説明

センサユニット

【課題】従来知られている心拍などの生体情報を検出するための装置では、生体の表面が複雑な形状を有していたり、使用者が運動などをしているときは、検出素子であるセンサが常に生体に正しくフィットすることができず、生体情報が検出できないことがあった。
【解決手段】本発明のセンサユニットは、センサ搭載部に溝またはスリットからなる分割部を設けている。この分割部によって、使用者の測定対象部位の形状が複雑で凹凸や傾斜があるなどしても、また、使用者の運動の有無に関わらず、センサ搭載部に設けるセンサを生体にフィットさせることができる。これにより、正しく生体に現れる振動を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に接触させて振動を検出するセンサユニットに関し、特に人体の皮膚面に接触させて血流により皮膚に現れる脈波を検出するセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病の改善や予防のため、ダイエットに関する注目が集まっている。特に適度な運動を行うダイエット運動は、実践者も多い。このようなダイエット運動は、酸素消費とカロリー消費とに密接に関係する。
しかしながら、ダイエット運動を行うときに、どのくらいの運動量を行えば上述の酸素消費とカロリー消費とがなされているかを知ることは難しい。そこで、これらを直接計測するのではなく、心拍数を計測して換算することが知られている。一般的に心拍数は、酸素消費量、カロリー消費量に比例するためである。
【0003】
このような事情から、ダイエット運動中に心拍数を計測し、この心拍数の数値を管理したり、ある心拍数の数値を示す運動を行う時間を管理することで運動量を知り得る手法が広く実践されている。
しかしながら、近年の研究では、心拍数の数値だけ上昇させるような運動を行っても、一定の心拍数の数値を示す運動を長時間実施しても、必ずしもダイエットに効果がある運動とはいえないことが分かってきた。
【0004】
そこで、運動の強弱を考慮に入れた運動を行うことで、安全かつ効果的にダイエット運動を行うことが提案されている。
運動の強弱は運動強度とも呼ばれ、心拍数から公知の計算式を用いて算出することができる。まず、運動強度を知る上で、心拍数の最高心拍数と安静時心拍数とを知る必要がある。最高心拍数は、次に示す式で表すことが知られている。
最高心拍数=220−年齢
ここで、最高心拍数とは、これ以上に心拍数を上げると心臓などに障害が起こる可能性があるという数値のことである。上記の式を用いて例示すると、被験者の年齢が40歳ならば、最高心拍数は180となる。安静時心拍数とは、被験者が安静にしているときの心拍数である。
【0005】
運動強度は、一例をあげると、年齢が40歳の被験者の安静時心拍数が70であるとき、このときの運動強度が0%となり、被験者が運動したことで最も高くなった心拍数、つまり最高心拍数が180であるとき、このときの運動強度が100%となる。このように、運動強度は、被験者ごとに変わるものである。
一般に運動強度40%〜80%までが有酸素運動、80%を超えると無酸素運動になるとされる。健康管理やダイエット運動には、有酸素運動が適していると言われている。
【0006】
年齢が40歳の被験者の場合、有酸素運動を行い、ダイエットに適した運動を行おうとしたときの心拍数の上限ともいえる数値は、上述の式と説明とによれば、最高心拍数180に0.8を乗じた数値である144となる。
つまり、この被験者の場合、心臓などに負担をかけずにダイエットに効果がある運動を実施する場合、心拍数の上限を144として、これを超えないようにすればよい。
【0007】
このように、運動中の心拍数を管理するには、運動中の心拍数をモニターする必要がある。一般的に心拍数をもっとも測りやすいのは、手首の手の平側の親指に近い側の動脈であるとされる。この部位を指先で押圧すると脈波を感じ取ることができるため、心拍数を
測定することができる。
しかしながら、安静時での測定ならばよいが、運動中での測定は、指先の押圧が安定せず正確な測定ができない。また、運動中に常時手首に指先を当てていることは、運動の妨げにもなる。そこで、心拍数を電気的に計測する心拍計が提案されている。
【0008】
このような心拍計は、人体の測定対象部位にクリップ形状やバンド形状の固定具を用いて装着する。運動中であっても心拍数の計測ができるように、心拍数を測定する検出手段を人体の測定対象部位に押圧する押圧手段を有するものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
特許文献1に示した従来技術を図10を用いて説明する。なお、図10は、特許文献1に示した従来技術を説明しやすいようにその主旨を逸脱しない程度に書き直した図である。
【0010】
図10において、604は生体、605はセンサケース、606はセンサの摺動部、607はスプリング、608は発光部、609は受光部である。センサの摺動部606には、発光部608と受光部609とが設けられており、センサケース605にスプリング607を介して接続している。センサケース605を生体604の測定対象部位(例えば、血管上部の皮膚表面)に押し当てたとき、スプリング607によりセンサの摺動部606は、生体604に常に適度な押圧力で押し付けられる。
【0011】
特許文献1に示した従来技術は、心拍数を検出する検出手段として光を用いている。光照射手段である発光部608から生体604に光を照射して、その反射光を受光手段である受光部609で検出することにより、心拍数を測定する。特徴的な部分は、スプリング607によりセンサの摺動部606が生体604に押し付けられることであって、この技術は、検出手段の種類を限定せずに用いることができる。例えば、静電容量の変化量を検出する検出手段にも適用できる。
【0012】
【特許文献1】実開昭54−59786号公報(第1頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に示した従来技術は、検出手段が複数の検出素子を有するときに、押圧する力が全ての検出素子に均一に加わらないという問題がある。
