説明

センシング装置

【課題】試料中の被検出物質を高精度かつ再現性高く検出することができるセンシング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プリズムと、プリズムの一面上に配置された金属膜と、プリズムの一面上に配置され、金属膜上に試料を供給する流路が形成された基板と、光を射出する光源と、光源から射出された光を、プリズムと金属膜との境界面で全反射する角度でプリズムに入射させる入射光光学系と、金属膜近傍で発生した光を検出する光検出手段とを有し、入射光光学系は、境界面の各位置に、入射角度が異なり、かつ強度が実質的に等しい複数の光線を入射させることで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出面に光を所定の入射角で入射させることで発生する増強場を利用して被検出物質を検出するセンシング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオ測定(生体分子反応の測定)等において被検出物質を高感度かつ容易に検出(または測定)する方法としては、特定波長の光により励起され蛍光を発する蛍光物質(つまり、蛍光性を有する物質)からの蛍光を検出することで、被検出物質を検出(または測定)する蛍光法がある。
この蛍光法は、例えば、被検出物質が蛍光物質の場合は、被検出物質を含むと考えられる検査対象試料に特定波長の励起光を照射し、そのときの蛍光を検出することによって被検出物質の存在を確認する方法である。
また、蛍光法は、被検出物質が蛍光物質ではない場合も、被検出物質と特異的に結合する特異的結合物質を蛍光物質で標識し、この特異的結合物質を被検出物質に結合させ、その後上記と同様にして、蛍光(具体的には、被検出物質と結合した特異的結合物質を標識する蛍光物質の蛍光)を検出することにより、被検出物質の存在を確認することができる。
【0003】
また、蛍光法を用いて被検出物質をさらに高感度に検出する方法としては、蛍光物質を励起させるために金属膜の表面プラズモン共鳴による増強電場を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【0004】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載された方法は、いずれも、蛍光物質により標識された被検出物質を金属膜の近傍に配置した状態で、金属薄膜とプリズム(半円柱プリズム、三角形ガラスプリズム)との境界面に、プラズモン共鳴条件を満たす角度(プラズモン共鳴角)で光を入射させて金属薄膜に増強された電場を発生させ、金属薄膜近傍にある物質を強く励起し、蛍光を増幅させるというものであり、表面プラズモン増強蛍光(以下「SPF」ともいう。)を利用した蛍光検出法である。
【0005】
ここで、特許文献2に記載されているように、表面プラズモンの電場は、金属表面に強く局在し、かつ、金属表面からの距離に応じて指数関数的に減衰するため、金属表面に吸着固定されている蛍光標識抗体(つまり蛍光物質)のみを選択的かつ高確率で励起することができる。これにより、特許文献2に記載されているように、SPFを利用した蛍光検出法を用いることで、界面から離れた位置にある妨害物質の影響を最小限に抑制することができ、高精度に被検出物質を検出することも可能になる。
【0006】
また、特許文献2及び特許文献3は、金属膜が載置されたプリズムの角度を調整する回転機構を設け、この回転機構によりプリズムの角度を調整することで、光源から射出された光を最適なプラズモン共鳴角でプリズムに入射させることが記載されている。
【0007】
また、表面プラズモン増強効果を利用して、被検出物質を検出する方法としては、表面プラズモンにより励起された蛍光を検出する方法以外にも散乱光を検出する方法がある。
特許文献4には、プリズムの表面に金属膜と、金属膜の表面に配置された抗原・抗体反応により被検出物質をトラップする機能薄膜と、この機能薄膜に触れる状態で試料液を供給するフローセルとを有する表面プラズモンセンサが記載されている。
この表面プラズモンセンサは、金属膜上に表面プラズモン増強効果を利用して励起された表面プラズモンの電場が、機能薄膜に存在している被検出物質により乱されることで生じる散乱光を検出することで、被検出物質を検出している。このように、蛍光ではなく、散乱光を検出する方法でも、被検出物質を検出することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−62255号公報
【特許文献2】特開2001−21565号公報
【特許文献3】特開2002−257731号公報
【特許文献4】特開平10−78390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、表面プラズモンのプラズモン共鳴条件は、照明光の波長、金属膜への入射角、プリズムの屈折率や凹凸、金属膜の誘電率、厚みや粗密度、金属膜上に配置される試料の種類、状態、等により変化する。しかしながら、最大の増強度で再現性よく検出をするために、特許文献2及び3に記載されているような、回転機構を設け、基板及びプリズムを回転させ、最適角度を検出する方法では、装置コストが高くなり、また、最適角度を検出している感に、金属膜上の蛍光物質の蛍光量が減少していくという問題があった。
また、光の入射角度を調整する機構を設ける代わりに、上記の物理定数や位置関係を保障(一定状態に維持)するための温度調整と、各部材の形状を同一にすることも考えられるが、装置や、チップの製造設備が高価となり、特に低コスト化の要求が厳しい血液診断用途では受け入れられない。また、最適角度を検出している感に、金属膜上の蛍光物質の蛍光量が減少していくという問題もある。
こういった問題が、プラズモンを用いたセンシング装置の実用化の実現を阻む要因だった。
【0010】
これに対して、特許文献1〜3に記載したようなSPFを利用した蛍光検出法及び特許文献4に記載した被検出物質が表面プラズモンを乱すことで生じる散乱光を検出する検出法では、特許文献1に記載されているように、光源から射出された光をレンズ等で集光し所定の角度幅の光にして、金属膜に入射させることで、一定の角度幅の光を金属膜に入射させる。このように、一定角度幅の光を入射させ、その収束角度内での角度調整を不要とすることでコストダウンを図っている。
【0011】
しかしながら、光源から射出される光は、光束の位置(例えば、光束中心からの距離)によって光の強度が変化する(つまり、強度分布がある)ため、表面プラズモン共鳴が発生する角度が変化することで、表面プラズモンがつくる電場の強度が変化してしまうという問題がある。
また、蛍光物質による蛍光は、同一の蛍光物質であっても表面プラズモンがつくる電場の強度によって変化するため、表面プラズモンがつくる電場の強度が変化してしまうと、同一、同量の蛍光物質であっても蛍光の光量が変化し検出値が変化してしまうため、検出の精度が下がり、再現性が低下するという問題がある。この問題は、濃度検出を行う場合に顕著な問題となる。
【0012】
また、被検出物質と結合する物質が金属膜上に不均一に設けられていたり、金属膜の厚みのむらがあったりすると、被検出物質は、金属膜上に不均一に付着する。これに対しては、集光レンズにより集光され、金属面に入射する光の焦点を金属膜よりも先の位置とすることで、金属膜状の一定幅の領域に光を照射させる方法がある。
しかしながら、この方法でも、上述したように表面プラズモン共鳴が発生する角度が変化すると、表面プラズモン共鳴が発生する角度で入射する光の位置が変化する。このため、その照射位置による金属膜の厚みや、被検出物質の付着むらにより、検出値が変化してしまい、再現性が低下し、検出精度が低くなるという問題がある。
また、表面プラズモンがつくる電場を利用して被検出物質を検出する場合に限らず、検出面に光を所定の入射角で入射させることで発生する増強場を利用して被検出物質を検出する場合にも、同様の問題がある。
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、試料中の被検出物質を高精度かつ再現性高く検出することができる表面プラズモン増強効果を用いたセンシング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、検出面に光を所定の入射角で入射させることで発生する増強場を利用して試料内の被検出物質を検出するセンシング装置であって、プリズムと、前記プリズムの一面上に配置された金属膜と、前記プリズムの一面上に配置され、前記金属膜上に試料を供給する流路が形成された基板と、光を射出する光源と、前記光源から射出された光を、前記プリズムと前記金属膜との境界面で全反射する角度で前記プリズムに入射させる入射光光学系と、前記金属膜近傍で発生した光を検出する光検出手段とを有し、前記入射光光学系は、前記境界面の各位置に、入射角度が異なり、かつ強度が実質的に等しい複数の光線を入射させることを特徴とするセンシング装置を提供するものである。
【0015】
ここで、前記入射光学系は、集束点の位置及び光束中心の傾斜角度が異なる複数の光束を前記境界面に入射させることが好ましい。
