説明

ゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料

【課題】ゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料を提供する。
【解決手段】焼成形態における化学組成が実験式:x(M1/nXO):yYO:SiO[式中、Yは、ケイ素以外の酸化状態が+4の化学元素であり、Xは、酸化状態が+3の化学元素であり、Mは、Hまたは電荷がnの無機カチオンであり、nは、1から3の範囲の値のいずれかを取り得、xは、約0から約0.2、好適には0.0666未満、より好適には0.05未満の範囲を包含する値のいずれかを取り得、yは、0から0.2の範囲を包含する値のいずれかを取り得る]で表されるゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料(ITQ−41)であって、この材料は、6.9゜、7.4゜、8.3゜および9.6゜2θ角の所に4個の反射が存在する粉末X線回折パターンを示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト性質を有する細孔性結晶性材料、これの製造方法、そしてこれを有機化合物の変換および分離工程で用いることに関する。この製造方法は、加熱中に結晶化する少なくとも1種の特定有機添加剤を用いることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
合成および天然に存在する結晶性ゼオライトは、構造的に、TO四面体(ここで、Tは、形式的酸化状態が+3および+4の原子、典型的にはSiおよびAlばかりでなくまたTi、Ge、BおよびGaなどの如き元素も表す)の開放された三次元骨格で構成されている。そのような四面体は、三価(例えばAl)および四価(例えばSi)原子の全体に対する酸素原子の比率が2に相当するように酸素原子を共有することで架橋している。三価元素を含有する四面体の負の電荷と結晶構造の中に含まれている有機および無機カチオンが均衡を保っている。
【0003】
合成結晶性ゼオライトは、組成および結晶構造の両方を基にして、互いおよび天然に存在するゼオライトから区別可能である。数多くのゼオライトは、分子寸法の通路および/または空洞部のシステムを含んで成る結晶構造を有し、そのようなシステムがゼオライト間で異なることから、異なる特徴的な粉末X線回折パターンをもたらす。
【0004】
ゼオライト結晶構造の格子間空間部を一般に水和水が占めている。そのようなゼオライトに脱水を少なくともある程度受けさせると、そのような格子間空間内に吸着質分子が保持されるようになることで、それを有効な吸着剤として用いることが可能になる。そのようにして吸着され得る分子の大きさおよび形状は、明らかに、結晶格子の中の空間部の格子間寸法によって限定される。そのような数多くの結晶性ゼオライトが特定寸法の分子の「シーブ」として機能するには、それらが異なる選択的吸着特性を有することが重要であり、それは、また、それらをイオン交換工程で用いる時そして触媒または触媒添加剤/成分として用いる時にも、それらの効力にとって重要である。
【0005】
ベータゼオライトの組成、製造方法およびX線粉末回折分析が特許文献1、2、3、4、5、6、7および8の全部に記述されている。そのような孔が大きい合成結晶性ゼオライトが有するアルミナに対するシリカのモル比は少なくとも25、典型的には少なくとも100、潜在的に250以上であり、それらが示す特徴的粉末X線回折パターンは本明細書に添付する図1に示すパターンである。
【0006】
ベータゼオライトの構造は約12.6x12.6x26.2Åの四面体格子パラメーターおよび12員環で構成されている三次元孔システムで特徴づけられるとして初めて記述された(非特許文献1)。より具体的には、ゼオライトベータは2種類の異なるシート様構造物(多形体AおよびBと呼ぶ)の合生で構成されていると理論的に説明された。前記多形体は両方とも12環孔の三次元網状組織を含有し、その孔は、三次元の中の二次元では、前記多形体の合生の影響を有意には受けていないが、その孔は、断層の方向では、曲がりくねっている(遮断されてはいないが)。その結果として、ベータゼオライトは、しばしば、構造的に障害がある、例えばZSM−5およびゼオライトYなどに比べて障害があるとして記述される。
【0007】
3番目の多形体(多形体Cと呼ぶ)がベータゼオライト構造の中に存在することが非特許文献1に提案されたが、後で、その多形体Cは存在しないと結論付けられた(非特許文献2)。しかしながら、最近、ベータゼオライトに密に関連した材料が合成され、そのよ
うな材料では、多形体Cが多形体Aと一緒に存在しそしてCの濃度は不純物の濃度より有意に高い濃度であった(非特許文献3)。その上、また、多形体Cを高純度のシリコ−ゲルマン酸塩(ITQ−17として知られる材料)として合成することも記述された(非特許文献4)。