検出手段に備える検出素子は、特許文献1に示した従来技術に例示されているものでは、発光部608と受光部609との1組であるが、広範囲の測定対象部位(例えば、上腕部)を測定したいときや運動中に心拍数を検出したいときに、複数の検出素子を備え、例えば、それらをアレイ状に配設する場合がある。
【0014】
このような構成にすることによって、広範囲の測定対象部位であっても複数の検出素子から得られた複数の検出情報などから正しい心拍数を測定することができる。また、運動によってある検出素子が測定対象部位から外れても他の検出素子が測定対象部位に留まっていれば、心拍数を測定することができる。
【0015】
ところが、特許文献1に示した従来技術では、検出素子を複数備えると、それに合わせて検出手段自体も大型化してしまう。このように大型化したセンサの摺動部606では、センサケース605の形状でスプリング607による押圧力が制限されてしまうのである。
したがって、特許文献1に示した従来技術は、検出素子全体を均一に生体604に押圧させることができないのである。
【0016】
また、使用者は筋肉や骨、皮膚の状態によって生体表面に凹凸があるなど、測定対象部位の形状は複雑である。この点において、特許文献1に示した従来技術は、生体表面の状態に関係なく一定の押圧力しか印加できず、押圧力に強弱やむらが出てしまうのである。
【0017】
つまり、特許文献1に示した従来技術は、検出素子であるセンサが常に生体に正しくフィットすることができず、生体情報が検出できないことがあった。
【0018】
本発明のセンサユニットは、上述の課題を解決するためになされたものであって、検出手段に分割部を設け、複数の検出手段を測定対象部位にそれぞれ異なる押圧力にて押圧することができ、複雑で凹凸のある測定対象部位であっても、使用者が運動中であっても、生体に現れる振動を検出できるセンサユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のセンサユニットは下記に示す構造を採用する。
【0020】
生体に現れる振動を検出するセンサ素子を備えるセンサと、センサから得られる信号を制御する制御回路と、センサおよび制御回路を搭載する台座部と、を有するセンサユニットにおいて、センサを複数備え、台座部は、センサを搭載するセンサ搭載部と制御回路を搭載する制御回路搭載部とを有し、センサ搭載部は、溝またはスリットからなる分割部を有し、複数のセンサは、それぞれ分割部によってセンサ領域が区分けされ、センサの生体と対向する面とは異なる面に、複数のセンサそれぞれに押圧手段を有し、センサ領域を生体の方向に押圧することを特徴とする。
【0021】
これにより、使用者の測定対象部位が複雑で凹凸があるなどしても、使用者が運動中であっても、また、使用者の測定対象部位に傾斜があったとしても(運動などにより測定対象部位に傾斜が現れたとしても)、分割部により台座部が変形し、生体に追従してセンサユニットを押圧することができ、正しく生体に現れる振動を検出することができる。
【0022】
台座部は、分割部によって区分けされているセンサ領域同士が同じ平面にならないようにその断面が段違い構造を有することを特徴とする。
【0023】
これにより、測定対象部位が血管,筋肉,骨などの影響により、その形状や状態が均一でなくても、センサユニットを使用者の測定対象部位の形状に合わせることができるため、生体にフィットしやすくなる。
また、測定対象部位の状態が均一ではないと予め分かっているとき、センサユニットをその形状に合わせて形成しておけば、生体によりフィットしやすくなるのである。
【0024】
センサは、複数のセンサ素子で構成していることを特徴とする。
【0025】
これにより、複数のセンサ素子が振動を検出できることで振動の有無のみならず、測定対象部位に現れる振動の領域ごとの強弱などの情報を得ることができる。また、測定対象部位に現れる振動部位とセンサ素子とが接する機会が増えるため、センサ素子のずれなどによる誤検出を減らせることができる。
【0026】
分割部を挟み隣接するセンサ同士は、センサ素子の数または大きさが異なることを特徴とする。
【0027】
これにより、使用者の測定対象部位のなかで、大きい部位を測定するセンサと小さい部位を測定するセンサとに分けることや、粗測定に用いるセンサと精密測定に用いるセンサ
とを分けたり、センサごとに役割を変えることができる。そのため、生体に現れる振動の検出時間を短縮したり、振動検出の精度を上げることができる。
【0028】
押圧手段は、隣接する押圧手段ごとに、押圧力が異なることを特徴とする。
【0029】
これにより、使用者の測定対象部位のなかで、血管,筋肉,骨などの影響により、その部位の形状や状態が均一でなくても、押圧力を変えることで、それらに対応することができ、測定対象部位の状態に関わらず正しく生体に現れる振動を検出することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のセンサユニットは、使用者の測定対象部位が複雑で凹凸や傾斜があるなどしても、また、測定対象部位の形状や状態、使用者の運動の有無に関わらず、センサ領域を生体にフィットさせることができる。これにより、正しく生体に現れる振動を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明のセンサユニットについて図を用いて説明する。また、本発明の実施形態では、生体の振動を、心臓の鼓動に伴う血液の流れの強弱が生体の皮膚面に振動として現れる心拍数(脈波)として説明する。本発明のセンサユニットは、心拍数を測定する心拍計などの測定装置に搭載されるものとして説明する。
【0032】
本発明のセンサユニットは、生体に現れる振動を検出するセンサ素子を備えるセンサを搭載するセンサ搭載部と、センサから得られる信号を制御する制御回路を搭載する制御回路搭載部とを有する台座部を備える。
