説明

センサ、センサを含むディスプレイ及びセンサを使用する方法

センサは、前面を規定する絶縁支持体と、支持体の前面に配置され且つ導電性材料のパターンを含む少なくとも1つの層を含む膜と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの少なくとも一部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された少なくとも1つの静電容量測定装置と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの1対の点の間の抵抗を測定するように構成された少なくとも1つの抵抗測定装置とを含む。センサを含むディスプレイ及びセンサを使用する方法が更に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ、センサを含むディスプレイ及びセンサを使用する方法に関する。センサは、種々の装置を制御するためにユーザインタフェース及びマンマシンインタフェースにおいて使用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザインタフェース又はマンマシンインタフェースを介して装置を制御するタッチセンサが知られている。タッチセンサは、ユーザの指により導入される静電容量又はユーザの指が存在することによって起こる静電容量の変化に反応することで動作する。
【0003】
容量性タッチパネルの一実施例の正面図を図6に概略的に示す。タッチパネルは2つの層、すなわち「1」とラベル付けされた層及び「2」とラベル付けされた層を含む。層「1」の容量性素子は互いに縦方向に接続される。層「2」の容量性素子は互いに横方向に接続される。「3」とラベル付けされた層は絶縁平面である。これにより、ユーザが触れたディスプレイ上の位置のX座標及びY座標の判定を可能にするマトリクス構造が構成される。更に、いわゆるマルチタッチアプリケーション、すなわちユーザが2本以上の指でグラフィカルアプリケーションを制御可能なアプリケーションも可能となる。
【0004】
当該実施例のタッチパネルの上記の層は酸化インジウムスズ(ITO)を含んでいてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザインタフェースの動作の融通性を大幅に向上するために改良されたセンサ、ディスプレイ及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのようなセンサ、ディスプレイ及び方法は独立請求項において定義される。有利な実施形態は従属請求項において定義される。
【0007】
本発明の一実施形態において、センサは、前面を規定する絶縁支持体と、支持体の前面に配置され且つ導電性材料のパターンを含む少なくとも1つの層を含む膜と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの少なくとも一部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された少なくとも1つの静電容量測定装置と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの1対の点の間の抵抗を測定するように構成された少なくとも1つの抵抗測定装置とを含む。
【0008】
一実施形態において、導電性材料は酸化インジウムスズ(ITO)である。いくつかのディスプレイパネルでは容量性接触感知能力を実現するために既にITO膜構造を利用しているという点において、ITOの使用は好都合である。従って、構造をまったく変更せずに又は大幅に変更する必要なく、従来のITO構造が再利用されうる。しかし、本発明はITOのパターンに限定されない。同様の特性を有する他の導電性材料が使用されてもよい。以下の説明中、導電性材料はITOであるものとするが、ITOの代わりに同様の特性を有する他の導電性材料がいつでも使用されうることは理解されよう。
【0009】
ITOはディスプレイに使用されてもよい。ITOは、薄い被膜の形態で使用される透明な導電性材料である。被膜として使用される場合、ITOは電子ビーム蒸着又はある範囲内のスパッタリング技術などの方法により堆積される。
【0010】
ITOは導電性であり且つピエゾ抵抗特性を有する。従って、層のITOパターンの抵抗の変化を監視することにより、ユーザの指、手又は他の物体により加えられた力の検出及び測定が可能である。ピエゾ抵抗材料の場合、収縮による抵抗の変化は、通常の金属の場合の変化の約100倍である。この効果は長さ及び面積の変化によるものではない。従って、例えばタッチアンドリリース又はドラッグアンドドロップなどのアプリケーションを単純な構成で実現できる。
【0011】
酸化インジウムスズ(ITO)は、酸化インジウム(III)(In)及び酸化スズ(IV)(SnO)の固溶体である。一実施形態において、ITOは85〜95重量%のInと、7〜13重量%のSnOとを含む。一実施形態において、ITOは88〜92重量%のInと、8〜12重量%のSnOとを含む。
【0012】
一実施形態において、膜は弾性材料から形成される。従って、センサは繰り返し使用することができ、相互作用が完了するたびに同一の形状又はほぼ同一の形状が回復される。
【0013】
一実施形態において、センサには、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出するように少なくとも1つの静電容量測定装置が構成されており、且つ指、手又は他の物体によりセンサに力が加えられたか否かを検出するように少なくとも1つの抵抗測定装置が構成されている。
