説明

センサシステム

【課題】センサユニットに対するパラメータの設定を簡易に、しかも再現性良く行うことのできるセンサシステムを提供する。
【解決手段】1つまたは複数のセンサユニットに電気的に接続されて各センサユニットの動作条件をそれぞれ設定するマスタユニットに、各センサユニットにそれぞれ設定した動作条件を各センサユニットに対応付けて記憶するマスタメモリを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数のセンサユニットをマスタユニットに接続して構築され、マスタユットから各センサユニットの動作条件を設定するようにしたセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
連装型センサシステムは、1つまたは複数のセンサユニットをマスタユニットにデイジーチェーン接続して構築され、マスタユットから各センサユニットの動作条件を決定する各種パラメータをそれぞれ設定し、また各センサユニットにて検出されたセンシング情報をマスタユニットにて収集するように構成される。ちなみに上記マスタユニットおよびセンサユニットは、例えば規格化された箱形の筐体における相対向する両側面に対をなす雄型コネクタおよび雌型コネクタをそれぞれ備え、DINレール等の基台上に並べて装着される。そして隣接するユニット間において前記コネクタを順に連結して、或いは中継ケーブルにより前記コネクタ間を電気的に結合することで、前記マスタユニットから各センサユニットに対して電源供給すると共に、前記マスタユニットと各センサユニットとの間で情報通信し得るように構築される(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
尚、前記センサユニットは、例えば光電センサや近接センサ、圧力センサ等からなり、連装型センサシステムは、そのシステム仕様に応じた種別のセンサユニットを必要個数用いて構築される。
【特許文献1】特開2000−29409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前述した各センサユニットにおける、例えば検出感度や計測レンジ等の動作条件を決定する各種のパラメータは、一般的にはその設置時は勿論のこと、定期的なメンテナンス時に前記マスタユニットから指示に従って個々に調整・設定され、各センサユニットが備える不揮発性メモリに記録されて用いられる。そして各センサユニットは、上記メモリに記憶したパラメータの下でセンシング動作して、そのセンシング結果を前記マスタユニットに対して出力する。
【0005】
ところで故障に伴うセンシングユニットの交換時や、既存機器の増設時等においては、前述したパラメータを再設定することが必要である。しかも個々のセンシングユニット毎にパラメータを設定することが必要であり、多大な時間と労力を必要とする。ちなみに同種の複数のセンサユニットに対して一括して同じパラメータを設定する機能や、パラメータをコピーする機能を備えたセンシングユニットも提唱されている。しかし個々のセンシングユニット毎に異なるパラメータを設定して運用されるシステムにおいては、上述した機能を活用することができないと言う問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、センシングユニットを交換したり、センシングユニットを一時的に取り外してメンテナンスを行うような場合であっても、センシングユニットに対するパラメータの設定を簡易に、しかも再現性良く行うことのできるセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するべく本発明に係るセンサシステムは、1つまたは複数のセンサユニットと、個々のセンサユニットに電気的に接続されて各センサユニットの動作条件をそれぞれ設定するマスタユニットとを備えて構築されるものであって、
前記各センサユニットに、前記マスタユニットから与えられた動作条件を記憶するメモリと、該メモリに記憶した動作条件に従ってセンシング動作を制御する制御手段とをそれぞれ設けると共に、前記マスタユニットに、前記各センサユニットにそれぞれ設定した動作条件を前記各センサユニットに対応付けて記憶するマスタメモリを設けたことを特徴としている。
【0008】
ちなみに前記複数のセンサユニットは、前記マスタユニットにデイジーチェーン接続されて連装型センサシステムを構築する。また前記マスタメモリについては、前記マスタユニットに着脱自在に装着されるメモリカードやUSBメモリ等の外部メモリであっても良い。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のセンサシステムによれば、複数のセンサユニットのそれぞれに設定したパラメータを、マスタユニットが備えるマスタメモリに各センサユニットに対応付けて記憶しているので、例えば故障により特定のセンサユニットを交換した場合であっても、そのセンサユニットに設定すべきパラメータを前記マスタユニットから求め、これを当該センサユニットに設定することができる。従って再現性良くセンサユニットの動作条件を設定することができる。
【0010】
またマスタメモリを、マスタユニットに着脱自在に装着されるメモリカードやUSBメモリ等の外部メモリとして実現すれば、上記マスタメモリの移動だけで、例えば汎用のパーソナルコンピュータを用いて各センサユニットに対してそれぞれ設定するパラメータを一括して管理することも容易となる等の効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るセンサシステムについて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るセンサシステムの概略構成図であり、10はマスタユニット、20,30,40は上記マスタユニット10にデイジーチェーン接続されたセンサユニットである。これらのセンサユニット20,30,40については、ここでは光電センサ、近接センサ、圧力センサをそれぞれ備えてたものとして示すが、システム仕様に応じたものであれば良く、またその数も特に限定されない。そして本システムが特徴とするところは、特に前記マスタユニット10が前記各センサユニット20,30,40にそれぞれ設定したパラメータを、各センサユニット20,30,40に対応付けて記憶するマスタメモリ18を備えている点にある。このマスタメモリ18については後述する。
