説明

ゼオライトの処理方法

【課題】より良好な触媒性能を有する触媒の調製方法を提供すること。
【解決手段】ゼオライト粒子から有機鋳型剤を除去するためにゼオライト粒子を処理する方法であって、有機鋳型剤の少なくとも約50%を除去するのに十分な長さの時間、約600℃以下の温度において流動層内でゼオライト粒子をか焼することを含む、ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゼオライトを処理する方法に関し、特に、ゼオライトから有機鋳型剤を除去するためにゼオライトをか焼する方法に関する。
(関連出願の相互参照)
【0002】
本出願は、本出願で請求されている優先権である2000年10月20日に出願された仮出願の出願番号第60/242,110号に対する優先権を主張する2001年10月17日に出願された米国出願の出願番号第09/981,926号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
ゼオライトおよび分子ふるいは一般に広範ないろいろの触媒処置に使用されている。一般に、ゼオライトおよび分子ふるいは、シリカおよびアルミナを含む反応混合物であって、しばしば、限定される訳ではないが、直鎖アミン、直鎖ジアミン、および第四級アンモニウム塩などといった有機構造指向剤(しばしば、「鋳型」または「鋳型剤」と呼ばれる)を有する反応混合物から、構造を形成することを含む手順で作成できる。一例として、このような第四級アンモニウム塩は、水酸化テトラエチルアンモニウムとすることができる。有機構造指向剤は、結果として生じるゼオライトから高温における「か焼」としばしば呼ばれる熱処理プロセスによって除去できる。次いで、形成されたゼオライト構造の酸形態は、限定される訳ではないが、アンモニウム交換などのイオン交換、そしてその後のさらなるか焼により生成される。いくつかのプロセスでは、アンモニウム交換ステップは、か焼の前に生じ、それによって、ステップの順序が単純化される。多くの場合、同様にか焼と呼ばれる(付加的な)熱処理が、形成ステップの後に実行される。この形成または成形ステップでは、ゼオライトまたは分子ふるいは、例えば固定層触媒操作で使用可能な形状に生成される。
【0004】
従来のか焼方法は、ゼオライトをトレイか焼器または回転か焼器内で加熱して、鋳型剤を除去する。しかしながら、既知の方法は不利益を受ける。特に、不均質な温度のホットスポットを発生する可能性がある。これらのホットスポットによって結果として、不均一な有機分解、そして低活性生成物が生じる。さらに、有機鋳型の分解または燃焼は、水蒸気を生成することができ、それによって結果として、特定の領域において水蒸気が適用されることになる。水蒸気の適用によって結果として、触媒の局所的な脱アルミニウム化が生じることができ、酸点および触媒活性が変化する。このような不規則は、特定の変換プロセスにおける触媒性能に有害な影響を及ぼすことができる。
【0005】
最新の技術において、ゼオライトまたは分子ふるいの状態または特性は、最終熱処理ステップによりもたらされ得ることが認識されてきた。しかしながら、有機構造指向剤を除去するための熱処理において、ゼオライトまたは分子ふるいの性能が、ゼオライトまたは分子ふるい材料の状態または特性を変化させることにより大きな影響を受けることは認識されてはいなかった。
【0006】
米国特許第5,258,570号は、いわゆる「強」酸点を低減するために約600℃から675℃の高温において加熱することにより形成されたゼオライトを活性化することで、ゼオライトベータの触媒活性を向上させることができることを教示している。米国特許第5,258,570号に従うと、従来の手順で製造されたゼオライトベータは、酸点を低減するように特に処理され、それによって、触媒活性を増加する。
【0007】
米国特許第5,258,570号が教示することとは反対に、驚くべきことには、有機構造指向剤を除去するための制御された熱処理またはか焼と、この処理の際のゼオライトまたは分子ふるいの好ましくは600℃より低い平均温度への暴露とが、特定の性質および強さの酸点を生成するのに望ましいことが見出された。これらの生成された酸点は、温度制御されたアンモニアの脱着により測定できるように、限定される訳ではないが、炭化水素変換技術、および環境低減技術などといった反応における触媒性能を大幅に増加することが驚くべきことには見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必要とされるのは、より良好な触媒性能を達成するために従来のか焼方法の欠点を回避する触媒調製の方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ゼオライト粒子から有機鋳型剤を除去するようにゼオライト粒子を処理する方法がここで提供される。この方法は、有機鋳型剤の少なくとも約50%を除去するのに十分な長さの時間、約600℃以下の温度において流動層内でゼオライト粒子をか焼することを含む。方法は、優れた活性を有する触媒を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従う触媒をか焼するための流動層反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照してここでさまざまな実施態様を説明する。