【0014】
従って、ユーザインタフェースを介して装置を制御するためにより多くの数のパラメータを使用することができる。すなわち、センサ上又はその付近に指、手又は他の物体が単に存在しているだけであるか否か、あるいは指、手又は他の物体が力を加えているか否かをユーザインタフェースの入力パラメータとして使用することができる。一実施形態において、指、手又は他の物体によりセンサに力が加えられたか否かの検出は、指、手又は他の物体によりセンサに閾値を超える力が加えられたことを検出することをいう。
【0015】
一実施形態において、センサには、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出するように少なくとも1つの静電容量測定装置が構成されており、且つ指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力を推定するように少なくとも1つの抵抗測定装置が構成されている。
【0016】
従って、ユーザインタフェースを介して装置を制御するために更に多くのパラメータを使用することができる。すなわち、ユーザインタフェースの入力パラメータとして、指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力の値が更に使用されうる。一実施形態において、力の値はニュートンで表される。一実施形態において、力の値は基準値と比較した場合の変化の割合(百分率)として表される。
【0017】
一実施形態において、センサは、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの第1の部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された第1の静電容量測定装置と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの第2の部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された第2の静電容量測定装置とを含む。本実施形態では、更に、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの第1の部分の1対の点の間の抵抗を測定するように構成された第1の抵抗測定装置と、少なくとも1つの層のうち該1つの層のパターンの第2の部分の1対の点の間の抵抗を測定するように構成された第2の抵抗測定装置とを含むようにセンサが構成される。
【0018】
本実施形態の構成によれば、ユーザインタフェースの制御パラメータとして、指、手又は他の物体の存在、その位置及び指、手又は他の物体により加えられた力が使用される。
【0019】
一実施形態において、センサには、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出し且つセンサ上における指、手又は他の物体の位置を推定するように少なくとも1つの静電容量測定装置が構成されており、且つ指、手又は他の物体によりセンサに力が加えられたか否かを検出するように少なくとも1つの抵抗測定装置が構成されている。
【0020】
センサ上に指、手又は他の物体が載っておらず、その付近にあるだけの場合、一実施形態において、センサ上の指、手又は他の物体の位置は、指、手又は他の物体に最も近接するセンサ上の点に基づく推定位置であってもよい。
【0021】
一実施形態において、センサには、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出し且つセンサ上における指、手又は他の物体の位置を推定するように少なくとも1つの静電容量測定装置が構成されており、且つ指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力を推定するように少なくとも1つの抵抗測定装置が構成されている。
【0022】
一実施形態において、センサは、1つの静電容量測定装置が、閾値を超える静電容量の変化を示す場合に、1つの抵抗測定装置が起動されるように構成される。これは、抵抗測定装置を永続的に動作させないことにより電力を節約するという利点を有する。静電容量測定装置からの割り込みがユーザの指、手又は他の物体の存在を示すまで、抵抗測定装置は開始する必要がない。
【0023】
一実施形態において、センサは、静電容量測定及び抵抗測定が交互に順次実行されるように構成される。すなわち、静電容量測定装置及び抵抗測定装置が同時に動作状態である場合、時間t=0に静電容量測定が実行され、時間t=1に抵抗測定が実行され、時間t=2に静電容量測定が実行され、以降も同様である。言い換えれば、静電容量測定と抵抗測定は多重化される。これにより干渉の発生が防止される。別の実施形態において、静電容量測定に使用される膜の領域は、抵抗測定に使用される領域とは別である。
【0024】
更に本発明は、先に説明したようなセンサを含むディスプレイに関する。一実施形態において、センサ膜は実際の活性表示面と外側表示面との間のいずれかの場所に配置される。一実施形態において、センサ膜と外側表示面との間に空隙はない。本実施形態において、ディスプレイの連続する層(スタック構成)は、例えば(1)実際の活性表示面、(2)空隙、(3)センサ膜、(4)のり又はテープ及び(5)外側表示面(いわゆる外側ウィンドウ)を含むか、あるいは(1)実際の活性表示面、(2)のり又はテープ、(3)センサ膜、(4)のり又はテープ及び(5)外側表示面を含んでいてもよい。センサ膜と外側表示面との間に空隙がないことにより、容量測定の感度は向上する。更に、指とセンサ膜との距離が短いほど、外側表示面上に指が載っている場合に得られる絶対静電容量は大きくなり且つ「デルタフィンガ」、すなわち指が載っている場合に得られる静電容量値と指が載っていない場合の静電容量値との差は大きくなる。