また、前記光源は、1つの光束を射出する光射出装置であり、前記入射光学系は、前記光源から射出された1つの光束から、集束点の位置が異なる複数の光束を生成することが好ましい。
また、前記光源は、コヒーレントな光を射出することが好ましい。
また、前記入射光学系は、生成した複数の光束から前記境界面に入射させる光束を選択する選択手段を有し、前記選択手段は、前記境界面に入射させる光束を順番に切り替え、前記境界面に同時に集束点の異なる光束を入射させないことが好ましい。
また、前記光源は、インコヒーレントな光を射出することが好ましい。
【0016】
また、前記光源は、同一波長の光を射出する複数の個別光源で構成され、前記入射光光学系は、1つの前記個別光源から射出される光を1つの前記光束とすることが好ましい。
また、前記入射光光学系は、1つの集光レンズを有し、前記個別光源は、互いに異なる角度で、射出した光を前記集光レンズに入射させることが好ましい。
【0017】
ここで、前記入射光光学系は、光源から射出された光を散乱させる散乱部を備えることが好ましい。
また、前記散乱部は、前記光源から射出された光の光路上に配置された散乱板であることが好ましい。
また、前記散乱部は、前記プリズムの表面に形成された砂刷り面であることが好ましい。
【0018】
また、前記光検出手段の検出結果に基づいて、前記試料内の前記被検出物質の濃度を算出する算出手段を有することが好ましい。
また、前記被検出物質は、蛍光性を有する物質、または、蛍光性を有する物質で標識された物質であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、境界面の各位置に、入射角度の異なる複数の光線を入射させることで、プラズモン共鳴角が異なる角度となった場合でも、また、蛍光物質の量が位置により変化した場合でも、発生する表面プラズモンに起因して発生する増強電場の強度を均一にすることができる。このように表面プラズモンの強度を均一にできることで、高い再現性でかつ高精度に試料中の被検出物質を検出することができる。
また、プラズモン共鳴角が異なる角度でも再現性の高い検出ができることで、設計誤差の許容範囲を大きくすることができ、装置コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係るにセンシング装置について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明のセンシング装置の一実施形態であるセンシング装置10の概略構成を示すブロック図であり、図2(A)は、図1に示したセンシング装置10の光源12、入射光光学系14、サンプルユニット16の概略構成を示す上面図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線断面図である。
【0022】
図1、図2(A)及び(B)に示すようにセンシング装置10は、基本的に、所定波長の光を射出する光源12と、光源12から射出された光(以下「励起光」ともいう。)を導光し集光する入射光光学系14と、被検出物質84を含有する試料(つまり測定対象)82を保持し、入射光光学系14により集光された光が入射されるサンプルユニット16と、サンプルユニット16の測定位置から射出される光を検出する光検出手段18と、光検出手段18の検出結果に基づいて被検出物質を検出する(つまり、光検出手段18で検出した信号をデジタル化し被検出物質の有無、濃度を判断する)算出手段20とを有し、試料82に含有されている被検出物質84を検出(及び測定)する。
また、センシング装置10は、さらに、励起光を変調するファンクションジェネレータ(以下「FG」ともいう。)24と、FG24で発生された電圧に比例した電流を光源12に流す光源ドライバ26とを有する。
ここで、FG24は、High、Lowの電圧の繰り返しクロックを発生する信号発生器である。FG24が信号を光源ドライバ26に流し、光源ドライバ26がその電圧に比例した電流を光源12に流すことで、光源12は、クロックに応じて変調された光を発光する。また、FG24のクロックは、ロックインアンプ64に接続されており、ロックインアンプ64は、FG24から流されるクロックと同期した信号のみを光検出手段18の出力から取り出す。
また、図示は省略したが、センシング装置10の各部は互いの位置関係を固定するために支持機構により支持されている。
【0023】
光源12は、所定波長の光を出射する半導体レーザである。なお、光源としては、半導体レーザに限定されず、LED、ランプ、SLD等も用いることができる。
【0024】
入射光光学系14は、コリメータレンズ30と、偏光フィルタ32と、光分割部34と、集光レンズ36を有し、励起光の光路において、光源12側からコリメータレンズ30、偏光フィルタ32、光分割部34、集光レンズ36の順で配置されている。したがって、光源12から射出された光は、コリメータレンズ30、偏光フィルタ32、光分割部34、集光レンズ36をこの順で透過し、その後、サンプルユニット16に入射する。
【0025】
コリメータレンズ30は、光源12から射出され、所定角度で放射状に拡散する光を平行光に変換する。
偏光フィルタ32は、透過した光を後述するサンプルユニット16の反射面に対してP偏光となる方向に偏光するフィルタである。
【0026】
次に、図3(A)及び(B)を用いて光分割部34について説明する。ここで、図3(A)は、光源から射出される光がサンプルユニットに入射するまでの光路を示す説明図であり、図3(B)光源から射出される光がサンプルユニットに入射するまでの光路における各光束の広がりを示す説明図である。なお、図3(A)及び(B)は、図2(B)に示す面と同一の面を示している。
光分割部34は、図3(A)及び(B)に示すように、第1ハーフミラー102a、第2ハーフミラー102b、第3ハーフミラー102cと、第1シリンドリカルレンズ104a、第2シリンドリカルレンズ104b、第3シリンドリカルレンズ104cと、第1ミラー106a、第2ミラー106b、第3ミラー106c、第3ミラー106dとを有し、コリメータレンズ30で平行光とされ、偏光フィルタ32で偏光された光を、3つの光束(第1光束108a、第2光束108b、第3光束108c)に分岐し、集光レンズ36に入射させる。
【0027】
ここで、第1ハーフミラー102a、第2ハーフミラー102b、第3ハーフミラー102cは、それぞれ、通過する光のうち半分の光はそのまま透過し、半分の光は、反射するビームスプリッタである。
また、第1シリンドリカルレンズ104a、第2シリンドリカルレンズ104bは、後述するサンプルユニット16の流路45の長手方向に平行な方向が軸方向となる柱状の凹型レンズであり、シリンドリカルレンズ30により平行光とされた光を、柱状の軸に垂直な面のみに所定角度で拡散させる。
また、第3シリンドリカルレンズ104cは、後述するサンプルユニット16の流路45の長手方向に平行な方向が軸方向となる柱状の凸型レンズであり、コリメータレンズ30により平行光とされた光を柱状の軸に垂直な面(図2(B)に示す面と平行な面)のみに所定角度で集光させる。
また、第1ミラー106a、第2ミラー106b、第3ミラー106c、第3ミラー106dは、鏡面であり、入射した光を反射させる。
【0028】
次に、各部材の配置関係と、各光束の光路について説明する。
まず、偏光フィルタ32と集光レンズ36とを結んだ直線上に、偏光フィルタ32側から、第1ハーフミラー102a、第1シリンドリカルレンズ104a、第2ハーフミラー102b、第3ハーフミラー102cの順で配置されている。
ここで、第1ハーフミラー102aは、反射面が光源12から射出された光の光軸(以下単に「光軸L」という。)に対して45°傾斜して配置されている。つまり、第1ハーフミラー102aは、反射面が、光軸Lに垂直な面に対して図中時計回り方向に45°回転された向きに配置されている。また、第2ハーフミラー102bは、反射面が、光軸Lに垂直な面に対して45°から微小角度引いた角度、図中反時計回り方向に回転された向きで配置され、第3ハーフミラー102cは、反射面が、第1ハーフミラー102aよりも図中反時計回り方向に微小角度回転された向きで配置されている。
【0029】
偏光フィルタ32を透過した光は、第1ハーフミラー102aで透過光と反射光に分割され、透過光が第1光束108aとなり、反射光が第2光束108bとなる。
第1光束108aは、その後、第1シリンドリカルレンズ104aで所定角度に拡散され(図3(B)参照)、第2ハーフミラー102b、さらに、第3ハーフミラー102cを透過し、集光レンズ34で集光される。なお、第1光束108aは、第2ハーフミラー102bで出力の半分が反射光として分割され、さらに、第3ハーフミラー102cで出力の半分が反射光として分割される。これらの分割された光は、不要光であるため、装置外に射出されたり、光吸収体により吸収させたりする。
【0030】
