80℃で行い、18〜24時間で殿物中の銅品位を約25質量%から約0.5質量%まで低下させることができる。脱銅工程後は、フィルタープレスなどで固液分離する。脱銅工程後の殿物は塩酸でリパルプした後に、塩化浸出工程へ送ることができる。
【0030】
脱銅工程後の浸出後液にはテルルも含まれており、これを直接銅電解工程に戻すと、電気銅の品質を汚染するため、浸出後液中のテルルを除去する脱テルル工程を行うことが望ましい。具体的には、硫酸溶液の入った脱テルル槽で銅板及び/又は銅粉によりテルルをテルル化銅として析出させることができる。硫酸濃度は230〜450g/L、温度は70〜90℃、そして反応時間は16〜24時間とするのが好適である。析出したテルル化銅は、フィルタープレスで固液分離後、後述するテルル回収工程に送ることができる。ろ液の銅含有溶液は銅電解浄液工程に戻すことができる。
【0031】
(2)塩化浸出工程
塩化浸出工程は、脱銅後の殿物から、主として銀等を塩化物として分離する工程であり、基本的には、塩酸でリパルプした脱銅殿物スラリーを塩化浸出する。過酸化水素を併用することが好ましい。塩化/酸化反応によって塩化物及び酸化物は、それぞれの溶解度によって溶解ないし沈殿する。塩化銀は塩酸溶液中の溶解度が小さいため沈殿し、他の白金族・金と分離される。塩化鉛も大部分が沈殿する。また、アンチモン化合物及びテルル化合物も大部分沈殿する。
【0032】
塩化浸出後、フィルタープレスなどによって固液分離し、塩化銀主体の固体は水によるリパルプ後、銀精製工程に送ることができ、ろ液は金抽出工程に送ることができる。銀精製工程は塩化銀から銀を還元し、精製する工程であり、例えば、塩化鉛を随伴する塩化銀を還元し、酸化炉で処理し、原銀板として鋳造し、銀電解により精製することができる。
【0033】
(3)金抽出工程
塩化浸出後のろ液は、金に対する不純物を除去する目的で、適宜冷却及び酸濃度調整を行った後に、金抽出工程に送ることができる。金抽出工程は、塩化浸出液から金を選択的に溶媒抽出する工程である。溶媒抽出された金は、金精製工程において、シュウ酸などを用いて還元析出され、製品化される。金抽出のための溶媒は、公知のものが使用できるが、DBC(ジブチルカルビトール:C49O(C24O)249))の使用が好ましい。DBCは金(HAuCl4ないしはAuCl3)と化合物を作りやすいため、水溶液から金を選択的に抽出することができる。
【0034】
(4)還元工程
還元工程は、溶媒抽出により金を抽出した金抽出後の後液から白金族・金含有還元物を得る第一還元工程と、次いでセレン含有還元物を得る第二還元工程と、次いでテルル含有還元物を得る第三還元工程の3段階を実施することが好ましい。白金族・金含有還元物、セレン含有還元物、及びテルル含有還元物を効率よく分離して回収することができるからである。
【0035】
(4−1)第一還元工程
第一還元工程では白金族・金を還元析出させて、セレン・テルルから分離することを目的とする。具体的には亜硫酸ガスなどの還元性ガスを金抽出後液に吹き込むことによって白金族・金を還元析出させ、固液分離する。
【0036】
白金族・金と4価のセレン(Se(4+))は還元電位(vs Ag/AgCl)が次の通り似通っている。
Au(+)+e→Au +1.68V
Pd(2+)+2e→Pd +0.83V
PtCl4(2−)+2e→Pt+4Cl(−) +0.73V
2SeO3+4H(−)+4e→Se+3H2O +0.74V
【0037】
一方、セレンは通常の金抽出後液中で4価(Se(4+))と6価(Se(6+))の価数で存在する。Se(6+)はSe(4+)に還元されてから、Seに還元される。Se(6+)→Se(4+)の還元電位は、SeO4(2−)+4H(−)+2e→H2SeO3+H2O(+1.19V)と、白金族・金の還元電位に比べて高い。このため、Se(6+)→Se(4+)の反応と並行して白金族・金の還元を行えば、白金族・金中へのセレンの混入を少なくすることができる。
【0038】
セレンがSe(4+)主体で存在するか、Se(6+)主体で存在するかは金抽出後液中の塩素イオン濃度に依存し、塩素イオン濃度を1.5モル/L以下にすれば、Se(6+)を多くでき、セレンの共沈を少なくすることができる。
【0039】