【0008】
しかしながら、多形体Cが多形体Aまたは多形体Bの中の一方とのみと一緒に存在するゼオライト系材料は今日まで報告されていない。本発明の目的は、そのような新規なゼオライト系材料を提供することと前記材料の最適な用途を見つけだすことにある。
【特許文献1】米国特許再発行番号28,341
【特許文献2】米国特許第3,308,069号
【特許文献3】米国特許第3,923,641号
【特許文献4】米国特許第4,676,887号
【特許文献5】米国特許第4,812,223号
【特許文献6】米国特許第4,486,296号
【特許文献7】米国特許第4,601,993号
【特許文献8】米国特許第4,612,108号
【非特許文献1】Newsam他、Proceedings of Royal Sosicety London Ser.A、410(1998)375−405
【非特許文献2】Zeolites、5/6、(1996)、641
【非特許文献3】Corma他、ITQ−16、a new zeolite family of the beta group with different proportions of polymorphs A,B and C、Chem.Commun.(2001)1720)
【非特許文献4】Corma他、「Pure polymorph C of zeiolite beta synthesized by using framework isomorphous substitution as a structure−directing mechanism」 Angew.Chem.Int.Ed.、49(12)、2277−2280、(2001)。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、ゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料(本明細書では以降ITQ−41と呼ぶ)、これの製造方法およびこれの用途に関する。
【0010】
前記材料をこれの化学組成およびこれのX線回折パターンで特徴付ける。ITQ−41の化学組成は、これの焼かれた無水形態において、実験式:
x(M1/nXO):yYO:SiO
[式中、
Yは、ケイ素以外の酸化状態が+4の化学元素であり、
Xは、酸化状態が+3の化学元素であり、
Mは、Hまたは電荷がnの無機カチオンであり、
nは、1から3の範囲内の値のいずれかを取り得、
xは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満、好適には約0.0666未満、より好適には約0.05未満の値のいずれかを取り得、
yは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満、好適には約0.1未満、より好適には約0.0666未満の値のいずれかを取り得る]
で描写可能であり、かつ前記組成は、6.9゜、7.4゜、8.3゜および9.6゜2θ角の所に4個の反射が存在するX線回折パターンを示すことを特徴とする。そのような反射によって前記組成をベータゼオライト、ITQ−16およびITQ−17のそれから区別する。
【0011】
前記実験式中のYは、好適には、Ge、Ti、SnおよびVから成る群から選択される少なくとも1種の元素を含んで成る。独立して、XがAl、Ga、B、CrおよびFeから成る群から選択される少なくとも1種の元素を含んで成るのが好適である。更に、MがH、Li、Na、K、Ca2+およびMg2+から成る群から選択される少なくとも1種の一価もしくは二価元素を含んで成るのも好適である。
【0012】
本発明の好適な態様におけるITQ−41は、焼成状態(焼かれた無水状態)において、下記の組成:
x(HXO):SiO
[式中、
Xは、三価元素であり、そしてxは、0に等しいか或はそれ以上から約0.02未満の値を有する]
を有する。
【0013】
x=0およびy=0である態様における材料は、細孔性を示すことで特徴づけられる新規なシリカ(SiO)多形態であるとして記述可能である。より詳細には、そのような焼成材料は、リートベルト微細調整(Rietveld Refinement)[H.M.Rietveld「A profile refinement method for nuclear and magnetic structures」、Journal of Applied Crystallography 2:65−71(1969)(引用することによって本明細書に組み入れられる)の開示]によって2種類の多形体BとCの組み合わせであるとして適合可能なX線回折パターンを示すことで特徴付け可能である。
【0014】
x=0およびy=0である材料の好適な態様に従い、多形体Bと多形体Cの比率は約0:100から約100:0の範囲内、好適には約5:95から約95:5の範囲内、より好適には約15:85から約85:15の範囲内である。
【0015】