第1ミラー106a及び第2ミラー106bは、第1ハーフミラー102aよりも第2光束108bの進行方向側に、第1ハーフミラー102a、第2ハーフミラー102b、第1ミラー106a及び第2ミラー106bが長方形の頂点となる位置関係に配置されている。つまり、第1ハーフミラー102aと第2ハーフミラー102bとを結んだ線と、第1ミラー106aと第2ミラー106bとを結んだ線が平行となり、第1ハーフミラー102aと第1ミラー106aとを結んだ線と、第2ハーフミラー102bと第2ミラー106bとを結んだ線が平行となり、各部を結んだ線同士のなす角が直角なる位置関係で配置されている。
また、第1ミラー106aは、反射面が光軸Lに垂直な面に対して図中時計回り方向に45°回転された向きに配置されており、第2ミラー106bは、反射面が光軸Lに垂直な面に対して図中反時計回り方向に45°回転された向きに配置されている。
また、第2ミラー106bと第2ハーフミラー102bとの間には、第2シリンドリカルレンズ104bが配置されている。
【0031】
第2光束108bは、第1ハーフミラー102aから第1ミラー106a方向に進行し、第1ミラー106aで反射され、第2ミラー106bで反射され、第2シリンドリカルレンズ104bで拡散された後(図3(B)参照)、第2ハーフミラー102bで反射され、第3ハーフミラー102cを透過し、集光レンズ34で集光される。ここで、第2ハーフミラー102bの反射面が、第2ハーフミラー102bに入射する直前の第2光束108bの進行方向に対して45°よりも時計回り側に微小角度回転した向きで配置されているため、第2ハーフミラー102bを中心とした場合、第2光束108bの光軸は、第1光束108の光軸よりも所定角度時計回り側に所定角度傾いている。
なお、第2光束108bも、第2ハーフミラー102bで出力の半分が透過光として分割され、さらに、第3ハーフミラー102cで出力の半分が反射光として分割される。
この第2ハーフミラー102bで分割された透過光は、第3光束108cとなる。また、第3ハーフミラー102cで分割された反射光は、不要光であるため、装置外に射出されたり、光吸収体により吸収させたりする。
【0032】
第3ミラー106c及び第4ミラー106dは、第2ハーフミラー102bよりも第3光束108cの進行方向側に、第2ハーフミラー102b、第3ハーフミラー102c、第3ミラー106c及び第4ミラー106dが長方形の頂点となる位置関係に配置されている。つまり、第2ハーフミラー102bと第3ハーフミラー102cとを結んだ線と、第3ミラー106cと第4ミラー106dとを結んだ線が平行となり、第2ハーフミラー102bと第3ミラー106cとを結んだ線と、第3ハーフミラー102cと第4ミラー106dとを結んだ線が平行となり、各部を結んだ線同士のなす角が直角なる位置関係で配置されている。
また、第3ミラー106cは、反射面が光軸Lに垂直な面に対して図中反時計回り方向に45°回転された向きに配置されており、第4ミラー106dは、反射面が光軸Lに垂直な面に対して図中時計回り方向に45°回転された向きに配置されている。
また、第2ミラー106bと第2ハーフミラー102bとの間には、第2シリンドリカルレンズ104bが配置されている。
【0033】
第3光束108cは、第2ハーフミラー102bから第3ミラー106c方向に進行し、第3ミラー106cで反射され、第4ミラー106dで反射され、第3シリンドリカルレンズ104bで集光された後(図3(B)参照)、第3ハーフミラー102cで反射され、集光レンズ34で集光される。ここで、第3ハーフミラー102cの反射面が、第3ハーフミラー102cに入射する直前の第3光束108cの進行方向に対して45°よりも反時計回り側に微小角度回転した向きで配置されているため、第3ハーフミラー102cを中心とした場合、第3光束108cの光軸は、第1光束108の光軸よりも所定角度反時計回り側に所定角度傾いている。
なお、第3光束108cも、第3ハーフミラー102cで出力の半分が透過光として分割される。
この第3ハーフミラー102cで分割された透過光は、不要光であるため、装置外に射出されたり、光吸収体により吸収させたりする。
【0034】
第1光束108a、第2光束108b、第3光束108cのいずれの光成分も光源12から射出されてから、第1ハーフミラー102a、第2ハーフミラー102b、第3ハーフミラー102cに一回をずつ透過するため、光の強度は、いずれも、光源12から射出された時点の8分の1となる。また、第3光束108cは、第2シリンドリカルレンズ104bで第2光束108bの一部として拡散された後、第3シリンドリカルレンズ104cで集光される。このように、第3シリンドリカルレンズ104cで集光することで、第3光束108cは第2光束108bよりも光路長が長いが、第2光束108bと同様の拡散角で集光レンズに入射させることができる。
【0035】
光分割部34は、以上のような構成であり、偏光フィルタ32を透過した光を、光軸の角度が互いに異なり、また、集束点が互いに異なる第1光束108a、第2光束108b、第3光束108cに分割し、集光レンズ36に入射させる。
【0036】
図1及び図2(A)及び(B)に戻り他の部分について説明する。
集光レンズ36は、図2(A)及び(B)に示すように、後述するサンプルユニットの流路の長手方向に平行な方向が軸方向となる柱状レンズであり、第1光束108a、第2光束108b及び第3光束108cを、それぞれ柱状の軸に垂直な面(図2(B)に示す面と平行な面)のみに集光させる。
【0037】
次に、サンプルユニット16は、プリズム38と、金属膜40と、基板42と、透明カバー44を有し、プリズム38の一面に形成された金属膜40上に被検出物質84を含有する試料82が載置される。
【0038】
プリズム38は、断面が二等辺三角形となる略三角柱形状(正確には、二等辺三角形の各頂点部分を二等辺三角形の底面に垂直または平行に切断した六角柱形状)のプリズムであり、光源12から射出され入射光光学系14で集光される光(つまり、第1光束108a、第2光束108b及び第3光束108c)の光路上に配置されている。
プリズム38は、入射光光学系14で集光された光が、3つの側面のうち二等辺三角形の2つの斜辺のうちの1つの辺で構成される面から入射する向きで配置されている。
プリズム38は、公知の透明樹脂や光学ガラスで形成することができ、例えば、日本ゼオン株式会社製ZEONEX(登録商標)330R(屈折率1.50)を材料として形成することができる。また、プリズム38は、コストをより低くすることができるため、光学ガラスよりも樹脂で形成することが好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、シクロオレフィンを含む非晶性ポリオレフィン(APO)等の樹脂で形成することが好ましい。
プリズム38は、このような構成であり、入射光光学系14で集光された光を、二等辺三角形の2つの斜辺のうちの1つの辺で構成される面から入射させ、二等辺三角形の底辺で構成される面で反射し、二等辺三角形の2つの斜辺のうちの他方の辺で構成される面から射出する。
【0039】
金属膜40は、プリズム38の二等辺三角形の底辺で構成される面の一部(具体的には、プリズム38に入射した光が照射される領域を含む領域)に形成された金属の薄膜である。
ここで、金属膜40に用いる材料としては、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al等の金属を用いることができる。なお、試料として液体を用いる場合は、液体との反応を抑制するためにAu、Ptを用いること好ましい。
また、金属膜40の形成方法としては、種々の方法を用いることができ、例えば、スパッタ、蒸着、めっき、貼り付け等によりプリズム38上に形成することができる。
ここで、図4は、図2(A)及び(B)に示すサンプルユニット16の金属膜40の一部を拡大して示す拡大模式図である。
図4に示すように、金属膜40の表面には、被検出物質84と特定的に結合する特異的結合物質である1次抗体80が固定されている。
【0040】
基板42は、プリズム38の二等辺三角形の底辺で構成される面に配置された板状部材であり、金属膜40に試料82を供給する流路45が形成されている。
流路45は、金属膜40を横断して形成された直線状の線状部46と、線状部46の一方の端部に形成され、測定時に試料82が供給される液溜りとなる始端部47と、線状部46の他方の端部に形成され、始端部47に供給され線状部46を通過した試料82が到着する液溜りとなる終端部48とで構成される。
また、金属膜40よりも始端部47側の線状部46には、蛍光物質86によって標識された二次抗体88が載置された二次抗体載置領域49が設けられている。
ここで、二次抗体88とは、被検出物質84と特定的に結合する特異的結合物質である。
【0041】
透明カバー44は、基板42のプリズム38と接している面とは反対側の面に接合された透明な板状の部材である。透明カバー44は、基板42のプリズム38と接している面とは反対側の面を塞ぐことで、基板42に形成された流路45を密閉している。
また、透明カバー44は、流路45の始端部47に対応する部分及び流路45の終端部48に対応する部分に開口が形成されている。また、透明カバー44は、始端部47(さらには終端部48)に対応する位置に形成した開口に開閉可能な蓋を設けてもよい。
