説明

センサ、及び位置及び速度を測定するための方法

本発明は、少なくとも一つの測定方向に沿って移動する部分の位置及び速度を検出するセンサに関し、そのセンサは、観測期間Tobs中のターゲットの変位モデルに基づいて位置及び速度の推定値を提供するように適合された推定器(38)を有し、その変位モデルは、観測期間Tobsに含まれる時刻tにおけるターゲットの位置を、少なくとも推定されるべき位置及び速度に関連付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ、及び位置及び速度を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可動部の位置及び速度の従来のセンサは、
励起電流もしくは電圧の関数として励起磁場を誘導するのに適した少なくとも一つの励起インダクタと、
導電材料もしくは磁性材料よりなり、可動部に固定され、励起磁場を位置の関数として修正するのに適した少なくとも一つのターゲットと、
ターゲットにより変調された磁場を電気測定信号に変換するのに適した少なくとも一つの第1のトランスデューサと、
観測期間Tobsの完了時点において、該観測期間Tobs内に取得され、N個のサンプル(Nは2より大きい整数)の電気測定信号及びN個のサンプルの励起電流及び/または電圧に基づいてターゲットの位置及び速度を推定可能な第1の推定器と、
を有する。
【0003】
従来のセンサにおいては、励起磁場は周波数f0の交流信号であり、また、推定器は、測定された電気信号から周波数f0の成分を抽出するために、周波数f0に調整された同期型復調器である。この抽出された振幅はターゲットの位置を示す。
【0004】
同期型復調器は測定された電気信号に存在する加法性雑音を除去することができる。ここでは、加法性雑音は雑音なしで得られるべき理論上の電気信号に付加もしくは重畳された種々の不純な現象に関係する雑音である。同期型復調器による加法性雑音の除去は、観測期間が長い程、より効率的である。
【0005】
さらに、ターゲットの位置は実質的に観測期間中は一定でなければならない。逆の場合には、観測期間中のターゲットの位置ずれは観測期間全体にわたってセンサによって平均化され、この結果、位置の測定精度は低下する。
【0006】
従って、ターゲットの変位速度が速い程、この観測期間に亘ってターゲットの位置を一定にするために、選択される観測期間は短くしなければならない。しかしながら、観測期間を短くすると、加法性雑音の除去が犠牲にされる。
【0007】
このように、従来のセンサは早く動くターゲットの位置測定に対してはむしろ不正確である。
【発明の開示】
【0008】
本発明はターゲットが早く動く場合により正確なセンサを提供することによって上述の欠点を改善するものである。
【0009】
従って、本発明の目的は、可動部の位置及び/または速度のセンサにあり、そのセンサは、推定器が観測期間Tobs中のターゲットの変位モデルの関数として位置及び/または速度の推定値を確立することが可能で、変位モデルは観測期間Tobsに含まれる時刻tにおけるターゲットの位置を少なくとも推定すべき位置及び速度に関連付けるものである。
【0010】
変位モデルを使用することによって上述のセンサの推定器は、ターゲットの位置及び速度の推定値を確立する観測期間中は、ターゲットの少なくとも変位速度が零でないという事実を考慮している。従って、最早、この期間に亘って速度がほぼ零となる十分短い観測期間を選択する必要はない。このように上述のセンサは従来のセンサの観測期間より長い観測期間を使用することができ、この結果、ターゲットが観測期間中に移動していることによって阻害されることなく、より正確な測定を得ることができる。
【0011】
このセンサは次の特徴の一つもしくは複数を有することができる:
・推定器は、ターゲットの位置及び速度を推定するのに用いた先の観測期間に関して最大で((N-1)/N)・Tobsだけ一時的にシフトされた移動観測期間を用いることができる。
・センサは、励起磁場のスペクトルエネルギー密度は帯域幅が少なくとも2/(N・Tobs)である周波数帯域に含まれるいくつかの周波数上に拡がり、この周波数帯域は励起磁場の少なくとも80%のエネルギーを含むように、励起電流及び/または電圧を発生するのに適した励起ユニットを有する。
・周波数帯域幅は最大で2/Tobsに等しい。
・励起ユニットは、ランダムもしくは擬ランダムのシーケンスの励起電流及び/または電圧を発生して、N個のサンプルの励起電流及び/または電圧がランダムあるいは擬ランダムの一連の値を形成し、かつ、推定器はN個のサンプルの電気測定信号よりなるベクトルDを少なくとも擬似逆行列の少なくとも一つのベクトルに写像することによって位置及び/または速度を推定可能であり、擬似逆行列の一つの項(MTM)-1(但し、Mは行列、“べき数T”は行列転置関数及び“べき数-1”は逆関数)は複数の推定値のために予め計算される。
・測定方向に沿ったターゲットの変位から独立した励起磁場の変調部のみを電気基準信号に変換するのに適した少なくとも一つの第2のトランスデューサと、電気基準信号に基づいて増倍係数の値を推定するのに適した第2の推定器と、増倍係数の推定値の関数としての増倍係数の変化によって生ずる電気測定信号の振幅変化を補償するのに適した補償器と、
・補償器は、基準設定点と増倍係数の推定値との偏差の関数として励起磁場を変調するのに適したレギュレータを有する。
・第1の推定器はターゲットの速度の推定値が減少したときに観測期間の長さを自動的に増加させることができる。
・ターゲットは異なる導電率の二つの材料間の測定方向に同一直線上にない導電性の絶縁を示す。
【0012】
