説明

セントラル浄水装置および浄水システム

【課題】水道水から不純物を除去することができ、かつ、使用者が用いる浄水使用器具までの間の浄水の水質を維持することができるセントラル浄水装置、およびこれを用いた浄水システムを提供する。
【解決手段】一または複数の建物1への水道水の入口に配されて、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置2であって、浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加するセントラル浄水装置2。また、このセントラル浄水装置2と、浄水使用器具3に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置2より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備えた浄水システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を浄化して複数の家庭等または浄水使用器具に浄水を供給するセントラル浄水装置およびこれを用いた浄水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水から残留塩素(次亜塩素酸)、カビ臭、濁り、微生物等を除去することを目的とした小型浄水器が広く普及している。
これらの浄水器には、水道水中の残留塩素、異味や異臭を取り除く活性炭、セラミックフィルタや、濁質や微生物を取り除く精密濾過膜、中空糸膜等が用いられていた。
このような浄水器を住居等に設ける場合、台所の蛇口やシンク下に設置されることが多く、水道水を飲用や調理用に適するように浄化していた。
【0003】
一方で、ビル全体や建物内の全域で浄化した水道水を使用したい、あるいは井戸水を浄化してビル全体や建物内で使用したいといったニーズが存在したが、全ての浄水の使用場所にそれぞれ浄水器を設置するのは煩雑である。そこで、建物へ水道水等を導入する入口に大型の浄水器を取り付けて、水道水をまとめて浄化して建物全体に給水する浄水システムも普及し始めている。
これらの大型浄水器も、小型浄水器と同様に活性炭、セラミックフィルタ、精密濾過膜などで構成され、これらを通過させることにより水道水中の残留塩素や濁質等を取り除き、建物内にある複数の浄水の使用場所へ浄水を供給する。
【0004】
従来の浄水システムは、建物へ水道水等を導入する入口付近に設けられたセントラル浄水装置と、住宅等に付設された配管と、浄水の使用場所である台所、浴室、洗面所、洗濯場、トイレ、給湯器、屋外取水場等に設けられた蛇口等の浄水使用器具とから構成されている。
【0005】
このような浄水システムにおいて、セントラル浄水装置は、水道本管より分岐され住宅へ付設された水道配管に繋げて配置されている。セントラル浄水装置には、活性炭、セラミックフィルタ、精密濾過膜等から構成される浄化材が収容され、水道本管から給水された水道水は、この浄化材を通過させることにより残留塩素、濁質、金属イオン、微生物、化学物質等を取り除かれて浄水となる。
セントラル浄水装置で処理された浄水は配管を通り、各家庭等、および浄水の使用場所に設けられた各浄水使用器具へ供給されていた。
【0006】
しかし、このような浄水システムでは、セントラル浄水装置で浄化された浄水は、セントラル浄水装置で処理された直後は水質が保証されるが、浄水使用器具までの配管内で細菌が繁殖したり、配管継ぎ手部等から細菌や不純物が侵入したりするおそれがあり、使用時に飲用に適さない状態となっている可能性があった。
【0007】
このような問題に対し、特許文献1には、セントラル浄水装置で残留塩素を除去せずに他の不純物を取り除き、あるいは残留塩素の一部のみを除去するとともに、浄水使用器具に設けた二次浄水装置にて残留塩素を除去することにより、浄水使用器具までの配管内における浄水の殺菌効果を維持することができる浄水システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3951227号公報
【0009】
水道水の不純物を除去するには活性炭が好適であるが、活性炭は水道水中の残留塩素をも除去するため、特許文献1のセントラル浄水装置には活性炭を用いることができず、塩素以外の不純物が除去されていない水が浄水使用器具までの配管に流されてしまう。また、セントラル浄水装置の一部に活性炭を用いる場合にも、活性炭を通過していない水も下流側に供給されるため、やはり塩素以外の不純物が除去されていない水が浄水使用器具までの配管に流されてしまう。
【0010】
