説明

センサ、検査装置、および検査方法

【課題】より効率的に、より正確に被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出する。
【解決手段】センサ11は、励磁コイル71と検出コイル72からなる。励磁コイル71は、被検体13の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる。検出コイル72は、励磁コイル71により生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。センサ11は、被検体13の周を囲むか、被検体13から取り外せるように、巻きほどくことなく被検体13に着脱自在とされている。被検体13の錆の有無を判定するための電磁気特性を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ、検査装置、および検査方法に関し、特に、金属からなる被検体の良否を検査するためのセンサ、検査装置、および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋を支えるワイヤーロープの腐食を検査するために渦流試験が用いられている。渦流試験は、検査の対象となる被検体に、その被検体を介して電磁結合される2つのコイルを装着して、一方のコイルに交流電圧を印加することで、交流電流を流して、2つのコイルの電圧と電流とから、被検体の腐食や傷などの有無を検査するものである。従来、橋を支えるワイヤーロープを検査する場合、ワイヤーロープ毎に、ソレノイドコイルである2つのコイルをワイヤーロープの側面にいちいち巻き付けて、渦流試験を行っていた。複数のワイヤーロープを検査する場合には、ワイヤーロープに既に巻き付けた2つのソレノイドコイルを巻きほどいて、次のワイヤーロープの側面に巻き付けなければならない。
【0003】
従来、可撓性基板に設けたそれぞれ独立した複数本の配線からなる配線パターンおよび前記可撓性基板の両端部に設けた接続部ならびに前記複数本の配線の両端にそれぞれ接続されるとともに前記接続部にそれぞれ接続された接続端子を有する探傷用検査コイル素子と、非磁性体材料を用いて中空円筒状に構成され、コイルボビンの外径を2Rとしたときのコイルボビンの厚みがR/π以上であるコイル巻きつけ部を有し、縦に2分割可能とされたコイルボビンとを有し、コイルボビンを測定対象に装着した後探傷用検査コイル素子をコイルボビンに巻き付けて両接続部を接続具により接続して渦流探傷センサを構成するようにしているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−333330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、渦流試験に際して、所定の起磁力が必要なので、ある程度の電流を流すために比較的太さのある銅線が、コイルの巻き線として、250乃至500回程度巻き付けられる。ワイヤーロープ毎に、2つのコイルをいちいち巻き付けると、その作業だけで、数時間を要し、効率的に、被検体の腐食の有無を検査することはできなかった。例えば、橋を支えるワイヤーロープを検査する場合、巻き付けの作業には、1時間以上の時間が必要とされる。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術を採用したとしても、コイルのターン数だけ接点が生じることになり、その接点において接触抵抗が生じることになり、磁界を生じさせるための励磁電流を増やすことが困難であり、また、電圧および電流に歪みが生じてしまい、被検体の腐食の有無を正確に検査することは困難であった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より効率的に、より正確に被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出するか、被検体の良否を判定することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面のコイルは、金属からなる長尺物である被検体の検査に用いるセンサであって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとを備え、前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされている。
【0009】
前記励磁コイルを対向するサドル型コイルとし、前記検出コイルを対向するサドル型コイルとし、前記被検体の周を囲む様に前記被検体に装着された場合、前記検出コイルを、前記励磁コイルと前記被検体との間に配置することができる。
【0010】
前記励磁コイルおよび前記検出コイルを、1つのコアに巻かれたトロイダル型コイルとし、前記コアを、分割可能とすることができる。
【0011】
本発明の第1の側面においては、巻きほどくことなく着脱自在の励磁コイルおよび検出コイルを、被検体の周を囲むように装着し、また取り外せ、被検体に装着された励磁コイルが、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせ、被検体に装着された検出コイルが、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。
【0012】
本発明の第2の側面の検査装置は、金属からなる長尺物である被検体を検査する検査装置であって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなるセンサであって、前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサと、前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給する電源と、前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定する判定手段とを備える。
【0013】