さらに、センサのこれらの実施例は次の利点を示す。
・移動観測期間を用いることにより、((N-1)/N)・Tobsより小さい時間間隔で位置及び速度を推定できる、より高速なセンサを得ることができる。
・スペクトルエネルギー強度が拡がった励起磁場を用いることにより、測定ノイズに対する耐性を向上することが可能であり、
・励起磁場のエネルギースペクトルにおける周波数帯域の幅を2/Tobsに制限することにより、不要なエネルギーの消費を回避でき、従って、センサの消費電力を減少でき、
・補償器を用いることにより測定精度を増大でき、
・ランダムまたは偽ランダムシーケンスの励起電流及び/または電圧を用いることにより、擬似逆行列の一部を事前に計算することが可能であり、これは後の位置及び速度の推定計算の実行を加速し、
・コンペンセータの使用は測定値の精度を向上することを可能とし、
・レギュレータを用いることにより補償器の機能を満たすことが可能であり、かつセンサの線形性を増大でき、
・観測期間の長さを速度の推定値の関数として修正することにより低速度のセンサの感度を向上でき;
・異なる導電率の材料よりなるターゲットを用いることにより温度変化に対するセンサの感度を制限できる。
【0013】
また、本発明の対象は、上述のセンサを用いて可動部の位置及び/または速度を測定する方法において、観測期間Tobsの完了時点において、観測期間Tobs内に取得されたN個のサンプル(Nは2より大きい整数)の電気測定信号及びN個のサンプルの励起電流及び/または電圧に基づいてターゲットの位置及び/または速度を推定するステップを具備し、位置及び/または速度の推定値は、観測期間Tobs中のターゲットの変位モデルに依存し、変位モデルは観測期間に含まれる時刻tにおけるターゲットの位置を少なくとも推定すべき位置及び速度に関連付ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、図面を参照しつつ、単なる例示として与えられる以下の説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
図1は可動部4の位置及び速度のセンサ2を示す。
【0015】
ここでは、図示の方法によって、可動部4は矢印Xによって示される垂直方向に平行移動する。
【0016】
センサ2は、
周期もしくは交流励起磁場を誘導するために適したインダクタ10と、
導電材料よりなり、位置の関数として励起磁場を変調するのに適したターゲット12と、
ターゲット12により変調された励起磁場を電気測定信号値に変換するのに適したトランスデューサ14と、
ターゲット12のX方向変位と独立である励起磁場の変調部のみを電気基準信号に変換するのに適した基準トランスデューサ16と、
インダクタ10及びトランスデューサ14、16に結合した信号励起及び処理回路18と
を有している。
【0017】
可動部4及びターゲット12は互いに固定され、X方向に同一に移動する。
【0018】
インダクタ10及びトランスデューサ14、16はターゲット12の平面22に対向して配置された平面支持板20に固定されている。支持板20は、このターゲットがX方向に支持板20と反対方向に自由に移動できるように、ターゲット12と機械的に独立している。好ましくは、支持板20は電磁場に対して透明な材料よりなる。
【0019】
ターゲット12、インダクタ10及びトランスデューサ14、16を、図2を参照して詳述する。
【0020】
回路18は、
インダクタ10を励起するための交流電流Iexc及び電圧Uexcを発生するのに適した制御可能励起ユニット24と、
非加法的欠陥によって生じた電気測定信号の変化を基準設定点及び非加法的欠陥の振幅の推定値の関数として補償するのに適した補償器26と、
基準設定点を調整するためのユニット28と、
トランスデューサ16によって発生した電気信号に基づいて非加法的欠陥の値(A0)を推定するのに適した推定器30と、
トランスデューサ16と推定器30の入力との間に接続され、電気基準信号をディジタル基準信号に変換するアナログ−ディジタル変換器32と、
を有している。
【0021】
ここでは、非加法的欠陥は電気測定信号におけるターゲット位置の増倍係数Aの値に変化を与える。
【0022】
励起ユニット24は、電流Iexc及び電圧Uexcのスペクトルエネルギー密度が周波数帯域[fmin; fmax]に亘って連続的に拡がるように、電流Iexc及び電圧Uexcを発生するのに適する。この周波数帯域[fmin; fmax]は電流Iexc及び電圧Uexcのエネルギーの少なくとも80%、好ましくは90%を含む。このように、励起磁場のエネルギーの少なくとも80%、好ましくは90%がこの周波数帯域[fmin; fmax]に存在するように、励起磁場のスペクトルエネルギー密度もまた同一周波数帯域に亘って連続的に拡がる。
【0023】
周波数帯域の幅は2/Tobs(但し、Tobsは予め規定された観測期間)と等しく選択される。周波数fminは、零でなく、好ましくは10kHzより大きい。周波数帯域[fmin; fmax]の中間周波数fmidはセンサの応答時間の逆数に等しい。そのため、周波数帯域[fmin; fmax]はこのセンサの所望もしくは可能な応答時間の関数として選択される。
【0024】
周波数fmidは次の関係式によって与えられる:
fmid = (fmin + fmax)/2 (1)
【0025】
非加法的欠陥の補償器26は、たとえばユニット28によって送られる基準設定点と推定器30によって送られる増倍係数Aの値の推定値A0との間の偏差の関数としてユニット24を制御するのに適したレギュレータである。
【0026】
