説明

センサ及びその製造方法

【課題】 特定のガス分子の高選択検出を行うことが可能であるセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】 そこで、本発明は、複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、前記メソ孔内の表面の少なくとも一部が、有機物又は無機酸化物で被覆されているセンサを提供するものである。
また、本発明は、複数のメソ孔を有し、且つ酸化スズを含む半導体膜と、前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、前記メソ孔内に無機物の粒子が担持されているセンサを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体表面に吸脱着した物質を検知するセンサ及びその製造方法に関する。ガスセンサやバイオセンサに応用可能である。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサやバイオセンサ等の物質の有無やその濃度を検知するセンサには、種々の方式が提案されている。
【0003】
その中でも半導体式のセンサは、物質の吸脱着により抵抗値が変化する性質を有する金属酸化物半導体を利用して物質を検出するセンサであり、ガス漏れ警報機等に用いられている。ガスセンサに用いられる半導体としては酸化物半導体、特に酸化スズが広く用いられている。現在のガスセンサ素子の課題として、被検出ガスの選択検出が挙げられる。
【特許文献1】特開平4−344450
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスセンサ素子に金属酸化物半導体材料を用いる場合、金属酸化物の表面に吸着した分子の吸脱着により金属酸化物の表面に存在する空乏層幅が変化し、それに伴う抵抗値の変化を検出する場合が多い。例えば、酸化スズの場合、ガスと酸化スズ表面の吸着酸素との化学反応(燃焼)により吸着酸素が酸化スズ表面より取り除かれ、その結果、空乏層幅が減少することで抵抗値が減少する。
【0005】
以上のような動作原理であるので、金属酸化物半導体単体で用いる場合、空乏層幅を変化しうるガス種が複数混在する雰囲気下においては検出したいガスのみを検出することが困難である。
【0006】
そこで、本発明は検出したいガスを検出するセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部が、有機物で被覆されているセンサを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部が、前記酸化物と異なる酸化物で被覆されているセンサを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、
複数のメソ孔を有し、且つ酸化スズを含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内に無機物の粒子が担持されているセンサを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、
センサの製造方法であって、金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内に無機物の粒子を担持する工程とを備えるセンサの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、
センサの製造方法であって、
金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を有機物で被覆する工程とを備えるセンサの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、
センサの製造方法であって、
金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を無機酸化物で被覆する工程とを備えるセンサの製造方法を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極と、
前記メソ孔の孔表面に孔壁と異なる材料を含む層とを備え、
被検出物質が前記層と接触したときに、前記半導体膜の低効率が変化するセンサを提供するものである。
【0014】
本発明は、
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極と、
前記メソ孔の表面に孔壁と異なる材料を含む層とを備え、
前記層を通過してきた被検出物質が前記半導体膜と接したときに、前記半導体膜の抵抗率が変化するセンサを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、ガス分子の選択検出を行うことが可能であるセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の詳細について説明する。まず、図1から図5を用いて発明の概要を説明する。
【0017】
図1は、センサとしての構成図であり、基板13上に電極12が形成されその上に感応部として多孔質酸化物半導体膜11を形成している。図2は、図1のA1−A2の断面図であり、基板13上に電極12と多孔質酸化物半導体膜11が形成している。多孔質酸化物半導体膜は、メソ孔14を複数有している。メソ孔の説明は後述するが、メソ孔を拡大した図が図3から図5である。図3は、メソ孔内の表面が有機物16で被覆されているのを示した図である。図4は、メソ孔内の表面が、多孔質酸化物半導体膜11に含まれる酸化物と異なる酸化物17で被覆しているのを示した図である。図5は、メソ孔内に無機物の粒子23を担持しているのを示した図である。本発明では、図3から図5に示すようにメソ孔内の孔表面を被覆することや無機物の粒子を担持させることにより、ガス分子の選択検出を行うことを可能にしている。
【0018】
ここで、「メソ孔」とは、IUPACの分類に基づくもので、孔径が2nmから50nmの孔をメソ孔と定義している。さらに、2nm未満の孔径のものをミクロ孔と定義され、50nmより大きいものをマクロ孔と定義されている。
【0019】
メソ孔よりも孔径が大きいマクロ孔を有する構造体では、複数のメソ孔を有する構造体全体に比べて比表面積が減少する。減少するに伴い孔内に担持できる無機物の粒子や有機物や酸化物の担持量が減少する可能性がある。また、検知するガス分子の吸着量が減少する可能性もある。一方、メソ孔よりも孔径の小さいミクロ孔を有する構造体では、無機物の粒子の孔内への導入や検出対象であるガス分子の孔表面における迅速な吸着や脱離が困難になることがある。
【0020】
よって、メソ孔を有する構造体は、ガスセンサやバイオセンサなどの小さな分子を検出するために最適な構造である。
【0021】
「多孔質酸化物半導体膜」は、連続膜であることが好ましい。多孔質酸化物半導体膜11が粒子の集合体であるよりも、センサとしての利用効率が高く、センサとしての応答速度が速くなる可能性がある。
【0022】
多孔質酸化物半導体膜11が粒子の集合体であると、比表面積がメソ孔を有する構造体よりも小さいため、素子の利用効率が高くならない可能性や、センサとしての応答速度が遅い可能性があるからである。
【0023】