また、亜硫酸ガスを使用する場合、空気で8〜12体積%濃度に希釈し、亜硫酸ガスを白金族・金モル濃度の8〜15倍のモル濃度量において吹き込むことが効率的に還元を行う上で好ましい。亜硫酸ガス吹き込み量(SO2/白金族・金=モル/モル)が8より少ないと、効率的に還元がなされず、15を超えると、還元後液中の白金族・金濃度が減少する。セレンも多く還元され、不都合である。
【0040】
還元時の金抽出後液の温度は60〜90℃の範囲とするのが還元効率の観点から好ましい。
【0041】
標準的な実施法として、例えば80〜82℃において亜硫酸ガスを例えば260〜350(L/分)の吹き込み量で10〜30分間吹き込む。亜硫酸ガスとしては例えば銅製錬排ガスを利用する(SO2濃度:8〜10wt%)ことができ、亜硫酸ガスのボンベから100%のSO2を取り出し、希釈して使用することもできる。
【0042】
本来、この第一還元工程では白金族・金含有還元物にセレンを含有させることは意図してはいないが、不可避的にセレンが混入し、しかもその量が多いことから、白金族・金含有還元物は本発明の精製原料である第一の粗セレンとして典型的に使用できる。
【0043】
(4−2)第二還元工程
第二還元工程では第一還元工程後の還元後液に含まれるセレン及びテルルのうち、セレンを還元析出させて、テルルから分離することを目的とする。具体的には亜硫酸ガスなどの還元性ガスを第一還元工程後の還元後液に吹き込むことによってセレンを還元析出させ、固液分離する。
【0044】
セレンとテルルとの還元電位(vs Ag/AgCl)は次の通り離れている:
TeO2+4H(+)+4e→Te+2H2O +0.53V
2SeO3+4H(−)+4e→Se+3H2O +0.74V
【0045】
しかしながら、セレンを回収するべく、還元後液中のセレン濃度を低下させると、テルルの還元も進行し始める。セレン還元の際に、還元後液中のセレン濃度を3g/L未満にしないように管理すると、テルルの共沈を防止することができ、還元セレン中のテルル濃度は100ppm以下、通常は10ppm以下にすることができる。これは、セレン濃度が高いうちはセレンの還元が主体的で、還元電位が離れているためテルルの還元は起こらないからである。セレン濃度が低下してくると、液中に残留するセレンを還元するための還元電位が低下し、テルルの還元電位に近づく。このテルル還元電位になる直前のセレン濃度が3g/Lである。
【0046】
また、セレンの還元を促進するために、第一還元工程後の還元後液中の塩素イオン濃度を1.5〜2.0モル/L以下に維持すること、そして、反応温度は60〜90℃、好ましくは80〜85℃の範囲とすることが望ましい。また、亜硫酸ガスを使用する場合は、セレンのモル濃度の2倍以下のモル濃度において吹き込むこともテルルの還元を回避するために望ましい。
【0047】
得られたセレン含有還元物は、セレン精製工程に送り、例えば乾式蒸留によって精製することができる。一例としては、セレン含有還元物を水でリパルプ洗浄後、真空乾燥を経て真空蒸留を行う。蒸留温度は350〜380℃とするのが好ましい。蒸留セレンは、鋳造ドラム上に連続的に滴下し、乾式ショットとなる。
【0048】
(4−3)第三還元工程
第三還元工程では第二還元工程後の還元後液に含まれるテルルを還元析出させて、テルル含有還元物を回収することを目的とする。具体的には亜硫酸ガスなどの還元性ガスを第二還元工程後の還元後液に吹き込むことによってテルルを還元析出させ、固液分離する。
具体的には、第二還元工程後の還元後液に対して、60〜90℃、好ましくは80〜82℃において亜硫酸ガスを500〜700(L/分)の吹き込み量で500〜700分間吹き込むことによりテルルを還元・析出することができる。
【0049】
(5)テルル回収工程
第三還元工程によって得られたテルル含有還元物は、テルル回収の原料となることができる。後液は廃液となる。テルル回収工程では、テルル含有還元物を原料として、アルカリ浸出及び中和により二酸化テルルを回収する。脱銅工程で説明した脱テルル工程からのテルル化銅をテルルの回収原料として使用することもできる。回収した二酸化テルルに対しては、アルカリ浸出の後、電解採取することで、テルルを製品化することができる。
【0050】
