センサー
電気式温度センサー(10)は液晶材料(12)を含んでいる。互いに離れた関係にされた第1と第2の導電性コンタクト(14、16)が液晶材料(12)と接触する。電気的特性測定装置が第1と第2の導電性コンタクト(14、16)に電気的に接続されていて、液晶材料(12)の電気的特性を測定する構成にされている。液晶材料(12)は、分極状態と非分極状態の間で相変化する転移温度Tを持つ。分極状態と非分極状態の間の相変化により、液晶材料(12)の前記電気的特性の変化が引き起こされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーと温度感知法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサーには、一般的な用途でさまざまな応用がある。光学的に読み取ることのできる温度センサーの一部として液晶を利用することが知られている。そのような一例は、一般に入手可能な“ディジタル式”ストリップ温度計である。温度センサー(例えば温度計)としての液晶の利用は、他のタイプの温度計(例えば水銀に基づく温度計)よりも製造費が安いことが利点になろう。液晶を利用する大半の応用では、液晶を望むように機能させるために揃える必要がある。
【0003】
光学式液晶温度計は複雑であり、電子システムに組み込むのに比較的コストがかかるであろう。その1つの理由は、温度に応答する液晶のあらゆる状態変化を検出するため、光源と光学的センサー手段の両方を用意せねばならないことにあろう。したがって電気システムの一部を形成することのできるこの光学式センサーが出力を発生させることになろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、上記の欠点のうちの少なくとも1つを克服または軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面によれば、液晶材料と、互いに離れた関係にされていて前記液晶材料が接触する第1と第2の導電性コンタクトと、その第1と第2の導電性コンタクトに電気的に接続されていて、液晶材料の電気的特性を測定する構成の電気的特性測定装置とを備えていて;液晶材料が、分極状態と非分極状態の間で相変化する転移温度Tを持ち、分極状態と非分極状態の間のその相変化により、液晶材料の電気的特性の変化が引き起こされる、電気式温度センサーが提供される。
【0006】
したがってこの電気式温度センサーを、電気システムに容易に組み込むことのできる出力付きの安価な温度センサーとして用いることができる。
【0007】
分極状態が強誘電相であり、非分極状態が非強誘電相であることが好ましい。あるいは分極状態がフェリ誘電相であり、非分極状態が非フェリ誘電相であってもよい。あるいは分極状態は強誘電相またはフェリ誘電相であてもよく、非分極状態は反強誘電相であってもよい。
【0008】
電気的特性の変化は階段状の変化であることが望ましい。電気的特性が階段状に変化すると、測定された電気的特性が何であるかに応じ、液晶材料がどの状態にあるかがより直接的にわかる。
【0009】
電気的特性は、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスのうちの1つであることが望ましい。
【0010】
液晶材料に含まれる液晶は揃っていることが有利である。
【0011】
第1と第2の導電性コンタクトが平行なプレートであり、液晶材料がその間に収容されていることが好ましい。
【0012】
強誘電相はキラル・スメクチックC相であることが望ましい。
【0013】
非強誘電相は、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相のうちの1つであることが望ましい。反強誘電相の一例は、反強誘電性スメクチック相である。
【0014】
液晶材料の電気的特性の変化は、第1と第2の導電性コンタクトを通じて供給される電気信号によってその第1と第2の導電性コンタクトを通じて測定されることが好ましい。
【0015】
電気信号は少なくとも1つのパルスを含むことが望ましい。
【0016】
電気信号は周期的であることが有利である。
【0017】
電気信号は振動することが好ましい。
【0018】
振動は15kHz未満の周波数を持つことが有利である。いくつかの実施態様では、電気信号の振動周波数を10kHz未満にすることができる。
【0019】
振動が1kHz未満の周波数を持ち、電気的特性の測定可能な変化はキャパシタンスの変化であることが望ましい。
【0020】
あるいは振動が1kHzよりも大きな周波数を持ち、電気的特性の測定可能な変化はコンダクタンスの変化である。
【0021】
Tは150℃未満の値を持つことが好ましい。
【0022】
電気式温度センサーは、複数の温度センサー・セルを含んでいて、各セルは、上記の電気式温度センサーに基づいており、センサー・セルのうちの少なくとも2つの液晶材料の転移温度Tが異なっていることが望ましい。
【0023】
各温度センサー・セルの液晶材料の転移温度Tは、望む範囲にわたって等間隔な一連の転移温度を形成するように選択されていることが有利である。
【0024】
本発明の第2の側面によれば、液晶材料の電気的特性の変化を引き起こす分極状態と非分極状態の間の相変化が起こる転移温度Tを持つ液晶材料を用いた温度感知法であって;この方法が、液晶材料の電気的特性を測定し;測定された電気的特性と閾値の比較に基づいて温度がTよりも上か下かを判断する操作を含む温度感知法が提供される。
【0025】
電気的特性として、第1と第2の導電性コンタクトを横断して供給される第1の周波数の周期的電気信号によって測定した第1の電気的特性が可能であり、この方法は、第2の周波数の周期的電気信号を用い、第1と第2の導電性コンタクトを通じて液晶材料の第2の電気的特性を測定する操作をさらに含んでいる。
【0026】
電気的特性は、周波数が異なる2つ以上の成分を含む周期的電気信号によって測定することができ、この方法は、周波数が異なる2つ以上の成分に対する液晶材料の応答を分解し、その液晶材料の第1の電気的特性を、電気信号の成分のうちの1つに対するその液晶材料の応答によって測定し、その液晶材料の第2の電気的特性を、その電気信号の別の成分に対するその液晶材料の応答によって測定する操作をさらに含んでいる。
【0027】
測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性は、異なる周波数で測定された同じ電気的特性であってよい。
【0028】
測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性は、異なる電気的特性であってよい。
【0029】
2つ以上の電気的特性は、2つ以上の異なる周波数で個別に測定することができる。
【0030】
測定された第1の電気的特性はキャパシタンスが可能であり、測定された第2の電気的特性はコンダクタンスが可能であり、キャパシタンスは、コンダクタンスの測定に用いる周波数よりも小さい周波数を用いて測定する。
【0031】
この方法は、測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性を比較してセンサーの補正された出力を決定する操作をさらに含むことができる。
【0032】
この方法は、第1と第2の導電性コンタクトを通じて各セルの液晶材料の電気的特性を測定し;温度が存在する範囲として、近接した転移温度Tを持つ2つの温度センサー・セルで測定された液晶材料の電気的特性によって規定される範囲を明らかにする操作を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の上記の特徴に関するいくつかの実施態様では、分極状態は強誘電相であり、非分極状態は非強誘電相である。しかし本発明の別の実施態様では、分極状態がフェリ誘電相であり、非分極状態が非フェリ誘電相であることが有利である可能性がある。
【0034】
本発明のさまざまな側面の他の好ましい特徴と有利な特徴は以下の説明に現われるであろう。
【0035】
単なる例示としての添付の図面を参照し、本発明の特別な実施態様についてこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施態様による温度センサーの全体図である。見やすくするため一部を透明にしてある。
【図2】図1に示した温度センサーの側面図である。
【図3】液晶材料AS661の化学構造である。
【図4】液晶材料AS620の化学構造である。
【図5】異なる3つの周波数での液晶材料KC FLC 10のキャパシタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図6】異なる3つの周波数でのKC FLC 10のコンダクタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図7】3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合したAIS179のキャパシタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図8】液晶材料AS661が揃ったサンプルとそうでないサンプルの両方について、その液晶材料のキャパシタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【図9】本発明の別の側面による温度センサーの全体図である。
【図10】KC FLC 10のキャパシタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【図11】KC FLC 10のコンダクタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、温度センサー10は、第1の基板13aと第2の基板13bに挟まれたある量の液晶材料12を含んでいる。各基板13aと13bは、液晶と接触する電気的接触プレート14と16をそれぞれ有する。各接触プレート14、16には導電性部材18、20が取り付けられていて、その導電性部材18、20により、温度センサー10を、そのセンサーが一部を形成する可能性のある任意の電子回路に電気的に接続することが可能になる。図1からわかるように、接触プレート14と導電性部材18、接触プレート16と導電性部材20(どれも点線で示してある)は一体にすることができる。この実施態様では、基板13aと13bは、接触プレートと導電性部材を形成する導電性ITO(インジウム・スズ酸化物)をコーティングしたスライド・ガラスである。いくつかの実施態様では、基板が必要ないことと、接触プレートと導電性部材を適切な任意の導電性材料で製造できることがわかるであろう。
【0038】
基板13aと13bの間隔を一定に保ち、そのことによって液晶材料の厚さを一定に維持するため、スペーサ21を用いる。ここに記載した実施態様では、スペーサは、厚さが5〜10μmのKapton(登録商標)材料である。別の実施態様では、スペーサは他の材料から製造でき、適切な別の任意の厚さにすることができる。
【0039】
動作することがわかっているセンサーの構成の一例は、表面積が25mm2で間隔が5μmの平行な接触プレート14、16を用いたものである。
【0040】
センサー10は、基板13aと13bをスペーサ21とともに固定して製造する。固定は、基板13a、13bの細長い縁部に沿って適切な接着剤を付着させること、または他の適切な固定法によって実現できる。接触プレート14、16は、図1からはっきりとわかるように、基板13a、13bの長手方向中心線からずれている。基板13a、13bは、接触プレート14、16が互いに向かい合うとともに、基板の面の法線に沿って揃うようにして互いに固定される。接触プレート14、16をこのように揃えると、各基板が他方の基板と重なる部分と重ならない部分ができる。基板13bのそのような重ならない1つの部分をAで示してある。
【0041】
液晶材料12を接触プレート14、16の間に位置させるため、一滴の液晶材料12を、基板13aと13bに挟まれたギャップに隣接するようにして基板13bの部分Aの上に載せる。するとこの液晶は毛管作用によって基板13aと13bの間に引き込まれる。センサー10には、キラル・ネマチック(N*)相または等方(iso.)相にある液晶材料12を充填することが好ましい。液晶材料は、キングストン・ケミカルズ社(ハル、イギリス国)から市販されているKC FLC 10にすることができる。KC FLC 10は約100℃でセンサーに充填する。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様では、液晶材料をポリマーの中に分散させることができる。液晶材料は、例えば微細なカプセルに封入することができる。そうすると液晶を基板の表面に直接印刷することが可能になろう。
【0043】
液晶材料12がセンサー10の中に挿入されると、液晶材料12を大気から隔離するためそのセンサーを適切な被覆材を用いて被覆することができる。こうすると、センサー10に不正確な結果を生じさせる可能性のある液晶材料12の汚染が阻止される。
【0044】
液晶材料は、特定の温度において分極状態または非分極状態で存在する。分極状態で存在する材料の例として、強誘電性材料やフェリ誘電性材料がある。強誘電性材料とフェリ誘電性材料は、自発的電気的分極を持っていて、外部電場の印加によってその分極を逆転させることができる。強誘電相では、液晶材料内の双極子は揃っているのに対し、フェリ誘電相では、双極子構造の隣り合った部分(例えば層)は、同じ方向に揃うか逆方向に揃うことができる。その結果、マクロなレベルで正味の分極を持つフェリ誘電性液晶材料になるが、その分極の程度は等価な強誘電相よりも小さい。単一の液晶材料が温度によって強誘電相とフェリ誘電相の両方を持つことが可能であることに注意されたい。
【0045】
強誘電性材料とフェリ誘電性材料は、温度が変化する結果として分極状態と非分極状態の間で相変化する可能性がある。非分極状態は非強誘電相または非フェリ誘電相が可能である。非強誘電相の例として、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相などがある。反強誘電相(例えば反強誘電性キラル・スメクチックC(SmC*A)相)は、(本発明の実施態様で使用できる)薄膜構造における非分極状態であると考えられる。なぜなら、液晶の個々の層は分極しているにもかかわらず、薄膜構造では、多数の層が交互に隣り合って液晶材料内に存在しているため正味の分極がなくなるからである。同様に、いくつかの相(例えば強誘電性キラル・スメクチックC(SmC*)相)は、薄膜構造の内部で分極状態であると考えられる。なぜなら、層の間で分極が螺旋状に変化することが原因でマクロなレベルでは液晶材料の正味の分極はゼロであると考えられるにもかかわらず、薄膜構造では液晶材料内の層の数が完全な1つの螺旋サイクルに必要な層の数よりも少ないからである。
【0046】
液晶材料は、例えば厚さが約1〜50μmである場合に薄膜構造を持つと言える。温度センサー10は、薄膜構造を持つ液晶材料12を含むことができる。
【0047】
温度センサーで使用できて強誘電相と非強誘電相の間で相変化する液晶材料の例として、KC FLC 10、AS661(その両方とも、上記のキングストン・ケミカルズ社から市販されている)や、フェリックスM4851/050(クラリアント社、ヘヒスト、ドイツ国から市販されている)がある。AS661の化学構造を図3に示す。
【0048】
使用可能でフェリ誘電相と非フェリ誘電相の間で相変化する液晶材料の例として、AIS 179とAS 620がある。これらはやはりキングストン・ケミカルズ社から入手できる。AS 620の化学構造を図4に示す。
【0049】
使用時には、導電性部材18、20を通じてセンサー10を誘電ブリッジなどの電気的特性測定装置(図示せず)に接続する。その電気的特性測定装置を用いて液晶材料の少なくとも1つの電気的特性を測定する。測定可能な電気的特性の例として、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスなどがある。液晶材料の適切な任意の電気的特性を測定することができる。センサーの形状は、測定する液晶材料の電気的特性によって異なる可能性がある。例えば液晶材料のインダクタンスを測定するには、センサーは、キャパシタンスまたはコンダクタンスの測定に用いるものより著しく大きい必要があろう。
【0050】
センサーの温度が変化するにつれて液晶材料の状態が変化する可能性がある。そのため液晶が相転移温度にまたがって温度変化すると液晶材料が第1の状態と第2の状態の間で切り換わる。相変化が起こる温度は周囲の圧力にも支配される。汚染物質(気体、液体、固体など)が液晶材料の中に侵入しても相転移温度に影響が及ぶ可能性がある。興味の対象となる相変化は分極状態と非分極状態の間の相変化であり、例として、強誘電相と非強誘電相の間、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相の間の相変化がある。この相変化は相転移温度Tで起こる。
【0051】
大気圧における上記の液晶材料の一連の相転移を以下に示す。
KC FLC 10:SmC* 63℃ SmA 98℃ N 108℃ Iso.