「多孔質酸化物半導体膜に含まれる酸化物」は、金属酸化物で半導体特性を示すものが好ましく。このような特性を示す金属酸化物としては酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)がある。今回の場合は、酸化スズ(SnO)が好ましい。
【0024】
「有機物」は、検知対象物質を選択的に捕らえ、金属酸化物の抵抗値を変化しうるものであるのであれば基本的にどのようなものを用いても良い。特に、Lewis塩基を含む有機物が好ましく用いられる。このような有機物は、例示すると次の官能基や結合を有する有機物である。
例:
官能基
ハロゲン、アルコール、アミン、ニトリル、ニトロ、スルフィド、スルホキシド、スルホン、チオール、カルボニル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、有機カルボン酸
結合
エーテル結合、エステル結合、アミド結合
【0025】
「多孔質酸化物半導体膜11に含まれる酸化物と異なる酸化物」は、特定のガスを選択的に分離する酸化物や特定のガスと反応する酸化物であって、多孔質酸化物半導体膜の抵抗値を変化しうるものであればよい。例えば、酸化ケイ素がある。酸化ケイ素は、分子量の小さなガスを選択的に透過する。より具体的には水素を選択的に透過するため、水素センサとして利用可能である。
【0026】
「無機物の粒子」は、検知対象物質を含んだ気体や液体から検知対象物を触媒作用により分離又は分解する作用のある物質であれば、どのようなものを用いても構わない。例えばパラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、コバルト(Co)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、バナジウム(V)が好ましい。特に、水素ガスに対しては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)が優れた選択性を示すので好ましい。
【0027】
また、同様な作用を有する金属酸化物の粒子を用いてもよい。例えば酸化第二銅(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化コバルト(CoO)がある。この中で、酸化第二銅(CuO)が硫化水素に優れた選択性を示すので、硫化水素のセンサに好ましく用いられる。
【0028】
無機物の粒子の形状は、孔内に導入できる形状であれば特に制限は無い。例えば、図6に示すような球状、ワイヤ状、ロッド状、チューブ状等の形状の粒子を用いることも可能である。
【0029】
無機物の粒子の大きさは、孔内に担持可能であれば良く。孔内へのガスの拡散を妨げるような大きさのものでなければよい。よって、無機物の粒子の形状が球状である場合はその直径が、孔直径よりも小さな物を用いることが好ましい。
【0030】
「電極」は、図1に示したようなくし型電極でもいいが、それ以上の複数の電極が接合されていても良い。例えば、図7に示すように多孔質酸化物半導体膜上に複数の電極が形成されている構成や図8に示すように多孔質酸化物半導体膜の上下に電極が形成されている構成でもよい。電極は電気回路に接続され、多孔質体の抵抗値の変化を測定し、検知対象物が存在するかどうか判定する。
【0031】
さらに、センサの感度を上げるために次のような構成を取ってもよい。
1.ヒーター
2.メソ孔(細孔)の配列と孔径
3.微結晶
【0032】
1.ヒーター
検知対象物質の吸脱着反応を促進するために、基板と多孔質酸化物半導体膜を加熱するためのヒーターを設置してもよい。寒い場所では、ガスとの反応に最適な温度に設定することができ便利である。設置する場所は、多孔質酸化物半導体膜に接するように配置することが好ましい。ただし、多孔質酸化物半導体膜とヒーターとの間に別の層があってもよい。
【0033】
2.メソ孔の配列と孔径
図9には二次元ヘキサゴナル構造のものが示されている。図9で14がメソ孔で15が細孔壁である。細孔の配置はこれに限定されるものではなく、例えば、歪んだ二次元ヘキサゴナル構造、キュービック構造、三次元ヘキサゴナル構造等のものを使用することができる。また、細孔径は均一でも明確な周期構造を持たないものでも使用することができる。
【0034】
多孔質酸化物半導体膜11は、X線回折分析において1nm以上の構造周期性に対応する角度領域に少なくとも一つ以上の回折ピークを与えるものが好ましい。この場合、多孔質酸化物半導体膜中の孔の配列は、規則的な周期構造をもっているため、メソ孔が蜜に詰まった状態になり、比表面積が大きくなるからである。
【0035】
多孔質酸化物半導体膜11の細孔径分布の評価には、一般に窒素等のガスの吸着等温線を測定する方法が用いられ、得られた等温吸着線からBerret−Joyner−Halenda(BJH)の解析法等によって細孔径分布が計算される。
【0036】
本発明に用いられる多孔質酸化物半導体膜11の細孔は、窒素ガス吸着測定からBJH法により求められ、細孔径の分布が単一の極大値を有し、かつ60%以上の細孔の直径が12nm以内の範囲に含まれるものが好ましい。
【0037】
3.微結晶
本発明における多孔質酸化物半導体膜11は、細孔壁が微結晶を含むことが好ましい。例えば、酸化スズの場合、酸化スズの粒径と被検出物質の検出感度の相関について、本発明者らが鋭意検討した結果、結晶子径が10nm以下、特に6nm以下の時に大きな感度を得られることが明らかになっている。
【0038】
微結晶の結晶子径は後記の水蒸気処理の工程及び界面活性剤除去の工程の条件により制御することが可能である。
【0039】
(センサの製造方法について)
センサの製造方法について説明する。
図10は、本発明における多孔質酸化物半導体膜の製造方法を示す工程図である。
図10において、工程Aは、金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程である。工程Bは、前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程である。工程Cは、前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程である。工程D1は、前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を有機物又は酸化物で被覆する工程であり、工程D2は、前記メソ孔内に無機物の粒子を担持する工程である。
【0040】
工程AとBとを経ることにより、前記基板上に界面活性剤の集合体からなり、後にメソ孔となる領域を有した膜状の多孔質酸化物半導体膜の前駆体が形成される。
【0041】
このような構造体は、界面活性剤が自己集合することでミセルを形成してメソ孔(細孔)の鋳型となり、さらに金属化合物により細孔壁が形成されるためにでき上がる。
【0042】
工程Bにおける水蒸気雰囲気中への多孔質酸化物半導体膜の前駆体の保持を行うと、形成される多孔質酸化物半導体膜の前駆体の細孔構造規則性は高くなると同時に、水蒸気により塗布直後非晶質であった酸化物半導体の結晶化が誘起される。
【0043】
さらに、工程Cを経ることで、界面活性剤は除去され、多孔質酸化物半導体膜が形成される。工程D1や工程D2を経て多孔質酸化物半導体膜の膜表面及び孔表面を改質することや無機物の粒子を孔内に担持することができる。これにより被検出物質の選択検出機能を付与することができる。
【0044】