テルルのアルカリ浸出は、例えばテルル化銅及び/又はテルル含有還元物を水酸化ナトリウム溶液中に入れて、空気を吹き込むことにより行うことができる。浸出反応は75〜85℃の温度において行うことが好ましい。浸出反応は以下の通りである:
テルル化銅の浸出:
Cu2Te+3/2O2+2NaOH→Cu2O+Na2TeO3+H2
テルル含有還元物の浸出:
Te+O2+2NaOH→Na2TeO3+H2
【0051】
アルカリ浸出後、フィルタープレスなどにより固液分離を行い、亜酸化銅主体の浸出残査は銅製錬工程に戻し、浸出後液は中和槽に送り、硫酸中和によりテルルを二酸化テルルの沈殿物として分離回収することができる。中和後液にはセレンが比較的多く残存しているので、これに亜硫酸ガスなどの還元ガスを吹き込むことによってセレンを還元析出させ、フィルタープレスなどで固液分離すると、残渣側にテルルを微量含有する粗セレンを得ることができる。これは本発明の精製原料である第二の粗セレンとして典型的に使用できる。
【0052】
セレンの還元を促進するために、先と同様に、中和後液の塩素イオン濃度を1.5〜2.0モル/Lに維持すること、そして、反応温度は60〜90℃、好ましくは80〜85℃の範囲とすることが望ましい。また、亜硫酸ガスを使用する場合は、セレンのモル濃度の2倍以下のモル濃度において吹き込むこともテルルの還元を回避するために望ましい。
【0053】
<第一の粗セレンの精製>
(工程1:酸化浸出)
工程1では、10〜40質量%の白金族及び40〜70質量%のSeを含有する第一の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を360〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離によってSeを含有する浸出後液を得る。浸出反応は例えば酸化剤として過酸化水素を使用した場合、以下の式で表すことができる。
Se+2H22→H2SeO3+H2
【0054】
酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を360〜600mVに調整するのは、360mV未満ではSeの浸出率が不十分である一方で、600mVを超えると白金族の浸出率が高くなってしまい、Seと白金族の分離効率が不十分となるからである。酸化還元電位(vs Ag/AgCl)はSeと白金族の分離効率及びSeの浸出効率のバランスを考慮すると、360〜600mVに調整するのが好ましく、360〜550mVに調整するのがより好ましい。酸化還元電位の調整は前記酸性水溶液中への過酸化水素などの酸化剤の添加量を調整することによって行うことができる。過酸化水素などの酸化剤の添加量はSeに対して1〜12当量とするのが好ましい。硝酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムなどが挙げられるが、コンタミ防止および目的ORPへ到達する酸化力の側面により過酸化水素が好ましい。
【0055】
工程1における前記酸性水溶液のpHは塩化物イオンなどの共役塩基の濃度が上昇すると白金族の溶解が進行しやするなるため、3〜5であるのが好ましく、3〜4であるのがより好ましい。また、温度は特に管理する必要はなく、15〜40℃の常温で実施すればよい。なお、過酸化水素による溶解反応が発熱反応であるため、液温が高すぎる場合には水分の揮発を防ぐために70℃以下に冷却するのが好ましい。
【0056】
酸化浸出後、フィルタープレスなどの公知の手段によって固液分離を実施することにより、Seを含有する浸出後液を得ることができる。なお、このとき得られる残渣には白金族及び場合によっては金が含まれており、溶媒抽出や塩化浸出などの公知の手段によって別途回収することができる。浸出後液は、基本的には工程2へ向かうが、第2還元工程に送ることも可能である。
【0057】
(工程2:Se還元析出(1回目))
工程2では、工程1で得られた浸出後液に対して還元性ガスを吹き込むことによって、Seを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る。還元性ガスとしては特に制限はないが、例えば硫化水素ガス、亜硫酸ガス、一酸化炭素ガス、水素ガスなどが挙げられ、安全性より亜硫酸ガスが好ましい。
【0058】