前記被検体に対応する良品についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値、および前記被検体の良否を判定するための閾値を記憶する記憶手段をさらに設け、前記判定手段には、前記記憶手段に記憶されている、前記被検体に対応する良品についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの前記電流値並びに前記閾値と、前記被検体についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの前記電流値とから、前記被検体の良否を判定させることができる。
【0014】
本発明の第2の側面の検査方法は、金属からなる長尺物である被検体を検査する検査方法であって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなり、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサを、前記被検体の周を囲むように装着し、前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給し、前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定するステップを含む。
【0015】
本発明の第2の側面においては、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなり、巻きほどくことなく被検体に着脱自在とされているセンサが、被検体の周を囲むように装着され、励磁コイルに磁界を生じさせるための電流が供給され、励磁コイルおよび検出コイルの電流値を用いて、被検体の良否が判定される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の第1の側面によれば、被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出することができる。また、本発明の第1の側面によれば、より効率的に、より正確に被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出することができる。
【0017】
本発明の第2の側面によれば、被検体の良否を判定することができる。また、本発明の第2の側面によれば、より効率的に、より正確に被検体の良否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態の検査装置1の構成の例を示すブロック図である。
【図2】サドル型コイルのセンサ11の正面図である。
【図3】サドル型コイルのセンサ11の側面図である。
【図4】サドル型コイルのセンサ11の上面図である。
【図5】サドル型コイルのセンサ11の断面図である。
【図6】サドル型コイルのセンサ11の斜視図である。
【図7】サドル型コイルのセンサ11の組立図である。
【図8】励磁コイル71の個々のサドル型コイルの巻き線を説明する図である。
【図9】励磁コイル71および検出コイル72の巻き線と、被検体13の内部の磁束との関係を説明する図である。
【図10】被検体13の良否の判定について説明する図である。
【図11】検査装置1による検査の手順を説明するフローチャートである。
【図12】トロイダル型コイルのセンサ11の正面図である。
【図13】トロイダル型コイルのセンサ11の上面図である。
【図14】トロイダル型コイルのセンサ11の斜視図である。
【図15】トロイダル型コイルのセンサ11の断面図である。
【図16】トロイダル型コイルのセンサ11の断面の拡大図である。
【図17】励磁コイル91の巻き線と、コア94と、被検体13の内部の磁束との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0020】
本発明の第1の側面のセンサは、金属からなる長尺物である被検体(例えば、図1の被検体13)の検査に用いるセンサ(例えば、図1のセンサ11)であって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイル(例えば、図7の励磁コイル71)と、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイル(例えば、図7の検出コイル72)とを備え、前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされている。
【0021】
本発明の第2の側面の検査装置は、金属からなる長尺物である被検体(例えば、図1の被検体13)を検査する検査装置(例えば、図1の検査装置1)であって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイル(例えば、図7の励磁コイル71)と、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイル(例えば、図7の検出コイル72)とからなるセンサであって、前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサ(例えば、図1のセンサ11)と、前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給する電源(例えば、図1の交流電源31)と、前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定する判定手段(例えば、図1の判定部35)とを備える。
【0022】
本発明の第2の側面の検査方法は、金属からなる長尺物である被検体(例えば、図1の被検体13)を検査する検査方法であって、前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイル(例えば、図7の励磁コイル71)と、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイル(例えば、図7の検出コイル72)とからなり、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサ(例えば、図1のセンサ11)を、前記被検体の周を囲むように装着し(例えば、図11のステップS20の手順)、前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給し(例えば、図11のステップS21の手順)、前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定する(例えば、図11のステップS25の手順)ステップを含む。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態の検査装置1の構成の例を示すブロック図である。検査装置1は、センサ11および測定部12からなり、検査の対象となる被検体13の良否を検査する。ここで、被検体13は、金属からなる長尺物、すなわち、周長に対して、長さ方向に長い物である。例えば、被検体13は、ワイヤーロープ、金属製の棒、管、線、若しくは柱などである。