サンプルユニット16は、基本的に以上のような構成である。ここで、プリズム38と、金属膜40と基板42とは、一体で形成することが好ましい。
【0042】
また、光源12と入射光光学系14とサンプルユニット16とは、入射光光学系14からプリズム38に入射した光をプリズム38と金属膜40との境界面で全反射させてプリズムの他方の面から射出させる位置関係で配置されている。
【0043】
光検出手段18は、検出光光学系50と、フォトダイオード(以下「PD」という。)52と、フォトダイオードアンプ(以下「PDアンプ」という。)54とを有し、サンプルユニット16の金属膜40上の光(つまり、金属膜40上にある試料82から射出される光)を検出する。
【0044】
検出光光学系50は、第1レンズ56と、カットフィルタ58と、第2レンズ60と、これらを支持する支持部62とを有し、金属膜40上(より正確には金属膜40の近傍)から射出されている光を集光し、PD52に入射させる。また、検出光光学系50は、金属膜40で発光された光の光路上において、金属膜40側から順に第1レンズ56、カットフィルタ58、第2レンズ60の順に互いに所定間隔離間して配置されている。
【0045】
第1レンズ56は、コリメータレンズであり、金属膜40に対向して配置されており、金属膜40上で発光し、第1レンズ56に到達した光を平行光にする。
カットフィルタ58は、励起光と同一波長の光を選択的にカットし、励起光と異なる波長の光(例えば、蛍光物質86に起因する蛍光等)を通過させる特性を有するフィルタであり、第1レンズ56で平行光とされた光のうち、励起光と異なる波長の光のみを通過させる。
第2レンズ60は、集光レンズであり、カットフィルタ58を透過した光を集光し、PD52に入射入射させる。
支持部62は、第1レンズ56と、カットフィルタ58と、第2レンズ60と互いに所定間隔離間させて一体的に保持する保持部材である。
【0046】
PD52は、受光した光を電気信号に変換する光検出器であり、第2レンズ60で集光され、入射した光を電気信号に変換する。またPD52は、変換した電気信号を検出信号としてPDアンプ54に送る。
PDアンプ54は、検出信号を増幅する増幅器であり、PD52から送られた検出信号を増幅し、算出手段20に送る。
【0047】
算出手段20は、ロックインアンプ64とPC(つまり演算部)66とを有し、検出信号から被検出対象の質量、濃度等を算出する。
【0048】
ロックインアンプ64は、検出信号のうち参照信号と等しい周波数成分を増幅する増幅器であり、PDアンプ54により増幅された検出信号のうち、FG24から送られた参照信号と同期する信号成分を増幅する。ロックインアンプ64で増幅された検出信号は、PC66に流される(出力される)。
【0049】
PC66は、ロックインアンプ64から供給された検出信号をデジタル信号に変換し、変換した信号に基づいて、試料中の被検出物質の濃度を検出する。ここで、試料中の被検出物質の濃度は、被検出物質の個数と液量との関係から算出することができる。また、被検出物質の個数は、個数既知の被検出物質を用いて検出信号の強度と被検出物質の個数との関係を算出し検量線を作成しておくことで算出することができる。なお、サンプルユニット16の基板42の流路45に供給する試料の液量を一定量とすること(または、一定量となるように設計すること)で、簡単かつ正確に濃度を算出することができる。
センシング装置10は、基本的に以上のような構成である。
【0050】
以下、センシング装置10の作用について説明することで本発明をより詳細に説明する。図5(A)〜(C)は、それぞれ、サンプルユニット16での試料82の流れを示す説明図であり、図6は、試料82が到達した金属膜40の一部を拡大して示す拡大模式図である。
【0051】
まず、図5(A)に示すように、サンプルユニット16の基板42の流路45の始端部47に、被検出物質84を含有する試料82を滴下する。
始端部47に滴下された試料82は、毛細管形状により、線状部46及びガラスカバー44で形成された管の中を終端部48に向けて移動する。
【0052】
始端部47から終端部48に向けて線状部46を移動する試料82は、図5(B)に示すように、線状部46の二次抗体載置領域49に到達する。試料82が二次抗体載置領域49に到達すると、試料82に含有されている被検出物質84と二次抗体載置領域49に載置されている二次抗体88との間で抗原抗体反応がおき、被検出物質84と二次抗体88とが結合する。また、この二次抗体88は、蛍光物質86により標識されているため、二次抗体88と結合した被検出物質84は、蛍光物質86により標識された状態となる。
【0053】
二次抗体載置領域49を通過した試料82は、線状部をさらに終端部48側に移動し、金属膜40に到達する。試料82が金属膜40に到達すると、図6に示すように、試料82に含有されている被検出物質84と金属膜40上に固定されている一次抗体80との間で抗原抗体反応がおき、被検出物質84が一次抗体80に捕捉される。ここで、一次抗体80に捕捉された被検出物質84は、二次抗体載置領域49で蛍光物質86により標識された状態であるため、被検出物質84を捕捉した一次抗体80は、蛍光物質86で標識された状態となる。つまり、被検出物質84は、一次抗体80と二次抗体88とでサンドイッチされた状態となる。
【0054】
金属膜40を通過した試料82は、終端部48まで移動する。また、一次抗体80により捕捉されなかった被検出物質84、被検出物質84に結合されなかった二次抗体88及び蛍光物質86も試料82とともに終端部48まで移動する。
これにより、図5(C)に示すように、金属膜40上に二次抗体88と結合し、蛍光物質86により標識され、かつ一次抗体80に捕捉された被検出物質84が残った状態となる。
【0055】
このように、金属膜40上に蛍光物質86により標識された二次抗体88と被検出物質84と固定化された一次抗体80のみが残った状態となったら、金属膜40に励起光を照射する。
具体的には、FG24で決定された強度変調信号に基づいて光源ドライバ26から流れる電流に基づいて、光源12から励起光を射出させる。励起光は、光源12から射出された後、入射光光学系14により、遮光板36により一部の励起光が遮断され、コリメータレンズ30より平行光とされ、その後、偏光フィルタ32により偏光され、光分割部34により、第1光束108a、第2光束108b、第3光束108bとされた後、集光レンズ36により一方向のみ集光される。
集光レンズ36により集光された第1光束108a、第2光束108b、第3光束108bは、プリズム38に入射され、所定の角度幅の光としてプリズム38と金属膜40との境界面に到達し、プリズム38と金属膜40との境界面で全反射され、プリズム38から射出される。なお、集光レンズ36は、第1光束108a、第2光束108b、第3光束108bの集束点が、プリズム38と金属膜40との境界面を一定距離越えた位置となるように集光する。
また、集光レンズ36により一方向のみに集光することで、プリズム38と金属膜40との境界面の線状部46の延在方向に平行な方向には、同一角度の光を入射することができる。
【0056】
プリズム38に入射した励起光(つまり、第1光束108a、第2光束108b、第3光束108b)がプリズム38と金属膜40との境界面で全反射されることで、金属膜40の流路45側の面(プリズム38側とは反対側の面)に、エバネッセント波が滲み出し、このエバネッセント波により、金属膜40中に表面プラズモンが励起される。この表面プラズモンにより金属膜40の表面に電界分布が生じ、電場増強領域が形成される。
このとき、所定の角度幅で入射された励起光のうち、プリズム38と金属膜40との境界面に所定角度(具体的には、プラズモン共鳴条件を満たす角度)した入射した励起光により発生した、エバネッセント波と表面プラズモンとが共鳴し、表面プラズモン共鳴(プラズモン増強効果)が発生する。このように、表面プラズモン共鳴(プラズモン増強効果)が発生した領域では、より強い電場増強が形成される。ここで、プラズモン共鳴条件は、入射された光により発生したエバネッセント波の波数ベクトルと、表面プラズモンの端数とが等しくなり、波数整合が成立する条件であり、上述したように、試料の種類、試料の状態、金属膜の厚み、密度、励起光の波長、入射角度等種々の条件に基づいて決まる。なお、本発明において、プラズモン共鳴角及び励起光(つまり、各光束)の入射角度は、金属面に垂直な線とのなす角である。
【0057】
また、このとき、エバネッセント波の滲み出している領域において蛍光物質86がある場合、励起されて蛍光を発生させる。また、エバネッセント波が染み出している領域とほぼ同等の領域に存在する表面プラズモンによる電場増強の効果、特に、表面プラズモン共鳴により増強された電場増強の効果により、この蛍光が増強される。
なお、エバネッセント波の滲み出し領域外の蛍光物質は励起されないため、蛍光を発生させない。
このようにして、金属膜40上に固定された被検出物質84を標識する蛍光物質86の蛍光は、励起され、増強される。