一例として、酸化浸出後の浸出後液0.15〜1.14L当たりに対して、60〜90℃、好ましくは80〜86℃において8〜10wt%の亜硫酸ガスを0.1〜1[m3/min]の吹き込み量で30〜50分間吹き込むことによりセレンを還元・析出することができる。
酸化浸出後の後液中には白金族元素が完全に除去されていないため、微量成分で混入している。そこで、該工程2の還元析出処理(1回目)では、白金族残留元素とSeとの分離性を考慮して、白金族元素の還元反応が行われつつ、Seの還元反応が始まる前に該工程2を終了する目的で、1回目の還元析出工程では、30〜50分程度の工程が適当である。
【0059】
還元析出後、フィルタープレスなどの公知の手段によって固液分離を実施することにより、高純度Seの固体を得ることができる。典型的には、99.9質量%以上のSeを得ることが可能である。不純物量が多い場合には、セレン含有還元物を処理するセレン精製工程に送っても良いし、脱銅工程に繰り返しても良い。一方、還元後液には依然としてセレンが有意に残存しており、更に次工程に送ることができる。
【0060】
(工程3:Se還元析出(2回目))
工程3では、工程2で得られた還元後液に対して還元性ガスを吹き込むことによって、液中に残留していたSeを更に還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る。
還元析出及び固液分離の方法は上記工程2とほぼ同様であり、異なる条件として、還元時間を500〜800分程度で行い、Se品位が高められた工程2の後液に対して適当な還元処理を行ないつつ、工程2の後液中に微量に残留する他の不純物(Te、Pb等)を液中に残すことによって、さらに品位の高いSeを得ることが可能となる。また、不純物量が多い場合には、セレン含有還元物を処理するセレン精製工程に送っても良い。
【0061】
(工程4:水洗・乾燥)
必要に応じて、工程2及び/又は工程3によって得られた精製セレンを水洗後に乾燥することで、より純度を高めることができる。水洗は水によるリパルプ洗浄が好適である。その後、適宜篩別して製品セレンとすることができる。
【0062】
<第二の粗セレンの精製>
一方、0.1〜30質量%のTe及び70〜99.9質量%のSeを含有する第二の粗セレンに対しては、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を570〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離することによってSeを含有する浸出後液を得る。第二の粗セレンは、典型的には0.1〜10質量%のTe及び90〜99.9質量%のSeを含有し、より典型的には0.1〜1質量%のTe及び99〜99.9質量%のSeを含有する。
【0063】
第二の粗セレンの酸化浸出において、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を570〜600mVに調整するのは、570mV未満ではSeの浸出率が不十分である一方で、600mVを超えるとTeの浸出率が高くなってしまい、SeとTeの分離効率が不十分となるからである。酸化還元電位(vs Ag/AgCl)はSeとTeの分離効率を考慮すると、575〜590mVに調整するのが好ましく、575〜580mVに調整するのがより好ましい。酸化還元電位の調整は前記酸性水溶液中への過酸化水素などの酸化剤の添加量を調整することによって行うことができる。過酸化水素などの酸化剤の添加量はセレンに対して3〜4当量とするのが好ましい。
【0064】
第二の粗セレンの酸化浸出における前記酸性水溶液のpHは塩化物イオンなどの共役塩基の濃度が上昇すると白金族の溶解が進行しやするなるため、3〜5であるのが好ましく、3〜4であるのがより好ましい。また、温度は特に管理する必要はなく、15〜40℃の常温で実施すればよい。なお、過酸化水素による溶解反応が発熱反応であるため、液温が高すぎる場合には水分の揮発を防ぐために70℃以下に冷却するのが好ましい。
【0065】
酸化浸出後、フィルタープレスなどの公知の手段によって固液分離を実施することにより、高濃度のSeを含有する浸出後液を得ることができる。なお、このとき得られる残渣にもSeが高純度で含まれるが、Teのほか、Fe、Ni及びPbなどの不純物が無視できない程度に含まれることが多く、製品としては不十分である。そこで、これに対しては上流工程への繰り返しを行う。