そのため、浄水システムでの水道水の浄化において、二次浄水装置での浄化の割合が大きくなり、単位時間当たりの濾過水量が不足したり、二次浄水装置に用いる浄化材の製品寿命が短期化したり、二次浄水装置を大型化しなければならないなどの問題が生じていた。
また、各家庭や各浄水使用器具で二次浄水装置を使用しない場合や浄水器のカートリッジを外して使用してしまった場合には、セントラル浄水装置で十分に濾過されなかった不純物を含む水が吐水されてしまうおそれもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、水道水から不純物を除去することができ、かつ、使用者が用いる浄水使用器具までの間の浄水の水質を維持することができるセントラル浄水装置、およびこれを用いた浄水システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、一または複数の建物への水道水の入口に配されて、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、水道配管から上記水道水を導入する導入部と、活性炭を含む上記浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素およびカビ臭を除去する浄化部と、上記浄化部の下流側に配置され上記浄化部で処理した浄水に塩素を添加する塩素添加部と、この塩素を添加した浄水を送出する送出部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、水道水に浄化材を通過させて残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加して、上記各浄水使用器具へ送出する塩素浄水系統と、水道水に上記浄化材を通過させずに水道水使用器具へ送出する原水系統および/または水道水に上記浄化材を通過させて残留塩素を除去し上記水道水使用器具へと送出する浄水系統とを有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1の発明のセントラル浄水装置と、上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備えたことを特徴とする浄水システムである。
【0016】
第5の発明は、第2の発明のセントラル浄水装置と、上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備え、活性炭を含む上記二次浄化材は、上記浄水からカビ臭を除去することを特徴とする浄水システムである。
【0017】
第6の発明は、上記セントラル浄水装置を経由せずに水道水を水道水使用器具へ送出する原水系統を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、一または複数の建物への水道水の入口に配されて、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加することにより、セントラル浄水装置から浄水使用器具への配管においても細菌の繁殖を防止し、使用者に安全な浄水を供給することができるとともに、二次浄水装置での浄化の割合を軽減して寿命を長期化させることができる。
【0019】
第2の発明によれば、水道配管から上記水道水を導入する導入部と、活性炭を含む上記浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素およびカビ臭を除去する浄化部と、上記浄化部の下流側に配置され上記浄化部で処理した浄水に塩素を添加する塩素添加部と、この塩素を添加した浄水を送出する送出部とを備えたことにより、残留塩素およびカビ臭を除去した浄水を提供することができる。
【0020】
第3の発明によれば、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、水道水に浄化材を通過させて残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加して、上記各浄水使用器具へ送出する塩素浄水系統と、水道水に上記浄化材を通過させずに水道水使用器具へ送出する原水系統および/または水道水に上記浄化材を通過させて残留塩素を除去し上記水道水使用器具へと送出する浄水系統とを有することにより、安全な浄水を必要としない水道水使用器具に水道水または塩素を添加していない浄水を供給することで、塩素を添加した浄水の消費量を節減することができ、セントラル浄水装置の寿命を長期化するとともに浄水システムのランニングコストを低下させることができる。
【0021】
