説明

セロトニン1A受容体に対して活性を有するアリールピペラジン

【課題】単一のみに影響するだけでなく、単一の同定可能な受容体におけるセロトニンの単一の機能のみに影響する薬剤を発見することである。
【解決手段】本発明は、一連の新規なアリール化合物よりなる、セロトニン1A受容体アンタゴニストとしての高度に選択的な活性を有する化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1997年12月16日に出願された米国仮出願第60/069,722号、1997年12月16日に出願された米国仮出願第60/069,791号、1998年6月17日に出願された米国仮出願第60/089,589号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、薬理学及び薬物化学の分野に属し、そして、特に1A受容体に関連する、セロトニンが作用する神経系の障害により引き起こされるか、または、影響される疾病の処置に有用な新規な医薬を提供する。
【背景技術】
【0003】
医薬研究者は近年、モノアミンを含む脳のニューロンが、多くの心理学的及び性格に影響する過程に非常に強く影響する多数の生理的過程において、極度に重要であることを発見した。特に、セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン;5-HT)は、生理的及び心理的な機能の両方に影響する非常に多数の過程の鍵であることが見つけられた。脳におけるセロトニンの機能に影響する薬物は、そのため非常に重要であり、そして現在、驚くほど多数の異なる治療において使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期のセロトニンに作用する薬物は、機構的及び治療的の両方の観点から、多様な異なる生理的機能を持つ傾向があった。より最近は、個々の受容体における薬物の機能をイン・ヴィトロ、または、イン・ビボの両方で研究することが可能になり、そして、単一の活性機構を有する医薬剤が患者にとって、しばしば有利であることが理解された。よって、現在の研究の目的は、セロトニンの機能のみに影響する薬剤だけではなく、単一の同定可能な受容体におけるセロトニンの単一の機能のみに影響する薬剤をも発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、セロトニン1A受容体のアンタゴニストとしての、高度に選択的な活性を有する化合物を提供する。
【0006】
本発明は、一連の新規なアリールピペラジン化合物、それらを医薬目的で使用する方法、及び、化合物が適切に投与され得る医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、5HT-1A受容体をアンタゴナイズする方法、及び、その5HT-1A受容体に対する影響に関連する治療方法を提供する。このような治療方法には、特にタバコ若しくはニコチンの使用中止、または、部分的使用中止により引き起こされる症状を緩和する方法が含まれ、処置を必要とする患者に、式I:
【化1】

(式中、Ar'は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換された、単環式若しくは二環式アリール、または、ヘテロアリール基であり;R1は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1若しくは2個の置換基により置換されたフェニル、ナフチル、または、(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニルまたはハロゲンからなる群より選択され;Xは−C(=O)−、−CHOH−、または、−CH2−である)
の化合物、または、その医薬的に許容され得る塩、ラセミ混合物、光学異性体若しくは溶媒和物を投与することを含む方法。
【0008】
さらに、このような治療方法は、不安症、鬱病、緊張亢進、認識障害、精神病、睡眠障害、胃部運動性障害、性的不全、脳外傷、記憶喪失、食事障害若しくは肥満、物質濫用、強迫性障害、恐慌性障害、または、偏頭痛の処置方法を含む。
【0009】
本発明により提供されるさらなる処置方法は、セロトニン再摂取阻害剤の活性を強化する方法であり、患者に有効量の式Iの化合物をセロトニン再摂取阻害剤と共に投与することを含む。
【0010】
より詳細には、本発明は式Ia:
【化2】

の化合物、または、その医薬的に許容され得る塩を提供する。
【0011】
式Iaの化合物は、式Iの化合物の範囲内に含まれ、そのため式Iについて本明細書中に記載される方法において有用である。例えば、本発明は、5HT-1A受容体をアンタゴナイズする方法、及び、その5HT-1A受容体への効果に関連した治療方法を提供する。このような治療方法には、特にタバコ若しくはニコチンの使用中止、または、部分的使用中止により引き起こされる症状を緩和する方法が含まれ、処置を必要とする患者に、式Iaの化合物を有効量投与することを含む。さらに、このような治療方法には、不安症、鬱病、緊張亢進、認識障害、精神病、睡眠障害、胃部運動性障害、性的不全、脳外傷、記憶喪失、食事障害若しくは肥満、物質濫用、強迫性障害、恐慌性障害、または、偏頭痛の処置方法が含まれる。
【0012】
さらに、本発明はセロトニン再摂取阻害剤の活性を強化する方法であって、患者に、有効量の式Iaの化合物をセロトニン再摂取阻害剤と共に投与する方法を含む。
【0013】
本発明はさらに、タバコまたはニコチンの使用をやめる、または、減らす患者に助力する方法であって、患者に式Iまたは式Iaの化合物を有効量投与することを含む方法を提供する。
【0014】
この発明はまた、式I及び式Iaの化合物の合成、その新規中間体の合成のための新規工程、及び、さらに新規中間体自体を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書中において、濃度、量、割合等についての全ての記載は、他に指定のない限り、重量単位で表現する。全ての温度は摂氏温度である。
【0016】
化合物
上述の化合物の一般的記載で熟練した読者にそれらの性質を説明するのには十分であると考えられる。また、以下の実施例を読むことも奨励される。誤解がないよう、いくつかの付加的な説明を示す。
【0017】
一般的記載において、一般化学用語は全て、その通常の、そして慣用的な意味で用いられる。例えば、(C1〜C6)アルキル及び(C1〜C6)アルコキシ基を含む小さいアルキル及びアルコキシ基は、その基の大きさに応じ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、及び、分枝状ヘキシル基、及び、挙げられた個々の基に対応するアルコキシ基を含む。Ar基上に許される1〜3個のアルキル、アルコキシまたはハロゲン基のように、ある基において多数の種類の置換基が可能な場合、電子的、及び、立体的に可能な置換のみが意図されることが、読者には理解されるであろう。
【0018】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を持つ分枝状または直鎖状の不飽和基を表す。このような基の例には、ビニル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、並びに、直鎖及び分枝状鎖のジエン及びトリエン等の基が含まれる。
【0019】
「アルキニル」という用語は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、並びに、ジ-及びトリ-インを含む。
【0020】
「(C1〜C6)アルキルチオ」という用語は、分子の残余部分に硫黄原子が結合した1〜6個の炭素原子を有する直鎖状、または、分枝状のアルキル鎖の意味である。典型的な(C1〜C6)アルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等が含まれる。
【0021】
「(C1〜C6)アルキルハロ」という用語は、1またはそれ以上の利用可能な炭素原子に結合した、1または2個の互いに無関係に選択されたハロゲン原子を有する、アルキル置換基を意味する。これらの用語は、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロメチル、3-ブロモプロピル、2-ブロモプロピル、3-クロロブチル、2,3-ジクロロブチル、3-クロロ-2-ブロモ-ブチル、トリクロロメチル、ジクロロエチル、1,4-ジクロロブチル、3-ブロモペンチル、1,3-ジクロロブチル、1,1-ジクロロプロピル等を含む。より好ましい(C1〜C6)アルキルハロ基は、トリクロロメチル、トリクロロエチル、及びトリフルオロメチルである。最も好ましい(C1〜C6)アルキルハロはトリフルオロメチルである。
【0022】
「(C3〜C8)シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の基を含む。「(C3〜C8)シクロアルキル」という用語は、(C3〜C6)シクロアルキルを含む。
【0023】
「(C3〜C8)シクロアルケニル」という用語は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等の基を含む、3〜8個の炭素原子を持つオレフィン性の不飽和環を表す。「(C3〜C8)シクロアルケニル」という用語は、(C3〜C6)シクロアルケニルを含む。
【0024】
「アリール」という用語は、フェニルまたはナフチルを表す。
【0025】
「二環式」という用語は、不飽和または飽和の、安定な7〜12員の架橋、または、融合された二環式の炭素環を表す。この二環式環は、安定な構造を与えるいずれかの炭素原子で結合され得る。この用語には、これらに限定されるわけではないが、ナフチル、ジクロロヘキシル、ジクロロヘキセニル等が含まれる。
【0026】
「単環式及び二環式へテロアリール基」という用語は、5〜14個の環原子持ち、そして、窒素、酸素若しくは硫黄からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子を含む単環式または多環式の芳香族核由来の基を指す。典型的なヘテロ環基は、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソインドリジニル、オキサゾリル、インドリル、カーバゾリル、ノルハーマニル、アザインドリル、ジベンゾフラニル、チアナフテニル、ジベンゾチオフェニル、インダゾリル、イミダゾ(1.2-A)ピリジニル、アントラニリル、プリニル、ピリジニル、フェニルピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニルである。
【0027】
「ハロゲン」または「ハロゲン化物」という用語は、上述の式においてフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指すために用いられている。
【0028】
「非プロトン性溶媒」という用語は、比較的高い誘電率の、酸性水素を含まない、極性溶媒を指す。一般的な非プロトン性溶媒の例は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、または、1,2-ジメトキシエタンである。
【0029】
「プロトン性溶媒」という用語は、酸素に結合した水素を含み、そのためかなり酸性である溶媒を指す。一般的なプロトン性溶媒は、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、及び、1-ブタノール等の溶媒を含む。
【0030】
「不活性な雰囲気」という用語は、混合物が窒素またはアルゴン等の不活性気体の層で覆われた反応条件を指す。
【0031】
本明細書中で使用される「Me」という用語は−CH3基を指し、「Et」という用語は−CH2CH3基を指し、そして、「Pr」という用語は−CH2CH2CH3基を指す。
【0032】
本明細書中で使用される「立体異性体」という用語は、同じ結合により結合された同じ原子から作られているが、互換性のない異なる三次元構造を持つ化合物を指す。三次元構造は立体配置と呼ばれる。本明細書中で使用される「エナンチオマー」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像である分子の2つの立体異性体を指す。本明細書中で使用される「光学異性体」という用語は、「エナンチオマー」という用語と同等である。「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」または「ラセミ化合物の変異体」という用語は、等量のエナンチオマーからなる混合物を指す。「キラル中心」という用語は、異なる4つの基が結合した炭素原子を指す。
【0033】
本明細書で使用する「エナンチオマー富化」という用語は、一方のエナンチオマーに比べて、他方の量の増加を指す。達成されたエナンチオマー富化を表現するのに便利な方法は、エナンチオマー過剰、または、「ee」の概念であり、それは、下記の方程式を用いて決定される:
ee=− E×100
+ E
(式中、E1は第1のエナンチオマーの量であり、E2は第2のエナンチオマーの量である。)
このように、ラセミ混合物中のように2つのエナンチオマーの最初の比が50:50の場合、最終比が50:30とすることができるようなエナンチオマー富化が達成された場合、最初のエナンチオマーに対するeeは25%である。しかしながら、最終比が90:10であれば、最初のエナンチオマーに対するeeは、80%である。90%より大きいeeが好ましく、95%より大きいeeが最も好ましく、そして、99%より大きいeeが特に最も好ましい。エナンチオマー富化は、当業者により、キラルカラムを用いたガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー等の標準的な技術及び手順により、容易に決定され得る。適当なキラルカラム、溶離剤、及び、エナンチオマー対を分離するのに必要な条件の選択は、当業者の技術範囲内である。さらに、式Iまたは式Iaの化合物のエナンチオマーは、例えばJ.Jacquesら("Enantiomeres, Racemates, and Resolutions", John Wiley and Sons, Inc.,(1981年))により記載の当分野において周知の標準的な技術を用いて、当業者により分割され得る。分割の例には、再結晶化技術またはキラルクロマトグラフィーが含まれる。
【0034】
式I及び式Iaの化合物は、1つのクラスとして非常に活性で、重要で、特に本発明の処置方法において有用であるが、化合物のうち特定の種類のものが好ましい。以下の段落で、そのような好ましい種類について記載する。好ましい種類は、本発明の処置方法、及び、新規化合物の両方に適用可能であることが理解される。
【0035】
好ましい種類の化合物が、付加的な、より広いまたはより狭い、好ましい化合物のクラスを形成するよう、合わせ得ることが読者には理解される。
a)Ar'はフェニルまたはピリジルである;
b)Ar'はナフチルである;
c)Ar'はピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、フリル、チエニル、インドリル、プリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリジニル、ベンゾフラニル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチエニルまたはイソインドリジニルである;
d)Ar'は、場合により(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ハロゲン、(C2〜C6)アルケニルまたは(C2〜C6)アルキニルにより置換されている;
e)Ar'は、場合により(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシまたはハロゲンにより置換されている;
f)R1は水素である;
g)R1は(C1〜C6)アルキルまたは(C1〜C6)アルコキシである;
h)R1は(C1〜C2)アルキルまたは(C1〜C2)アルコキシである;
i)R2はフェニルである;
j)R2は(C3〜C8)シクロアルキルである;
k)R2は(C3〜C6)シクロアルキルである;
l)R2はシクロヘキシルである;
m)R3は(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシまたはハロゲンである;
n)R3は(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシまたはハロゲンである;
o)Xは−C=Oである;
p)Xは−CHOHである;そして、
q)Xは−CH2である;
r)式Iaである;
s)メタノール中の[α]D20が(+)である式Iaのエナンチオマー。
【0036】
本発明の化合物は天然では塩基性であり、そのため、これらは、いずれの多数の無機及び有機酸と反応し、医薬的に許容され得る酸付加塩を形成する。モノ及びジ塩は本発明の範囲内である。このような塩を形成するのに、一般的に採用されるのは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、及び、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等の有機酸である。従って、このような医薬的に許容される塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酢酸フェニル塩、プロピオン酸フェニル塩、酪酸フェニル塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩等である。好ましい医薬的に許容され得る塩は、モノ塩酸塩、ジ塩酸塩、モノ臭化水素酸塩、ジ臭化水素酸塩、式I/コハク酸塩(1:1)、式Ia/コハク酸塩(1:1)、式I/コハク酸塩 2:1、式Ia/コハク酸塩 2:1、リン酸塩、d-酒石酸塩、1-酒石酸塩、または、マレイン酸塩である。遊離塩基または医薬的に許容され得る塩の水和物も本発明の範囲内に含まれることが、当業者には理解される。
【0037】
式Iaを含む、式Iの化合物の多くは光学異性体である。例えば、R1及びXが結合された炭素原子において、化合物は不斉中心(またはキラル中心)を有する。しかしながら、本発明の化合物が不斉体の表示なしで命名されている場合、いずれの、そして、全ての可能な不斉形体が意図される。本発明は、いずれの異性体にも限定されず、全ての可能な個々の異性体及びラセミ化合物を含む。
【0038】
中間体及び最終生成物は、シリカゲルを用いたクロマトグラフィー、または、結晶単離物の再結晶により精製等の慣用的な技術により単離及び精製され得る。
【0039】
記載されていない出発化合物が市販、または、市販の材料より公知の技術により容易に製造し得ることが当業者には理解されるであろう。本発明において化合物を製造するのに用いる、他の全ての反応物は市販されている。
【0040】
本発明の化合物は、一般的には下記の反応式に従って製造される。
【化3】