【0025】
一実施形態において、センサ膜は実際の活性表示面と外側表示面との間のいずれかの場所に配置され、指と直接接触する可能性がある外側表示面には配置されない。この構成はセンサ膜の摩耗の危険を防止又は軽減する。
【0026】
一実施形態において、センサは透明である。従って、ディスプレイ上の指、手又は他の物体の存在を検出可能であり、ディスプレイ上における指、手又は他の物体の位置を推定可能であり(2つ以上の静電容量測定装置が設けられている場合)、指、手又は他の物体によりディスプレイに力が加えられたか否かを検出可能であり、且つ指、手又は他の物体によりディスプレイに加えられた力を更に推定可能である。
【0027】
更に本発明は、先に説明したようなセンサを使用する方法に関し、当該方法は、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力するステップと、指、手又は他の物体によりセンサに力が加えられたか否かを示す信号を出力するステップとを含む。
【0028】
更に本発明は、先に説明したようなセンサを使用する方法に関し、当該方法は、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力するステップと、指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力を示す信号を出力するステップとを含む。
【0029】
更に本発明は、先に説明したようなセンサを使用する方法に更に関し、当該方法は、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力するステップと、指、手又は他の物体によりセンサに力が加えられたか否かを示す信号を出力するステップと、センサ上における指、手又は他の物体の2次元位置の推定を示す信号を出力するステップとを含む。
【0030】
更に本発明は、先に説明したようなセンサを使用する方法に関し、当該方法は、センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力するステップと、指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力を示す信号を出力するステップと、センサ上における指、手又は他の物体の2次元位置の推定を示す信号を出力するステップとを含む。
【0031】
一実施形態において、方法は、座標x及び座標yを規定するセンサ上における指、手又は他の物体の2次元位置の推定を示す信号と、座標zを規定する指、手又は他の物体によりセンサに加えられた力の推定を示す信号とに基づいて、センサ上における指、手又は他の物体の3次元位置の推定を示す信号を出力するステップを更に含み、座標x及び座標yはセンサの表面に沿った2つの異なる方向に対応し且つ座標zはセンサの表面に対して垂直な方向に対応する。
【0032】
一実施形態において、膜は平面であるか又はほぼ平坦である。別の実施形態において、膜は平坦ではなく、湾曲している。本実施形態において、座標x、yは、膜に局所的に接する方向に沿っていてもよい。座標zは、1つの点で座標x、yに対応する方向に対して垂直な方向に沿っている。従って、座標x、y、zは局所座標であってもよい。
【0033】
先に述べたように、本発明において、ITOの代わりに同様の特性を有する他の導電性材料が使用されてもよい。一実施形態において、ITOと同様の特性を有する導電性材料は、負の室温ゲージ率を有する導電性材料を意味する(例えばS.E.Dyer、O.J.Gregory、P.S.Amons及びA.Bruins Slotの「Preparation and piezoresistive properties of reactively sputtered indium tin oxide thin films」(the 22nd International Conference on Metallurugical Coatings and Thin Films(ICMCTF 1995)(1995年4月24日〜28日、San Diego, CAで開催)において発表、第1章「Introduction」、式(2))の中でゲージ率は定義されている)。下位実施形態において、ITOと同様の特性を有する導電性材料は、−2〜−1,000;−4〜−1,000及び−6〜−1,000の範囲の室温ゲージ率を有する導電性材料を意味する。
【0034】
特に、透明導電性酸化物(TCO)、導電性ポリマー及び導電性カーボンナノチューブはITOの代わりに使用可能な材料である。薄膜として形成可能であり(例えば蒸着により)且つ大きなピエゾ抵抗応答を有する材料が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
次に添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【図1】図1は、本発明の一実施形態のセンサを概略的に示す図である。
【図2】図2は、2つ以上の静電容量測定装置及び2つ以上の抵抗測定装置を含む本発明の一実施形態のセンサを概略的に示す図である。