センサ搭載部は、溝またはスリットからなる分割部を有し、複数のセンサは、それぞれ分割部によってセンサ領域が区分けされ、センサの生体と対向する面とは異なる面に、複数のセンサそれぞれに押圧手段を有し、センサ領域を生体の方向に押圧する。
【実施例1】
【0033】
[本発明のセンサユニットの説明:図1]
本発明のセンサユニットの第1の実施形態の構成を図1を用いて説明する。図1(a)は本発明のセンサユニットを説明するために模式的に示す平面図であり、センサユニット全体の様子を示すものである。図1(b)は切断線A−A’の断面を模式的に示す断面図であり、センサ搭載部を示すものである。
図1において、10はセンサユニット、11はセンサ搭載部、12は制御回路搭載部、13は制御回路、18および170は配線、19は接続端子、140は分割部となる溝、150は第1のセンサ、151は第2のセンサ、160は第1の押圧手段、161は第2の押圧手段、200は台座部である。
図1(b)の図面下側、つまり第1のセンサ150と第2のセンサ151とが設けてある側が、生体側となる。なお、図1(a)では、台座部200は説明しやすいように透明化している。
【0034】
センサユニット10は、台座部200に第1のセンサ150,第2のセンサ151,制御回路13,接続端子19,第1の押圧手段160,第2の押圧手段161,配線18および170を設けている。
第1のセンサ150と第2のセンサ151とは、台座部200の生体と対向する面側に設けている。台座部200は、これらセンサの形状に合わせて凹部を設けており、この凹部にこれらセンサが嵌合するように設けている。
そして、これらセンサそれぞれに対応する第1の押圧手段160と第2の押圧手段161とを、台座部200の生体と対向する面とは異なる面に設けている。このようなセンサ
と押圧手段を有する部分は、センサ搭載部11と呼ぶ。
第1の押圧手段160および第2の押圧手段161は、第1のセンサ150と第2のセンサ151とを生体方向に押圧する機能を有する。これにより、これらセンサは、生体表面に適切に押圧される。これら押圧手段の詳細は後述する。
【0035】
なお、センサ搭載部11は、図示しないが、台座部200に上述の凹部ではなく連通口を設け、その連通口にセンサと押圧手段とを重ねて設けてもよい。すなわち、台座部200の一部をくりぬき、その開口部にセンサと押圧手段とを直接重ねて設けてもよい。
また、図1(b)に示す例では、これらセンサの生体側は、台座部200と同一平面となっているが、図示しない生体側にセンサの表面を突出するように設けてもよい。生体の表面状態にもよるが、このようにセンサを生体の方向に突出させると、センサと生体とが食い込み、生体に現れる振動を検出しやすくなる場合がある。
【0036】
センサ搭載部11には、第1のセンサ150と第2のセンサ151とに挟まれた台座部200に、溝140が設けてある。溝140の幅やその深さについては、台座部200を構成する材質やセンサユニット10の形状や大きさなどから、自由に選択することができる。
この溝140により、センサユニット10はしなやかに変形し、生体の表面の形状や状態に合わせて第1のセンサ150および第2のセンサ151を生体表面にフィットさせることができる。
また、一方のセンサが接する生体の表面に傾斜や突起があったとしても、他方のセンサはその影響を受けにくくなり、他方のセンサが生体から浮いたりすることはない。
このように、溝140によって、センサ同士が互いの影響を受けにくくなるので、溝140がない場合にくらべ、生体へのフィット性が向上する。
【0037】
第1のセンサ150および第2のセンサ151は、それぞれ配線170により制御回路13に接続している。制御回路13は、配線18により接続端子19に接続している。制御回路13を設ける部分は、制御回路搭載部12と呼ぶ。
配線18および170は、電気的な信号を送受するための金属などによる薄膜パターンか配線材料などで構成している。これら配線は、台座部200の表面または内部に設けることができるが、図1(a)では、説明しやすいように表面に設ける場合を図示している。
接続端子19は、センサユニット10と外部回路(図示せず)とを接続し、電気信号の送受や電源電圧の授受を行うためのものである。例えば、コネクタ形状を有していてもよいが、それらの構成はすでに知られているものであるから、説明は省略する。
【0038】
第1のセンサ150と第2のセンサ151とは、特に限定しないが、静電容量式センサを用いることができる。静電容量式センサは、知られているように、並行平板電極を有しており、これら電極同士のギャップが物理的な力によって変化するさまを静電容量値として検出するものである。
【0039】
制御回路13は、特に限定しないが、デジタル信号処理部に加え、アナログ入力ポート,積分器,比較器,AD変換器,デジタル出力部などを有するワンチップマイコンで構成することができる。このようなワンチップマイコンは、昨今広く知られているため、説明は省略する。
生体の振動は、第1のセンサ150,第2のセンサ151により検出され、その物理量変化を静電容量の変化などの電気量(アナログ信号)に変換される。これらセンサから得られたアナログ信号を制御回路13に配線170を介して入力している。制御回路13は、入力されたアナログ信号を演算処理し、デジタル信号として配線18で接続している接続端子19を介して、図示しない外部回路と信号の送受を行う。
【0040】
センサユニット10の台座部200は、特に限定しないが、FPC(Flexible
Printed Circuit:屈曲性を有する回路基板),可撓性材料,ゴム,エラストマ材を用いる基板とすることができる。これにより、生体への当接をフレキシブルにすることができる。このような台座部200に溝140を設けているため、センサユニット10は、よりしなやかに変形し、生体にフィットするのである。
【0041】
[本発明のセンサユニットの動作の説明:図2]