【0041】
出発材料(1)を、好ましくはカリウムtert-ブトキシドである塩基で処理し、続いて2-ブロモメチル-1,3-ジオキソランによりアルキル化する。他の適当な塩基には、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が含まれる。
【0042】
反応は好ましくは、ジメチルスルホキシド等の溶媒中、温度15℃から還流されるまでの温度、最も好ましくは45〜55℃の温度で行われ、実質的に1〜24時間で中間体(2)の製造が完了する。
【0043】
塩酸またはp-トルエン-スルホン酸等の酸による(2)の、適当な有機溶媒中での処理によりアルデヒド(3)が得られる。水性の酸及びアセトンの混合物等のプロトン性溶媒中、約5℃〜75℃の温度、好ましくは環境温度で、一般に反応は行われる。
【0044】
還元的アミノ化によりアルデヒド(3)は、所望のアリールピペリジン(4)と結合され、(5)が製造される。好ましくは環境温度、ジクロロエタンまたは塩化メチレン等の非反応性の溶媒中、トリアセトキシホウ化水素ナトリウムの存在下で反応は行われ、実質的に1〜24時間で終了する。例として、A.F.Abdel-Magidら(J.Org.Chem.,61、3849(1996年)参照。
【0045】
(5)の還元は、ホウ化水素ナトリウム、または、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を用いて、容易に行われ、ヒドロキシ化合物(6)が製造される。反応は、好ましくは塩化メチレン等の有機溶媒中、約−20℃〜0℃の温度で行われる。
【0046】
生成物(7)を得るための(6)のさらなる還元は、二重結合を形成するための、トリエチルシラン若しくは三フッ化ホウ素(R2がフェニルまたは置換フェニルの場合)等の還元剤を用いた処理、または、塩酸またはトリフルオロ酢酸等の酸を用いた、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒中、環境温度での処理に続いて、例えば水素及び炭素上のパラジウムによる水素化により達成され得る。
【0047】
出発材料(1)は、市販されているか、または、(8)[Nahm及びWeinreb、Tetrahedron Lett.,22,3815(1981年)参照]及び(9)を、以下の反応式IIに記載されるように結合することにより製造される。
【化4】

(式中、Mは、ハロゲン化リチウムまたはハロゲン化マグネシウム等の金属塩である)。
好ましくは窒素である不活性雰囲気で、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒中、環境温度下で反応は行われる。
【0048】
より詳細には、式Iaの化合物は、反応式IIIに記載の方法に従って製造し得る。全ての置換基は、他に指定がない限り、前述の通りである。試薬及び出発物質は当業者には容易に入手可能である。
【化5】

【0049】
反応式IIIの工程Aでは、構造式(11)のケトンを得るための周知の標準条件下で、構造式(10)のエステルが、塩化ベンジルマグネシウムまたは臭化ベンジルマグネシウムにより処理される。例えば、ジメチルアミン等の適当なアミンを約1.05〜約1.1当量、テトラヒドロフラン(約−5℃に冷却されている)等の適当な有機溶媒中に不活性雰囲気下で溶解する。溶液を室温に温め、攪拌しながら1.0当量のエステル(10)を添加する。その後、およそ1.0〜1.05当量の塩化ベンジルマグネシウムをゆっくりと溶液に添加し、冷却槽を用いて添加の間の温度を約15〜20℃に維持する。添加が終了した後、反応物を室温で約1〜2時間攪拌し、その後、0℃より低い温度に冷却し、それからHCl等の適当な酸で反応を抑える。抑えられた反応物をtert-ブチルメチルエーテル(以下、MTBEと呼ぶ)等の適当な有機溶媒で抽出し、有機層を一緒にし、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、そして濃縮しケトン(11)を得る。酢酸エチル/ヘキサン等の適当な溶離剤を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー等の、当分野において周知の技術により精製された材料が得られるよう、ケトン(11)は精製し得る。代りの方法として、粗ケトン(11)を工程Bで用いることもできる。
【0050】
反応式IIIの工程Bでは、ケトン(11)をブロモアセトアルデヒドジエチルアセタール、及び、次にヨードメタンを用い、当分野において周知の条件下でアルキル化し、構造式(12)の化合物を得る。例えば、ケトン(11)を、メチルスルフォキシドなどの適当な有機溶媒中に溶解し、カリウムtert-ブトキシド等の適当な塩基約1.05〜約1.1当量で処理する。反応物を約15〜30分攪拌し、反応物に約1.0〜約1.05当量のブロモアセトアルデヒドアセタールを滴下する。対応するジエチルアセタールに代えて、ブロモアセトアルデヒドジメチルアセタール、ブロモアセトアルデヒドエチレンアセタール等を使用し得ることが、当業者に容易に認識される。その後、反応混合物を約50℃で、約2〜2.5時間加熱する。その後、反応混合物を氷/水槽で冷却し、カリウムtert-ブトキシド等の適当な塩基を約2.2当量添加する。反応物を約15〜30分、続けて冷却しながら攪拌し、その後、混合物の温度を41℃より下、好ましくは21℃より下に保ちながら、反応混合物にヨードメチルを約1.5〜約1.8当量滴下する。添加が終了した後、反応物を室温まで温め、約1〜4時間攪拌する。その後、反応混合物を水と、MTBE等の適当な有機溶媒の間で分配する。層を分離し、有機層を水、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮し、化合物(12)を得る。
【0051】
反応式IIIの工程Cでは、反応式Iに記載の方法と類似の手法により化合物(12)を酸性条件下で加水分解し、アルデヒド(13)を得る。より詳細には、例えば、化合物(12)をアセトン等の適当な有機溶媒に溶解し、塩酸等の適当な酸で処置する。反応混合物を約1〜3時間、室温で攪拌する。その後、反応混合物を酢酸エチルまたは塩化メチレン等の適当な有機溶媒で抽出し、有機抽出物を一緒にし、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮してアルデヒド(13)を得る。アルデヒド(13)は、酢酸エチル/ヘキサン等の適当な溶離剤を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー等の、当分野において周知の技術により精製し得る。また代りの方法として、粗アルデヒド(13)を直接、工程Dで用いることもできる。
【0052】
反応式IIIの工程Dでは、アルデヒド(13)を当分野において周知の条件下で、ピペラジン(14)を用いて還元的にアミン化させ、反応式Iに記載の方法と類似の手法により式Iaの化合物を得る。より詳細には、例えば、アルデヒド(13)を、塩化メチレン等の適当な有機溶媒中に溶解する。この溶液に、約1.1当量のピペラジン(14)を添加する。ピペラジン(14)の溶解を助けるため、場合により酢酸を添加し得る。その後、約1.2〜1.3当量のトリアセトキシホウ化水素ナトリウムを添加し、反応物を室温で約3〜5時間攪拌する。その後、水酸化ナトリウム水溶液等の適当な塩基の添加により約10〜約12のpHとし、反応を抑える。その後、抑制された反応物を塩化メチレン等の適当な有機溶媒で抽出する。有機抽出物を一緒にし、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮し、式Iaの化合物を得る。この物質を、酢酸エチル/ヘキサン等の適当な溶離剤を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー等の、当分野において周知の技術により精製し得る。
【0053】
式Iaの遊離塩基は、当分野において周知の標準的な条件下で、対応する医薬的に許容され得る塩に転換され得る。例えば、式Iaの遊離塩基を、メタノール等の適当な有機溶媒中に溶解し、例えば1当量のマレイン酸若しくはシュウ酸、または、2当量の塩酸で処理し、真空下で濃縮し、対応する医薬的に許容され得る塩を得る。その後、残余物は、メタノール/ジエチルエーテル等の適当な有機溶媒または無機溶媒混合物から再結晶させて精製することができる。
【0054】
反応式IIIの工程Eでは、式Iaの(+)エナンチオマーは、(−)エナンチオマーより、J.Jacquesらの『Enantiomers, Racemates, and Resolution』(John Wiley and Sons,Inc.(1981年))に記載の方法等、当分野において周知の技術及び方法により分離し得る。例えば、エタノール/アセトニトリル等の適当な有機溶媒、及び、Chiralpak AD パッキング(20ミクロン)を用いたキラルクロマトグラフィーも、エナンチオマーを分離させるために用い得る。
【0055】
反応式IIIの工程Fでは、上述の工程Dの最後に記載の方法に類似した手法により、式Iaの(+)エナンチオマーを、モノ塩酸塩、ジ塩酸塩、モノ臭化水素酸塩、ジ臭化水素酸塩、式Ia/コハク酸(1:1)、式Ia/コハク酸 2:1、リン酸塩、d-酒石酸塩、l-酒石酸塩またはマレイン酸塩等のその医薬的に許容され得る塩に変換される。
【0056】
代りの方法として、構造式(5)の化合物を反応式IVに記載の方法に従って製造し得る。全ての置換基は、他に指定のない限り、前に定義されている。試薬及び出発材料は当業者に容易入手可能である。
【化6】