蛍光物質86から射出された光は、光検出手段18の第1レンズ56に入射し、カットフィルタ58を透過し、第2レンズ60で集光され、PD52に入射され電気信号に変換される。また、第1レンズ56に入射した光のうち励起光を同一波長の光は、カットフィルタ58を透過できないため、励起光成分は、PD52まで到達しない。
【0058】
PD52で生成された電気信号は、検出信号として、PDアンプ54で増幅され、ロックインアンプ64で、参照信号と同期する信号成分を増幅する。これにより、励起光に起因して発生した光を増幅することができるため、その他のノイズ成分(例えば、部屋の蛍光灯、装置内のセンサーの光など、検出光光学系50以外からPD52に入射した光や、PDで発生する暗電流)と蛍光物質86から射出された光とを確実に識別することができる。
ロックインアンプ64で増幅された検出信号は、PC66に送られる。
PC66は、信号をA/D変換し、あらかじめ記憶していた検量線に基づき、被検出物質84の算出結果から、試料82中の被検出物質84の濃度を検出する。
センシング装置10は、以上のようにして、試料82中の被検出物質84の濃度を検出する。
【0059】
センシング装置10によれば、プリズム38と金属膜40との境界面に集束点の異なる3本の光束、つまり、第1光束108a、第2光束108b、第3光束108cを入射させることで、境界面の各位置に角度の異なる3本の光線を入射させることができる。
これにより、プラズモン共鳴角により、各位置で発生する増強電場(正確には、表面プラズモンに起因して発生する増強電場)の強度が変化することを防止でき、プラズモン共鳴角によらず、金属膜上に発生する増強電場の強度を均一にすることができる。
【0060】
より詳細に説明すると、正規分布をのように強度に差がある光を励起光として用いる場合は、プラズモン共鳴角が異なると、その角度により励起光の強度が大きく変化する。
ここで、図7(A)及び(B)は、それぞれ従来の励起光の強度と表面プラズモン共鳴の発生条件との関係を示す模式図である。
図7(A)には、励起光を正規分布の強度分布の光とし、光励起光の光束の中心付近の光がプラズモン共鳴角θ1と一致した場合の励起光の強度分布90とプリズム38と金属膜40との境界面で全反射された後の光の強度分布92を示し、図7(B)には、励起光を正規分布の強度分布の光とし、励起光の光束の中心から離れた位置の光がプラズモン共鳴角θ2と一致した場合の励起光の強度分布90’とプリズム38と金属膜40との境界面で全反射された後の光の強度分布92’を示す。
図7(A)に示すように、プラズモン共鳴角θ1で入射した光で表面プラズモン共鳴が発生する場合は強度分布90のうち頂点付近の強度の光(図7(A)中丸で示す強度の光)が表面プラズモン共鳴に変換される光となる。また、図7(B)に示すように、プラズモン共鳴角θ2で入射した光で表面プラズモン共鳴が発生する場合は、強度分布90’のうち中腹付近の強度の光(図7(B)中丸で示す強度の光)が表面プラズモン共鳴に変換される光となる。このため、表面プラズモン共鳴に寄与する光の強度が大きく異なる値となる。また、強度分布92と強度分布92’に示すように、反射光の強度分布も強度分布92の方が強度分布92’よりも大きく減少している。つまり、プラズモン共鳴角θ1の方がプラズモン共鳴角θ2の場合よりも表面プラズモン共鳴に利用されるエネルギーが多くなる。
このように、表面プラズモン共鳴に変換される光の強度が大きく異なると、金属膜上に発生する増強電場の強度も大きく異なる。具体的には、図7(A)に示す場合の方が図7(B)に示す場合よりも増強電場の強度が大きくなる。
また、表面プラズモン共鳴が発生する位置(プラズモン共鳴角で入射する光の位置)が異なるため、金属膜表面上の一次抗体80のムラや、被検出物質84の一次抗体80への付着ムラ等があると、金属膜上に発生する増強電場の強度が同一でも金属膜の位置により蛍光量が変化してしまうことになる。
【0061】
次に、図8(A)は、第1光束108aと金属膜40(より正確には、プリズム38と金属膜40との境界面)との関係を示す説明図であり、図8(B)は、第2光束108bと金属膜40との関係を示す説明図であり、図8(C)は、第3光束108cと金属膜40との関係を示す説明図である。また、図9は、各光束の入射角度と光量との関係を示すグラフである。なお、図9では、横軸を境界面への入射角度[°]とし、縦軸を各光束の相対光量とした。
センシング装置10は、図8(A)に示すように、第1光束108aを、光束の中心が原点0の位置となるように金属膜40へ入射させ、図8(B)に示すように、第2光束108bを、第1光束108aよりも金属膜40とのなす角が大きくなる角度で、かつ、光束の中心が原点0の位置となるように金属膜40へ入射させ、図8(C)に示すように、第3光束108cを、第1光束108aよりも金属膜40とのなす角が小さくなる角度で、かつ、光束の中心が原点0の位置となるように金属膜40へ入射させる。
このように、第1光束108a、第2光束108b及び第3光束108cを互いに角度の異なる3方向から入射させることで、図9に示すように金属膜80に入射する光の強度を所定の角度範囲で略一定にすることができる。
このように、入射角度における光の強度を均一にできることで、プラズモン共鳴角によらず、金属膜上に発生する増強電場の強度を略一定にすることができる。
【0062】
ここで、図10(A)及び図10(B)は、それぞれ、各光束とサンプルユニットで発生する蛍光の強度との関係を示すグラフである。なお、図10(A)及び図10(B)は、蛍光物質の量は同一量としている場合である。
例えば、測定時にプラズモン共鳴角が第1光束108aの中心の入射角度と近い場合は、第1光束108aを入射することにより発生する増強電場の強度が高くなり、第2光束108b、第3光束を入射することにより発生する増強電場の強度が低くなる。したがって、図10(A)に示すように、第1光束108aに起因する(被検出物質を標識する蛍光物質の)蛍光の強度が高くなり、第2光束108b、第3光束108cに起因する蛍光の強度が低くなる。
これに対して、図10(A)に示す測定よりもサンプルの屈折率の低いサンプルユニットを測定する場合等、プラズモン共鳴角がより低くなると、プラズモン共鳴角は、図10(A)に示す測定の場合よりも、第1光束108aの中心の入射角度とは遠くなり、第2光束108bの中心の入射角度と近くなる。したがって、第2光束108bに起因する蛍光の強度が高くなり、第1光束108a、第3光束108cに起因する蛍光の強度が低くなる。
このように、測定時のプラズモン共鳴角により、1つの光束に起因する蛍光の強度は、変化するが、3本の光束のうちのいずれかの光束に起因する蛍光の強度が低下したら、他の光束の強度が高くなるため、プラズモン共鳴角によらず、増強電場の強度を実質的に一定にすることができ、蛍光物質が同一量の場合は、蛍光の強度を同一にすることができ、再現性が高くかつ高精度な測定をすることができる。
【0063】
また、入射角度が異なる3本の光束を、光束の中心が同一位置となるよう境界面に入射させることで、プラズモン共鳴角がずれた場合でも、各位値における増強電場の強度を均一にすることができる。つまり、プラズモン共鳴角が変化した場合でも、図10に示す全体の蛍光量の場合と同様に、各位置に入射する3本の光束の光線のいずれかの光束の光線に起因して発生する増強電場(正確には、光線に起因して発生する表面プラズモンに起因しての発生する増強電場)の強度が低下したら、他の光束の光線に起因して発生する増強電場の強度が高くなる。また、各光束の強度分布は同一であり、かつ、光束の中心が同一位置となるように境界面に入射させているため、入射幅が異なるため光束により多少のずれはあるが、各位値に入射する光束の光線の強度は実質的に一定となる。これにより、プラズモン共鳴角によらず、各位置で発生する増強電場の強度を一定にすることができる。
これにより、一定条件で検出することができるため、サンプルユニットの一次抗体のむら等により検出ムラがある場合も、再現性が高くかつ高精度な測定をすることができる。
【0064】
以上のように、プラズモン共鳴角の角度によらず、金属膜上に発生する増強電場(正確には、表面プラズモンに起因して発生する増強電場)の強度を実質的に均一にできることで、蛍光物質の蛍光を増強する増強電場の強度を一定にすることができる。したがって、プラズモン共鳴角の角度が異なるサンプルユニットで測定した場合でも、被検出物質の量、濃度に対する検出信号の強度が一定となる。
これにより、再現性の高い測定をすることができ、被検出物質の量、濃度を正確に検出(もしくは測定)することができる。
また、プラズモン共鳴角を検出する必要がないため、短時間で検出することができる。また、条件設定のために、測定前に蛍光物質を励起することもないため、蛍光物質の蛍光の強度が低下することも防止できる。
【0065】
また、プラズモン共鳴角は、金属膜上に配置される試料や、被検出物質によっても変化するが、本発明のセンシング装置のよれば、異なる試料、被検出物質を用いてプラズモン共鳴角が変化した場合(例えば数度から10数度)も角度調節することなく、同一の装置で検出することができる。