図2は、本発明のセンサユニットを生体に接触させた様子を説明するために模式的に示す図であって、図1(b)と同じ方向から見た断面図である。図2において、3は生体であり、例えば、人体の腕である。3aは生体3の表面である。4はセンサユニット10と生体3との隙間である。35は血管である。すでに説明した構成には同じ番号を付与している。
【0042】
図2は、例えば、図面向かって右が手首側、図面向かって左が肘側とすると、血管35は動脈とすることができる。センサユニット10は、血管35と交差するように生体3に接し、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、それぞれ血管35の上部に位置するように図示しない係止手段により固定されているものとする。
【0043】
図2に示すように、生体3の表面3aは、図示しない骨や筋肉などにより平坦ではない。センサユニット10は、生体3の表面3aに接して、血管35の振動(詳しくは、心臓の拍動が血管35を介して伝達される振動)を第1のセンサ150および第2のセンサ151で検出するが、表面3aが平坦でなくとも、溝140によって台座部200が変形し、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、表面3aの形状に合わせて生体3にフィットするのである。
【0044】
生体3とセンサユニット10とは密着しているが、表面3aの形状によって隙間4が生じてしまうことがある。しかしながら、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、第1の押圧手段160および第2の押圧手段161によって、それぞれ生体3の方向に押圧されており、それぞれのセンサは表面3aに押し付けられている。これにより、表面3aに現れる血管35からの振動を正しく検出することができる。
【0045】
図示はしないが、センサユニット10は、心拍計に搭載される。心拍数の計測にあっては、この心拍計をバンドなどの係止手段を用いて生体3(腕)に巻きつけるなどして固定する。心拍計と生体3との固定は、そのバンドなどによって装着者が痛みを感じない程度であるとともに、心拍計が脱落しない程度に固定されるが、第1のセンサ150および第2のセンサ151と表面3aとの密着割合は、バンドなどによる係止だけでは充分ではない。
【0046】
本発明のセンサユニットは、その点を改良したものでもあり、溝140によってセンサユニット10自体が測定対象部位の形状などに合わせてしなやかに変形することに加え、センサごとに設ける押圧手段によって、測定対象部位にセンサを密着させることができる。これにより、バンドなどによる係止だけでは充分でないセンサユニットと測定対象部位との密着割合を向上させるのである。
【0047】
もちろん、生体3を動かすような運動を行うと、表面3aの状態は変わる。例えば、図2に示す例では、表面3aは、図面向かって左の方が同右にくらべて盛り上がっているが、運動によってそれが逆転することもある。心拍計を装着した状態で生体3を動かすような運動(生体3を腕とすれば、腕を振ったりねじったりするような運動)を行っても、溝140により台座部200が変形し、センサユニット10は、表面3aに追従するのであ
る。これにより、運動中であっても、測定対象部位への密着は変わらないのである。
【0048】
[本発明のセンサユニットの別の構成の説明:図3]
図3は、本発明のセンサユニットの別の構成を説明するために模式的に示す図であって、図1(b),図2と同じ方向から見た断面図である。すでに説明した構成には同じ番号を付与している。図3(a)〜図3(c)は、センサユニット10の異なる形状を示している。
図3に示す構成は、予めセンサユニット10の断面の形状を段違い構造、つまり段差のある形状にしたものである。例えば、心拍を測定する測定対象部位が特定されているとき、その測定対象部位の形状に合わせてセンサユニット10の形状を予め決めておき形成するのである。
【0049】
図3(a)に示す形状では、図面向かって左の第1のセンサ150の下部に骨などがあり、測定対象部位が盛り上がっているとすると、その表面形状に合わせて予めセンサユニット10を形成しておく例である。
図3(b)に示す形状では、図3(a)に示す構成とは逆に、図面向かって右の第2のセンサ151の下部に骨などがあり、測定対象部位が盛り上がっている場合に、その表面形状に合わせて予めセンサユニット10を形成しておく例である。
また、図3(c)に示す形状では、測定対象部位の形状に合わせて、センサユニット10がV字形状を有するように形成する例である。
図3に示す形状は、もちろん一例であって、測定対象部位の形状を鑑みて自由に選択することができる。センサユニット10が予めいずれの形状を有していても、溝140によってセンサユニット10は、予め形成されているセンサユニット10の形状からしなやかに変形するため、運動などによって生体の表面の状態が変わったとしても、測定対象部位にフィットするのである。
【0050】
[押圧手段の説明:図4]
次に、本発明のセンサユニットに設ける押圧手段の構成を図を用いて説明する。図4は、押圧手段を説明するために模式的に示す図であって、図1(b),図2,図3と同じ方向から見た断面図である。すでに説明した構成には同じ番号を付与している。図4(a),図4(b),図4(c)は、押圧手段の異なる構成を示すものであって、スプリングによる押圧、板バネによる押圧、磁力生成手段による押圧をそれぞれ示している。
【0051】
図4(a)は、第1の押圧手段160をスプリング1601、第2の押圧手段161をスプリング1611でそれぞれ構成している。スプリング1601およびスプリング1611によって、センサユニット10の第1のセンサ150および第2のセンサ151は、図面向かって下にある図示しない生体に向かって押圧される。