この目的のために、補償器26は、ユニット28に接続された入力と、推定器30の出力に接続されたもう一つの入力と、ユニット24の入力に接続された制御出力を有する。
【0027】
推定器30は、変換器32の出力に接続されてディジタル基準信号を受信する入力とユニット24の出力に接続されて電圧Uexcを受信する入力を有する。
【0028】
また、回路18は、
トランスデューサ14に結合され、電気測定信号をディジタル測定信号に変換するアナログ−ディジタル変換器36と、
ディジタル測定信号及び電圧Uexcに基づいてターゲット12の位置の推定値X0及び速度の推定値V0を計算するのに適した推定器38と、
を有している。
【0029】
従って、推定器38はアナログ−ディジタル変換器36の出力に結合された入力と、ユニット24の出力に結合された入力と、推定値X0、Y0をセンサ2の外部回路へ送出する二つの出力を有する。
【0030】
ここで、図示するように、推定値X0、V0はターゲットの速度の新推定値V0’及びターゲットの加速度の 推定値A0’をより高精度で計算するのに適した追加処理のためのユニット40の入力へ送出される。また、ユニット40は推定値X0も出力として送出する。
【0031】
回路18のユニットの種々の機能の詳細は図3を参照した説明により明らかになる。
【0032】
また、回路18はディジタル測定及び基準信号を形成するサンプル及び推定器30、38によって実行されるべき計算において要求されるデータの全セットを記憶するためのメモリ42と関連付けられている。
【0033】
図2は支持板20の対応する面に対向して配置されたターゲット12の面22を示す。また、図2はこの面22に対向したインダクタ10及びトランスデューサ14、16の構成を示す。
【0034】
図2において、図1について既に説明した要素は同一の参照番号を付してある。
【0035】
面22はターゲット12の変位の垂直方向Xに対して平行であり、また、支持板20の表面にも平行している。
【0036】
この面22は互いに横側に配列され垂直に延在する二つのセクションSdef、Smesに分割されている。垂直限界50はこれら二つのセクションを分離する。
【0037】
セクションSdefは 導電率C1の材料44及び導電率C2の材料46(図2に陰影で示す)を並列することによって作られている。
【0038】
材料44、46は互いに並べて配列されてX方向に平行に延在する導電性の絶縁48を形成する。たとえば、材料44、46は垂直に延在しX方向に平行な一定幅の二つのバンドを形成する。
【0039】
材料44、46は、導電率C1、C2が互いに対して大きく異なるように、選択される。好ましくは、導電率C1に対する導電率C2の比は1000もしくはそれ以上である。たとえば、ここでは、材料44は電気的な絶縁材料であって、その導電率C1は10-10S/mより小さく、他方、材料C2は導電材料たとえば銅であって、その導電率 C2は106S/mより大きい。
【0040】
セクションSmesもまた同じ二つの材料44、46より作られている。しかしながら、セクションSmesにおいては、材料46はX方向に垂直な方向Yに延在し支持板20の面に平行な一定幅の水平なバンドを形成するようにレイアウトされている。
【0041】
材料44は、Y方向に延在し材料46で形成された上下に並んだ二つの水平なバンドを形成するように、セクションSmesに配置される。
【0042】
面Smesにおける材料44、46のレイアウトによりX方向に同一直線上にない導電性の二つの絶縁52、54を形成することができる。ここで、これらの導電性の絶縁52、54は方向Yに平行である。
【0043】
ここで、インダクタ10は1以上の巻き数を持ち、その巻軸が面22に垂直なコイルにより形成される。面22に対向するインダクタ10の部分は、ターゲット12に実質的に均一な磁場を誘導することを可能にするのに十分なだけ延在する。
【0044】
トランスデューサ14、16はインダクタ10のコイル内部に配置される。
【0045】
トランスデューサ14は水平な導電性の絶縁52、54の少なくとも一つに対向して配置され、X方向における導電性の絶縁の変位に対して感度を持つ。
【0046】
逆に、トランスデューサ16は絶縁48に対向して配置されてX方向におけるターゲット12の変位に対して感度を持たない。
【0047】
トランスデューサ14、16は、それぞれ、差動的に装着されたコイルによって形成されている。
【0048】
より詳細には、トランスデューサ14は直列に結合されしかし反対方向に巻かれた二つのコイル56、58により構成され、この結果、同一の磁場が二つのコイル56、58を横切ると、トランスデューサ14によって発生する電気信号は零となる。このようなトランスデューサは零磁場の周辺で線形の動作領域を得ることを可能とする。
【0049】
ここで、コイル56は導電性の絶縁52に対向して装着され、一方、コイル58は導電性の絶縁54に対向して装着され、この結果、ターゲット10のX方向の変位に対するトランスデューサ14の感度を増大させる。
【0050】
同様に、トランスデューサ16は、差動的に装着された二つのコイル60、62によって構成されている。
【0051】
ターゲット12のX方向の変位に関係なく、コイル60は単独で材料44に対向して配置され、また、コイル62は絶縁48に対向して配置される。
【0052】
インダクタ10及びトランスデューサ14、16を回路18へ結合する端子は、図2において小さな円形で示されている。
【0053】
この説明で後で使用する関係式及び表記を以下に導入する。
【0054】
時刻tにおいてトランスデューサ14によって発生する起電力emes(t)は次の関係式で与えられる。
【数1】