フェリックスM4851/050:結晶 -20℃ SmC* 64.4℃ SmA 68.9℃ N 73.9℃ Iso.
AIS 179:結晶 33℃ SmCA* 61℃ SmCFI1* 66℃ SmCFI2* 71℃ SmC* 77℃ SmA 89℃ Iso.
AS 620:結晶 67.7℃ SmCA* 97.8℃ SmCγ* 99.0℃ SmC* 109.4℃ SmA 116.6℃ Iso.
AS 661:結晶 53.3℃ SmCA* 78.3℃ SmCγ* 82.0℃ SmC* 90.7℃ SmA 105.7℃ Iso.
【0052】
液晶の最も一般的な強誘電相は、液晶分子が層になって存在するキラル・スメクチックC(SmC*)相である。各分子は、層の法線に対して一定の傾斜角で傾いている。層が連続していると傾きの方向が徐々に変化するため、分子は仮想的な円錐の表面上で1つの層から別の層へと層の法線のまわりを歳差運動する。強誘電特性を有する公知の他の液晶相として、キラル・スメクチックI(Sm I*)相とキラル・スメクチックF(Sm F*)相がある。
【0053】
公知のフェリ誘電液晶相はスメクチックC*FI1であり、これは中間3層相としても知られている。
【0054】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間の相変化により、液晶材料の電気的特性(例えばキャパシタンスやコンダクタンス)は、他のどの状態間の相変化におけるよりも著しく大きく変化する。それを表1と表2に見ることができる。
【0055】
【表1】
【0056】
表1は、強誘電相(キラル・スメクチックC(SmC*)相)と非強誘電相(スメクチックA(Sm A)相)の間のキャパシタンスの変化が、それよりもはるかに小さい非強誘電相(ネマチック(N)相、等方(Iso.)相、スメクチックA(Sm A)相、キラル・ネマチック(N*)相)の間の相転移でのキャパシタンスの変化よりもほぼ1桁大きいことを示している。相1と相2のキャパシタンスの値と比べたキャパシタンス変化の相対的な大きさは、強誘電相と非強誘電相の間の相転移では他のどの相転移よりもはるかに大きいことにも注意されたい。表1の結果はすべて、表面積が25mm2で間隔が約5μmの平行な接触プレート14、16と、一様に並んだ液晶とを用いて得られた。
【0057】
【表2】
【0058】
同様に、表2は、強誘電相と非強誘電相の間のコンダクタンスの変化が、変化の測定に用いる信号の周波数に応じてほぼ1桁または2桁大きくなりうることを示している。これは、非強誘電相の間の相転移におけるコンダクタンスの変化よりも著しく大きい。相1と相2のコンダクタンスの値と比べたコンダクタンス変化の相対的な大きさは、強誘電相と非強誘電相の間の相転移では他のどの相転移よりもはるかに大きいことにも注意されたい。表2の結果はすべて、表面積が25mm2で間隔が約5μmの平行な接触プレート14、16と、一様に並んだ液晶とを用いて得られた。
【0059】
表1と表2は、液晶材料SCE 13とAS 661を用いた場合に強誘電相と非強誘電相の間で変化するときの結果も示している。本発明では、(すでに言及した材料に加え)、やはり市販されているこれらの材料を使用することができる。
【0060】
フェリ誘電相と非フェリ誘電相の間の変化が原因で液晶材料の電気的特性の測定値に及ぶ影響は、強誘電相と非強誘電相の間で相変化する液晶材料を含む同様のセンサーよりも小さいであろう。しかしフェリ誘電状態が関与する相変化が原因となった液晶材料の電気的特性の変化はそれでも測定可能であろう。そのためフェリ誘電相を持つ液晶材料を利用して本発明を実施することもできる。
【0061】
キャパシタンスとコンダクタンスの測定値は、温度と測定周波数の影響を受けるだけでなく、センサーの構造(例えば接触プレートの面積や、その間に挟まれた液晶材料の厚さ)の影響も受けることになろう。しかし分極相と非分極相のコンダクタンスとキャパシタンスの定量的な関係は同じままであろう。
【0062】
表1と表2にそれぞれ示したキャパシタンスの変化とコンダクタンスの変化を測定するため、導電性部材を通じ、大きさが約50mVの振動するAC電気信号を液晶材料12に供給した。使用したこの電気信号の周波数は、表の第5列に示してある。
【0063】
振動するAC電気信号を使用したが、適切な任意の周期的信号(例えばパルスやオフセットDC振動信号)を使用することもできよう。単一のパルスも使用できる。この単一のパルスは、適切な周波数で変調してもよいし、変調しなくてもよい。
【0064】
液晶材料12のキャパシタンスとコンダクタンスは、導電性部材18、20を通じて液晶材料12を横断するように接続した誘電ブリッジによって測定することができる。この場合に誘電ブリッジは、市販されているウェイン・カー社(チチェスター、イギリス国)の高精度部品分析器6430Aである。しかしキャパシタンスまたはコンダクタンスの変化を測定するための適切な任意の装置を使用できることがわかるであろう。実験用では、センサー10の温度を適切な任意の制御装置(例えば、THMS 600ホット・ステージを備える市販のリンカム社(タッドワース、イギリス国)製TMS 93温度制御装置)によって制御することができる。
【0065】
キャパシタンスまたはコンダクタンスの変化を測定するため、問題の相転移のそれぞれの側の相にある液晶材料を測定する。これは、液晶が第1の相にあるときに相転移温度未満の温度で第1の測定値を取得し(相転移温度は各表の第4列に示される)、液晶が第2の相にあるときに相転移温度よりも高い温度で第2の測定値を取得することによってなされる。
【0066】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間に相変化が存在するときには液晶材料12のキャパシタンスとコンダクタンスが大きく変化するため、キャパシタンスおよび/またはコンダクタンスを測定することで液晶材料12がどの相にあるかを検出できる。電気的特性(例えばキャパシタンスまたはコンダクタンス)は液晶材料の相に依存するため、電気的特性の閾値を選択し、その閾値よりも上では液晶材料が1つの相にあり、その閾値よりも下では液晶材料が別の相にあるようできる。この閾値は、1つの値にすることができる。このようにすると、液晶材料がどの相にあるかがわかる結果として、温度が相転移温度よりも上か下かを判断することができる。このように強誘電相から非強誘電相(またはフェリ誘電相から非フェリ誘電相)への相転移温度が望む値の液晶を選択すること、または製造することが可能であるため、センサー10を用いて温度が望む温度よりも上か下かを判断することができる。そのためいくつかの実施態様では、温度センサー10は、温度が変化する結果として分極状態と非分極状態の間で切り換わる温度スイッチと見なすことができる。
【0067】
図5は、KC FLC10に関してキャパシタンスと温度の関係を示すグラフである。測定値は、3つの異なる周波数の電気信号を用いて取得した。強誘電相から非強誘電相(Sn C*からSm A)への相転移温度は63℃である。このグラフは、20Hzと1kHzにおいて、液晶材料12が強誘電相と非強誘電相の間で相変化するときにそのキャパシタンスが大きく変化することを示している。この変化は、階段状の変化として記述することができる。階段状の変化は転移点によって規定され、この場合には転移点は転移温度の63℃である。転移点よりも下の温度では、キャパシタンスは比較的大きな値でほぼ一定である。転移点よりも上の温度では、キャパシタンスは比較的小さな値でほぼ一定である。転移点の周辺(すなわち約62℃〜64℃)では、転移点よりも下の比較的大きな値と転移点よりも上の比較的小さな値の間でかなり急激な変化をする。この急激な変化は階段状の変化である。
【0068】
このグラフは、10kHzの周波数では、20Hzまたは1kHzとは異なり、転移点のいずれの側でもキャパシタンスがほとんど変化しないことも示している。得られる測定値に測定用電気信号が及ぼす効果についてはあとで詳細に説明する。
【0069】
図6は、KC FLC10に関してコンダクタンス(対数スケール)と温度の関係を示すグラフである。ここでも、3つの異なる周波数の電気信号を用いて測定値を取得した。このグラフは、3つの周波数20Hz、1kHz、10kHzのすべてで、液晶材料12が強誘電相と非強誘電相の間で相変化するときにそのコンダクタンスが階段状の変化をすることを示している。すべての周波数において、液晶材料12のコンダクタンスは転移点(転移温度63℃)よりも下の温度でほぼ一定であり、比較的大きな値である。この値は周波数に依存する。液晶材料12のコンダクタンスは、転移点よりも上の温度でもほぼ一定であり、同じ周波数では転移点よりも下での値と比べて相対的に小さな値である。各グラフの右側に向かう階段の底部は特に10kHzでそれほど明確ではないが、この効果は、対数スケールを採用したことで誇張されている。この場合にも、得られる測定値に測定用電気信号が及ぼす効果についてはあとで詳細に説明する。
【0070】
図7は、3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合した液晶材料AIS179のキャパシタンスと温度の関係を示すグラフである。このグラフに示したキャパシタンスの測定値は200Hzの周波数で取得した。液晶材料の温度が上昇するにつれて液晶材料の相が反強誘電(SmC*A)相から強誘電(SmC*)相(すなわち非分極状態から分極状態)へと変化する。相が変化するときに液晶材料のキャパシタンスの大きな変化が起こる。それに加え、液晶材料の中には、SmC*A相とSmC*相の間の多数の中間相が存在している。するとキャパシタンスは、印加した電圧に対して例えば図5と図6に見られるよりも滑らかな変化をする。いくつかの場合には、キャパシタンスが温度とともにこのようにより滑らかに変化することで、温度決定の精度が低下する可能性がある。3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合したAIS179以外の材料は、反強誘電相と強誘電相の間で直接的に転移する可能性がある。すると転移温度においてキャパシタンスがより急激に変化するため、温度変化を測定する精度が高くなる。
【0071】
測定された電気的特性の変化は分極状態と非分極状態の間のあらゆる状態変化に伴って起こるとはいえ、変化の大きさは、いろいろな事項(例えばセンサーの構造)のうちで、使用する液晶材料に特に依存することになろう。さらに、測定された電気的特性の変化の大きさは、液晶材料の相転移の特質に依存しうる。例えば測定された電気的特性の変化の大きさは、フェリ誘電状態と非フェリ誘電状態の間の転移に関しては、同じ材料または実質的に同じ材料を用いた強誘電状態と非強誘電状態の間の転移と比べて小さくなる可能性がある。測定された電気的特性の変化の大きさは、問題の相転移に関与する非フェリ誘電相と非強誘電相がどのようなものであるかにも依存する可能性がある。例えばAIS 179を用いると、この液晶材料がフェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電Sm CFI2*相の間で相転移するときに測定された電気的特性の変化は、フェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電相であるSm A相、ネマチック相、等方相いずれかの間で相転移するときに測定された電気的特性の変化よりも小さくなろう。AIS 179では、例えばフェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電相であるSm A相、ネマチック相、等方相いずれかの間の直接的な相転移はないが、それが可能な別の材料が存在しているかもしれない。