【0012】
具体的には前記マスタユニット10は、基本的には図2に示すように、CPUを主体として構成されて前記センサユニット20(30,40)に対して各種の制御信号を与えたり、パラメータの設定等を行うマスタ主制御手段11と、センサユニット20(30,40)から通知されるセンシング情報を受信するマスタ通信制御手段12とを備える。またマスタユニット10には、センサユニット20(30,40)の選択指定や、選択指定したセンサユニット20(30,40)に対する動作モードの設定、およびパラメータの設定等を行う操作部13が設けられ、また上述した如く選択指定したセンサユニット20(30,40)を示すユニット番号、指定した動作モードの種別、更にはセンサユニット20(30,40)から取得したセンシング情報等の表示を行う表示部14が設けられる。更にマスタユニット10は、外部機器とのインターフェースを司る出力回路15や前記センサユニット20(30,40)に対して電源供給を行う電源部16を備える。
【0013】
尚、前記表示部14は、例えばLED表示素子によって構成される。具体的には前記表示部14は、選択指定したセンサユニット20(30,40)のユニット番号を表示するセンサ選択表示部14a、選択指定したセンサユニット20(30,40)によるセンシング情報(例えば受光量)をデジタル表示するレベル表示部14b、更には選択指定したセンサユニット20(30,40)に対して設定した動作モード(例えばRUN/SET/SFT)を表示するモード表示部14cを備えている。
【0014】
また前記操作部13は、例えば2つのスイッチ13a,13bを備える。これらのスイッチ13a,13bは、押圧によって選択したり、その内容を確定したりする機能を有する押し釦スイッチ、或いはダイヤル型のプリセットスイッチ等からなる。ちなみに前記スイッチ13aはセンサユニット選択手段として用いられ、またスイッチ13bは検出感度等のパラメータ設定操作手段として用いられる。
【0015】
一方、前記各センサユニット20(30,40)、代表的には光電センサユニット20は、図2にその概略構成を示すように、基本的にはCPUを主体としてセンサユニット20の動作を制御するセンサ主制御手段21と、センシング信号(センシング結果)を前記マスタユニット10に送信するセンサ通信制御手段22と、センシングの動作条件を規定する各種のパラメータを記憶するメモリ23とを備える。特にこの光電センサユニット20は、検出対象部位における物体の有無を光を用いて検出する光電センサとしての投受光部24と、この投受光部24の出力を遮光時に「物体あり」とするか(ダークオン;DO)、或いは入光時に「物体あり」とするか(ライトオン;LO)を選択的に切り替える切替部25を備える。
【0016】
尚、図中26は前記マスタユニット10からの電源供給を受けてセンサユニット20を駆動する電源部である。そして前記センサ主制御手段21は、前記マスタユニット10からの指示の下で動作条件の設定モードを設定し、前述したマスタユニット10におけるスイッチ13bの操作に応じて検出感度等の各種のパラメータを設定、若しくは変更する。そして前記センサ主制御手段21は、設定した(変更された)パラメータを前記メモリ23に記憶し、稼働時(RUN)には前記メモリ23に記憶したパラメータに従って動作条件を規定して前記投受光部24を駆動し、センシング動作する。
【0017】
本発明に係るセンサシステムは、基本的には上述した如く構成されるマスタユニット10とセンサユニット20(30,40)とを接続して構成される。そして特に前記マスタユニット10にマスタメモリ18を設け、前記マスタユニット10が前記各センサユニット20,30,40にそれぞれ設定したパラメータを、各センサユニット20,30,40に対応付けて前記マスタメモリ18にそれぞれ記憶して、これらのパラメータを一括管理し得るように構成したことを特徴としている。
【0018】
即ち、このマスタメモリ18は、マスタユニット10から各センサユニット20(30,40)を選択指定し、その動作条件をそれぞれ規定する、例えば検出感度や判定閾値等を規定するパラメータを設定したとき、パラメータの種別と共に設定したパラメータの値を上記選択指定したセンサユニット20(30,40)のユニット番号に対応付けて記憶する役割を担う。この際、設定したパラメータにタイムスタンプを付すことによって、そのパラメータが何時設定されたものであるかを管理することも好ましい。
【0019】
このようなマスタメモリ18を備えたマスタユニット10にセンサユニット20(30,40)を接続して構成されるセンサシステムによれば、例えば故障したセンサユニットを取り替える場合であっても、そのセンサユニットに設定すべきパラメータを前記マスタメモリ18から取得することができるので、そのセンサユニットに対する動作条件の設定(パラメータの設定)を簡易に行うことができる。特に他のセンサユニットの動作条件に合わせてパラメータの設定を行う必要がある場合でも、前記マスタメモリ18から取得したパラメータを用いてその設定を簡易に行うことができる。
【0020】
またセンサシステム全体の動作条件を監視する場合であっても、従来のように個々のセンサユニットの動作条件を調べることなく、それらの動作条件(パラメータ)を前記マスタメモリ18から一括して求めることができるので、その状況把握が容易である。特に複数のセンサユニットの動作条件を個々に調べる必要がないので、短時間に効率的にその作業を進めることができる。
【0021】