第4の発明によれば、第1の発明のセントラル浄水装置と、上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材により上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備えたことにより、セントラル浄水装置から浄水使用器具への配管においても細菌の繁殖を防止し、二次浄水装置で塩素を除去して、使用者に安全な浄水を供給することができるとともに、二次浄水装置での浄化の割合を軽減して寿命を長期化させることができる。
【0022】
第5の発明によれば、第2の発明のセントラル浄水装置と、上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備え、活性炭を含む上記二次浄化材は、上記浄水からカビ臭を除去することにより、残留塩素およびカビ臭を除去した浄水を提供することができる。
【0023】
第6の発明によれば、上記セントラル浄水装置を経由せずに水道水を水道水使用器具へ送出する原水系統を有することにより、安全な浄水を必要としない水道水使用器具に水道水を供給することで、塩素を添加した浄水の消費量を節減することができ、セントラル浄水装置の寿命を長期化するとともに浄水システムのランニングコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る浄水システムの模式図である。
【図2】同浄水システムのセントラル浄水装置の模式図である。
【図3】同セントラル浄水装置の活性炭フィルターを示す図であり、(a)は一部切り欠き斜視図、(b)は水の流れを示す説明図である。
【図4】同セントラル浄水装置の膜モジュールを示す一部切り欠き斜視図である。
【図5】同膜モジュールの中空糸膜を示す図であり、(a)は内圧式の説明図、(b)は外圧式の説明図である。
【図6】本発明の別態様の例3に係る浄水システムの模式図である。
【図7】本発明の別態様の例4に係る浄水システムの模式図である。
【図8】本発明の別態様の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態に係る浄水システムについて説明する。
この浄水システムは、ビルや一戸建て、集合住宅といった建物の内外に設けられる複数の器具で水道水を浄化して使用するためのものである。
図1に示すように、この浄水システムでは、水道本管から分岐され建物1へ付設された水道配管に繋げて、セントラル浄水装置2が配置されており、建物1で使用する水道水の全てがセントラル浄水装置2を通過するようになっている。このセントラル浄水装置2には浄化材が内蔵され、導入した水道水から残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこれによって得た浄水に塩素を添加して、浄水を使用する器具(浄水使用器具)へと送出する。
なお、水の使用量を測る計量器である量水器は、セントラル浄水装置2の上流側に設置しても、セントラル浄水装置2内に設置しても、セントラル浄水装置2の下流側、例えば各家庭や事務所等に個別に設置してもよい。
【0026】
浄水使用器具3は、建物の浄水使用箇所である台所、浴室、洗面所、洗濯場、トイレ、給湯器、屋外取水場等に設置される蛇口4、8、9、給湯器5、便器6、洗濯機7等を例示することができる。
それぞれの浄水使用器具3には、セントラル浄水装置2から供給された浄水から添加された塩素を除去するための二次浄水装置が設けられ、塩素を除去した浄水を吐出して使用することができるようになっている。
セントラル浄水装置2からそれぞれの浄水使用器具までは配管(塩素浄水系統10)によって接続されている。
【0027】
また、本発明の浄水システムには、マンションやアパート等の集合建物の水道配管の入口に配されるセントラル浄水装置2と各家庭や事務所等に配される二次浄水装置とを有する浄水システム、複数の戸建てへの水道配管の入口に配されて複数の戸建てに一括して浄水を供給するセントラル浄水装置と各戸建てに配される二次浄水装置とを有する浄水システム、および、一以上の戸建ておよび/または一以上の集合建物に配される二次浄水装置も含まれる。なお、戸建てには、住居用の戸建てのみならず、事務所用の戸建ても含まれる。
本発明のセントラル浄水装置は、上記で例示した様々な浄水システムに使用することができるものである。さらに、浄水の使用量が多い場合には、複数のセントラル浄水装置を並設した浄水システムを採用してもよい。
【0028】
図2から図5に示すように、セントラル浄水装置2は、活性炭からなる浄化材(活性炭フィルター11)と、中空糸膜からなる浄化材(膜モジュール13)とを具備しており、この浄化材を通過した水道水から、残留塩素、カビ臭、濁質、金属イオン、微生物、化学物質を除去することができる。