合成方法および焼成または次の処理に応じて、結晶格子の中に障害を存在させることができる。それらは、Si−OH基(シラノール)が存在することで明らかになるが、そのような障害を前記実験式には含めていない。
【0016】
本発明の2番目の面に従い、焼かれた無水形態における化学組成が実験式:
x(M1/nXO):yYO:SiO
[式中、
Yは、ケイ素以外の酸化状態が+4の化学元素であり、
Xは、酸化状態が+3の化学元素であり、
Mは、Hまたは電荷がnの無機カチオンであり、
nは、1から3の範囲内の値のいずれかを取り得、
xは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満、好適には約0.0666未満、より好適には約0.05未満の値のいずれかを取り得、
yは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満、好適には約0.1未満、より好適には約0.0666未満の値のいずれかを取り得る]
で描写可能でありかつ6.9゜、7.4゜、8.3゜および9.6゜2θ角の所に4個の反射が存在するX線回折パターンを示すことで特徴付けられるゼオライト性質を有する細孔性結晶性材料(ITQ−41)を合成する方法を提供し、この方法は、
a)シリカ(SiO)の源、
構造指向剤としての4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンカチオン(このカチオンを本明細書では以降R+として表す]の源、
フッ化物イオンの源、
適宜、Yの源、
適宜、Xの源、および
水、
を含んで成っていて、特に明記しない限り、酸化物に換算して計算して、下記の比率:
/SiOが0から約0.2の範囲、
ROH/SiOが0から約0.01から約3の範囲、
YO/SiOが0から約0.2の範囲、
O/SiOが約1000から約0.25の範囲、
HF/SiOが約0.01から約3.0の範囲、
で特徴づけられる組成を有する反応混合物を準備し、
b)前記反応混合物に約110から約250℃の範囲内の温度の加熱を約5から約10の範囲のpHで結晶化が得られるまで受けさせる、
ことを含んで成る。
【0017】
前記反応混合物に、特に明記しない限り、酸化物に換算して計算して、下記の比率:
/SiOが0から約0.066、より好適には0から約0.05の範囲
ROH/SiOが約0.03から約1.0の範囲、
YO/SiOが0から約0.1、より好適には0から約0.066の範囲
O/SiOが約100から約1.0の範囲、および
HF/SiOが約0.03から約1.0の範囲、
で特徴づけられる組成を持たせるのが好適である。
【0018】
前記ケイ素の源に好適には非晶質シリカ、コロイド状シリカ、シリカゲル、オルトケイ酸テトラアルキルおよび予成形ゼオライトの中の少なくとも1種を含める。独立して、前記構造指向剤(R+)を前記混合物に水酸化物、硝酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩形態の中の少なくとも1つの形態で存在させるのが好適である。更に、前記フッ化物の源にフッ化水素酸、フッ化アンモニウム、アルカリ金属のフッ化物およびアルカリ土類金属のフッ化物の中の少なくとも1種を含めるのも好適である。
【0019】
本方法の好適な態様に従い、前記反応混合物に更にアルカリもしくはアルカリ土類カチオンの源も含有させる。好適には、前記カチオンを水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩またはこれらの混合物形態で存在させる。前記混合物にカリウムカチオン源を含めるのが最も好適である。
【0020】
前記好適な態様において、前記アルカリもしくはアルカリ土類金属カチオンをAとして表すとすると、前記反応混合物に、好適には、
A/SiOが約3から約0.01、好適には約1から約0.03の範囲、および
A/ROHが0から約5、好適には0から約2の範囲、
の組成を持たせる。
【0021】
前記反応混合物の中に結晶化[前記段階(b)]を誘発させる好適な条件には、温度を約130から約200℃にすることが含まれる。結晶化過程が終了した後、その固体をその母液から濾過および/または遠心分離で回収する。その固体を乾燥、好適には約25から約150℃の範囲の温度で乾燥させる。
【0022】
上述した方法の結晶性生成物が有する通路および空洞部の中にカチオンRがある比率で吸蔵されていることから、前記生成物に適切な加熱を受けさせることで、そのカチオンを追い出すのが好適である。その吸蔵されている有機物およびいくらか吸蔵されているフッ化物アニオンの除去を好適には焼成を真空下か、空気、Nまたは他の活性ガス中で約400℃以上、好適には約450℃以上であるが約1200℃以下の温度で実施することで行う。
【0023】
本発明の3番目の面に従い、ITQ−41材料に多形体Cを豊富に存在させる方法を提供し、この方法は、
i)多形体Cと多形体Bの1番目の比率を有する1番目のITQ−41材料を準備し、