【図3】図3は、2つ以上の層の上にITOパターンが配置されている本発明の一実施形態のセンサを概略的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態のセンサの前面を概略的に示す図である。
【図5】図5は、抵抗測定装置を実現するために一実施形態において使用されるホイートストンブリッジを示す回路図である。
【図6】図6は、容量性タッチパネルを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に特定の実施形態を参照して本発明を説明する。尚、説明される特定の実施形態は当業者に本発明をよりよく理解させるためのものであり、添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態のセンサを概略的に示す。センサ100は、前面104を規定する絶縁支持体102を含む。絶縁支持体102の前面104に膜106が配置される。膜106は、酸化インジウムスズ(ITO)のパターン108を含む少なくとも1つの層を含む。
【0038】
センサ100は、パターン108とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された静電容量測定装置110を更に具備する。静電容量測定装置110はコンタクト点112を介してITOパターン108に接続される。周囲環境は指114、手又は他の物体を含み、指、手又は他の物体の存在は、活動状態である場合に静電容量測定装置110により測定される静電容量を変化させる。
【0039】
静電容量測定装置110として、例えばAnalog Devices(Norwood, Massachusetts, U.S.A.)製造のいわゆる単体電極静電容量センサ用キャップタッチプログラマブルコントローラAD7147(データシート「CapTouch(登録商標)Programmable Controller for Single Electrode Capacitance Sensors、AD7147、Preliminary Technical Data、06/07‐Preliminary version F」、2007年刊行、Analog Devices,Incを参照)が使用されてもよい。特に、データシートの11ページに静電容量測定装置110の可能な動作モードが説明されている。
【0040】
静電容量測定装置110は、上述の例示的なAD7147静電容量測定装置に限定されない。他の静電容量測定装置110が使用されてもよい。
【0041】
センサ110は、ITOパターン108の1対の点118、120の間の抵抗を測定するように構成された抵抗測定装置116を更に含む。
【0042】
S.E.Dyer、O.J.Gregory、P.S.Amos及びA.Bruins Slotの「Preparation and piezoresistive properties of reactively sputtered indium tin oxide thin films」(the 22nd International Conference on Metallurgical Coatings and Thin Films(ICMCTF 1995)(1995年4月24日〜28日、San Diego, CAで開催)において発表)の中で説明されているように、ITOは優れたピエゾ抵抗特性を有する。すなわち、「パターニングされたITO膜において−77.71という大きな室温ゲージ率R/Roが測定された。このゲージ率は高融点金属合金に関して報告されている値より相当に大きい。n型シリコンで観測される応答に類似するような大きな負のピエゾ抵抗応答(負のゲージ率)があらゆるITO膜について観測された。ピエゾ抵抗応答は再現性及び直線性を有し、700μin in−1までの歪みに対してヒステリシスはほとんど又はまったく観測されなかった。」
図1に示される実施形態において、静電容量測定装置110は、センサ100の表面、あるいは表面付近又は表面に近接する場所にある指114、手又は他の物体の存在を検出するように構成されている。センサ110の表面に膜106を覆うようにプラスチック又はガラスのカバーシート(図示せず)が配置されていてもよい。プラスチック又はガラスのカバーシートは保護要素として機能する。抵抗測定装置116は、センサ100の表面に指114、手又は他の物体が載せられた場合に、指114、手又は他の物体により力が加えられたか否かを検出するように構成されている。抵抗測定装置116は、センサ100の表面に指114、手又は他の物体が載せられた場合に、指114、手又は他の物体により加えられた力を推定するように構成されていてもよい。一実施形態において、膜106は弾性を有するので、指114、手又は他の物体によりセンサ100の表面に加えられた力によって膜106は湾曲し、それにより、コンタクト点118及び120の間のITOパターン108の長さが変化する。ITO導電パターンにはピエゾ抵抗特性があるため、抵抗は変化し、抵抗測定装置116によりこの抵抗変化を測定することができる。これにより、力が加えられたか否かを検出することができ、更に、加えられた力を推定することができる。
【0043】
抵抗を表す抵抗測定装置116の信号出力(図示せず)は、力を表す信号に変換される。センサ100に力が加えられたか否か及びセンサ100に加えられた力に応じて、ユーザインタフェースの制御論理において種々の動作が開始されてもよい。例えば、測定された力が所定の閾値を超えた場合、第1の動作が実行される。測定された力が所定の閾値を超えない場合、第2の動作が実行される。