【0024】
また、被検体13の良否とは、規格または基準を満たすか否かである。より具体的には、被検体13の良否とは、錆、要求される強度、傷、若しくは欠陥の有無、または要求される材質であるか否かなどである。
【0025】
以下、ワイヤーロープである被検体13の錆の有無を検出する場合を例に説明する。
【0026】
センサ11は、巻きほどくことなく被検体13に着脱自在とされ、被検体13の周を囲むように装着される。センサ11は、被検体13の内部に、被検体13の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせ、生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を出力する。センサ11の詳細は後述する。測定部12は、センサ11に磁界を生じさせるための電流を供給し、センサ11に流れる電流の電流値を用いて、被検体13の良否を判定する。すなわち、この場合、測定部12は、被検体13の錆の有無を判定し、錆の有無を検出する。より詳細には、測定部12は、被検体13の錆(腐食)の程度を入力し、指示された判定程度により錆度合いで判定することが可能である。
【0027】
測定部12は、交流電源31、負荷32、負荷33、負荷34、判定部35、基準値記憶部36、測定結果記憶部37、およびインタフェース38からなる。交流電源31は、センサ11の後述する励磁コイルに接続される。交流電源31は、判定部35からの指示に応じて、センサ11に、所定の周波数の交流の電圧を印加し、磁界を生じさせるための交流の電流を供給する。交流電源31がセンサ11に印加する電圧は、リミッタ51にも供給される。
【0028】
負荷32は、センサ11の励磁コイルに流れる電流の電流値を検出するための負荷であり、センサ11の励磁コイルと交流電源31とに直列に接続される。負荷32の両端の電圧の電圧値は、センサ11の励磁コイルに流れる電流の電流値を示し、その電圧は、リミッタ51に供給される。
【0029】
負荷33は、センサ11の後述する検出コイルに接続される。負荷33は、センサ11の検出コイルのインピーダンスとマッチングをとった所定のインピーダンスとされる。
【0030】
負荷34は、センサ11の検出コイルに流れる電流の電流値を検出するための負荷であり、センサ11の検出コイルと負荷33とに直列に接続される。負荷34の両端の電圧の電圧値は、センサ11の検出コイルに流れる電流の電流値を示し、その電圧は、リミッタ51に供給される。
【0031】
判定部35は、センサ11の励磁コイルに印加される電圧の電圧値、センサ11の検出コイルから出力される電圧の電圧値、並びにセンサ11の励磁コイルおよびセンサ11の検出コイルのそれぞれの電流の電流値を用いて、被検体13の良否を判定する。なお、少なくとも、センサ11の励磁コイルおよびセンサ11の検出コイルのそれぞれの電流の電流値を用いることで、被検体13の良否を判定することができる。より正確に、被検体13の良否を判定するために、電流値に加えて、電圧値を用いることができる。
【0032】
判定部35は、リミッタ51、アナログデジタル変換器52、およびCPU(Central Processing Unit)53からなる。リミッタ51は、センサ11からの電圧を受け、入力された電圧が予め設定した範囲内にある場合、入力された電圧に対して線形な電圧をアナログデジタル変換器52に供給し、入力された電圧が設定した範囲を超えた場合、その設定値以上にならないように出力する電圧を抑制し、アナログデジタル変換器52に設定値の電圧を供給する。また、リミッタ51は、負荷32の両端の電圧および負荷34の両端の電圧を受け、入力された電圧が予め設定した範囲内にある場合、入力された電圧に対して線形な電圧をアナログデジタル変換器52に供給し、入力された電圧が設定した範囲を超えた場合、その設定値以上にならないように出力する電圧を抑制し、アナログデジタル変換器52に設定値の電圧を供給する。これにより、ノイズ成分などを取り除くことができる。
【0033】
アナログデジタル変換器52は、アナログの信号である、リミッタ51から供給された電圧をデジタル信号に変換して、CPU53に供給する。すなわち、アナログデジタル変換器52は、電圧値または電流値を示すデジタル信号をCPU53に供給する。
【0034】
CPU53は、汎用のCPU、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などを内蔵する組み込み型のMPU(Micro Processing Unit)、または専用のプロセッサなどからなり、内部または外部のメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、アナログデジタル変換器52から供給されたデジタル信号を用いて、被検体13の良否を判定するなど、各種の処理を行う。より詳細には、CPU53は、基準値記憶部36に予め記憶されている、被検体13に対応する良品の測定結果(測定結果には、被検体に対応する良品についての励磁コイルおよび検出コイルの電流値(ベクトル値)などが含まれる)、および閾値と、アナログデジタル変換器52から供給されたデジタル信号とから、被検体13が錆びているか否かを判定する。CPU53は、被検体13が錆びているか否かの判定の結果を示す情報を計測結果記憶部37に記憶させるか、または有線または無線による通信のインタフェースであるインタフェース38を介して、判定の結果を示す情報を外部に送信する。
【0035】
基準値記憶部36および計測結果記憶部37は、それぞれ、揮発性メモリまたはフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリなどからなる。基準値記憶部36は、被検体13に対応する良品の測定結果、および被検体13の良否を判定するための閾値などを予め記憶する。計測結果記憶部37は、CPU53から供給された、被検体13が錆びているか否かの判定の結果を示す情報を記憶する。