その後、多孔質酸化物半導体膜の抵抗値変化を検出する電極を形成してもよい。電極を形成する工程は、多孔質酸化物半導体膜に電極を接続できるのであればどの工程で行っても良く、工程D1や工程D2の後に行っても良く、また工程Aの前に行っても良い。
【0045】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0046】
(工程A:金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程)
工程Aでは、まず金属化合物、界面活性剤を含む反応溶液を調製する。
【0047】
(A−1:反応溶液の調整)
金属化合物は、酸化物半導体作製のための材料であり、これらは例えば、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)等を含む。この中で特にスズを含む金属化合物を用いるのが好ましい。
【0048】
以下、スズ化合物を例にとって説明する。
【0049】
スズ化合物には、例えば塩化第一スズ(SnCl)、塩化第二スズ(SnCl)等のスズの塩化物やスズイソプロポキシド、スズエトキシド等スズのアルコキシドが挙げられるが、本発明に適用可能なスズ化合物はこれらに限定されるものではない。
【0050】
界面活性剤はミセルを形成し、細孔の鋳型となる。
【0051】
この界面活性剤には、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0052】
特に、エチレンオキサイドを含んでいる非イオン界面活性剤が好適であり、このような界面活性剤は、次のようなものがある。
例:
<HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H>のようなトリブロックコポリマー
ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル<C1225(CHCHO)10OH>
ポリオキシエチレン(10)テトラデシルエーテル<C1429(CHCHO)10OH>
ポリオキシエチレン(10)ヘキサデシルエーテル<C1633(CHCHO)10OH>
ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル<C1837(CHCHO)10OH>
以上の界面活性剤のうち、トリブロックコポリマーがより好適に用いられる。
【0053】
溶媒には、メタノール、エタノール等のアルコールが適しているが、アルコールと水といった混合溶媒でも使用が可能で、液体であり前記金属化合物と界面活性剤を溶解可能であればこれに限るものではない。さらに、触媒として酸等を適宜加えても良い。
以上までが反応溶液の調整である。
【0054】
(A−2:反応溶液の塗布)
次に調整した反応溶液を基板上に塗布する。
基板は、反応溶液に対して安定なもの、すなわち反応溶液と基板とが化学反応を起しにくいものが好ましい。例示すると、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等が挙げられる。もちろん、プラスチックなどのフレキシブルなフィルムを基板として用いることもできる。
【0055】
なお、図1、図2に示したように、基板に電極が形成されているものを基板として用いれば、後に説明する工程B、Cを経ることで、電極と多孔質体との接続を容易に行うことができる。
【0056】
この基板に簡便かつ短時間に塗布できる方法としてはキャスト法、ディップコート法、スピンコート法が有効である。
【0057】
また、他に大量生産性に優れているスプレーコート法等、基板上に反応溶液を塗布できる方法であればこれに限らない。
【0058】
以上が反応溶液を塗布する工程であるが、該工程Aの後、工程Bに移行する前に、基板上の反応溶液(特に溶媒)を一旦乾燥させることが好ましい。
【0059】
例えば、工程Aの後、25℃から50℃の範囲で、10%〜30%の湿度で溶媒を乾燥させる乾燥工程を経て、その後工程Bを行うのが好ましい。
【0060】
この工程により、膜の均一性が向上する。
【0061】
(工程B:前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程)
次に、反応溶液を塗布、乾燥させた基板を、水蒸気を含む雰囲気中に保持し、多孔質酸化物半導体膜前駆体を形成する。
【0062】
工程Bにおける水蒸気を含む雰囲気は、湿度40%以上100%以下であることが好ましく、温度は100℃以下であることが好ましい。
【0063】
ただし、この範囲外の条件であっても、目的の多孔質酸化物半導体膜の前駆体膜が形成できる範囲であれば用いることが可能である。
【0064】
この工程を経ることによって膜の連続性が大きく向上し、同時に多孔質酸化物半導体内のメソ細孔の均一性、つまり構造規則性を向上させることができる。
【0065】
また、工程Bにおける水蒸気を含む雰囲気中の保持時間で酸化物半導体の結晶化が進行する。
【0066】
水蒸気処理時間は目的の結晶度等により適宜決定することができる。
【0067】
(工程C:前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程)
界面活性剤の除去方法には様々な方法があるが、その中で熱を加えて界面活性剤を分解除去する焼成処理は簡便な方法であり、さらに焼成処理により細孔壁に存在する酸化物半導体の結晶化を促進する効果があるため、好ましい除去方法である。
【0068】
しかし、焼成温度が高いと酸化物半導体の結晶化は進行するが、それに伴い細孔構造が乱れる傾向がある。
【0069】
したがって、焼成処理により界面活性剤を除去する際には、焼成温度は細孔構造が保たれるような最適な温度に設定する必要がある。
【0070】
また、基板材料が高温で変形する場合、例えば、プラスチックの基板材料を用いた場合で焼成処理を行うことが困難な場合には、超臨界流体や溶剤による界面活性剤の抽出を行うことも可能である。
【0071】
超臨界流体や溶剤による界面活性剤の抽出においては、界面活性剤除去後の細孔表面の水酸基の密度を高く保持でき、その結果、有機物による改質の密度を上げることができる。
【0072】
他にも、紫外光照射、オゾンによる酸化分解による界面活性剤の分解除去等様々な方法があるが、多孔質酸化物半導体膜の細孔構造が維持される方法であれば、上記の方法に限定されず、どのような除去方法も用いることが可能である。
【0073】
(工程D1:前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を有機物又は酸化物で被覆する工程)
多孔質酸化物半導体膜の細孔表面及び膜表面を多孔質酸化物半導体膜と異なる物質で改質する。
本発明において孔表面を改質する物質は、有機物である場合と、無機酸化物である場合とがある。
【0074】
以下にそれぞれの場合について説明する。
1.細孔表面を改質する物質が有機物である場合
有機物を多孔質酸化物半導体膜11表面に共有結合で固定させるにはどのような方法を用いても良いが、シランカップリング剤を用いて共有結合を形成する方法が好ましい。これは、シランカップリング剤を用いることにより酸化物半導体の表面に容易に有機物を結合することができるからである。また、シランカップリング剤を用いて多孔質酸化物半導体膜11の孔表面に有機物を形成した後に、有機物の官能基を修飾したり、化学反応により別の官能基に置き換えたりしても良い。