【0066】
得られた高濃度のSeを含有する浸出後液は、前述したSeの還元析出及びその後の工程(工程2〜4)を個別に実施しても良いが、工程1で得られた浸出後液と混合し、当該混合液に対して工程2を実施してもよい。これにより、少ない設備コストでセレンの精製を行うことが可能となる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明が当該実施例に限定されることを意図するものではない。
【0068】
(実施例1)
銅電解精製によって生じた銅電解殿物を用意した。当該銅電解電物は表1に示した分析値(単位:質量%又は質量ppm)を有する。金属の定量分析はICP分析によって行った(以下同じ)。
【表1】

【0069】
(脱銅工程)
上記の銅電解殿物4〜5[dry−t]に対して、銅電解工程の硫酸溶液6〜7m3を用いて常圧、0.9〜1.0m3/minでの空気吹き込み下、液温80℃として24時間脱銅浸出を実施した。脱銅浸出後はフィルタープレスで固液分離した。濾液は脱テルル工程に送った。脱銅浸出後の殿物中の銅品位は1質量%であった。
【0070】
(塩化浸出工程)
脱銅工程後の殿物を2200〜3000Lの塩酸でリパルプした後、塩化浸出槽に送った。塩化浸出は、過酸化水素を3〜5L/分で添加しながら9〜11時間行った。反応温度が60〜80℃となるように冷却を行った。塩化浸出後、フィルタープレスにより固液分離した。塩化銀主体の固体は水によるリパルプ後、銀精製工程に送った。
【0071】
(金浸出工程)
塩化浸出後のろ液は5℃に冷却した後、酸濃度調整槽に送り塩酸によって塩酸濃度を1.5〜2.0mol/Lに調整した。その後、ろ液を金抽出溶媒であるDBCにミキサーセトラーを用いて接触させることで、ろ液から金を抽出した。金抽出後のDBC(金含有溶液)は金精製工程に送った。金抽出後液中の分析値(単位:g/L又はmg/L)を表2に記載する。
【0072】
【表2】

【0073】
(第一還元工程)
金抽出後液は、DBCを蒸留分離した後、還元工程に送り、白金族・金とセレン・テルルの分離を行った。
具体的には、DBCを蒸留分離した後の金抽出後液に対して、80〜82℃において亜硫酸ガスを300L/分の吹き込み量で20分間吹き込んだSO2/(白金族+金)モル比=8〜15)。亜硫酸ガスとしては銅製錬排ガスを利用した(SO2濃度:8〜10wt%)。その後、フィルタープレスで固液分離した。残渣側の白金族・金含有還元物の分析値(単位:質量%又は質量ppm)を表3に記載する。
【0074】
【表3】

【0075】
(工程1:粗セレンの酸化浸出)
残渣側の白金族・金含有還元物を第一の粗セレンとし、その一部である20gを500mLの種々のpHの塩酸に入れ、種々の酸化還元電位ORP(vs Ag/AgCl)で酸化浸出を実施した。酸化浸出中、液温は35〜40℃に制御した。その後、No.5Cのろ紙で固液分離した。ORPは過酸化水素の添加量によって調整した。表4に、各試験における過酸化水素の添加量、pH、ORP、各成分の浸出率を記載する。浸出率は、浸出溶液のICP分析結果から算出した。
【0076】
【表4】

【0077】
(工程2:Seの還元析出(1回目))
No.1−3と同一条件で得た浸出後液0.4Lを用意し、Seの還元析出を行った。
具体的には、浸出後液に対して、82〜84℃において亜硫酸ガス(SO2濃度:8〜10wt%)を500[L/min]の吹き込み量で50分間吹き込むことによりセレンを還元・析出させた。その後、フィルタープレスで固液分離し、精製セレンを残渣として得た。表5に、残渣中の分析値(単位:質量%又は質量ppm)を記載する。Pt及びPdの濃度が酸化浸出後の残渣よりも上昇しているが、これはPt及びPdの析出が幾分選択的に行われたためと考えられる。
【0078】
(工程3:Seの還元析出(2回目))
工程2で得られたろ液を使用し、Seの還元析出を更に行った。
具体的には、浸出後液に対して、84〜86℃において亜硫酸ガス(SO2濃度:8〜10wt%)を1000[L/min]の吹き込み量で500分間吹き込むことによりセレンを還元・析出させた。その後、フィルタープレスで固液分離し、精製セレンを残渣として得た。