但し、Aは振幅が非加法的欠陥の関数として変化する増倍係数、
【数2】

は電流Iexc(t)の時間に関する1階導関数であり、
f(X)はターゲット12の位置Xの関数としてのトランスデューサ14を横切る磁束のイメージを与える変換関数であり、
“noise(t)”は加法的雑音がないときに理論的に得られる信号に重畳した加法的雑音である。
【0055】
増倍係数Aの値は、たとえばターゲット12の幾何学的形状、導電率C1、C2、ターゲット12の表面からトランスデューサ14の距離(“リフトオフ”)に依存する。
【0056】
時刻tにおいてトランスデューサ16によって発生する起電力edef(t)は次の関係式で与えられる。
【数3】

但し、この関係式の各項は関係式(2)について既に定義した。
【0057】
尚、トランスデューサ16に対向する導電性の絶縁48はX方向に平行なので、起電力edef(t)はターゲット12の位置Xに依存しない。
【0058】
変換関数f(X)は位置Xの関数としての電気測定信号の振幅を変調する。この変換関数f(X)は静的状態で実験的にモデル化できる。たとえば、起電力emes(t) の振幅(すなわち、ピーク値)が測定される間、ターゲット12は位置x1に近接し、この位置に保持される。この後、ターゲットは位置x2に移動され、前述の動作が繰返される。
【0059】
図示のごとく、次に、関数f(X)は次の関係式により定義される。
f(X) = αX (4)
但し、αは実験的に測定された一定の係数である。
【0060】
観測期間Tobs中のターゲット12の変位は、変位モデルによってモデル化される。この変位モデルは次の一般的な関係式によって規定される。
【数4】

但し、X(t) は観測期間[-Tobs;0]に属する時刻tにおけるX方向におけるターゲットの位置であり、
gは変位モデルであり、
【数5】

は、それぞれ、観測期間の終了時の時刻t=0における位置、速度、位置の2階導関数、…、位置のi階導関数であり、この位置及びこれもしくはこれらの導関数が推定すべきものである。
【0061】
観測期間Tobs中のターゲットの変位モデルは、たとえば、多項展開式によって作ることができる。この場合、モデルは次の形式となる。
【数6】

【0062】
次に、ターゲット12は観測期間中において高速度で移動できるが、この同一の観測期間中においては加速度は無視できるものと仮定する。このような条件下では、採用される変位モデルは次のごとくである。
X(t) = X(0) + V(0)t (7)
但し、X(0)、V(0)は、それぞれ、時刻t=0におけるターゲットの位置、速度である。
【0063】
変位モデルは観測期間Tobs中のターゲット12の変位に関してセンサ2の設計者が所持する知識を必要とすることを指摘する。
【0064】
アナログ−ディジタル変換器32、36のサンプリング周波数をfechと表す。この周波数fechは5/Tobsより大きく、好ましくは100/Tobsもしくは1000/Tobsより大きい。従って、期間Tobs中に取得されるサンプル数Nは5より大きく、好ましくは100もしくは1000より大きい。Nは最小でも2より大きくなければならない。
【0065】
サンプリング時刻をtiで表し、ここで、t0は現在時刻(t=0)、つまり、観測期間Tobsの終了時刻に相当し、tN-1は観測期間の開始時刻、つまり、-Tobsに相当する。
【0066】
Dは電気測定信号のN個の連続的なサンプル値のベクトルである。Dは次の関係式で定義される。
【数7】

但し、Diは時刻tiにてサンプルされた電気測定信号の値を示す。
【0067】
Eは電流Iexcの時間導関数の連続的なサンプル値のベクトルである。このベクトルは次の関係式で定義される:
【数8】

但し、Eiは時刻tiにてサンプルされた電流Iexcの時間導関数のサンプル値を示す。
【0068】
BはN個の連続的な雑音のサンプル値のベクトルである。Bは次の関係式で定義される:
【数9】

但し、Biは時刻tiにてサンプルされた加法的雑音の振幅を示す。ベクトルD、Eと異なり、このベクトルBはランダムである。
【0069】
関係式(2)、(4)、(7)を用いることにより、ベクトルD、Bをつなぐ次の行列関係式を書くことができる。
【数10】

但し、Pは次の関係式で定義される。
【数11】

【0070】
行列Mは関係式(11)で定義される。
【0071】
ターゲット12の位置、速度の推定値X0、V0を、最小2乗法においていわゆる“擬似逆”手順を用いて求めることができる。この手順はたとえば、
R. M. Pringle, A. A. Rayner, “一般化逆行列”, London, Griffin(1971年)に記載されている。
【0072】
推定値X0、V0は次の関係式により得られる。
【数12】