スプリング1601およびスプリング1611は、所定のバネ定数や弾性係数などのバネの特性を定義するパラメータを有しているが、それぞれのスプリングは、互いに異なるパラメータを有していてもよい。もちろん、そのコイルピッチも不等ピッチとして非線形の荷重特性を有するようにしてもよい。つまり、スプリング1601が第1のセンサ150を押圧する押圧力と、スプリング1611が第2のセンサ151を押圧する押圧力とが異なっていてもよいのである。
なお、図1(b)を用いてすでに説明したように、台座部200に連通口を設け、その連通口にセンサと押圧手段とを重ねて(センサと押圧手段とを台座部200を挟まず接するように)設けてもよい。
【0052】
測定対象部位が、例えば人体の手首であったとする。腕は、一般的に掌から肘にかけて緩やかに太くなる。また、手首は、腱や筋や尺骨突起などがあり平坦ではない。このようなとき、測定対象部位である手首の表面形状を鑑みて、例えば、肘に近い側のスプリング
の押圧力を弱く、掌に近い側のスプリングの押圧力を強くするようにスプリング1601およびスプリング1611のバネのパラメータを変更してもよいのである。これにより、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、生体表面に適切な押圧力で押圧されるのである。
【0053】
図4(b)は、第1の押圧手段160を板バネ1602、第2の押圧手段161を板バネ1612でそれぞれ構成している。押圧手段にスプリングを用いる場合と同様に、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、図面向かって下にある図示しない生体に向かって押圧される。
板バネ1602および板バネ1612は、曲げ応力特性などスプリングと同様にバネの特性を定義するパラメータを有しているが、もちろん、双方の板バネは、互いに異なるパラメータを有していてもよい。もちろん、その板バネを構成する材料自体も自由に選択することができるとともに、図示はしないが、一方を片持ちバネに他方を両持ちバネなどと板バネの形状を変更してもよい。
【0054】
図4(c)は、第1の押圧手段160を磁力生成手段1603、第2の押圧手段161を磁力生成手段1613でそれぞれ構成している。これら磁力生成手段は、電磁石を用いる。
1604,1614はコイル、1605,1606,1615,1616は接続端子部、1607,1608,1617,1618は制御導電部である。1609,1619は永久磁石である。
コイル1604は、所定の導電性の配線を磁性材料で構成するコアに一定の数だけ巻回したものであって、この配線の一方端を接続端子部1605を介して制御導電部1607に接続し、他方端を接続端子部1606を介して制御導電部1608に接続している。コイル1614も同様の構成であるから説明は省略する。
【0055】
台座部200には、第1のセンサ150と磁力生成手段1603との間に永久磁石1609を設けている。また、同様に第2のセンサ151と磁力生成手段1613との間に永久磁石1619を設けている。これら永久磁石は、それぞれ磁力生成手段1603および磁力生成手段1613と平面的に重なる位置に設けており、好ましくは、コイル1604,コイル1614の中心と永久磁石1609,永久磁石1619の中心がほぼ重なるように設ける。
【0056】
磁力生成手段1603および磁力生成手段1613は、図示しない磁力制御回路に接続している。磁力制御回路は、コイル1604,コイル1614に流れる電流をそれぞれ制御し、電流量によって磁力生成手段1603および磁力生成手段1613が発生する磁力の強度を制御する。
磁力制御回路は、電流発生手段と電流計測手段と制御手段とを有している。電流発生手段は、例えば、電圧発生手段と電圧分圧手段と電流変換手段とを備える、知られている電源手段を用いることができる。電流計測手段は、この電源手段が出力する電流値を計測する。制御手段は、電流発生手段および電流計測手段の動作を制御する。
【0057】
なお、磁力生成手段1603および磁力生成手段1613は、図示しない係止手段を介して、他の部材(例えば、センサユニット10が固定される心拍計のケースなど)に固定されている。
【0058】
磁力制御回路の制御によって、磁力生成手段1603および磁力生成手段1613は、所定の磁力を発生する。それぞれの磁力生成手段と平面的に重なっている永久磁石1609および永久磁石1619との間に、反発力が発生する。
これにより、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、図面向かって下にある
図示しない生体に向かって押圧される。
【0059】
磁力制御回路の制御により、磁力生成手段1603および磁力生成手段1613が発生する磁力はその磁極も変えることができる。つまり、磁力生成手段1603,磁力生成手段1613と永久磁石1609,永久磁石1619とを引き合うようにすることもできるのである。このようにすれば、測定対象部位の形状に合わせて自在に第1のセンサ150および第2のセンサ151の押圧力を決めることができる。
【0060】
測定対象部位が、例えば人体の手首であったとする。腕や手首は、先の説明の通り、平坦ではない。このようなとき、測定対象部位である手首の表面形状を鑑みて、例えば、肘に近い側の磁力生成手段1603と永久磁石1609とを引き合うようにし、掌に近い側の磁力生成手段1613と永久磁石1619とは強く反発するようにすることもできるのである。
これにより、第1のセンサ150および第2のセンサ151は、生体表面に適切な押圧力で押圧されるのである。
【0061】
このような、磁力の強さや向き(引き合う方向、反発する方向)の制御は、図4(c)に示す磁力生成手段に電磁石を用いる構成によるものであって、スプリングによる押圧、板バネによる押圧、あるいは永久磁石のみを用いる押圧では成し得ないものである。
【0062】
[本発明のセンサユニットの説明:図5,図6]
本発明のセンサユニットの第1の実施形態の異なる構成を図5,図6を用いて説明する。図5は模式的に示す平面図である。図6はセンサユニット全体の様子を示すものであって、図6(a)は模式的に示す平面図、図6(b)切断線B−B’の断面を模式的に示す断面図である。すでに説明した構成には同じ番号を付与している。