【0012】
本発明は、有機鋳型剤または「構造指向剤」を除去するようにゼオライト触媒のか焼を行うのに流動層反応器を用いる。ここで使用されるように、「ゼオライト」という用語は、分子ふるいを含む。
【0013】
2001年10月17日に出願され、参照することによりここに組み込まれる米国特許出願番号第09/981,926号は、ゼオライトの性能が、ゼオライトの状態または特性を変化させることにより、大きな影響を受けることを教示している。ゼオライト中の有機鋳型剤を除去するための制御された熱処理またはか焼は、特定の性質または強さの酸点と、特定の体積および大きさの平均細孔構造とを生成する。
【0014】
最新の作用モデルは、いわゆる「強酸点」が、主に特定の種類の四面体アルミニウムの損失の結果として低減される、ということである。その結果、本発明の態様に従うと、ゼオライトまたは分子ふるいの製造において、特定の種類の四面体アルミニウムの量を低減し、それによって、強酸点の数を低減するプロセス条件は、向上した触媒活性を提供するために最小限に抑えるかまたは回避する必要がある。上に示したように、特定の四面体アルミニウムの損失を最小限に抑え、それによって、特定の最小量の強酸点を維持するために、鋳型を除去する条件は、所定の長さの時間、約600℃を超える温度への暴露を低減および/または排除するように制御する必要がある。さらに、好ましい実施態様において、水蒸気の適用は、(限定される訳ではないが)例えば、最終か焼温度への緩慢な加熱により、回避する必要がある。
【0015】
さらに、鋳型剤の除去後のゼオライトまたは分子ふるいの処理も、約600℃を超える温度への暴露を低減および/または排除するように制御する必要がある。例えば、交換ステップと、イオン交換されたゼオライトまたは分子ふるいの最終加熱とは、穏やかな温度で生じる必要がある。イオン交換は、限定される訳ではないが、NH4形のゼオライトまたは分子ふるいを製造するためのNaのNH4NO3との交換を含む。さらに、ゼオライトまたは分子ふるいを所望の形状または形態に押し出す手順における(例えば、物理強度を増加するため、押し出し性を促進するため、その他の)有機剤の使用は、最小限に抑えるかまたは回避する必要もある。
【0016】
従来技術では、ゼオライトまたは分子ふるい中の強酸点が触媒活性を増加することも、ゼオライトまたは分子ふるいを製造するための処理条件を、強酸点の損失を防止するように制御する必要があることも、認識されていない。従来技術では、ゼオライトまたは分子ふるいの形成後の処理ステップが、本発明の値よりも低い値に強酸点の数を低減しており、このような低減は結果として、触媒活性の低減になっていた。
【0017】
より詳細には、好ましい実施態様において、ゼオライトまたは分子ふるいは、有機窒素化合物を含む鋳型または有機構造指向剤の使用により調製される、6:1以上または30:1以上のシリカ対アルミナモル比でシリカとアルミナとを含有するゼオライトまたは分子ふるいである。代表的であるがしかしながら限定的ではないゼオライトの例としては、ゼオライトベータ、ゼオライトL、TEA−モルデナイト、MCM−22、MCM−36、MCM−39、MCM−41、MCM−48、PSH−3、ZSM−5、ブレック(Breck)−6(EMTとしても知られる)、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、SSZ−32、TUD−1、その他を挙げることができる。好ましいゼオライトは、ゼオライトベータであるとはいえ、本発明のこの好ましいゼオライトに限定されない。ゼオライトベータは、商業的に入手可能であり、ゼオライトベータを調製または修飾する方法は、例えば、米国特許第3,308,069号、第5,116,794号、第5,139,759号、第5,164,169号、第5,164,170号、第5,256,392号、第5,258,570号、第5,427,765号、第5,457,078号、第5,980,859号、および第6,004,527号に開示されている。
【0018】