【0044】
図1に示されるセンサ100において、力の測定は1チャネル測定である。すなわち、パネル全体で抵抗測定装置116により1つの力測定値が得られ、指の位置は静電容量測定装置110により特定される。一実施形態において、膜の異なる部分で数回の力測定が実行される。
【0045】
ITOパターン108の1対の点118、120の間の電気抵抗を測定する抵抗測定装置116は、ホイートストンブリッジを使用して実現されてもよい。そのような回路の一実施例の回路図を図5に示す。図5を参照すると、電気抵抗が測定されるITOパターン108はR1として接続されてもよい。増幅器は任意の種類の適切な演算増幅器であってもよい。しかし、抵抗測定装置116は、ホイートストンブリッジを利用する本実施例の実現形態に限定されない。他の抵抗測定装置116が使用されてもよい。
【0046】
一実施形態において、ディスプレイの前面のガラス又はプラスチックの開口部はITOの層によって被覆され且つ膜106として作用してもよい。ユーザの指、手又は他の物体からの力はこの膜106に歪みを発生させ、ピエゾ抵抗抵抗器構造によりこの歪みを測定することができる。これにより、ユーザの指114、手又は他の物体からの力を測定することができる。
【0047】
力が加えられる位置に応じて感度が変化してもよい。しかし、この変化は予測可能であり且つ入力パラメータとしてX座標及びY座標を使用するルックアップテーブルを使用することにより補正可能である。
【0048】
多くの用途において、必要とされるのは力の相対測定値のみである。すなわち、校正は不要であり、ディスプレイの異なる位置に現れる剛性の相違に応じた感度の変化(例えば温度変化によって)を適切に処理することができる。
【0049】
静電容量測定装置110及び抵抗測定装置116の起動を制御する制御装置(図示せず)が更に設けられていてもよい。
【0050】
一実施形態において、制御装置は、センサ100の表面上の指114、手又は他の物体の検出を示す信号を静電容量測定装置110が出力した場合に限り抵抗測定装置116を起動するように、すなわち装置116の電源を投入するように構成される。前述のように、この構成により、抵抗測定装置116を永続的に起動することが回避されるため、電力が節約される。静電容量測定装置116からの割り込みによってセンサ100上の指、手又は他の物体の存在が示されるまで、抵抗測定装置116は開始する必要がない。測定された静電容量が所定の閾値を超えた場合、静電容量測定装置110は、センサ100の表面上の指114、手又は他の物体の検出を示す信号を出力する。
【0051】
図2は、本発明の別の実施形態のセンサ100を概略的に示したものである。絶縁支持体102の前面104にある膜106は、ITOのパターン108a、108bを含む。パターン108a、108bは第1の部分108a及び第2の部分108bを含む。第1のITO部分108aと場合によっては指114、手(図示せず)又は他の物体(図示せず)を含むこともある周囲環境との間の静電容量を測定するために、第1の静電容量測定装置110aは、第1のITO部分108aに電気的に接続されている。パターンの第1の部分108aの1対のコンタクト点118a、120aの間の抵抗を測定するために、第1の抵抗測定装置116aは、コンタクト点118a、120aを介して接続されている。従って、第1の部分108aに近接して存在する指114、手又は他の物体を第1の静電容量測定装置110aにより検出することができ且つ指114、手又は他の物体により膜106に加えられた力を第1の抵抗測定装置116aにより推定することができる。
【0052】
第2の部分108bの付近の指114の存在を検出するために、第2の静電容量測定装置110bは、第2のITOパターン108bに電気的に接続されている。更に、第2の部分108bの1対のコンタクト点118b、120bの間の抵抗を測定するために、第2の抵抗測定装置116bは、2つのコンタクト点118b、120bの間に接続されている。従って、センサ100上又はその付近又はそれに近接する場所における指114の存在を検出することができ且つ指114によりセンサ100に加えられた力を推定することができるだけでなく、センサ100上の指114の位置も推定することができる。
【0053】
言い換えれば、膜106の複数の異なる部分で複数の存在検出及び複数の力検出又は複数の力測定を実行可能であるといえる。
【0054】
あるいは(図2には示されないが)、複数の静電容量測定装置110により指114の位置が判定される一方で、1つの抵抗測定装置116により1つの力測定値が求められてもよい。
【0055】
図3は、本発明の別の実施形態のセンサ100を概略的に示す。膜106は2つの層から形成される。各層は1つのITOパターン108を含む。第1の層は第1のITOパターン部分108a及び第2のITOパターン部分108bを含む。第2の層は第3のITOパターン部分108c及び第4のITOパターン部分108dを含む。各ITOパターン部分108a、l08b、108c、108dとそれぞれの周囲環境との間の静電容量を測定するために、静電容量測定装置(図3には示さない)が設けられる。それぞれのITOパターン部分108a、108b、108c、108dの領域で指114により膜106に加えられた力を検出し且つ/又は推定するように各ITOパターン部分のコンタクト点の間の抵抗を測定するために、抵抗測定装置(図3には示さない)が設けられる。
【0056】
