センサチップ及びその使用方法
【課題】複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に精度よく行う。
【解決手段】センサチップ100は、光透過性の外装袋10と、外装袋10の内部に設けられる複数の反応室11A,11Bと、反応室11A,11Bに接続されると共に反応室11A,11Bに対して被検液を導入する複数の第1の誘導路14A,14Bと、誘導路14A,14Bとが互いに合流する第1の誘導路14Cと、誘導路14Cに接続して被検液を導入する導入部13と、反応室11A,11Bに対してそれぞれ接続する第2の誘導路16A,16Bと、これらが互いに合流する第2の誘導路16Cと、誘導路16Cに接続し被検液を吸引する吸引部を構成する空隙部17と、を備える。異なる反応室11A,11Bに接続する第1の誘導路の長さの和L1及び和L2が互いに異なり、複数の反応室11A,11Bの内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持される。
【解決手段】センサチップ100は、光透過性の外装袋10と、外装袋10の内部に設けられる複数の反応室11A,11Bと、反応室11A,11Bに接続されると共に反応室11A,11Bに対して被検液を導入する複数の第1の誘導路14A,14Bと、誘導路14A,14Bとが互いに合流する第1の誘導路14Cと、誘導路14Cに接続して被検液を導入する導入部13と、反応室11A,11Bに対してそれぞれ接続する第2の誘導路16A,16Bと、これらが互いに合流する第2の誘導路16Cと、誘導路16Cに接続し被検液を吸引する吸引部を構成する空隙部17と、を備える。異なる反応室11A,11Bに接続する第1の誘導路の長さの和L1及び和L2が互いに異なり、複数の反応室11A,11Bの内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップ及びこのセンサチップの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検液の特性を評価する方法として、被検液と検査試薬とを接触させることにより反応させ、その反応結果から特性を評価する方法が従来から用いられている。被検液が例えば人体の唾液である場合、最も簡易な方法として検査試薬を付着させた試験紙を口腔内に入れて被検液と検査試薬とを接触させることが考えられる。しかし、この方法によれば、口腔内で試験紙から検査試薬が溶け出すことにより検査試薬が体内に取り込まれる恐れがある。そのため、より簡易且つ安全に口腔内の唾液の特性を評価するための測定器具についての検討が種々行われている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−184142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、唾液を被検液としてその特性を評価することにより口腔内の健康状態を評価する場合、複数種類の検査試薬を用いて測定を行い、その結果を総合的に判断することが多い。このとき、評価に用いられる検査試薬は、その反応時間が互いに異なるものが組み合わせられて用いられることがある。しかしながら、特許文献1記載の測定器具により複数種類の検査試薬を用いた測定を行った場合、検査試薬が担持された領域に被検液が到達する時間は同じになると考えられる。また、検査試薬には、反応時間を超過すると例えば退色が発生する等の理由により反応結果を正しく評価できないものもある。このため、反応時間が異なる検査試薬による反応をより正確に評価するためには、反応時間が経過する毎に反応結果を確認する必要があり作業量が増大するという問題がある一方、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認しようとすると、その結果を正確に評価できないという問題があった。
【0004】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に精度よく行うことができるセンサチップ及びこのセンサチップの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るセンサチップは、外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋は、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有し、前記複数の第1の誘導路は、その長さが互いに異なり、前記複数の反応室の内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持されることを特徴とする。
【0006】
上記のセンサチップによれば、吸引部が吸引することにより、被検液が導入部から導入され、第1の誘導路を介して検査試薬が保持される複数の反応室へ送られ、複数の反応室において検査試薬と被検液とが反応する。ここで、被検液を導入する導入部と検査試薬が保持される複数の反応室とを接続する複数の第1の誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部に導入された被検液が反応室に到達するまでの所要時間が反応室毎に異なる。したがって、反応時間が互いに異なる検査試薬を用いた測定を行う場合、反応時間が長い検査試薬を例えば第1の誘導路の長さが短い反応室に保持させ、反応時間が短い検査試薬を第1の誘導路の長さが長い反応室に保持させることで、被検液と各検査試薬との反応が完了する時間を近付けることができる。このため、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に精度よく行うことができる。
【0007】
ここで、前記複数の第1の誘導路は、その径が互いに異なることが好ましい。このように、第1の誘導路の径が互いに異なることで、被検液の複数の反応室への到達時間を調整することが容易になり、複数種類の検査試薬による反応が完了する時刻をより近付けることができるため、より高い精度での被検液の評価を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係るセンサチップは、前記導入部は、前記外装袋により密封され、使用時に開封される構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、外装袋内の反応室内に保持される検査試薬が、外気と接触することにより例えば酸化等によって劣化することを防止することができ、被検液の評価をより正確に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係るセンサチップは、前記複数の反応室には、繊維体が充填されていることが好ましい。繊維体が反応室に充填されることで、反応室内の繊維体に含まれる繊維同士によって微小空間が形成され、この微小空間に被検液が保持されることにより、マイクロセルが構成される。したがって、このマイクロセルを介して繊維体を透過する光を増やすことができ、光学系を用いた被検液の評価をより精度よく行うことができる。
【0010】
また、本発明に係るセンサチップは、その検査試薬は、前記繊維体に担持されることが好ましい。検査試薬が繊維体に担持され、この繊維体に被検液が保持されることによって、繊維体の繊維により形成されるマイクロセル中において検査試薬と被検液とが適度に分散されて反応するため、測定箇所によってのバラつきを低減させ、より被検液の評価をより高い精度で行うことができる。
【0011】
さらに、本発明に係るセンサチップでは、前記複数の第2の誘導路は、前記複数の反応室と前記吸引部との間で互いに合流する態様とすることができる。第2の誘導路を反応室と吸引部との間で互いに合流する態様とすることで、複数の誘導路に対する吸引部による吸引力を平均化することができる。したがって、複数の反応室における反応時間の完了時刻の調整をより精度よく行うことができる。
【0012】
ここで、本発明の効果を奏する構成としては、具体的には、前記吸引部は、前記外装袋により密封された空間を有し、使用時にその体積が増大されることにより、前記被検液を吸引する態様が挙げられる。
【0013】
また、本発明の効果を奏する他の構成としては、具体的には、前記吸引部はポンプ機構を備え、使用時に前記ポンプ機構が動作することにより前記被検液を吸引する態様とすることもできる。
【0014】
前記複数の反応室に含まれる一の反応室に対して接続する前記第2の誘導路の径は、前記一の反応室に対して接続する第1の誘導路の径よりも小さい態様とすることができる。この場合、第1の誘導路と第2の誘導路のうち、第2の誘導路の径を第1の誘導路よりも小さくすることにより、吸引部の吸引による引圧を高めることができ、被検液の吸引をよりスムーズに行うことができる。
【0015】
なお、本発明はセンサチップの使用方法に係る発明として記載することもできる。すなわち、本発明に係るセンサチップの使用方法は、光透過性の外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋において、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有するセンサチップを用い、前記外装袋の前記導入部を開封して前記導入部に被検液を接触させ、前記吸引部により前記被検液を吸引することにより前記被検液を前記複数の反応室に導入することによって前記被検液を前記検査試薬と反応させる前記センサチップの使用方法であって、前記導入部に前記被検液を接触させてから、前記被検液を前記反応室に導入するまでの時間を、前記複数の反応室によってそれぞれ異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に行うことができるセンサチップ及びこのセンサチップの使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
<センサチップ>
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサチップ100の正面図、図2(A)は、図1のIIA−IIA矢視図、図2(B)は、図1のIIB−IIB矢視図、図3は、センサチップ100の使用方法を説明する図、図4は、図1の分解斜視図、図5は、本実施形態のセンサチップ100の変形例であるセンサチップ101の分解斜視図である。まず、これらの図面を用いて、本発明の第1実施形態に係るセンサチップについて説明する。
【0019】
本実施形態に係るセンサチップ100は、図1及び図2に示すように、光透過性の外装袋10と、外装袋10の内部に設けられた複数の反応室11A及び11Bと、反応室11A及び11Bにそれぞれ収容された繊維体12A及び12Bを備える。さらに、反応室11A及び11Bに対しては、それぞれ被検液を導入するための第1の誘導路である誘導路14A及び14Bが接続され、この誘導路14Aと14Bとが合流した誘導路(第1の誘導路)14Cがさらに接続される。そして、誘導路14Cに対して導入部13がフィルタ15を介して接続される。また、反応室11A及び11Bを基準として、誘導路14A及び14Bとは反対の位置(図1の下部)には、第2の誘導路である誘導路16A及び16Bがそれぞれ接続され、さらにこの16Aと16Bとはその下部の誘導路(第2の誘導路)16Cで合流する。そして誘導路16Cに接続して吸引部を構成する空隙部17と、この空隙部17とセンサチップ100の外部とをフィルタ20を介して接続する吸引口18と挿入口19とが設けられる。
【0020】
上記のような構成を有するセンサチップ100の繊維体12A及び12Bに測定の対象となる被検液を付着させて後述の液性測定装置に保持させ、この被検液が付着された繊維体12A及び12Bに対して、それぞれ測定光を照射することにより、この被検液の測定を行う。センサチップ100は、取扱い性、少量の被検液であっても測定できること、精度よく測定することなどを考慮して、矩形のシート状であることが好ましい。また、センサチップ100の大きさは特に限定されないが、取扱い性が高いことが好ましく、例えば、厚み:0.1mm〜5.0mm、長辺長さ:5mm〜150mm、短辺長さ:5mm〜100mmとすると好適である。
【0021】
外装袋10のうち、反応室11Aに接する領域には、光透過性の入射部10A1及び出射部10A2が設けられる。入射部10A1は、反応室11Aに対して光を入射させる光透過性の領域であり、出射部10A2は、反応室11Aから光を出射させる光透過性の領域である。これらの領域を設けることにより、被検液を付着させて反応室内11Aに保持される繊維体12Aに対して測定光を照射することができると共に、測定光を被検液に対して照射することにより被検液から出射される光(透過光又は反射光)を外部に出射させることができる。また、反応室11Bに接する領域に対しても、光透過性の入射部10B1及び出射部10B2が設けられる。
【0022】
上記の入射部及び出射部の配置は、液性の測定に用いられる光の種類によって適宜変更される。例えば、被検液から出射される透過光を液性の測定に用いる場合には、図2(A)に示すように、入射部10A1及び出射部10A2は繊維体12Aが収容された反応室11Aに対して対向する位置に設けられる。また、被検液から出射される反射光を液性の測定に用いる場合には、入射部10A1は出射部10A2を兼ねて繊維体12Aが収容された反応室11Aに対して一方の面に配置することができる。また、入射部10A1,10B1及び出射部10A2,10B2の大きさは、液性の測定に用いられる光の入射口径や液性測定装置の受光能力等に応じて適宜変更することができる。
【0023】
外装袋10のうち、上述の反応室11A,11bに接する領域に設けられる入射部10A1,10B1及び出射部10A2,10B2は、溶液測定時に照射する測定光の波長における光透過率が70%以上であることが好ましい。光透過率が上記の範囲にある材料を外装袋10の入射部及び出射部として用いることで、繊維体12A及び12Bに付着した被検液に好適に測定光を照射することができると同時に、繊維体12A及び12Bを透過した光の光量を減衰させることなくセンサチップ100から出射させることができる。
【0024】