但し、P^は推定ベクトル値であり、
Qは擬似逆行列であり、
Tは転置関数を示し、
-1は行列逆関数を示す。
【0073】
推定ベクトル値P^は次の関係式で定義される。
【数13】

【0074】
擬似逆行列Qは次の関係式で定義される。
【数14】

但し、Q1、Q2は行列Qの第1、第2列にそれぞれ相当する直交ベクトルである。
【0075】
また、増倍係数Aの値の時間にわたる展開形式のモデルh(t)は次の関係式で定義される。
A = h(t)
【0076】
ここでは、増倍係数Aの値の変化は無視できる加速度を示すものと仮定する。これは次のモデルで示される:
h(t) = A(0) + VA(0)t (17)
但し、A(0)はサンプリング時刻t0における増倍係数の値、
VA(0)はサンプリング時刻t0における増倍係数の振幅の展開(evolution)率である。
【0077】
Ddは電気基準信号のN個の連続的なサンプル値のベクトルである。Ddは次の関係式で定義される。
【数15】

但し、Ddiは時刻tiにてサンプルされた電気基準信号の値を示す。
【0078】
Bdは電気基準信号に現れる加法的雑音のサンプル値のベクトルであり、次の関係式で定義される。
【数16】

但し、Bdiはサンプリング時刻tiにおける加法的雑音の振幅である。ベクトルDdと異なり、このベクトルBdはランダムである。
【0079】
関係式(11)に関する上述と同様に、関係式(3)、(17)により以下の行列関係式を確立できる。
【数17】

但し、Pdは次の関係式によって定義される。
【数18】

【0080】
上述したように、擬逆手順を用いることにより、関係式(20)によって表されるモデル及び電気基準信号との間の偏差を最小にするように、増倍係数Aの値及びその変化率の推定値A0、VA0を決定することができる。
【0081】
この手順に従えば、これらの推定値は次の関係式で与えられる。
【数19】