本発明のゼオライトおよび分子ふるいは、当業技術内で知られるように、他の材料と組み合わせることができる。例えば、ゼオライトおよび分子ふるいは、必要に応じて、水素形成カチオン交換の後に金属カチオン交換することができる。ゼオライトおよび分子ふるいが、水素形成カチオン交換の後に金属カチオン交換された場合は、そのゼオライトまたは分子ふるい成分は好ましくは、上述したように多数の酸点を含む。金属カチオンの代表例としては、IIA族、IIIA族、IIIB族からVIIB族のカチオンを挙げることができる。このような金属カチオンの使用は、当業技術内で知られており、このような追加の金属カチオンの組み込みと、その量とは、ここでの教示から当業者の範囲にあると考えられる。同様に、ゼオライトまたは分子ふるいは、一つまたは複数の無機酸化物マトリックス成分と共に用いることができ、これらは、使用する場合、金属カチオンとの交換の際に一般にゼオライトおよび分子ふるいと組み合わされる。このようなマトリックス成分は、シリカ−アルミナ、粘土、アルミナ、シリカ、その他などといった一般の無機酸化物である。マトリックスは、ゾル、ヒドロゲル、またはゲルの形態とすることができ、一般に、従来のシリカ−アルミナ触媒などといった、アルミナ、シリカ、またはシリカ−アルミナ成分である。マトリックスは、触媒的に活性または不活性である。好ましい実施態様において、マトリックスと組み合わせる場合、ゼオライト成分は、以下に記載するように、多数の強酸点を有する。
【0019】
本発明のさらなる態様に従うと、向上した触媒活性を有するゼオライトは、その強酸点を増加することにより製造できる。これについて、ゼオライトを製造する手順、特に有機窒素鋳型剤を除去する手順の際に、そこで用いる条件は、強酸点を保持するように制御する必要がある。これについて、強酸点は、触媒変換用途において有利であると判明した強酸点の損失を防止するプロセス条件を用いることにより維持される。任意の特定の理論に拘束されようとは思わないが、これらの強酸点は、ゼオライト構造中の特定の種類の四面体アルミニウムサイトであると割り当てられ得ると考えられる。
【0020】
これについて、有機窒素鋳型剤を除去する際(一般に、少なくともその50%が除去され、好ましい実施態様においては実質的に全てが除去される)、か焼の際の加熱は、600℃を超える平均温度への暴露を防止するように制御される。か焼温度は好ましくは、約575℃以下、より好ましくは約550℃以下、最も好ましくは約500℃以下である。さらに、好ましい実施態様において、加熱は、約575℃を超える温度への局所的過熱を回避するように注意深く制御される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様において、か焼の際に温度は、例えば、約10℃/min以下、より好ましくは約5℃/min以下の速度で、中間温度(例えば、約120℃)に徐々に上げられ、所定の長さの時間この温度で保持され、次いでか焼温度に再度徐々に上げられる。
【0022】
本発明に従うと、有機鋳型を含有するゼオライトは、流動層反応器内で制御された温度に加熱することによりか焼する。
【0023】
図1をここで参照すると、本発明の使用に適した流動層反応器100は、上部出口102と下部入口103とを有する略管状の容器101を含む。好ましい実施態様において、管状容器は、石英またはその他の高温材料(例えば、金属またはセラミックス)から製作できる。多孔質フリットディスク104が、触媒粒子10の層を支持するために、底部入口103の付近に容器101の内径に亘って配置される。多孔質ディスクは、石英、セラミック、金属、または他の適切な材料から製作できる。容器101は、三脚台105、または任意の他の適切な手段で支持できる。導管106が、導管入口107を有し、容器101の底部入口103まで延在する。導管106は、制御された温度のガスを容器101の内部に伝える。高温ガスは、触媒粒子が流動されるようになる速度で触媒粒子の層内へと多孔質ディスクを通過する。一般に、ガス速度は、例えば、流動粒子の大きさおよび密度に依存して、約50ml/minから約2,000ml/minの範囲とすることができる。
【0024】
触媒層を流動させるのに使用するガスは一般に、少なくともいくらかの酸素を含有し、例えば、空気、または酸素と不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、その他)の混合物とすることができ、ここで、混合物の酸素濃度は、体積で約28%以下である。
【0025】
上述したように、強酸点を維持するために、処理条件は、所定の長さの時間、高温にゼオライトまたは分子ふるいを暴露するのを回避するように制御する必要がある。
【0026】
本発明のゼオライトおよび分子ふるいは、供給原料を触媒的に変換するために用いることができ、ゼオライトまたは分子ふるいは、反応ゾーンにおいて触媒の全てまたは一部を形成する。供給原料は、供給原料を所望の生成物に変換するのに有効な条件下で触媒と接触するように反応ゾーン内へ導入する。
【0027】