ii)前記1番目のITQ−41材料を4,4ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンカチオンが構造指向剤として入っている水溶液に撹拌下で添加しかつ更にアルカリもしくはアルカリ土類金属の源およびフッ化物イオンの源も添加し、そして
iii)そのようにして生じさせたゼラチン状反応混合物に約110から約250℃の範囲の温度の加熱を結晶化が起こるまで受けさせる、
ことを含んで成る。
【0024】
前記結晶化の生成物、即ち前記1番目のITQ−41材料に比べて多形体Cが豊富に存在する2番目のITQ−41材料を更にいくらか存在する母液から分離し、洗浄しそして/またはそれに焼成をこの上に記述した条件下で受けさせてもよい。
【0025】
本発明の4番目の面は、本ITQ−41材料を流体分離でモレキュラーシーブとして用いること(前記材料を乾燥剤として用いることを包含)、イオン交換工程で用いること、それ自身を触媒としてか或は触媒添加剤または触媒成分として用いることに関する。
【0026】
より詳細には、本ITQ−41材料は、i)炭化水素または他の有機化合物の接触分解用触媒への添加剤として、ii)水素化分解または穏やかな水素化分解用触媒の成分またはそれへの添加剤として、iii)軽パラフィン異性化用触媒の成分またはそれへの添加剤として、iv)脱蝋およびイソ脱蝋(isodewaxing)用触媒の成分またはそれ用の添加剤として、v)イソパラフィンにオレフィンまたはアルコールによるアルキル置換を受けさせるための触媒として、vi)芳香化合物または置換芳香化合物にオレフィンまたはアルコールによるアルキル置換を受けさせるための触媒として(好適にはベンゼンにプロピレンによるアルキル置換を受けさせるための触媒として用いる)、vii)芳香化合物にアシル化を酸、ハロゲン化アシル、有機酸の無水物をアシル化剤として用いて受けさせるための触媒として、ix)Meerwein−Pondorf−VerleyおよびOppenauer反応用触媒として、およびx)有機揮発物(VOC)除去用触媒として使用可能である。
【0027】
その上、Ti含有ITQ−41材料を有機もしくは無機ヒドロパーオキサイド、例えばH、t−ブチルヒドロパーオキサイドおよびクメンヒドロパーオキサイドなどを酸化剤として用いたオレフィンのエポキシ化、アルカンの酸化、アルコールの酸化、チオエ
ーテルからスルホキサイドまたはスルホンを生じさせる酸化反応で活性触媒として使用することも可能である。
【0028】
また、Sn含有ITQ−41材料をHを酸化剤として用いたBayer−Williger酸化反応で活性触媒として用いることも可能である。最後に、それらをアンモニアおよびHの存在下でシクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを生じさせるアンモキシメーション(ammoximation)で活性触媒として用いることも可能である。
【0029】
構造指向剤である4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド(ROH)の合成
1,3−シクロヘキサジエン(10mL;103ミリモル)とマレイミド(10g;103ミリモル)のトルエン溶液(350mL)を4日間還流させた。冷却後に結果として生じた沈澱物を濾過した後、ヘキサンで洗浄することでディールスアルダー生成物を定量的形態(23g)で得た。
【0030】
【化1】

【0031】
前記ディールスアルダー付加体(9.0g、51ミリモル)を無水ジエチルエーテル(71mL)に入れることで生じさせた懸濁液をN下0℃で撹拌しながらこれに無水ジエチルエーテル中1.0MのLiAlH溶液(127mL;127ミリモル)を滴下した。滴下が終了した時点で、その混合物を5時間還流させた後、室温で一晩撹拌した。次に、HO(10mL)、15%のNaOH水溶液(10mL)そして蒸留HO(10mL)を添加することで反応を消滅させた。その溶液を室温で30分間撹拌し、濾過した後、ジエチルエーテルで抽出した。その有機抽出液を一緒にして食塩水で洗浄し、乾燥させた後、濃縮乾固させることで、還元を受けた相当する生成物を得た(6.8g;89%)。
【0032】
【化2】

【0033】
その第二級アミン(5.0g、33.5ミリモル)をMeOH(85mL)に入れることで生じさせた溶液にKHCO(448.5g、0.5モル)およびCHI(104mL、1.7モル)を加えた。この混合物を室温で7日間撹拌した。次に、それを濾過した後、CHClで洗浄した。蒸発後に結果として生じた固体をヘキサン−CHClを用いて再結晶化させることで所望の第四級塩(8.6g、84%)をヨウ化物の形態で得た。
【0034】
【化3】

【0035】