上記の外装袋10としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン(登録商標)などのラミネートフィルムから形成されるものや、ガラスが挙げられるが、pHの安定性及び精度の点から、被検液に対して耐性を有している材料を選択することが好ましい。また、外装袋10を構成する際の熱融着による白化等により光透過性が低下しない材料を選択することが測定精度の点から好ましい。なお、上記の材料から複数種類を選択して外装袋10を構成してもよい。例えば、繊維体12A,12Bの一方の面のみにガラス板を用いて、センサチップ100の強度を保つような構造にすることもできる。また、外装袋10の外側に、ガスバリア防止性膜等を備える構造としてもよい。なお、本実施形態に係る外装袋10はその全体が光透過性であるが、外装袋10のうち入射部及び出射部となる領域のみを光透過性とし、その他の領域は非透過性とすることもできる。
【0025】
次に、センサチップ100の内部に設けられる反応室11A,11B内に配置される繊維体12A,12Bについて説明する。繊維体12A,12Bとしては、JIS P8140に準じて測定した吸水度が6.0cm〜30.0cm(さらに好ましくは7.0〜20.0cm)であることが好ましい。吸水度が上記の範囲であることにより、例えば唾液のように粘性のある被検液について測定を行う場合であっても、繊維体12A,12Bに被検液を好適に付着させることができる。吸水度は、具体的には、幅15±1mm、長さが200mm以上の試験片を準備し、その下端を23±1℃の水の中に鉛直に10分間浸漬させたときに、試験片の毛細管現象により水が上昇した高さにより測定される。
【0026】
また、繊維体12A,12Bの繊維径は、0.001μm〜500μm(さらに好ましくは0.01μm〜100μm)であることが好ましく、空隙率が20%〜99%(さらに好ましくは50%〜99%)であることが好ましい。繊維径及び空隙部が上記の範囲である場合、繊維体12A,12Bの内部に被検液が良好に付着されるため、測定結果の精度を高めることができる。空隙率は、具体的には、ポロシーメーターを用いて繊維体からなる試料の細孔への水銀侵入量を検出することにより測定される。
【0027】
繊維体12A,12Bに好適に用いられる材料としては、例えば、ろ紙、メンブレン、ろ過板、ガラス繊維が混在するろ紙などが挙げられる。これらのうち、ろ紙は、pH0〜12の範囲で安定であるとともに、優れた吸水性を有していることから好ましく使用できる。繊維体12A,12Bとしてろ紙を使用することにより、被検液を付着させた繊維体12A,12Bが適度な光透過性を示すようになるとともに、繊維体12A,12Bの吸水性が向上すると共に、検査試薬と被検液との反応の安定性が向上するため、検査試薬による反応の結果を精度よく測定することが可能となる。また、繊維体12A,12Bとしてメンブレンを用いる場合には、メンブレンの材料としてセルロース系(ニトロセルロースなど)が好適に用いられる。
【0028】
繊維体12A,12Bが収容される反応室11A,11Bは、センサチップ100の使用時に被検液を導入する導入部13と、フィルタ15を介して第1の誘導路14A,14B,14Cにより接続される。導入部13は図1に示すように、使用前は密封されており、使用時にはC−C線で示される部分でセンサチップ100をへき開することにより開封され、被検液を導入させることができる。この導入部13と第1の誘導路14Cとの間に設けられるフィルタ15は、被検液に含まれる異物の除去を目的としたものであり、例えば繊維フィルタやディスクフィルタ等が好適に用いられる。また、被検液がタンパク質を含むものである場合、検査試薬との吸着反応を回避する目的からフィルタ15をタンパク質除去フィルタとすることが好ましい。
【0029】
誘導路14A,14B,14Cは、導入部13からセンサチップ100内に導入された被検液を反応室11A,11Bに対して導入するものである。より具体的には、第1の誘導路は、導入部13と接続させる誘導路14Cと、誘導路14Cから反応室11Aと反応室11Bとにそれぞれ接続する誘導路14A及び誘導路14Bから構成される。ここで、フィルタ15と反応室11Aとを接続する誘導路14C及び誘導路14Aとの長さの和L1と、フィルタ15と反応室11Bとを接続する誘導路14C及び誘導路14Bとの長さの和L2と、を比較すると、和L2が和L1に対して長い。すなわち、導入部13から導入されフィルタ15を経た被検液が各反応室に到達するために流れる誘導路の長さは、反応室11B側のほうが反応室11A側よりも長く、被検液の送液速度が誘導路において均一である場合には、反応室11Bへの到達時間が反応室11Aへの到達時間より遅くなる。
【0030】
反応室11A,11Bには、それぞれ第2の誘導路である誘導路16A,16Bが接続する。さらに、誘導路16A,16Bを合流させる誘導路16Cが設けられる。この誘導路16A,16B,16Cは、反応室11A,11Bに導入された被検液を排出するための誘導路として用いられる。また、誘導路16Cに接続して設けられる空隙部17は、誘導路16Cから排出された被検液が貯溜される。さらに、空隙部17とセンサチップ100の外部とを接続する構成として、フィルタ20を介して接続する吸引口18と挿入口19とが設けられる。このフィルタ20は、例えば、ろ紙等からなり、誘導路16Cから空隙部17内に排出された被検液が外部に排出されることを防止する機能を備える。
【0031】
ここで、センサチップ100の内部に被検液を導入する具体的な方法について説明する。図3は、本実施形態に係るセンサチップ100の使用方法を説明する概略構成図である。まず、センサチップ100の導入部13の上部を、図1のC−C線でへき開することにより、導入部13を開封する。そして開封された導入部13に被検液を接触させる。ここで、挿入口19からシリンジ21の先端を挿入し、可動式のピストン等により吸引動作を行うことにより、空隙部17が引圧となり、この結果、被検液が導入部13からフィルタ15を介して誘導路14Cへ導入される。さらに、誘導路14Cから誘導路14A及び誘導路14Bに分岐して導入され、反応室11A及び11Bに導入される。そして、反応室11A及び11Bから引圧により排出された被検液は、それぞれ誘導路16A,16Bを経て誘導路16Cで合流し、空隙部17へ排出される。
【0032】
なお、このセンサチップ100では、誘導路16Cの径が、誘導路14Cの径に対して小さい。このため、吸引動作による引圧効果をより高めることができ、被検液の導入をよりスムーズに行うことができる。
【0033】
次に、センサチップ100の反応室11A,11Bに収容される繊維体12A,12Bに担持される検査試薬について説明する。繊維体12A,12B上に坦持される検査試薬としては、pH指示薬、発色試薬、及び被検液の蛍光強度測定を行うための修飾物質等が好適に用いられる。
【0034】
本実施形態において好適に用いられるpH指示薬としては、例えば、表1〜4に示されるpH指示薬1〜70が挙げられる。また、表1〜4には、各pH指示薬1〜70のpH指示薬水溶液の吸収ピークの波長を併せて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
また、被検液が例えば唾液である場合には、虫歯原因菌であるストレプトコッカスミュータンス菌(Sm菌)、ストレプトコッカスソブリヌス菌(Ss菌)及びラクトバチルスアシドフィリウス菌(La菌)からなる群から選ばれる菌の濃度を測定する検査指示薬として被検液の発色を測定するための修飾物質を用いることができる。より具体的には発色試薬としては、表5に示される発色試薬71〜78が挙げられる。これらの発色試薬71〜78は、被検液である唾液に含まれる虫歯原因菌との間で結合反応が進むと、特定の波長の光を吸収するという特徴を示す。表5には、各発色試薬71〜78が溶解した水溶液の吸収ピークの波長を併せて示す。
【0040】
【表5】
【0041】
さらに、検査試薬として被検液の蛍光強度を測定するための修飾物質を用いることもできる。本実施形態において好適に用いられる修飾物質としては、例えば表6〜表8に示される修飾物質1〜65が挙げられる。このうち、表6は、蛍光試薬からなる修飾物質1〜25を示す表であり、表7は、蛍光蛋白質からなる修飾物質26〜44を示す表であり、表8は、DNA/RNAと強く反応して蛍光を発する試薬からなる修飾物質45〜68を示す表である。なお、表6〜8には、各修飾物質1〜68の最大励起波長及び最大蛍光波長を併せて示す。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
本実施形態に係るセンサチップ100の繊維体12A,12Bには、上記の指示薬のうち、互いに異なる検査試薬が坦持される。ここでどの検査試薬をどの繊維体に坦持させるかは、その検査試薬と被検液との反応時間に基づいて決定される。例えば、評価に用いる検査試薬のうち、より反応時間が長い(例えば、被検液と検査試薬が接触してから、呈色するまでの時間が長い)検査試薬をセンサチップ100の反応室11Aに収容する繊維体12Aに担持させ、反応時間が短い検査試薬をセンサチップ100の反応室11Bに収容する繊維体12Bに担持させて、吸引を行った場合、反応室11Bへと流れる被検液と比較して反応室11Aへと流れる被検液のほうが、反応室内へ速く到達するため、より速く反応を開始することができる。そして、反応時間が速い検査試薬が保持される反応室11Bに対しては被検液の到達が遅くなる。その結果、反応室11A,11Bの両方での反応完了時刻をほぼ同じくすることができるため、反応室11A及び反応室11Bでの反応結果を一度に確認することができる。また、反応完了後の退色が速い検査試薬を用いる場合であっても、反応完了直後に反応結果を確認することができるため、より高い精度で反応結果を得ることができる。
【0046】
上記の構成を有するセンサチップ100は、例えば、図4に示すように2枚のシート状の光透過性のフィルム31及び34によって、C−C線を構成する切込みC1と、挿入口19を構成する切込みC2とがあらかじめ設けられた枠材32及び枠材33と、反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、周縁部を熱融着することにより作成することができる。これにより、熱融着されたフィルム31、枠材32、枠材33、及びフィルム34によって外装袋10が形成されると共に、繊維体12A,12Bが外装袋10の収容部11A,11Bに収容された構造となり、枠材32及び枠材33により形成される空間が第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部17となる。また、フィルタ15と枠材32とに囲まれる領域が導入部13となる。なお、フィルム31及びフィルム34として光透過性を有しない材料を用い、入射部及び反射部となる領域に対しては光透過性の材料を設けたものを用いることもできる。
【0047】
センサチップ100の変形例として、図5のセンサチップ101のように第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部17となる溝42があらかじめ形成されると共に切込みC1と切込みC2とがあらかじめ設けられたシート41と、シート状のフィルム43との間に対して反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、周囲を熱融着することにより作成することもできる。この場合、熱融着されたシート41とフィルム43とにより外装袋10が形成される。
【0048】
<液性測定装置>
次に、本実施形態において好適に用いられる液性測定装置500について説明する。
【0049】
図6は、第1実施形態に係る液性測定装置500の概略構成図である。図6に示すように、液性測定装置500は、筺体51と、筺体51の内部に設けられ、被検液が内部に保持されたセンサチップ100を筺体51の長手方向に沿って収容する収容部52と、収容部52に収容されたセンサチップ100を固定すると共にその内部にセンサチップ100の挿入口19に対して接続する吸引機構を備えるクリップ部53と、ポンプ機構を構成する中空の円筒形である円筒部54と、円筒部54の内部に挿入されることで円筒部54と共にポンプ機構に含まれる円筒形のピストン55と、このピストン55を操作するためのピストン操作部56と、を含んで構成される。また、図6では図示しないが、クリップ部53の内部には、シリンジの先端57が設けられる。このシリンジの先端57が、センサチップ100の空隙部17に対してフィルタ20及び吸引口18を介して接続する接続部として機能する。なお、円筒部54が図3におけるシリンジ21に相当する機能を有し、ピストン55が可動式の吸引動作を行う可動式のピストンに相当する機能を有する。なお、本実施形態における液性測定装置500のポンプ機構を構成する円筒部54及びピストン55は円筒形の形状であるが、この形状は特に限定されない。例えば、四角柱状であってもよいし、断面が楕円形である筒状部材を用いることもできる。
【0050】
さらに、液性測定装置500の内部には、所定の波長の光を含む光E1を出射する光源61Aと、光E2を出射する光源61Bとを備える。そして、光源61Aに対向する位置に配置され、光源61Aから出射された光E1に対して感度を有する受光部63Aと、光源61Bに対向する位置に配置され、光源61Bから出射された光E2に対して感度を有する受光部63Bと、をさらに備える。これらの光源61A,61B及び受光部63A、63Bが、測定部として機能する。
【0051】
さらに、液性測定装置500は、光源61A,61B及び受光部63A,63Bが電気的に接続される制御部(図示省略)を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)及び外部記憶装置から構成され、CPUは、所定の演算処理を行なう演算プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と演算処理の際に各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)とを有している。このCPUは、光源61A,61Bから出力された測定光の強度と、受光部63A,63Bで検出された光強度とに基づいて算出された検査試薬についての光透過率から、外部記憶装置に記憶させた予め得られている検査試薬についての光透過率と検査試薬の指標(pH、原因菌濃度等)との相関(検量線)に基づいて被検液の指標値を算出する。この処理を、検査試薬毎に行い、得られた結果に基づいた評価をインジケータ65に表示させる機能を備える。
【0052】