反応ゾーン内のゼオライトまたは分子ふるい触媒の量は、例えば関連する特定の処理用途に依存して広範囲に亘って変化し得る。特に適したプロセスは、エチルベンゼンを製造するためのエチレンを用いたベンゼンのアルキル化、またはクメンを製造するためのプロピレンを用いたベンゼンのアルキル化などといった芳香族アルキル化である。
【0028】
芳香族アルキル化プロセスは、バッチ、半連続、または連続様式で実行できる。プロセスは、単一の反応ゾーン、あるいは直列または並列に配置した複数の反応ゾーンで行うことができ、また、一つの長い管状ゾーンまたは複数のこのようなゾーン内で間欠的にまたは連続的に行うことができる。複数の反応ゾーンを用いる場合、所望の生成物混合物を提供するように直列に一つまたは複数のこのようなゼオライト触媒組成を用いるのが有利となり得る。炭化水素変換プロセスの性質のおかげで、動的(例えば、流動または移動)層システム、または固定層でないさまざまな輸送層の任意のシステムにおいて、ゼオライト触媒組成の使用により特定のプロセスを実行するのが望ましくなり得る。このようなシステムは、所定の長さの時間後にゼオライトベータ触媒組成の任意の再生(必要ならば)が容易に可能となるはずである。再生が必要な場合、ゼオライトベータ触媒組成は、移動層として再生ゾーンに連続的に導入でき、そこでそれらは、例えば酸素含有雰囲気中での酸化により炭素質物質を除去することなどによって再生できる。いくつかの炭化水素変換プロセスの好ましい実施において、ゼオライトベータ触媒組成は、反応の際に蓄積した炭素質堆積物を燃焼し去ることによる再生ステップを受けることになる。
【0029】
本発明は、以下の実施例に関してさらに説明する。しかしながら、本発明の範囲は、それによって限定されない。特に指定しない限り、全ての部および百分率は重量による。
【0030】
以下の実施例において本発明を立証するために、図1に示すような実験室規模の流動層装置100を、有機鋳型を除去するように触媒を処理するのに用いた。容器101は、25.4mmの外径と18.0mmの内径とを有する石英管から製作した。出口102における容器101の頂部から多孔質ディスク104の位置までの長手方向の寸法H−1は、175mmであった。多孔質ディスク104から底部入口103への長さH−2は、40mmであった。三脚サポート105の脚部は、47mmの長さH−3を有していた。導管106は、6mm外径の石英管から製作した。導管106の長さH−4は、500mmであった。導管106は、容器101の一端に固定された石英ロッド108により支持した。
【0031】
流動層反応器100は、実施例において指定される温度に加熱した炉内に配置した。
導管106の頂部開口107は、炉の頂部にある小さな開口から突き出ており、弁、流量計および/または流量調節器、および触媒流動層を通るガス流のための空気または酸素/窒素混合物の供給源に接続した。
【0032】
温度プログラムアンモニア脱着(Temperature Programmed Ammonia Desorption)すなわち「アンモニアTPD」を、触媒中の強酸点を測定するのに用い、ミクロ反応器/質量分析装置、すなわち石英ミクロ反応器と4重極質量分析計(ヒデンアナリティカル(Hiden Analytical)HPR−20)とを組み合わせたオンライン分析システムにおいて実行した。
【0033】
約40mgの粉末試料を用い、最終結果は、水分を考慮した後の乾燥基準に補正した。試料は最初に、50ml/minの流量の空気中、400℃で30分間か焼し、次いで、50ml/minのHe流中で125℃まで冷却し、10分間保持した。アンモニア吸着を、50ml/minの流量の、He中の1.0%NH3のガス混合物中、125℃で30〜35分間実行した。次いで、試料を、50ml/minのHeを用いて125℃で4時間パージした。吸着温度、時間およびアンモニア濃度の関数である弱く吸着したアンモニアは、ほぼ完全に除去した。アンモニアTPDは、10℃/minの加熱速度および50ml/minのHe流量で125から700℃まで開始する。質量数16を定量化のために用いて、水信号からの任意の干渉を除去した。各TPD実行の直後、アンモニア脱着の定量化は、1.0%NH3を用いた質量分析計の較正に基づいた。アンモニアTPDにより測定したように、本発明に従って処理したゼオライトは、少なくとも約0.55NH3mmol/g、より好ましくは少なくとも約0.60NH3mmol/g、最も好ましくは少なくとも約0.65NH3mmol/gの強酸性を有する。
【0034】
触媒試料の表面積、細孔容積、および細孔直径は、標準測定技術によって測定した。
【0035】
ゼオライトベータ試料を、ベンシルヴェニア州ヴァリーフォージ(Valley Forge)のゼオリストインターナショナル社(Zeolyst International Co.)から商業的に入手した。
【0036】