【0057】
反応式IVの工程Aでは、アルコール(17)が得られる当分野において周知の条件下で、アルデヒド(15)を適当な有機金属試薬(16)と一緒にする。適当な有機金属試薬の例には、グリニャール試薬、アルキルリチウム試薬、アルキル亜鉛試薬等が含まれる。グリニャール試薬が好ましい。典型的なグリニャール試薬及び反応条件の例については、J.Marchの『Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure』第2版(McGraw-Hill)第836〜841頁(1977年)参照。より詳細には、アルデヒド(15)を、テトラヒドロフランまたはトルエン等の適当な有機溶媒中に溶解し、約−5℃に冷却し、1.1〜1.2当量の式(16)のグリニャール試薬(式中、MはMgClまたはMgBrである)で処理する。反応物を約0.5〜2時間攪拌し、その後、反応を抑制し、そしてアルコール(17)を単離する。例えば、反応混合物を氷冷1N HCl上に注ぎ、反応を抑制した混合物を、トルエン等の適当な有機溶媒を用いて抽出し、有機抽出物をアゼオトロープを用いて、または、無水硫酸マグネシウム等の適当な乾燥剤で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮し、アルコール(17)を得る。
【0058】
反応式IVの工程Bでは、J.Marchの『Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure』第2版(McGraw-Hill)第1082〜1084頁(1977年)に記載の方法等の、当分野において周知の標準的な条件下で、アルコール(17)を酸化し、ケトン(1)を得る。(ケトン(1)は、上述の反応式Iにおいて使用される出発材料である。)
【0059】
例えば、アルコール(17)を、塩化メチレン等の適当な有機溶媒中に溶解し、湿氷冷-アセトン槽で溶液を冷却し、そして、2.5〜3.0当量のジメチルスロフォキシドで処理する。約30分攪拌した後、反応物を約1.8当量のP25で処理する。反応物を約3時間攪拌し、その後、好ましくは約30分かけて、トリエチルアミン等の適当なアミン約3.5当量で処理する。冷却槽を取り除き、そして反応物を約8〜16時間攪拌する。ケトン(1)を当分野において周知の標準的な抽出技術により単離する。上述の酸化はまた、当業者に周知の標準Swern酸化条件を用いて行われる。
【0060】
反応式IVの工程Cでは、ケトン(1)は適当な塩基で処理され、続いてアルケン(18)(式中、Xは適当な脱離基である)を添加し、化合物(19)を得る。例えば、テトラヒドロフラン等の適当な有機溶媒中で、ケトン(1)に過剰のアルケン(18)を添加し、湿氷アセトン槽で冷却する。適当な脱離基の例は、Cl、Br、I、トシラート、メシラート等である。好ましい脱離基はCl及びBrである。約1.1当量の適当な塩基を添加し、反応物を約2時間、室温で攪拌する。適当な塩基の例は、カリウムtert-ブトキシド、水酸化ナトリウム、NaN(Si(CH3)3)2、LDA、KN(Si(CH3)3)2、NaNH2、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等である。カリウムtert-ブトキシドが好ましい適当な塩基である。その後、反応を酸水溶液で抑え、そして、ヘプタンなどの適当な有機溶媒を用いた抽出により化合物(19)を単離する。ヘプタン抽出物を重炭酸ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮して、化合物(19)を得る。
【0061】
反応式IVの工程Dでは、化合物(19)を適当な酸化剤で処理し、アルデヒド(3)を得る。[アルデヒド(3)はまた、反応式Iでも製造される。] 適当な酸化剤の例は、オゾン、NaIO4/オスミウム触媒等である。適当な酸化試薬及び条件の例は、J.Marchの『Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure』第2版(McGraw-Hill)第1090〜1096頁(1977年)に記載されている。
【0062】
例えば、化合物(19)をメタノール等の適当な有機溶媒中に溶解し、少量のスダン(登録商標)IIIを添加し、溶液を約−20℃に冷却する。ピンク色が薄黄色になるまで、約4時間、溶液中にオゾンを吹き込む。その後、Me2Sを反応混合物に添加し、冷却槽を取り除く。真空下での反応混合物の濃縮によりアルデヒド(3)の中間体ジメチルアセタールが得られる。このジメチルアセタールは、容易に標準酸性条件下で加水分解され、アルデヒド(3)が得られる。代りの方法として、粗反応混合物の直接の酸性処理によりアルデヒド(3)が得られる。代りの方法として、塩化メチレン等の非アセタール形成溶媒中での(19)のオゾン分解により、アルデヒド(3)を直接得られる。
【0063】
反応式IVの工程Eでは、上述の反応式IIIの工程Dに記載の条件と類似の条件下で、アルデヒド(3)を還元的にアミド化し、化合物(5)を得る。[化合物(5)はまた、反応式Iで製造される。]
【0064】
反応式Vは、化合物(5)の製造のための、別の合成法を提供する。全ての置換基は、他に指定のない限り、前に定義された通りである。試薬及び出発物質は当業者には容易に入手可能である。
【化7】

【0065】
反応式Vの工程Aでは、当分野において周知の標準的条件下で、アルデヒド(3)をピペリジン(4)と共に縮合し、エナミン(20)を得る。例えば、イソプロピル酢酸またはイソプロパノール等の適当な有機溶媒中に溶解された約1.05当量のアルデヒド(3)を、遊離塩基である純粋なピペラジン(4)に添加する。追加の有機溶媒を添加し、スラリーを形成し、反応物を約1〜2時間攪拌する。その後、濾過による回収等の標準的な技術により、エナミン(20)を単離する。
【0066】
反応式Vの工程Bでは、当業者に周知の条件下で、エナミン(20)を水素化し、化合物(5)を得る。例えば、エナミン(20)をParr瓶中で、イソプロピルアルコール等の適当な有機溶媒、及び、触媒量の炭素上の5%パラジウムと一緒にする。混合物を50psiの水素下に置き、そして2日間、室温で振る。その後、触媒を除くためにスラリーを濾過し、濾過液を濃縮し、化合物(5)を得る。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、上に一般的記載されたように、式I及び式Iaの化合物の典型的な合成法を表す。これらの実施例は、例示のみのためのものであり、いかなる意味でも本発明を限定することを目的としたものではない。試薬及び出発材料は当業者に容易に入手可能である。本明細書中で使用する以下の用語は以下の意味を有する:「aq」は水性を指し;「eq」は当量を指し;「g」はグラムを指し;「mg」はミリグラムを指し;「L」はリットルを指し;「mL]はミリリットルを指し;「μL」はマイクロリットルを指し;「mol」はモルを指し;「mmol」はミリモルを指し;「psi」は1平方インチ当りのポンド数を指し;「min」は分を指し;「h」は時間を指し;「℃」は摂氏温度を指し;「TLC」は薄層クロマトグラフィーを指し;「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指し;「Rf」は保持因子を指し;「Rt」は保持時間を指し;「δ」はテトラメチルシランから下方の100万分の1を指し;「THF」はテトラヒドロフランを指し;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指し;「IPA」はイソプロピルアルコールを指し;「iPrOAc」は酢酸イソプロピルを指し;「AcOH」は酢酸を指し;「HRMS」は高分解能質量分析を指し;「Et3N」はトリエチルアミンを指し;「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドを指し;「RT」は室温を指し;「SRI」はセロトニン再摂取阻害剤を指し;「aq」は水性を指し;そして、「MTBE」はtert-ブチルメチルエーテルを指す。
【0068】
実施例 1
【化8】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジンシュウ酸塩
A.2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソランの製造
150mLのジメチルホルムアミド中の水酸化ナトリウム(61.25mmol)の攪拌懸濁液に、0℃、窒素下で、150mLのテトラヒドロフラン中のデオキシベンゾイン(50.96mmol)を滴下した。混合物を0℃で1時間、及び、室温で1時間攪拌した。混合物に2-ブロモメチル-1,3-ジオキソラン(60.55mmol)及びヨウ化カリウム触媒(6.0mmol)を添加した。混合物を、13時間還流するまで加熱した。冷却後、ジエチルエーテル(300mL)及び水(300mL)を添加した。有機層を分離し、水で洗浄した(150mL×2)。ヘキサン及び酢酸エチルを用いたフラッシュクロマトグラフィーによる精製により、2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソランを得た(8.18g;57%)。
【0069】
B.3-ベンゾイル-3-フェニルプロピオンアルデヒドの製造
100mLのアセトンに2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソラン(8.85mmol)、及び、100mLの2N 塩酸を添加した。室温で7時間、混合物を攪拌した後、100mLの2N水酸化ナトリウムを添加した。アセトンを蒸発させ、残余物をジエチルエーテル、及び、ヘキサン(1:1、100mL×3)で抽出した。一緒にした有機層を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濾過し、濃縮した。残余物は比較的純粋な材料(3-ベンゾイル-3-フェニルプロピオンアルデヒド)であったので、次の工程にそのまま用いた。
【0070】
C.1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジンの製造
上述の工程Bで得られた3-ベンゾイル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(8.85mmol)を110mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に、2-メトキシフェニルピペラジン(10.61mmol)及び、トリアセトキシホウ化水素ナトリウムNaBH(OAc)3(10.61mmol)を添加した。混合物を室温で3時間攪拌した。水性試案に続いてフラッシュクロマトグラフィーを行い、純粋な1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(3.48)を生成物として、最後の2工程で95%収量で得た。シュウ酸1当量を、メタノールに溶解した遊離塩基に添加した。溶媒を蒸発させ、真空下で生成物を乾燥し、シュウ酸塩を形成させた。
融点=161〜163℃;
MS(m/e):414(M+)。
【0071】
実施例 2
【化9】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
プロピル]ピペラジンシュウ酸塩
A.シクロヘキシルベンジルケトンの製造
30mLテトラヒドロフラン中のN-メチル-N-メトキシシクロヘキサンカルボキシアミド(7.42mmol)の攪拌溶液に、0℃、窒素下で塩化ベンジルマグネシウム(テトラヒドロフラン中に2.0M、4.5mL、9.0mmol)溶液を添加した。混合物を0℃で30分間、及び、室温で1時間攪拌した。ジエチルエーテル(50mL)及び水(20mL)を添加した。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、濃縮した。ヘキサン及び酢酸エチルを用いたフラッシュクロマトグラフィーによる残余物の精製により、70%の収量で油状物としてシクロヘキシルベンジルケトン(1.05g)を得た。
【0072】
B.2-(2'-シクロヘキサンカルボニル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソランの製造
実施例1の工程Aに記載の方法に続いて、シクロヘキシルベンジルケトン(5.09mmol)、及び、2-ブロモメチル-1,3-ジオキソラン(7.63mmol)を水酸化ナトリウムの存在下で反応させ、59%の収量で2-(2'-シクロヘキサンカルボニル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソラン(0.86g)を得た。
【0073】
C.3-シクロヘキサンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒドの製造
実施例1の工程Bに記載の方法に続いて、2-(2'-シクロヘキサンカルボニル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソラン(2.98mmol)を1N塩酸と反応させ、100%の収量で3-シクロヘキサンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒドを粗生成物として得た。
【0074】
D.1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジンの製造
実施例1の工程Cに記載の方法に続いて、3-シクロヘキサンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(1.39mmol)、及び、2-メトキシフェニルピペラジン(1.39mmol)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.80mmol)と反応させ、79%の収量で純粋な1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(464mg)を得た。シュウ酸塩は上述のように製造した。
融点=149〜151℃;
MS(m/e):420(M+)。
【0075】
実施例 3
【化10】

1-(2-ピリジル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]
ピペラジンシュウ酸塩
実施例1の工程Cに記載の方法に続いて、3-シクトヘキサンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(1.55mmol)、及び、1-(2-ピリジル)ピペラジン(1.55mmol)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(2.0mmol)と反応させ、78%の収量で1-(2-ピリジル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(475mg)を得た。シュウ酸塩は上述のように製造した。
融点=185〜187℃;
MS(m/e):391(M+)。
【0076】
実施例 4
【化11】

1-(2-エトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
プロピル]ピペラジンジ塩酸塩
実施例1の工程Cに記載の方法に続いて、3-シクロヘキサンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(1.02mmol)、及び、1-(2-エトキシフェニル)ピペラジン(1.13mmol)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.33mmol)と反応させ、52%の収量で、純粋な生成物1-(2-エトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(270mg)を得た。メタノール中の遊離塩基溶液に、ジエチルエーテル中の塩酸を必要量添加した。溶媒を減圧下で除き、生成物を真空下で乾燥し、ジ塩酸塩を得た。
融点=180〜183℃;
MS(m/e):434(M+)。
【0077】
実施例 5
【化12】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)ブチル]
ピペラジンシュウ酸塩
A.2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)プロピル-1,3-ジオキソランの製造
実施例1の工程Aに続いて、2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)エチル-1,3-ジオキソラン(3.54mmol)、及び、ヨウ化メタン(10.62mmol)を水酸化ナトリウム(4.25mmol)の存在下で反応させ、2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)プロピル-1,3-ジオキソラン(0.60g)を得た。
【0078】
B.3-ベンゾイル-3-フェニルブチルアルデヒドの製造
実施例1の工程Bに続いて、2-(2'-ベンゾイル-2'-フェニル)プロピル-1,3-ジオキソラン(0.60g)を3N塩酸と反応させ、3-ベンゾイル-3-フェニルブチルアルデヒドを粗生成物として得た(0.32g)。
【0079】
C.1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの製造
実施例1の工程Cに続いて、3-ベンゾイル-3-フェニルブチルアルデヒド(0.32g)及び1-(2-メトキシフェニル)ピペラジン(0.23g)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(0.33g)と反応させ、純粋な生成物1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(ベンゾイル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン(0.12g)を得た。シュウ酸塩は上述のように製造した。
融点=192〜193℃;
MS(m/e):428(M+)。
【0080】
実施例 6
【化13】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘプタンカルボニル)-3-(フェニル)
プロピル]ピペラジンジ塩酸塩
実施例1の工程Cに記載の方法に続いて、3-シクロヘプタンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(2.52mmol)、及び、1-(2-メトキシフェニル)ピペラジン(2.52mmol)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(3.28mmol)と反応させ、70%の収量で、純粋な生成物1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘプタンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(770mg)を得た。ジ塩酸塩は上述のように製造した。
融点=193〜194℃;
MS(m/e):434(M+)。
【0081】
実施例 7
【化14】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロペンタンカルボニル)-3-(フェニル)
プロピル]ピペラジンジ塩酸塩
実施例1の工程Cに記載の方法に続いて、3-シクロペンタンカルボニル-3-フェニルプロピオンアルデヒド(1.36mmol)、及び、1-(2-メトキシフェニル)ピペラジン(1.49mmol)をトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.77mmol)と反応させ、70%の収量で、純粋な生成物1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロペンタンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(370mg)を得た。ジ塩酸塩は上述のように製造した。
融点=210〜212℃;
MS(m/e):406(M+)。
【0082】
実施例 8
【化15】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキシル)-4-(ヒドロキシ)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジンシュウ酸塩
塩化メチレン(10mL)中の1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)プロピル]ピペラジン(0.11g、0.20mmol)の攪拌溶液に、−78℃、窒素下でDibal-H(登録商標)溶液(0.89mmol)を添加した。混合物を−78℃で1時間攪拌し、その後ゆっくりと16時間かけて室温に温めた。試案に続いてフラッシュクロマトグラフィーで精製し、78%の収量で、純粋な1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキシル)-4-(ヒドロキシ)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン(0.086g)を得た。シュウ酸塩は上述のように製造した。
融点=100〜102℃;
MS(m/e):422(M+)。
【0083】
実施例 9
【化16】