光源12としては、例えば、LED(LightEmitting Diode)、半導体レーザー、EL(Electro Luminescence)、蛍光灯、電球などが挙げられる。本実施形態においては、センサチップ100の繊維体12A,12Bに含まれる検査試薬の吸収ピークの波長(検査試薬が蛍光測定のための修飾物質である場合には、最大励起波長)に応じて光源を選択することが好ましい。具体的には、例えば、表1〜4に示されるpH指示薬を用いる場合、吸収ピーク波長は指示薬の溶解状態によって約±100nmの範囲でシフトすることがあるため、例えば、繊維体12A,12BにpH指示薬を染み込ませた状態や、pH指示薬を吸着させた繊維体12A,12Bを外装袋10に収容させた状態のセンサチップ100を用いて分光光度計によりその吸収ピーク波長を確認し、この波長に基づいて使用する光源を設定することが好ましい。本実施形態においては、上記のようにして確認された吸収ピーク波長の好ましくは±70nm、より好ましくは±30nmの範囲内の光を出射できる光源61A,61Bを使用することが好ましい。例えば、pH指示薬として、p−Nitrophenol(pH変色域:(淡黄色)5.0−7.6(黄色)、吸収波長:420nm)を含む繊維体12Aを備えるセンサチップ100を用いてpHの測定を行う場合には、波長が350nm〜490nmの範囲にある光を出射できるLEDを光源61Aとする場合に好適にpH測定を行うことができ、例えば波長428nmの光を出射するLED(ローム社製、商品名:SML010BA TT86)を光源61Aとして用いることが好ましい。
【0053】
さらに、本実施形態においては、光学フィルタ等を用いて光源61A(61B)から出射される光の波長を調節してもよい。測定に用いる波長範囲の光を透過することのできる光学フィルタを光源61Aとセンサチップ100との間に設け、光源61A(61B)から出力された光のうち光学フィルタを透過した光がセンサチップ100に到達する態様とした場合、測定に用いる波長範囲を含む波長範囲の光を出射する光源を液性測定装置500の光源61A(61B)として用いることができる。この場合、例えば光源61A(61B)として白色光源を用いることもできるため、液性測定装置500をより低コストで作成することが可能である。また、pH測定に十分な光量である場合には、外部光を集光・導入する機構を更に設けることにより、外部光を測定光として用いてもよい。
【0054】
一方、受光部63A(63B)としては、センサチップ100の繊維体12A(12B)に含まれる検査試薬の吸収波長域(検査試薬が蛍光修飾物質である場合には、蛍光波長域)の光に対して感度を有するものであればよく、例えば、フォトダイオード、太陽電池及び光電変換素子が挙げられる。
【0055】
上記の光源61A(61B)と受光部63A(63B)とは、図7に示すようにセンサチップ100を収容部52に配置した際に繊維体12A(12B)を収容する反応室11A(11B)の高さの位置となるように設けられる。
【0056】
なお、光源と受光部とは、必ずしも一対で配置される必要はなく、図8に示すように、一つの光源61Cから出射された光を、ミラー62A,62B、レンズ64A,64Bを用いて二つの光E1,E2に分岐して、それぞれ受光部63A,63Bに対して照射する構成とすることもできる。
【0057】
<液性測定装置を用いた測定方法>
次に、上記の液性測定装置500とセンサチップ100とを用いた被検液の測定方法について図9を用いて説明する。
【0058】
まず、センサチップ100を、空隙部17がクリップ部53に保持されるように液性測定装置500の収容部52に収容する(S01)。ここで、センサチップ100をクリップ部53が正しく嵌まるまで押し込むことにより、センサチップ100の反応室11A(11B)が光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に正確に収容させることができる。さらに、正しく嵌まるまで押し込むことにより、図7に示すように、クリップ部53の内部に設けられたシリンジの先端57が、センサチップ100の挿入口19に挿入される。このとき、センサチップ100の導入部13側の端部が収容部52から外部に露出される。なお、センサチップ100の表面と裏面を間違えると、光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に反応室11A(11B)の位置を正しく配置することができない。したがって、例えば、センサチップ100に切り込みを入れ、収容部52への挿入方向を間違えるとセンサチップ100を収容部52の奥まで挿入できない構成とすることができる。また、外装袋10のうち、入射部及び反射部を除く領域に表面と裏面とを区別する表示を追加する方法や、外装袋10の透過率が大幅に低減しない程度に着色する方法等により表面と裏面とを区別することもできる。
【0059】
続いて、この収容部52から外部に露出されるセンサチップ100の端部を図1のC−C線に沿って開封する(S02)。これにより、導入部13が外部に露出される。
【0060】
次に、外部に露出された導入部13に対して被検液を接触させる(S03)。なお、本実施形態に係る液性測定装置500とセンサチップ100を用いて測定を行う被検液は、吸水性の観点から粘度10P(1Pa・S)以下の水溶液であることが好ましい。
【0061】
次に、被検液を導入部13に対して接触させた状態で、ピストン操作部56を操作することにより、ピストン55を移動させて、吸引を行う(S04)。これにより、導入部13から被検液がセンサチップ100の内部に導入され、第1の誘導路を介して、収容部11A,11Bの順に被検液が導入され、繊維体12A,12Bに担持された検査試薬と被検液とが順に接触し、反応が開始される。その後、反応が完了した時点で、光源61A,61Bから反応室11A,11Bに対して外装袋10の入射部10A1,10B1を介して光を照射し、外装袋10の出射部10A2,10B2を介してセンサチップ100から出射される透過光を受光部63A,63Bにおいて受光し、各々の検査試薬と反応した被検液の光透過率を測定する(S05)。このとき、収容部11A,11B中の繊維体12A,12Bに付着された被検液は、繊維体12A,12Bに含まれる繊維により構成された空間で保持され、マイクロセルが構成される。これにより、繊維体12A,12B間において保持された被検液を透過する光を増やすことができる。
【0062】
なお、検査試薬として蛍光測定のための修飾物質を用いる場合には、受光部63A,63Bにおいて、光源61A,61Bから照射した光に対して、反応室11A,11B内の検査試薬と反応することにより被検液から出射される蛍光強度を測定する。蛍光強度を測定する場合であっても、上述のマイクロセルが構成されることにより、被検液から出射される蛍光が受光部63A,63Bに到達しやすくなるため、蛍光強度をより正確に測定することができる。
【0063】
なお、被検液を付着させたセンサチップ100の光透過率の測定を行う前に、ゼロ点補正を行う。ゼロ点補正は、例えば、光に対する透過率が既知の2つのサンプルについて測定し、得られた結果からゲインとオフセットを調整する方法や、暗くした状態での光源からの光強度を測定し、オフセットを補正する方法等により行うことができる。本実施形態に係る液性測定装置500では、センサチップ100を収容部52に収容する前に、ゼロ点補正が行われる。
【0064】
以上により、センサチップ100を用いた測定が終了する。光透過率の測定の場合、光源61A(61B)から照射した光強度及び受光部63A(63B)で受光した光強度をそれぞれ制御部に送り、制御部においてセンサチップ100の光透過率を算出する。そして、その結果から、外部記憶装置に記憶させた予め得られているセンサチップ100についての光透過率と指標値(例えばpHや菌濃度)との相関(検量線)に基づいて被検液の指標値を算出することができる。この結果を用いて、制御部により評価が行われ、評価結果が必要に応じてインジケータ65に表示される。なお、使用終了後のセンサチップ100をクリップ部53から引き抜くことにより、液性測定装置500から容易に取り出すことができる。また、使用後のセンサチップ100は再使用されない。
【0065】
<本実施形態による効果>
上記のセンサチップ100及び液性測定装置500を用いた溶液測定方法によれば、ピストン55をセンサチップ100の挿入口19に挿入して吸引することにより、被検液が導入部13から導入され、第1の誘導路14A,14B,14Cを介して検査試薬が保持される反応室11A,11Bへ送られ、これらの反応室11A,11Bにおいて検査試薬と被検液とが反応する。ここで、被検液を導入する導入部13と、検査試薬が保持される反応室11A,11Bと、をそれぞれ接続する誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部13に導入された被検液が反応室11A,11Bに到達するまでの所要時間がそれぞれ異なる。したがって、反応時間が互いに異なる検査試薬を用いた測定を行う場合、反応時間が長い検査試薬を第1の誘導路の長さが短い反応室11Aに保持させ、反応時間が短い検査試薬を第1の誘導路の長さが長い反応室11Bに保持させることで、被検液と各検査試薬との反応が完了する時間を近付けることができる。したがって、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、被検液の評価をより簡便に且つ精度よく行うことができる。
【0066】
また、本実施形態のセンサチップ100において、導入部13は、外装袋10により密封され、使用時に開封される構成であるため、外装袋10内の反応室11A,11Bにおいて保持される検査試薬が、外気と接触することにより劣化することを防止することができ、被検液の評価をより正確に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態のセンサチップ100の反応室11A,11Bは、繊維体12A,12Bがその両面から外装袋10により挟まれることにより反応室11A,11Bに収容される。このような構成により、繊維体12A,12Bに含まれる繊維同士によって微小空間が形成され、この微小空間に被検液が保持されることにより、マイクロセルが構成されこのマイクロセルを介して繊維体からなる反応室内を透過する光を増やすことができ、光学系を用いた被検液の評価をより精度よく行うことができる。さらに本実施形態のセンサチップ100では、反応室11A,11B内の検査試薬が繊維体12A,12Bに担持され、この繊維体12A,12Bに被検液が保持されることによってマイクロセルが形成される。そして、このマイクロセル内で、検査試薬と被検液とが適度に分散されて反応するため、測定箇所によってのバラつきを低減させ、被検液の評価をより高い精度で行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係るセンサチップ100では、第2の誘導路である誘導路16A、16Bは、空隙部17の上部で互いに合流する。このように、誘導路16A,16Bを反応室11A,11Bと空隙部17との間で互いに合流する態様とすることで、ピストン55により吸引を行ったときの誘導路16A,16Bにおける引圧を平均化することができる。したがって、反応室11A,11Bにおける反応時間の完了時刻の調整をより精度よく行うことができる。
【0069】
(第2実施形態)
<センサチップ>
図10は、本発明の第2実施形態に係るセンサチップ200の正面図、図11(A)は、図10のXIA−XIA矢視図、図11(B)は、図10のXIB−XIB矢視図、図12は、図10の分解斜視図である。図13は、センサチップ200の使用方法を説明する図である。まず、これらの図面を用いて、本発明の第2実施形態に係るセンサチップについて説明する。
【0070】
本実施形態に係るセンサチップ200が第1実施形態に係るセンサチップ100と異なる点は以下の点である。すなわち、空隙部25は外装袋10内に密封された構成であって、使用時にこの空隙部25の体積を増大させることにより、導入部13に接触された被検液を吸引する点である。以下、この構成の差異を中心に、センサチップ200について説明する。
【0071】
空隙部25は、センサチップ100の空隙部17と同様に誘導路16Cに接続され、使用前(すなわち開封前)はセンサチップ200の内側に中央部が凹んだ構成となる。この形状は、センサチップ200の空隙部25を挟んで配置されるフィルム26を内側に撓ませることにより形成される。したがって、このフィルム26として、例えばPETフィルム等の柔軟性が高い材料が好適に用いられる。
【0072】
上記の構成を有するセンサチップ200は、例えば、図12に示すように空隙部25を構成するフィルム26となる柔軟性の高いフィルム35を空隙部25が設けられる位置に設けた2枚のシート状のフィルム31及び34によって、枠材32及び枠材33と、反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15を挟み、フィルム35がセンサチップ200の内側方向に凹むように押さえながら周縁部を熱融着することにより作成することができる。これにより、繊維体12A,12Bが外装袋10の収容部11A,11Bに収容された構造となり、枠材32及び枠材33により形成される空間が第1の誘導路14(14A〜14C)及び第2の誘導路16(16A〜16C)となる。また、フィルタ15と枠材32とに囲まれる領域が導入部13となる。さらに、柔軟性の高いフィルム35と枠材32とに囲まれた領域が空隙部25となる。
【0073】
なお、センサチップ200の他の構成として、例えば、センサチップ200を構成する2枚のシート状のフィルムのうち、一方のシートのみを柔軟性の高いフィルムとする構成とすることもできる。また、図5のセンサチップ101と同様に、第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部25となる溝があらかじめ形成されたシートと、柔軟性の高いシート状のフィルムとの間に対して反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、空隙部25を挟む位置となるフィルムがセンサチップ200の内側方向に凹むように押さえながら周囲を熱融着することにより作成することもできる。
【0074】
ここで、上記の構成を有するセンサチップ200の内部に被検液を導入する具体的な方法について説明する。センサチップ200は、空隙部25の体積を増大させることにより、誘導路14A〜14C及び誘導路16A〜16Cの内部を引圧の状態にすることにより、被検液を内部に導入する。図13は、図11(A)及び図11(B)に示すセンサチップ200の空隙部25の体積を増大した状態を説明する矢視図である。図13に示すセンサチップ200は、図10に示すC−C線からなる切断線により導入部13の上部をへき開したものである。図13に示すように、空隙部25を挟むフィルム26がセンサチップ200の外側へ突出する方向に広がることにより、空隙部25の体積が増大されることにより、外装袋10の内部が減圧される。ここで、導入部13が被検液に接触していると、この内部の引圧によって導入部13から被検液がセンサチップ200の内部に導入される。そして、被検液は、フィルタ15を経て、誘導路14Cから誘導路14A及び14Bに分岐して導入され、反応室11A及び11Bに導入され、反応室11A及び11Bに保持される検査試薬との反応が開始される。そして、反応室11A及び11Bから引圧により排出された被検液は、それぞれ誘導路16A,16Bを経て誘導路16Cで合流し、空隙部25へ排出される。