【0063】
図5に示す構成は、センサユニットおよび分割部(溝)の形状に特徴がある。
図5において、141は溝、141aは溝141の曲がり部分であり、これらは図1に示す溝140に相当する部分である。図5に示すセンサユニット10は、図1に示す構成とは異なり、平面的にL字形状を有している。このセンサユニット10の形状に合わせて、溝141もL字形状を有している。図5に示す例では、センサ搭載部11は、制御回路搭載部12に対して90度曲げたL字形を有している。この90度曲げた部分が曲がり部分141aである。この溝141を曲げる角度は、もちろん一例であって自由に選択することができる。
【0064】
そもそもセンサユニットは、これを搭載する心拍計などの装置に合わせてその形状を変えるが、台座部200に設ける分割部(溝141)もその形状に合わせることによって、よりしなやかにセンサユニット10を変形させることができるのである。
【0065】
図6に示す構成は、センサユニットに設ける分割部(溝)の数に特徴がある。
図6において、152は第3のセンサ、162は第3の押圧手段、142は分割部となる溝である。図6に示すように、センサユニット10には、センサと押圧手段の追加に伴ない、図1に示す溝140とは異なる溝142を設けている。このため、台座部200には、2つの溝と3つのセンサおよび押圧手段が設けてある。
【0066】
そもそもセンサユニットは、これを搭載する心拍計などの装置に合わせて搭載するセンサの数を変える。これに合わせて台座部200に新たな分割部(溝)を設けることにより、センサの数が増えてもしなやかにセンサユニット10を変形させることができるのである。
【0067】
[センサの説明:図7]
次に、本発明のセンサユニットに搭載するセンサについて図を用いて説明する。図7はセンサユニットを構成するセンサ搭載部を模式的に示す平面図である。すでに説明した構成には同じ番号を付与している。
図7において、1501,1510はセンサを構成するセンサ素子である。図7に示す例では、第1のセンサ150は、センサ素子1501を4個設けてある。同じく第2のセンサ151は、センサ素子1510を28個設けてある。
したがって、図7に示す第1のセンサ150と第2のセンサ151との違いは、それぞれのセンサを構成するセンサ素子の大きさと数とが異なっているという点である。
【0068】
センサを構成するセンサ素子のサイズが小さければ、測定対象部位のうち小さい面積を測定することができるため、測定対象部位のうちでピンポイントに特定の領域に現れる振動を検出することができる。
例えば、所定の部位に現れる振動のみを検出したいときに用いることができるほか、心拍の測定ではないが、小さい面積に現れる振動をたどることで、その振動の強弱から骨の位置などを知りえることもできるのである。
【0069】
一方、センサ素子のサイズが大きければ、測定対象部位のうち大きい面積を測定することができるため、測定対象部位の広い範囲に現れる振動を検出することができる。
例えば、センサユニット10が生体に当接しているか否かを知りたいとき、大きいセンサ素子により大きな面積を検出すれば、その振動の有無により、すぐさまそれを知ることができる。もちろん、センサ素子の大きさが小さくてもよいのであるが、測定対象部位のうちで振動が発生していない部分にセンサ素子が当接していると検出そのものが行えず、場合によっては位置を変えて検出を繰り返さなければならなくなる。これでは測定に要する時間が長くなってしまい、測定が効率よく行えない。したがって、センサユニット10が生体に当接しているか否かを知りたいときは、大きいセンサ素子の方が有利なのである。
【0070】
もちろん、センサを構成するセンサ素子の大きさに関わらずその数が多ければ、測定対象部位に現れる振動部位とセンサ素子とが接する機会が増えるため、振動があるのに検出できないといった誤検出を減らせることができる。また、運動中に万が一センサユニット10が測定対象部位からずれてしまっても同様に誤検出を減らせることができる。
【0071】
小さいセンサ素子を多く設けることで、生体の振動の様子を詳細に知ることもできる。すなわち、詳細に血管から伝播する振動が皮膚表面に伝わると、その血管の振動が最も大きい点の直上の皮膚を中心にしてその周囲に振動が伝達する。中心となる点から離間するほど振動は弱くなる。これは、水面に落ちた水滴が落下点を中心に波紋を描き、落下点から遠のくにつれて波紋の高さが小さくなるさまに似ている。このとき、振動全体の大まかな形状を検出するためには、図7に示す第2のセンサ151のように小さいセンサ素子1510をマトリクス状に複数配設して、それぞれのセンサ素子1510から得られる情報を解析すればよい。
このようにすれば、測定対象部位のうちどのセンサ素子の真下がもっとも強く振動しているかなどの情報も得ることができる。
【0072】
図7に示すセンサ素子1501およびセンサ素子1510は矩形形状を有しているが、もちろんこれに限定はしない。矩形や多角形を有するセンサ素子を混載してもよい。また、例えば、第1のセンサ150,第2のセンサ151の中心部分から周囲に向かって漸次その大きさを変えるようにしてもよい。
【0073】
さらにまた、図4を用いて説明したように、押圧手段による押圧力を第1のセンサ15
0と第2のセンサ151とで変えてもよいのである。センサ素子への押圧力とセンサ素子の大きさや数は、さまざま組み合わせがある。また、複数のセンサ素子の検出順番も変えることもできる。これにより、複雑な形状の生体表面であっても、その動きに追従して生体の振動検出を効率的に行ったり短時間に行ったりすることができる。
いずれの場合においても、センサ素子の形状や大きさは、それらに印加する押圧力や検出順番などは、センサユニット10を搭載する装置によって自由に選択することができる。
【0074】
[本発明のセンサユニットを搭載した心拍計の説明:図8]