1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジン
【化17】

2-フェニル-1-シクロヘキサン-エタン-1-オンの製造
反応式IIIの工程A: 窒素雰囲気下で、5Lの反応容器をテトラヒドロフラン(1.05L)で満たした。アセトン/氷槽を用いて、溶液を約−5℃に冷却した。その後、ジメチルアミン液体(115.9g、2.57mol)をテフロン性の添加チューブを介して添加した。冷却槽を取り除き、約15〜20℃に溶液を温めた。その後、メチル シクロヘキサンカルボンサン塩(341.7g、2.40mol)を添加し、紅茶色の溶液を得た。その後、塩化ベンジルマグネシウム(THF中の2.0M溶液、2.52L、246mol)を、約1.8〜約2.2時間で添加が終了するような速度で、ゆっくりと添加した。反応混合物の温度を添加の間、約15〜20℃に保てるよう、冷却槽をあてがった。塩化ベンジルマグネシウム溶液を添加した後、得られたスラリーを室温で約1〜2時間攪拌した。その後、反応混合物を0℃より低く冷却した。濃縮HCl(709.7g、7.2mol)を水(3.08L)と合せ、溶液を5℃より低く冷却した。希釈した酸混合物を、容器に冷却槽をあてがった22Lの反応容器に添加した。冷却した上述の反応混合物を、攪拌しながら上述の希釈酸溶液に注いだ。激しい発熱が起こる(注意)。反応混合物の添加速度は、反応を止めた溶液の温度を45℃以下に保つよう調整されるべきである。反応混合物を希釈酸溶液に添加した後、反応を止めた反応混合物を室温まで冷却し、十分量の濃縮HClを用いて約6.5〜7.5のpHに調整した。反応を止めた反応混合物をMTBE(1.71L)で抽出した。層を分離し、有機層の水/MTBE混合物(1.03L/1.37L)による洗浄に続き、水/MTBE混合物(1.03L/1.03L)で2回目の洗浄をした。有機層を一緒にし、ブライン(683mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム(167g)上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮した。粗油状物をハウス真空で5〜16時間乾燥し、粗2-フェニル-1-シクロヘキサン-エタン-1-オン(522.3g)を得た。この粗材料は、さらに精製することなく次の反応で用いた。
【0084】
【化18】

1,1-ジエトキシ-3-フェニル-3-シクロヘキサンカルボニル-ブタンの製造
反応式IIIの工程B; マグネチックスタラーバー、熱電対デジタル温度計及び添加漏斗を備えた250mLの3つ首丸底フラスコ中に、2-フェニル-1-シクロヘキサン-エタン-1-オン(8.26g、40.8mmol)をDMSO(45mL)と一緒にした。攪拌溶液に、カリウムtert-ブトキシド(5.04g、44.9mmol)を添加した。16℃の発熱が観察され、黄色の溶液が暗褐色になった。添加終了後、反応混合物をさらに15分攪拌し、その後、およそ10分かけて添加漏斗を介してブロモアセトアルデヒドジエチルアセタール(8.26g、41.9mmol)を滴下した。その後、反応混合物を50℃で2〜2.5時間加熱し、その間反応混合物は黄色になった。反応混合物を、氷/水槽を用いて約9.5℃に冷却し、カリウムtert-ブトキシド(10.07g、89.7mmol)を添加すると発熱反応が起こり、黄色から褐色へと変化した。冷却槽を着けたままで、反応混合物をさらに15分間攪拌し、続いてヨウ化メタン(10.26g、72.3mmol、純粋)を滴下した。反応混合物の温度を21℃以下に保った。ヨウ化メタン添加中の発熱は、ヨウ化メタンの沸点である41〜43℃より下に維持されるべきである。添加が終了した後、反応混合物を室温で1〜4時間攪拌した。その後、反応混合物をMTBE(100mL)と水(100mL)の間で分配した。有機層を水(3×50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、吸引濾過し、そして真空下で濃縮し、粗1,1-ジエトキシ-3-フェニル-3-シクロヘキサンカルボニル-ブタン(13.6g)を黄色油状物として得た。粗材料をさらに精製することなく、次の反応において使用した。
【0085】
【化19】

1-シクロヘキシル-2-フェニル-ブタン-1-オン-4-アルの製造
反応式IIIの工程C; 1,1-ジエトキシ-3-フェニル-3-シクロヘキサンカルボニル-ブタン(74.4g、224mmol)をアセトン(800mL)中に溶解し、続いて、3.0N HCl(800mL)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。その後、それを真空下で元の容量の半分より少なく濃縮し、その後、塩化メチレン(800mL)で抽出した。有機抽出物をブライン(300mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、吸引濾過し、それから真空下で濃縮して、粗3-フェニル-3-シクロヘキサンカルボニル-ブタン-1-アル(57.8g)を得た。代りの方法として、乾燥し、濾過した塩化メチレン溶液を濃縮することなく直接次の工程で使用することができる。
【0086】
最終標題化合物1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの製造
反応式IIIの工程D; 粗3-フェニル-3-シクロヘキサンカルボニル-ブタン-1-アル(57.8g、224mmol)を塩化メチレン(1650mL)中に溶解し、続いて1-(2-メトキシフェニル)ピペラジン塩酸塩(56.3g、246mmol)を添加した。場合により酢酸(41mL)を、スラリーを溶液に変えるため添加し得る。スラリー溶液に、トリアセトキシホウ化水素ナトリウム(60.3g、284mmol)をゆっくりと添加した。わずかな発熱が生じ、そしてスラリーが精製した。反応混合物をさらに室温で3時間攪拌した。2.0N水酸化ナトリウム(1050mL)を添加し、反応を終了した反応混合物のpHを約10にして、反応を終了させた。その後、混合物を塩化メチレン(2回、1L及び300mL)で抽出した。有機抽出層を合わせ、1.0N HCl(600mL)、1.0N水酸化ナトリウム(600mL)、ブライン(600mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして真空下で濃縮し、最終標題化合物を濃厚な油状物として得た;
UV(MeOH):λmax=243nm,∈243=7110;λmax=281nm,∈243=3200
IR (CDCl3,cm-1)2937, 2856, 2836, 1698, 1499, 1451, 1377, 1316, 1242, 1029
1H NMR (300MHz,DMSO) δ 7.75 (2H, m), 7.55 (2H, m), 6.93 (3H, m), 6.85 (2H, m), 3.75 (3H, s), 2.90 (4H, m), 2.43(4H, m), 2.08 (5H, m), 1.5 (10H, m), 1.05 (3H, m)
13C NMR (300MHz,DMSO) δ 214.18, 151.94, 141.25, 141.23, 128.45, 126.85, 126.74, 122.22, 120.79, 117.81, 111.97, 55.28, 54.54, 53.67, 53.13, 50.01, 45.30, 33.75, 30.44, 30.12, 25.21, 24.98, 24.93, 19.94.
283822の分析についての計算値:C, 77.38; H, 8.81; N, 6.45.
実測値:C, 76.44; H, 8.89; N, 6.01.
【0087】
1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンマレイン酸塩
1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン(上述で直接製造)を温かいメタノール(50mL)に溶解し、続いてマレイン酸(26.8g)、及び、MTBE(200mL)を添加した。この混合物をペースト状に濃縮し、その後、メタノール(およそ15mL)及びMTBE(200mL)の添加により再溶解した。混合物に種晶を入れ、そして、結晶化が始まってからさらに追加のMTBE(300mL)を1度添加した。混合物を吸引濾過し、そして固体をMTBEで洗い、40℃で5時間真空乾燥し、標題化合物(122g)を得た。
【0088】
さらに、3-シクロヘキサンカルボニル-3-フェニルブチルアルデヒド、及び1-(2-メトキシフェニル)ピペラジンから、大体、反応式Vに記載の、上述の方法と類似の手法により当業者は、標題化合物である1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンを製造し得る。
【0089】
1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン2HCl
標題化合物は遊離塩基及び塩酸から上述のマレイン酸塩の方法と類似の手法により当業者により製造され、白色の固体が得られる;融点(DSC)=192.81℃。
【0090】
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン、及び、(−)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの製造
反応式IIIの工程E:
材料:
Chiralpak AD Bulk パッキング, 20ミクロン
アセトニトリル
3Aアルコール
Prochrom 8cmカラム
Prochrom LC-80 システム/回収システム
カラムの調製: 8×19cmのProchrom カラム(Prochem, 5622 West 73rd Street, Indianapolis, IN 46278)を備えたProChem LC-80自動化システムは、プロパノール(1L)中のおよそ500gのChiralpak AD(Chiral Technologies, 730 Springdale Drive, Exton, PA 19341)がスラリーとして詰めこまれている。およそ5%の3Aアルコールをアセトニトリル中に含む溶離剤を製造した。カラムの流速は155mL/分で、検出器は280nmにセットした。ラセミ体1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(メチル)-3(フェニル)プロピル]ピペラジン(25g)をアセトニトリル(50mL)中に溶解した。この溶液をおよそ3g、フラスコ中に量り入れ、アセトニトリル(50mL)で希釈した。1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの(+)及び(−)エナンチオマーを分離するため、この溶液をカラム上にポンプで載せた。画分を回収し、(−)エナンチオマーがまず溶出された。およその総サイクル時間は15分である。
【0091】
2つの分離された異性体のエナンチオマー過剰は、以下の条件下で決定した:
カラム:46×15cm Chiralcel OH-H
溶離剤:0.2%ジメチルアミンを含むヘプタン中の3% エタノール
流速:0.6mL/分
温度:環境
UV:280nm
(−)エナンチオマーの%eeは、96.4%であった。
(+)エナンチオマーの%eeは、96.6%であった。
【0092】
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンジ塩酸塩の製造
反応式IIIの工程F: (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル」ピペラジン(15.0g、34.5mmol、上述で製造)をメタノール(40mL)で希釈した。この溶液にHCl(メタノール中の26.3%溶液を9.58g、69.0mmol)を添加した。混合物は、ゼラチン状の結晶を形成し始め、数分で固体を形成した。この混合物に、激しく攪拌しながらジエチルエーテル(100mL)を添加した。白色の固体を吸引濾過により回収し、その後、45℃で2日間真空乾燥し、標題化合物(13.4g、76%)を白色固体として得た;融点(DSC)=195.58℃。
IR (CDCl3,cm-1)2976, 2939, 1700, 1502, 1462, 1451, 1267, 1243, 1021;
1H NMR (300MHz,DMSO) δ 7.40 (2H, m), 73.1 (3H, m), 7.03 (3H, M), 6.90 (1H, m), 3.78 (3H, s), 3.49 (4H, m), 3.16 (5H, m), 2.64 (1H, m), 2.40(3H, m), 1.56 (3H, s), 1.46 (4H, m), 1.11 (5H, m), 0.86 (1H, m);
13C NMR (300MHz,DMSO) δ 213.46, 151.84, 139.56, 138.12, 128.72, 127.37, 126.86, 124.29, 120.85, 118.71, 112.29, 55.48, 54.06, 52.20, 50.78, 50.57, 46.93, 45.14, 30.31, 30.16, 25.15, 24.91, 24.89, 19.15;
283922についての計算したHRMS (MH+) 435.3012, 実測値 435.3018
[α]25D=+76.53°(c=1, MeOH), ee 99.3% (キラルHPLC)
【0093】
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンモノ塩酸塩の製造
反応式IIIの工程F: (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン(6.05g、13.9mmol)をMTBE(120mL)で希釈し、続いてHCl(イソプロパノール中の2.2M溶液、6.3mL、13.9mmol、10mLイソプロパノール中の0.80gのHCl気体より製造)。混合物は、油状/固体混合物を形成し、さらに攪拌することにより均一な結晶性材料が生じた。混合物を吸引濾過し、MTBEで洗い、白色固体を得、45℃で真空乾燥した(5.74g、96.2%ee)。
【0094】
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンモノ塩酸塩は、HCl気体に代えて、当量の濃HCl水から類似の手法により製造し得る。
【0095】
1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの別の製法
【化20】