例えば、1つのセンシング装置で、試料として尿を用い尿の中の被検出物質を検出することも、試料として血液を用い、血液の中の被検出物質を検出することもできる。
より具体的には、サンプルユニットを基本的に同様の構成(プリズムは、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いて作製)で作製した場合、全血と尿は、個体差・体調差により、サンプルユニットの屈折率が1.335から1.36までの範囲でばらつく。
ここで、例えば、励起光の波長を657nmとすると、屈折率が1.335の場合は、最適なプラズモン共鳴角(増強度が最も高くなる入射角)が73.3°となり、屈折率が1.36の場合は、最適なプラズモン共鳴角が、77.67°となり、最適なプラズモン共鳴角が約4.3°変化する。
本発明によれば、上述したように、プラズモン共鳴角によらず金属膜上に発生する増強電場の強度を略均一にすることができるため、このようにプラズモン共鳴角が数°変化した場合でも、同一条件で測定することができる。
このように、本発明によれば、検出する対象もより多くすることができる。また、プラズモン共鳴角によらず、金属膜上に発生する増強電場の強度を一定にすることができるため、検出物質によって、検出精度にバラツキが生じることを防止できる。
【0066】
また、プラズモン共鳴角の角度が異なるサンプルユニットで再現性の高い測定を可能となることで、サンプルユニットの許容誤差を大きくすることができるため、サンプルユニットを安価に製造することが可能となる。
【0067】
ここで、上述した実施形態のように光源12としてレーザー光源(つまり、コヒーレントな光を射出する光源)を用いる場合は、サンプルユニットの境界面に入射させる光束を選択する(つまり、光束を切り換える)光束選択手段を設けることが好ましい。
ここで、光束選択手段としては、光分割部の各光束の光路上にシャッタを配置した構成が例示される。
【0068】
この光束選択手段により、境界面に入射させる光束を、第1光束108aのみ、第2光束108bのみ、第3光束108cのみという状態に順次切り換えることが好ましい。より具体的には、第1光束108aを境界面に入射させている時は、第2光束108b及び第3光束108cを対応するシャッタで遮蔽し、第2光束108bを境界面に入射させている時は、第1光束108a及び第3光束108cを対応するシャッタで遮蔽し、第3光束108cを境界面に入射させている時は、第1光束108a及び第2光束108bを対応するシャッタで遮蔽する。
このように、境界面に入射させる光束を順次切り換えることで、各光束により発生する表面プラズモンに起因する蛍光強度を各光束毎に検出することができる。また、同一位置に2つの光束を同時に入射させないことで、光の干渉が発生することを防止できる。
【0069】
また、光源としては、上述したようにインコヒーレントな光を射出する光源(例えば、LED、ランプ)ことも好ましい。
インコヒーレントな光を射出する光源を用いることで、光の干渉を発生させることなく、複数の光束を同時に境界面に入射させてることができる。これにより、光選択手段を設ける必要もなく、また、安定して、短時間で、測定を行うことができる。
また、光源として、SLD等のある程度の干渉性のある光を射出する光源を用いる場合は、用途、また、必要とされる検出精度により、光束毎に入射させるか、同時に複数の光束を入射させるかを選択すればよい。
【0070】
ここで、センシング装置10では、光源から射出された1つの光束を入射光光学系で分割することで、複数の光束を生成したが本発明はこれに限定されない。
以下、図11を用いて本発明のセンシング装置の他の実施形態について説明する。ここで、図11は、本発明のセンシング装置の他の実施形態であるセンシング装置200の概略構成を示すブロック図であり、図12は、図11に示したセンシング装置200の光源202、入射光光学系204、サンプルユニット16の断面図である。
【0071】
ここで、センシング装置200は、光源202および入射光光学系204の構成を除いて他の構成は、図1に示すセンシング装置10と同様であるので同様の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略し、以下センシング装置200に特有の点について重点的に説明する。
【0072】
図11及び図12に示すように、センシング装置200は、基本的に、所定波長の光を射出する光源202と、入射光光学系204と、サンプルユニット16と、光検出手段18と、算出手段20とを有する。また、センシング装置100も、さらに、FG24と光源ドライバ26とを有する。
【0073】
光源202は、第1光束220aを射出する第1個別光源210aと、第2光束220bを射出する第2個別光源210bと、第3光束220cを射出する第3個別光源210cと、光源ドライバ26から流れてくる電流を第1個別光源210a、第2個別光源210b及び第3個別光源210c(以下まとめて「各個別光源」ともいう。)に流す分配部212とを有する。
各個別光源は、所定波長の光を出射する半導体レーザである。また、第1個別光源210a、第2個別光源210b及び第3個別光源210cは、互いに同一波長の光を射出する。
ここで、第1光束220aは、集光レンズ36の軸(焦点とレンズ中心とを結ぶ線)に平行な光であり、第2光束220bは、第1光束220aに対して所定角度(図12中おいて第1光束に反時計周り方向に所定角度)傾斜した光であり、第3光束220cは、第1光束220aに対して第2光束220bとは逆側に所定角度(図12中おいて第1光束に時計周り方向に所定角度)傾斜した光である。
また、分配部212は、光源ドライバ26と、各個別光源とに接続されており、光源ドライバ26からの流された電流を各個別光源に流す。
【0074】
入射光光学系204は、励起光の光路上に配置された第1コリメータレンズ214a、第2コリメータレンズ214b、第3コリメータレンズ214cと、偏光フィルタ32と集光レンズ36とを有し、光源202の各個別光源から射出された第1光束220a、第2光束220b、第3光束220cをそれぞれを偏光し、それぞれ集光してサンプルユニット16の所定位置に所定の角度で入射させる。
ここで、入射光光学系204は、各個別光源に対応してそれぞれ第1コリメータレンズ214a、第2コリメータレンズ214b、第3コリメータレンズ214cが配置されており、全ての個別光源に共通して1つの偏光フィルム34及び1つの集光レンズ36が配置されている。
【0075】
第1コリメータレンズ214aは、第1個別光源210aと偏光フィルタ32との間に配置され、第1個別光源210aから射出された第1光束220aを平行光とする。
また、第2コリメータレンズ214bは、第2個別光源210bと偏光フィルタ32との間に配置され、第2個別光源210bから射出された第2光束220bを平行光とする。
また、第3コリメータレンズ214cは、第3個別光源210cと偏光フィルタ32との間に配置されており、第3個別光源210cから射出された第3光束220cを平行光とする。
【0076】
ここで、偏光フィルタ32及び集光レンズ36は、図1に示すセンシング装置10の偏光フィルタ32及び集光レンズ36と同様の構成であるので、説明を省略する。
【0077】
センシング装置200の光源202及び入射光光学系204は、以上のような構成であり、第1光源210aから射出された第1光束220aは、第1コリメータレンズ214aで平行光とされ、その後偏光フィルタ32で偏光され、集光レンズ36で集光された後、サンプルユニット16に入射される。また、同様に、第2光源210bから射出された第2光束220bも、第2コリメータレンズ214bで平行光とされ、その後偏光フィルタ32で偏光され、集光レンズ36で集光された後、サンプルユニット16に入射され、第3光源210cから射出された第3光束220cも、第3コリメータレンズ214cで平行光とされ、その後、偏光フィルタ32で偏光され、集光レンズ36で集光された後、サンプルユニット16に入射される。
なお、光源202及び入射光光学系204は、各個別光源の配置位置、互いの角度、集光レンズの頂点等を調整し、境界面における、第1光束220a、第2光束220b、第3光束220cの中心が同じ位置となるように入射されている。
【0078】
また、第1光束220aと、第2光束220bと、第3光束220cとは、互いに異なる角度で射出され、平行光とされ、異なる角度で集光レンズ36に入射するため、光束の集束点が互いに異なる位置となる。また、光束の中心の境界面への入射角も互いに異なる角度となる。
【0079】
センシング装置200のように、光源として、複数の個別光源を設け、各個別光源から射出される光を、互いに集束点が異なり、光束の中心の傾斜角度が異なる光束とすることでも上述したセンシング装置10と同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、センシング装置200のように、複数の個別光源を用いる場合は、個別光源から射出される光の干渉性に関わらず、基本的に光の干渉は発生しないため、複数の個別交換からそれぞれ射出された光束を同時に境界面に入射させても、一定強度の光を入射させることができる。