【0036】
次に、図2乃至図9を参照して、センサ11の例の詳細を説明する。図2、図3、および図4は、それぞれ、センサ11の構成を示す正面図、側面図、および上面図である。図5は、図3に示される断面Aにおける断面図である。図6は、センサ11の構成を示す斜視図であり、図7は、組立図である。
【0037】
センサ11は、励磁コイル71、検出コイル72、コア73、蝶番74、および保護板75からなる。励磁コイル71、検出コイル72、コア73、および保護板75は、それぞれ、一対の対称の部品が対向するように構成され、蝶番74によって、図2、図3、または図5に示される平面Bから、図2または図5中の上下に開閉自在に結合され、被検体13の周を囲むか、被検体13から取り外せるように、巻きほどくことなく被検体13に着脱自在とされている。
【0038】
励磁コイル71は、センサ11が被検体13に装着された場合、被検体13の周を囲む、電気的に接続されている、対向するサドル型コイルからなる。励磁コイル71は、交流電源31および負荷32に接続され、交流電源31から交流の電圧が印加されて、交流の電流が供給されると、装着されている被検体13の内部に、被検体13の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる。
【0039】
検出コイル72は、センサ11が被検体13に装着された場合、被検体13の周を囲む、電気的に接続されている、対向するサドル型コイルからなる。検出コイル72は、センサ11が被検体13に装着された場合、励磁コイル71と被検体13との間に配置される。検出コイル72は、負荷33および負荷34に接続され、励磁コイル71により生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。
【0040】
コア73は、いわゆる鉄芯であり、フェライトやパーマロイ、または鉄材などの損失の少ない高透磁率の素材からなり、励磁コイル71により生じた磁界による磁束を通過させて、これにより、被検体13の内部に、より強い磁界を生じさせる。センサ11が被検体13にその周を囲むように装着された場合、コア73は励磁コイル71の外側に配置され、2つの部分からなるコア73の対向する両端が隙間無く接触するようにコア73は形成されている。
【0041】
保護板75は、摩擦抵抗が少なく、摩擦による摩耗の少ない、例えば、ポリカーボネートやエンジニアリングプラスチックなどの樹脂や繊維強化樹脂などの非磁性材料からなる。保護板75は、金属からなる長尺物である被検体13に対して、センサ11を移動させた場合、被検体13との摩擦による励磁コイル71および検出コイル72の損傷を防止する。
【0042】
センサ11の構成をより詳細に説明すると、保護板75は、2つの略半円筒の部分からなり、センサ11がワイヤーロープである被検体13に装着された場合、被検体13の側面に対して所定の隙間ができる略円筒形となるように形成されている。
【0043】
検出コイル72および励磁コイル71は、銅線やアルミニウム線などからなる巻き線に樹脂を含浸させて、その樹脂を熱、紫外線、または硬化剤などにより硬化させて、以下に説明する形状に成形される。
【0044】
上述のように、検出コイル72は、電気的に接続されている、2つの対向するサドル型コイルからなる。検出コイル72は、センサ11がワイヤーロープである被検体13に装着された場合、略円筒形となり、保護板75の外側に配置される。
【0045】
検出コイル72は、被検体13の内部の磁界による磁束の変化に応じた起電力を生じさせる巻線部と、磁束の変化に応じた起電力を生じさせないベンドアップ部とからなる。検出コイル72を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれの巻線部は、保護板75の外側に密着するように略円筒側面状に形成されている。図7に示されるように、検出コイル72を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれにおいて、巻線部は2つに分かれることになる。
【0046】
また、検出コイル72を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれのベンドアップ部は、略円筒側面状に形成されている巻線部の側面の両側の略半円形の端部において、被検体13の長さ方向に対して鉛直の扇型とされ、後述する、励磁コイル71のベンドアップ部を挟むように形成される。
【0047】
励磁コイル71は、電気的に接続されている、2つの対向するサドル型コイルからなる。励磁コイル71は、センサ11がワイヤーロープである被検体13に装着された場合、略円筒形となり、検出コイル72の外側に配置される。
【0048】
励磁コイル71は、被検体13の内部の磁界の生成に寄与する巻線部と、被検体13の内部の磁界の生成に寄与しないベンドアップ部とからなる。励磁コイル71を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれの巻線部は、検出コイル72の巻線部の外側に密着するように略円筒側面状に形成されている。図7に示されるように、励磁コイル71を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれにおいて、巻線部は2つに分かれることになる。励磁コイル71を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれの2つの巻線部の幅(被検体13の長さ方向と直角の周の方向の長さ)は、検出コイル72を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれの2つの巻線部の幅と同じとされ、励磁コイル71の巻線部と検出コイル72の巻線部とが重なるようになされている。
【0049】
また、励磁コイル71を構成する2つの対向するサドル型コイルのそれぞれのベンドアップ部は、略円筒側面状に形成されている巻線部の側面の両側の略半円形の端部において、励磁コイル71の巻線部に比較して、より厚く形成され、コア73を挟むように形成される。コア73は、励磁コイル71の巻線部に密着するとともに、励磁コイル71の巻線部の外側を一周するように形成される。
