説明

センサ情報共用方法及び制御装置並びに制御システム

【課題】既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサの検出情報を容易に用いることができる制御システムを提供する。
【解決手段】制御システムは、第1コントローラ11、第2コントローラ12及びセンサ13を備えている。第1コントローラ11は、センサ13等の情報に基づいて制御を行う制御部14と、センサ13から出力される出力信号を入力して、その入力信号を制御部14で読み取ることができる信号に変換する変換回路15とを備えている。変換回路15は、変換後の信号を制御部14に出力する出力部16と、外部配線を接続可能な外部出力部17とを備えている。第2コントローラ12は、変換回路15の外部出力部17に外部配線18を介して接続される入力部19と、入力部19から入力されたセンサ13の信号を用いる制御部20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ情報共用方法及び制御装置並びに制御システムに係り、詳しくは一つのセンサの情報を複数の制御装置で共用するセンサ情報共用方法及びその方法を実施するのに適した制御装置並びに制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制御装置に用いられるアクチュエータ制御装置として、図3に示すように、複数のセンサ51からの入力を記憶するメモリ52と、メモリ52へのデータの出し入れを制御するCPU53と、アクチュエータ54,55,56をそれぞれ制御する複数のCPU57,58,59とを備えたものが提案されている(特許文献1)。各CPU57〜59は、各アクチュエータ54〜56の制御信号を作成する際、CPU53に対してデータ要求信号を出力する。CPU53は各CPU57〜59に対して順次データを供給する。
【0003】
また、制御システムとして、複数の制御装置を最初から全て備えるのではなく、オプション装置として後から追加して制御システムの機能を拡大する構成のものがある。その際、異なる目的の制御を行う複数の制御装置で同じセンサ情報を得る必要がある制御システムもある。例えば、ディーゼルエンジン車において、最高車速度を制御するシステム(VSCS:Vehicle Speed Control System)の制御装置と、DPF(Diesel Paticulate Filter)を備えた排気浄化装置の再生処理制御装置とはエンジン回転数の情報が制御に必要となる。
【特許文献1】実開平6−14944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のシステムに新機能を有する制御装置(コントローラ)を追加する場合、既にあるセンサに新たに設ける制御装置をそのまま接続することは難しい。なぜならば、センサは一般に出力端子が1個であり、新設する制御装置に信号を送るには、分岐部を設けて各制御装置に接続する必要がある。また、一般にセンサはアナログ信号を出力するため、元の制御装置と新設する制御装置で同じ信号を入力するには、センサと各制御装置間のインピーダンスを合わせる等の必要があるためその調整が難しい。
【0005】
また、新設する制御装置用に同じセンサを設ける場合、2つのセンサを完全に同じ情報を得るように設けるのは難しい。なぜならば、センサが同じでも、センサの取付位置やセンサと制御装置とを接続する配線の長さによって制御装置が入力する信号の状態が変わる場合がある。例えば、センサが電磁誘導式のピックアップの場合、センサと被検出部との距離(ギャップ)を同じに配置するのが難しい。また、2個のセンサの設置スペースを確保しなければならないという問題もある。
【0006】
一方、特許文献1の制御装置は異なる制御を行うために複数のCPU(制御装置)を備えているが、最初から一つの制御装置に組み込まれており、既設の制御システムに新たな制御装置を追加する際の前述した問題に関しては何ら配慮はなされていない。
【0007】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサの検出情報を容易に用いることができるセンサ情報共用方法及び制御装置並びに制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、独立してそれぞれ異なる制御を行う複数の制御装置が一つのセンサの出力信号を使用する制御システムにおけるセンサ情報共用方法である。そして、前記センサの情報に基づいて制御を行う制御部を備えた第1の制御装置に設けられた変換回路に前記センサの出力信号を入力し、該変換回路において入力した信号を前記制御部及び他の制御装置の制御部で読み取ることができる信号に変換し、変換された信号を前記変換回路に設けられた複数の出力部から前記複数の制御装置の制御部に出力する。
【0009】