活性炭からなる浄化材は、図3(a)に示すように、合成樹脂を成形してなり通水性を有する内側コア11aの周囲に、全体として円筒形状に形成され、外側不織布11bと内側不織布11dとで挟持された活性炭層11cを配置し、底面を塞いだ活性炭フィルター11となっている。活性炭層11cは、円筒形状に成形した活性炭を使用し、もしくは粒状の活性炭を全体として円筒形状になるように充填している。
図3(b)に示すように、この活性炭フィルター11はケース(図示せず)に収容され、ケース内に導入された水道水は、活性炭フィルター11を外周側から中心部へ通過して、下流側へ送出される。
導入される水道水が活性炭フィルター11を通過するときに、水道水に含まれる残留塩素、カビ臭が除去される。
なお、活性炭からなる浄化材は、上述の活性炭フィルターの形態に限定されるものではなく、活性炭を浄化材として用いる他の形態であってもよい。
【0029】
残留塩素とは、浄水場で水に投入された塩素であり、塩素を水に溶かした際に発生する次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンを含んでいる。また、活性炭を含む浄化材は、塩素が水中の有機物と化合して発生するクロロホルム、ブロモホルムといったトリハロメタンも水道水から除去する。
一般的に水道水中の塩素濃度は0.6〜1.3mg/l程度であるが、このセントラル浄水装置2では、活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)を通過させることにより、水道水に含まれる残留塩素の例えば80%程度を除去する。活性炭フィルター11による残留塩素の除去率は60%以上、さらに70%以上、特に80%以上とするのがよい。これにより、活性炭からなる浄化材、例えば活性炭フィルター11を通過した水に含まれる残留塩素の濃度を、0.2mg/l以下程度にすることができる。水に含まれる残留塩素の濃度は、0.1mg/l以下となるようにするのがより好ましく、0.05mg/l以下となるようにするのがさらにより好ましい。
なお、残留塩素の濃度ないし塩素濃度とは、水中の塩素分子、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンの濃度の合計をいう。
また、カビ臭を除去するとは、カビ臭を発生させるジオスミン((4S,4aS,8aR)−4,8a−ジメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン−4a−オール)、および/または、2−MIB(2−メチルイソボルネオール)を水道水から除去することをいう。
【0030】
図4に示すように、中空糸膜からなる浄化材としては、均一な長さに揃えた多数の筒状の中空糸膜12を用い、円筒ケースに並列に収容した膜モジュール13を形成している。使用する中空糸膜12は、強度が高く耐薬品性に優れるポリフッ化ビニリデン(PVDF)製で、分画分子量150,000Daの膜を用いる。膜モジュール13内には、約5000本の中空糸膜12を収容している。
図5(b)に示すように、この膜モジュール13では、並列に収容された各中空糸膜12の外周側に供給された水道水が中心部へと中空糸膜12を通過するときに、クリプトスポリジウム等の原虫類や、大腸菌等の細菌類、濁質を除去することができる外圧式ろ過法を採用している。
これとは逆に、各中空糸膜12の中心部に供給した水道水を外周側へと通過させる内圧式ろ過法(図5(a))を採用してもよい。
なお、中空糸膜からなる浄化材は、上述の膜モジュールの形態に限定されるものではなく、中空糸膜を浄化材として用いる他の形態であってもよい。
【0031】
セントラル浄水装置2の浄化材としては、RO膜、UF膜、活性炭、ゼオライト、中空糸膜等を使用することができ、カビ臭を除去するために少なくとも活性炭を使用することが好ましく、また、不純物の濾過を十分に行うために中空糸膜を使用することが好ましく、例えば、活性炭と中空糸膜を併用するのがよい。
なお、各浄化材は、別々の部材内に格納して個別浄化部材とし、その各々の個別浄化部材を配管等で繋いでセントラル浄水装置2に配設しても、2以上の浄化材を1つの部材内に格納して集合浄化部材とし、その集合浄化部材をセントラル浄水装置2内に配設してもよい。また、個別浄化部材と集合浄化部材とを併用し、それらを配管等で繋いでセントラル浄水装置2内に配設してもよい。