【0050】
このように、検出コイル72の巻線部が略円筒形に形成され、励磁コイル71の巻線部が検出コイル72の巻線部に密着するように略円筒形に形成され、コア73が励磁コイル71の巻線部に密着し、一周するように形成されるので、被検体13の内部により強い磁界を生成し、感度をより良くすることができる。
【0051】
センサ11にサドル型コイルを採用した場合、漏れ磁束がほとんど生じないので、後述するトロイダル型コイルを採用する場合に比較して、磁場の強さが同じであっても、磁束密度が概ね10乃至20%高くなる。
【0052】
検出コイル72の巻線部が、励磁コイル71の巻線部とベンドアップ部とに接することになるので、検出コイル72は、より正確にかつより確実に、励磁コイル71により生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせることができる。
【0053】
また、励磁コイル71のベンドアップ部が、コア73を挟み、また、検出コイル72のベンドアップ部が、励磁コイル71のベンドアップ部を挟むように形成されるので、励磁コイル71のベンドアップ部と検出コイル72のベンドアップ部とが、検出コイル72の巻線部と励磁コイル71の巻線部とコア73との密着を妨げることがなくなり、これによっても、被検体13の内部により強い磁界を生成し、感度をより良くすることができるようになる。
【0054】
それぞれ対向するように構成されている励磁コイル71、検出コイル72、コア73、および保護板75の部分のうち、対向するうちの一方の部分が一体とされ、対向するうちの他方の部分が一体とされ、蝶番74によって、その2つの部分が、開閉自在に結合されている。従って、センサ11は、いちいち巻きほどくことなく、被検体13の周を囲むか、被検体13から取り外せるように、被検体13に自在に着脱できる。
【0055】
なお、センサ11は、蝶番74によって開閉自在とすることで、被検体13に自在に着脱できると説明したが、これに限らず、ボルトやプレート、またはクリップやベルトなどを用いることにより、被検体13に自在に着脱できるようにしてもよい。
【0056】
図8は、励磁コイル71の個々のサドル型コイルの巻き線を説明する図である。励磁コイル71のそれぞれのサドル型コイルにおいて、図8の矢印で示されるように、巻線部とベンドアップ部との内側から外側に巻き線が巻き取られて、樹脂が含浸され、樹脂が硬化させられる。なお、検出コイル72のそれぞれのサドル型コイルにおいても、励磁コイル71のそれぞれのサドル型コイルの巻き線と同様に、巻線部とベンドアップ部との内側から外側に巻き線が巻き取られて、樹脂が含浸され、樹脂が硬化させられる。
【0057】
図9は、励磁コイル71および検出コイル72の巻き線と、被検体13の内部の磁束との関係を説明する図である。センサ11は、図9中の平面Bから、図9中の上下に開閉自在に結合される。励磁コイル71に電流が流れると、励磁コイル71は、被検体13の長さ方向に対して略垂直方向に密度均一の磁界、いわゆるピンクッション磁界(均一磁界)を生じさせるので、被検体13の内部には、この磁界に応じた磁束が生じることになる。検出コイル72は、励磁コイル71の内側に配置され、この磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。
【0058】
次に、被検体13の良否の判定について説明する。
【0059】
図10は、被検体13の良否の判定について説明する図である。被検体13に錆が生じるなどすると、被検体の電磁気特性が変化する。図10において、x座標は、磁界を示し、y座標は、磁束密度を示す。また、図10において、実線は、被検体13に対応する良品(例えば、新品の被検体13)の磁気ヒステリシス曲線を示し、破線は、錆びている被検体13の磁気ヒステリシス曲線を示す。図10において、C点は、被検体13に対応する良品の磁化の飽和点を示し、D点は、錆びている被検体13の磁化の飽和点を示す。C点とD点では、磁界および磁束密度が異なる。
【0060】
このように、被検体13に、錆が生じたり、被検体13の材料の組織が変化することにより被検体13の強度が低下したりするなど、被検体13の機械的な特性が劣化すると、透磁率や導電率などの、被検体13の電磁気特性が変化する。例えば、図10におけるC点とD点とが十分に離れていることにより、被検体13が錆びていると判定できる。すなわち、被検体13の機械的な特性が劣化すると、励磁コイル71および検出コイル72のインピーダンスが変化することになる。
【0061】
測定部12は、センサ11の励磁コイル71に印加される所定の周波数(基本周波数)の交流の電圧、励磁コイル71に流れる電流、センサ11の検出コイル72が生じさせる電圧、および検出コイル72に流れる電流のそれぞれの値、より具体的には、そのピーク値や位相差などから、被検体13の良否を判定する。さらに具体的には、例えば、測定部12は、被検体13に対応する良品についての、励磁コイル71に流れる電流を示すベクトルおよび検出コイル72に流れる電流を示すベクトルと、被検体13についての、励磁コイル71に流れる電流を示すベクトルおよび検出コイル72に流れる電流を示すベクトルとを比較することにより、被検体13の良否を判定する。
【0062】
さらに、例えば、測定部12は、検出コイル72に流れる電流の成分のうち、センサ11の励磁コイル71に印加される電圧の周波数である基本周波数の奇数倍または偶数倍の周波数の高調波の成分を、被検体13に対応する良品における値と、被検体13における値とを比較することにより、被検体13の良否を判定する。
【0063】
次に、図11のフローチャートを参照して、検査装置1による検査の手順を説明する。ステップS11において、測定者は、被検体13に対応する基準となる良品の測定片にセンサ11を装着する。すなわち、測定者は、センサ11を蝶番74によって開き、良品の測定片の周がセンサ11に囲まれるように、良品の測定片にセンサ11を装着する。
【0064】