2.細孔表面を改質する物質が酸化ケイ素である場合
酸化ケイ素で細孔表面を改質する方法は、形成された酸化ケイ素が細孔を塞ぐことがなければどのような方法を用いてもよい。シランカップリング剤を用いてケイ素化合物を前記表面に結合させ、その後酸化雰囲気中の熱処理によりケイ素化合物を酸化ケイ素に変化させることが好ましい。
【0075】
このような工程を経ることにより細孔表面に比較的均一に酸化ケイ素を被覆することが可能となるからである。
【0076】
(工程D2:前記メソ孔内に無機物の粒子を担持する工程)
多孔質酸化物半導体膜の孔内部に無機物の粒子を担持する。
これらの物質からなる粒子の孔内への導入方法は、多孔質酸化物半導体膜の孔構造を大きく変化させ、その比表面積を著しく減少させるものでなければどのような方法を用いて導入してもよい。
【0077】
金属の粒子を多孔質酸化物半導体膜の孔内に担持する場合、水溶液等の溶液に溶解した金属化合物を、多孔質酸化物半導体膜の孔内に導入し、金属化合物を還元することにより孔内に金属の粒子を形成することが好ましい。
【0078】
例えば、パラジウムを導入する場合、パラジウム化合物を含む溶液を多孔質酸化物半導体膜の孔内へ導入し、その後還元処理することにより孔内でパラジウムの粒子を形成することができる。
【0079】
パラジウム化合物には、
酢酸パラジウム(Pb(CHCOO))、
塩化パラジウム(II)(PdCl)、
硝酸パラジウム(II)(Pd(NO)、
ジニトロジアンミンパラジウム(II)([Pd(NO(NH])、
ジクロロジアンミンパラジウム(II)([Pd(NHCl])、
テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド([Pd(NH]Cl・nHO)、
テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩(Pd(NH(NO)等があり、
上記過程を経て孔内へパラジウム粒子を形成できるものであればどれを用いても構わない。
【0080】
また、例えば白金を導入する場合も、白金化合物を含む溶液を多孔質酸化物半導体膜の孔内へ導入し、その後還元処理することにより孔内で白金の粒子を形成することができる。
【0081】
白金化合物には
塩化白金(IV)酸(H[PtCl]・6HO)、
ジニトロジアンミン白金(II)([Pt(NO(NH])、
テトラアンミンジクロロ白金(II)({Pt(NH}Cl・HO)、
ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸カリウム(K[Pt(OH)])、
硝酸白金(IV)(Pt(NO)等があり、
上記過程を経て孔内へ白金粒子を形成できるものであればどれを用いても構わない。
【0082】
また、酸化物の粒子を多孔質酸化物半導体膜の孔内に担持する場合には、まず金属の粒子を先に形成し、その後多孔質酸化物半導体膜の孔内へ導入して、孔内で金属粒子を酸化して酸化物粒子を形成することが好ましい。
【0083】
例えば、酸化銅の場合には、銅(Cu)の粒子を形成しておき、その後銅の粒子を分散させた溶液中に多孔質半導体膜を浸漬して、孔内へ銅粒子を導入し、その後銅粒子を酸化することで酸化第二銅(CuO)を孔内で形成する。
【0084】
以上、説明したように、工程Aから工程Eを経ることで、均一径のメソ孔と、孔壁に微結晶を備え、孔内に無機物の粒子を担持した多孔質酸化物半導体膜を形成することができる。
【0085】
以上説明したように、工程Aから工程D(D1、D2)を経ることで、細孔表面を有機物又は無機酸化物で改質した多孔質酸化物半導体膜を形成することができる。
【0086】
さらに、上記多孔質酸化物半導体膜に電極を接続することで、センサを作製することができる。
【0087】
例えば、図2のような構成で電極と多孔質酸化物半導体膜を接続する場合は、基板に先に電極を形成し基板として、その後工程A〜Dを行えば、多孔質体と電極を良好に接触させることができる。
【0088】
図7のような構成の場合は、基板上に多孔質酸化物半導体膜を形成し、その上に電極を形成すればよい。
【0089】
図8のような構成の場合は、基板上に電極を形成したあと、又は電極材料からなる基板を用いて基板上に多孔質酸化物半導体膜を形成し、その上にさらに電極を形成すればよい。
【0090】
電極を形成する工程は、多孔質酸化物半導体膜を形成する工程A〜Dの前後でもその両方で行っても構わない。
【0091】
電極材料は、多孔質酸化物半導体膜の形成過程でエッチング等の化学変化が発生しない材料が望ましく、具体的には金(Au)、白金(Pt)が望ましい。
【0092】
しかし、多孔質酸化物半導体膜の形成過程で形状変化や物理的、化学的、電気的性質が変化しないのであればどの電極材料を用いてもよい。
【0093】
電極の形成には真空蒸着法やスパッタリング法、電着法等一般的な金属電極形成方法を用いることができる。
【実施例】
【0094】
[実施例1]
(孔表面を有機物で被覆した実施例:アミノプロピル基を含む有機物)
本実施例は、くし型電極が形成された基板上に酸化スズ多孔質薄膜を形成してガスセンサ素子を作製して一酸化炭素(CO)の選択的検知に用いた例である。
【0095】
まず、石英基板上にフォトリソグラフィーにより、電極間距離20μm、電極長370mmである白金(Pt)くし型電極を形成した。
【0096】
次に、エタノール10gに無水塩化第二スズ2.9gを添加し、30分撹拌する。攪拌後、トリブロックコポリマーP123<HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H>1.0gを溶解させる。そして、さらに30分間撹拌して前駆体溶液Aとした。
【0097】
次に、基板のくし型電極部分に前駆体溶液Aをディップコート法で塗布した。
次に、前駆体溶液Aを塗布した該基板を環境試験機内に移動し、保持した。
環境試験機内は温度と相対湿度を次のように制御した。
【0098】
40℃20%RHで10時間保持→1時間かけて温度、湿度変化→50℃90%RHで5時間保持→1時間かけて温度、湿度変化→40℃20%RH
以上のような工程で界面活性剤−酸化スズメソ構造体薄膜を得た。
【0099】
その後、該基板を環境試験機から取り出してマッフル炉に入れ、空気中で1℃/minの割合で300℃まで昇温し、そのまま5時間保持して界面活性剤を除去し、メソポーラス酸化スズ薄膜を得た。
【0100】
界面活性剤除去後の薄膜には、界面活性剤に由来する有機成分は存在していないことを赤外分光光度法等により確認した。
【0101】
前記薄膜の表面及び断面に対してSEM観察を行ったところ、表面からはチューブ状の構造が観察された。
【0102】
また、断面からは細孔がハニカム状に配列している様子が確認された。
【0103】
X線回折分析を行ったところ、面間隔4.9nmに相当する明確な回折ピークが観測され、2次元ヘキサゴナル構造を示唆する回折パターンが得られた。
【0104】
ただし、断面のSEM観察等から、実際には膜厚方向に縮んでおり、理想のヘキサゴナル構造からは逸脱していることが分かった。
【0105】
窒素ガス吸着測定を行ったところ、細孔径は5.2nmに極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は1nm以上10nm以下の領域に入っていた。
【0106】
また、比表面積は約170m/gであった。
【0107】