但し、行列Mdは関係式(20)で定義され、行列Qdは擬逆行列である。
【0082】
ベクトルP^dは次の関係式で定義される。
【数20】

【0083】
擬逆行列Qdは次の関係式で定義される。
【数21】

但し、Qd1、Qd2は、それぞれ行列Qdの第1、第2の列によって定義されるベクトルに相当する。
【0084】
上述の関係式における予め知られた種々のパラメータはメモリ42に記憶される。たとえば、メモリ42はパラメータα、N、Tobs、Aの値を含む。Aはユニット28の基準設定点に等しいので、Aは既知である。
【0085】
また、メモリ42は次の関係式で定義される行列K、Kdを含む。
K = (MTM)-1 (25)
Kd = (MdTMd)-1 (26)
【0086】
ベクトルEがランダムあるいは擬ランダム列のサンプル値よりなるとき、行列K、KdはベクトルEの値と独立である。
【0087】
代表的に選択される期間Tobsの値は1sから100μsの間であり、好ましくは、1m/sより大きい速度、好ましくは、100m/sより大きい速度で移動するターゲットに対しては0.3msから500μsの間である。ここで、期間Tobsの値は推定値V0に依存する。特に、推定値V0が増大すると、期間Tobsは自動的に短縮され、また、推定値V0が減少すると、期間Tobsは自動的に延長される。たとえば、このタスクは推定器38によって実行される。
【0088】
次にセンサ2の動作を図3を参照して説明する。
【0089】
連続的に、ステップ70中、補償器26はユニット28によって送出された基準設定点を推定器30によって送出された推定値A0と比較する。この基準設定点とこの推定値の偏差の関数として、補償器26は励起ユニット24を制御して増倍係数Aの振幅を基準設定点に等しく維持するようにする。
【0090】
各現在のサンプリング時刻t0にて、回路18はトランスデューサ14、16から送出される電気信号の処理フェイズ72を開始する。
【0091】
フェイズ72のスタート時に、ステップ74の間、トランスデューサ14、16はターゲット12によって変調された励起磁場を起電力emes(t)、edef(t)にそれぞれ変換する。ステップ74中、これらの起電力は時刻tiにて変換器32、36によってサンプルされて値emes(t0)、edef(t0)を得る。
【0092】
ステップ76中、これらのサンプル値emes(t0)、edef(t0)はメモリ42に値D0、Dd0として記録される。
【0093】
次に、ステップ78中、推定器38はメモリに記録されたサンプル値に基づいてベクトルDを構成し、推定器30はベクトルDdを構成する。
【0094】
ステップ80中、回路18は値E0を読出す。従って、回路18は時刻t0における電圧Uexcの値を読出し、これを値E0として記録する。特に、電圧Uexcは電流Iexcの時間導関数及びインダクタ10のインダクタンスに比例する。
【0095】
次に、ステップ82中、推定器38はベクトルEを構成して、これをメモリ42に記録する。
【0096】
ステップ84中、推定器38は、メモリ42に記録されたベクトルE、係数αの値、値A及び観察期間Tobsに基づいて新しい行列Mを計算する。
【0097】
次に、ステップ86中、推定器38は関係式(15)に基づいて擬逆行列Qを計算する。特に、このステップ86中、推定器38は予めメモリ42に記録された行列Kに行列MTを乗算する。このように、ステップ86が完了すると、ベクトルQ1、Q2が分ることになる。
【0098】
ステップ88中、推定器38は行列Qに基づいてターゲットの位置及び速度を推定する。特に、動作90中、推定器38はベクトルDをベクトルQ1に写像して推定値X0を得る。また、動作92において、推定器38はベクトルDをベクトルQ2に写像して推定値V0を得る。
【0099】
推定値X0、V0はセンサ2から追加処理ユニット40に送出される。
【0100】
ステップ94中、ユニット40はセンサ2によって送出された推定値を加工する(hone)。より詳細には、動作96中、ユニット40は推定値V0が所定しきい値S1より小さくないか否か判別する。この判別が肯定的な場合、ユニット40は推定値X0、X1、…Xm(但し、インデックスmはNより大きい整数)に基づき、ターゲットの速度のより精確な推定値V0を計算する。Xiはサンプリング時刻tiにおけるセンサ2によって送出されたターゲットの位置の推定値を示す。
【0101】
逆の場合、つまり、推定値V0がしきい値S1より大きいとき、この推定値は修正されず、この結果、推定値V’0は推定値V0に等しくなる。動作96は、センサ2によって推定された速度の推定値が低い場合に、速度の推定値の精度を高めることができる。たとえば、しきい値S1は0.01m/sに等しい。
【0102】
動作98中、ユニット40はまた、先のm個の位置の推定値Xi及び/または速度の推定値Viに基づいてターゲットの加速度の推定値A’0を計算する。
【0103】
次に、ステップ100中、ユニット40は推定値X0、V0’、A0’を送出する。
【0104】
ステップ84から100に並行して、推定器30は時刻t0における増倍係数Aの値を推定する。
【0105】
より詳細には、ステップ104中、推定器30は記憶されたベクトルEに基づいて行列Mdを計算する。次に、ステップ106中、推定器30は関係式(24)に基づいて擬逆行列Qdを計算する。この目的のため、ステップ106中、推定器30は記憶された行列Kdに行列Mdの転置行列を乗算する。
【0106】
次に、ステップ108中、推定器30は増倍係数Aの変化の値A0及び変化率VA0を推定する。より詳細には、動作110において、推定器30はベクトルDdをベクトルQd1に写像して推定値A0を得る。同様に、動作112において、推定器30はベクトルDdをベクトルQd2に写像して推定値VA0を得る。
【0107】
次に、ステップ114中、推定器30は推定値A0を補償器26に送出し、補償器26はこの推定値を用いてステップ70の間、増倍係数Aの値を一定に保持する。
【0108】
フェイズ72は各サンプリング時刻に繰返され、ターゲット12の位置、速度及び加速度の新たな推定値が新たなサンプリング時刻毎に実行される。
【0109】
図4は軸122の回りを回転する部分の位置及び角速度の推定に適したターゲット120を示す。
【0110】
ここで、ターゲット120はディスクの形状を有しており、このディスクは、二つのセクションSmes、Sdefを形成するように、異なる導電率の材料からなるゾーンに分割される。
【0111】
ここで、Smesは環であり、その左半分はたとえば材料46によって形成され、他方、右半分は材料44によって形成される。これら二つの材料44、46の並置は径方向に延在する導電性の二つの絶縁126、127を生じる。
【0112】
表面Sdefは表面Smesの中央に位置する。この表面Sdefは材料44よりなる円状中央パッドによって形成される。この中央パッドは材料46によって形成される完全な環に囲まれている。このような表面Sdefの構成は円形かつ軸122を中心とする導電性の絶縁130を生じる。
【0113】
また、図4は実質的に均一な励起磁場を発生するのに適したインダクタ134及び二つの差動型トランスデューサ136、138を示す。
【0114】
図2について説明したように、トランスデューサ136は直列かつ互いに対して反対方向に巻回された二つのコイルを有し、これら二つのコイルが同一の磁場を横切ったときにトランスデューサ136の端子における電気信号は零となる。
【0115】
トランスデューサ136は表面Smesに対向して配置され、導電性の絶縁126、127の回転変位の関数としての電気測定信号を送出する。
【0116】
トランスデューサ136と同様に、トランスデューサ138は直列かつ反対方向に巻回された二つのコイルよりなる。しかしながら、トランスデューサ136は表面Sdefに対向して配置され、ディスク120の角度位置と独立な電気基準信号を送出する。
【0117】