ゼオライトまたは分子ふるい触媒組成により触媒化され得る実質的にすべての炭化水素変換プロセスが、本発明から利益を得ることができた。本発明の例証となる典型例は、芳香族アルキル化に対して示すことができる。二つの工業的に重要な芳香族アルキル化プロセスは、エチルベンゼンの製造とクメンの製造である。触媒アルキル化活性を、以下の反応の一方または両方で試験した。
【0037】
I. エチルベンゼンを形成するためのエチレンを用いたベンゼンのアルキル化。
【0038】
ゼオライト触媒の触媒活性を、エチルベンゼンを形成するためのエチレンを用いたベンゼンのアルキル化のモデル反応において評価した。試験反応器は、再循環差動固定層反応器であった。試験条件は、350psigの圧力および190℃の温度であり、再循環速度は、200グラム/minであった。試験原料は、ベンゼン中に溶解した0.35wt.%のエチレンを含有しており、6.0グラム/minの供給速度であった。
【0039】
触媒投入量は、1.0グラムであり、粒径は、−12から+12メッシュであり、80wt%のゼオライトを含有する1.6mm押し出し物に由来した。試験は、7から8時間行い、試料を、30分間毎にガスクロマトグラフィー(gas chromatography)(「GC」)による分析のために採取した。一次反応速度定数kEBを、エチルベンゼンを製造するためのエチレンを用いたベンゼンのアルキル化に対する触媒活性を表すために、190℃において計算した。本発明の方法に従って処理したゼオライトは典型的には、少なくとも約0.75、好ましくは少なくとも約1.0、より好ましくは少なくとも約1.6のkEB(190℃)を有する。
【0040】
II. クメンを形成するためのプロピレンを用いたベンゼンのアルキル化。
【0041】
この反応は、原料が、ベンゼン中に溶解した0.35%wt%のプロピレンを含有しておりかつ反応温度が170℃であった以外は、エチレンを用いたベンゼンのアルキル化の反応と同様の仕方で、同じ試験装置を用いて行った。一次反応速度定数kCUを、クメンを製造するためのプロピレンを用いたベンゼンのアルキル化に対する触媒活性を表すために、170℃において計算した。本発明の方法に従って処理したゼオライトは典型的には、少なくとも約5.0、好ましくは少なくとも約6.0、より好ましくは少なくとも約7.0のkCU(170℃)を有する。
【実施例1】
【0042】
依然としていくらかの有機鋳型剤を含有するゼオライトベータ結晶を、上述したような流動層反応器に充填した。反応器は、フィッシャー精密(Fisher Precision)炉内に配置し、5%の酸素および95%の窒素を含有するガス混合物を、ゼオライト層を流動させるのに十分な480ml/minの速度でゼオライト層を通して流した。ゼオライトのか焼のために、流動層の温度を、1℃毎分で120℃に上昇させ、1時間保持し、次いで再度、1℃分で550℃に上昇させ、10時間保持し、最後に、5℃/minの速度で室温まで冷却した。結果として得られたか焼ゼオライトは、次いで、室温で硝酸アンモニウムの0.1モル水溶液中でイオン交換した。濾過および洗浄後、イオン交換試料は、120℃で乾燥した。
【0043】
乾燥イオン交換ゼオライト粉末は次いで、最終か焼生成物が約80wt%のゼオライト濃度を有するように適切な量のNyacol(登録商標)アルミナゾルと混合した。ペーストは、90℃で1時間乾燥し、次いで以下のプログラムすなわち、120℃まで5℃/min、1時間保持、500℃まで5℃/min、5時間保持、室温まで5℃/min、を用いてか焼した。か焼ペーストは、破砕し、+20/−12メッシュ径にふるいにかけ、そのうち0.76グラムを試料1とし、性能評価のためにアルキル化反応器内へ充填した。
【0044】
試料1の試験結果は、以下のように下記に述べる。
【0045】
試料1
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 1.94
【実施例2】
【0046】
依然としていくらかの有機鋳型剤を含有するゼオライトベータ結晶を、流動層反応器に充填し、流動ガスとして空気を使用し、温度を、5℃/minの速度で120℃に上げ、1時間保持し、次いで再度、5℃/minの速度で550℃の温度に加熱し、3時間保持し、次いで、5℃/minの速度で室温まで冷却した以外は、実施例1と同じ仕方でか焼した。
【0047】
か焼ゼオライトは、実施例1に記載したのと同じ仕方でイオン交換し、実施例1に記載したのと同じ仕方でNyacol(登録商標)アルミナを用いて押し出し物に形成した。結果として得られた触媒は、試料2とし、(上述したようにアンモニアTPDによる酸点、表面積および細孔容積、およびエチルベンゼンアルキル化活性(kEB)とクメンアルキル化活性(kCU)の両方に対して試験し、以下の特性を有した。
【0048】
試料2
強酸性(NH3mmol/g) 0.61