【0079】
(工程4:水洗・乾燥)
工程3で得られた精製セレンを水でリパルプ洗浄し、乾燥を行った。表5に、水洗・乾燥後の精製セレンの分析値(単位:質量%又は質量ppm)を記載する。
【0080】
【表5】

【0081】
(実施例2)
実施例1における第一還元工程によって得られた還元後液に対して、引き続き以下の操作を行った。
【0082】
(第二還元工程)
第一還元工程後の還元後液に含まれるセレンとテルルの分離を行った。
具体的には、第一還元工程後の還元後液に対して、80〜82℃において亜硫酸ガスを300L/分の吹き込み量で700分間吹き込んだ。亜硫酸ガスとしては銅製錬排ガスを利用した(SO2濃度:8〜10wt%)。また、還元後液中のセレン濃度が3g/L未満にならないように管理した。還元後液中の塩素イオン濃度は1.5〜2.0モル/Lに維持された。その後、フィルタープレスで固液分離した。還元後液中の分析値(単位:g/L又は質量mg/L)を表6に記載する。
【0083】
【表6】

【0084】
(第三還元工程)
第二還元工程後の還元後液に含まれるテルルの還元・析出を行った。
具体的には第二還元工程後の還元後液に対して、80〜82℃において亜硫酸ガスを600(L/分)の吹き込み量で600分間吹き込むことによりテルルを還元・析出した。その後、フィルタープレスで固液分離し、テルル含有還元物を残渣として得た。
【0085】
(テルル回収工程)
第三還元工程で得られたテルル含有還元物500kgを80℃の水酸化ナトリウム溶液中に入れて、空気を吹き込むことにより、テルル浸出を行った。その後、フィルタープレスにより固液分離を行い、浸出残査は銅製錬工程に戻し、浸出後液は中和槽に送り、硫酸中和によりテルルを二酸化テルルの沈殿物として分離回収した。中和後液中の分析値(単位:g/L又はmg/L)を表7に記載する。
【0086】
【表7】

【0087】
(第二の粗セレンの回収)
上記の中和後液に含まれるセレンの還元・析出を行った。
具体的には、中和後液に対して、80〜82℃において亜硫酸ガスを0.1〜1[m3/min]の吹き込み量で600分間吹き込んだ。亜硫酸ガスとしては銅製錬排ガスを利用した(SO2濃度:8〜10wt%)。また、還元後液中のセレン濃度が3g/L未満にならないように管理した。中和後液の塩素イオン濃度は1.5〜2.0モル/Lに維持された。その後、フィルタープレスで固液分離した。回収された粗セレン(これを第二の粗セレンとする)の分析値(単位:質量%又は質量ppm)を表8に記載する。
【0088】
【表8】

【0089】
(酸化浸出)
このようにして得られた第二の粗セレン20gを400mLの水に入れ、種々の酸化還元電位ORP(vs Ag/AgCl)で酸化浸出を実施した。その後、フィルタープレスで固液分離した。ORPは過酸化水素の添加量によって調整した。表9に、各試験における過酸化水素の添加量、ORP、液温、Se及びTeの浸出後液中の濃度、回収量及び回収率、浸出後液中のSe/Teの質量比を記載する。浸出中、pHは特に調整しなかったが、3〜5程度であった。
【0090】
【表9】

【0091】
(工程2:Seの還元析出(1回目))
実施例1のNo.1−3の浸出後液の一部である300mLと、上記No.2−9の浸出後液の一部である300mLを混合し、当該混合液についてSeの還元析出を行った。
具体的には、混合液に対して、81〜84℃において亜硫酸ガス(SO2濃度:8〜10wt%)を346〜467(L/min)の吹き込み量で50分間吹き込むことによりセレンを還元・析出させた。その後、フィルタープレスで固液分離し、精製セレンを残渣として得た。
【0092】
(工程3:Seの還元析出(2回目))
工程1で得られたろ液を使用し、Seの還元析出を更に行った。
具体的には、浸出後液に対して、80〜83℃において亜硫酸ガス(SO2濃度:8〜10wt%)を346〜467L/minの吹き込み量で800分間吹き込むことによりセレンを還元・析出させた。その後、フィルタープレスで固液分離し、精製セレンを残渣として得た。
【0093】
(工程4:水洗・乾燥)
