説明

ゼオライト成形体

【課題】建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等、遠赤外線放射の利用を主とする材料として有用なゼオライト成形体を提供する。
【解決手段】建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、少なくともゼオライトの一部が溶融化せしめられているもの。また、建材、岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理材等として用いるゼオライト成形体であって、ゼオライトが溶融化せしめられた溶融化ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトとは、化学的に見るとアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を包含する含水アルミノケイ酸塩であり、結晶構造の中に微細な孔(細孔)を有するため、イオン交換機能,吸着機能,触媒機能などを持つ。この機能により、調湿,有機物の吸着・分解,ホルムアルデヒドの分解,防臭,NOxやSOxの分解などの、所謂ゼオライト効果を発揮する。更に、副次効果として、軽量化,断熱などの効果を発揮する。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2003−48788号公報)には、上記ゼオライト効果に着目し、ゼオライト粉末に水やバインダー(結合材)等を加えて混練して所定形状に成形した後、350〜850℃の温度で焼成して成るゼオライト成形体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−48788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記引用文献1に開示されるように、ゼオライト成形体を焼成する際の温度の上限は一般的に850℃程度とされている。これはゼオライトが溶融化して結晶性が失われ、上記ゼオライト効果を発揮するために必要な細孔が塞がれることを忌避したものと考えられる。
【0006】
即ち、従来は、上記ゼオライト効果のみが着目され、このゼオライト効果を失わせないように可及的にゼオライトが溶融化しない温度で焼成することが考えられており、溶融化したゼオライトには何ら着目されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記溶融化したゼオライトに着目し、この溶融化したゼオライトに種々の利点があることを見い出し、特に、建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等、遠赤外線放射の利用を主とする材料として有用なゼオライト成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、少なくともゼオライトの一部が溶融化せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載のゼオライト成形体において、ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形した後、1000℃以上の温度で焼成してゼオライトを溶融化せしめたことを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,酸化マグネシウム,水酸化マグネシウム若しくは珪酸ナトリウムのうちの1種若しくは複数種の無機系バインダーが採用されていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0012】
また、建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、ゼオライトが溶融化せしめられた溶融化ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形して成ることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0013】
また、請求項4記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、消石灰が採用されていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0014】
また、請求項4記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,酸化マグネシウム,水酸化マグネシウム若しくは珪酸ナトリウムのうちの1種若しくは複数種の無機系バインダーが採用されていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0015】
また、請求項6記載のゼオライト成形体において、前記溶融化ゼオライト粉末とバインダーとの混合物にゼオライト粉末を混合して成るものであることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0016】
また、請求項7記載のゼオライト成形体において、前記混合物にゼオライト粉末を混合して成るものを350〜850℃の温度で焼成したものであることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、前記ゼオライト(溶融化したものを除く)に銀,銅,亜鉛若しくは錫のうちの1種若しくは複数種のイオンが担持されていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0018】
また、請求項1〜9いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、炭化物が添着せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0019】
また、請求項1記載のゼオライト成形体において、前記ゼオライト粉末とアルミニウム若しくはマグネシウムとの混合物を所定形状に成形した後、1200℃以上の温度で焼成してゼオライトを溶融化せしめて成るものであることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0020】