BET(m2/g) 499
細孔容積(cc/g) 0.724
平均細孔直径(オングストローム) 107
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 2.16
触媒活性、kCU@170℃(cm3/g.s) 8.06
【実施例3】
【0049】
依然としていくらかの有機鋳型剤を含有するゼオライトベータ結晶を、実施例2に述べたのと同じ仕方でか焼した。か焼ゼオライトは、実施例2に述べたのと同じ仕方で触媒押し出し物に形成し、試料3とし、次いで、実施例2に述べたのと同じ仕方で酸点、表面積、細孔容積、細孔径、およびエチルベンゼンアルキル化に対して試験した。試料3は、以下の特性を有した。
【0050】
試料3
強酸性(NH3mmol/g) 0.67
BET(m2/g) 538
細孔容積(cc/g) 0.828
平均細孔直径(オングストローム) 113
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 1.61
以下の比較例は、本発明に従っていない。
【0051】
〔比較例A〕
依然として有機鋳型を含有するゼオライトベータ結晶を、トレイか焼器内でか焼した。トレイか焼器は、ドイツ、ライプツィヒのパデルツ−テルム社(Padelt−Therm GmbH)から型番号REU240−750で入手した。約1/8インチ厚みのゼオライトベータ層を、か焼器のセラミックトレイ上に配置した。ゼオライトベータは、室温から5℃/minの速度で120℃に加熱し、1時間保持し、次いで再度、5℃/minで550℃に加熱し、この温度に10時間保持し、次いで、5℃/minの速度で室温まで冷却した。
【0052】
か焼ゼオライトは、上の実施例に述べたのと同じ仕方で触媒押し出し物に形成した。か焼ゼオライトは、試料4とし、次いで、上の実施例に述べたのと同じ仕方で酸点、表面積、細孔容積、細孔径、およびエチルベンゼンアルキル化に対して試験した。試料4は、以下の特性を有した。
【0053】
試料4
強酸性(NH3mmol/g) 0.58
BET(m2/g) 524
細孔容積(cc/g) 0.758
平均細孔直径(オングストローム) 107
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 0.75
【0054】
〔比較例B〕
依然として有機鋳型を含有するゼオライトベータ結晶を、比較例Aと同じ仕方でか焼した。か焼ゼオライトは、試料5とし、上に述べた実施例に述べたのと同じ仕方で触媒押し出し物に形成し、エチルベンゼンアルキル化とクメンアルキル化活性の両方に対して試験した。試料5は、以下の特性を有した。
【0055】
試料5
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 0.80
触媒活性、kCU@170℃(cm3/g.s) 2.48
【0056】
〔比較例C〕
依然として有機鋳型を含有するゼオライトベータ結晶を、サーモクラフト(Thermocraft)6インチ電気回転か焼器(モデルNo.2825−108−47h)内で、回転速度3RPM、25g/minの供給速度、および1050°F(566℃)の温度でか焼した。
【0057】
か焼ゼオライトは、上の実施例と同じ仕方で触媒押し出し物に形成し、試料6とし、エチルベンゼンアルキル化活性に対して試験した。試料6は、以下の特性を有した。
【0058】
試料6
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 0.81
【0059】
〔比較例D〕
商業的に入手した既にか焼したゼオライトベータの試料を、上で与えたの実施例と同じ仕方で、酸点、表面積、細孔容積、および細孔径に対して試験した。ゼオライトは、上の実施例と同じ仕方で触媒押し出し物に形成し、試料7とし、エチルベンゼンアルキル化活性に対して試験した。試料7は、以下の特性を有した。
【0060】
試料7
強酸性(NH3mmol/g) 0.36
BET(m2/g) 466
細孔容積(cc/g) 0.491
平均細孔直径(オングストローム) 75
触媒活性、kEB@190℃(cm3/g.s) 0.34
【0061】
〔比較例E〕
比較例Dと同じ商業的ゼオライトベータの試料を、触媒押し出し物に形成し、試料8とし、クメンアルキル化活性に対して試験した。試料8は、以下の特性を有した。
【0062】
試料8
触媒活性、kCU@170℃(cm3/g.s) 1.43
【0063】