各ITOパターン部分108a、108bに電気的に接続された静電容量測定装置は、(図3に示されるように)x方向に沿った膜上の指114の位置を示す指示を提供する。各ITOパターン108c、108dに電気的に接続された静電容量測定装置は、y方向に沿った膜116上の指114の位置を示す標識を提供する。
【0057】
膜106は3つ以上の層を含んでもよい。ITOパターン部分は蛇行形状(図3に示されるような)であってもよいが、他の任意の形状であってもよい。各層のITOパターン部分の数は異なっていてもよい。
【0058】
図4は、本発明の一実施形態のセンサ100の膜106の層を示す概略平面図である。「L1」とラベル付けされた3つの行のITOパターン部分は、それぞれ1つの静電容量測定装置及び1つの抵抗測定装置と関連する。「L2」とラベル付けされたITOパターン部分の各列は、1つの静電容量測定装置及び1つの抵抗測定装置と関連する。行ごと及び列ごとの静電容量の値及び抵抗測定値から、膜上の指の位置及び指により膜に加えられた力が推定される。
【0059】
従って、一実施形態のセンサは、ITO層におけるピエゾ抵抗効果を利用する歪みゲージに類似する構造を有し、これが容量感知と組み合わせられる。
【0060】
本発明に係る物理的エンティティ及び/又はその実施形態は、静電容量測定装置、抵抗測定装置及び制御装置を含めて、物理的エンティティにおいて実行された場合に、本発明の実施形態に従ってそれらの装置のステップ、手順及び機能が実行されるような命令を含むコンピュータプログラムを含むか又は格納する。更に本発明は、装置の機能を実行するためのそのようなコンピュータプログラム及び本発明に従って方法を実行するためのコンピュータプログラムを格納する任意のコンピュータ可読媒体に関する。
【0061】
本明細書において「静電容量測定装置」、「抵抗測定装置」及び「制御装置」という用語が使用される場合、それらの要素がどのように分散されるか及びそれらの要素がどのように集中されるかに関する限定はまったくない。すなわち、上記の静電容量測定装置、抵抗測定装置及び制御装置の構成要素は、所期の機能を実現するために種々のソフトウェアコンポーネント又はハードウェアコンポーネント、あるいは装置に分散されていてもよい。更に、所期の機能を提供するために複数の異なる要素又はユニットが結集されていてもよい。
【0062】
センサ100の上記の装置は、いずれも、ハードウェア、ソフトウェア、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)又はファームウェアなどで実現されていてもよい。
【0063】
本発明の更なる実施形態において、上記の静電容量測定装置、抵抗測定装置及び制御装置及び/又は特許請求される静電容量測定装置、抵抗測定装置及び制御装置は、静電容量測定装置、抵抗測定装置及び制御装置の機能を実行する静電容量測定手段、抵抗測定手段及び制御手段、又は静電容量測定器、抵抗測定器及び制御器とそれぞれ置き換えられる。
【0064】
本発明の更なる実施形態において、先に説明されたステップは、いずれも、コンピュータ可読命令を使用して、例えばコンピュータ理解可能な手順又は方法などの形態で、任意の種類のコンピュータ言語で、且つ/あるいはファームウェア上の埋め込みソフトウェア又は集積回路などの形態で実現されてもよい。
【0065】
詳細な実施例に基づいて本発明を説明したが、上記の詳細な実施例は本発明を当業者によりよく理解させることのみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は添付の請求の範囲により定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を規定する絶縁支持体と、
前記絶縁支持体の前記前面に配置され且つ導電性材料のパターンを含む少なくとも1つの層を含む膜と、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの少なくとも一部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された少なくとも1つの静電容量測定装置と、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの1対の点の間の抵抗を測定するように構成された少なくとも1つの抵抗測定装置と
を備えることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記導電性材料は酸化インジウムスズであることを特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの静電容量測定装置は、前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出するよう構成されており、
前記少なくとも1つの抵抗測定装置は、前記指、手又は他の物体により前記センサに力が加えられたか否かを検出するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの静電容量測定装置は、前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出するよう構成されており、