ステップS12において、検査装置1の測定部12は、測定者からの指示に応じて、センサ11に装着された良品の測定片を測定する。すなわち、ステップS12において、判定部35のCPU53は、交流電源31に信号を供給することにより、所定の期間、交流電源31に所定の周波数の交流の電圧をセンサ11の励磁コイル71に対して印加させ、励磁コイル71に交流の電流を供給させる。このとき、CPU53は、交流電源31から励磁コイル71に所定の周波数の交流の電圧が印加され、交流の電流が供給されている期間において、アナログデジタル変換器52から供給されるデジタル信号を取得することにより、励磁コイル71の電圧および電流並びに検出コイル72の電圧および電流のそれぞれの値を取得する。CPU53は、被検体13に対応する良品の測定片の測定値を取得する。例えば、測定値は、励磁コイル71に流れる電流を基準とした、検出コイル72に流れる電流を示すベクトル値である。
【0065】
ステップS13において、CPU53は、被検体13に対応する良品の測定片の測定値を基準値記憶部36に記憶させる。ステップS14において、測定者は、ステップS11と同様に、被検体13に対応する基準となる腐食している測定片にセンサ11を装着する。ステップS15において、検査装置1の測定部12は、ステップS12と同様に、測定者からの指示に応じて、センサ11に装着された腐食している測定片を測定する。ステップS16において、CPU53は、被検体13に対応する腐食している測定片の測定値を基準値記憶部36に記憶させる。
【0066】
ステップS17において、測定者は、腐食している他の測定片があるか否かを判定し、腐食している他の測定片があると判定された場合、ステップS14に戻り、ステップS14乃至ステップS16の処理を繰り返す。ステップS17において、腐食している他の測定片がないと判定された場合、手順はステップS18に進み、CPU53は、被検体13に対応する良品の測定片の測定値と、被検体13に対応する腐食している測定片の測定値とから、腐食の判定の閾値を決定する。例えば、CPU53は、被検体13に対応する腐食している測定片の測定値の平均値を算出して、その平均値と被検体13に対応する良品の測定片の測定値との差分の半分を閾値とする。また、例えば、CPU53は、被検体13に対応する良品の測定片の測定値と、被検体13に対応する腐食している測定片の測定値とに、統計的な関数を適用することにより、腐食の判定の閾値を計算する。
【0067】
なお、ステップS18において、測定者が、被検体13に対応する良品の測定片の測定値と、被検体13に対応する腐食している測定片の測定値とから、腐食の判定の閾値を決定するようにしてもよい。この場合、測定者は、決定した閾値を図示せぬキーボードや入力パネルなどを操作することで、測定部12に入力する。
【0068】
ステップS19において、CPU53は、腐食の判定の閾値を基準値記憶部36に記憶させる。
【0069】
ステップS20において、測定者は、センサ11を蝶番74によって開き、被検体13の周がセンサ11に囲まれるように、被検体13にセンサ11を装着する。ステップS21において、判定部35のCPU53は、測定者からの指示に応じて、交流電源31に信号を供給することにより、所定の期間、交流電源31に所定の周波数の交流の電圧をセンサ11の励磁コイル71に対して印加させ、励磁コイル71に交流の電流を供給する。
【0070】
ステップS22において、測定部12は、被検体13を測定する。すなわち、CPU53は、交流電源31から励磁コイル71に所定の周波数の交流の電圧が印加され、交流の電流が供給されている期間において、アナログデジタル変換器52から供給されるデジタル信号を取得することにより、励磁コイル71の電圧および電流並びに検出コイル72の電圧および電流のそれぞれの値を取得する。そして、CPU53は、励磁コイル71の電圧および電流並びに検出コイル72の電圧および電流の値から、被検体13の測定値を取得する。
【0071】
ステップS23において、CPU53は、被検体13の測定値を計測結果記憶部37に記憶させる。
【0072】
ステップS24において、CPU53は、基準値記憶部36に記憶されている、基準となる良品の測定片の測定値と、被検体13の測定値との差分を求める。ステップS25において、CPU53は、ステップS24の手順で求めた差分と、基準値記憶部36に記憶されている閾値とを比較することで、被検体13が腐食しているか否かを判定する。例えば、ステップS25において、CPU53は、ステップS24の手順で求めた差分が閾値を超えている場合、被検体13が腐食していると判定し、ステップS24の手順で求めた差分が閾値以下である場合、被検体13が腐食していないと判定する。ステップS26において、CPU53は、判定の結果を計測結果記憶部37に記憶させ、検査は終了する。
【0073】
以上において、腐食の検出を例に説明したが、同様に、要求される強度、傷、若しくは欠陥の有無、または要求される材質であるか否かなど被検体13の良否を検査することができる。
【0074】
なお、被検体13の測定値と直接比較するための閾値を求めて、その閾値と被検体13の測定値とを比較することで、被検体13が腐食しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0075】
また、ステップS26において、CPU53は、判定の結果をインタフェース38を介して外部に送信するようにしても良く、また、ステップS26の後に、CPU53は、計測結果記憶部37に記憶されている判定の結果をインタフェース38を介して外部に送信するようにしても良い。
【0076】
さらにまた、センサ11を、トロイダル型コイルとすることもできる。
【0077】
次に、図12乃至図17を参照して、トロイダル型コイルのセンサ11の例の詳細を説明する。図12、図13、および図14は、それぞれ、トロイダル型コイルのセンサ11の構成を示す正面図、上面図、および斜視図である。図15は、図12に示される断面Eにおける断面図である。図16は、図15に示される領域Fの断面の拡大図である。
【0078】
トロイダル型コイルのセンサ11は、励磁コイル91、検出コイル92、保護用樹脂材93、コア94、および保護板95からなる。励磁コイル91、検出コイル92、保護用樹脂材93、コア94、および保護板95は、それぞれ、一対の対称の部品が対向するように構成され、図12乃至図14に示される平面Gから、図12または図13中の左右に開閉自在に結合され、被検体13の周を囲むか、被検体13から取り外せるように、巻きほどくことなく被検体13に着脱自在とされている。