活性炭と中空糸膜とを1つの部材内に格納して集合浄化部材とする場合は、当浄化部材に通水する水が、活性炭と中空糸膜との両方を必ず通るようにするのがよい。なお、この場合において、活性炭を上流側、中空糸膜を下流側とした活性炭上流型部材としても、中空糸膜を上流側、活性炭を下流側とした中空糸膜上流型部材としてもよい。
【0032】
また、図2に示すように、このセントラル浄水装置は、次亜塩素酸タンク14および定量ポンプ15からなる塩素添加部を有している。
次亜塩素酸タンク14には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯留してあり、定量ポンプ15と配管を介して、活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)および中空糸膜を用いた浄化材(例えば膜モジュール13)を通過した浄水に次亜塩素酸ナトリウムを添加することができる。
次亜塩素酸タンク14内の溶液の濃度および定量ポンプ15の動作は、次亜塩素酸ナトリウムを添加された浄水の塩素濃度が0.3〜1mg/lとなるように調整される。次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより、水中で次亜塩素酸イオンに電離するとともにその一部が水と反応して次亜塩素酸となるため、これらの殺菌力によってセントラル浄水装置2から浄水使用器具3までの配管における菌の繁殖を防止することができ、使用者が飲用等に用いるまで浄水の安全性を維持することができる。
次亜塩素酸ナトリウムを添加された浄水の塩素濃度は、殺菌力と二次浄水装置での塩素除去の容易性との関係から、下限値としてはさらに0.4mg/l以上、特に0.5mg/l以上にするのが好ましく、また上限値としてはさらに0.8mg/l以下、特に0.7mg/l以下にするのが好ましい。
【0033】
その他の変形例として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の代わりに次亜塩素酸水溶液をタンクに貯留し、定量ポンプ15によってこれを浄水に添加してもよい。
また、塩化ナトリウム水溶液を電気分解して次亜塩素酸を生成する装置を用い、定量ポンプによって次亜塩素酸を浄水に添加してもよい。
これらのように、水中の次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンを増加させることを、塩素を添加するという。
これらの中では、入手が容易である次亜塩素酸ナトリウムを用いるのがより好ましい。
【0034】
塩素を添加された浄水が供給される二次浄水装置は、建物の内外に設けられた浄水使用器具3に取り付けられ、あるいはこれと一体に設けられる。二次浄水装置は、少なくとも浄水中の塩素を除去することができる二次浄化材を具備している。
この二次浄水装置により残留塩素の60%以上、さらに70%以上、特に80%以上を除去するのがよい。また、二次浄水装置を通過した水に含まれる残留塩素の濃度は、0.2mg/l以下、0.1mg/l以下、さらに0.1mg/l以下、特に0.05mg/l以下となるようにするのが好ましい。残留塩素の濃度ないし塩素濃度とは、水中の塩素分子、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンの濃度の合計をいう。
この二次浄水装置には、例えば特許第3799007号公報や特許第4648507号公報に開示されるようなシャワーヘッドを採用することができる。二次浄水装置は、このように蛇口(浄水使用器具)と一体型のものであっても外付け型のものであってもよいが、設置スペースを小さくするため、一体型のものを用いるのが好ましい。
本発明の浄水システムでは、セントラル浄水装置によってあらかじめ不純物が除去されており、二次浄水装置は少なくとも塩素を除去できればよい。よって、二次浄水装置として蛇口等(浄水使用器具)と一体型の装置を用いることにより、浄水システム全体の衛生性、二次浄水装置の省スペース化、浄水システム全体および/または二次浄水装置のコスト低減を両立できる。
【0035】
二次浄水装置は、浄水から塩素やその他の不純物を除去する二次浄化材を内蔵している。
この二次浄化材には、活性炭、RO膜、殺菌セラミック、イオン交換樹脂、ゼオライト、亜硫酸カルシウム等を使用でき、塩素除去性能を付加するため、少なくとも活性炭か亜硫酸カルシウムの一方を使用する必要がある。亜硫酸カルシウムは水に溶け出すことで塩素を除去するため、長期間飲用に使用する浄水使用器具3には活性炭を用いるのが好ましい。また、活性炭を含む二次浄化材を使用した場合には、浄水からさらにカビ臭を除去することができる。