この発明では、センサの出力信号は第1の制御装置に設けられた変換回路に入力されるとともに、該変換回路において第1の制御装置の制御部及び他の制御装置の制御部で読み取ることができる信号に変換される。そして、変換回路で変換後の信号が複数の制御装置の制御部に出力されて各制御装置における制御に用いられる。従って、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサの検出情報を容易に用いることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明の制御装置は、センサの情報に基づいて制御を行う制御部と、前記センサから出力される出力信号を入力して、その入力信号を前記制御部で読み取ることができる信号に変換するとともに、変換後の信号を前記制御部に出力する出力部、及び外部配線を接続可能な外部出力部を備えた変換回路とを備えている。
【0011】
この発明の制御装置は、センサからの入力信号を制御部で読み取ることができる信号に変換する変換回路が、外部配線を接続可能な外部出力部を備えている。従って、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサの検出情報を容易に用いることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記変換回路はA/D又はD/A変換回路である。この発明では、センサから出力されるアナログ信号が変換回路において一度デジタル信号に変換されるため、アナログ信号のまま増幅して制御部に出力する構成と異なり、センサ情報の劣化が少なく、同じセンサ情報を共有することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、一つのセンサの出力信号を複数の制御装置で共用する制御システムである。そして、第1の制御装置として請求項2又は請求項3に記載の制御装置を備えるとともに、第2の制御装置として前記第1の制御装置に装備された変換回路の外部出力部に外部配線を介して接続される入力部と、該入力部から入力された前記センサの信号を用いる制御部とを備えた制御装置を備えている。
【0014】
この発明では、センサの出力信号は第1の制御装置に装備された変換回路に入力されるとともに、変換回路において制御部で読み取ることができる信号に変換される。変換後の信号は出力部から第1の制御装置の制御部に出力されるとともに、外部出力部に接続された外部配線を介して第2の制御装置の入力部に入力される。従って、一つのセンサの出力信号を複数の制御装置で容易に共用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサの検出情報を容易に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を車両用制御システムに具体化した一実施形態を図1にしたがって説明する。
図1に示すように、制御システムは、第1の制御装置としての第1コントローラ11、第2の制御装置としての第2コントローラ12及びセンサ13を備えている。第1コントローラ11及び第2コントローラ12は、いずれもエンジン回転速度を制御に必要な情報としている。そして、共通のセンサ13としてエンジン回転センサを使用して、エンジン回転速度の情報を得るようになっている。センサ13として、電磁誘導式のピックアップが使用されている。
【0017】
第1コントローラ11は、センサ13等の情報に基づいて制御を行う制御部14と、センサ13から出力される出力信号を入力して、その入力信号を制御部14で読み取ることができる信号に変換する変換回路15とを備えている。変換回路15は、変換後の信号を制御部14に出力する出力部16と、外部配線を接続可能な外部出力部17とを備えている。この実施形態では、変換回路15はA/D変換回路である。
【0018】
第1コントローラ11は、最高車速度を制御するシステム(VSCS:Vehicle Speed Conrol System )のコントローラである。第1コントローラ11は、オペレータが操作するアクセルペダルの開度やエンジン回転速度情報に基いて、スロットルレバーをモータ等の制御によって間接的に制御するようになっている。このとき、エンジン回転速度が制御に必要な情報となる。
【0019】
第2コントローラ12は、第1コントローラ11に装備された変換回路15の外部出力部17に外部配線18を介して接続される入力部19と、入力部19から入力されたセンサ13の信号を用いる制御部20とを備えている。
【0020】
第2コントローラ12は、ディーゼルエンジン車においてDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えた排気浄化装置の再生処理制御を行うコントローラである。第2コントローラ12は、排気浄化装置の再生処理に適した時期をエンジン回転速度情報と、排気浄化装置の詰まり状態から判断するようになっている。このとき、エンジン回転速度が制御に必要な情報となる。
【0021】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