アニオン性樹脂であるAmberlite IRN−78を用い、前記ヨウ化物塩が152.45g入っている水溶液(500ml)と前記樹脂の水酸化物(450g)を12時間接触させることで、前記ヨウ化テトラアルキルアンモニウムを相当する水酸化物に変化させた。その結果として得た混合物を室温で8時間連続的に撹拌した後、相当する水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液を濾過で回収する。OHおよびヨウ化物の濃度を滴定することを通して、有機カチオンの濃度およびアニオン交換度を計算する。交換度は典型的に95%より高く、4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンカチオンの濃度は0.8Nに近い。その最終的溶液に濃縮を真空下で有機カチオンの濃度が1Nにまで高くなるまで受けさせる。
【0036】
[実施例]
以下の実施例を用いて本発明の生成物および方法を例示するが、本発明を限定するものでない。より詳細には、SDAが変わらないとすると、ある測定におけるX線回折パターンの中のピークの位置、幅および相対強度は化学組成、特に存在する三価(Al、B、Fe、Ga)または四価(Ge、Sn、Ti、V)ヘテロ原子に依存することを示す。更に、ITQ−41が示す回折パターンに現れるピークの強度は、また、サンプルの水和度、結晶の大きさおよび結晶の形状によっても変わり得る。
【実施例1】
【0037】
多形体Cと多形体Bの比率が70:30の高純度シリカITQ−41材料の合成
22.7重量%の4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド水溶液(1.396g)と20重量%のKOH(0.104g)に40重量%のコロイド状シリカ(LUDOX AS−40)懸濁液(0.466g)を加えた。次に、前記混合物に10重量%のフッ化アンモニウム溶液を0.613g加えた。その結果として生じたゲルを室温で水が水とシリカの比率が6:6に到達するに必要な量で蒸発するまで撹拌した。この合成ゲルの最終的モル組成は下記であった:
SiO:0.53ROH:0.12KOH:0.53NHF:6.6H
前記ゲルをオートクレーブに175℃で14日間かけ、その結果として生じた固体を濾過で母液から分離した後、85℃の蒸留水で洗浄した。その結果として得た固体は高結晶性材料である。
【0038】
多形体Cと多形体Bの比率が70:30の高純度シリカITQ−41材料の特徴付け
銅Kα1,2放射線および固定式発散スリットが用いられているX’Pert Pro回折装置を用いて、4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンカチオン(本明細書では以降SDA)を用いて合成したままの形態の材料ITQ−41がSiおよびO原子で排他的に構成されている無機網状組織として示す粉末X線回折パターンを得た。以下の表1に、2θ値の所の回折ピークおよびこれらのピークの相対強度[(I/I)x100%](ここで、Iは最も強い回折ピークの強度である)を示す。相対強度を下記の範囲に等級分けする:w=弱い強度(0から10);中程度の強度(10から30の範囲);s=強い強度(30から60の範囲)およびvs=非常に強い強度(60から100の範囲)。
【0039】
【表1】

【0040】
前記固体がそのような焼成形態でない時に示した回折図を図3に示す。
【0041】
焼成がX線回折パターンに対して示す影響を示す目的で、前記固体に580℃の空気を用いた焼成を6時間受けさせることで、そのゼオライトに吸蔵されている有機化合物を除去した。表2に、粉末X線回折パターンのピークの2θ角および相対強度(I/I)を示す。表2中のw、m、sおよびvsは表1に示したそれと同じ意味を有する。
【0042】
その焼成を受けさせた固体が示した回折図を図4に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
焼成および未焼成形態のゼオライトITQ−41が示したX線回折パターンとITQ−16、ベータおよびITQ−17ゼオライトが示したそれとは、ITQ−41材料は低角である6.9゜、7.4゜、8.3゜および9.6゜の所に4個の良好に限定された反射を示す点で異なる。7.4゜および8.3゜の所のピークはITQ−41ゼオライトにゼオライトベータの多形体Bが存在することに起因する一方、6.9゜および9.6゜の所の回折はITQ−41材料にベータゼオライトの多形体Cが存在することに割り当てられる。前記4個の低角回折ピークの相対強度は当該サンプルに存在する多形体CとBの比率に応じて変わるであろう。
【0045】
図4に示したX線回折パターンのリートベルト解析により、前記ITQ−41材料は多形体Cと多形体Bが70:30の比率であるように生じたことを示している。この実験および計算したパターンばかりでなく両方の回折図の間の差パターンを図5に示す。このことは、明らかに、前記ITQ−41材料が2種類の相当する多形体(Newsamがゼオライトベータの多形体BおよびCに関して提案したそれらの構造に相当する)で生じたと同時にこのITQ−41材料には多形体A(ゼオライトベータに存在する)が存在しないことを示している。多形体BおよびCが示した個々の回折パターンを図6に示す。