なお、二次浄水装置の大型化を抑止し、単位水量あたりの塩素除去能力を高め、使用経時における塩素除去能力の低下を抑止するために、二次浄化材としては、短繊維状の活性炭と粒子状の活性炭とを併用するのが好ましい。
【0036】
本発明の浄水システムでは、既にセントラル浄水装置2で浄化された浄水が二次浄水装置に供給されるので、二次浄水装置では少なくとも塩素を除去できればよく、二次浄化材に必要とされる浄化能力を比較的小さなものとすることができる。
また、浄水使用器具3は、供給される浄水の全てが二次浄水装置を通過して浄化されるようにする必要はなく、一部が二次浄水装置を通過せずに使用されるようにしてもよい。また、特許第3799007号公報に記載されたシャワーヘッドのように、供給される浄水の全てについて、二次浄化材を通過させて浄化する流路と通過させずに吐出する流路とを切り換える流路切換弁を設けてもよい。
【0037】
以下、セントラル浄水装置2および浄水システムのその他の構造について説明する。
図2に示すように、水道本管から供給される水道水は、活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)を通過して残留塩素、カビ臭を除去され、原水タンク16に流れ込み、ここに貯めることもできる。
活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)から原水タンク16への配管の途中には、凝集剤タンク17からの配管が接続されている。凝集剤タンク17には、水中の重金属、亜硝酸態窒素などの不要なイオン成分を凝集して除去するための薬剤である凝集剤が貯留されており、凝集剤ポンプ18によって水に添加される。
【0038】
原水タンク16の水は、原水ポンプ19によって中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)に送水され、中空糸膜12によって原虫類、細菌類、濁質を除去される。
中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)からセントラル浄水装置2の外部へ浄水を送出する配管の途中には、次亜塩素酸タンク14からの配管が接続され、定量ポンプ15によって浄水に次亜塩素酸ナトリウムを添加し、一定の塩素濃度にすることができる。
【0039】
セントラル浄水装置2から配管を経由して浄水を供給された各浄水使用器具3では、浄水が二次浄水装置の二次浄化材を通過する際に少なくとも塩素を除去され、それぞれの用途に用いられる。
【0040】
なお、セントラル浄水装置2における活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)の位置は、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の上流側、例えば、凝集剤タンク17からの配管との合流部の上流側とするほか、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の下流側で次亜塩素酸タンク14からの配管との合流部より上流側(11´)としてもよい。
活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11)の位置を、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の上流側とすると、活性炭からなる浄化材で不純物をある程度除去できるので、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の濾過寿命を長くしたり、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の小型化および/または装置コスト低減が可能になる。また、活性炭からなる浄化材(例えば活性炭フィルター11´)の位置を中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)の下流側とすると、中空糸膜からなる浄化材(例えば膜モジュール13)に通水する水が塩素を含有するため、セントラル浄水装置における塩素含有領域の範囲が広くなり、セントラル浄水装置内の雑菌繁殖を抑えるなどの衛生上の効果がある。
【0041】
本発明のセントラル浄水装置2には、膜モジュール13で蓄積された不純物を洗い流して排出する逆洗浄装置が設けられている。
逆洗浄装置の逆洗タンク20には、塩素を添加された浄水を三方弁28によって分岐させて貯留することができるようになっている。