よって、前記薄膜は、実質的に均一なメソ細孔を有し、比表面積の大きい多孔質薄膜であることが確認された。
【0108】
次に、前記薄膜について斜入射X線回折分析を行ったところ、Cassiteriteに帰属される明確なピークが確認された。
【0109】
出現したピークのうち、2θ=45°〜58°の領域における(211)面に由来するピークの半値幅B(rad)、及びピーク位置2θより、以下のシェラー式から平均結晶子径Lを求めたところ、2.7nmであった。
【0110】
L=0.9λ/Bcosθ
以上より、電極基板上に、規則性を有したメソ領域の細孔構造と、細孔壁に微結晶を備えた多孔質酸化スズ薄膜が形成できることを確認した。
【0111】
次に、作製した多孔質酸化スズ薄膜を、シランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5gをエタノール溶液10gに浸漬した。
【0112】
その後、純水で流水洗浄を行い、最後に100℃で5時間乾燥処理を行うことで細孔表面をアミノプロピル基を含む有機物で改質した。
【0113】
細孔内への有機物の改質を確認するため、高抵抗シリコン基板上に上記工程と同じ方法で作製した、細孔表面をアミノプロピル基を含む有機物で改質した多孔質酸化スズ薄膜を作製し、赤外吸収スペクトルにより測定した。
【0114】
その結果、アミノ基に起因する吸収スペクトルが3310〜3500cm−1付近に確認された。
【0115】
比較のため、界面活性剤を用いずに作製した、メソ細孔を有していない酸化スズ薄膜に同様の改質を行った薄膜のFT−IRの吸収スペクトルを測定した。
【0116】
その結果を比較すると、メソ細孔を有している方にはるかに強い吸収が確認され、この結果よりメソ細孔を有する酸化スズ薄膜の方が改質量が多いことが確認された。
【0117】
次に、3,4−ジヒドロキシ安息香酸7.7mgを水10gに溶解し、さらにカルボジイミド9.3mgを加えて撹拌した。
【0118】
この溶液に、細孔表面を上記シランカップリング剤で処理したメソ細孔を有する酸化スズ薄膜を24時間浸漬した。
その後に純水で流水洗浄を行い、最後に100℃で1時間乾燥処理を行った。
有機物の改質を確認するため、赤外吸収スペクトルにより上記処理を行った後のサンプルを測定した結果、水酸基に起因する吸収スペクトルが3450cm−1付近に現れた。
【0119】
この吸収スペクトルはシランカップリング剤のみの処理を行った酸化スズ薄膜からは観察されず、水酸基を有する3,4−ジヒドロキシ安息香酸がシランカップリング剤と反応して、細孔表面に形成されていることが確認された。
【0120】
さらに、この酸化スズ多孔質薄膜が形成された電極基板を電気回路と接続してガスセンサを作製し、図11に示す測定装置を用いて混合ガスに対するセンサ特性を測定した。ガスフローチャンバー24内にガスセンサ18を基板ヒーター19の上に置いた構成を取っている。ヒーター部はヒーター制御装置20で制御する。ガスセンサの電流値の変化を抵抗率測定装置21で低効率に換算する。ガスの濃度は、ガス濃度制御装置22で制御する。
【0121】
今回測定に用いた混合ガスは、空気に一酸化炭素(CO)を混合したガス、空気にメタン(CH)を混合したガス、空気に水素(H)を混合したガスの3種類の混合ガスを用いた。
【0122】
各混合ガスの濃度は混合する空気と被検出ガスの比により調整が可能で、今回は各ガスの濃度を1000ppm、500ppmに調整して測定に用いた。測定はフロー系で大気圧下にて行った。
【0123】
測定方法は以下のとおりである。
空気のみを10分間流す。→濃度1000ppmの混合ガスを20分間流す。→空気のみを20分間流す。濃度500ppmの混合ガスを20分流す。→空気のみを流す。
【0124】
上記の手順で空気又は混合ガスを流しながら、センサ素子の電極間に直流電流を1V印加して電流値を測定し、抵抗率に換算した。
測定時の素子の温度は100℃とした。
【0125】
図12は上記条件で測定を行った際の、それぞれのガスにおける経過時間に対する抵抗率の変化を示したものである。
【0126】
図12の結果より、本実施例による細孔表面を有機物で改質した酸化スズ多孔質薄膜を有するガスセンサ素子は、COと空気の混合ガスに対してのみ抵抗率が増加し、COを選択的に検出することが確認された。
【0127】
このときCO混合ガス導入前の抵抗率をRa、混合ガス導入後の抵抗率の最小値をRCOとし、感度SCOを以下の式で表した。この場合、濃度1000ppmのCO混合ガスを流した場合にはS=6となり、500ppmのCO混合ガスを流した場合にはS=2.5となった。
CO=RCO/Ra
以上の結果から、本実施例では、細孔壁に微結晶を含み、細孔表面を有機物で改質した酸化スズ多孔質薄膜を用いることで、特定のガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサ素子の作製が可能となることが確認された。
【0128】
[比較例1]
トリブロックコポリマーP123を添加しない以外は実施例1と同じ製法で作製したガスセンサに対して、同様の測定を行った結果を図13に示す。
【0129】
COと空気に対して選択的に反応したが、その変化率は実施例1で測定に用いたガスセンサ素子と比較して小さく、濃度1000ppmのCO混合ガスの場合でS=1.1、濃度500ppmのCO混合ガスの場合でS=1.05であった。
【0130】
また、H混合ガス、CH混合ガスを導入した際の抵抗率変化も実施例1の場合と比較して小さかった。
【0131】
[実施例2]
(孔表面を有機物で被覆した実施例:アミノプロピル基を含む有機物)
前駆体溶液作製の際にトリブロックコポリマーP123(1.0g)を用いる代わりにトリブロックコポリマーF127<HO(CHCHO)106(CHCH(CH)O)70(CHCHO)106OH>0.7gを用いた。ポリマーを変更した以外は実施例1と同様の方法でメソポーラス酸化スズ薄膜を作製した。
【0132】
薄膜の表面及び断面に対してSEM観察を行ったところ、表面からは細孔が規則的に配列し、かつ膜厚方向に細孔が縮んでいる構造が観察された。
そして、断面からは細孔が規則的に配列している様子が確認された。
X線回折分析を行ったところ、面間隔6.2nmに明確な回折ピークが観測された。
【0133】
よって、今回作製した酸化スズ多孔質薄膜は表面に開口部を多数有した、規則性を有するキュービック構造であると言える。
【0134】
窒素ガス吸着測定を行ったところ、細孔径は約6.5nmに極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は2nm以上12nm以下の領域に入っていた。
【0135】
また、比表面積は約200m/gであった。
よって、前記薄膜は、実質的に均一なメソ細孔を有し、比表面積の大きい多孔質薄膜であることが確認された。
【0136】
次に、実施例1と同様にシェラー式から平均結晶子径Lを求めたところ、2.7nmであった。
【0137】
以上、電極基板上に、規則性を有したメソ領域の細孔構造と、細孔壁に微結晶を備えた多孔質酸化スズ薄膜が形成できることを確認した。
【0138】
次に、実施例1と同様の方法でメソポーラス酸化スズ薄膜の細孔表面を有機物で改質し、実施例1と同様の装置、方法を用いて本実施例におけるガスセンサの、混合ガスに対するセンサ特性を測定した。このときのそれぞれのガスに対する経過時間に対する抵抗率変化は図12とほぼ同様な挙動を示した。
【0139】