【0072】
液晶の大半の応用(例えばディスプレイ)におけるのとは異なり、基板13a、13bに対して液晶材料12を一様に揃える必要はない(図1、図2参照)。ある程度揃える必要はあろうが、一様に揃っている必要はない。液晶材料12の多くの割合は、その長軸が接触プレート14、16によって印加される電場の方向と平行にならないように揃えねばならない。この文脈では、“多くの割合”という表現は、液晶材料が分極状態から非分極状態に変化するとき、その液晶材料の電気的特性の変化が見えるくらいに大きいことを意味する。液晶材料12の多くの割合は、平均的な分子の長軸が、電場と垂直な平面内にあるように揃えることができる。この平面内の分子の長軸の向きは一様でなくてもよい。
【0073】
基板13a、13bに対して液晶材料12を一様に揃えないことには、温度センサー10がより容易かつ安価に製造されるという利点と、温度センサーを高温に加熱した後にゆっくりと冷却して一様に揃うのを促進せずに済むという利点がある。さらに別の利点は、一様に揃えることのできない液晶材料を使用してもよいことである。
【0074】
平均的な分子の長軸が電場に垂直な平面内にある状態で液晶材料が一様に揃っている場合には、センサー10の応答がより大きくなるであろう。その目的で、少なくとも一方の基板13a、13bにアラインメント層(例えばラビング処理されたポリマー層)を設けることができる(アラインメント層は従来から知られている)。
【0075】
図8は、液晶材料AS 661のキャパシタンスを周波数の関数として示したグラフである。AS 661に関する強誘電相と非強誘電相の間の相転移温度は約91℃である。転移温度の両側の100℃と90℃で測定値を取得した。液晶材料が一様に揃ったサンプルと、液晶材料がよく揃っていないサンプルで測定値を取得した。図8から明らかなように、相変化が原因となったキャパシタンスの変化は、よく揃っていないサンプルよりも一様に揃ったサンプルのほうが大きい。しかし一様に揃ったサンプルとよく揃っていないサンプルの間のキャパシタンス変化の違いは約10%にすぎない。一様に揃ったサンプルとよく揃っていないサンプルの間のキャパシタンス変化の違いは、よく揃っていないサンプルの揃い方がさらに低下する場合にはより大きいであろう。しかしキャパシタンスの変化は相変わらず見られるであろう。したがって液晶材料12の揃い方の品質がセンサー10の動作原理に影響を与えることはないが、センサーによって見られるキャパシタンス変化の大きさには影響する可能性がある。
【0076】
液晶材料12が、分子の長軸が印加する電場に平行な状態で一様に揃っている場合には、分極相から非分極相への転移でキャパシタンスの変化はほとんど観察されないかまったく観察されないであろう。なぜなら、この向きでは分極相の自発的分極は電場に垂直であるため、分極と電場の間のカップリングが存在しないからである。
【0077】
本発明の第2の実施態様では、図9に示してあるように、すでに説明したのと同様の一連の温度センサー10a、10b、10c、10d、10eを単一のセンサー組立体22の中に用意する。一連のセンサーの中の各センサーまたはセンサー・セルの操作はすでに説明したのと同じであり、その動作の詳細な説明は省略する。
【0078】
センサー組立体内の各センサー10a、10b、10c、10d、10eに関する分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間の相転移温度は、少なくとも2つの相転移温度が存在するように選択する。一実施態様では、各センサー10a、10b、10c、10d、10eの相転移温度が異なっている。センサー組立体22内の各センサー10a、10b、10c、10d、10eの電気的特性(例えばキャパシタンスおよび/またはコンダクタンス)を測定することにより、温度が各センサー10a、10b、10c、10d、10eの相転移温度よりも上か下かを判断することができる。各センサー10の相転移温度がわかっている場合には、隣り合った相転移温度を持つセンサー10a、10b、10c、10d、10eのコンダクタンスおよび/またはキャパシタンスを測定する、したがって相を知ることによって、温度が存在する範囲を決定できる。
【0079】
例えばセンサー組立体22は、強誘電相から非強誘電相への転移温度がそれぞれ0℃、5℃、10℃、15℃、20℃である5つのセンサー10a、10b、10c、10d、10eを用いて構成することができる。キャパシタンスおよび/またはコンダクタンスの測定からセンサー10aと10bが非強誘電相にあるとわかった場合には、温度は5℃〜10℃の範囲にある。
【0080】
このタイプの温度センサー組立体22の範囲と分解能は、含まれるセンサー10の数と、液晶材料12(したがって各センサー10の相転移温度)の選択に依存する。各センサー10の相転移温度が互いに近いほど、センサー組立体22の分解能は大きくなる。
【0081】
センサー組立体22の一部としてのセンサー10の相対的な配置は望む任意の形態にすることができる。例えばセンサー10は、ランダムに配置すること、または隣り合った相転移温度を持つセンサーが互いに隣り合うように配置すること、または特定の形状を形成するように配置すること、または三次元に配置することができる。センサーは、他の適切な任意の相対的配置にすることができる。
【0082】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間で相転移する結果として起こるコンダクタンスおよび/またはキャパシタンスの変化の大きさは、変化の測定に用いる電気信号の周波数に依存することがわかった。そのことが、KC FLC10のサンプルが強誘電相と非強誘電相の間で相を変えるときのそれぞれキャパシタンスとコンダクタンスの変化を電気信号の周波数の関数として示した図10と図11からはっきりとわかる。図10と図11に示したデータを得るため、各状態にある液晶のキャパシタンスまたはコンダクタンスの間の差を測定した。KC FLC10の相転移温度は63℃であるため、1つの測定を液晶材料が強誘電相にある60℃で行ない、別の測定を液晶材料が非強誘電相にある64℃で行なった。
【0083】
上に説明した相変化の結果として変化する電気的特性が周波数に依存することを利用する本発明のさらに別の側面では、周波数の異なる電気信号を用いて2つの異なる電気的特性を測定する。
【0084】
図10と図11からわかるように、低周波数(例えば500Hz未満)では、上に説明した相変化の結果として生じる液晶材料のキャパシタンスの変化はコンダクタンスの変化よりも著しく大きいことが見いだされた。中程度の周波数の範囲(500Hz〜3000Hz)では、相変化の結果としての液晶材料のキャパシタンスとコンダクタンスの両方に大きな変化が存在する。高周波数(3000Hz〜100000Hz)では、相変化の結果としての液晶材料のコンダクタンスの変化がキャパシタンスの変化よりも著しく大きい。より高い周波数(100000Hz超)では、相変化の結果としての液晶材料のキャパシタンスとコンダクタンスの変化の両方が著しく減少する。上記の周波数範囲の大まかな大きさは適切なすべての液晶材料で同じになろうが、1つの範囲から別の範囲に移る周波数は材料に依存するであろう。上記のケースに関係する材料はKC FLC10である。
【0085】
関係する相転移が原因となったキャパシタンスとコンダクタンスの変化は周波数の関数として変化するため、周波数の異なる2つの電気信号を用いて液晶材料12を調べるとよかろう。あるいは、(例えば単一の電気信号の中に)周波数の異なる2つ以上の成分を含む電気信号を用いて液晶材料12を調べるとよかろう。それが終わると、センサー10の応答を分析し、異なる周波数成分にセンサーがどのように応答したかを明らかにすることができる。液晶材料12は、例えば矩形波電気信号、または鋸波電気信号、または他の何らかの形状を持つ電気信号を用いて調べることができる。
【0086】
各周波数は異なる周波数範囲にあってもよい。例えば周波数が50Hzの電気信号を用いて液晶材料KC FLC10のキャパシタンスを測定し、5000Hzの電気信号を用いて伝導率を測定する。測定値は、液晶材料12がどの相にあるかを判断するのに用いるだけでなく、測定値を比較してセンサー10から補正された出力を提供するのにも用いることができる。例えば所定の周波数において、キャパシタンスの測定値は、センサーの構造のわずかな変化(例えば接触プレート14、16の間の液晶材料12の厚さの変化)の影響を受ける可能性がある。以下に示す例は、センサーの構造とは独立なセンサーの補正された出力を得るため、液晶材料の少なくとも1つの電気的特性に関して2つ以上の周波数でいかに多くの測定が可能であるかを示している。
【0087】
第1の例は以下の通りである。液晶材料12のε'は
ε'=C/C0 (1)
で与えられる。ここにCは液晶材料12のキャパシタンスであり、C0は、プレート間に液晶材料がないセンサーのキャパシタンスである。
【0088】
液晶材料の誘電率において液晶材料のエネルギー損失と関係する虚数成分ε"は、
ε"=G/ωC0 (2)
で与えられる。ここにGは液晶材料のコンダクタンスであり、ωは、測定を行なう周波数である。
【0089】
誘電率の虚数成分ε"は、
ε"=ε'tanδ (3)
によっても与えられる。ここにδは、印加した電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0090】
そのため
C=(G/ω)・(1/tanδ) (4)
となる。
【0091】
周波数ωAでは、キャパシタンスは、
CA=(GA/ωA)・(1/tanδA) (5)
で与えられる。ここにCAは、周波数ωAにおけるセンサーのキャパシタンスであり、GAは、周波数ωAにおける液晶材料のコンダクタンスであり、δAは、周波数ωAにおける印加された電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0092】
周波数ωBでは、キャパシタンスは、
CB=(GB/ωB)・(1/tanδB) (6)
で与えられる。ここにCBは、周波数ωBにおけるセンサーのキャパシタンスであり、GBは、周波数ωBにおける液晶材料のコンダクタンスであり、δBは、周波数ωBにおける印加された電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0093】
したがって以下の式が得られる。