インダクタ134は図1のインダクタ10の役目をなし、また、トランスデューサ136、138は、それぞれ、図1のインダクタ14、16の役目をなす。従って、ターゲット120を用いた位置及び角速度の動作の詳細は説明しない。
【0118】
多数の他の実施例が可能である。
【0119】
たとえば、トランスデューサ14、16または136、138は必ずしも差動的に装着された二つのコイルより構成する必要はない。
【0120】
絶縁材として説明した材料C1は、たとえば、空気によって構成でき、これにより、ターゲット12もしくは120の製造を簡単化できる。
【0121】
非加法的擾乱は測定精度においてむしろ重要でなければ、センサ2を、トランスデューサ16と共に、変換器32、推定器30、補償器26及び調整ユニット28を設けることなく簡素化できる。
【0122】
非加法的欠陥の補償は、像倍係数Aを一定の値に保つ補償器26を用いて実行されると説明した。変形例として、このような補償は起電力emes(t)を起電力edef(t) によって除算することによっても実行できる。
【0123】
後者の場合、分圧器が、変換器36及び推定器30と、推定器38との間に導入される。この分圧器は推定器30からの出力として得られた起電力edef(t)の振幅により、起電力emes(t)を除算する。これにより、補償器26及び調整ユニットを省略することができる。
【0124】
また、単に起電力emes(t)にedef(t)の逆数の振幅の一定の展開式で乗算することによって非加法的欠陥を補償できる。この一定の展開式とは次の形式をとることができる:
(1-ε)/A
【0125】
変換関数f(X)はXに単に比例するものとして説明した。しかしながら、他の変換関数とすることも可能である。たとえば、変換関数は次の形式をとることができる:
f(X) = αX + β
但し、α、βは既知の係数である。
【0126】
ここで、関数f(X)の係数は一定であると説明した。しかしながら、これらの係数を一定とすべきでなければ、たとえば、推定値X0の関数としてこれらの係数の値を調整するユニットを設けることができる。
【0127】
インダクタ及びトランスデューサ14は別個のコイルより形成されると説明した。変形例として、同一のコイルを用いて励起磁場を発生するのに適したインダクタと共にターゲットにより変調された励起磁場の測定のトランスデューサとすることもできる。
【0128】
ここでは、導電性の電気的絶縁を異なる導電率の材料を並置することによって形成すると説明した。変形例として、これらの導電性の電気的絶縁は単一の導電材料の表面にリブもしくは切れ目(score)を形成することによっても得ることができる。また、他の変形例として、これらの導電性の絶縁は、所望の場合には導電材料の内部に埋め込むこともできる。
【0129】
観測期間Tobs中にターゲットの加速度が無視できないときには、観測期間中のターゲットの加速度を示す項を上述の変位モデルに加えることもできる。また、時間に関する位置のより高次の導関数を示す他の項を、それらの寄与がターゲットの位置の推定にとって無視できなければ、変位モデルに加えることもできる。後者の場合、推定器はターゲットの位置及び速度の推定値と共に位置のこれらのより高次の導関数の推定値を送出する。
【0130】
ここで、変位モデルは多項式の分解によって得ると説明した。しかしながら、ターゲットの変位が振動性モデルであれば、変位モデルはフーリエ級数によって得ることができる。
【0131】
ここで、トランスデューサ16の巻軸がターゲットの面22に垂直であれば、このトランスデューサ16は面22のこの垂直な方向における非加法的欠陥にのみ感度を持つ。変形例として、非同一直線方向の非加法的欠陥振幅を測定するように、トランスデューサ16の巻き軸と同一直線上にない巻軸を有する一つもしくは複数の他のトランスデューサを設けてもよい。
【0132】
同様に、いくつかの励起インダクタを設けることもできる。
【0133】
また、いくつかのトランスデューサたとえばトランスデューサ14を用いて角分解能を改良することも可能である。
【0134】
セクションSmes、Sdefは互いに隣接するものとして説明した。変形例として、これらの面は隣接していなく、たとえば、空間的に離れた複数のターゲットによって保持されてもよい。
【0135】
励起インダクタは必ずしもトランスデューサ14、16を支持する支持板と同一の支持板上に配置する必要はない。たとえば、励起インダクタはトランスデューサ14、16が位置する側に対してターゲットの他の側におくこともできる。
【0136】
また、励起磁場のスペクトルを拡げないように、ユニット24を制御することもできる。たとえば、この場合、励起電流Iexcは周波数f0の純粋な正弦波である。このような状況において、推定器30は受信した電気信号をフィルタできる同期型復調器と置換し、この電気信号から周波数f0成分の振幅を抽出する。
【0137】
ベクトルEが一定期間Teで繰返すとき、各期間Teのみに位置を推定することも可能である。この方法では、期間Teの終了時におけるベクトルEがこの期間の開始時のそれと同一となるので、必ずしも擬逆行列を再計算する必要がないので、計算を加速させることができる。
【0138】
ここでは、ターゲット12は可動部に固定されていると説明した。変形例として、ターゲット12は可動部と一体となりこの可動部と唯一のブロックを形成する。
【0139】
励起磁場のスペクトルの拡がりは連続的であると説明した。変形例として、離散的にすることもできる。
【0140】
また、Eiの値を励起ユニット24の出力から読込む代りに計算することもできる。励起磁場の時間にわたる展開が予め分っていれば、値Eiを計算することもできる。たとえば、励起磁場が周期的である場合がこれに該当する。
【0141】
変形例として、ターゲットを磁性材料から作ることができる。
【0142】
上述のセンサはターゲットの位置の推定値のみまたはターゲットの速度の推定値のみを送出するように適合することもできる。この変形例においては、ベクトルDを求めようとする推定値に依存するベクトルQ1もしくはベクトルQ2のみに写像する。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】可動部の位置及び速度のセンサの構成の概略図である。
【図2】図1のセンサのターゲット、インダクタ及びトランスデューサの正面図である。
【図3】図1のセンサによる可動部の位置を測定する方法のフローチャートである。
【図4】位置及び角速度を測定するためのターゲットの他の実施例の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの測定方向に沿って移動可能な可動部の位置及び/または速度のセンサであって、
励起電流もしくは電圧の関数として励起磁場を誘導するのに適した少なくとも一つの励起インダクタ(10)と、
導電材料もしくは磁性材料よりなるターゲットであって、前記可動部に固定され、前記励起磁場を前記ターゲットの位置の関数として変調するのに適した少なくとも一つのターゲット(12)と、
前記ターゲットにより変調された励起磁場を電気測定信号に変換するのに適した少なくとも一つの第1のトランスデューサ(14)と、
観測期間Tobsの完了時において、該観測期間Tobs内に取得されたN個のサンプルの電気測定信号及びN個のサンプルの励起電流及び/または電圧に基づいて前記ターゲットの位置及び/または速度を推定可能であり、前記Nは2より大きい整数である第1の推定器(38)と、
を有し、
前記第1の推定器は、前記観測期間Tobs中の前記ターゲットの変位モデルの関数として前記位置及び/または前記速度の推定値を確立することができ、前記変位モデルは前記観測期間Tobsに含まれる時刻tにおける前記ターゲットの位置を少なくとも推定すべき位置及び速度に関連付けることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記変位モデルは次の関係式によって規定され、
【数1】