以上の結果から、本実施例では、細孔壁に微結晶を含に、細孔表面を有機物で改質した酸化スズ多孔質薄膜を用いることで、特定のガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサ素子の作製が可能となることが確認された。
【0140】
[実施例3]
(孔表面を無機酸化物で被覆した実施例:酸化ケイ素)
本実施例は、くし型電極が形成された基板上に酸化スズ多孔質薄膜を形成してガスセンサ素子を作製してHガスの選択的検知に用いた例である。
【0141】
まず、実施例2と同様の方法によりメソポーラス酸化スズ薄膜をPtくし型電極を形成した基板の上に形成し、実施例1と同様の手法により規則性を有したメソ領域の細孔構造と、細孔壁に微結晶を備えた多孔質酸化スズ薄膜の形成を確認した。
【0142】
次に、作製した多孔質酸化スズ薄膜を、ジエトキシジメチルシラン(DEMS)の濃度が1wt%であるトルエン溶液中に10分程度浸漬した。
【0143】
その後、上記処理を行った多孔質酸化スズ薄膜を純水で流水洗浄を行い、最後に100℃で5時間乾燥処理を行うことで細孔表面にシリコンを含む有機物で改質した。
その後、300℃で5h焼成を行った。
【0144】
細孔表面が酸化ケイ素により改質されていること確認するため、高抵抗シリコン基板上に上記工程と同じ方法で作製した、多孔質酸化スズ薄膜を作製してTEM観察を行った。
比較のためにDEMS溶液への浸漬処理を行わなかったサンプルのTEM観察も併せて行った。
【0145】
その結果、両者とも規則的に配列した細孔を有していたが、細孔表面部分においてコントラストの違いが確認され、またTEM−EDSの測定によりDEMS浸漬処理を行ったサンプルにおいて細孔表面近傍にSiの存在が確認された。
【0146】
また、それぞれのサンプルにおいて窒素ガス吸着測定を行い吸着等温線を求めた。さらに、Berret−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔径分布を算出したところ、DEMS処理を行ったサンプルにおいて細孔径分布がより低細孔径側に分布していることが確認された。
【0147】
以上より、細孔構造を維持したまま多孔質酸化スズ薄膜の細孔内に酸化ケイ素が形成されていることが確認できた。
【0148】
次に、実施例1と同様の装置、方法を用いて本実施例におけるガスセンサの、混合ガスに対するセンサ特性を測定した。
測定時の素子の温度は150℃とした。その結果を図14に示す。
【0149】
混合ガスに対しての応答が他の混合ガスに対して大きく、H混合ガス導入前の抵抗率をRa、混合ガス導入後の抵抗率の最小値をRH2とし、感度SH2を以下の式で表した。この場合、濃度1000ppmのH混合ガスを流した場合にはS=300となり、500ppmのH混合ガスを流した場合にはS=160となった。
【0150】
H2=Ra/RH2
また、他の混合ガスにおいても上記と同様の式で感度を算出すると、濃度1000ppmのCO混合ガスの場合にはSCO=40となり、濃度1000ppmのCH4混合ガスの場合にはSCH4=3となった。
【0151】
以上の結果から、本実施例では、細孔壁に微結晶を含み、細孔表面を酸化ケイ素で改質した酸化スズ多孔質薄膜を用いることで、Hガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサ素子の作製が可能となることが確認された。
【0152】
[比較例2]
トリブロックコポリマーF127を添加しない以外は実施例3と同じ製法で作製したガスセンサに対して、同様の測定を行った結果を図15に示す。
【0153】
濃度1000ppmのH混合ガスの場合でSH2=30、濃度1000ppmのCO混合ガスの場合でSCO=20、濃度1000ppmのCH混合ガスの場合でSCH4=1.5であった。いずれの混合ガスの感度も実施例3で測定に用いたガスセンサ素子と比較して小さく、特にH混合ガスに対して大きく減少した。
【0154】
[実施例4]
(孔内に無機物の粒子を担持した実施例:金属パラジウム)
本実施例は、くし型電極が形成された基板上に酸化スズ多孔質膜を形成してガスセンサ素子を作製し、水素(H)ガスの選択的検知に用いた例である。
【0155】
まず、石英基板上にフォトリソグラフィーにより、電極間距離20μm、電極長370mmであるPtくし型電極を形成した。
【0156】
次に、エタノール10gに無水塩化第二スズ2.9gを添加し、30分撹拌した。その後、トリブロックコポリマーP123<HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H>1.0gを溶解した。そして、さらに30分間撹拌して前駆体溶液Aとした。
【0157】
次に、基板のくし型電極部分に前駆体溶液Aをディップコート法で塗布した。
【0158】
次に、前駆体溶液Aを塗布した前記基板を環境試験機内に移動し、保持した。環境試験機内は温度と相対湿度を次のように制御した。
【0159】
まず40℃20%RHで10時間乾燥し、その後、1時間かけて50℃90%RHにし、そのまま5時間保持し、その後1時間で再び40℃20%RHに戻し、界面活性剤−酸化スズメソ構造体膜を得た。
【0160】
その後、前記基板を環境試験機から取り出してマッフル炉に入れ、空気中で1℃/minの割合で300℃まで昇温し、そのまま5時間保持し、メソポーラス酸化スズ膜を得た。
【0161】
前記膜の表面及び、断面に対して走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、表面からはチューブ状の構造が観察された。
【0162】
また、断面からは孔がハニカム状に配列している様子が確認された。
【0163】
X線回折分析を行ったところ、面間隔4.9nmに相当する明確な回折ピークが観測され、2次元ヘキサゴナル構造を示唆する回折パターンが得られた。
【0164】
ただし、断面のSEM観察等から、実際には膜厚方向に縮んでおり、理想のヘキサゴナル構造からは逸脱していることが分かった。
【0165】
窒素ガス吸着測定を行ったところ、孔径は5.2nmに極大値を持つ単一分散を示し、かつ分布曲線は1nm以上10nm以下の領域に入っていた。
【0166】
また、比表面積は約170m/gであった。
【0167】
よって、前記膜は、実質的に均一なメソ孔を有し、比表面積の大きい多孔質膜であることが確認された。
【0168】
次に、前記膜について斜入射X線回折分析を行ったところ、Cassiteriteに帰属される明確なピークが確認された。
【0169】
出現したピークのうち、2θ=45°〜58°の領域における(211)面に由来するピークの半値幅B(rad)、及びピーク位置2θより、以下のシェラー式から平均結晶子径Lを求めたところ、2.7nmであった。
【0170】
L=0.9λ/Bcosθ
以上より、電極基板上に、規則性を有したメソ領域の孔構造と、孔壁に微結晶を備えた多孔質酸化スズ膜が形成できることを確認した。
【0171】
次に、作製した多孔質酸化スズ膜を、酢酸パラジウム(Pd(CH3COO))の濃度が0.005Mであるアンモニア水溶液に浸漬した。
【0172】
その後、乾燥処理を行った後、金属パラジウムの粒子を得るために、まず水素雰囲気中で300℃で1時間加熱し、次に大気中で300℃で5時間加熱して、再度水素雰囲気中において300℃、1時間の条件で還元処理を行った。
【0173】