CA/CB=(GA/GB)・(ωB/ωA)・(tanδB/tanδA)またはCAGB/CBGA=(ωB/ωA)・(tanδB/tanδA) (7)
【0094】
ωAとωBは選択された値であり、δAとδBは、液晶材料の材料特性にだけ依存する値であるため、CAGBとCBGAの比は、センサーの構造とは独立である。そのためCAGBとCBGAの比は、液晶材料の厚さの変化の影響を受けない。
【0095】
このタイプの測定は特に有利である。なぜならωAとωBを、上に説明した異なる周波数範囲に存在するように選択できるからである。例えばωAをCAが大きくてGAが小さくなる周波数に選択し、ωBをGBが大きくてCBが小さくなる周波数に選択すると、CAGB/CBGAの値は、CA、GB、CB、GAの個々の値のどれよりも著しく大きくなろう。補正されたセンサー出力CAGB/CBGAがCA、GB、CB、GAのいずれよりも著しく大きいというのは、液晶材料の状態変化が原因で補正されたセンサー出力に存在するあらゆる急激な変化がより直接的に測定されることを意味する。
【0096】
液晶材料の同じ電気的特性を異なる周波数で測定することによって補正されたセンサー出力を提供することもできる。その例を以下に示す。
【0097】
液晶材料12を2枚の似た平行なプレートの間に挟むと、プレートと液晶材料のキャパシタンスCは、
C=εε0A/d (8)
によって与えられる。ここにεは液晶材料の誘電率であり、ε0は真空の誘電率(8.854×10-12F/m)であり、Aは導電性プレート14、16の面積であり、dはプレートの間隔である。
【0098】
所定の周波数fAでは、間隔がd1だと、キャパシタンスC1fAは、
C1fA=εAε0A/d1 (9)
で定義される。ここにεAは、周波数fAにおける液晶材料の誘電率である。
【0099】
別の周波数fBでは、キャパシタンスは、
C1fB=εBε0A/d1 (10)
で定義される。ここにεBは、周波数fBにおける液晶材料の誘電率である。
【0100】
プレート14、16の間隔がd2に変化すると、周波数fAでのキャパシタンスは、
C2fA=εAε0A/d2 (11)
によって与えられる。
【0101】
同様に、周波数fBでは、キャパシタンスは、
C2fB=εBε0A/d2 (12)
となる。
【0102】
したがって
C1fA/C1fB=εA/εB (13)
C2fA/C2fB=εA/εB (14)
となる。
【0103】
εAとεBは、センサーの構造とは独立な液晶材料の特性であるため、2つの異なる周波数における液晶材料12のキャパシタンスの比もセンサーの構造(例えばプレート14、16の間隔)とは独立である。そのためこの測定値は液晶材料12の厚さの変化の影響を受けないため、補正された出力として使用できる。
【0104】
異なる周波数での電気的特性の測定値を用いる別の例は、コンダクタンスを用いるものである。
【0105】
液晶材料のコンダクタンスGは、
G=ωC0ε" (15)
によって与えられる。ここにωは測定用電子信号の角周波数であり、C0は空のセルのキャパシタンス、すなわち液晶材料なしの空気中のセンサーのキャパシタンスであり、ε"は誘電率のうちで液晶材料のエネルギー損失と関係する虚数部である。
【0106】
周波数ωAでは、コンダクタンスGAは、
GA=ωAC0ε"A (16)
によって定義される。ここにε" Aは、周波数ωAにおける液晶の誘電率の虚数部である。
【0107】
同様に、別の周波数ωBでは、コンダクタンスGBは、
GB=ωBC0ε"B (17)
によって定義される。ここにε" Bは、周波数ωBにおける液晶の誘電率の虚数部である。
【0108】
したがって、
GA/GB=ωAε"A/ωBε" B(18)
となる。
【0109】
したがってGAとGBの比は、液晶材料の特性と測定する周波数にだけ依存する量であり、電気的接触プレート14、16の形状には依存しない。そのためこの比も補正されたセンサー出力として使用できる。
【0110】
これらの補正されたセンサー出力が可能である。なぜなら、測定に使用する周波数に関係なく、分極状態と非分極状態の間の相転移が同じ温度で起こり、測定された電気的特性(例えばキャパシタンスまたはコンダクタンス)の階段状の変化も同じ温度で起こるからである。
【0111】
ここに説明した実施態様は、平行なプレートである電気的コンタクトを含んでいたが、任意の形状の電気的コンタクトを使用できる。コンタクトは、互いに離れていて液晶材料と接触する任意のペアにすることができる。例えばコンタクトを一対のピンにすること、ピンとプレートにすること、任意の形状または向きのプレートにすることができる。さらに、ここに説明した実施態様は一対のプレートに挟まれたある厚さの液晶材料を含んでいるが、平坦な形状のセンサー、すなわち両方のコンタクトが実質的に同じ平面内にあるセンサーを使用できることがわかるであろう。そのような1つの配置に、組み合わされたプレート状コンタクトが含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーと温度感知法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサーには、一般的な用途でさまざまな応用がある。光学的に読み取ることのできる温度センサーの一部として液晶を利用することが知られている。そのような一例は、一般に入手可能な“ディジタル式”ストリップ温度計である。温度センサー(例えば温度計)としての液晶の利用は、他のタイプの温度計(例えば水銀に基づく温度計)よりも製造費が安いことが利点になろう。液晶を利用する大半の応用では、液晶を望むように機能させるために揃える必要がある。
【0003】
光学式液晶温度計は複雑であり、電子システムに組み込むのに比較的コストがかかるであろう。その1つの理由は、温度に応答する液晶のあらゆる状態変化を検出するため、光源と光学的センサー手段の両方を用意せねばならないことにあろう。したがって電気システムの一部を形成することのできるこの光学式センサーが出力を発生させることになろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、上記の欠点のうちの少なくとも1つを克服または軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面によれば、液晶材料と、互いに離れた関係にされていて前記液晶材料が接触する第1と第2の導電性コンタクトと、その第1と第2の導電性コンタクトに電気的に接続されていて、液晶材料の電気的特性を測定する構成の電気的特性測定装置とを備えていて;液晶材料が、分極状態と非分極状態の間で相変化する転移温度Tを持ち、分極状態と非分極状態の間のその相変化により、液晶材料の電気的特性の変化が引き起こされる、電気式温度センサーが提供される。
【0006】
したがってこの電気式温度センサーを、電気システムに容易に組み込むことのできる出力付きの安価な温度センサーとして用いることができる。
【0007】
分極状態が強誘電相であり、非分極状態が非強誘電相であることが好ましい。あるいは分極状態がフェリ誘電相であり、非分極状態が非フェリ誘電相であってもよい。あるいは分極状態は強誘電相またはフェリ誘電相であてもよく、非分極状態は反強誘電相であってもよい。
【0008】
電気的特性の変化は階段状の変化であることが望ましい。電気的特性が階段状に変化すると、測定された電気的特性が何であるかに応じ、液晶材料がどの状態にあるかがより直接的にわかる。
【0009】
電気的特性は、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスのうちの1つであることが望ましい。
【0010】
液晶材料に含まれる液晶は揃っていることが有利である。
【0011】
第1と第2の導電性コンタクトが平行なプレートであり、液晶材料がその間に収容されていることが好ましい。
【0012】
強誘電相はキラル・スメクチックC相であることが望ましい。
【0013】
非強誘電相は、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相のうちの1つであることが望ましい。反強誘電相の一例は、反強誘電性スメクチック相である。
【0014】
液晶材料の電気的特性の変化は、第1と第2の導電性コンタクトを通じて供給される電気信号によってその第1と第2の導電性コンタクトを通じて測定されることが好ましい。
【0015】
電気信号は少なくとも1つのパルスを含むことが望ましい。
【0016】
電気信号は周期的であることが有利である。
【0017】
電気信号は振動することが好ましい。
【0018】
振動は15kHz未満の周波数を持つことが有利である。いくつかの実施態様では、電気信号の振動周波数を10kHz未満にすることができる。
【0019】
振動が1kHz未満の周波数を持ち、電気的特性の測定可能な変化はキャパシタンスの変化であることが望ましい。
【0020】
あるいは振動が1kHzよりも大きな周波数を持ち、電気的特性の測定可能な変化はコンダクタンスの変化である。
【0021】
Tは150℃未満の値を持つことが好ましい。
【0022】
電気式温度センサーは、複数の温度センサー・セルを含んでいて、各セルは、上記の電気式温度センサーに基づいており、センサー・セルのうちの少なくとも2つの液晶材料の転移温度Tが異なっていることが望ましい。
【0023】
各温度センサー・セルの液晶材料の転移温度Tは、望む範囲にわたって等間隔な一連の転移温度を形成するように選択されていることが有利である。
【0024】
本発明の第2の側面によれば、液晶材料の電気的特性の変化を引き起こす分極状態と非分極状態の間の相変化が起こる転移温度Tを持つ液晶材料を用いた温度感知法であって;この方法が、液晶材料の電気的特性を測定し;測定された電気的特性と閾値の比較に基づいて温度がTよりも上か下かを判断する操作を含む温度感知法が提供される。
【0025】
電気的特性として、第1と第2の導電性コンタクトを横断して供給される第1の周波数の周期的電気信号によって測定した第1の電気的特性が可能であり、この方法は、第2の周波数の周期的電気信号を用い、第1と第2の導電性コンタクトを通じて液晶材料の第2の電気的特性を測定する操作をさらに含んでいる。
【0026】
電気的特性は、周波数が異なる2つ以上の成分を含む周期的電気信号によって測定することができ、この方法は、周波数が異なる2つ以上の成分に対する液晶材料の応答を分解し、その液晶材料の第1の電気的特性を、電気信号の成分のうちの1つに対するその液晶材料の応答によって測定し、その液晶材料の第2の電気的特性を、その電気信号の別の成分に対するその液晶材料の応答によって測定する操作をさらに含んでいる。
【0027】
測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性は、異なる周波数で測定された同じ電気的特性であってよい。
【0028】
測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性は、異なる電気的特性であってよい。
【0029】