【実施例2】
【0046】
多形体Cと多形体Bの比率が40:60の高純度シリカITQ−41材料の合成
実施例1に従って生じさせた22.3重量%の4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド水溶液(1.090g)と20重量%のKOH(0.178g)に40重量%のコロイド状シリカ(LUDOX AS−40)懸濁液(0.364g)を加えた。次に、前記混合物に10重量%のフッ化アンモニウム溶液を0.687g加えた。その結果として生じたゲルを室温で水が水とシリカの比率が7:8に到達するに必要な量で蒸発するまで撹拌した。この合成ゲルの最終的モル組成は下記であった:
SiO:0.51ADEOH:0.27KOH:0.77NHF:7.8H
前記ゲルをオートクレーブに175℃で14日間かけ、その結果として生じた固体を濾過で母液から分離した後、85℃の蒸留水で洗浄した。その結果として得た固体が示したX線回折パターンを図4に示す(MMALF72)。
【0047】
前記固体に580℃の空気を用いた焼成を6時間受けさせることで、吸蔵されている有機化合物を除去した。その結果として得たITQ−41材料が示したX線パターンは、リートベルト微調整により、40%が多形体C(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)および60%が多形体B(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)で構成されているとして便利に調整可能である。
【実施例3】
【0048】
多形体Cと多形体Bの比率が8:92の高純度シリカITQ−41材料の合成
実施例1に従って生じさせた21.3重量%の4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド水溶液(1.376g)と20重量%のKBr(0.453g)に40重量%のコロイド状シリカ(LUDOX AS−40)懸濁液(0.466g)を加えた。次に、前記混合物に10重量%のフッ化アンモニウム溶液を0.554g加えた。その結果として生じたゲルを室温で水が水とシリカの比率が2:6に到達するに必要な量で蒸発するまで撹拌した。この合成ゲルの最終的モル組成は下記であった:
SiO:0.48ADEOH:0.25KBr:0.48NHF:2.6H
前記ゲルをオートクレーブに175℃で14日間かけ、その結果として生じた固体を濾過で母液から分離した後、85℃の蒸留水で洗浄した。その結果として得た固体が示した
X線回折パターンを図5に示す(MMALF157)。
【0049】
前記固体に580℃の空気を用いた焼成を6時間受けさせることで、吸蔵されている有機化合物を除去した。その結果として得たITQ−41材料が示したX線パターンは、リートベルト微調整により、8%が多形体C(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)および92%が多形体B(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)で構成されているとして便利に調整可能である。
【実施例4】
【0050】
多形体Cと多形体Bの比率が100:0の高純度シリカITQ−41材料の合成
実施例1に従って生じさせた22.7重量%の4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド水溶液(1.391g)と20重量%のKOH(0.213g)に40重量%のコロイド状シリカ(LUDOX AS−40)懸濁液(0.468g)を加えた。次に、前記混合物に10重量%のフッ化アンモニウム溶液を0.595g加えた。その結果として生じたゲルを室温で水が水とシリカの比率が6:8に到達するに必要な量で蒸発するまで撹拌した。この合成ゲルの最終的モル組成は下記であった:
SiO:0.53ADEOH:0.23KOH:0.52NHF:6.8H
前記ゲルをオートクレーブに175℃で14日間かけ、その結果として生じた固体を濾過で母液から分離した後、85℃の蒸留水で洗浄した。その結果として得た固体が示したX線回折パターンを図6に示す(MMALF170)。
【0051】
前記固体に580℃の空気を用いた焼成を6時間受けさせることで、吸蔵されている有機化合物を除去した。その結果として得たITQ−41材料が示したX線パターンは、リートベルト微調整により、排他的に多形体C(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)で構成されているとして便利に調整可能である。
【実施例5】
【0052】
ITQ−41材料に入っている多形体Cの富化