孔内への金属パラジウム粒子の担持を確認するために、多孔質酸化スズ膜の表面及び断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
【0174】
その結果、孔内に直径約3nmの粒子が担持されている様子が確認された。またTEMに付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)及び電子エネルギー損失分光装置(EELS)を用いて分析した結果、孔内に担持された粒子は金属のパラジウムであることが確認された。
【0175】
また、X線回折測定において、2次元ヘキサゴナル構造を示唆する回折パターンが得られ、孔内へのパラジウム担持後も孔構造が維持されていることが確認された。
【0176】
また、窒素ガス吸着測定により比表面積は約180m/gであり、孔内へのパラジウム担持後も比表面積は大きく変化していないことが確認された。
【0177】
次に、この酸化スズ多孔質膜が形成された電極基板を電気回路と接続し、図11に示す装置を用いて本実施例におけるガスセンサの、混合ガスに対するセンサ特性を測定した。
【0178】
混合ガスは空気に水素(H)を混合したもの(以下ガスA)、空気にメタン(CH)を混合したもの(同ガスB)、空気に一酸化窒素(NO)を混合したもの(同ガスC)を用意した。
【0179】
それぞれのガスは空気と検知対象ガスの混合比を変化させることで濃度を変えることが可能で、今回はそれぞれのガスについて濃度を200ppm、100ppm、50ppmと変化させ、ガス濃度に対する抵抗率変化を測定した。
【0180】
測定はフロー系で大気圧下で行い、ガスOn時には上記の濃度のガスを導入し、ガスOff時には空気のみを導入した。
【0181】
上記のガスを流しながらセンサの電極間に直流電流を1V印加し、その電流値の時間変化を計測した。測定時のセンサの温度は100℃とした。
【0182】
図16はこのときのそれぞれのガスに対する経過時間に対する電流値変化から求めた抵抗率変化を示したものである。
【0183】
その結果、本実施例による酸化スズ多孔質膜を有するガスセンサは、ガスA、即ち水素と空気の混合ガスに対して選択的に応答し、ガスB、ガスCに対してはほとんど応答しなかった。
【0184】
また、ガスAに対する抵抗率の時間変化において、ガスOff時、即ち空気のみを流した場合の抵抗率をR、空気と水素の混合ガスを流した場合の抵抗率をRとし、次式で感度Sを定義した。この場合、200ppmの水素に対してS=100、100ppmの水素に対してS=40、50ppmの水素に対してS=20であった。
【0185】
=R/R
以上の結果から、本実施例では、孔壁に微結晶を含み、孔内に金属パラジウム粒子を担持した酸化スズ多孔質膜を用いることで、特定のガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサの作製が可能となることが確認された。
【0186】
[比較例3]
界面活性剤を添加しない以外は実施例4と同じ製法で作製したガスセンサに対して、同様の測定を行った結果を図17に示す。
【0187】
ガスAに対してはわずかに反応し、ガスB、ガスCに対してはほとんど反応しなかった。
【0188】
ガスAに関して、濃度200ppmの水素に対してS=10、濃度100ppmの水素に対してS=4、濃度50ppmの水素に対してS=1.5であった。
【0189】
[実施例5]
(孔内に無機物の粒子を担持した実施例:白金)
本実施例は、くし型電極が形成された基板上に酸化スズ多孔質膜を形成してガスセンサ素子を作製し、Hガスの選択的検知に用いた例である。
【0190】
まず、実施例4と同様の方法で石英基板上に電極と多孔質酸化スズ膜を作製した。
【0191】
次に、作製した多孔質酸化スズ膜を、塩化白金酸(HPtCl)の濃度が0.005Mである水溶液に浸漬した。
【0192】
その後乾燥処理を行い、白金の粒子を得るために水素雰囲気中において170℃、2時間の条件で還元処理を行った。
【0193】
孔内への白金粒子の担持を確認するために、多孔質酸化スズ膜の表面及び断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
【0194】
その結果、孔内に直径約3nmの粒子が担持されている様子が確認された。
【0195】
またTEMに付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)及び電子エネルギー損失分光装置(EELS)を用いて分析した結果、孔内に担持された粒子は金属の白金であることが確認された。
【0196】
またX線回折測定において、2次元ヘキサゴナル構造を示唆する回折パターンが得られ、孔内への白金担持後も孔構造が維持されていることが確認された。
【0197】
また、窒素ガス吸着測定により比表面積は約180m/gであり、孔内への白金担持後も比表面積は大きく変化していないことが確認された。
【0198】
次に、実施例4と同様の装置、方法を用いて本実施例におけるガスセンサの、混合ガスに対するセンサ特性を測定した結果、このときのそれぞれのガスに対する経過時間に対する抵抗率変化は図16と同様な挙動を示した。
【0199】
また、界面活性剤を添加しない以外は本実施例と同じ製法で作製したガスセンサに対して同様な測定を行った結果、図17と同様な挙動を示した。
【0200】
以上の結果から、本実施例では、孔壁に微結晶を含み、孔内に白金粒子を担持した酸化スズ多孔質膜を用いることで、特定のガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサの作製が可能となることが確認された。
【0201】
[実施例6]
(孔内に無機物の粒子を担持した実施例:酸化第二銅)
本実施例は、くし型電極が形成された基板上に酸化スズ多孔質膜を形成してガスセンサ素子を作製し、硫化水素(HS)ガスの選択的検知に用いた例である。
【0202】
まず、実施例4と同様の方法で電極と多孔質酸化スズ膜を作製した。
【0203】
次に、作製した多孔質酸化スズ膜を、レーザーアブレーション法により作製した銅(Cu)の粒子が分散した水溶液中に浸漬し、1時間程度超音波処理を行った後に、大気雰囲気下において300℃で1時間加熱して酸化第二銅(CuO)の粒子を孔内へ導入した。
【0204】
孔内への酸化第二銅(CuO)粒子の担持を確認するために、多孔質酸化スズ膜の表面及び断面構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。
【0205】
その結果、孔内に直径が約3nmの粒子が担持されている様子が確認された。
【0206】
またTEMに付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)及び電子エネルギー損失分光装置(EELS)を用いて分析した結果、孔内に担持された粒子は酸化第二銅であることが確認された。
【0207】
またX線回折測定において、2次元ヘキサゴナル構造を示唆する回折パターンが得られ、孔内への酸化第二銅担持後も孔構造が維持されていることが確認された。
【0208】
また、窒素ガス吸着測定により比表面積は約180m/gであり、孔内への酸化第二銅担持後も比表面積は大きく変化していないことが確認された。
【0209】
次に、実施例4と同様の装置、方法を用いて本実施例におけるガスセンサの、混合ガスに対するセンサ特性を測定した結果、このときのそれぞれのガスに対する経過時間に対する抵抗率変化は図16と同様な挙動を示した。