【0075】
<液性測定装置及びこの装置を用いた測定方法>
次に、本実施形態において好適に用いられる液性測定装置501について説明する。本実施形態に係る液性測定装置501が液性測定装置500と異なる点は、以下の点である。すなわち、液性測定装置501において、センサチップ200を収容する収容部52の内部に設けられ、内部にシリンジの先端57を含んで配置されるクリップ部53に代えて、センサチップ200の空隙部25を保持する押圧部(押圧体)70を備える点である。この構成について、図14を用いて説明する。
【0076】
図14は、液性測定装置501の構成の一部を説明する概略断面図であり、液性測定装置501の収容部52にセンサチップ200が収容された状態を説明するものである。図14(A)は、使用前にセンサチップ200が液性測定装置501に収容された状態を示す図であり、図14(B)は、センサチップ200の内部に被検液を導入する際の液性測定装置501の動作を示す図である。
【0077】
まず、図14(A)に示すように、センサチップ200を収容部に収容後、使用する前は、液性測定装置501の筺体51に取り付けられた押圧部70を、筺体よりも収容部52の内部に突出させ、収容部52の内部に収容したセンサチップ200のフィルム26を押圧部70により押圧した状態でセンサチップ200を支持する。次に、図14(B)に示すように、センサチップ200の導入部13の上部(図14では図示左側)をへき開して当該箇所に被検液を接触させると共に、押圧部70を上下方向に移動させることにより、押圧部70によるフィルム26の押圧を解除することより、空隙部25の体積が増大する。これにより、センサチップ200内部が引圧となり、導入部13に接触する被検液がセンサチップ200の内部に導入される。そして、被検液が反応室11A,11Bに導入されて一定時間経過した後、光源61A,61Bから特定波長の光を照射し、これを受光部63A,63Bにおいて受光することにより、検査試薬と反応した被検液による光透過率が測定される。
【0078】
上記の液性測定装置501を用いた測定方法を図9を用いて説明する。まず、センサチップ200を、空隙部25が押圧部70に支持されるように液性測定装置501の収容部52に収容する(S01)。このとき、センサチップ200を挿入する際は、押圧部70は筺体51の内部に収容しておき、センサチップ200を挿入後、筺体51から内部に向けて突出させるように移動させることによって、押圧部70が空隙部25を構成するフィルム26を正しく押圧することができると共に、センサチップ200の反応室11A(11B)が光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に正確に収容させることができる。
【0079】
続いて、この収容部52から外部に露出されるセンサチップ200の端部を図10のC−C線に沿って開封する(S02)。これにより、導入部13が外部に露出される。
【0080】
次に、外部に露出された導入部13に対して被検液を接触させる(S03)。そして、被検液を導入部13に対して接触させた状態で、押圧部70を上下させることにより、空隙部25の体積を増大させ、吸引を行う(S04)。これにより、導入部13から被検液がセンサチップ200の内部に導入され、第1の誘導路を介して、収容部11A,11Bの順に被検液が導入され、繊維体12A,12Bに担持された検査試薬と被検液とが順に接触し、反応が開始される。その後、反応が完了した時点で、光源61A,61Bから反応室11A,11Bに対して外装袋10の入射部10A1,10B1を介して光を照射し、外装袋10の出射部10A2,10B2を介してセンサチップ100から出射される透過光を受光部63A,63Bにおいて受光し、各々の検査試薬と反応した被検液の光透過率を測定する(S05)。このとき、収容部11A,11B中の繊維体12A,12Bに付着された被検液は、繊維体12A,12Bに含まれる繊維により構成された空間で保持され、マイクロセルが構成される。以上により、センサチップ200を用いた測定が終了する。光透過率の測定の場合、光源61A(61B)から照射した光強度及び受光部63A(63B)で受光した光強度をそれぞれ制御部に送ることで、各検査試薬に対する被検液の光透過率が算出され、その結果を用いて評価が行われる。
【0081】
<本実施形態による効果>
上記のセンサチップ200及び液性測定装置501を用いた溶液測定方法であっても、センサチップ100及び液性測定装置500を用いた溶液測定方法と同様に、被検液を導入する導入部13と、検査試薬が保持される反応室11A,11Bと、をそれぞれ接続する誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部13に導入された被検液が反応室11A,11Bに到達するまでの所要時間がそれぞれ異なるため、反応時間の長さに応じて検査試薬の配置を変更することにより、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、被検液の評価をより簡便に且つ精度よく行うことができる。
【0082】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係るセンサチップ及び液性測定装置は種々の変更が可能である。以下、この変形例について説明する。
【0083】
例えば、上記実施形態に係るセンサチップでは、繊維体12A,12Bは収容部11A,11Bにのみ保持される構成について説明しているが、誘導路14A〜14C及び誘導路16A〜16Cにおいても繊維体を保持させる構成とし、吸引部による吸引と、繊維体による毛細管現象と、により被検液を導入部13から反応室11A,11Bに導入させる態様としてもよい。この場合、誘導路14A〜14Cには検査試薬が担持されない繊維体を保持させることにより、検査試薬が被検液に対して溶出するリスクを低減させることができる。また、誘導路14A〜14C及び誘導路16C〜16Cのいずれか一方にのみ繊維体を配置する構成とすることもできる。
【0084】
また、上記実施形態に係るセンサチップでは、反応室11A,11Bに直接接続する誘導路14A,14B及び誘導路16A,16Bの径を等しくした構成について説明しているが、これらの径は変更することができる。これらの誘導路の径は、被検液の粘度や、反応室に保持される検査試薬の種類等に応じて適宜選択される。
【0085】
また、上記実施形態では、2つの反応室11A,11Bを備えるセンサチップについて説明したが、反応室の数は3つ以上とすることもできる。反応室が3つ以上ある場合、異なる反応室へ被検液を導入する第1の誘導路の長さを互いに異なる構成とし、それぞれの第1の誘導路の長さに応じて、複数の反応室内に異なる検査試薬を保持させることによって、各反応室における被検液と検査試薬との反応が完了する時間を近づけることができるため、3つ以上の検査試薬に係る測定の結果を一度に確認することができる。
【0086】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、センサチップの1つの反応室に対して1つの光源及び受光部が配置される構成としているが、1つの反応室に対して複数の光源及び受光部を配置する構成としてもよい。この構成とした場合、例えば、1つの反応室内に保持される検査試薬に対して複数の波長の光を照射して測定を行うことによって、測定精度を向上させることができる。さらに1つの反応室内に保持される検査試薬に対して同一の波長の光を複数照射して測定することにより、反応室内での検査試薬又は被検液の分散等による測定結果のバラつきの発生を抑制することにより、測定精度を向上させることができる。
【0087】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、センサチップを液性測定装置の内部に収容する方法として、光源及び受光部があらかじめセンサチップの反応室に対応する場所に配置された収容部内へセンサチップを挿入する構成について説明しているが、他の方法によってセンサチップを収容部内へ収容する構成としてもよい。例えば、図15に示すように、センサチップを挟む筐体51のうち光源61B側の部材51Aを、支点Pを基準として回動可能な構成とし、部材51Aを筐体51のうち受光器63B側の部材51Bに対して図15に示す方向Rに向けて回動させることにより収容部を開放することによりセンサチップを載置した後に、部材51Aを回動させて、図15に示す位置に戻すことにより、センサチップを収容部52に収容して測定を行うことができる状態とする構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、反応室を挟んで光源と受光部が対向して配置される光透過率の測定を目的とした構成について説明したが、反応室に対する光源及び受光部の位置は適宜変更することができる。例えば被検液の光反射率の測定を目的として、光源と受光部とを、センサチップの一方の面に並べて配置する構成としてもよい。この場合は、上述のように外装袋のうち反応室に接する領域に設けられる入射部が出射部を兼ねて光源及び受光部の位置に対応させて一方の面に設けられたセンサチップが液性の測定に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサチップの正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】第1実施形態に係るセンサチップの使用方法を説明する図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】第1実施形態のセンサチップの変形例の分解斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る液性測定装置の概略構成図である。
【図7】第1実施形態に係る液性測定装置における光源と受光部との配置を説明する図である。
【図8】第1実施形態に係る液性測定装置における光源と受光部との配置の変形例を説明する図である。
【図9】液性測定装置とセンサチップとを用いた被検液の測定方法を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセンサチップの正面図である。
【図11】図10のXI−XI矢視図である。
【図12】図10の分解斜視図である。
【図13】第2実施形態に係るセンサチップの使用方法を説明する図である。
【図14】第2実施形態に係る液性測定装置の構成の一部を説明する概略断面図である。
【図15】第2実施形態に係る液性測定装置の構成の変形例を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10…外装袋、11(11A,11B)…反応室、12(12A,12B)…繊維体、13…導入部、14(14A,14B,14C)…誘導路(第1の誘導路)、15,20…フィルタ、16(16A,16B,16C)…誘導路(第2の誘導路)、17…空隙部、51…筺体、52…収容部、53…クリップ部、55…ピストン、61(61A,61B)…光源、63(63A,63B)…受光部、70…押圧部、100,101,200…センサチップ、500,501…液性測定装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップ及びこのセンサチップの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検液の特性を評価する方法として、被検液と検査試薬とを接触させることにより反応させ、その反応結果から特性を評価する方法が従来から用いられている。被検液が例えば人体の唾液である場合、最も簡易な方法として検査試薬を付着させた試験紙を口腔内に入れて被検液と検査試薬とを接触させることが考えられる。しかし、この方法によれば、口腔内で試験紙から検査試薬が溶け出すことにより検査試薬が体内に取り込まれる恐れがある。そのため、より簡易且つ安全に口腔内の唾液の特性を評価するための測定器具についての検討が種々行われている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−184142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、唾液を被検液としてその特性を評価することにより口腔内の健康状態を評価する場合、複数種類の検査試薬を用いて測定を行い、その結果を総合的に判断することが多い。このとき、評価に用いられる検査試薬は、その反応時間が互いに異なるものが組み合わせられて用いられることがある。しかしながら、特許文献1記載の測定器具により複数種類の検査試薬を用いた測定を行った場合、検査試薬が担持された領域に被検液が到達する時間は同じになると考えられる。また、検査試薬には、反応時間を超過すると例えば退色が発生する等の理由により反応結果を正しく評価できないものもある。このため、反応時間が異なる検査試薬による反応をより正確に評価するためには、反応時間が経過する毎に反応結果を確認する必要があり作業量が増大するという問題がある一方、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認しようとすると、その結果を正確に評価できないという問題があった。
【0004】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に精度よく行うことができるセンサチップ及びこのセンサチップの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るセンサチップは、外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋は、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有し、前記複数の第1の誘導路は、その長さが互いに異なり、前記複数の反応室の内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持されることを特徴とする。