この実施例では、多形体Cと多形体Bの比率=15:85のITQ−41サンプルに多形体CとBの比率が75:25になるように富化を受けさせることでそのような比率を示す最終的ITQ−XX材料を生じさせる。実施例1に従って生じさせた22.7重量%の4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンヒドロキサイド水溶液(0.848g)と20重量%のKOH(0.146g)に多形体Cと多形体Bの比率が15:85のITQ−41を0.125g加えた。次に、前記混合物に10重量%のフッ化アンモニウム溶液を0.360g加えた。その結果として生じたゲルを室温で水が水とシリカの比率が8:1に到達するに必要な量で蒸発するまで撹拌した。この合成ゲルの最終的モル組成は下記であった:
SiO:0.57ADEOH:0.29KOH:0.55NHF:8.1H
前記ゲルをオートクレーブに175℃で14日間かけ、その結果として生じた固体を濾過で母液から分離した後、85℃の蒸留水で洗浄した。その結果として得た固体が示したX線回折パターンを図7に示す(MMALF039)。
【0053】
前記固体に580℃の空気を用いた焼成を6時間受けさせることで、吸蔵されている有機化合物を除去した。その結果として得たITQ−41材料が示したX線パターンは、リートベルト微調整により、75%が多形体C(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)および25%が多形体B(Newsamがベータゼオライトに関して記述した)で構成されているとして便利に調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1に、ベータゼオライトが示した特徴的なX線回折を示す。この図はPerez他、Appplied Catalysts 31(1987)35から取った図である。
【図2】図2に、ゼオライト性質を有するITQ−16の結晶性細孔性材料が示したX線回折パターンを示す。
【図3】図3に、多形体CとBの比率が70:30の高純度シリカITQ−41材料が未焼成形態で示したX線回折パターンを示す。
【図4】図4に、多形体CとBの比率が70:30の高純度シリカITQ−41材料が焼成形態で示したX線回折パターンを示す。
【図5】図5に、図4に示したX線回折パターンのリートベルト微調整を示す。
【図6】図6に、高純度多形体Bおよび高純度多形体Cが示したX線回折パターンを示す。
【図7】図7に、本明細書に記述した実施例2に従って調製したゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料が示したX線回折パターンを示す。
【図8】図8に、本明細書に記述した実施例3に従って調製したゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料が示したX線回折パターンを示す。
【図9】図9に、本明細書に記述した実施例4に従って調製したゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料が示したX線回折パターンを示す。
【図10】図10に、本明細書に記述した実施例5に従って調製したゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料が示したX線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成形態における化学組成が実験式:
x(M1/nXO):yYO:SiO
[式中、
Yは、ケイ素以外の酸化状態が+4の化学元素であり、
Xは、酸化状態が+3の化学元素であり、
Mは、Hまたは電荷がnの無機カチオンであり、
nは、1から3の範囲内の値のいずれかを取り得、
xは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満の値のいずれかを取り得、そして
yは、0に等しいか或はそれ以上から約0.2未満の値のいずれかを取り得る]
で表されるゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料であって、6.9゜、7.4゜、8.3゜および9.6゜2θ角の所に4個の反射が存在する粉末X線回折パターンを示すことを特徴とする細孔性材料。
【請求項2】
YがGe、Ti、Sn、VおよびSnから成る群から選択される少なくとも1種の元素を含んで成る請求項1記載の細孔性材料。
【請求項3】
XがAl、Ga、B、CrおよびFeから成る群から選択される少なくとも1種の元素を含んで成る請求項1記載の細孔性材料。
【請求項4】
MがH、Li、Na、K、Ca2+およびMg2+から成る群から選択される少なくとも1種のカチオンを含んで成る請求項1記載の細孔性材料。
【請求項5】
xが0に等しいか或はそれ以上から約0.05未満である請求項1記載の細孔性材料。
【請求項6】
yが0に等しいか或はそれ以上から約0.1未満である請求項1記載の細孔性材料。
【請求項7】