2つ以上の電気的特性は、2つ以上の異なる周波数で個別に測定することができる。
【0030】
測定された第1の電気的特性はキャパシタンスが可能であり、測定された第2の電気的特性はコンダクタンスが可能であり、キャパシタンスは、コンダクタンスの測定に用いる周波数よりも小さい周波数を用いて測定する。
【0031】
この方法は、測定された第1の電気的特性と測定された第2の電気的特性を比較してセンサーの補正された出力を決定する操作をさらに含むことができる。
【0032】
この方法は、第1と第2の導電性コンタクトを通じて各セルの液晶材料の電気的特性を測定し;温度が存在する範囲として、近接した転移温度Tを持つ2つの温度センサー・セルで測定された液晶材料の電気的特性によって規定される範囲を明らかにする操作を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の上記の特徴に関するいくつかの実施態様では、分極状態は強誘電相であり、非分極状態は非強誘電相である。しかし本発明の別の実施態様では、分極状態がフェリ誘電相であり、非分極状態が非フェリ誘電相であることが有利である可能性がある。
【0034】
本発明のさまざまな側面の他の好ましい特徴と有利な特徴は以下の説明に現われるであろう。
【0035】
単なる例示としての添付の図面を参照し、本発明の特別な実施態様についてこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施態様による温度センサーの全体図である。見やすくするため一部を透明にしてある。
【図2】図1に示した温度センサーの側面図である。
【図3】液晶材料AS661の化学構造である。
【図4】液晶材料AS620の化学構造である。
【図5】異なる3つの周波数での液晶材料KC FLC 10のキャパシタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図6】異なる3つの周波数でのKC FLC 10のコンダクタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図7】3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合したAIS179のキャパシタンスを温度の関数として示したグラフである。
【図8】液晶材料AS661が揃ったサンプルとそうでないサンプルの両方について、その液晶材料のキャパシタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【図9】本発明の別の側面による温度センサーの全体図である。
【図10】KC FLC 10のキャパシタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【図11】KC FLC 10のコンダクタンスの変化を周波数の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、温度センサー10は、第1の基板13aと第2の基板13bに挟まれたある量の液晶材料12を含んでいる。各基板13aと13bは、液晶と接触する電気的接触プレート14と16をそれぞれ有する。各接触プレート14、16には導電性部材18、20が取り付けられていて、その導電性部材18、20により、温度センサー10を、そのセンサーが一部を形成する可能性のある任意の電子回路に電気的に接続することが可能になる。図1からわかるように、接触プレート14と導電性部材18、接触プレート16と導電性部材20(どれも点線で示してある)は一体にすることができる。この実施態様では、基板13aと13bは、接触プレートと導電性部材を形成する導電性ITO(インジウム・スズ酸化物)をコーティングしたスライド・ガラスである。いくつかの実施態様では、基板が必要ないことと、接触プレートと導電性部材を適切な任意の導電性材料で製造できることがわかるであろう。
【0038】
基板13aと13bの間隔を一定に保ち、そのことによって液晶材料の厚さを一定に維持するため、スペーサ21を用いる。ここに記載した実施態様では、スペーサは、厚さが5〜10μmのKapton(登録商標)材料である。別の実施態様では、スペーサは他の材料から製造でき、適切な別の任意の厚さにすることができる。
【0039】
動作することがわかっているセンサーの構成の一例は、表面積が25mm2で間隔が5μmの平行な接触プレート14、16を用いたものである。
【0040】
センサー10は、基板13aと13bをスペーサ21とともに固定して製造する。固定は、基板13a、13bの細長い縁部に沿って適切な接着剤を付着させること、または他の適切な固定法によって実現できる。接触プレート14、16は、図1からはっきりとわかるように、基板13a、13bの長手方向中心線からずれている。基板13a、13bは、接触プレート14、16が互いに向かい合うとともに、基板の面の法線に沿って揃うようにして互いに固定される。接触プレート14、16をこのように揃えると、各基板が他方の基板と重なる部分と重ならない部分ができる。基板13bのそのような重ならない1つの部分をAで示してある。
【0041】
液晶材料12を接触プレート14、16の間に位置させるため、一滴の液晶材料12を、基板13aと13bに挟まれたギャップに隣接するようにして基板13bの部分Aの上に載せる。するとこの液晶は毛管作用によって基板13aと13bの間に引き込まれる。センサー10には、キラル・ネマチック(N*)相または等方(iso.)相にある液晶材料12を充填することが好ましい。液晶材料は、キングストン・ケミカルズ社(ハル、イギリス国)から市販されているKC FLC 10にすることができる。KC FLC 10は約100℃でセンサーに充填する。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様では、液晶材料をポリマーの中に分散させることができる。液晶材料は、例えば微細なカプセルに封入することができる。そうすると液晶を基板の表面に直接印刷することが可能になろう。
【0043】
液晶材料12がセンサー10の中に挿入されると、液晶材料12を大気から隔離するためそのセンサーを適切な被覆材を用いて被覆することができる。こうすると、センサー10に不正確な結果を生じさせる可能性のある液晶材料12の汚染が阻止される。
【0044】
液晶材料は、特定の温度において分極状態または非分極状態で存在する。分極状態で存在する材料の例として、強誘電性材料やフェリ誘電性材料がある。強誘電性材料とフェリ誘電性材料は、自発的電気的分極を持っていて、外部電場の印加によってその分極を逆転させることができる。強誘電相では、液晶材料内の双極子は揃っているのに対し、フェリ誘電相では、双極子構造の隣り合った部分(例えば層)は、同じ方向に揃うか逆方向に揃うことができる。その結果、マクロなレベルで正味の分極を持つフェリ誘電性液晶材料になるが、その分極の程度は等価な強誘電相よりも小さい。単一の液晶材料が温度によって強誘電相とフェリ誘電相の両方を持つことが可能であることに注意されたい。
【0045】
強誘電性材料とフェリ誘電性材料は、温度が変化する結果として分極状態と非分極状態の間で相変化する可能性がある。非分極状態は非強誘電相または非フェリ誘電相が可能である。非強誘電相の例として、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相などがある。反強誘電相(例えば反強誘電性キラル・スメクチックC(SmC*A)相)は、(本発明の実施態様で使用できる)薄膜構造における非分極状態であると考えられる。なぜなら、液晶の個々の層は分極しているにもかかわらず、薄膜構造では、多数の層が交互に隣り合って液晶材料内に存在しているため正味の分極がなくなるからである。同様に、いくつかの相(例えば強誘電性キラル・スメクチックC(SmC*)相)は、薄膜構造の内部で分極状態であると考えられる。なぜなら、層の間で分極が螺旋状に変化することが原因でマクロなレベルでは液晶材料の正味の分極はゼロであると考えられるにもかかわらず、薄膜構造では液晶材料内の層の数が完全な1つの螺旋サイクルに必要な層の数よりも少ないからである。
【0046】
液晶材料は、例えば厚さが約1〜50μmである場合に薄膜構造を持つと言える。温度センサー10は、薄膜構造を持つ液晶材料12を含むことができる。
【0047】
温度センサーで使用できて強誘電相と非強誘電相の間で相変化する液晶材料の例として、KC FLC 10、AS661(その両方とも、上記のキングストン・ケミカルズ社から市販されている)や、フェリックスM4851/050(クラリアント社、ヘヒスト、ドイツ国から市販されている)がある。AS661の化学構造を図3に示す。
【0048】
使用可能でフェリ誘電相と非フェリ誘電相の間で相変化する液晶材料の例として、AIS 179とAS 620がある。これらはやはりキングストン・ケミカルズ社から入手できる。AS 620の化学構造を図4に示す。
【0049】
使用時には、導電性部材18、20を通じてセンサー10を誘電ブリッジなどの電気的特性測定装置(図示せず)に接続する。その電気的特性測定装置を用いて液晶材料の少なくとも1つの電気的特性を測定する。測定可能な電気的特性の例として、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスなどがある。液晶材料の適切な任意の電気的特性を測定することができる。センサーの形状は、測定する液晶材料の電気的特性によって異なる可能性がある。例えば液晶材料のインダクタンスを測定するには、センサーは、キャパシタンスまたはコンダクタンスの測定に用いるものより著しく大きい必要があろう。
【0050】
センサーの温度が変化するにつれて液晶材料の状態が変化する可能性がある。そのため液晶が相転移温度にまたがって温度変化すると液晶材料が第1の状態と第2の状態の間で切り換わる。相変化が起こる温度は周囲の圧力にも支配される。汚染物質(気体、液体、固体など)が液晶材料の中に侵入しても相転移温度に影響が及ぶ可能性がある。興味の対象となる相変化は分極状態と非分極状態の間の相変化であり、例として、強誘電相と非強誘電相の間、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相の間の相変化がある。この相変化は相転移温度Tで起こる。
【0051】
大気圧における上記の液晶材料の一連の相転移を以下に示す。
KC FLC 10:SmC* 63℃ SmA 98℃ N 108℃ Iso.
フェリックスM4851/050:結晶 -20℃ SmC* 64.4℃ SmA 68.9℃ N 73.9℃ Iso.
AIS 179:結晶 33℃ SmCA* 61℃ SmCFI1* 66℃ SmCFI2* 71℃ SmC* 77℃ SmA 89℃ Iso.
AS 620:結晶 67.7℃ SmCA* 97.8℃ SmCγ* 99.0℃ SmC* 109.4℃ SmA 116.6℃ Iso.
AS 661:結晶 53.3℃ SmCA* 78.3℃ SmCγ* 82.0℃ SmC* 90.7℃ SmA 105.7℃ Iso.