工程3で得られた精製セレンを水でリパルプ洗浄し、乾燥を行った。分析の結果、99.96質量%以上の純度のセレンが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜40質量%の白金族及び40〜70質量%のSeを含有する第一の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を360〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離によってSeを含有する浸出後液を得る工程1と、
工程1で得られた浸出後液に対して還元性ガスを吹き込むことによって、Seを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る工程2と、
を含むセレンの精製方法。
【請求項2】
第一の粗セレンは0.1〜1質量%のAuを含有する請求項1に記載のセレンの精製方法。
【請求項3】
第一の粗セレンは、銅電解殿物スラリーから少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣である請求項1又は2に記載のセレンの精製方法。
【請求項4】
第一の粗セレンは、銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を順に行って少なくともセレン及び白金族を還元析出し、次いで固液分離することによって得られた残渣である請求項1又は2に記載のセレンの精製方法。
【請求項5】
工程2における固液分離によって得られたろ液に対して、還元性ガスを吹き込むことによって、ろ液中に残存していたSeを還元析出させ、次いで固液分離によって精製されたセレンを得る工程3を更に含む請求項1〜4の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項6】
工程2及び/又は工程3によって得られた精製セレンを水洗及び乾燥する工程4を更に含む請求項1〜5の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項7】
工程1における前記酸性水溶液のpHが3〜5である請求項1〜6の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項8】
工程1における酸化還元電位の調整を前記酸性水溶液中への過酸化水素の吹き込みによって実施する請求項1〜7の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項9】
工程2における還元性ガスが亜硫酸ガスである請求項1〜8の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項10】
0.1〜30質量%のTe及び70〜99.9質量%のSeを含有する第二の粗セレンを、酸化還元電位(vs Ag/AgCl)を570〜600mVに調整した酸性水溶液中で酸化浸出し、次いで固液分離することによって得られたSeを含有する浸出後液を、工程1で得られた浸出後液と混合し、当該混合液に対して工程2を実施する請求項1〜9の何れか一項に記載のセレンの精製方法。
【請求項11】
第二の粗セレンは、銅電解殿物に含まれるテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離する工程を経て得られた残渣である請求項10に記載のセレンの精製方法。
【請求項12】
第二の粗セレンは、銅電解殿物に対して脱銅工程、塩化浸出工程、金抽出工程、及び還元工程を順に行ってテルル含有還元物を得る工程と、当該テルル含有還元物から中和処理によってテルルを二酸化テルルとして沈殿させ、固液分離によって中和後液を得る工程と、当該中和後液中のセレンを還元析出させた後、固液分離する工程を経て得られた残渣である請求項10に記載のセレンの精製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246198(P2012−246198A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121102(P2011−121102)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】