逆洗タンク20に貯められた水は、逆洗ポンプ21によって膜モジュール13に出口側から流入し、中空糸膜12を逆流しながら蓄積物を洗い流す。この水は、膜モジュール13に接続された逆洗排水パイプ22を通って排水される。また、中空糸膜12の下流側を洗浄した水は、膜モジュール13に接続された逆洗排水パイプ23を通り、逆洗排水パイプ22に合流して排水される。
逆洗浄に用いる浄水の殺菌力を高めるため、逆洗タンク20から膜モジュール13へ逆流する配管を通過する浄水に、次亜塩素酸タンク14から逆洗次亜塩素酸ポンプ24によって次亜塩素酸ナトリウムを添加するようになっている。
膜モジュール13を洗浄した水に、排水として流すことが法令上禁止されている物質が含まれる場合には、還元剤ポンプ26によって還元剤タンク25から還元剤を添加し、所定の濃度以下になるように化学的に処理してから排水することができる。
配管の経路中の所定位置には、エアー圧でバルブを開閉する自動弁29またはコックを設けて、水の浄化および膜モジュールの逆洗浄の各段階において原水、浄水の流れを制御できるようにしている。
【0042】
このようなセントラル浄水装置2および浄水システムでは、セントラル浄水装置2の浄化材が水道水から不純物を除去するため、安全性の高い浄水を供給することができるとともに、二次浄水装置の浄化負担を軽減して寿命を長期化することができる。
また、セントラル浄水装置2で浄化した浄水に塩素を添加し、二次浄水装置で浄水から塩素を除去することにより、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンの殺菌力によって、セントラル浄水装置から浄水使用器具までの配管内で細菌が繁殖するのを防止することができる。
なお、第一実施形態において説明した個々の構成、規定、効果等は、本発明全体に個別に適用できるものであり、例えば、以下の別態様においても適用できるものである。
【0043】
<別態様>
第一実施形態の浄水システムでは、建物1で使用する水道水の全てが、セントラル浄水装置2によって浄化され、次いで塩素を添加されて各浄水使用器具3へ供給される。
しかし、必ずしも建物1で使用する水道水の全てを浄化して塩素を添加する必要はなく、浄化材の上流側で配管を分岐させ、水道水の一部を浄化せずに浄水を必要としない水道水使用器具に送出する原水系統27を設けてもよい。この原水系統27は、セントラル浄水装置2の内部に設けてもよいし(図示せず)、セントラル浄水装置を経由しない独立の配管系統として設けてもよい(図6、図7)。
また、原水系統27に加えて、または原水系統27の代わりに、浄化材の下流側かつ塩素添加部の上流側で配管を分岐させ、浄化材を通過した浄水の一部について塩素を添加することなく水道水使用器具に送出する浄水系統を設けてもよい(図示せず)。
【0044】
このように、浄水に塩素を添加して浄水使用器具へと送出する塩素浄水系統10のほかに、原水系統27もしくは浄水系統を設けることにより、特に衛生的な浄水を必要としない水道使用器具には水道水もしくは塩素を添加しない浄水を供給し、塩素を添加した浄水の消費量を節減することができるため、セントラル浄水装置の寿命を長期化するとともに浄水システムのランニングコストを低下させることができる。
図8に、塩素浄水系統10と、原水系統27もしくは浄水系統とを具備した浄水システムの例を示す。
【0045】
図8は、台所の蛇口4と、洗面所の蛇口9と、浴室の蛇口8やシャワーヘッドと、洗濯場の洗濯機7と、トイレの便器6とに給水する建物1の浄水システムの例1から例8を示す表である。また、台所、洗面所、浴室には、水を加熱して出すことのできる給湯器5を、他の蛇口等から独立して設けている。
台所では、水が飲食に用いられるため、最も衛生的で安全な水が必要となる。洗面所では、歯磨きやうがい等水を口に含む使途に用いるため、台所に次いで衛生的で安全な水の必要性が高い。浴室では、水が人の肌や髪に直接触れることになるため、洗面所に次いで衛生的で安全な水の必要性が高い。洗濯機で用いる水は衣服を介して人の肌に間接的に触れることになるため、浴室に次いで衛生的で安全な水であることが望ましい。他方、トイレの便器に用いる水は、ウォシュレットを設けた場合を除き、基本的に衛生的で安全な水を用いる必要性は低い。
【0046】
以上より、例1では、トイレの便器6が原水系統27もしくは浄水系統と接続され、その他の器具が塩素浄水系統10と接続されている。
また、例5では、例1において、台所、洗面所、浴室の給湯器5が原水系統27もしくは浄水系統と接続されている。
【0047】
例2では、トイレの便器6、洗濯所の洗濯機7が原水系統27もしくは浄水系統と接続され、その他の器具が塩素浄水系統10と接続されている。
また、例6では、例2において、台所、洗面所、浴室の給湯器5が原水系統27もしくは浄水系統と接続されている。
【0048】