【0006】
上記のセンサチップによれば、吸引部が吸引することにより、被検液が導入部から導入され、第1の誘導路を介して検査試薬が保持される複数の反応室へ送られ、複数の反応室において検査試薬と被検液とが反応する。ここで、被検液を導入する導入部と検査試薬が保持される複数の反応室とを接続する複数の第1の誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部に導入された被検液が反応室に到達するまでの所要時間が反応室毎に異なる。したがって、反応時間が互いに異なる検査試薬を用いた測定を行う場合、反応時間が長い検査試薬を例えば第1の誘導路の長さが短い反応室に保持させ、反応時間が短い検査試薬を第1の誘導路の長さが長い反応室に保持させることで、被検液と各検査試薬との反応が完了する時間を近付けることができる。このため、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に精度よく行うことができる。
【0007】
ここで、前記複数の第1の誘導路は、その径が互いに異なることが好ましい。このように、第1の誘導路の径が互いに異なることで、被検液の複数の反応室への到達時間を調整することが容易になり、複数種類の検査試薬による反応が完了する時刻をより近付けることができるため、より高い精度での被検液の評価を行うことができる。
【0008】
また、本発明に係るセンサチップは、前記導入部は、前記外装袋により密封され、使用時に開封される構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、外装袋内の反応室内に保持される検査試薬が、外気と接触することにより例えば酸化等によって劣化することを防止することができ、被検液の評価をより正確に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係るセンサチップは、前記複数の反応室には、繊維体が充填されていることが好ましい。繊維体が反応室に充填されることで、反応室内の繊維体に含まれる繊維同士によって微小空間が形成され、この微小空間に被検液が保持されることにより、マイクロセルが構成される。したがって、このマイクロセルを介して繊維体を透過する光を増やすことができ、光学系を用いた被検液の評価をより精度よく行うことができる。
【0010】
また、本発明に係るセンサチップは、その検査試薬は、前記繊維体に担持されることが好ましい。検査試薬が繊維体に担持され、この繊維体に被検液が保持されることによって、繊維体の繊維により形成されるマイクロセル中において検査試薬と被検液とが適度に分散されて反応するため、測定箇所によってのバラつきを低減させ、より被検液の評価をより高い精度で行うことができる。
【0011】
さらに、本発明に係るセンサチップでは、前記複数の第2の誘導路は、前記複数の反応室と前記吸引部との間で互いに合流する態様とすることができる。第2の誘導路を反応室と吸引部との間で互いに合流する態様とすることで、複数の誘導路に対する吸引部による吸引力を平均化することができる。したがって、複数の反応室における反応時間の完了時刻の調整をより精度よく行うことができる。
【0012】
ここで、本発明の効果を奏する構成としては、具体的には、前記吸引部は、前記外装袋により密封された空間を有し、使用時にその体積が増大されることにより、前記被検液を吸引する態様が挙げられる。
【0013】
また、本発明の効果を奏する他の構成としては、具体的には、前記吸引部はポンプ機構を備え、使用時に前記ポンプ機構が動作することにより前記被検液を吸引する態様とすることもできる。
【0014】
前記複数の反応室に含まれる一の反応室に対して接続する前記第2の誘導路の径は、前記一の反応室に対して接続する第1の誘導路の径よりも小さい態様とすることができる。この場合、第1の誘導路と第2の誘導路のうち、第2の誘導路の径を第1の誘導路よりも小さくすることにより、吸引部の吸引による引圧を高めることができ、被検液の吸引をよりスムーズに行うことができる。
【0015】
なお、本発明はセンサチップの使用方法に係る発明として記載することもできる。すなわち、本発明に係るセンサチップの使用方法は、光透過性の外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋において、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有するセンサチップを用い、前記外装袋の前記導入部を開封して前記導入部に被検液を接触させ、前記吸引部により前記被検液を吸引することにより前記被検液を前記複数の反応室に導入することによって前記被検液を前記検査試薬と反応させる前記センサチップの使用方法であって、前記導入部に前記被検液を接触させてから、前記被検液を前記反応室に導入するまでの時間を、前記複数の反応室によってそれぞれ異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の検査試薬を用いた被検液の評価をより簡便に行うことができるセンサチップ及びこのセンサチップの使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
<センサチップ>
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサチップ100の正面図、図2(A)は、図1のIIA−IIA矢視図、図2(B)は、図1のIIB−IIB矢視図、図3は、センサチップ100の使用方法を説明する図、図4は、図1の分解斜視図、図5は、本実施形態のセンサチップ100の変形例であるセンサチップ101の分解斜視図である。まず、これらの図面を用いて、本発明の第1実施形態に係るセンサチップについて説明する。
【0019】
本実施形態に係るセンサチップ100は、図1及び図2に示すように、光透過性の外装袋10と、外装袋10の内部に設けられた複数の反応室11A及び11Bと、反応室11A及び11Bにそれぞれ収容された繊維体12A及び12Bを備える。さらに、反応室11A及び11Bに対しては、それぞれ被検液を導入するための第1の誘導路である誘導路14A及び14Bが接続され、この誘導路14Aと14Bとが合流した誘導路(第1の誘導路)14Cがさらに接続される。そして、誘導路14Cに対して導入部13がフィルタ15を介して接続される。また、反応室11A及び11Bを基準として、誘導路14A及び14Bとは反対の位置(図1の下部)には、第2の誘導路である誘導路16A及び16Bがそれぞれ接続され、さらにこの16Aと16Bとはその下部の誘導路(第2の誘導路)16Cで合流する。そして誘導路16Cに接続して吸引部を構成する空隙部17と、この空隙部17とセンサチップ100の外部とをフィルタ20を介して接続する吸引口18と挿入口19とが設けられる。
【0020】
上記のような構成を有するセンサチップ100の繊維体12A及び12Bに測定の対象となる被検液を付着させて後述の液性測定装置に保持させ、この被検液が付着された繊維体12A及び12Bに対して、それぞれ測定光を照射することにより、この被検液の測定を行う。センサチップ100は、取扱い性、少量の被検液であっても測定できること、精度よく測定することなどを考慮して、矩形のシート状であることが好ましい。また、センサチップ100の大きさは特に限定されないが、取扱い性が高いことが好ましく、例えば、厚み:0.1mm〜5.0mm、長辺長さ:5mm〜150mm、短辺長さ:5mm〜100mmとすると好適である。
【0021】
外装袋10のうち、反応室11Aに接する領域には、光透過性の入射部10A1及び出射部10A2が設けられる。入射部10A1は、反応室11Aに対して光を入射させる光透過性の領域であり、出射部10A2は、反応室11Aから光を出射させる光透過性の領域である。これらの領域を設けることにより、被検液を付着させて反応室内11Aに保持される繊維体12Aに対して測定光を照射することができると共に、測定光を被検液に対して照射することにより被検液から出射される光(透過光又は反射光)を外部に出射させることができる。また、反応室11Bに接する領域に対しても、光透過性の入射部10B1及び出射部10B2が設けられる。
【0022】
上記の入射部及び出射部の配置は、液性の測定に用いられる光の種類によって適宜変更される。例えば、被検液から出射される透過光を液性の測定に用いる場合には、図2(A)に示すように、入射部10A1及び出射部10A2は繊維体12Aが収容された反応室11Aに対して対向する位置に設けられる。また、被検液から出射される反射光を液性の測定に用いる場合には、入射部10A1は出射部10A2を兼ねて繊維体12Aが収容された反応室11Aに対して一方の面に配置することができる。また、入射部10A1,10B1及び出射部10A2,10B2の大きさは、液性の測定に用いられる光の入射口径や液性測定装置の受光能力等に応じて適宜変更することができる。
【0023】
外装袋10のうち、上述の反応室11A,11bに接する領域に設けられる入射部10A1,10B1及び出射部10A2,10B2は、溶液測定時に照射する測定光の波長における光透過率が70%以上であることが好ましい。光透過率が上記の範囲にある材料を外装袋10の入射部及び出射部として用いることで、繊維体12A及び12Bに付着した被検液に好適に測定光を照射することができると同時に、繊維体12A及び12Bを透過した光の光量を減衰させることなくセンサチップ100から出射させることができる。
【0024】
上記の外装袋10としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン(登録商標)などのラミネートフィルムから形成されるものや、ガラスが挙げられるが、pHの安定性及び精度の点から、被検液に対して耐性を有している材料を選択することが好ましい。また、外装袋10を構成する際の熱融着による白化等により光透過性が低下しない材料を選択することが測定精度の点から好ましい。なお、上記の材料から複数種類を選択して外装袋10を構成してもよい。例えば、繊維体12A,12Bの一方の面のみにガラス板を用いて、センサチップ100の強度を保つような構造にすることもできる。また、外装袋10の外側に、ガスバリア防止性膜等を備える構造としてもよい。なお、本実施形態に係る外装袋10はその全体が光透過性であるが、外装袋10のうち入射部及び出射部となる領域のみを光透過性とし、その他の領域は非透過性とすることもできる。
【0025】
次に、センサチップ100の内部に設けられる反応室11A,11B内に配置される繊維体12A,12Bについて説明する。繊維体12A,12Bとしては、JIS P8140に準じて測定した吸水度が6.0cm〜30.0cm(さらに好ましくは7.0〜20.0cm)であることが好ましい。吸水度が上記の範囲であることにより、例えば唾液のように粘性のある被検液について測定を行う場合であっても、繊維体12A,12Bに被検液を好適に付着させることができる。吸水度は、具体的には、幅15±1mm、長さが200mm以上の試験片を準備し、その下端を23±1℃の水の中に鉛直に10分間浸漬させたときに、試験片の毛細管現象により水が上昇した高さにより測定される。
【0026】
また、繊維体12A,12Bの繊維径は、0.001μm〜500μm(さらに好ましくは0.01μm〜100μm)であることが好ましく、空隙率が20%〜99%(さらに好ましくは50%〜99%)であることが好ましい。繊維径及び空隙部が上記の範囲である場合、繊維体12A,12Bの内部に被検液が良好に付着されるため、測定結果の精度を高めることができる。空隙率は、具体的には、ポロシーメーターを用いて繊維体からなる試料の細孔への水銀侵入量を検出することにより測定される。
【0027】
繊維体12A,12Bに好適に用いられる材料としては、例えば、ろ紙、メンブレン、ろ過板、ガラス繊維が混在するろ紙などが挙げられる。これらのうち、ろ紙は、pH0〜12の範囲で安定であるとともに、優れた吸水性を有していることから好ましく使用できる。繊維体12A,12Bとしてろ紙を使用することにより、被検液を付着させた繊維体12A,12Bが適度な光透過性を示すようになるとともに、繊維体12A,12Bの吸水性が向上すると共に、検査試薬と被検液との反応の安定性が向上するため、検査試薬による反応の結果を精度よく測定することが可能となる。また、繊維体12A,12Bとしてメンブレンを用いる場合には、メンブレンの材料としてセルロース系(ニトロセルロースなど)が好適に用いられる。
【0028】
繊維体12A,12Bが収容される反応室11A,11Bは、センサチップ100の使用時に被検液を導入する導入部13と、フィルタ15を介して第1の誘導路14A,14B,14Cにより接続される。導入部13は図1に示すように、使用前は密封されており、使用時にはC−C線で示される部分でセンサチップ100をへき開することにより開封され、被検液を導入させることができる。この導入部13と第1の誘導路14Cとの間に設けられるフィルタ15は、被検液に含まれる異物の除去を目的としたものであり、例えば繊維フィルタやディスクフィルタ等が好適に用いられる。また、被検液がタンパク質を含むものである場合、検査試薬との吸着反応を回避する目的からフィルタ15をタンパク質除去フィルタとすることが好ましい。
【0029】
誘導路14A,14B,14Cは、導入部13からセンサチップ100内に導入された被検液を反応室11A,11Bに対して導入するものである。より具体的には、第1の誘導路は、導入部13と接続させる誘導路14Cと、誘導路14Cから反応室11Aと反応室11Bとにそれぞれ接続する誘導路14A及び誘導路14Bから構成される。ここで、フィルタ15と反応室11Aとを接続する誘導路14C及び誘導路14Aとの長さの和L1と、フィルタ15と反応室11Bとを接続する誘導路14C及び誘導路14Bとの長さの和L2と、を比較すると、和L2が和L1に対して長い。すなわち、導入部13から導入されフィルタ15を経た被検液が各反応室に到達するために流れる誘導路の長さは、反応室11B側のほうが反応室11A側よりも長く、被検液の送液速度が誘導路において均一である場合には、反応室11Bへの到達時間が反応室11Aへの到達時間より遅くなる。
【0030】