また、センシング装置200のように、複数の個別光源を用いる場合も、分配部212で電流を流す個別光源を選択し、光を射出する個別光源を順次切り替え、境界面に入射させる光束を順次切り換えるようにしてもよい。
【0081】
ここで、センシング装置10及びセンシング装置200では、集束点の位置及び光束中心の傾斜角度が異なる複数の光束を境界面に入射させたが、本発明は、境界面の各位置に、入射角度の異なる複数の光線を入射させることができればよく、例えば、入射光光学系に散乱部を設け、光源から射出された光を散乱部により散乱させた後、境界面に入射させるようにしてもよい。
【0082】
図13は、本発明のセンシング装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。ここで、センシング装置300は、光源302、入射光光学系304およびサンプルユニット306の構成を除いて他の構成は、基本的に、図1に示すセンシング装置10と同様であるので同様の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略し、以下センシング装置300に特有の点について重点的に説明する。
図13に示すセンシング装置300は、基本的に、所定波長の光を射出する光源302と、入射光光学系304と、サンプルユニット306を有する。また図示は省略するが、センシング装置300は、センシング装置10と同様に、光検出手段と、算出手段と、FGと、光源ドライバとを有する。
【0083】
光源302は、所定波長の光を射出するLEDである。なお、光源302としては、レーザー光源、SLD、ランプ等の上述した各種光源を用いることができる。
【0084】
入射光光学系304は、散乱板310を有し、光源302から射出された光をサンプルユニット306に入射させる。
散乱板(または拡散板ともいう。)310は、光源302から射出された光を指向性のない光とし、所定角度幅の範囲で均一に散乱する散乱板であり、光源302から射出された光を散乱させて射出する。ここで、散乱板310としては、オパールガラスにより作製した散乱板を用いることができる。
【0085】
サンプルユニット306は、プリズム312と、金属膜40と、基板42と、透明カバー44とを有する。ここで、金属膜40と、基板42と、透明カバー44は、サンプルユニット16の各部と基本的に同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。なお、サンプルユニット306の基板42は、その一部が金属膜40上に突出している点で異なるが、基本的な機能はサンプルユニット16の基板と同様である。
プリズム312は、断面が長方形となるプリズムであり、光源302から射出され、入射光光学系304を通過した光の光路上に配置されている。
プリズム312は、直方体形状のプリズムであり、1つの面が金属膜40及び基板42と接している。また、プリズム312は、入射光光学系304を通過した光が、金属膜40及び基板42と接している面に直交する面から入射する向きで配置されている。また、プリズム312は、上述したプリズム38と同様の材料で形成することができる。
プリズム312は、このような構成であり、入射光光学系310を透過した光を、金属膜40と接している面に直交する面から入射させ、金属膜40と接している面で反射し、入射光光学系310を透過した光が入射する面とは反対側の面から射出する。
【0086】
センシング装置300は、以上のような構成であり、光源302から所定角度幅で放射して射出される光を入射光光学系304の散乱板310で散乱させた後、サンプルユニット306のプリズム312と金属膜40との境界面に入射させる。
これにより、境界面の各位値に、散乱板310で種々の角度に散乱された光線(つまり境界面への入射角が異なる複数の光線)を入射させることができる。
具体的には、図13に示すように、光源302から射出された光は、放射され所定幅の光として散乱板310に入射する。この散乱板310に入射した所定幅の光は、散乱板310に入射した各位置で所定角度幅でどの角度へも均一に散乱され、散乱された光線は、それぞれ境界面に入射する。このとき、散乱板310の各位置で散乱された光線がそれぞれ境界面に入射するため、境界面の各位置には、散乱板310の異なる位置で散乱された複数の光線が入射する。この散乱板310の異なる位置で散乱された光線は、それぞれ光路が異なるため、互いに境界面への入射角度が異なる角度となる。以上より、境界面の各位値には、散乱板310で種々の角度に散乱された光線(つまり境界面への入射角が異なる複数の光線)が入射される。
【0087】
このように、センシング装置300も、境界面の各位値に、散乱板310で種々の角度に散乱された光線(つまり境界面への入射角が異なる複数の光線)を入射させることで、プラズモン共鳴角によらず、実質的に同じ強度の増強電場を形成することができ、上記センシング装置10と同様の効果を得ることができる。
また、センシング装置300は、入射光光学系に散乱板を設けるのみでよいため装置構成を簡単にすることができる。
【0088】
また、センシング装置300では、入射光光学系に散乱板を用いて光源から射出された光を散乱させたが本発明はこれに限定されない。
ここで、図14は、本発明のセンシング装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
ここで、図14に示すセンシング装置350は、入射光光学系354の構成及びサンプルユニット356を除いて他の構成は、基本的に、図13に示すセンシング装置300と同様であるので同様の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略し、以下センシング装置350に特有の点について重点的に説明する。
図14に示すセンシング装置350は、基本的に、所定波長の光を射出する光源302と、入射光光学系354と、サンプルユニット356を有する。また図示は省略するが、センシング装置350は、センシング装置300と同様に、光検出手段と、算出手段と、FGと、光源ドライバとを有する。
ここで、サンプルユニット356は、プリズム364の光源302から射出された光が入射する面に後述する入射光光学系354の砂刷り面362が形成されていることを除き他の構成はサンプルユニット306と同様の構成である。
【0089】
入射光光学系354は、コリメータレンズ360と、サンプルユニット356のプリズム362に形成された砂刷り面362とで構成され、光源302から射出された光をサンプルユニット306に入射させる。
コリメータレンズ360は、光源302から射出され、所定角度で放射状に拡散する光を平行光に変換する。
砂刷り面362は、光源302から射出され、コリメータレンズ360で平行光とされた光を指向性のない光とし、所定角度幅の範囲で均一に散乱する散乱部であり、プリズム364の光源302から射出された光が入射する面に形成されている。ここで、砂刷り面362は、光を散乱させる形状であればよく、微細な凹凸を形成する等種々の形状とすればよい。また、プリズム364への砂刷り面362の形成方法も特に限定されず、例えば、やすり等の機械的な加工でに凹凸を形成する方法、エッチング等の化学的な加工で凹凸を形成する方法を用いることができる。
【0090】
センシング装置350は、以上のような構成であり、光源302から所定角度幅で放射して射出される光をコリメータレンズ360で平行光とし、砂刷り面362が形成された面からプリズム364に入射させる。したがって、平行光は、砂刷り面362で散乱され、散乱光とされた後、プリズム364内部に入射し、サンプルユニット306のプリズム312と金属膜40との境界面に入射する。
これにより、境界面の各位値に、砂刷り面362で種々の角度に散乱された光線(つまり境界面への入射角が異なる複数の光線)を入射させることができる。
このように、散乱板に変えてプリズムに砂刷り面を設けた場合も、センシング装置と同様に、境界面の各位値に、入射角が異なる複数の光線を入射させることができ、プラズモン共鳴角によらず、実質的に同じ強度の増強電場を形成することができ、上記センシング装置10と同様の効果を得ることができる。
【0091】
以上、本発明に係るセンシング装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0092】
例えば、センシング装置10及びセンシング装置200では、いずれも、3本の光束がサンプルユニットの境界面に入射するようにしたが、入射させる光束の数は、特に限定されず、2本でも4本以上でもよい。入射する光の本数を多くすることで、より正確な検出を行うことが可能となる。
【0093】
また、光源から射出され、サンプルユニットの境界面に入射する各光束の位置(光束の中心からの距離)毎の強度を程均一にする(具体的には、プリズムに入射する光の強度分布の最高強度と最低強度との差を小さくする)ように光強度分布調整手段を設けることも好ましい。ここで、光強度分布調整手段としては、光の光路上に配置され、光源から射出される光のうち一定強度以下の光を遮断する(つまり、光源中心の強度が均一の領域のみの光を透過させる)遮光板や、強度に応じて透過率を変化させた逆ガウシアンフィルタが例示される。