【0052】
液晶の最も一般的な強誘電相は、液晶分子が層になって存在するキラル・スメクチックC(SmC*)相である。各分子は、層の法線に対して一定の傾斜角で傾いている。層が連続していると傾きの方向が徐々に変化するため、分子は仮想的な円錐の表面上で1つの層から別の層へと層の法線のまわりを歳差運動する。強誘電特性を有する公知の他の液晶相として、キラル・スメクチックI(Sm I*)相とキラル・スメクチックF(Sm F*)相がある。
【0053】
公知のフェリ誘電液晶相はスメクチックC*FI1であり、これは中間3層相としても知られている。
【0054】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間の相変化により、液晶材料の電気的特性(例えばキャパシタンスやコンダクタンス)は、他のどの状態間の相変化におけるよりも著しく大きく変化する。それを表1と表2に見ることができる。
【0055】
【表1】
【0056】
表1は、強誘電相(キラル・スメクチックC(SmC*)相)と非強誘電相(スメクチックA(Sm A)相)の間のキャパシタンスの変化が、それよりもはるかに小さい非強誘電相(ネマチック(N)相、等方(Iso.)相、スメクチックA(Sm A)相、キラル・ネマチック(N*)相)の間の相転移でのキャパシタンスの変化よりもほぼ1桁大きいことを示している。相1と相2のキャパシタンスの値と比べたキャパシタンス変化の相対的な大きさは、強誘電相と非強誘電相の間の相転移では他のどの相転移よりもはるかに大きいことにも注意されたい。表1の結果はすべて、表面積が25mm2で間隔が約5μmの平行な接触プレート14、16と、一様に並んだ液晶とを用いて得られた。
【0057】
【表2】
【0058】
同様に、表2は、強誘電相と非強誘電相の間のコンダクタンスの変化が、変化の測定に用いる信号の周波数に応じてほぼ1桁または2桁大きくなりうることを示している。これは、非強誘電相の間の相転移におけるコンダクタンスの変化よりも著しく大きい。相1と相2のコンダクタンスの値と比べたコンダクタンス変化の相対的な大きさは、強誘電相と非強誘電相の間の相転移では他のどの相転移よりもはるかに大きいことにも注意されたい。表2の結果はすべて、表面積が25mm2で間隔が約5μmの平行な接触プレート14、16と、一様に並んだ液晶とを用いて得られた。
【0059】
表1と表2は、液晶材料SCE 13とAS 661を用いた場合に強誘電相と非強誘電相の間で変化するときの結果も示している。本発明では、(すでに言及した材料に加え)、やはり市販されているこれらの材料を使用することができる。
【0060】
フェリ誘電相と非フェリ誘電相の間の変化が原因で液晶材料の電気的特性の測定値に及ぶ影響は、強誘電相と非強誘電相の間で相変化する液晶材料を含む同様のセンサーよりも小さいであろう。しかしフェリ誘電状態が関与する相変化が原因となった液晶材料の電気的特性の変化はそれでも測定可能であろう。そのためフェリ誘電相を持つ液晶材料を利用して本発明を実施することもできる。
【0061】
キャパシタンスとコンダクタンスの測定値は、温度と測定周波数の影響を受けるだけでなく、センサーの構造(例えば接触プレートの面積や、その間に挟まれた液晶材料の厚さ)の影響も受けることになろう。しかし分極相と非分極相のコンダクタンスとキャパシタンスの定量的な関係は同じままであろう。
【0062】
表1と表2にそれぞれ示したキャパシタンスの変化とコンダクタンスの変化を測定するため、導電性部材を通じ、大きさが約50mVの振動するAC電気信号を液晶材料12に供給した。使用したこの電気信号の周波数は、表の第5列に示してある。
【0063】
振動するAC電気信号を使用したが、適切な任意の周期的信号(例えばパルスやオフセットDC振動信号)を使用することもできよう。単一のパルスも使用できる。この単一のパルスは、適切な周波数で変調してもよいし、変調しなくてもよい。
【0064】
液晶材料12のキャパシタンスとコンダクタンスは、導電性部材18、20を通じて液晶材料12を横断するように接続した誘電ブリッジによって測定することができる。この場合に誘電ブリッジは、市販されているウェイン・カー社(チチェスター、イギリス国)の高精度部品分析器6430Aである。しかしキャパシタンスまたはコンダクタンスの変化を測定するための適切な任意の装置を使用できることがわかるであろう。実験用では、センサー10の温度を適切な任意の制御装置(例えば、THMS 600ホット・ステージを備える市販のリンカム社(タッドワース、イギリス国)製TMS 93温度制御装置)によって制御することができる。
【0065】
キャパシタンスまたはコンダクタンスの変化を測定するため、問題の相転移のそれぞれの側の相にある液晶材料を測定する。これは、液晶が第1の相にあるときに相転移温度未満の温度で第1の測定値を取得し(相転移温度は各表の第4列に示される)、液晶が第2の相にあるときに相転移温度よりも高い温度で第2の測定値を取得することによってなされる。
【0066】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間に相変化が存在するときには液晶材料12のキャパシタンスとコンダクタンスが大きく変化するため、キャパシタンスおよび/またはコンダクタンスを測定することで液晶材料12がどの相にあるかを検出できる。電気的特性(例えばキャパシタンスまたはコンダクタンス)は液晶材料の相に依存するため、電気的特性の閾値を選択し、その閾値よりも上では液晶材料が1つの相にあり、その閾値よりも下では液晶材料が別の相にあるようできる。この閾値は、1つの値にすることができる。このようにすると、液晶材料がどの相にあるかがわかる結果として、温度が相転移温度よりも上か下かを判断することができる。このように強誘電相から非強誘電相(またはフェリ誘電相から非フェリ誘電相)への相転移温度が望む値の液晶を選択すること、または製造することが可能であるため、センサー10を用いて温度が望む温度よりも上か下かを判断することができる。そのためいくつかの実施態様では、温度センサー10は、温度が変化する結果として分極状態と非分極状態の間で切り換わる温度スイッチと見なすことができる。
【0067】
図5は、KC FLC10に関してキャパシタンスと温度の関係を示すグラフである。測定値は、3つの異なる周波数の電気信号を用いて取得した。強誘電相から非強誘電相(Sn C*からSm A)への相転移温度は63℃である。このグラフは、20Hzと1kHzにおいて、液晶材料12が強誘電相と非強誘電相の間で相変化するときにそのキャパシタンスが大きく変化することを示している。この変化は、階段状の変化として記述することができる。階段状の変化は転移点によって規定され、この場合には転移点は転移温度の63℃である。転移点よりも下の温度では、キャパシタンスは比較的大きな値でほぼ一定である。転移点よりも上の温度では、キャパシタンスは比較的小さな値でほぼ一定である。転移点の周辺(すなわち約62℃〜64℃)では、転移点よりも下の比較的大きな値と転移点よりも上の比較的小さな値の間でかなり急激な変化をする。この急激な変化は階段状の変化である。
【0068】
このグラフは、10kHzの周波数では、20Hzまたは1kHzとは異なり、転移点のいずれの側でもキャパシタンスがほとんど変化しないことも示している。得られる測定値に測定用電気信号が及ぼす効果についてはあとで詳細に説明する。
【0069】
図6は、KC FLC10に関してコンダクタンス(対数スケール)と温度の関係を示すグラフである。ここでも、3つの異なる周波数の電気信号を用いて測定値を取得した。このグラフは、3つの周波数20Hz、1kHz、10kHzのすべてで、液晶材料12が強誘電相と非強誘電相の間で相変化するときにそのコンダクタンスが階段状の変化をすることを示している。すべての周波数において、液晶材料12のコンダクタンスは転移点(転移温度63℃)よりも下の温度でほぼ一定であり、比較的大きな値である。この値は周波数に依存する。液晶材料12のコンダクタンスは、転移点よりも上の温度でもほぼ一定であり、同じ周波数では転移点よりも下での値と比べて相対的に小さな値である。各グラフの右側に向かう階段の底部は特に10kHzでそれほど明確ではないが、この効果は、対数スケールを採用したことで誇張されている。この場合にも、得られる測定値に測定用電気信号が及ぼす効果についてはあとで詳細に説明する。
【0070】
図7は、3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合した液晶材料AIS179のキャパシタンスと温度の関係を示すグラフである。このグラフに示したキャパシタンスの測定値は200Hzの周波数で取得した。液晶材料の温度が上昇するにつれて液晶材料の相が反強誘電(SmC*A)相から強誘電(SmC*)相(すなわち非分極状態から分極状態)へと変化する。相が変化するときに液晶材料のキャパシタンスの大きな変化が起こる。それに加え、液晶材料の中には、SmC*A相とSmC*相の間の多数の中間相が存在している。するとキャパシタンスは、印加した電圧に対して例えば図5と図6に見られるよりも滑らかな変化をする。いくつかの場合には、キャパシタンスが温度とともにこのようにより滑らかに変化することで、温度決定の精度が低下する可能性がある。3重量%のキラル・ドーパントR1011を混合したAIS179以外の材料は、反強誘電相と強誘電相の間で直接的に転移する可能性がある。すると転移温度においてキャパシタンスがより急激に変化するため、温度変化を測定する精度が高くなる。
【0071】
測定された電気的特性の変化は分極状態と非分極状態の間のあらゆる状態変化に伴って起こるとはいえ、変化の大きさは、いろいろな事項(例えばセンサーの構造)のうちで、使用する液晶材料に特に依存することになろう。さらに、測定された電気的特性の変化の大きさは、液晶材料の相転移の特質に依存しうる。例えば測定された電気的特性の変化の大きさは、フェリ誘電状態と非フェリ誘電状態の間の転移に関しては、同じ材料または実質的に同じ材料を用いた強誘電状態と非強誘電状態の間の転移と比べて小さくなる可能性がある。測定された電気的特性の変化の大きさは、問題の相転移に関与する非フェリ誘電相と非強誘電相がどのようなものであるかにも依存する可能性がある。例えばAIS 179を用いると、この液晶材料がフェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電Sm CFI2*相の間で相転移するときに測定された電気的特性の変化は、フェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電相であるSm A相、ネマチック相、等方相いずれかの間で相転移するときに測定された電気的特性の変化よりも小さくなろう。AIS 179では、例えばフェリ誘電Sm CFI1*相と非フェリ誘電相であるSm A相、ネマチック相、等方相いずれかの間の直接的な相転移はないが、それが可能な別の材料が存在しているかもしれない。
【0072】
液晶の大半の応用(例えばディスプレイ)におけるのとは異なり、基板13a、13bに対して液晶材料12を一様に揃える必要はない(図1、図2参照)。ある程度揃える必要はあろうが、一様に揃っている必要はない。液晶材料12の多くの割合は、その長軸が接触プレート14、16によって印加される電場の方向と平行にならないように揃えねばならない。この文脈では、“多くの割合”という表現は、液晶材料が分極状態から非分極状態に変化するとき、その液晶材料の電気的特性の変化が見えるくらいに大きいことを意味する。液晶材料12の多くの割合は、平均的な分子の長軸が、電場と垂直な平面内にあるように揃えることができる。この平面内の分子の長軸の向きは一様でなくてもよい。
【0073】
基板13a、13bに対して液晶材料12を一様に揃えないことには、温度センサー10がより容易かつ安価に製造されるという利点と、温度センサーを高温に加熱した後にゆっくりと冷却して一様に揃うのを促進せずに済むという利点がある。さらに別の利点は、一様に揃えることのできない液晶材料を使用してもよいことである。
【0074】
平均的な分子の長軸が電場に垂直な平面内にある状態で液晶材料が一様に揃っている場合には、センサー10の応答がより大きくなるであろう。その目的で、少なくとも一方の基板13a、13bにアラインメント層(例えばラビング処理されたポリマー層)を設けることができる(アラインメント層は従来から知られている)。
【0075】
図8は、液晶材料AS 661のキャパシタンスを周波数の関数として示したグラフである。AS 661に関する強誘電相と非強誘電相の間の相転移温度は約91℃である。転移温度の両側の100℃と90℃で測定値を取得した。液晶材料が一様に揃ったサンプルと、液晶材料がよく揃っていないサンプルで測定値を取得した。図8から明らかなように、相変化が原因となったキャパシタンスの変化は、よく揃っていないサンプルよりも一様に揃ったサンプルのほうが大きい。しかし一様に揃ったサンプルとよく揃っていないサンプルの間のキャパシタンス変化の違いは約10%にすぎない。一様に揃ったサンプルとよく揃っていないサンプルの間のキャパシタンス変化の違いは、よく揃っていないサンプルの揃い方がさらに低下する場合にはより大きいであろう。しかしキャパシタンスの変化は相変わらず見られるであろう。したがって液晶材料12の揃い方の品質がセンサー10の動作原理に影響を与えることはないが、センサーによって見られるキャパシタンス変化の大きさには影響する可能性がある。