制御システムを構成する第1コントローラ11及び第2コントローラ12は一つのセンサ13を共用する。センサ13から出力される出力信号はアナログ信号(正弦波の信号)として出力されるとともに、変換回路15に入力される。変換回路15は、入力されたアナログ信号を制御部14及び制御部20が読み取ることのできるデジタル信号(方形波の信号)に変換して出力部16及び外部出力部17から出力する。
【0022】
第1コントローラ11の制御部14は、オペレータが操作するアクセルペダルの開度やエンジン回転速度情報に基いて、スロットルレバーをモータ等の制御によって間接的に制御している。
【0023】
第2コントローラ12の制御部20は、エンジン回転速度が所定の範囲にある状態でセンサ13の出力情報及び他のセンサ(例えば、DPFの前後の差圧を検出する差圧センサ)の出力情報に基づいて排気浄化装置の再生処理に適した時期を判断するとともに、適した時期に再生処理制御を行う。
【0024】
第1コントローラ11及び第2コントローラ12用にそれぞれエンジン回転センサを設ける場合は、両センサを同じ状態に取り付けないと同じ検出信号を得られない場合がある。2個のセンサを全く同じ状態で取り付けることは、設置スペース及び周囲の状況により非常に難しい。特に、センサと被検出部との距離が検出結果に大きく影響する場合は、より難しい。しかし、第1コントローラ11及び第2コントローラ12は、1個のセンサ13の出力信号を共用しているため、センサを取り付ける手間が半分以下になるとともに、容易に同じ情報を得ることができる。
【0025】
この実施形態では以下の効果を有する。
(1)センサ13の出力信号は第1コントローラ11に設けられた変換回路15に入力されるとともに、変換回路15において第1コントローラ11及び第2コントローラ12の制御部14,20で読み取ることができる信号に変換される。そして、変換回路15で変換後の信号が複数の制御装置の制御部14,20に出力されて各制御装置における制御に用いられる。従って、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサ13を追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサ13の検出情報を容易に用いることができる。また、第2コントローラ12がオプション設定である場合でも、第2コントローラ12の搭載(配置)スペースを設けておくことにより、第2コントローラ12を備えないシステム及び第2コントローラ12を備えたシステムの両方に対して容易に対応することができる。
【0026】
(2)第1コントローラ11は、センサ13の情報に基づいて制御を行う制御部14と、センサ13から出力される出力信号を入力して、その入力信号を制御部14で読み取ることができる信号に変換するとともに、変換後の信号を制御部14に出力する出力部16及び外部配線18を接続可能な外部出力部17を備えた変換回路15とを備えている。従って、既存の制御システムに新機能を有する制御装置を追加する場合に、新たにセンサを追加せずにその制御システムに既に装備されたセンサ13の検出情報を容易に用いることができる。
【0027】
(3)変換回路15はA/D変換回路である。従って、センサ13から出力されるアナログ信号は変換回路15においてデジタル信号に変換されるため、アナログ信号をアナログ信号のまま増幅して制御部14,20に出力する構成と異なり、信号情報の劣化が無く制御部14と制御部20には同じ情報が入力される。
【0028】
(4)仮にセンサ13の仕様が変更されても、第1コントローラ11の変換回路15の変更だけで対応が可能で、第2コントローラ12側の変更は不要となり、工数を削減することができる。
【0029】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ 変換回路15からの外部出力信号がデジタル信号の場合、図2に示すように、変換回路15の外部出力部17に第2の制御装置として複数のコントローラ(第2コントローラ12、第3コントローラ21、第4コントローラ22)を接続してもよい。第3コントローラ21及び第4コントローラ22は、第2コントローラ12と同様に、変換回路15の外部出力部17に外部配線18を介して接続される入力部19と、入力部19から入力されたセンサ13の信号を用いる制御部(図示せず)とを備えている。なお、外部配線18の途中には分岐コネクタが設けられる。この場合、車両用制御システムに、最高車速度制御システムの第1コントローラ11及びDPFを備えた排気浄化装置の再生処理制御用の第2コントローラ12に加えて、他の新機能を有するコントローラをオプション用として容易に接続することができる。
【0030】
○ 変換回路15の出力部16と外部出力部17は、第1コントローラ・第2コントローラが読み取りやすい信号にそれぞれ変換して出力してもよいし、同じ波形の信号に変換して出力してもよい。
【0031】
○ 制御部14,20がアナログ信号を入力する構成の場合、変換回路15としてA/D変換回路及びD/A変換回路を備えた構成とし、A/D変換回路で一度デジタル信号に変換した信号をD/A変換回路でアナログ信号に変換して出力部16及び外部出力部17から出力するようにしてもよい。
【0032】