ところで前記マスタメモリ18を、例えば図3に示すようにマスタユニット10に対して外部から装脱自在な、例えばメモリカードやUSBメモリ等の外部メモリ18aとして実現することも好ましい。このようなメモリカード類およびそれらを機器に着脱するための接続機構は既に一般市販されているので、その説明については省略する。マスタメモリ18としてこのような外部メモリ18aを用いれば、これを汎用のパーソナルコンピュータ(PC)50に装着して前記センサシステムの動作条件を容易に管理することが可能となる。
【0022】
また逆にパーソナルコンピュータ(PC)50を用いてセンサシステムの動作条件をシミュレートし、そのシミュレート結果に従って前記センサユニットにそれぞれ設定すべきパラメータを設定、或いは修正し、これを前記外部メモリ18a(マスタメモリ18)からマスタユニット10に取り込むことも可能となる。そしてこの外部メモリ18a(マスタメモリ18)に記憶されたパラメータを用いて前記各センサユニットの動作条件をそれぞれ設定すれば、つまり外部メモリ18a(マスタメモリ18)に記憶されたパラメータを各センサユニット20(30,40)のメモリ23に転送すれば、各センサユニットの動作条件を簡易に調整することが可能となる。従ってセンサシステムの運用(動作)管理と、そのメンテナンスを簡易に、しかも効率的に行うことが可能となる。
【0023】
本発明の別の実施形態として、例えば図4に示すようにセンサユニット60自体が、独立してその動作条件を設定し得るマスタユニットとしての機能を備えて構成されることがある。この場合には、図5に示すように複数のセンサユニット60a,60b,60cを順次直列に接続し、これらの中の1つをマスタユニットとして機能させると共に、このマスタユニットにて他のセンサユニット60の動作条件を一括して管理するように構成することも可能である。或いは各センサユニット60がそれぞれ備えるマスタメモリ18に、自己の動作条件と共に他のセンサユニット60の動作条件をそれぞれ記憶することで、システム全体の動作条件を複数のセンサユニット60において並列に多重管理するように構成しても良い。
【0024】
このような構成のセンサシステムによれば、センサユニット60を単独で用いる場合には勿論のこと、複数のセンサユニット60を連結して用いる場合でも、或るセンサユニット60のマスタメモリ18の内容を調べるだけでシステム全体に亘る複数のセンサユニット60の動作条件を容易に把握することが可能となる。そして特定のセンサユニット60を交換した場合であっても、交換したセンサユニット60に設定すべきパラメータを他のセンサユニット60のマスタメモリ18から容易に求めることが可能となる。
【0025】
或いは故障したセンサユニット60からメモリカード(即ち、マスタメモリ18)を取り外し、このメモリカードを新たなセンサユニット60に装着することで、故障したセンサユニット60が保有していた情報を新たなセンサユニット60に与えることができる。従ってこの場合であっても、各センサユニット60に対するパラメータの設定を簡易に、しかも再現性良く行うことができる。また先述の実施形態ではマスタユニット10とセンサユニット20とを異なる機器として生産する必要があるのに対し、後述の実施形態によればセンサユニット60aという単一種類の機器のみを生産すれば事足りるという利点を有する。
【0026】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えばセンサシステムに組み込むセンサユニットの種別とその数は、システム仕様に応じて定めれば良いものであり、複数の光電センサユニットだけを用いてシステムを構築することも勿論可能である。またマスタユニット10と各センサユニット20(30,40)との間の接続形態も特に限定されず、情報の通信形態も種々変形可能である。要は本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサシステムの概略構成図。
【図2】センサシステムにおけるマスタユニットとセンサユニットの構成例を示す図。
【図3】本発明の別の実施形態に係るセンサシステムの概略構成図。
【図4】センサユニットの別の構成例を示す図。
【図5】図4に示すセンサユニットを複数個用いて構成される本発明の更に別の実施形態を示すセンサシステムの概略構成図。
【符号の説明】
【0028】
10 マスタユニット
18 マスタメモリ
20,30,40 センサユニット
60 センサユニット(マスタユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のセンサユニットと、個々のセンサユニットに電気的に接続されて各センサユニットの動作条件をそれぞれ設定するマスタユニットとからなり、
前記各センサユニットは、前記マスタユニットから与えられた動作条件を記憶するメモリと、該メモリに記憶した動作条件に従ってセンシング動作を制御する制御手段とをそれぞれ備え、
前記マスタユニットは、前記各センサユニットにそれぞれ設定した動作条件を前記各センサユニットに対応付けて記憶するマスタメモリを備えることを特徴とするセンサシステム。
【請求項2】
前記複数のセンサユニットは、前記マスタユニットにデイジーチェーン接続されて連装型センサシステムを構築するものである請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記マスタメモリは、前記マスタユニットに着脱自在に装着される外部メモリである請求項1に記載のセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−222400(P2009−222400A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64118(P2008−64118)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】