次に、本発明のセンサユニットを搭載した測定装置を生体に装着したときの様子を図8を用いて説明する。図8(a)は本発明のセンサユニットを搭載した測定装置を説明するために模式的に示す斜景図であり、測定装置全体の様子を示すものである。図8(b)は測定装置を生体に装着した様子を模式的に示す断面図である。この方向は、すでに説明した図1(b),図2,図3,図4と同じ方向である。
【0075】
本発明のセンサユニットを搭載した測定装置は、後述するU字形状を有している。生体に装着するとき、例えば、生体が人体であり、装着する部位が左手首であったとすると、U字形状の開放端を左手小指側の手首側面に合わせ、その方向に押し込むように装着する。このため、図8(b)は、左手の平側が図面上側になり、左手小指側の手首側面から見た図となる。そして、左手首の手首−肘方向に切断線を持つ、左手首のほぼ中心の断面図となる。そのような装着を行うと、図8(b)では図面手前に後述するヒンジが見えるが、図面を見やすくするために省略している。
【0076】
図8において、300はセンサユニット10を搭載した測定装置であり、例えば、心拍計である。301は装置ケース、302は係止手段、303はヒンジ、304は表示装置、305はモジュールである。301aは装置ケース301の端部、302aは係止手段302の端部である。300aは端部301aと端部302aとの間の隙間である。矢印Cは、その方向に向かって生体を装置ケース301に装着する向きを示している。なお、すでに説明した構成には同じ番号を付与している。
【0077】
心拍計300は、センサユニット10とモジュール305と表示装置304とを有している。センサユニット10は、装置ケース301の裏側、つまり、心拍計300の表示装置304と反対の面に設けている。
モジュール305は、図示しないが回路基板を有しており、電源回路やシステム制御回路などが実装され、センサユニット10からの信号を処理して心拍数を表示装置304に表示する。なお、モジュール305は、その下側でセンサユニット10に設ける第1の押圧手段160と第2の押圧手段161とを組みつけている。表示装置304は、特に限定しないが、液晶表示装置などを用いることができる。センサユニット10,モジュール305,表示装置304は、装置ケース301に組み付けされている。
【0078】
心拍計300は、生体3(例えば、左手首であり、正確には左手首からやや左肘寄りの部分)に装着する。心拍計3は、後述するように、U字形状の開放端である装置ケース301の端部301aと係止手段302の端部302aとを離間させるようにし、矢印Cに沿って左手小指側の手首側面から装着する。
【0079】
心拍計300は、生体3の血管35から振動は、表面3aに伝達され、センサユニット10の第1のセンサ150,第2のセンサ151により検出される。
心拍計300は、装置ケース301を生体3の表面3aに接するときと、生体3に食い込ませるようにするときがある。図8(a)に示す例では、後者の例である。その場合、センサユニット10は表面3aに強く接しているため、搭載する第1のセンサ150,第
2のセンサ151は、表面3aから浮くことなく生体3に接することができる。もちろん、溝140によりセンサユニット10は、しなやかに生体3に追従するため、第1のセンサ150,第2のセンサ151は、表面3aに現れる脈波を効率よく検出することができる。
【0080】
心拍計300は、装置ケース301と係止手段302とをヒンジ303で接続する構成であり、これらでU字形状を有している。
ヒンジ303は、図示しないバネ機構により装置ケース301と係止手段302とが閉じる方向(隙間300aがより小さくなる方向)に付勢力を発生する。つまり、このヒンジ303による付勢力によって、係止手段302の端部302aは、装置ケース301の端部301と接近する。
【0081】
心拍計300は、装置ケース301と係止手段302とが接していてもよいが、双方の端部間の隙間である隙間300aを有している方が、生体3に装着しやすい。
心拍計300を生体3に装着する際は、ヒンジ303の付勢力に抗って装置ケース301と係止手段302とを離間させ(隙間300aがより大きくなる)、生体3を隙間300aから通して装置ケース301と係止手段302とで生体3を挟み込むように装着するためである。
【0082】
装置ケース301および係止手段302の材質は、金属または弾性力を有する可撓性部材で構成することができる。弾性力を有する可撓性部材は、特に限定するものではないが、ヒンジ303の付勢力をより効果的に作用させるため、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの各種合成樹脂、ニトリル系エラストマ、ウレタンゴム、アクリルゴムなどの各種エラストマなどを用いることが好ましい。
【0083】
このように、心拍計300を弾性力を有する可撓性部材で構成することによって、心拍計300を生体3に装着する際に、ヒンジ303の付勢力に抗うと共に装置ケース301および係止手段302を若干変形させて、それらを押し広げるようにして(隙間300aをより大きくするようにして)装着することができる。これにより心拍計300の生体3への装着性が向上する。
心拍計300の生体3への装着後は、装置ケース301および係止手段302が所定の形状に戻ることに加え、ヒンジ303の付勢力によって、生体3への装着状態を維持することができるため、心拍計300の抜け落ち、ずれなどを防止することができる。
【0084】
また、装置ケース301および係止手段302の材質を金属とするとき、その金属は、Ti−Ni系などの形状記憶合金とすることもできる。このようにすることで、上述の心拍計300を弾性力を有する可撓性部材で構成する場合と同様の効果を有することができる。
【実施例2】
【0085】
[本発明のセンサユニットの別の構成の説明:図9]
本発明のセンサユニットの第2の実施形態の構成を図9を用いて説明する。図9(a)は本発明のセンサユニットを説明するために模式的に示す平面図であり、センサユニット全体の様子を示すものである。図9(b)は切断線D−D’の断面を模式的に示す断面図であり、センサ搭載部を示すものである。図9は図1に示す本発明のセンサユニットの第1の実施形態と同じ方向から見た図である。