【0079】
励磁コイル91は、コア94の2つの半環状の部分のそれぞれの周に巻かれている2つのトロイダル型コイルであって、電気的に接続されているトロイダル型コイルからなる。励磁コイル91は、交流電源31および負荷32に接続され、交流電源31から交流の電圧が印加されて、交流の電流が供給されると、装着されている被検体13の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる。
【0080】
検出コイル92は、コア94の2つの半環状の部分のそれぞれの周に、励磁コイル91と同芯に巻かれている2つのトロイダル型コイルであって、電気的に接続されているトロイダル型コイルからなる。検出コイル92は、励磁コイル91の下層に巻かれる(コア94に検出コイル92が巻かれて、その上に、励磁コイル91が巻かれる)。なお、コア94に励磁コイル91が巻かれて、その上に、検出コイル92が巻かれるようにしてもよい。検出コイル92は、負荷33および負荷34に接続され、励磁コイル91により生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。
【0081】
検出コイル92および励磁コイル91は、銅線やアルミニウム線などからなる巻き線をコア94に巻いた上で、樹脂を含浸させて、その樹脂を熱、紫外線、または硬化剤などにより硬化させて成形される。
【0082】
保護用樹脂材93は、コア94の2つの半環状の部分のそれぞれの側面を覆うように設けられる。保護用樹脂材93は、プラスチックなどの非磁性材料からなり、コア94に検出コイル92の巻き線が巻かれるときに、コア94と検出コイル92の巻き線とが直接接触するのを防止して、コア94と検出コイル92の巻き線の損傷をなくす。
【0083】
コア94は、いわゆる鉄芯であり、対称の2つの半環状の部分からなり、センサ11が被検体13にその周を囲むように装着された場合、2つの半環状の部分からなるコア94の対向する両端が隙間無く接触し、被検体13の周を囲む1つの環状となるように形成されている。コア94は、フェライトやパーマロイ、または鉄材などの損失の少ない高透磁率の素材からなり、励磁コイル91により生じた磁界による磁束を通過させて、これにより、被検体13の内部に、より強い磁界を生じさせる。
【0084】
保護板95は、摩擦抵抗が少なく、摩擦による摩耗の少ない、例えば、ポリカーボネートやエンジニアリングプラスチックなどの樹脂や繊維強化樹脂などの非磁性材料からなる。保護板95は、励磁コイル91から被検体13側に突出し、励磁コイル91が被検体13に接触しないようにする。これにより、金属からなる長尺物である被検体13に対して、センサ11を移動させた場合、被検体13との摩擦による励磁コイル91の損傷が防止される。
【0085】
なお、トロイダル型コイルのセンサ11は、図2乃至図8に示されるサドル型コイルのセンサ11と同様に、蝶番によってコア94を開閉自在とすることで、被検体13に自在に着脱できるようにしてもよく、また、ネジやプレート、またはクリップやベルトなどを用いることにより、被検体13に自在に着脱できるようにしてもよい。
【0086】
図17は、励磁コイル91の巻き線と、コア94と、被検体13の内部の磁束との関係を説明する図である。トロイダル型コイルのセンサ11は、図17中の平面Gから、図17中の左右に開閉自在とされる。図17に示されるように、コア94の対称の2つの半環状の部分のそれぞれに巻かれる、励磁コイル91を構成する2つのトロイダル型コイルのそれぞれは、互いに逆巻きとされる。例えば、図17中の右側のコア94の半環状の部分に巻かれる励磁コイル91を構成するトロイダル型コイルは、被検体13側が手前向きとなり、外側が奥向きとなるように巻かれ、図17中の左側のコア94の半環状の部分に巻かれる励磁コイル91を構成するトロイダル型コイルは、被検体13側が奥向きとなり、外側が手前向きとなるように巻かれる。
【0087】
励磁コイル91に電流が流れると、励磁コイル91は、被検体13の長さ方向に対して略垂直方向に密度均一の磁界、いわゆるピンクッション磁界(均一磁界)を生じさせるので、被検体13の内部には、この磁界に応じた磁束が生じることになる。励磁コイル91においては、被検体13側の巻き線であって、同じ向きに巻かれた巻き線の間に、被検体13の内部を通る磁束を生じさせる磁界が生じる。
【0088】
検出コイル92は、励磁コイル91と同芯にコア94に巻かれるので、この磁束の変化に応じた電圧を生じさせる。
【0089】
このように、トロイダル型コイルのセンサ11が被検体13にその周を囲むように装着された場合、コア94が被検体13の周を囲む1つの環状となり、励磁コイル91と検出コイル92がコア94に同芯に巻かれるので、被検体13の内部により強い磁界を生成し、感度をより良くすることができるようになる。
【0090】
コア94の対称の2つの半環状の部分のそれぞれに、励磁コイル91を構成する2つのトロイダル型コイルのそれぞれが巻かれ、また、検出コイル92を構成する2つのトロイダル型コイルのそれぞれが巻かれ、コア94の対称の2つの半環状の部分が開閉自在とされる。従って、トロイダル型コイルのセンサ11は、被検体13の周を囲むか、被検体13から取り外せるように、巻きほどくことなく被検体13に自在に着脱できる。
【0091】
以上のように、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせて、被検体の電磁気特性を検出することができる。また、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせるので、被検体がワイヤーロープなどであり、端部において金属製のスリーブなどによりかしめられている場合であっても、スリーブによる電磁気的な影響を受けることがなく、スリーブに近接している部位についても正確に良否を判定することができる。
【0092】
なお、センサ11には、交流の電圧に限らず、ステップ状の電圧、パルス状の電圧など、所望の過渡的な電圧を印加するようにしてもよい。さらに、電圧値や電流値に統計的な処理を適用したり、周波数分析を適用したりすることにより、被検体13の良否を判定するようにしてもよい。
【0093】