図6に示すように、例3では、トイレの便器6、洗濯所の洗濯機7、浴室の蛇口8やシャワーヘッドが原水系統27もしくは浄水系統と接続され、台所の蛇口4、洗面所の蛇口9、台所、洗面所、浴室の給湯器5が塩素浄水系統10と接続されている。
また、例7では、例3において、台所、洗面所、浴室の給湯器5が原水系統27もしくは浄水系統と接続されている。
【0049】
図7に示すように、例4では、トイレの便器6、洗濯所の洗濯機7、浴室の蛇口8やシャワーヘッド、洗面所の蛇口9が原水系統27もしくは浄水系統と接続され、台所の蛇口、台所、洗面所、浴室の給湯器が塩素浄水系統10と接続されている。
また、例8では、例4において、台所、洗面所、浴室の給湯器5が原水系統27もしくは浄水系統と接続され、台所の蛇口のみが塩素浄水系統10と接続されている。
【0050】
このように、各家庭や各器具の使用状況に応じて、原水、浄水、塩素を添加した浄水を選択的に供給することにより、塩素を添加した浄水の消費量を節減することができ、セントラル浄水装置の寿命を長期化するとともに浄水システムのランニングコストを低下させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 建物
2 セントラル浄水装置
3 浄水使用器具
4 (台所の)蛇口
5 給湯器
6 便器
7 洗濯機
8 (浴室の)蛇口
9 (洗面所の)蛇口
10 塩素浄水系統
11 活性炭フィルター
11a 内側コア
11b 外側不織布
11c 活性炭層
11d 内側不織布
12 中空糸膜
13 膜モジュール
14 次亜塩素酸タンク
15 定量ポンプ
16 原水タンク
17 凝集剤タンク
18 凝集剤ポンプ
19 原水ポンプ
20 逆洗タンク
21 逆洗ポンプ
22 逆洗排水パイプ
23 逆洗排水パイプ
24 逆洗次亜塩素酸ポンプ
25 還元剤タンク
26 還元剤ポンプ
27 原水系統
28 三方弁
29 自動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一または複数の建物への水道水の入口に配されて、導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、
浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素および他の不純物を除去し、
次いでこの浄水に塩素を添加することを特徴とするセントラル浄水装置。
【請求項2】
水道配管から上記水道水を導入する導入部と、
活性炭を含む上記浄化材を通過させて、上記水道水から残留塩素およびカビ臭を除去する浄化部と、
上記浄化部の下流側に配置され上記浄化部で処理した浄水に塩素を添加する塩素添加部と、
この塩素を添加した浄水を送出する送出部とを備えたことを特徴とする請求項1記載のセントラル浄水装置。
【請求項3】
導入した水道水を浄化して複数の浄水使用器具へ供給するセントラル浄水装置であって、
水道水に浄化材を通過させて残留塩素および他の不純物を除去し、次いでこの浄水に塩素を添加して、上記各浄水使用器具へ送出する塩素浄水系統と、
水道水に上記浄化材を通過させずに水道水使用器具へ送出する原水系統および/または水道水に上記浄化材を通過させて残留塩素を除去し上記水道水使用器具へと送出する浄水系統とを有することを特徴とするセントラル浄水装置。
【請求項4】
請求項1に記載のセントラル浄水装置と、
上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備えたことを特徴とする浄水システム。
【請求項5】
請求項2に記載のセントラル浄水装置と、
上記浄水使用器具に配されて、二次浄化材を通過させて上記セントラル浄水装置より供給された浄水から塩素を除去する二次浄水装置とを備え、
活性炭を含む上記二次浄化材は、上記浄水からカビ臭を除去することを特徴とする浄水システム。
【請求項6】
上記セントラル浄水装置を経由せずに水道水を水道水使用器具へ送出する原水系統を有することを特徴とする請求項4記載の浄水システム。

【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63379(P2013−63379A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202822(P2011−202822)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウォシュレット
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】