焼成形態における化学組成が式:
x(HXO):SiO
[式中、
xは、0に等しいか或はそれ以上から約0.02未満の値を有する]
で表される請求項1記載の細孔性材料。
【請求項8】
x=0およびy=0である請求項1記載の細孔性材料。
【請求項9】
リートベルト微細調整によって多形体BとCの組み合わせであるとして適合可能な粉末X線回折パターンを示すことを特徴とする請求項8記載の細孔性材料。
【請求項10】
多形体Bと多形体Cの比率が約100:0から約0:100の範囲内である請求項9記載の細孔性材料。
【請求項11】
多形体BとCの比率が約5:95から約95:5の範囲内である請求項10記載の細孔性材料。
【請求項12】
請求項1記載のゼオライト性質を有する細孔性結晶性材料を合成する方法であって、
a)シリカ(SiO)の源、
構造指向剤としての4,4−ジメチル−4−アゾニウム−トリシクロ[5,2,2,02.6]ウンデコ−8−エンカチオン(このカチオンを本明細書では以降R+として表す)の源、
フッ化物イオンの源、
適宜、Yの源、
適宜、Xの源、および
水、
を含んで成っていて、特に明記しない限り、酸化物に換算して計算して、
/SiOが0から約0.2の範囲、
ROH/SiOが0から約0.01から約3の範囲、
YO/SiOが0から約0.2の範囲、
O/SiOが約1000から約0.25の範囲、
HF/SiOが約0.01から約3.0の範囲、
の組成を有する反応混合物を準備し、
b)前記混合物に約110から約250℃の範囲の温度の加熱を約5から約10の範囲のpHで結晶化が得られるまで受けさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項13】
段階b)の結晶性固体状生成物をその母液から濾過および/または遠心分離で回収した後、約25から約150℃の範囲の温度で乾燥させる請求項12記載の方法。
【請求項14】
段階b)の前記結晶性固体状生成物に焼成を真空下か、空気、Nまたは他の不活性ガス中で約400℃から約1200℃の範囲の温度で受けさせる請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ素の源が非晶質シリカ、コロイド状シリカ、シリカゲル、オルトケイ酸テトラアルキルおよび予成形ゼオライトの中の少なくとも1種を含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記構造指向剤(R+)を前記反応混合物に水酸化物、硝酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩形態の中の少なくとも1つの形態で存在させる請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記フッ化物の源がフッ化水素酸、フッ化アンモニウム、アルカリ金属のフッ化物およびアルカリ土類金属のフッ化物の中の少なくとも1種を含んで成る請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物に更にアルカリもしくはアルカリ土類カチオンの源も含有させる請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリもしくはアルカリ土類カチオンを水酸化物、ハロゲン化物、硝酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩またはこれらの混合物形態で存在させる請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記アルカリもしくはアルカリ土類カチオンの源が水酸化カリウムを含んで成る請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物の組成が更に下記の比率:
A/SiOが約3から約0.01の範囲、および
A/ROHが0から約5の範囲
[ここで、Aは、アルカリもしくはアルカリ土類金属カチオンを表す]
を示すことも特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載のゼオライト性質を有する結晶性細孔性材料を流体分離またはイオン交換
工程においてモレキュラーシーブとして用いるか或は触媒、触媒の成分または触媒への添加剤として用いる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189539(P2008−189539A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115814(P2007−115814)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月30日(http://www.angewandte.de)
【出願人】(506417681)アルベマール・ネーザーランズ・ベーブイ (20)
【Fターム(参考)】