このように、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとを設けるようにした場合には、被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出することができる。また、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとを設け、被検体の周を囲むか、被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく被検体に着脱自在とするようにした場合には、より効率的に、より正確に被検体の良否を判定するための電磁気特性を検出することができる。
【0094】
また、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなるセンサを、被検体の周を囲むように装着し、励磁コイルに磁界を生じさせるための電流を供給し、励磁コイルおよび検出コイルの電流値を用いて、被検体の良否を判定するようにした場合には、被検体の良否を判定することができる。また、被検体の内部に、被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、励磁コイルにより生じた磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなり、巻きほどくことなく被検体に着脱自在とされているセンサを、被検体の周を囲むように装着し、励磁コイルに磁界を生じさせるための電流を供給し、励磁コイルおよび検出コイルの電流値を用いて、被検体の良否を判定するようにした場合には、より効率的に、より正確に被検体の良否を判定することができる。
【0095】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
11 センサ, 12 測定部, 31 交流電源, 32 負荷, 33 負荷, 34 負荷, 35 判定部, 36 基準値記憶部, 37 測定結果記憶部, 38 インタフェース, 51 リミッタ, 52 アナログデジタル変換器, 53 CPU, 71 励磁コイル, 72 検出コイル, 73 コア, 74 蝶番, 75 保護板, 91 励磁コイル, 92 検出コイル, 93 保護用樹脂材, 94 コア, 95 保護板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる長尺物である被検体の検査に用いるセンサにおいて、
前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、
前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルと
を備え、
前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされている
センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記励磁コイルが対向するサドル型コイルからなり、
前記検出コイルが対向するサドル型コイルからなり、
前記被検体の周を囲む様に前記被検体に装着された場合、前記検出コイルが、前記励磁コイルと前記被検体との間に配置される
センサ。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルが、1つのコアに巻かれたトロイダル型コイルであり、
前記コアが、分割可能とされている
センサ。
【請求項4】
金属からなる長尺物である被検体を検査する検査装置において、
前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなるセンサであって、前記被検体の周を囲むか、前記被検体から取り外せるように、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサと、
前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給する電源と、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定する判定手段と
を備える検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置において、
前記被検体に対応する良品についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値、および前記被検体の良否を判定するための閾値を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記記憶手段に記憶されている、前記被検体に対応する良品についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの前記電流値並びに前記閾値と、前記被検体についての前記励磁コイルおよび前記検出コイルの前記電流値とから、前記被検体の良否を判定する
検査装置。
【請求項6】
金属からなる長尺物である被検体を検査する検査方法において、
前記被検体の内部に、前記被検体の長さ方向に対して略垂直の磁界を生じさせる励磁コイルと、前記励磁コイルにより生じた前記磁界による磁束の変化に応じた電圧を生じさせる検出コイルとからなり、巻きほどくことなく前記被検体に着脱自在とされているセンサを、前記被検体の周を囲むように装着し、
前記励磁コイルに前記磁界を生じさせるための電流を供給し、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルの電流値を用いて、前記被検体の良否を判定する
ステップを含む検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−203092(P2011−203092A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70219(P2010−70219)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(310002950)有限会社ニフティ (1)
【出願人】(310002961)日本ユニバーサル電気株式会社 (1)
【出願人】(310006257)
【Fターム(参考)】