前記少なくとも1つの抵抗測定装置は、前記指、手又は他の物体により前記センサに加えられた前記力を推定するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの静電容量測定装置は、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの第1の部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するように構成された第1の静電容量測定装置と、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの第2の部分とその周囲環境との間の静電容量を測定するよう構成された第2の静電容量測定装置とを含み、且つ、
前記少なくとも1つの抵抗測定装置は、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの前記第1の部分の1対の点の間の抵抗を測定するよう構成された第1の抵抗測定装置と、
前記少なくとも1つの層のうち該1つの層の前記パターンの前記第2の部分の1対の点の間の抵抗を測定するよう構成された第2の抵抗測定装置と
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの静電容量測定装置は、前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出し且つ前記センサ上における前記指、手又は他の物体の位置を推定するよう構成されており、
前記少なくとも1つの抵抗測定装置は、前記指、手又は他の物体により前記センサに力が加えられたか否かを検出するよう構成されていることを特徴とする請求項5記載のセンサ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの静電容量測定装置は、前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を検出し且つ前記センサ上における前記指、手又は他の物体の位置を推定するよう構成されており、
前記少なくとも1つの抵抗測定装置は、前記指、手又は他の物体により前記センサに加えられた前記力を推定するよう構成されていることを特徴とする請求項5記載のセンサ。
【請求項8】
1つの静電容量測定装置が閾値を超える静電容量の変化を示した場合に、1つの抵抗測定装置が起動されるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記静電容量の測定及び前記抵抗の測定は交互に順次実行されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセンサを含むことを特徴とするディスプレイ。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセンサを使用する方法であって、
前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力する工程と、
前記指、手又は他の物体により前記センサに力が加えられたか否かを示す信号を出力する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセンサを使用する方法であって、
前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力する工程と、
前記指、手又は他の物体により前記センサに加えられた前記力を示す信号を出力する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のセンサを使用する方法であって、
前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力する工程と、
前記指、手又は他の物体により前記センサに力が加えられたか否かを示す信号を出力する工程、
前記センサ上における前記指、手又は他の物体の2次元位置の推定を示す信号を出力する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のセンサを使用する方法であって、
前記センサ上又はその付近における指、手又は他の物体の存在を示す信号を出力する工程と、
前記指、手又は他の物体により前記センサに加えられた前記力を示す信号を出力する工程と、
前記センサ上における前記指、手又は他の物体の2次元位置の推定を示す信号を出力する工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
座標x及び座標yを規定する前記センサ上における前記指、手又は他の物体の前記2次元位置の推定を示す信号及び
座標zを規定する前記手、指又は他の物体により前記センサに加えられた前記力の推定を示す信号に基づいて、前記センサ上における前記指、手又は他の物体の3次元位置の推定を示す信号を出力する工程を更に有し、
座標x及び座標yは前記センサの表面に沿った2つの異なる方向に対応しており、且つ座標zは前記センサの前記表面に対して垂直な方向に対応していることを特徴とする請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−517584(P2012−517584A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548549(P2011−548549)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060325
【国際公開番号】WO2010/091744
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(502087507)ソニーモバイルコミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】