図9において、143は分割部となるスリットである。なお、すでに説明した構成には同じ番号を付与している。
【0086】
図9に示すセンサユニット10とすでに説明した構成との違いは分割部であり、図9に示すセンサユニット10は、分割部がスリット143になっている。このスリット143により、センサ搭載部11には切り欠きが形成されているような形状になる。
このスリット143により、センサユニット10はよりしなやかに変形し、生体の表面の形状や状態に合わせて第1のセンサ150および第2のセンサ151を生体表面にフィットさせることができる。もちろん、一方のセンサが接する生体の表面に傾斜や突起があったとしても、他方のセンサはその影響をさらに受けにくくなり、他方のセンサが生体から浮いたりすることはない。
このように、スリット143によって、センサ同士がさらに互いの影響を受けにくくなるので、分割部に溝を設ける場合にくらべ、さらに生体へのフィット性が向上する。
【0087】
以上、図9を用いて説明した本発明のセンサユニットの第2の実施形態の構成は、もちろんこれに限定するものではない。図5,図6を用いて説明した本発明のセンサユニットの第1の実施形態の構成のように、センサユニットやスリットを曲げたり、複数のスリットを設けてもよい。
【0088】
また、センサユニットに設ける分割部は、溝とスリットとを混載してもかまわない。例えば、図6に示すようなセンサユニットに2つの分割部を有する構成のとき、一方の分割部を溝、他方の分割部をスリットとしてもよいのである。
このような変形例は、本発明のセンサユニットを搭載する心拍計などの測定装置に合わせて自由に選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のセンサユニットは、センサ領域を生体にフィットさせることができる。このため、使用者の測定対象部位の形状や状態、使用者の運動の有無に関わらず測定できる心拍計に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態のセンサユニットの構成を説明する平面図および断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のセンサユニットを生体に接触させた様子を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のセンサユニットの別の構成を説明する断面図である。
【図4】本発明のセンサユニットに設ける押圧手段の構成を説明する断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のセンサユニットの別の構成を説明する平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のセンサユニットの別の構成を説明する平面図および断面図である。
【図7】本発明のセンサユニットに設けるセンサの形状を説明する平面図である。
【図8】本発明のセンサユニットを搭載した測定装置を生体に装着したときの様子を説明する斜景図および断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のセンサユニットの構成を説明する平面図および断面図である。
【図10】特許文献1に示した従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
10 センサユニット
11 センサ搭載部
12 制御回路搭載部
13 制御回路
18,170 配線
19 接続端子
140,141,142 溝
143 スリット
150 第1のセンサ
151 第2のセンサ
160 第1の押圧手段
161 第2の押圧手段
200 台座部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に現れる振動を検出するセンサ素子を備えるセンサと、該センサから得られる信号を制御する制御回路と、前記センサおよび前記制御回路を搭載する台座部と、を有するセンサユニットにおいて、
前記センサを複数備え、
前記台座部は、前記センサを搭載するセンサ搭載部と前記制御回路を搭載する制御回路搭載部とを有し、
前記センサ搭載部は、溝またはスリットからなる分割部を有し、複数の前記センサは、それぞれ該分割部によってセンサ領域が区分けされ、
前記センサの前記生体と対向する面とは異なる面に、複数の前記センサそれぞれに押圧手段を有し、前記センサ領域を前記生体の方向に押圧することを特徴とするセンサユニット。
【請求項2】
前記台座部は、前記分割部によって区分けされている前記センサ領域同士が同じ平面にならないようにその断面が段違い構造を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記センサは、複数のセンサ素子で構成していることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記分割部を挟み隣接する前記センサ同士は、前記センサ素子の数または大きさが異なることを特徴とする請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記押圧手段は、隣接する押圧手段ごとに、押圧力が異なることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のセンサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−226024(P2009−226024A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75638(P2008−75638)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】