反応室11A,11Bには、それぞれ第2の誘導路である誘導路16A,16Bが接続する。さらに、誘導路16A,16Bを合流させる誘導路16Cが設けられる。この誘導路16A,16B,16Cは、反応室11A,11Bに導入された被検液を排出するための誘導路として用いられる。また、誘導路16Cに接続して設けられる空隙部17は、誘導路16Cから排出された被検液が貯溜される。さらに、空隙部17とセンサチップ100の外部とを接続する構成として、フィルタ20を介して接続する吸引口18と挿入口19とが設けられる。このフィルタ20は、例えば、ろ紙等からなり、誘導路16Cから空隙部17内に排出された被検液が外部に排出されることを防止する機能を備える。
【0031】
ここで、センサチップ100の内部に被検液を導入する具体的な方法について説明する。図3は、本実施形態に係るセンサチップ100の使用方法を説明する概略構成図である。まず、センサチップ100の導入部13の上部を、図1のC−C線でへき開することにより、導入部13を開封する。そして開封された導入部13に被検液を接触させる。ここで、挿入口19からシリンジ21の先端を挿入し、可動式のピストン等により吸引動作を行うことにより、空隙部17が引圧となり、この結果、被検液が導入部13からフィルタ15を介して誘導路14Cへ導入される。さらに、誘導路14Cから誘導路14A及び誘導路14Bに分岐して導入され、反応室11A及び11Bに導入される。そして、反応室11A及び11Bから引圧により排出された被検液は、それぞれ誘導路16A,16Bを経て誘導路16Cで合流し、空隙部17へ排出される。
【0032】
なお、このセンサチップ100では、誘導路16Cの径が、誘導路14Cの径に対して小さい。このため、吸引動作による引圧効果をより高めることができ、被検液の導入をよりスムーズに行うことができる。
【0033】
次に、センサチップ100の反応室11A,11Bに収容される繊維体12A,12Bに担持される検査試薬について説明する。繊維体12A,12B上に坦持される検査試薬としては、pH指示薬、発色試薬、及び被検液の蛍光強度測定を行うための修飾物質等が好適に用いられる。
【0034】
本実施形態において好適に用いられるpH指示薬としては、例えば、表1〜4に示されるpH指示薬1〜70が挙げられる。また、表1〜4には、各pH指示薬1〜70のpH指示薬水溶液の吸収ピークの波長を併せて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
また、被検液が例えば唾液である場合には、虫歯原因菌であるストレプトコッカスミュータンス菌(Sm菌)、ストレプトコッカスソブリヌス菌(Ss菌)及びラクトバチルスアシドフィリウス菌(La菌)からなる群から選ばれる菌の濃度を測定する検査指示薬として被検液の発色を測定するための修飾物質を用いることができる。より具体的には発色試薬としては、表5に示される発色試薬71〜78が挙げられる。これらの発色試薬71〜78は、被検液である唾液に含まれる虫歯原因菌との間で結合反応が進むと、特定の波長の光を吸収するという特徴を示す。表5には、各発色試薬71〜78が溶解した水溶液の吸収ピークの波長を併せて示す。
【0040】
【表5】
【0041】
さらに、検査試薬として被検液の蛍光強度を測定するための修飾物質を用いることもできる。本実施形態において好適に用いられる修飾物質としては、例えば表6〜表8に示される修飾物質1〜65が挙げられる。このうち、表6は、蛍光試薬からなる修飾物質1〜25を示す表であり、表7は、蛍光蛋白質からなる修飾物質26〜44を示す表であり、表8は、DNA/RNAと強く反応して蛍光を発する試薬からなる修飾物質45〜68を示す表である。なお、表6〜8には、各修飾物質1〜68の最大励起波長及び最大蛍光波長を併せて示す。
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
本実施形態に係るセンサチップ100の繊維体12A,12Bには、上記の指示薬のうち、互いに異なる検査試薬が坦持される。ここでどの検査試薬をどの繊維体に坦持させるかは、その検査試薬と被検液との反応時間に基づいて決定される。例えば、評価に用いる検査試薬のうち、より反応時間が長い(例えば、被検液と検査試薬が接触してから、呈色するまでの時間が長い)検査試薬をセンサチップ100の反応室11Aに収容する繊維体12Aに担持させ、反応時間が短い検査試薬をセンサチップ100の反応室11Bに収容する繊維体12Bに担持させて、吸引を行った場合、反応室11Bへと流れる被検液と比較して反応室11Aへと流れる被検液のほうが、反応室内へ速く到達するため、より速く反応を開始することができる。そして、反応時間が速い検査試薬が保持される反応室11Bに対しては被検液の到達が遅くなる。その結果、反応室11A,11Bの両方での反応完了時刻をほぼ同じくすることができるため、反応室11A及び反応室11Bでの反応結果を一度に確認することができる。また、反応完了後の退色が速い検査試薬を用いる場合であっても、反応完了直後に反応結果を確認することができるため、より高い精度で反応結果を得ることができる。
【0046】
上記の構成を有するセンサチップ100は、例えば、図4に示すように2枚のシート状の光透過性のフィルム31及び34によって、C−C線を構成する切込みC1と、挿入口19を構成する切込みC2とがあらかじめ設けられた枠材32及び枠材33と、反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、周縁部を熱融着することにより作成することができる。これにより、熱融着されたフィルム31、枠材32、枠材33、及びフィルム34によって外装袋10が形成されると共に、繊維体12A,12Bが外装袋10の収容部11A,11Bに収容された構造となり、枠材32及び枠材33により形成される空間が第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部17となる。また、フィルタ15と枠材32とに囲まれる領域が導入部13となる。なお、フィルム31及びフィルム34として光透過性を有しない材料を用い、入射部及び反射部となる領域に対しては光透過性の材料を設けたものを用いることもできる。
【0047】
センサチップ100の変形例として、図5のセンサチップ101のように第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部17となる溝42があらかじめ形成されると共に切込みC1と切込みC2とがあらかじめ設けられたシート41と、シート状のフィルム43との間に対して反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、周囲を熱融着することにより作成することもできる。この場合、熱融着されたシート41とフィルム43とにより外装袋10が形成される。
【0048】
<液性測定装置>
次に、本実施形態において好適に用いられる液性測定装置500について説明する。
【0049】
図6は、第1実施形態に係る液性測定装置500の概略構成図である。図6に示すように、液性測定装置500は、筺体51と、筺体51の内部に設けられ、被検液が内部に保持されたセンサチップ100を筺体51の長手方向に沿って収容する収容部52と、収容部52に収容されたセンサチップ100を固定すると共にその内部にセンサチップ100の挿入口19に対して接続する吸引機構を備えるクリップ部53と、ポンプ機構を構成する中空の円筒形である円筒部54と、円筒部54の内部に挿入されることで円筒部54と共にポンプ機構に含まれる円筒形のピストン55と、このピストン55を操作するためのピストン操作部56と、を含んで構成される。また、図6では図示しないが、クリップ部53の内部には、シリンジの先端57が設けられる。このシリンジの先端57が、センサチップ100の空隙部17に対してフィルタ20及び吸引口18を介して接続する接続部として機能する。なお、円筒部54が図3におけるシリンジ21に相当する機能を有し、ピストン55が可動式の吸引動作を行う可動式のピストンに相当する機能を有する。なお、本実施形態における液性測定装置500のポンプ機構を構成する円筒部54及びピストン55は円筒形の形状であるが、この形状は特に限定されない。例えば、四角柱状であってもよいし、断面が楕円形である筒状部材を用いることもできる。
【0050】
さらに、液性測定装置500の内部には、所定の波長の光を含む光E1を出射する光源61Aと、光E2を出射する光源61Bとを備える。そして、光源61Aに対向する位置に配置され、光源61Aから出射された光E1に対して感度を有する受光部63Aと、光源61Bに対向する位置に配置され、光源61Bから出射された光E2に対して感度を有する受光部63Bと、をさらに備える。これらの光源61A,61B及び受光部63A、63Bが、測定部として機能する。
【0051】
さらに、液性測定装置500は、光源61A,61B及び受光部63A,63Bが電気的に接続される制御部(図示省略)を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)及び外部記憶装置から構成され、CPUは、所定の演算処理を行なう演算プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と演算処理の際に各種データを記憶するRAM(Random Access Memory)とを有している。このCPUは、光源61A,61Bから出力された測定光の強度と、受光部63A,63Bで検出された光強度とに基づいて算出された検査試薬についての光透過率から、外部記憶装置に記憶させた予め得られている検査試薬についての光透過率と検査試薬の指標(pH、原因菌濃度等)との相関(検量線)に基づいて被検液の指標値を算出する。この処理を、検査試薬毎に行い、得られた結果に基づいた評価をインジケータ65に表示させる機能を備える。
【0052】
光源12としては、例えば、LED(LightEmitting Diode)、半導体レーザー、EL(Electro Luminescence)、蛍光灯、電球などが挙げられる。本実施形態においては、センサチップ100の繊維体12A,12Bに含まれる検査試薬の吸収ピークの波長(検査試薬が蛍光測定のための修飾物質である場合には、最大励起波長)に応じて光源を選択することが好ましい。具体的には、例えば、表1〜4に示されるpH指示薬を用いる場合、吸収ピーク波長は指示薬の溶解状態によって約±100nmの範囲でシフトすることがあるため、例えば、繊維体12A,12BにpH指示薬を染み込ませた状態や、pH指示薬を吸着させた繊維体12A,12Bを外装袋10に収容させた状態のセンサチップ100を用いて分光光度計によりその吸収ピーク波長を確認し、この波長に基づいて使用する光源を設定することが好ましい。本実施形態においては、上記のようにして確認された吸収ピーク波長の好ましくは±70nm、より好ましくは±30nmの範囲内の光を出射できる光源61A,61Bを使用することが好ましい。例えば、pH指示薬として、p−Nitrophenol(pH変色域:(淡黄色)5.0−7.6(黄色)、吸収波長:420nm)を含む繊維体12Aを備えるセンサチップ100を用いてpHの測定を行う場合には、波長が350nm〜490nmの範囲にある光を出射できるLEDを光源61Aとする場合に好適にpH測定を行うことができ、例えば波長428nmの光を出射するLED(ローム社製、商品名:SML010BA TT86)を光源61Aとして用いることが好ましい。
【0053】
さらに、本実施形態においては、光学フィルタ等を用いて光源61A(61B)から出射される光の波長を調節してもよい。測定に用いる波長範囲の光を透過することのできる光学フィルタを光源61Aとセンサチップ100との間に設け、光源61A(61B)から出力された光のうち光学フィルタを透過した光がセンサチップ100に到達する態様とした場合、測定に用いる波長範囲を含む波長範囲の光を出射する光源を液性測定装置500の光源61A(61B)として用いることができる。この場合、例えば光源61A(61B)として白色光源を用いることもできるため、液性測定装置500をより低コストで作成することが可能である。また、pH測定に十分な光量である場合には、外部光を集光・導入する機構を更に設けることにより、外部光を測定光として用いてもよい。
【0054】
一方、受光部63A(63B)としては、センサチップ100の繊維体12A(12B)に含まれる検査試薬の吸収波長域(検査試薬が蛍光修飾物質である場合には、蛍光波長域)の光に対して感度を有するものであればよく、例えば、フォトダイオード、太陽電池及び光電変換素子が挙げられる。
【0055】
上記の光源61A(61B)と受光部63A(63B)とは、図7に示すようにセンサチップ100を収容部52に配置した際に繊維体12A(12B)を収容する反応室11A(11B)の高さの位置となるように設けられる。
【0056】
なお、光源と受光部とは、必ずしも一対で配置される必要はなく、図8に示すように、一つの光源61Cから出射された光を、ミラー62A,62B、レンズ64A,64Bを用いて二つの光E1,E2に分岐して、それぞれ受光部63A,63Bに対して照射する構成とすることもできる。
【0057】
<液性測定装置を用いた測定方法>
次に、上記の液性測定装置500とセンサチップ100とを用いた被検液の測定方法について図9を用いて説明する。
【0058】
まず、センサチップ100を、空隙部17がクリップ部53に保持されるように液性測定装置500の収容部52に収容する(S01)。ここで、センサチップ100をクリップ部53が正しく嵌まるまで押し込むことにより、センサチップ100の反応室11A(11B)が光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に正確に収容させることができる。さらに、正しく嵌まるまで押し込むことにより、図7に示すように、クリップ部53の内部に設けられたシリンジの先端57が、センサチップ100の挿入口19に挿入される。このとき、センサチップ100の導入部13側の端部が収容部52から外部に露出される。なお、センサチップ100の表面と裏面を間違えると、光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に反応室11A(11B)の位置を正しく配置することができない。したがって、例えば、センサチップ100に切り込みを入れ、収容部52への挿入方向を間違えるとセンサチップ100を収容部52の奥まで挿入できない構成とすることができる。また、外装袋10のうち、入射部及び反射部を除く領域に表面と裏面とを区別する表示を追加する方法や、外装袋10の透過率が大幅に低減しない程度に着色する方法等により表面と裏面とを区別することもできる。
【0059】
続いて、この収容部52から外部に露出されるセンサチップ100の端部を図1のC−C線に沿って開封する(S02)。これにより、導入部13が外部に露出される。
【0060】