X(t)は観測期間[-Tobs;0]に属する時刻tにおける前記測定方向に沿った前記ターゲットの位置であり、
gは前記変位モデルであり、
【数2】

は、それぞれ、前記観測期間の終了の時刻t=0における位置、速度、前記位置の2階導関数、…、前記位置のi階導関数であり、該位置及び該速度が前記推定すべき位置及び速度に対応することを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1の推定器(38)は、前記ターゲットの位置及び速度を推定するのに用いた先の観測期間に関して最大で((N-1)/N)・Tobsだけ一時的にシフトされた移動観測期間を用いることができることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記センサは、前記励起磁場のスペクトルエネルギー密度が、幅が少なくとも2/(N・Tobs)である周波数帯域に含まれるいくつかの周波数上に拡がり、該周波数帯域は前記励起磁場の少なくとも80%のエネルギーを含むように、前記励起電流及び/または電圧を発生するのに適した励起ユニット(24)を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記周波数帯域の幅は最大で2/Tobsに等しいことを特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記励起ユニット(24)は、ランダムもしくは擬ランダムのシーケンスの励起電流及び/または電圧を発生して、前記N個のサンプルの励起電流及び/または電圧はランダムあるいは擬ランダムの一連の値を形成し、かつ、前記第1の推定器は前記N個のサンプルの電気測定信号よりなるベクトルDを少なくとも擬似逆行列の少なくとも一つのベクトルに写像することによって前記位置及び/または前記速度を推定でき、前記擬似逆行列の一つの項(MTM)-1は複数の推定値について予め計算され、Mは行列、“べき数T”は行列転置関数及び“べき数-1”は逆関数である、請求項4または5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電気測定信号の振幅は、非加法的欠陥の関数として変化可能な値の前記位置の増倍係数に依存し、前記センサは、
前記測定方向(X)に沿った前記ターゲットの変位から独立した前記励起磁場の変調部のみを電気基準信号に変換するのに適した少なくとも一つの第2のトランスデューサ(16)と、
前記電気基準信号に基づいて前記増倍係数の値を推定するのに適した第2の推定器(30)と、
前記増倍係数の推定値の関数としての前記増倍係数の変化によって生ずる前記電気測定信号の振幅変化を補償するのに適した補償器(26)と
を具備することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記補償器(26)は前記励起磁場を基準設定点と前記増倍係数の推定値との偏差の関数として修正するのに適したレギュレータを有することを特徴とする請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記第1の推定器(30)は前記ターゲットの速度の推定値が減少したときに前記観測期間の長さを自動的に増加することができることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記ターゲット(12)は、異なる導電率の二つの材料間に、前記測定方向と同一線上にない導電性の絶縁を示すことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載のセンサを用いて可動部の位置及び/または速度を測定する方法であって、
観測期間Tobsの完了時点において、該観測期間Tobs内に取得されたN個のサンプルの電気測定信号及びN個のサンプルの励起電流及び/または電圧に基づいて前記ターゲットの位置及び/または速度を推定するステップ(88)を有し、前記Nは2より大きい整数であり、
前記位置及び/または速度の推定値は、前記観測期間Tobs中の前記ターゲットの変位モデルに依存し、前記変位モデルは前記観測期間に含まれる時刻tにおける前記ターゲットの位置を少なくとも推定すべき位置及び速度に関連付けることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−509153(P2009−509153A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531741(P2008−531741)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002175
【国際公開番号】WO2007/034089
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508088007)
【Fターム(参考)】