【0076】
液晶材料12が、分子の長軸が印加する電場に平行な状態で一様に揃っている場合には、分極相から非分極相への転移でキャパシタンスの変化はほとんど観察されないかまったく観察されないであろう。なぜなら、この向きでは分極相の自発的分極は電場に垂直であるため、分極と電場の間のカップリングが存在しないからである。
【0077】
本発明の第2の実施態様では、図9に示してあるように、すでに説明したのと同様の一連の温度センサー10a、10b、10c、10d、10eを単一のセンサー組立体22の中に用意する。一連のセンサーの中の各センサーまたはセンサー・セルの操作はすでに説明したのと同じであり、その動作の詳細な説明は省略する。
【0078】
センサー組立体内の各センサー10a、10b、10c、10d、10eに関する分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間の相転移温度は、少なくとも2つの相転移温度が存在するように選択する。一実施態様では、各センサー10a、10b、10c、10d、10eの相転移温度が異なっている。センサー組立体22内の各センサー10a、10b、10c、10d、10eの電気的特性(例えばキャパシタンスおよび/またはコンダクタンス)を測定することにより、温度が各センサー10a、10b、10c、10d、10eの相転移温度よりも上か下かを判断することができる。各センサー10の相転移温度がわかっている場合には、隣り合った相転移温度を持つセンサー10a、10b、10c、10d、10eのコンダクタンスおよび/またはキャパシタンスを測定する、したがって相を知ることによって、温度が存在する範囲を決定できる。
【0079】
例えばセンサー組立体22は、強誘電相から非強誘電相への転移温度がそれぞれ0℃、5℃、10℃、15℃、20℃である5つのセンサー10a、10b、10c、10d、10eを用いて構成することができる。キャパシタンスおよび/またはコンダクタンスの測定からセンサー10aと10bが非強誘電相にあるとわかった場合には、温度は5℃〜10℃の範囲にある。
【0080】
このタイプの温度センサー組立体22の範囲と分解能は、含まれるセンサー10の数と、液晶材料12(したがって各センサー10の相転移温度)の選択に依存する。各センサー10の相転移温度が互いに近いほど、センサー組立体22の分解能は大きくなる。
【0081】
センサー組立体22の一部としてのセンサー10の相対的な配置は望む任意の形態にすることができる。例えばセンサー10は、ランダムに配置すること、または隣り合った相転移温度を持つセンサーが互いに隣り合うように配置すること、または特定の形状を形成するように配置すること、または三次元に配置することができる。センサーは、他の適切な任意の相対的配置にすることができる。
【0082】
分極状態と非分極状態(例えば強誘電相と非強誘電相、またはフェリ誘電相と非フェリ誘電相)の間で相転移する結果として起こるコンダクタンスおよび/またはキャパシタンスの変化の大きさは、変化の測定に用いる電気信号の周波数に依存することがわかった。そのことが、KC FLC10のサンプルが強誘電相と非強誘電相の間で相を変えるときのそれぞれキャパシタンスとコンダクタンスの変化を電気信号の周波数の関数として示した図10と図11からはっきりとわかる。図10と図11に示したデータを得るため、各状態にある液晶のキャパシタンスまたはコンダクタンスの間の差を測定した。KC FLC10の相転移温度は63℃であるため、1つの測定を液晶材料が強誘電相にある60℃で行ない、別の測定を液晶材料が非強誘電相にある64℃で行なった。
【0083】
上に説明した相変化の結果として変化する電気的特性が周波数に依存することを利用する本発明のさらに別の側面では、周波数の異なる電気信号を用いて2つの異なる電気的特性を測定する。
【0084】
図10と図11からわかるように、低周波数(例えば500Hz未満)では、上に説明した相変化の結果として生じる液晶材料のキャパシタンスの変化はコンダクタンスの変化よりも著しく大きいことが見いだされた。中程度の周波数の範囲(500Hz〜3000Hz)では、相変化の結果としての液晶材料のキャパシタンスとコンダクタンスの両方に大きな変化が存在する。高周波数(3000Hz〜100000Hz)では、相変化の結果としての液晶材料のコンダクタンスの変化がキャパシタンスの変化よりも著しく大きい。より高い周波数(100000Hz超)では、相変化の結果としての液晶材料のキャパシタンスとコンダクタンスの変化の両方が著しく減少する。上記の周波数範囲の大まかな大きさは適切なすべての液晶材料で同じになろうが、1つの範囲から別の範囲に移る周波数は材料に依存するであろう。上記のケースに関係する材料はKC FLC10である。
【0085】
関係する相転移が原因となったキャパシタンスとコンダクタンスの変化は周波数の関数として変化するため、周波数の異なる2つの電気信号を用いて液晶材料12を調べるとよかろう。あるいは、(例えば単一の電気信号の中に)周波数の異なる2つ以上の成分を含む電気信号を用いて液晶材料12を調べるとよかろう。それが終わると、センサー10の応答を分析し、異なる周波数成分にセンサーがどのように応答したかを明らかにすることができる。液晶材料12は、例えば矩形波電気信号、または鋸波電気信号、または他の何らかの形状を持つ電気信号を用いて調べることができる。
【0086】
各周波数は異なる周波数範囲にあってもよい。例えば周波数が50Hzの電気信号を用いて液晶材料KC FLC10のキャパシタンスを測定し、5000Hzの電気信号を用いて伝導率を測定する。測定値は、液晶材料12がどの相にあるかを判断するのに用いるだけでなく、測定値を比較してセンサー10から補正された出力を提供するのにも用いることができる。例えば所定の周波数において、キャパシタンスの測定値は、センサーの構造のわずかな変化(例えば接触プレート14、16の間の液晶材料12の厚さの変化)の影響を受ける可能性がある。以下に示す例は、センサーの構造とは独立なセンサーの補正された出力を得るため、液晶材料の少なくとも1つの電気的特性に関して2つ以上の周波数でいかに多くの測定が可能であるかを示している。
【0087】
第1の例は以下の通りである。液晶材料12のε'は
ε'=C/C0 (1)
で与えられる。ここにCは液晶材料12のキャパシタンスであり、C0は、プレート間に液晶材料がないセンサーのキャパシタンスである。
【0088】
液晶材料の誘電率において液晶材料のエネルギー損失と関係する虚数成分ε"は、
ε"=G/ωC0 (2)
で与えられる。ここにGは液晶材料のコンダクタンスであり、ωは、測定を行なう周波数である。
【0089】
誘電率の虚数成分ε"は、
ε"=ε'tanδ (3)
によっても与えられる。ここにδは、印加した電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0090】
そのため
C=(G/ω)・(1/tanδ) (4)
となる。
【0091】
周波数ωAでは、キャパシタンスは、
CA=(GA/ωA)・(1/tanδA) (5)
で与えられる。ここにCAは、周波数ωAにおけるセンサーのキャパシタンスであり、GAは、周波数ωAにおける液晶材料のコンダクタンスであり、δAは、周波数ωAにおける印加された電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0092】
周波数ωBでは、キャパシタンスは、
CB=(GB/ωB)・(1/tanδB) (6)
で与えられる。ここにCBは、周波数ωBにおけるセンサーのキャパシタンスであり、GBは、周波数ωBにおける液晶材料のコンダクタンスであり、δBは、周波数ωBにおける印加された電場と液晶材料内の電場の位相差である。
【0093】
したがって以下の式が得られる。
CA/CB=(GA/GB)・(ωB/ωA)・(tanδB/tanδA)またはCAGB/CBGA=(ωB/ωA)・(tanδB/tanδA) (7)
【0094】
ωAとωBは選択された値であり、δAとδBは、液晶材料の材料特性にだけ依存する値であるため、CAGBとCBGAの比は、センサーの構造とは独立である。そのためCAGBとCBGAの比は、液晶材料の厚さの変化の影響を受けない。
【0095】
このタイプの測定は特に有利である。なぜならωAとωBを、上に説明した異なる周波数範囲に存在するように選択できるからである。例えばωAをCAが大きくてGAが小さくなる周波数に選択し、ωBをGBが大きくてCBが小さくなる周波数に選択すると、CAGB/CBGAの値は、CA、GB、CB、GAの個々の値のどれよりも著しく大きくなろう。補正されたセンサー出力CAGB/CBGAがCA、GB、CB、GAのいずれよりも著しく大きいというのは、液晶材料の状態変化が原因で補正されたセンサー出力に存在するあらゆる急激な変化がより直接的に測定されることを意味する。
【0096】
液晶材料の同じ電気的特性を異なる周波数で測定することによって補正されたセンサー出力を提供することもできる。その例を以下に示す。
【0097】
液晶材料12を2枚の似た平行なプレートの間に挟むと、プレートと液晶材料のキャパシタンスCは、
C=εε0A/d (8)
によって与えられる。ここにεは液晶材料の誘電率であり、ε0は真空の誘電率(8.854×10-12F/m)であり、Aは導電性プレート14、16の面積であり、dはプレートの間隔である。
【0098】
所定の周波数fAでは、間隔がd1だと、キャパシタンスC1fAは、
C1fA=εAε0A/d1 (9)
で定義される。ここにεAは、周波数fAにおける液晶材料の誘電率である。
【0099】
別の周波数fBでは、キャパシタンスは、
C1fB=εBε0A/d1 (10)
で定義される。ここにεBは、周波数fBにおける液晶材料の誘電率である。
【0100】
プレート14、16の間隔がd2に変化すると、周波数fAでのキャパシタンスは、
C2fA=εAε0A/d2 (11)
によって与えられる。
【0101】
同様に、周波数fBでは、キャパシタンスは、
C2fB=εBε0A/d2 (12)
となる。
【0102】
したがって
C1fA/C1fB=εA/εB (13)
C2fA/C2fB=εA/εB (14)
となる。
【0103】
εAとεBは、センサーの構造とは独立な液晶材料の特性であるため、2つの異なる周波数における液晶材料12のキャパシタンスの比もセンサーの構造(例えばプレート14、16の間隔)とは独立である。そのためこの測定値は液晶材料12の厚さの変化の影響を受けないため、補正された出力として使用できる。
【0104】
異なる周波数での電気的特性の測定値を用いる別の例は、コンダクタンスを用いるものである。
【0105】
液晶材料のコンダクタンスGは、
G=ωC0ε" (15)
によって与えられる。ここにωは測定用電子信号の角周波数であり、C0は空のセルのキャパシタンス、すなわち液晶材料なしの空気中のセンサーのキャパシタンスであり、ε"は誘電率のうちで液晶材料のエネルギー損失と関係する虚数部である。
【0106】
周波数ωAでは、コンダクタンスGAは、
GA=ωAC0ε"A (16)
によって定義される。ここにε" Aは、周波数ωAにおける液晶の誘電率の虚数部である。
【0107】
同様に、別の周波数ωBでは、コンダクタンスGBは、
GB=ωBC0ε"B (17)
によって定義される。ここにε" Bは、周波数ωBにおける液晶の誘電率の虚数部である。
【0108】
したがって、
GA/GB=ωAε"A/ωBε" B(18)
となる。
【0109】
したがってGAとGBの比は、液晶材料の特性と測定する周波数にだけ依存する量であり、電気的接触プレート14、16の形状には依存しない。そのためこの比も補正されたセンサー出力として使用できる。
【0110】
これらの補正されたセンサー出力が可能である。なぜなら、測定に使用する周波数に関係なく、分極状態と非分極状態の間の相転移が同じ温度で起こり、測定された電気的特性(例えばキャパシタンスまたはコンダクタンス)の階段状の変化も同じ温度で起こるからである。
【0111】
ここに説明した実施態様は、平行なプレートである電気的コンタクトを含んでいたが、任意の形状の電気的コンタクトを使用できる。コンタクトは、互いに離れていて液晶材料と接触する任意のペアにすることができる。例えばコンタクトを一対のピンにすること、ピンとプレートにすること、任意の形状または向きのプレートにすることができる。さらに、ここに説明した実施態様は一対のプレートに挟まれたある厚さの液晶材料を含んでいるが、平坦な形状のセンサー、すなわち両方のコンタクトが実質的に同じ平面内にあるセンサーを使用できることがわかるであろう。そのような1つの配置に、組み合わされたプレート状コンタクトが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶材料と、
互いに離れた関係にされていて前記液晶材料が接触する第1と第2の導電性コンタクトと、
その第1と第2の導電性コンタクトに電気的に接続されていて、前記液晶材料の電気的特性を測定する構成の電気的特性測定装置とを備えていて、