このように光強度分布調整手段を設けることで、各光束のサンプル各位値に入射する光の強度を均一にすることができ、各位値における表面プラズモンの強度をより均一にすることができる。これにより、サンプルユニットの位置により蛍光物質の分布ムラがある場合も、全体としての蛍光をより正確に測定することができるため、より再現性の高い検出を行うことが可能となる。
【0094】
また、センシング装置10では、入射光学系にシリンドリカルレンズまたは集光レンズを用い、光源から射出された光を集光したが、これに限定されず、光源から所定の放射角で射出された光を集光させずにプリズムと金属膜との境界面に入射させてもよい。
また、偏光フィルタも必ずしも設ける必要はなく、特に、光源としてレーザ光源を用いる場合は、光源から射出される光が偏光された光であるので、偏光フィルムは設けなくてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、いずれも試料に含まれる被検出物質の個数または濃度を検出したが、本発明はこれに限定されず、試料に被検出物質が含有されるが否か(つまり、試料の中に被検出物質があるか否か)を検出してもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、いずれも蛍光物質に標識された二次抗体に被検出物質を結合させた状態で、金属膜上に発生する増強電場により増強された蛍光物質の蛍光を検出し、被検出物質を検出したが、被検出物質を蛍光物質により標識する方法は特に限定されず、例えば、被検出物質事態が蛍光物質である場合は、二次抗体を設ける必要はない。
また、本発明のセンシング装置は、金属膜上に被検出物質に付着(または近傍に配置)されている状態で表面プラズモンを発生させた場合に生じる散乱光(ラマン散乱光)を検出する方式のセンシング装置にも用いることができる。
【0097】
また、上述した実施形態では、いずれも金属膜の表面にエバネッセント波及び表面プラズモンを発生させ、さらに表面プラズモン共鳴を発生させることで、増強された電場を形成させたが本発明はこれに限定されず、増強電場が形成される面への光の入射角度によって増強度が変化する(つまり、所定の入射角で光が入射したときのみ増強場が変化する)種々の方式に用いることができる。例えば、プリズム上に金膜と厚み約1μmのSiO膜とを積層させ、所定角度で入射した光をSiO膜内で共振させることで増強された電場を形成する方式にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のセンシング装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A)は、図1に示したセンシング装置の光源、入射光光学系、サンプルユニットの概略構成を示す上面図であり、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、光源から射出される光がサンプルユニットに入射するまでの光路を示す説明図である。
【図4】図2(A)及び(B)に示すサンプルユニットの金属膜の一部を拡大して示す拡大模式図である。
【図5】(A)〜(C)は、それぞれ、サンプルユニットでの試料の流れを示す説明図である。
【図6】試料が到達した金属膜の一部を拡大して示す拡大模式図である。
【図7】(A)及び(B)は、それぞれ従来の励起光の強度と表面プラズモン共鳴の発生条件との関係を示す模式図である。
【図8】(A)は、第1光束と金属膜との関係を示す説明図であり、(B)は、第2光束と金属膜との関係を示す説明図であり、(C)は、第3光束と金属膜との関係を示す説明図である。
【図9】各光束の入射角度と光量との関係を示すグラフである。
【図10】(A)及び(B)は、それぞれ、各光束とサンプルユニットで発生する蛍光の強度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明のセンシング装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示したセンシング装置の光源、入射光光学系、サンプルユニットの断面図である。
【図13】本発明のセンシング装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図14】本発明のセンシング装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0099】
10 センシング装置
12 光源
14 入射光光学系
16 サンプルユニット
18 光検出手段
20 算出手段
24 ファンクションジェネレータ(FG)
26 光源ドライバ
30 コリメータレンズ
32 偏光フィルタ
34 光分割部
36 集光レンズ
38 プリズム
40 金属膜
42 基板
44 透明カバー
45 流路
46 線状部
47 始端部
48 終端部
49 二次抗体載置領域
50 検出光光学系
52 フォトダイオード(PD)
54 フォトダイオードアンプ(PDアンプ)
56 第1レンズ
58 カットフィルタ
60 第2レンズ
62 支持部
64 ロックインアンプ
66 PC
80 一次抗体
82 試料
84 被検出物質
86 蛍光物質
88 二次抗体
102a、102b、102c (第1、第2、第3)ハーフミラー
104a、104b、104c (第1、第2、第3)シリンドリカルレンズ
106a、106b、106c、106d (第1、第2、第3、第4)ミラー
108a、220a 第1光束
108b、220b 第2光束
108c、220c 第3光束
210a、210b、210c (第1、第2、第3)個別光源
212 分配部
214a、214b、214c (第1、第2、第3)コリメータレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面に光を所定の入射角で入射させることで発生する増強場を利用して試料内の被検出物質を検出するセンシング装置であって、
プリズムと、
前記プリズムの一面上に配置された金属膜と、
前記プリズムの一面上に配置され、前記金属膜上に試料を供給する流路が形成された基板と、
光を射出する光源と、
前記光源から射出された光を、前記プリズムと前記金属膜との境界面で全反射する角度で前記プリズムに入射させる入射光光学系と、
前記金属膜近傍で発生した光を検出する光検出手段とを有し、
前記入射光光学系は、前記境界面の各位置に、入射角度が異なり、かつ強度が実質的に等しい複数の光線を入射させることを特徴とするセンシング装置。
【請求項2】
前記入射光学系は、集束点の位置及び光束中心の傾斜角度が異なる複数の光束を前記境界面に入射させる請求項1に記載のセンシング装置。
【請求項3】
前記光源は、1つの光束を射出する光射出装置であり、
前記入射光学系は、前記光源から射出された1つの光束から、集束点の位置が異なる複数の光束を生成する請求項1に記載のセンシング装置。
【請求項4】
前記光源は、コヒーレントな光を射出する請求項3に記載のセンシング装置。
【請求項5】
前記入射光学系は、生成した複数の光束から前記境界面に入射させる光束を選択する選択手段を有し、
前記選択手段は、前記境界面に入射させる光束を順番に切り替え、前記境界面に同時に集束点の異なる光束を入射させない請求項4に記載のセンシング装置。
【請求項6】
前記光源は、インコヒーレントな光を射出する請求項3に記載のセンシング装置。
【請求項7】
前記光源は、同一波長の光を射出する複数の個別光源で構成され、
前記入射光光学系は、1つの前記個別光源から射出される光を1つの前記光束とする請求項3に記載のセンシング装置。
【請求項8】
前記入射光光学系は、1つの集光レンズを有し、
前記個別光源は、互いに異なる角度で、射出した光を前記集光レンズに入射させる請求項7に記載のセンシング装置。
【請求項9】
前記入射光光学系は、光源から射出された光を散乱させる散乱部を備える請求項1に記載のセンシング装置。
【請求項10】
前記散乱部は、前記光源から射出された光の光路上に配置された散乱板である請求項9に記載のセンシング装置。
【請求項11】
前記散乱部は、前記プリズムの表面に形成された砂刷り面である請求項9に記載のセンシング装置。
【請求項12】
前記光検出手段の検出結果に基づいて、前記試料内の前記被検出物質の濃度を算出する算出手段を有する請求項1〜11のいずれかに記載のセンシング装置。
【請求項13】
前記被検出物質は、蛍光性を有する物質、または、蛍光性を有する物質で標識された物質である請求項1〜12のいずれかに記載のセンシング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−204484(P2009−204484A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47614(P2008−47614)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】