1-シクロヘキシル-2-フェニルプロパノールの製造
反応式IVの工程A: 25mLのEt2O、及び、40mLのTHF中の塩化シクロヘキシルマグネシウム(50mmol)溶液に、−5℃で、10mLのTHF中の2-フェニルプロパンアルデヒド(5.36g、40mmol)溶液を添加した。反応混合物は5℃に発熱した。室温で75分間攪拌した後、溶液を氷冷1N HCl上に注ぎ、トルエンで抽出し、MgSO4上で乾燥し、そして濃縮して標題化合物を無色の油状物として得た(6.15g、70%):1H NMR (d6-DMSO):δ 7.23-7.30 (m, 2H, フェニル CH), 7.15-7.22 (m, 3H, フェニル CH), 4.17-4.51 (br s, 1H, -OH), 3.23-3.33 (m, 1H, R2CHOH), 2.78 (dq, J=7.0 Hz, J=7.1 Hz, 1H, -CH(CH3)Ph), 1.23-1.83 (m, 6H, シクロヘキシル CH), 1.20 (d, J=6.9 Hz, 3H, -CH(CH3)Ph), 0.88-1.18 (m, 6H, シクロヘキシル CH).
【0096】
【化21】

シクロへキシル 1-フェニルエチルケトンの製造
反応式IVの工程B: 1737mLCH2Cl2(湿冷アセトン槽中で冷却)中の126.42g(0.579mol)の1-シクロヘキシル-2-フェニルプロパノール溶液に、DMSO(118mL、1.6674mol)を滴下した。29分後、147.93g(1.0422mol)のP25を添加した。Et3Nで反応を止めた部分標本は、室温で3時間で完全な反応を示した。反応混合物を湿冷アセトン槽中で冷却した。Et3N(282mL、2.0265mol)を冷却した反応混合物に30分かけて滴下した。冷却槽を取り除き、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物の反応を500mLの3N HCl(水性)(pH=0)を滴下することにより止めた。分離漏斗中で振った後、水性層を取り除いた。有機層を500mLの3N HCl(水性)(pH=0)で洗浄し、1Lの10%K2CO3(水性)(pH=12;12)で2度洗浄し、500mLのNaOCl(水性)溶液で3度洗浄し、1Lの水で洗浄し、1Lの25%NaCl(水性)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、重力により濾過し、そして、Me2Sを回収するための乾燥氷冷トラップで真空下で濃縮した。標題化合物の琥珀色の油状物(107.01g、85.437%)を得た;
1H NMR (d6-DMSO):δ 7.30-7.37 (m, 2H, フェニル CH), 7.21-7.28 (m, 3H, フェニル CH), 4.08 (q, J=6.9 Hz, 1H, -CH(CH3)Ph), 2.40-2.49 (m, 1H, シクロヘキシル CH), 1.82-1.84 (m, 1H, シクロヘキシル CH2), 1.67-1.69 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2), 1.52-1.63 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2), 1.34-1.43 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2), 1.26 (d, J=6.9 Hz, 3H, -CH(CH3)Ph), 1.01-1.24 (m, 4H, シクロヘキシル -CH2).
【0097】
【化22】

2-フェニル-2-メチル-4-ペントイルシクロヘキサンの製造
反応式IVの工程C; 100mLTHF中の31.39g(0.2792mol)のt-BuOK溶液を、136mLのTHF(湿冷アセトン槽中で冷却)中の55.00g(0.2543mol)のシクロヘキシル1-フェニルエチルケトン及び26.4mL(0.3052mol)の臭化アリルに滴下した。反応混合物にTHF洗浄液(16mL)を添加した。冷却槽を添加後、取り除いた。反応が終了した後(2時間)、反応混合物の反応を300mLの1N HCl(pH=0)で止め、300mLのヘプタンで抽出した。ヘプタン抽出物を10%NaHCO3(水性)(pH=9)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、重力により濾過し、そして真空下で濃縮して標題化合物を59.70g(91.58%)を琥珀色の油状物として得た:1H NMR (d6-DMSO):δ 7.32-7.42 (m, 2H, フェニル CH), 7.24-7.31 (m, 3H, フェニル CH), 5.34-5.47 (m, 1H, -CH=CH2), 5.02 (dd, J=17.1 Hz, J=2.1 Hz, 1H, -CH=CH-H (トランス)), 4.97 (ddd, J=10.2 Hz, J=2.2 Hz, J=1.0 Hz, 1H, -CH=CH-H (シス, W-カップリング)), 2.66 (ddd, J=14.2 Hz, J=6.9 Hz, J=1.0 Hz, 1H, -CH2CH=CH2), 2.59 (ddd, J=14.2 Hz, J=7.3 Hz, J=1.0 Hz, 1H, -CH2CH=CH2), 2.38-2.49 (m, 1H, シクロヘキシル CH), 1.48-1.69 (m, 4H, シクロヘキシル -CH2), 1.46 (s, 3H, -CH(CH3)Ph), 1.36-1.44 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2), 0.82-1.36 (m, 5H, シクロヘキシル -CH2).
【0098】
【化23】

4-シクロヘキシル-3-メチル-4-オキソ-3-フェニルブチルアルデヒドの製造
反応式IVの工程D: 220mLMeOH(乾燥氷冷アセトン槽で−20℃に冷却された)中の56.50g(0.2204mol)の2-フェニル-2-メチル-4-ペントイルシクロヘキサン、及び、少量(10mg)のスダン(登録商標)IIIの濁った混合物に、ピンク色が薄黄色に変わるまでオゾンを4時間吹き込んだ。全オレフィンが消費された後、反応混合物にMe2S(50mL)を添加した。冷却槽を取り除いた。発熱は38℃に昇り、発熱がなくなるまで混合物を冷却槽で冷却した。その後、冷却槽を取り除き、混合物を一晩攪拌した。Me2Sを回収するための乾燥氷冷トラップを用い真空下で反応溶液を濃縮し、83.65gの粗4-シクロヘキシル-3-メチル-4-オキソ-3-フェニルブチルアルデヒドジメチルアセタールをピンク色の油状物として得た:
1H NMR (d6-DMSO):δ 7.34-7.39 (m, 2H, フェニル CH), 7.24-7.30 (m, 3H, フェニル CH), 3.99 (dd, J=4.2 Hz, J=5.9 Hz, 1H, CH(OCH3)2), 3.14 (s, 3H, CH(OCH3)2), 3.06 (s, 3H, CH(OCH3)2), 2.34-2.43 (m, 1H, シクロヘキシル CH), 2.10-2.20 (m, 2H, -CH2CH(OCH3)2), 1.55-1.67 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2), 1.53 (s, 3H, R2C(CH3)Ph), 0.80-1.52 (m, 9H, シクロヘキシル -CH2).
【0099】
539mLアセトン中の82.65g(66.29g、0.2177mol)の4-シクロヘキシル-3-メチル-4-オキソ-3-フェニルブチルアルデヒドジメチルアセタールに、539mLの3N HCl(水性)を室温で添加した。反応終了後(2時間)、混合物を残余物426.5g(または1/3容量)に濃縮した(室温〜40℃)。残余物は大部分が水であり(pH=0)、300mLのMTBEで2度抽出した。MTBE抽出物を300mLの25%NaCl(水性)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、重力により濾過し、そして濃縮して54.92g(97.65%)の標題化合物をピンク色の油状物として得た:1H NMR (d6-DMSO):δ 9.54 (t, J=2.0 Hz, 1H, -CHO), 7.36-7.45 (m, 2H, フェニル CH), 7.28-7.35 (m, 3H, フェニル CH), 2.95 (dd, J=16.6 Hz, J=1.9 Hz, 1H, CH2CHO), 2.85 (dd, J=16.6 Hz, J=1.7 Hz, 1H, CH2CHO), 2.41-2.49 (m, 1H, シクロヘキシル CH), 1.72 (s, 3H, R2C(CH3)Ph), 0.85-1.66 (m, 10H, シクロヘキシル -CH2).
【0100】
最終標題化合物1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジンの製造
反応式IVの工程E: 391mL CH2Cl2中の13.72g(0.05310mol)の4-シクロヘキシル-3-メチル-4-オキソ-3-フェニルブチルアルデヒド、及び、11.57g(0.05058mol)の1-(2'-メトキシフェニル)ピペラジン塩酸塩のスラリーに、9.7mLのAcOHを添加し、反応混合物を均質にした。反応溶液にゆっくりと14.63g(0.06904mol)のNaBH(OAc)3を添加した。4日間攪拌した後(反応は2〜5時間以内に終了するべき)、200mLの1N HCl(水性)を反応混合物の反応を止めるために添加した(pH=1)。混合物を200mLのCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2抽出物を再度、200mLの1N HCl(水性)(pH=1)で洗浄した。両HCl(水性)洗浄液を一緒にし、保存した。有機抽出物を200mLの1N NaOH(水性)(pH=14)で洗浄した。乳濁液が形成し、100mL水、及び、100mL MTBEの添加によりそれを溶解した。有機層を再び200mLの1N NaOH(水性)(pH=14)で洗浄し、200mLの25%NaCl(水性)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、重力濾過し、そして濃縮して22.74gの粗標題化合物を琥珀色の油状物として得た。純粋な標準物質に対するHPLC分析により、粗生成油状物が13.66g(61.71%)の標題化合物を含むことが判った。
【0101】
一緒にしたHCl洗浄液に、28.44gのNaOH(固体)を添加し、混合物を塩基性にした(pH=14)。濁った混合物を2度、100mLのCH2Cl2で抽出した。CH2Cl2抽出物を一緒にし、25%NaCl(水性)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、重力濾過し、そして濃縮して、標題化合物0.096g(総量=62.15%)、及び、1-(2'-メトキシフェニル)ピペラジン1.05g(10.8%回収)を含む、1.86gの琥珀色の油状残余物を得た。
1H NMR (d6-DMSO):δ 7.35-7.43 (m, 2H, フェニル CH), 7.26-7.32 (m, 3H, フェニル CH), 6.89-6.96 (m, 2H, フェニル CH), 6.83-6.88 (m, 2H, フェニル CH), 3.76 (s, 3H, OCH3), 2.80-3.03 (m, 4H, ピペラジン CH2), 2.34-2.49 (m, 4H, ピペラジン CH2), 1.91-2.24 (m, 4H), 1.52-1.62 (m, 2H, シクロヘキシル CH2), 1.51 (s, 3H, R2C(CH3)Ph), 1.34-1.48 (m, 2H, シクロヘキシル -CH2), 1.13-1.27 (m, 4H, シクロヘキシル -CH2), 1.00-1.10 (m, 2H, シクロヘキシル -CH2), 0.83-1.00 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2).
【0102】
最終標題化合物の別の製法
【化24】