次に、外部に露出された導入部13に対して被検液を接触させる(S03)。なお、本実施形態に係る液性測定装置500とセンサチップ100を用いて測定を行う被検液は、吸水性の観点から粘度10P(1Pa・S)以下の水溶液であることが好ましい。
【0061】
次に、被検液を導入部13に対して接触させた状態で、ピストン操作部56を操作することにより、ピストン55を移動させて、吸引を行う(S04)。これにより、導入部13から被検液がセンサチップ100の内部に導入され、第1の誘導路を介して、収容部11A,11Bの順に被検液が導入され、繊維体12A,12Bに担持された検査試薬と被検液とが順に接触し、反応が開始される。その後、反応が完了した時点で、光源61A,61Bから反応室11A,11Bに対して外装袋10の入射部10A1,10B1を介して光を照射し、外装袋10の出射部10A2,10B2を介してセンサチップ100から出射される透過光を受光部63A,63Bにおいて受光し、各々の検査試薬と反応した被検液の光透過率を測定する(S05)。このとき、収容部11A,11B中の繊維体12A,12Bに付着された被検液は、繊維体12A,12Bに含まれる繊維により構成された空間で保持され、マイクロセルが構成される。これにより、繊維体12A,12B間において保持された被検液を透過する光を増やすことができる。
【0062】
なお、検査試薬として蛍光測定のための修飾物質を用いる場合には、受光部63A,63Bにおいて、光源61A,61Bから照射した光に対して、反応室11A,11B内の検査試薬と反応することにより被検液から出射される蛍光強度を測定する。蛍光強度を測定する場合であっても、上述のマイクロセルが構成されることにより、被検液から出射される蛍光が受光部63A,63Bに到達しやすくなるため、蛍光強度をより正確に測定することができる。
【0063】
なお、被検液を付着させたセンサチップ100の光透過率の測定を行う前に、ゼロ点補正を行う。ゼロ点補正は、例えば、光に対する透過率が既知の2つのサンプルについて測定し、得られた結果からゲインとオフセットを調整する方法や、暗くした状態での光源からの光強度を測定し、オフセットを補正する方法等により行うことができる。本実施形態に係る液性測定装置500では、センサチップ100を収容部52に収容する前に、ゼロ点補正が行われる。
【0064】
以上により、センサチップ100を用いた測定が終了する。光透過率の測定の場合、光源61A(61B)から照射した光強度及び受光部63A(63B)で受光した光強度をそれぞれ制御部に送り、制御部においてセンサチップ100の光透過率を算出する。そして、その結果から、外部記憶装置に記憶させた予め得られているセンサチップ100についての光透過率と指標値(例えばpHや菌濃度)との相関(検量線)に基づいて被検液の指標値を算出することができる。この結果を用いて、制御部により評価が行われ、評価結果が必要に応じてインジケータ65に表示される。なお、使用終了後のセンサチップ100をクリップ部53から引き抜くことにより、液性測定装置500から容易に取り出すことができる。また、使用後のセンサチップ100は再使用されない。
【0065】
<本実施形態による効果>
上記のセンサチップ100及び液性測定装置500を用いた溶液測定方法によれば、ピストン55をセンサチップ100の挿入口19に挿入して吸引することにより、被検液が導入部13から導入され、第1の誘導路14A,14B,14Cを介して検査試薬が保持される反応室11A,11Bへ送られ、これらの反応室11A,11Bにおいて検査試薬と被検液とが反応する。ここで、被検液を導入する導入部13と、検査試薬が保持される反応室11A,11Bと、をそれぞれ接続する誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部13に導入された被検液が反応室11A,11Bに到達するまでの所要時間がそれぞれ異なる。したがって、反応時間が互いに異なる検査試薬を用いた測定を行う場合、反応時間が長い検査試薬を第1の誘導路の長さが短い反応室11Aに保持させ、反応時間が短い検査試薬を第1の誘導路の長さが長い反応室11Bに保持させることで、被検液と各検査試薬との反応が完了する時間を近付けることができる。したがって、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、被検液の評価をより簡便に且つ精度よく行うことができる。
【0066】
また、本実施形態のセンサチップ100において、導入部13は、外装袋10により密封され、使用時に開封される構成であるため、外装袋10内の反応室11A,11Bにおいて保持される検査試薬が、外気と接触することにより劣化することを防止することができ、被検液の評価をより正確に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態のセンサチップ100の反応室11A,11Bは、繊維体12A,12Bがその両面から外装袋10により挟まれることにより反応室11A,11Bに収容される。このような構成により、繊維体12A,12Bに含まれる繊維同士によって微小空間が形成され、この微小空間に被検液が保持されることにより、マイクロセルが構成されこのマイクロセルを介して繊維体からなる反応室内を透過する光を増やすことができ、光学系を用いた被検液の評価をより精度よく行うことができる。さらに本実施形態のセンサチップ100では、反応室11A,11B内の検査試薬が繊維体12A,12Bに担持され、この繊維体12A,12Bに被検液が保持されることによってマイクロセルが形成される。そして、このマイクロセル内で、検査試薬と被検液とが適度に分散されて反応するため、測定箇所によってのバラつきを低減させ、被検液の評価をより高い精度で行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係るセンサチップ100では、第2の誘導路である誘導路16A、16Bは、空隙部17の上部で互いに合流する。このように、誘導路16A,16Bを反応室11A,11Bと空隙部17との間で互いに合流する態様とすることで、ピストン55により吸引を行ったときの誘導路16A,16Bにおける引圧を平均化することができる。したがって、反応室11A,11Bにおける反応時間の完了時刻の調整をより精度よく行うことができる。
【0069】
(第2実施形態)
<センサチップ>
図10は、本発明の第2実施形態に係るセンサチップ200の正面図、図11(A)は、図10のXIA−XIA矢視図、図11(B)は、図10のXIB−XIB矢視図、図12は、図10の分解斜視図である。図13は、センサチップ200の使用方法を説明する図である。まず、これらの図面を用いて、本発明の第2実施形態に係るセンサチップについて説明する。
【0070】
本実施形態に係るセンサチップ200が第1実施形態に係るセンサチップ100と異なる点は以下の点である。すなわち、空隙部25は外装袋10内に密封された構成であって、使用時にこの空隙部25の体積を増大させることにより、導入部13に接触された被検液を吸引する点である。以下、この構成の差異を中心に、センサチップ200について説明する。
【0071】
空隙部25は、センサチップ100の空隙部17と同様に誘導路16Cに接続され、使用前(すなわち開封前)はセンサチップ200の内側に中央部が凹んだ構成となる。この形状は、センサチップ200の空隙部25を挟んで配置されるフィルム26を内側に撓ませることにより形成される。したがって、このフィルム26として、例えばPETフィルム等の柔軟性が高い材料が好適に用いられる。
【0072】
上記の構成を有するセンサチップ200は、例えば、図12に示すように空隙部25を構成するフィルム26となる柔軟性の高いフィルム35を空隙部25が設けられる位置に設けた2枚のシート状のフィルム31及び34によって、枠材32及び枠材33と、反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15を挟み、フィルム35がセンサチップ200の内側方向に凹むように押さえながら周縁部を熱融着することにより作成することができる。これにより、繊維体12A,12Bが外装袋10の収容部11A,11Bに収容された構造となり、枠材32及び枠材33により形成される空間が第1の誘導路14(14A〜14C)及び第2の誘導路16(16A〜16C)となる。また、フィルタ15と枠材32とに囲まれる領域が導入部13となる。さらに、柔軟性の高いフィルム35と枠材32とに囲まれた領域が空隙部25となる。
【0073】
なお、センサチップ200の他の構成として、例えば、センサチップ200を構成する2枚のシート状のフィルムのうち、一方のシートのみを柔軟性の高いフィルムとする構成とすることもできる。また、図5のセンサチップ101と同様に、第1の誘導路14、第2の誘導路16及び空隙部25となる溝があらかじめ形成されたシートと、柔軟性の高いシート状のフィルムとの間に対して反応室に収容される繊維体12A,12B、フィルタ15、及びフィルタ20を挟み、空隙部25を挟む位置となるフィルムがセンサチップ200の内側方向に凹むように押さえながら周囲を熱融着することにより作成することもできる。
【0074】
ここで、上記の構成を有するセンサチップ200の内部に被検液を導入する具体的な方法について説明する。センサチップ200は、空隙部25の体積を増大させることにより、誘導路14A〜14C及び誘導路16A〜16Cの内部を引圧の状態にすることにより、被検液を内部に導入する。図13は、図11(A)及び図11(B)に示すセンサチップ200の空隙部25の体積を増大した状態を説明する矢視図である。図13に示すセンサチップ200は、図10に示すC−C線からなる切断線により導入部13の上部をへき開したものである。図13に示すように、空隙部25を挟むフィルム26がセンサチップ200の外側へ突出する方向に広がることにより、空隙部25の体積が増大されることにより、外装袋10の内部が減圧される。ここで、導入部13が被検液に接触していると、この内部の引圧によって導入部13から被検液がセンサチップ200の内部に導入される。そして、被検液は、フィルタ15を経て、誘導路14Cから誘導路14A及び14Bに分岐して導入され、反応室11A及び11Bに導入され、反応室11A及び11Bに保持される検査試薬との反応が開始される。そして、反応室11A及び11Bから引圧により排出された被検液は、それぞれ誘導路16A,16Bを経て誘導路16Cで合流し、空隙部25へ排出される。
【0075】
<液性測定装置及びこの装置を用いた測定方法>
次に、本実施形態において好適に用いられる液性測定装置501について説明する。本実施形態に係る液性測定装置501が液性測定装置500と異なる点は、以下の点である。すなわち、液性測定装置501において、センサチップ200を収容する収容部52の内部に設けられ、内部にシリンジの先端57を含んで配置されるクリップ部53に代えて、センサチップ200の空隙部25を保持する押圧部(押圧体)70を備える点である。この構成について、図14を用いて説明する。
【0076】
図14は、液性測定装置501の構成の一部を説明する概略断面図であり、液性測定装置501の収容部52にセンサチップ200が収容された状態を説明するものである。図14(A)は、使用前にセンサチップ200が液性測定装置501に収容された状態を示す図であり、図14(B)は、センサチップ200の内部に被検液を導入する際の液性測定装置501の動作を示す図である。
【0077】
まず、図14(A)に示すように、センサチップ200を収容部に収容後、使用する前は、液性測定装置501の筺体51に取り付けられた押圧部70を、筺体よりも収容部52の内部に突出させ、収容部52の内部に収容したセンサチップ200のフィルム26を押圧部70により押圧した状態でセンサチップ200を支持する。次に、図14(B)に示すように、センサチップ200の導入部13の上部(図14では図示左側)をへき開して当該箇所に被検液を接触させると共に、押圧部70を上下方向に移動させることにより、押圧部70によるフィルム26の押圧を解除することより、空隙部25の体積が増大する。これにより、センサチップ200内部が引圧となり、導入部13に接触する被検液がセンサチップ200の内部に導入される。そして、被検液が反応室11A,11Bに導入されて一定時間経過した後、光源61A,61Bから特定波長の光を照射し、これを受光部63A,63Bにおいて受光することにより、検査試薬と反応した被検液による光透過率が測定される。
【0078】
上記の液性測定装置501を用いた測定方法を図9を用いて説明する。まず、センサチップ200を、空隙部25が押圧部70に支持されるように液性測定装置501の収容部52に収容する(S01)。このとき、センサチップ200を挿入する際は、押圧部70は筺体51の内部に収容しておき、センサチップ200を挿入後、筺体51から内部に向けて突出させるように移動させることによって、押圧部70が空隙部25を構成するフィルム26を正しく押圧することができると共に、センサチップ200の反応室11A(11B)が光源61A(61B)と受光部63A(63B)との間に正確に収容させることができる。
【0079】
続いて、この収容部52から外部に露出されるセンサチップ200の端部を図10のC−C線に沿って開封する(S02)。これにより、導入部13が外部に露出される。
【0080】
次に、外部に露出された導入部13に対して被検液を接触させる(S03)。そして、被検液を導入部13に対して接触させた状態で、押圧部70を上下させることにより、空隙部25の体積を増大させ、吸引を行う(S04)。これにより、導入部13から被検液がセンサチップ200の内部に導入され、第1の誘導路を介して、収容部11A,11Bの順に被検液が導入され、繊維体12A,12Bに担持された検査試薬と被検液とが順に接触し、反応が開始される。その後、反応が完了した時点で、光源61A,61Bから反応室11A,11Bに対して外装袋10の入射部10A1,10B1を介して光を照射し、外装袋10の出射部10A2,10B2を介してセンサチップ100から出射される透過光を受光部63A,63Bにおいて受光し、各々の検査試薬と反応した被検液の光透過率を測定する(S05)。このとき、収容部11A,11B中の繊維体12A,12Bに付着された被検液は、繊維体12A,12Bに含まれる繊維により構成された空間で保持され、マイクロセルが構成される。以上により、センサチップ200を用いた測定が終了する。光透過率の測定の場合、光源61A(61B)から照射した光強度及び受光部63A(63B)で受光した光強度をそれぞれ制御部に送ることで、各検査試薬に対する被検液の光透過率が算出され、その結果を用いて評価が行われる。