前記液晶材料が、分極状態と非分極状態の間で相変化する転移温度Tを持ち、分極状態と非分極状態の間のその相変化により、前記液晶材料の電気的特性の変化が引き起こされる、電気式温度センサー。
【請求項2】
前記分極状態が強誘電相であり、前記非分極状態が非強誘電相である、請求項1に記載の電気式温度センサー。
【請求項3】
前記分極状態がフェリ誘電相であり、前記非分極状態が非フェリ誘電相である、請求項1に記載の電気式温度センサー。
【請求項4】
電気的特性の前記変化が階段状の変化である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項5】
前記電気的特性が、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスのうちの1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項6】
前記液晶材料に含まれる液晶が揃っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項7】
前記第1と第2の導電性コンタクトが平行なプレートであり、前記液晶材料がその間に収容されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項8】
前記強誘電相がキラル・スメクチックC相である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項9】
前記非強誘電相が、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相のうちの1つである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項10】
前記液晶材料の前記電気的特性の前記変化が、前記第1と第2の導電性コンタクトを通じて供給される電気信号によってその第1と第2の導電性コンタクトを通じて測定される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項11】
前記電気信号が少なくとも1つのパルスを含む、請求項10に記載の電気式温度センサー。
【請求項12】
前記電気信号が周期的である、請求項10または11に記載の電気式温度センサー。
【請求項13】
前記電気信号が振動する、請求項12に記載の電気式温度センサー。
【請求項14】
前記振動が15kHz未満の周波数を持つ、請求項13に記載の電気式温度センサー。
【請求項15】
前記振動が1kHz未満の周波数を持ち、電気的特性の測定可能な前記変化がキャパシタンスの変化である、請求項13に記載の電気式温度センサー。
【請求項16】
前記振動が1kHzよりも大きな周波数を持ち、電気的特性の測定可能な前記変化がコンダクタンスの変化である、請求項13または14に記載の電気式温度センサー。
【請求項17】
Tが150℃未満の値を持つ、請求項1〜16のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項18】
複数の温度センサー・セルを含んでいて、各セルは、請求項1〜17のいずれか1項に記載の電気式温度センサーに基づいており、前記センサー・セルのうちの少なくとも2つの液晶材料の転移温度Tが異なっている電気式温度センサー。
【請求項19】
各温度センサー・セルの液晶材料の転移温度Tが、望む範囲にわたって等間隔な一連の転移温度を形成するように選択されている、請求項18に記載の電気式温度センサー。
【請求項20】
液晶材料の電気的特性の変化を引き起こす分極状態と非分極状態の間の相変化が起こる転移温度Tを持つ液晶材料を用いた温度感知法であって、
この方法が、
液晶材料の前記電気的特性を測定し;
測定された電気的特性と閾値の比較に基づいて温度がTよりも上か下かを判断する操作を含む温度感知法。
【請求項21】
請求項20に記載の温度感知法において、前記電気的特性が、前記第1と第2の導電性コンタクトを横断して供給される第1の周波数の周期的電気信号によって測定した第1の電気的特性であり、
この方法が、
第2の周波数の周期的電気信号を用い、前記第1と第2の導電性コンタクトを通じて液晶材料の第2の電気的特性を測定する操作をさらに含む温度感知法。
【請求項22】
請求項20に記載の温度感知法において、周波数が異なる2つ以上の成分を含む周期的電気信号によって前記電気的特性が測定されていて、この方法が、周波数が異なる前記2つ以上の成分に対する液晶材料の応答を分解し、その液晶材料の第1の電気的特性を、前記電気信号の成分のうちの1つに対するその液晶材料の応答によって測定し、その液晶材料の第2の電気的特性を、その電気信号の別の成分に対するその液晶材料の応答によって測定する操作をさらに含む温度感知法。
【請求項23】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性が、異なる周波数で測定された同じ電気的特性である、請求項21または22に記載の温度感知法。
【請求項24】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性が、異なる電気的特性である、請求項21または22に記載の温度感知法。
【請求項25】
測定された前記第1の電気的特性がキャパシタンスであり、測定された前記第2の電気的特性がコンダクタンスであり、キャパシタンスは、コンダクタンスの測定に用いる周波数よりも小さい周波数を用いて測定する、請求項24に記載の温度感知法。
【請求項26】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性を比較してセンサーの補正された出力を決定する操作をさらに含む、請求項21〜25のいずれか1項に記載の温度感知法。
【請求項27】
請求項18または19に記載の電気式温度センサーを用いた温度感知法であって、この方法が、第1と第2の導電性コンタクトを通じて各セルの液晶材料の電気的特性を測定し;温度が存在する範囲として、近接した転移温度Tを持つ2つの温度センサー・セルで測定された液晶材料の電気的特性によって規定される範囲を明らかにする操作を含む温度感知法。
【請求項1】
液晶材料と、
互いに離れた関係にされていて前記液晶材料が接触する第1と第2の導電性コンタクトと、
その第1と第2の導電性コンタクトに電気的に接続されていて、前記液晶材料の電気的特性を測定する構成の電気的特性測定装置とを備えていて、
前記液晶材料が、分極状態と非分極状態の間で相変化する転移温度Tを持ち、分極状態と非分極状態の間のその相変化により、前記液晶材料の電気的特性の変化が引き起こされる、電気式温度センサー。
【請求項2】
前記分極状態が強誘電相であり、前記非分極状態が非強誘電相である、請求項1に記載の電気式温度センサー。
【請求項3】
前記分極状態がフェリ誘電相であり、前記非分極状態が非フェリ誘電相である、請求項1に記載の電気式温度センサー。
【請求項4】
電気的特性の前記変化が階段状の変化である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項5】
前記電気的特性が、インピーダンス、インダクタンス、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンスのうちの1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項6】
前記液晶材料に含まれる液晶が揃っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項7】
前記第1と第2の導電性コンタクトが平行なプレートであり、前記液晶材料がその間に収容されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項8】
前記強誘電相がキラル・スメクチックC相である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項9】
前記非強誘電相が、スメクチックA相、ネマチック相、等方相、反強誘電相のうちの1つである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項10】
前記液晶材料の前記電気的特性の前記変化が、前記第1と第2の導電性コンタクトを通じて供給される電気信号によってその第1と第2の導電性コンタクトを通じて測定される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項11】
前記電気信号が少なくとも1つのパルスを含む、請求項10に記載の電気式温度センサー。
【請求項12】
前記電気信号が周期的である、請求項10または11に記載の電気式温度センサー。
【請求項13】
前記電気信号が振動する、請求項12に記載の電気式温度センサー。
【請求項14】
前記振動が15kHz未満の周波数を持つ、請求項13に記載の電気式温度センサー。
【請求項15】
前記振動が1kHz未満の周波数を持ち、電気的特性の測定可能な前記変化がキャパシタンスの変化である、請求項13に記載の電気式温度センサー。
【請求項16】
前記振動が1kHzよりも大きな周波数を持ち、電気的特性の測定可能な前記変化がコンダクタンスの変化である、請求項13または14に記載の電気式温度センサー。
【請求項17】
Tが150℃未満の値を持つ、請求項1〜16のいずれか1項に記載の電気式温度センサー。
【請求項18】
複数の温度センサー・セルを含んでいて、各セルは、請求項1〜17のいずれか1項に記載の電気式温度センサーに基づいており、前記センサー・セルのうちの少なくとも2つの液晶材料の転移温度Tが異なっている電気式温度センサー。
【請求項19】
各温度センサー・セルの液晶材料の転移温度Tが、望む範囲にわたって等間隔な一連の転移温度を形成するように選択されている、請求項18に記載の電気式温度センサー。
【請求項20】
液晶材料の電気的特性の変化を引き起こす分極状態と非分極状態の間の相変化が起こる転移温度Tを持つ液晶材料を用いた温度感知法であって、
この方法が、
液晶材料の前記電気的特性を測定し;
測定された電気的特性と閾値の比較に基づいて温度がTよりも上か下かを判断する操作を含む温度感知法。
【請求項21】
請求項20に記載の温度感知法において、前記電気的特性が、前記第1と第2の導電性コンタクトを横断して供給される第1の周波数の周期的電気信号によって測定した第1の電気的特性であり、
この方法が、
第2の周波数の周期的電気信号を用い、前記第1と第2の導電性コンタクトを通じて液晶材料の第2の電気的特性を測定する操作をさらに含む温度感知法。
【請求項22】
請求項20に記載の温度感知法において、周波数が異なる2つ以上の成分を含む周期的電気信号によって前記電気的特性が測定されていて、この方法が、周波数が異なる前記2つ以上の成分に対する液晶材料の応答を分解し、その液晶材料の第1の電気的特性を、前記電気信号の成分のうちの1つに対するその液晶材料の応答によって測定し、その液晶材料の第2の電気的特性を、その電気信号の別の成分に対するその液晶材料の応答によって測定する操作をさらに含む温度感知法。
【請求項23】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性が、異なる周波数で測定された同じ電気的特性である、請求項21または22に記載の温度感知法。
【請求項24】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性が、異なる電気的特性である、請求項21または22に記載の温度感知法。
【請求項25】
測定された前記第1の電気的特性がキャパシタンスであり、測定された前記第2の電気的特性がコンダクタンスであり、キャパシタンスは、コンダクタンスの測定に用いる周波数よりも小さい周波数を用いて測定する、請求項24に記載の温度感知法。
【請求項26】
測定された前記第1の電気的特性と測定された前記第2の電気的特性を比較してセンサーの補正された出力を決定する操作をさらに含む、請求項21〜25のいずれか1項に記載の温度感知法。
【請求項27】
請求項18または19に記載の電気式温度センサーを用いた温度感知法であって、この方法が、第1と第2の導電性コンタクトを通じて各セルの液晶材料の電気的特性を測定し;温度が存在する範囲として、近接した転移温度Tを持つ2つの温度センサー・セルで測定された液晶材料の電気的特性によって規定される範囲を明らかにする操作を含む温度感知法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−519268(P2012−519268A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551450(P2011−551450)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051460
【国際公開番号】WO2010/097279
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051460
【国際公開番号】WO2010/097279
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】
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