エナミンの製造
反応式Vの工程A: 42mL水中の25.00g(0.1093mol)の1-(2'-メトキシフェニル)ピペラジン塩酸塩に、14.5mL(0.109mol)の濃縮(29.4%)NH4OH(水性)(pH=9)を添加した。混合物を2度、250mLの1:1(容量/容量)のTHF:トルエンで抽出した。有機層を一緒にし、MgSO4上で乾燥し、重力濾過し、そして濃縮して20.17g(96.00%)の1-(2'-メトキシフェニル)ピペラジンを薄緑色の油状物として得た:1H NMR (d6-DMSO):d 6.90-6.97 (m, 2H, フェニル CH), 6.83-6.90 (m, 3H, フェニル CH), 3.77 (s, 3H, OCH3), 2.77-2.91 (m, 8H, ピペラジン CH2), 2.49-2.53 (m, 1H, NH). 10mL iPrOAc中の9.55g(0.0370mol)の4-シクロヘキシル-3-メチル-4-オキソ-3-フェニルブチルアルデヒドに、6.77g(0.0352mol)の純粋1-(2'-メトキシフェニル)ピペラジンを添加した。混合物は濁り、10mLのiPrOAcを添加したら固体の塊に変化した。固体をiPrOAcでスラリー状にした。1.5時間後、反応は終了した。固体を真空濾過し、10mLのiPrOAcで洗浄し、そして風乾して9.81g(64.4%)の純粋なエナミンを灰白色の粉末として得た。濾過物を濃縮し6.40gの粗エナミンを得た;
1H NMR (d6-DMSO):δ 7.31-7.43 (m, 2H, フェニル CH), 7.20-7.31 (m, 3H, フェニル CH), 6.82-7.04 (m, 4H, フェニル CH), 6.06 (d, J=14.2 Hz, 1H, CR3CH=CH NR2(トランス)), 4.98 (d, J=14.2 Hz, 1H, CR3CH=CH NR2(トランス)), 3.80 (s, 3H, OCH3), 2.93-3.15 (m, 8H, ピペラジン CH2), 2.38-2.49 (m, 1H, シクロヘキシル CH) , 1.59-1.72 (m, 2H, シクロヘキシル CH2), 1.47-1.59 (m, 2H, シクロヘキシル -CH2), 1.40 (s, 3H, R2C(CH3)Ph), 1.21-1.34 (m, 3H, シクロヘキシル -CH2), 1.03-1.21 (m, 2H, シクロヘキシル -CH2), 0.83-1.03 (m, 1H, シクロヘキシル -CH2).
【0103】
最終標題化合物の製造
反応式Vの工程B: 氷槽で冷やした500mL Parr瓶中の5.35g(0.00101mol)の5%Pd/Cに、8.68g(0.0201mol)の上で形成したエナミンを添加した。固体混合物に、冷凍庫(−22℃)で冷却した40mLのIPAを添加した。50psiでH2を導入し、混合物を室温で2日間振盪し、反応を終了した。黒色のスラリーを真空濾過し、そして濃縮して8.70gの無色の油状物を得た。Pd/C触媒を50mLのIPAで攪拌しながら洗浄した。黒色のスラリーを真空濾過した。濾過物を8.70gの残余物と合わせ、そして濃縮して10.03gの最終標題化合物を無色の油状物として得た。
【0104】
本発明の範囲内に含まれ、上述の方法と類似の手法により製造することができるその他の化合物は、以下の通りである:
10) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン ジ臭化水素酸塩;
11) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン モノ臭化水素酸塩;
12) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン コハク酸塩、1:1;
13) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン コハク酸塩、2:1;
14) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン リン酸塩;
15) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン d-酒石酸塩;
16) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン 1-酒石酸塩;
17) (+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン マレイン酸塩。
【0105】
セロトニン1A受容体活性
本発明の化合物は、セロトニン1A受容体における選択的なアンタゴニストである。従来の1A受容体活性を持つ化合物は、典型的には、同じように他の中枢神経系活性を有するという欠点を有している。単一の生理的な活性、または、所望の活性が他の活性と比べてより強い医薬の方が、ほぼ同じ用量で複数の活性を有する化合物(例えばピンドロル)よりも治療に望ましいことが、薬理学者及び医者には現在では理解されている。
【0106】
多くの他の公知のセロトニン受容体1Aアンタゴニストは典型的には、α-アドレナリン作用に加えて、β-アドレナリン作用、またはドパミン-2活性を持ち、そのため1A活性について非選択的である。
【0107】
本発明の化合物の5-HT1A受容体結合力を、Taylorら(J.Pharmacol.Exp.Ther.,236,118〜125(1986年))、及び、Wongら(Pharm.Biochem.Behav.,46,173〜177(1993年))により記載される結合分析を修正した方法で測定した。結合分析のための膜は、雄のSprague-Dawleyラット(150〜250g)から調製した。断頭により動物を殺し、脳を素早く冷やし、そして海馬を得るため切開した。海馬からの膜はその日のうちに調製されるか、または、海馬を調製する日まで凍結して(−70℃)で貯蔵した。組織を40容量の氷冷Tris-塩酸緩衝液(50mM、22℃でpH7.4)に、ホモジェナイザーを15秒間用いて均質化し、そして均質化物を39800×gで10分間遠心することにより膜を調製した。得られたペレットを同じ緩衝液中に再懸濁し、膜を洗浄するため、遠心及び再懸濁の工程をさらに3回行った。2回目と3回目の洗浄の合間に、内生のリガンドの除去を容易にするため、再懸濁した膜を37℃で10分間インキュベートした。最終ペレットを67mM Tris-塩酸(pH7.4)に、2mgの組織を元の湿重量/200μlの濃度で再懸濁した。この均質化物を、結合分析の日まで、凍結して(−70℃)貯蔵した。結合分析の各チューブは最終容量800μlであり、以下のものを含んでいた:Tris-塩酸(50mM)、パルギリン(10μM)、CaCl2(3mM)、[3H]8-OH-DPAT(1.0nM)、所望の薬剤の適当な希釈物、及び、元の組織湿重量2mgと均等な膜再懸濁液、最終pH7.4にする。分析チューブを37℃で10分間または15分間インキュベートし、そして内容物を素早くGF/Bフィルター(0.5%のポリエチレンイミンで前処理)で濾過し、続いて4回、1mLの氷冷緩衝液で洗浄した。フィルターにより捕捉された放射活性を液体シンチレーション分光計で定量し、5-HT1A部位への特異的な[3H]8-OH-DPATの結合を、10μMの5-HT存在下、及び、不在下で結合された[3H]8-OH-DPATの差として定義した。
【0108】
IC50値(即ち、結合を50%阻害するのに必要とされる濃度)は、非線形回帰(SYSTAT,SYSTAT, Inc.,Evanston, Il)を用いて12点競合曲線から決定した。IC50値をCheng-Prusoff式(Biochem.Pharmacol.,22,3099〜3108(1973年))用いてKi値に変換した。全ての実験は3回行った。
【0109】
本発明の化合物の幾つかについての追加の結合分析を、海馬膜ではなくセロトニン1A受容体を発現するクローン化されたセルラインを用いた分析法により行った。このようなクローン化されたセルラインは、Farginら(J.Bio.Chem.、264,14848〜14852(1989年))、Auneら(J.Immunology,151,1175〜1183(1993年))、及び、Raymondら(Naunyn-Schmiedeberg's Arch.Pharmacol.,346,127〜137(1992年))により記載されている。セルライン分析の結果は、海馬膜の分析の結果に実質的対応している。
【0110】
5HT1aアンタゴニストのイン・ビボ試験
a)5HT1aアントゴニズムの皮下試験
化合物を8-OH-DPATによる誘導した行動、及び、低体温を阻害する活性について、ある範囲の皮下用量にわたって試験した。下唇収縮(LLR)及び低胴体姿勢(FBP)を、雄のSprague Dawleyラット(250グラム、Harlan Sprague Dawleyより)について記録した。LLR及びFBPの両方を0〜3のスケールで測定した(Wolffら、1997年)。LLRの行動分析では、「0」は通常の下唇位置を指し、「1」はわずかな唇の分離を指し、「2」は少し歯が見えるくらい口が開いていることを指し、「3」は前歯が全部見えるくらい口が完全に開いていることを指す。FBP分析では、「0」という得点は通常の体勢を指し、「1」では、背中は通常の曲がった状態で腹が床についていたことを指し、「2」では、背中が真直ぐ伸ばされ肩から臀部へ持上がった状態で腹が床についていたことを指し、「3」では、肩と臀部が水平な状態で背中が平らで腹が床に押し付けられていたことを指す。中心体温は、行動測定の直後に、5.0cm挿入された直腸探針により記録した。ラットに得点をつける35分前に、化合物(0、0.3、1.0及び3.0mg/kg)を皮下注射し、得点をつける20分前に8-OH-DPAT(0.1mg/kgを皮下に)注射した。
【0111】
b)5HT1aアゴニスト皮下試験
化合物をさらに、5HT1aアゴニスト様低体温を誘導するか見るため、単独で皮下への10mg/kgの高用量でも試験した。
【0112】
本発明のセロトニン1A受容体活性力は、それに多数の医薬及び治療での応用性を付与する。それらの応用法の1つは、タバコまたはニコチンの使用に依存している人々の癖を直すのを助ける方法である。
【0113】
タバコまたはニコチンの使用の中止
ニコチンの慢性投与が耐性を生み、最終的に依存へと到ることは周知である。そのあらゆる形体でのタバコの使用による周知の不利な効果にも係わらず、全ての国々で、タバコの使用は非常に広まっている。よって、タバコの使用が、嗜癖化、或いは、習慣化するものであり、使用者がその使用による強烈な長期にわたる悪影響を完全に認識しているにもかかわらず、それを楽しみ、歓迎するような興奮を使用者に与えることは明らかである。
【0114】
どちらかといえば最近になって、タバコの使用に反対する積極的な運動が繰り広げられ、そして、喫煙の中止がそれと共に、怒りっぽさ、不安、落ち着かなさ、集中力の欠如、頭がくらくらとする症状、不眠、震え、空腹感の増加、及び、体重増加、並びに、当然のようにタバコへの切望等を含む、多数の不愉快な使用中止症状をもたらす。
【0115】
現時点では、タバコの使用中止を助力する最も広範に使用される治療法は、ニコチンチューインガムまたはニコチン供給経皮パッチを用いたニコチンの置き換えである。しかしながら、ニコチン置換は、習慣を変える心理的治療及び訓練抜きではあまり効果的ではない。
【0116】
本発明の方法は、タバコ若しくはニコチンの使用を中止、または、減らしたいと思っている人を助けるのに広く有用である。最も一般的にはタバコの使用の形体は喫煙であり、即ち紙巻きタバコの喫煙である。しかしながら、本発明はまたかぎタバコ、噛みタバコ等の使用を含む、あらゆる型のタバコの喫煙の習慣を破る助けとして有用である。本発明の方法はまた、タバコの使用をニコチン置換療法と置き換えた、または部分的に置き換えた人でも助けとなる。よって、このような患者が、あらゆる形体でのニコチンへの依存を減らし、完全に排除することを助けられる。
【0117】
本発明が、タバコ若しくはニコチンの使用を排除または減らそうとする患者を悩ませる使用中止症状を防ぐ、または、緩和するのに有用であることが理解される。このような人々の一般的な使用中止症状は、少なくとも、怒りっぽさ、不安、落ち着かなさ、集中力の欠如、不眠、震え、空腹感の増加及び体重増加、頭のくらくらとした症状、並びに、タバコ及びニコチンへの切望等を含む。患者がタバコ若しくはニコチンの使用を中止、または、減らしたことによって引き起こされた、または、それに伴って起こった場合、このような症状の防止または緩和は本発明の所望の結果であり、その重要な目的である。
【0118】
本発明は、有効量の式Iまたは式Iaの化合物を、それを必要とする、または、タバコ若しくはニコチンの使用を減らそう、若しくは、中止しようとしている患者に投与することにより行われる。
【0119】
本明細書中において用いられる「患者」という用語は、哺乳動物等の温血動物を指す。「患者」という用語には、ヒト、イヌ、マウス等が含まれる。好ましい患者がヒトであることが理解される。
【0120】
式Iまたは式Iaの化合物の有効量とは、診断または治療を受けている患者中で所望の効果を提供する化合物の量若しくは用量である。投与される式I若しくは式Iaの化合物の用量は、広い範囲にわったて有効であり、一般的に約1〜約200mg/日であり;通常、その事例に係わる医師の判断により、一日用量は単一のボーラスとして、または、分けた用量として投与され得る。より好ましい用量の範囲は約5〜約100mg/日であり、ある状況において好ましいその他の用量は約10〜約50mg/日、約5〜約50mg/日、約10〜約25mg/日、そして特に好ましい範囲は約20〜約25mg/日である。或る患者において用量は、常に担当の医師の判断により設定され、そして、患者の大きさ、患者が細身または太っているか、選択された特定の化合物の性質、患者のタバコへの習慣の強度、患者の使用中止症状の強度、及び、患者の生理的な応答に影響する心理的な因子に基づいて、用量は変更されることが理解される。
【0121】
ニコチン使用中止の症状を緩和する化合物の効果は、以下のように行った、ラットでの聴覚刺激試験によって評価した。
【0122】
ニコチン使用中止試験のための手順
動物: 雄のLong Evansラットを、12時間の明暗周期に調節した環境に、個別に収容し、そして、自由に餌(ピュリーナ(登録商標)げっ歯類用餌)及び水を取れるようにした。全ての処置群は、8〜10匹のラットを含んでいた。
【0123】
慢性ニコチン処置: ラットをハロセインで麻酔し、Alzet(登録商標)浸透性ミニポンプ(Alza Corporation, Palo Alto, CA, Model 2ML2)を皮下に移植した。ニコチン二酒石酸を生理的塩水に溶解した。ポンプは、ニコチン二酒石酸(6mg/kg塩基/日)または生理的塩水で満たした。ポンプの移植から12日後に、ラットをハロセインで麻酔し、ポンプを取り除いた。
【0124】
聴覚刺激応答: 個々のラットの知覚運動反応[聴覚刺激応答(ピーク振幅Vmax)]をSan Diego Instruments刺激室(San Diego,CA)を用い記録した。刺激期間は、70±3dBAでのバックグラウンド雑音レベルにおける5分間の順応期間にすぐ続く、25回の8秒間隔の聴覚刺激(120±2dBA騒音、50ミリ秒持続)より成っていた。ピーク刺激振幅は、各期間の全25の刺激の提示について平均した。聴覚刺激応答は、ニコチンの使用中止後1〜4日目に24時間間隔で毎日評価した。
【0125】
再摂取阻害剤との組合せ
式I若しくは式Iaの化合物のさらなる適用は、薬剤の組合せが投与される患者の脳内のセロトニン、ノルエピネフリン及びドパミンの有効性を増加させることによりそれらの薬剤の活性をさらに強化するセロトニン再摂取阻害剤と組合せて使用することである。典型的な、そして適当なセロトニン再摂取阻害剤(SRI)は、フルオキセチン(fluoxetine)、デュロキセチン(duloxetine)、ベンラファキシン(venlafaxine)、ミルナシプラン(milnacipran)、シタロプラム(citalopram)、フルボキサミン(fluvoxamine)、及び、パロキセチン(paroxetine)である。さらに、本発明は、セロトニン、ノルエピネフリン及びドパミンの脳内における有効性を増加させることにより特にフルオキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、シタロプラム、フルボキサミン及びパロキセチンからなる群のうちの1つのセロトニン再摂取阻害剤の活性を強化する方法であって、該セロトニン再摂取阻害剤を式I若しくは式Iaの化合物と共に投与することを含む。本発明はまた、セロトニン再摂取阻害剤を式I若しくは式Iaの化合物と共に含む医薬組成物、及び、セロトニン、ドパミン若しくはノルエピネフリンの有効性が減少したことによる、または、伴う病理学的な状態を処置する方法であって、処置を必要とする患者に同じ補助剤を用いた治療を施すことを含む方法を提供する。
【0126】
フルオキセチン、即ちN-メチル-3-(p-トリフルオロメチルフェノキシ)-3-フェニルプロピルアミンは、塩酸塩形体、及び、その2つのエナンチオマーのラセミ混合物として市販されている。米国特許第4,314,081号がその化合物についての初期の参考文献である。Robertsonら(J.Med.Chem.,31,1412(1981年))は、フルオキセチンのRおよびSエナンチオマーの分離について教示し、そのセロトニン再摂取阻害剤としての活性が互いに似ていることを示した。本明細書では、「フルオキセチン」という用語はいかなる酸付加塩または遊離塩基をも、そして、ラセミ混合物またはR及びSエナンチオマーのどちらかを含むことを意味する。
【0127】
デュロキセチン、即ちN-メチル-3-(1-ネフタレニルオキシ)-3-(2-チエニル)プロパンアミンは、塩酸塩及び(+)エナンチオマーとして通常投与される。それは、その高い力価を示す米国特許第4,956,388号で初めて教示された。本明細書中において「デュロキセチン」という用語は、その分子のいかなる酸付加塩または遊離塩基をも指す。
【0128】
ベンラファキシンは文献中に記載されており、その合成方法、並びに、セロトニン及びノルエピネフリン吸収の阻害剤としての活性は米国特許第4,761,501号に記載されている。該文献中、ベンラファキシンは化合物Aとして同定されている。
【0129】
ミルナシプラン(N,N-ジエチル-2-アミノメチル-1-フェニルシクロプロパンカルボキシアミド)は、米国特許第4,478,836号に教示されており、その実施例4において製造されている。該特許はその化合物を抗鬱薬として記載している。Moretら(Neuropharmacology,24,1211〜19(1985年))は、その薬理活性について記載している。
【0130】
シタロプラム、即ち1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-1-(4-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-5-イソベンゾフランカルボニトリルは、米国特許第4,136,193号にセロトニン再摂取阻害剤として開示されている。その薬理作用はChristensenら(Eur.J.Pharmacol.,41,153(1977年))に開示され、そしてその鬱病における臨床効果についての報告は、Dufourら(Int.Clin.Psychopharmacol.,2,225(1987年))、及び、Timmermanら(同書、239)に見られる。
【0131】
フルボキサミン、即ち5-メトキシ-1-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1-ペンタノン O-(2-アミノエチル)オキシムは、米国特許第4,085,225号に教示されている。薬剤についての科学的な記事が、Claassenら(Brit.J.Pharmacol.,60,505(1977年))、及び、DeWildeら(J.Affective Disord.,4,249(1982年))、及び、Benfieldら(Drugs,32,313(1986年))により報告されている。
【0132】
パロキセチン、即ちトランス-(−)-3-[(1,3-ベンゾジオキソール-5-イルオキシ)メチル]-4-(4-フルオロフェニル)ピペラジンは、米国特許第3,912,743号及び第4,007,196号に見られる。薬物の活性についての報告は、Lassenら(Eur.J.Pharmacol.,47,351(1978年))、Hassanら(Bit.J.Clin.Pharmacol.,19,705(1985年))、Laursenら(Acta Psychiat.Scand.,71,249(1985年))、及び、Battegayら(Neuropsychobiology,13,31(1985年))にある。
【0133】
本発明に使用される化合物と関連して上で挙げられた全ての米国特許文献は、本明細書の一部を構成する。
【0134】
一般に、SRIとしてフルオキセチンまたはデュロキセチン用いた組合せ、及び、処置方法が好ましい。
【0135】
本発明に用いられる化合物の全てが塩形成し得、そして遊離塩基と比べて塩形体のものの方がしばしば容易に結晶化及び精製されるので、塩形体の医薬が一般に使用されることが、当業者には理解される。全ての場合において、上述の医薬の塩としての使用は本明細書中において意図され、しばしば好まれる。そして、全化合物の医薬的に許容され得る塩はその名称中に含まれる。
【0136】
本発明の組合せ中で用いられる薬物の用量は、つまるところ、その薬物についての知識、臨床試験において決定された組合せとしての薬物の性質、医師がその患者を処置している以外の病気を含めた患者の特性を考慮して、その事例に携わる医師により設定されねばならない。用量の一般的概略、そして好ましい用量は与えられる。薬物のいくつかについては、まず別々に用量ガイドラインを与える。いかなる所望の組合せについてもガイドラインを作るためには、各構成薬物についてのガイドラインを選択できる。
【0137】
フルオキセチン: 約1〜約80mgを日に1回、好ましくは、約10〜約40mgを日に1回、病的飢餓及び強迫性障害については好ましくは、約20〜約80mgを日に1回;
デュロキセチン: 約1〜約30mgを日に1回、好ましくは、約5〜約20mgを日に1回;
ベンラファキシン: 約10〜約150mgを日に1〜3回、好ましくは、約25〜約125mgを日に1〜3回;
ミルナシプラン: 約10〜約100mgを日に1〜2回、好ましくは、約25〜約50mgを日に1〜2回;
シタロプラム: 約5〜約50mgを日に1回、好ましくは、約10〜約30mgを日に1回;
フルボキサミン: 約20〜約500mgを日に1回、好ましくは、約50〜約300mgを日に1回;
パロキセチン: 約5〜約100mgを日に1回、好ましくは、約50〜約300mgを日に1回。
【0138】
一般的に、上述のガイドラインの精神に従ってSRIの用量を選択し、そして式Iまたは式Iaの化合物の用量を上述の範囲から選択して、本発明の組合せを製造する。
【0139】
本発明の補助剤による治療は、体内で同時に2つの化合物の有効レベルが提供されるようなあらゆる方法で、SRIを式Iまたは式Iaの化合物と一緒に投与するこにより達成される。関係する全ての化合物は、経口で利用可能であり、通常経口投与されるので、補助剤の組合せの経口投与が好ましい。それらは、単一用量形体として一緒に、または別々に投与され得る。
【0140】
しかしながら、経口投与は単一の経路ではなく、単一の好ましい経路ですらない。例えば、忘れっぽい、または経口薬を摂取するのを嫌う患者では、経皮的な投与が非常に好ましい。ある場合には、薬の一方を、経口等の1つの経路により投与し得、そして他方を経皮、皮膚、静脈、筋肉内、鼻腔内または直腸内経路により投与し得る。薬物の物理的性質、並びに、患者及び介護人の便宜に制限されて、投与経路はいかなるようにも多様であり得る。
【0141】
しかしながら、補助剤の組合せが単一の医薬組成物として投与されることが特に好ましいので、SRI及び式I若しくは式Iaの化合物の両方を含有する医薬組成物は、本発明の重要な態様である。そのような組成物は、医薬的に許容され得るいかなる物理的形体をも取り得るが、経口使用できる医薬組成物が特に好ましい。このような補助剤の医薬組成物は、投与される化合物の1日当りの用量と関連した有効量で両方の化合物を含む。各補助剤の用量単位は、両方の化合物の1日分の用量、または、用量の3分の1等の、1日分の用量の部分を含み得る。代りに、各用量単位は、一方の化合物の全用量及び、他方の化合物の用量の一部を含み得る。このような場合、患者は組合せ用量単位を1つ、及び、他方の化合物のみを含む1つまたはそれより多い単位を毎日摂取するであろう。各用量単位に含まれる各薬物の量は、治療に選択される薬物の本体、及び、何のためにその補助剤治療が行われるのか等のその他の因子に依存する。
【0142】
上述のように、補助剤治療の長所は、SRIによって起こされるセロトニン、ノルエピネフリン及びドパミンの有効性の増加をさらに増し、それにより以下により詳細に述べる種々の症状の処置について増進された活性が得られる、という能力にある。セロトニンの有効性の増加は特に重要であり、そして本発明の好ましい側面である。さらに、本発明は、SRI単独での処置により通常提供されるよりも速い活性の開始を提供する。
【0143】
本発明の補助剤治療の方法によって処置されるのが好ましい病理学状の症状には、鬱病、病的飢餓、強迫性障害及び肥満が含まれる。好ましくはデュロキセチン、またはベンラファキシン及びミルナシプランを含む、より特定の組合せに好ましい他の症状は、尿失禁である。
【0144】
様々な様相の鬱病が、以前よりも一般大衆の目につきやすくなってきた。現在では、非常に有害な疾患で、人口のうち驚くほど多くの部分を悩ませていることが認識されている。自殺が最も極端な鬱病の症状であるが、そこまでひどく悩まされていない多数の人々が、苦悩、及び、部分的または完全な無用感で生き、彼等の苦悩によって家族をも苦しめている。フルオキセチンの導入は、鬱病の治療におけるブレークスルーであり、抑鬱者は、10年前よりも診断及び処置しやすくなった。デュロキセチンは鬱病の処置の臨床試験段階にある。
【0145】
鬱病はしばしば、他の病気及び症状と関連しているか、または、そのような他の症状によって引き起こされる。例えば、それはパーキンソン病、HIV、アルツハイマー病、タンパク同化ステロイドの濫用と関連している。鬱病はまた、いかなる物質の濫用とも関連し得、また、脳傷害、精神薄弱若しくは卒中によって、または、それと伴って起こる行動問題と関連し得る。
【0146】
強迫性障害は、非常に多様な程度及び症状で現れ、一般的に患者の抑制することができない、不用で儀式的な行動への衝動と組み合わさっている。合理的な必要性、または、理論的根拠を超えた、獲得、注文、洗う等の行動が病気の外面的な特徴である。ひどく患っている患者は、病気により要求される儀式を行う以外のことはできないかもしれない。フルオキセチンは米国及び他の国々で、強迫性障害の処置において認可されており、効果があることが認められている。
【0147】
肥満はアメリカ人の間ではよくある症状である。フルオキセチンが肥満した患者が体重を落すのを可能にし、患者の血液循環及び心臓の状態、並びに、一般的な幸福及び行動力に利益をもたらす。
【0148】
尿失禁は、制御の効かない括約筋によるか、または、膀胱筋の過活動によるのかのその根本的な原因に依存して、ストレス性または刺激性失禁に分類される。デュロキセチンは両方の型の失禁を、または、両方の型を一度に制御するので、この厄介で、そして不具にする疾患を患う多くの人々に重要である。
【0149】
本発明の組合せは以下のように、その他多くの疾病、疾患及び症状を処置するのに有用である。ここで言及される多くの疾病は、American Psychiatric Association (DSM)により公表された『International Classification of Disease』第9版(ICD)、または、『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders』第3改定版に分類される。その場合、以下にICD及びDSMコード番号を読者の便宜のために記載する。
鬱病、ICD296.2及び296.3、DSM296、294.80、293.81、293.82、293.83、310.10、318.00、317.00
偏頭痛
痛み、特に神経痛
病的飢餓、ICD307.51、DSM307.51
月経前症候群または後黄体期症候群、DSM307.90
アルコール中毒、ICD305.0、DSM305.00及び303.90
タバコの濫用、ICD305.1、DSM305.10及び292.00
恐慌性障害、ICD300.01、DSM300.01及び300.21
不安症、ICD300.02、DSM300.00
外傷後症候群、DSM309.89
記憶喪失、DSM294.00
加齢痴呆症、ICD290
社会恐怖症、ICD300.23、DSM300.23
注意欠陥多動障害、ICD314.0
分裂行動障害、ICD312
衝動調節障害、ICD312、DSM312.39及び312.34
境界パーソナリティー、ICD301.83、DSM301.83
慢性疲労症候群
早漏、DSM302.75
勃起障害、DSM302.72
神経性無食欲症、ICD307.1、DSM307.10
睡眠障害、ICD307.4
自閉症
無言症
トリコチロマニー
【0150】
さらに、式I若しくは式Iaの化合物は、セロトニン再摂取阻害剤と組合せて投与された場合、特に喫煙の中止、または、ニコチンの使用中止による症状を緩和するのに有用である。この処置方法、並びに、投与方法及び製剤に用いられるSRIは上述されている。本発明の化合物とSRIとの使用は、タバコまたはニコチンの使用を中止しようと努力する患者での使用により、これらの患者における、いらいら、怒りっぽさ、渇望、過剰食欲、不安、いろいろな形での鬱、集中力の欠如等を含む一般的な痛ましく、そして、有害な症状が驚くほど完全に緩和される。
【0151】
治療における適用
式I若しくは式Iaの化合物は、SRIとの組合せ、及び、ニコチンの使用中止または禁煙中止の場合と同様、その他の重要な治療目的において有用である。特に、化合物はセロトニン1A受容体におけるアンタゴニストとして重要であり、そのため該受容体の過活性により引き起こされる、または、それにより影響される症状を処置若しくは防ぐのに用いられる。
【0152】
より特定には、式I若しくは式Iaの化合物は、不安症、鬱病、緊張亢進、認知障害、精神病、睡眠障害、胃部運動障害、性的不全、脳外傷、記憶喪失、食欲障害及び肥満、物質濫用、強迫性障害、恐慌性障害、並びに、偏頭痛の処置において有用である。
【0153】
本発明の化合物と関連して、不安症、及び、それにしばしば付随する恐慌性障害を特に挙げることができる。その実体は、不安症を300.02として分類するAmerican Psychiatric Associationにより出版される『Statistical Manual of Mental Disorders』に念入りに説明されている。さらに特筆される疾患は、SRIとの補助治療について上に述べた鬱病、及び、鬱病と関連する疾患群である。
【0154】
医薬組成物
投与のための医薬を、用量の調節、並びに、製品の出荷及び貯蔵における安定性を提供するよう製剤することが通例であり、そして、通常な製剤方法を式I及び式Iaの化合物に適用することができる。少なくとも1つの医薬的に許容され得る担体を含むそのような組成物は、その中に存在する式Iまたは式Iaの化合物のため貴重で、そして新規である。薬剤師は、医薬を製剤する多くの効果的な方法、そして、本発明の化合物にどの技術が適用できるか十分に認識してはいるが、読者の便宜のため、ここでそれについて吟味する。
【0155】
医薬科学で通常用いられる製剤方法、及び、錠剤、噛むことができる錠剤、カプセル、液剤、非経口液剤、鼻腔内スプレー剤及び粉剤、トローチ、坐剤、経皮パッチ、並びに、懸濁剤を含む通常の組成物の型を用い得る。一般的に、組成物は使用される組成物の所望の用量及び型に依存して、化合物を総量で約0.5%〜約50%含む。しかしながら、式I若しくは式Iaの化合物の量は、有効量、即ち、そのような処置を必要とする患者において所望の用量を供給する化合物の量として最もよく定義される。化合物の活性は組成物の性質には依存しないので、組成物はその便利さ、及び、経済性により選択され、製造される。いかなる化合b通を、いかなる所望の形体の組成物に製剤し得る。異なる組成物についての説明の後、典型的な製剤について述べる。
【0156】
カプセルは、化合物を適当な希釈剤と混合し、適正量混合物をカプセルに満たすことによって製造される。通常な希釈剤には、種々の澱粉、粉末化セルロース、特に結晶性及び微晶質セルロース、フルクトース、マンニトール及びショ糖等の糖、穀物小麦、並びに、類似の食用性の粉末等の不活性な粉末化された物質が含まれる。
【0157】
錠剤は、直接的な圧縮、湿式顆粒化、または、乾式顆粒化により製造される。これらの製剤は通常、化合物に加えて希釈剤、結合剤、潤滑剤、及び、崩壊剤を含む。典型的な希釈剤には、例えば種々の型の澱粉、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸または硫酸カルシウム、塩化ナトリウム等の無機塩、及び、粉末化した糖が含まれる。粉末化したセルロース誘導体もまた有用である。典型的な錠剤結合剤は、澱粉、ゼラチン、及び、ラクトース、フルクトース、グルコース等の糖等の物質である。アラビアゴム、アルギン酸塩、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を含む、天然及び合成ゴムもまた適する。ポリエチレングリコール、エチルセルロース、及び、ワックスも結合剤として役に立つ。
【0158】
錠剤製剤中、錠剤と押し抜き具がダイ中でくっつかないようにするために、潤滑剤が必要である。潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、並びに、硬化植物油等の粘着性の固体から選択される。
【0159】
錠剤崩壊剤は湿ると膨張して錠剤を壊し、そして化合物を放出させるものである。それらには、澱粉、粘土、セルロース、アルギン及びゴムが含まれる。より詳しくは、例えばコーン及び馬鈴薯澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、木材セルロース、粉末化した天然海綿、カチオン交換樹脂、アルギン酸、グアールガム、柑橘類パルプ、カルボキシメチルセルロース、並びに、ラウリル硫酸ナトリウムを用い得る。
【0160】
腸溶性製剤がしばしば、活性成分を胃の強酸性の内容物から守るために用いられる。そのような製剤は、固体の用量形体を酸性環境下では不溶性で、塩基性環境下では可溶性の高分子のフィルムで被覆することにより製造される。フィルムの例は、セルロースアセテートフタラート、ポリビニルアセテートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートである。
【0161】
錠剤はしばしば、調味料及びシーラントとして糖、または、錠剤の溶解特性を修飾するためにフィルム形成保護剤により被覆される。化合物はまた、現在定着しているように、マンニトール等の好ましい味の物質を製剤中で大量に用いることにより、噛むことのできる錠剤として製剤され得る。即座に溶解する錠剤用製剤もまた、患者が用量形体を飲むことを確実にし、そして、一部の患者を悩ます固形物を飲み込む困難さを避けるため、現在頻繁に用いられている。
【0162】
組合せを坐剤として投与することが望ましい場合、通常の基体を用い得る。ココアバターはありきたりの坐剤基体であり、融点をわずかに上げるためにワックスを添加することにより修飾し得る。特に種々の分子量のポリエチレングリコールを含む水混和性の坐剤基体もまた、広く使用できる。
【0163】
経皮パッチは、最近評判がよくなってきた。典型的にはそれらは、薬物が溶解、または、部分的に溶解する樹脂製の組成物を含み、組成物を保護するフィルムによって皮膚と接触するように保たれる。該分野の特許が最近、多数出されている。別の、もっと複雑なパッチ組成物、特に、薬物が浸透圧の作用によりそこから押し出される無数の孔があけられた膜を持つものが用いられている。
【0164】
以下の典型的な製法は、薬剤師への情報のために提供される。
【0165】
製剤例1
以下の成分を用いて硬ゼラチンカプセルを製造する:

【0166】
製剤例2
以下の成分を用いて錠剤を製造する:
量(mg/カプセル)
実施例2 10mg
セルロース、微晶質 400mg
二酸化シリコン、蒸発 10mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
総量 425mg
成分を混合し、各425mgの重さの錠剤を形成するために圧縮する。
【0167】
製剤例3
以下のように各10mgの活性成分を含む錠剤を製造する:
実施例3 20mg
澱粉 45mg
微晶質セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン(水中の10%溶液として) 4mg
カルボキシメチル澱粉ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.1mg
タルク 1mg
総量 100mg
活性成分、澱粉及びセルロースをNo.45メッシュのU.S.篩にかけ、完全に混合する。ポリビニルピロリドンを含む水溶液を残りの粉体と混合し、その後混合物をNo.14メッシュのU.S.篩にかける。このように製造された顆粒を50℃で乾燥し、No.18メッシュのU.S.篩にかける。No.60メッシュのU.S.篩に予めかけたカルボキシメチル澱粉ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び、タルクをその後、顆粒に添加し、混合した後、錠剤製造機で圧縮し、各100mgの錠剤を得る。
【0168】
製剤例4
以下のように各30mgの活性成分を含むカプセルを製造する:
実施例4 30mg
澱粉 59mg
微晶質セルロース 59mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
総量 150mg
活性成分、セルロース、澱粉、及び、ステアリン酸マグネシウムを混合し、No.45メッシュU.S.篩にかけ、150mgの量を硬ゼラチンカプセルに詰める。
【0169】
製剤例5
以下のように各5mgの活性成分を含む坐剤を製造する:
実施例5 5mg
飽和脂肪酸グリセリド 2000mg
総量 2005mg
活性成分をNo.60メッシュU.S.篩にかけ、予め必要最小限の熱をかけて融解させた飽和脂肪酸グリセリドに懸濁させる。混合物をほぼ2gの容積の坐剤モールドに流し入れ、冷却させる。
【0170】
製剤例6
以下のように、各5ml用量当り10mgの活性成分を含む懸濁剤を製造する:
実施例6 10mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム 50mg
シロップ 1.25ml
安息香酸溶液 0.10ml
香料 ほしいだけ
色素 ほしいだけ
精製水で総量 5mlに
活性成分をNo.45メッシュU.S.篩にかけ、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びシロップと混合し、滑らかなペーストを形成する。安息香酸溶液、香料及び色素を水の一部に溶解して、攪拌しながら添加する。所望の量にするよう、十分量の水を添加する。
【0171】
製剤例7
以下のように静脈用製剤を製造し得る:
実施例7 10mg
等張塩水 1000ml
【0172】
製剤例8
以下の成分を用いて、製剤例1と同様の方法により硬ゼラチンカプセルを製造する:
量(mg/カプセル)
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-
(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジンHCl 20mg
澱粉、乾燥 200mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
総量 230mg
【0173】
製剤例9
以下の成分を用いて錠剤を製造する:
量(mg/カプセル)
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-
(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジンHCl 10mg
セルロース、微結晶 400mg
二酸化シリコン、蒸気 10mg
ステアリン酸 5mg
総量 425mg
成分を混合し、各425mgの錠剤を形成するため製剤例2と同様の方法により圧縮する。
【0174】
製剤例10
以下のように、各10mgの活性成分を含む錠剤を製造する:
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-
(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジンHCl 10mg
澱粉 45mg
微結晶セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン(水中の10%溶液として) 4mg
カルボキシメチル澱粉ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
タルク 1mg
総量 100mg
活性成分、澱粉、及び、セルロースをNo.45メッシュU.S.篩にかけ、完全に混合する。ポリビニルピロリドンを含む水溶液を残りの粉末と混合し、その後混合物をNo.14メッシュU.S.篩にかける。このように製造された顆粒を50℃で乾燥し、No.18メッシュU.S.篩にかける。予めNo.60メッシュU.S.篩にかけたカルボキシメチル澱粉ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びタルクを顆粒に添加し混合した後、錠剤機で圧縮し、各100mgの重量の錠剤を得る。
【0175】
製剤例11
以下のように、各30mgの活性成分を含むカプセルを製剤例4と同様な方法により製造する:
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-
(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)
ブチル]ピペラジンHCl 30mg
澱粉 59mg
微結晶セルロース 59mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
総量 150mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、Ar'は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル、または、ハロゲンからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換されたフェニル基であり;R1は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニルまたはハロゲンからなる群より選択される1または2個の置換基により置換された、(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニルまたはハロゲンであり;Xは−(C=O)−、である)
の化合物、または、その医薬的に許容されるラセミ化合物、光学異性体、若しくは、溶媒和物。
【請求項2】
Ar'が、(C1〜C6)アルコキシで置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2が、(C3〜C12)シクロアルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1が水素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
(+)-1-(2-メトキシフェニル)-4-[3-(シクロヘキサンカルボニル)-3-(フェニル)ブチル]ピペラジン一塩酸塩である化合物。
【請求項6】
式II:
【化2】