これらの結果は、触媒をか焼するのに流動層を用いる本発明の方法が、トレイまたは回転か焼器を用いるか焼方法とは対照的に、エチルベンゼンアルキル化に対する少なくとも二倍の触媒活性を有するかなり優れた触媒を提供することを示す。例えば、実施例1、2および3は、それぞれ1.94、2.16、および1.61のkEB値(190℃における)を示しており、一方、比較例A、B、およびCは、それぞれ0.75、0.80、および0.81のkEB値(190℃における)を有していた。比較例Dの商業的なゼオライトベータは、わずか0.34のkEB値(190℃における)を有していた。同様に、実施例2の試料2は、比較例Bでの2.48および比較例の1.43に比較して、8.06のkCU(170℃における)を有していた。
【0064】
さらに、本発明の試料2および3は、アンモニアTPDで測定されるように商業的ゼオライトベータの酸性より強い酸性を示した。
【0065】
上述した説明は、多くの詳細を含むとはいえ、これらの詳細は、本発明の範囲の限定としてではなく、本発明の好ましい実施態様の単なる例示として解釈すべきである。当業者は、添付の請求項により規定される本発明の範囲および趣旨の中で他の多くの可能な変形例を構想するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト粒子から有機鋳型剤を除去するためにゼオライト粒子を処理する方法であって、
有機鋳型剤の少なくとも約50%を除去するのに十分な長さの時間、約600℃以下の温度において流動層内でゼオライト粒子をか焼することを含む、
こと特徴とする方法。
【請求項2】
前記ゼオライト粒子は、有機鋳型剤の実質的に全てを除去するのに十分な長さの時間およびか焼温度においてか焼されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記か焼温度は、約550℃以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記か焼温度は、約500℃以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記のか焼ステップは、約10℃毎分以下の速度で流動層の温度を上昇させることを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ゼオライト粒子は、酸素含有ガスで流動されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸素含有ガスは、酸素と不活性ガスの混合物または空気であり、この混合物中の酸素の濃度は、体積で約28%以下であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ゼオライトは、ゼオライトベータ、ゼオライトL、TEA−モルデナイト、MCM−22、MCM−36、MCM−39、MCM−41、MCM−48、PSH−3、ZSM−5、ブレック−6、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、SSZ−32、およびTUD−1から成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ゼオライトは、ゼオライトベータであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法に従って処理されたゼオライト触媒。
【請求項11】
前記処理されたゼオライトは、アンモニア温度プログラム脱着により測定される少なくとも約0.55NH3mmol/gの強酸性を有することを特徴とする請求項10記載のゼオライト触媒。
【請求項12】
前記処理されたゼオライトは、エチルベンゼンを製造するためのエチレンを用いたベンゼンのアルキル化に対する190℃における活性kEBを有しており、190℃におけるkEBは、少なくとも約0.75であることを特徴とする請求項10記載のゼオライト触媒。
【請求項13】
前記190℃における活性kEBは、少なくとも約1.0であることを特徴とする請求項12記載のゼオライト触媒。
【請求項14】
前記処理されたゼオライトは、クメンを形成するためのプロピレンを用いたベンゼンのアルキル化に対する170℃における活性kCUを有しており、170℃におけるkCUは、少なくとも約5.0であることを特徴とする請求項10記載のゼオライト触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2011−46609(P2011−46609A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271258(P2010−271258)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2006−513227(P2006−513227)の分割
【原出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(391011227)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】