【0081】
<本実施形態による効果>
上記のセンサチップ200及び液性測定装置501を用いた溶液測定方法であっても、センサチップ100及び液性測定装置500を用いた溶液測定方法と同様に、被検液を導入する導入部13と、検査試薬が保持される反応室11A,11Bと、をそれぞれ接続する誘導路の長さが互いに異なることにより、導入部13に導入された被検液が反応室11A,11Bに到達するまでの所要時間がそれぞれ異なるため、反応時間の長さに応じて検査試薬の配置を変更することにより、複数種類の検査試薬による反応結果を一度に確認することができ、被検液の評価をより簡便に且つ精度よく行うことができる。
【0082】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係るセンサチップ及び液性測定装置は種々の変更が可能である。以下、この変形例について説明する。
【0083】
例えば、上記実施形態に係るセンサチップでは、繊維体12A,12Bは収容部11A,11Bにのみ保持される構成について説明しているが、誘導路14A〜14C及び誘導路16A〜16Cにおいても繊維体を保持させる構成とし、吸引部による吸引と、繊維体による毛細管現象と、により被検液を導入部13から反応室11A,11Bに導入させる態様としてもよい。この場合、誘導路14A〜14Cには検査試薬が担持されない繊維体を保持させることにより、検査試薬が被検液に対して溶出するリスクを低減させることができる。また、誘導路14A〜14C及び誘導路16C〜16Cのいずれか一方にのみ繊維体を配置する構成とすることもできる。
【0084】
また、上記実施形態に係るセンサチップでは、反応室11A,11Bに直接接続する誘導路14A,14B及び誘導路16A,16Bの径を等しくした構成について説明しているが、これらの径は変更することができる。これらの誘導路の径は、被検液の粘度や、反応室に保持される検査試薬の種類等に応じて適宜選択される。
【0085】
また、上記実施形態では、2つの反応室11A,11Bを備えるセンサチップについて説明したが、反応室の数は3つ以上とすることもできる。反応室が3つ以上ある場合、異なる反応室へ被検液を導入する第1の誘導路の長さを互いに異なる構成とし、それぞれの第1の誘導路の長さに応じて、複数の反応室内に異なる検査試薬を保持させることによって、各反応室における被検液と検査試薬との反応が完了する時間を近づけることができるため、3つ以上の検査試薬に係る測定の結果を一度に確認することができる。
【0086】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、センサチップの1つの反応室に対して1つの光源及び受光部が配置される構成としているが、1つの反応室に対して複数の光源及び受光部を配置する構成としてもよい。この構成とした場合、例えば、1つの反応室内に保持される検査試薬に対して複数の波長の光を照射して測定を行うことによって、測定精度を向上させることができる。さらに1つの反応室内に保持される検査試薬に対して同一の波長の光を複数照射して測定することにより、反応室内での検査試薬又は被検液の分散等による測定結果のバラつきの発生を抑制することにより、測定精度を向上させることができる。
【0087】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、センサチップを液性測定装置の内部に収容する方法として、光源及び受光部があらかじめセンサチップの反応室に対応する場所に配置された収容部内へセンサチップを挿入する構成について説明しているが、他の方法によってセンサチップを収容部内へ収容する構成としてもよい。例えば、図15に示すように、センサチップを挟む筐体51のうち光源61B側の部材51Aを、支点Pを基準として回動可能な構成とし、部材51Aを筐体51のうち受光器63B側の部材51Bに対して図15に示す方向Rに向けて回動させることにより収容部を開放することによりセンサチップを載置した後に、部材51Aを回動させて、図15に示す位置に戻すことにより、センサチップを収容部52に収容して測定を行うことができる状態とする構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施形態に係る液性測定装置では、反応室を挟んで光源と受光部が対向して配置される光透過率の測定を目的とした構成について説明したが、反応室に対する光源及び受光部の位置は適宜変更することができる。例えば被検液の光反射率の測定を目的として、光源と受光部とを、センサチップの一方の面に並べて配置する構成としてもよい。この場合は、上述のように外装袋のうち反応室に接する領域に設けられる入射部が出射部を兼ねて光源及び受光部の位置に対応させて一方の面に設けられたセンサチップが液性の測定に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサチップの正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】第1実施形態に係るセンサチップの使用方法を説明する図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】第1実施形態のセンサチップの変形例の分解斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る液性測定装置の概略構成図である。
【図7】第1実施形態に係る液性測定装置における光源と受光部との配置を説明する図である。
【図8】第1実施形態に係る液性測定装置における光源と受光部との配置の変形例を説明する図である。
【図9】液性測定装置とセンサチップとを用いた被検液の測定方法を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセンサチップの正面図である。
【図11】図10のXI−XI矢視図である。
【図12】図10の分解斜視図である。
【図13】第2実施形態に係るセンサチップの使用方法を説明する図である。
【図14】第2実施形態に係る液性測定装置の構成の一部を説明する概略断面図である。
【図15】第2実施形態に係る液性測定装置の構成の変形例を説明する概略断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10…外装袋、11(11A,11B)…反応室、12(12A,12B)…繊維体、13…導入部、14(14A,14B,14C)…誘導路(第1の誘導路)、15,20…フィルタ、16(16A,16B,16C)…誘導路(第2の誘導路)、17…空隙部、51…筺体、52…収容部、53…クリップ部、55…ピストン、61(61A,61B)…光源、63(63A,63B)…受光部、70…押圧部、100,101,200…センサチップ、500,501…液性測定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装袋と、
前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、
前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、
前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、
前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、
前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、
を備え、
前記外装袋は、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有し、
前記複数の第1の誘導路は、その長さが互いに異なり、
前記複数の反応室の内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持される
ことを特徴とするセンサチップ。
【請求項2】
前記複数の第1の誘導路は、その径が互いに異なることを特徴とする請求項1記載のセンサチップ。
【請求項3】
前記導入部は、前記外装袋により密封され、使用時に開封されることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサチップ。
【請求項4】
前記複数の反応室には、シート状の繊維体が充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項5】
前記検査試薬は、前記繊維体に担持されることを特徴とする請求項4記載のセンサチップ。
【請求項6】
前記複数の第2の誘導路は、前記複数の反応室と前記吸引部との間で互いに合流することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項7】
前記吸引部は、前記外装袋により密封された空間を有し、使用時にその体積が増大されることにより、前記被検液を吸引することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項8】
前記吸引部はポンプ機構を備え、
使用時に前記ポンプ機構が動作することにより前記被検液を吸引することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項9】
前記複数の反応室に含まれる一の反応室に対して接続する前記第2の誘導路の径は、前記一の反応室に対して接続する第1の誘導路の径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項10】
外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋において、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有するセンサチップを用い、前記外装袋の前記導入部を開封して前記導入部に被検液を接触させ、前記吸引部により前記被検液を吸引することにより前記被検液を前記複数の反応室に導入することによって前記被検液を前記検査試薬と反応させる前記センサチップの使用方法であって、
前記導入部に前記被検液を接触させてから、前記被検液を前記反応室に導入するまでの時間を、前記複数の反応室によってそれぞれ異ならせることを特徴とする使用方法。
【請求項1】
外装袋と、
前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、
前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、
前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、
前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、
前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、
を備え、
前記外装袋は、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有し、
前記複数の第1の誘導路は、その長さが互いに異なり、
前記複数の反応室の内部には、互いに異なる種類の検査試薬が保持される
ことを特徴とするセンサチップ。
【請求項2】
前記複数の第1の誘導路は、その径が互いに異なることを特徴とする請求項1記載のセンサチップ。
【請求項3】
前記導入部は、前記外装袋により密封され、使用時に開封されることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサチップ。
【請求項4】
前記複数の反応室には、シート状の繊維体が充填されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項5】
前記検査試薬は、前記繊維体に担持されることを特徴とする請求項4記載のセンサチップ。
【請求項6】
前記複数の第2の誘導路は、前記複数の反応室と前記吸引部との間で互いに合流することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項7】
前記吸引部は、前記外装袋により密封された空間を有し、使用時にその体積が増大されることにより、前記被検液を吸引することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項8】
前記吸引部はポンプ機構を備え、
使用時に前記ポンプ機構が動作することにより前記被検液を吸引することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項9】
前記複数の反応室に含まれる一の反応室に対して接続する前記第2の誘導路の径は、前記一の反応室に対して接続する第1の誘導路の径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサチップ。
【請求項10】
外装袋と、前記外装袋の内部に設けられる複数の反応室と、前記複数の反応室と接続され、前記複数の反応室に対してそれぞれ被検液を導入する複数の第1の誘導路と、前記第1の誘導路に接続され、前記第1の誘導路に対して前記被検液を導入する導入部と、前記複数の反応室に対してそれぞれ接続する複数の第2の誘導路と、前記複数の第2の誘導路に接続され、前記複数の第2の誘導路を流れる被検液を吸引する吸引部と、を備え、前記外装袋において、前記反応室に対して光を入射させる光透過性の入射部と、前記反応室から光を出射させる光透過性の出射部と、を有するセンサチップを用い、前記外装袋の前記導入部を開封して前記導入部に被検液を接触させ、前記吸引部により前記被検液を吸引することにより前記被検液を前記複数の反応室に導入することによって前記被検液を前記検査試薬と反応させる前記センサチップの使用方法であって、
前記導入部に前記被検液を接触させてから、前記被検液を前記反応室に導入するまでの時間を、前記複数の反応室によってそれぞれ異ならせることを特徴とする使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−151509(P2010−151509A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327819(P2008−327819)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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