○ 変換回路15としてA/D変換回路及びD/A変換回路を備えるとともに、出力部16及び外部出力部17の一方からデジタル信号を出力し、他方からアナログ信号を出力する構成としてもよい。この場合、2つの制御部14,20の一方がデジタル信号を入力し、他方がアナログ信号を入力する構成に対応することができる。例えば、制御部14がデジタル信号を入力し、制御部20がアナログ信号を入力する構成の場合、変換回路15は、入力されたアナログ信号を制御部14が読み取ることのできるデジタル信号(方形波の信号)に変換して制御部14に出力し、また制御部20が読み取ることのできる信号波形(アナログ信号)に変換して制御部20に出力する。
【0033】
○ 制御部14,20がアナログ信号を入力する構成の場合、センサ13がデジタル信号を出力する場合は、変換回路15としてA/D変換回路に代えてD/A変換回路を使用してもよい。
【0034】
○ 変換回路15は、A/D変換回路に限らず、センサ13から出力されるアナログ信号を増幅して出力部16及び外部出力部17から出力する構成であってもよい。
○ 外部配線18は変換回路15の外部出力部17に直接接続される構成に限らず、第1コントローラ11の筐体に設けられた接続部に外部出力部17が接続された構成にするとともに、その接続部に外部配線18が接続される構成としてもよい。
【0035】
○ 第1コントローラ11及び第2コントローラ12は、一つのセンサの出力信号を共用する制御装置であればよく、エンジン回転センサの出力信号を共用して車両用制御システムの最高車速度を制御する制御装置と、DPFを備えた排気浄化装置の再生処理を制御する制御装置との組み合わせに限らない。例えば、ガソリンエンジン車において、窒素酸化物(NOx)還元触媒を備えた排気浄化装置の再生処理を制御する制御装置と組み合わせてもよい。
【0036】
○ フォークリフトにおいて、オプションで設定される第2の制御装置として前輪ブレーキ及びトラクションコントロール装置を設ける場合、後輪(駆動輪)の回転速度を検出するセンサの出力信号を既存の制御装置と共用するようにしてもよい。
【0037】
○ 制御システムは、一つのセンサの出力信号を複数の制御装置で共用する制御システムであればよく、車両用制御システムに限らず、他の制御システムであってもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0038】
・請求項4に記載の発明において、前記センサはエンジン回転センサであり、前記第1の制御装置は最高車速度制御システムのコントローラであり、前記第2の制御装置はDPFを備えた排気浄化装置の再生処理制御装置である。
【0039】
・請求項1〜請求項4及び前記技術的思想のいずれか一項に記載の発明において、前記センサは電磁誘導式のピックアップである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態の制御システムを示すブロック図。
【図2】別の実施形態の制御システムを示すブロック図。
【図3】従来技術の制御装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0041】
11…第1の制御装置としての第1コントローラ、12…第2の制御装置としての第2コントローラ、13…センサ、14,20…制御部、15…変換回路、16…出力部、17…外部出力部、18…外部配線、19…入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立してそれぞれ異なる制御を行う複数の制御装置が一つのセンサの出力信号を使用する制御システムにおけるセンサ情報共用方法であって、
前記センサの情報に基づいて制御を行う制御部を備えた第1の制御装置に設けられた変換回路に前記センサの出力信号を入力し、該変換回路において入力した信号を前記制御部及び他の制御装置の制御部で読み取ることができる信号に変換し、変換された信号を前記変換回路に設けられた複数の出力部から前記複数の制御装置の制御部に出力するセンサ情報共用方法。
【請求項2】
センサの情報に基づいて制御を行う制御部と、
前記センサから出力される出力信号を入力して、その入力信号を前記制御部で読み取ることができる信号に変換するとともに、変換後の信号を前記制御部に出力する出力部、及び外部配線を接続可能な外部出力部を備えた変換回路と
を備えた制御装置。
【請求項3】
前記変換回路はA/D又はD/A変換回路である請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
一つのセンサの出力信号を複数の制御装置で共用する制御システムであって、
第1の制御装置として請求項2又は請求項3に記載の制御装置を備えるとともに、第2の制御装置として前記第1の制御装置に装備された変換回路の外部出力部に外部配線を介して接続される入力部と、該入力部から入力された前記センサの信号を用いる制御部とを備えた制御装置を備えている制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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