(式中、R1は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル、若しくは、ハロゲンからなる群より選択される1または2個の置換基で置換されたフェニル、ナフチルまたは(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニルまたはハロゲンからなる群より選択される)
の化合物を製造する方法であって、式III:
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は上述の通りである)
の化合物を、適当な塩基、及び、式IV:
【化4】

(式中、Xは適当な脱離基である)
の化合物と処理し、式V:
【化5】

の化合物を得、式Vの化合物を適当な酸化剤で酸化して、式IIの化合物を得る方法。
【請求項7】
1がCH3であり、R2がシクロヘキシルであり、そして、R3が水素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
XがBrまたはClである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
適当な酸化剤がオゾンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
適当な塩基がカリウムtert-ブトキシドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式:
【化6】

(式中、R1は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1または2個の置換基で置換された、(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル、または、ハロゲンからなる群より選択される)
の化合物。
【請求項12】
1がCH3であり、R2がシクロヘキシルであり、そして、R3が水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
式:
【化7】

(式中、R1は、(C1〜C6)アルキル、アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1〜2個の置換基により置換されたフェニル、ナフチル、または、(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニルまたはハロゲンからなる群より選択される)
の化合物。
【請求項14】
1がメチルであり、R2がシクロヘキシルであり、そして、R3が水素である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式:
【化8】

(式中、Ar'は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1〜3個の置換基により置換された単環式若しくは二環式アリール、または、ヘテロアリール基であり;R1は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオであり;R2は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル若しくはハロゲンからなる群より選択される1または2個の置換基により置換された、フェニル、ナフチルまたは(C3〜C12)シクロアルキルであり;R3は水素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルチオ、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルキルハロ、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルケニル、または、ハロゲンからなる群より選択される)
の化合物、または、その医薬的に許容され得る塩、ラセミ化合物、光学異性体若しくは溶媒和物。
【請求項16】
Ar'が、
【化9】

であり、R1はメチルであり、R2がシクロヘキシルであり、そして、R3が水素である請求項14に記載の化合物。

【公開番号】特開2008−266337(P2008−266337A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120430(P2008−120430)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【分割の表示】特願2000−539004(P2000−539004)の分割
【原出願日】平成10年12月8日(1998.12.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】