【0210】
また、界面活性剤を添加しない以外は実施例3と同じ製法で作製したガスセンサに対して、同様の測定を行った結果、図17と同様な挙動を示した。
【0211】
以上の結果から、本実施例では、孔壁に微結晶を含み、孔内に酸化第二銅粒子を担持した酸化スズ多孔質膜を用いることで、特定のガスに対して選択性を有し、かつ高感度な検出が行える金属酸化物半導体式ガスセンサの作製が可能となることが確認された。
【0212】
本発明のセンサ及びその製造方法は、特定のガス種を選択的に検知するガスセンサに利用可能であり、また、本発明のセンサは、ガスを検知するガスセンサ、生体物質を検知するバイオセンサ等に応用できる。
【0213】
また、本発明のセンサ及びその製造方法は、特定のガス種を選択的に検知するガスセンサに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】本発明のセンサの構成を示す概略図。
【図2】図1の断面図。
【図3】図2のメソ孔の拡大図。
【図4】図2のメソ孔の拡大図。
【図5】図2のメソ孔の拡大図。
【図6】無機物の粒子の一部を示す概略図。
【図7】センサ断面の一実施形態の図。
【図8】センサ断面の一実施形態の図。
【図9】メソ孔の配列を示した図。
【図10】本発明のセンサの製造方法における、工程の一例を示す工程図。
【図11】本発明のセンサの特性を評価するための装置の概略図。
【図12】本発明のセンサを用いて複数のガスを検知した際の抵抗値変化を示すグラフ。
【図13】本発明のセンサの比較例として用いたセンサ素子を用いて複数のガスを検知した際の抵抗値変化を示すグラフ。
【図14】本発明のセンサを用いて複数のガスを検知した際の抵抗値変化を示すグラフ。
【図15】本発明のセンサの比較例として用いたセンサ素子を用いて複数のガスを検知した際の抵抗値変化を示すグラフ。
【図16】本発明のセンサを用いて複数のガスを検知した際の抵抗値の時間変化を示すグラフ。
【図17】比較のために用意したセンサを用いて複数のガスを検知した際の抵抗値の時間変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0215】
11 多孔質酸化物半導体膜
12 電極
13 基板
14 メソ孔
15 細孔壁
16 有機物
17 酸化物
18 ガスセンサ
19 基板ヒーター
20 ヒーター制御装置
21 抵抗率測定装置
22 ガス濃度制御装置
23 無機物の粒子
24 ガスフローチャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部が、有機物で被覆されていることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記有機物が共有結合によって、前記細孔表面に固定化されていることを特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部が、前記酸化物と異なる酸化物で被覆されていることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
前記酸化物と異なる酸化物が酸化ケイ素であることを特徴とする請求項3記載のセンサ。
【請求項5】
複数のメソ孔を有し、且つ酸化スズを含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極とを備え、
前記メソ孔内に無機物の粒子が担持されていることを特徴とするセンサ。
【請求項6】
前記無機物の粒子が金属又は金属酸化物であることを特徴とする請求項5記載のセンサ。
【請求項7】
前記酸化物が微結晶を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のセンサ。
【請求項8】
前記金属酸化物がX線回折測定において1nm以上の構造周期性に対応する角度領域に少なくとも一つ以上の回折ピークを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のセンサ。
【請求項9】
前記酸化物が金属酸化物であることを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のセンサ。
【請求項10】
ガスの吸着等温線を測定する方法から得られた前記メソ孔の径の分布が単一の極大値を有し、且つ60%以上の細孔の直径が12nm以内の範囲に含まれることを特徴とする請求項1から9のいずれか記載のセンサ。
【請求項11】
センサの製造方法であって、
金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内に無機物の粒子を担持する工程とを備えることを特徴とするセンサの製造方法。
【請求項12】
前記無機物の粒子を前記メソ孔内に担持する工程が、無機化合物又は無機物を孔内に導入する工程と、
前記無機化合物又は前記無機物を酸化又は還元することにより孔内に無機物の粒子又は無機酸化物の粒子を形成する工程とを有することを特徴とする請求項11記載のセンサの製造方法。
【請求項13】
センサの製造方法であって、
金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を有機物で被覆する工程とを備えることを特徴とするセンサの製造方法。
【請求項14】
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を有機物で被覆する工程が、シランカップリング剤を使用して前記有機物を前記表面に結合させる工程であることを特徴とする請求項13記載のセンサの製造方法。
【請求項15】
センサの製造方法であって、
金属化合物と界面活性剤とを含む反応溶液を用意し、前記反応溶液を基板上に塗布する工程と、
前記反応溶液が塗布された基板を水蒸気を含む雰囲気中に保持し、前記基板上に金属酸化物と界面活性材とを含む膜を形成する工程と、
前記膜から界面活性剤を除去して、複数のメソ孔を有する膜を形成する工程と、
前記メソ孔内の表面の少なくとも一部を酸化物で被覆する工程とを備えることを特徴とするセンサの製造方法。
【請求項16】
前記金属化合物が、金属を含む塩化物、金属を含むアルコキシド、金属を含むイソプロキシドのいずれかであることを特徴とする請求項11から15のいずれか記載のセンサの製造方法。
【請求項17】
前記界面活性剤がエチレンオキサイドを親水基として含む界面活性剤であることを特徴とする請求項11から16のいずれか記載のセンサの製造方法。
【請求項18】
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極と、
前記メソ孔の孔表面に孔壁と異なる材料を含む層とを備え、
被検出物質が前記層と接触したときに、前記半導体膜の低効率が変化することを特徴とするセンサ。
【請求項19】
複数のメソ孔を有し、且つ酸化物を含む半導体膜と、
前記半導体膜と電気的に接続している電極と、
前記メソ孔の表面に孔壁と異なる材料を含む層とを備え、
前記層を通過してきた被検出物質が前記半導体膜と接したときに、前記半導体膜の抵抗率が変化することを特徴とするセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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