また、請求項1〜11いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、有機質若しくは無機質の繊維が混入せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0021】
また、請求項1〜12いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、板状体若しくは球状体であることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【0022】
また、請求項1〜13いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、温度35℃以上で、少なくとも波長5〜7.5μmでの遠赤外線放射率が、黒体の遠赤外線放射率に比して0.8以上であることを特徴とするゼオライト成形体に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上述のように構成したから、非吸水性,硬質性,耐熱性,遠赤外線放射性及びデザイン性に秀れ、特に、建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等、遠赤外線放射の利用を主とする材料として有用なゼオライト成形体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
ゼオライトを溶融化せしめて結晶性を失わせる(細孔を塞ぐ)ことで、以下の特性が発揮される。
【0026】
(1)非吸水性:汗,老廃物,臭い等を吸着しないため、清掃が容易となる。
【0027】
(2)硬質性:未焼成の原石に比し圧縮等の強度や耐久性が高まる。
【0028】
(3)耐熱性:高温焼成によるため耐熱・耐火性に秀れたものとなる。
【0029】
(4)遠赤外線放射性:黒体に近い高率で遠赤外線を放射する。
【0030】
(5)デザイン性:高温焼成で褐色化し、原色の白色とは異なる趣を与える。
【0031】
特に、高い遠赤外線放射率を有し、温熱効果(身体を芯から温めたり、風呂の湯をまろやかにしたり、魚肉・獣肉を内部から焼いたりする効果)や、有機物分解効果(外部からエネルギーを得て水分子を励起させ、反応性が高く酸化分解力を有する活性酸素を創出して臭気分子や雑菌等を分解する効果)を良好に発揮することになる。
【0032】
また、全てのゼオライトが溶融化せず、細孔が塞がれていないゼオライトが残存する場合には、この結晶性を有するゼオライトにより物質の吸着機能,イオン交換機能及び触媒機能(所謂ゼオライト効果)も発揮される。
【0033】
従って、建築物の内装材等として用いる建材,岩盤浴装置の遠赤外線放射体として用いる岩盤浴用敷材,直火焼調理器材として有用な材料となる。
【実施例】
【0034】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、少なくともゼオライトの一部が溶融化せしめられているものである。
【0036】
尚、本実施例において溶融化とは、1000℃以上の温度で加熱されることで、ゼオライトのほとんどが溶融して(その後固まり)ゼオライトの細孔が閉塞されゼオライトとしての結晶性が消失した状態を言う。
【0037】
ゼオライトを高温焼成した場合、以下のような相転移が起こると想定されている。
【0038】
(1)750℃程度から溶融し始め非晶化(アモルファス相)が始まり、1000℃程度で完全に非晶化(溶融化)する。
【0039】
(2)1065℃程度からアモルファス相はムライト相として結晶化を開始し、1120℃程度ではβ−クリストバライトとムライトと現出し1350℃程度まで増加する。
【0040】
(3)1500℃以上になるとガラス化(非晶化)する。
【0041】
そこで、本実施例においては、1000℃以上で焼成されほとんど全てのゼオライトが溶融化せしめられてゼオライトとしての結晶性が消失した溶融化ゼオライトを用いる。
【0042】
例えば、ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形した後、1000℃以上の温度で焼成することで形成しても良いし、予めゼオライトが溶融化せしめられた溶融化ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形することで形成しても良い。
【0043】
本実施例は、具体的には、(溶融化せしめられていない)ゼオライトと水とを混合してスラリーとし、続いて、含水率が所定の割合になるまで乾燥させて粉末化し、続いて、この粉末化したゼオライトと無機系バインダーとを混合し、続いて、この混合物を金型で加圧成形した後、炉で焼成することで形成される。
【0044】
ゼオライトとしては、比表面積を大きくし、ゼオライト効果を上げるため、直径60μm以下のものが採用されている。尚、ゼオライトは、前記直径60μm以下のものを固めて粒状(直径1mm以下)にして使用しても良い。
【0045】
具体的には、天然ゼオライト,人工ゼオライト若しくは合成ゼオライトのいずれを用いても良いが、本実施例においては、石炭灰,製紙スラッジ焼却灰,活性汚泥焼却灰若しくはゴミ焼却灰などから作られる人工ゼオライトでは有毒な重金属が含まれるおそれがあることから、天然ゼオライトが採用されている。
【0046】
無機系バインダーとしては、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重曹)とから成るものが採用されている。
【0047】
炭酸ナトリウムは結合機能を有し、ゼオライト同士を強固に連結する。また、焼成温度が低くても、炭酸ナトリウムを入れないで高温で焼成したものと、強度・表面付着の白色粉の解消などで同一効果を得られる融点降下機能を有することが確認されている。
【0048】
炭酸水素ナトリウムは結合機能を有し、ゼオライト同士を強固に連結する。また、成形体内に空隙を形成する発泡機能も有するため、この空隙によりゼオライトと空気との接触面が増えることで、ゼオライト効果を向上でき、また、成形体の軽量化を図ることができる。発泡機能は焼成温度により炭酸ナトリウム,二酸化炭素,水に分解されることに起因するものである。更に、焼成温度が低くても、炭酸水素ナトリウムを入れないで高温で焼成したものと、強度・表面付着の白色粉の解消などで同一効果を得られる融点降下機能を有することが確認されている。特に、炭酸水素ナトリウムではこの融点降下機能が大きく、加水し含水率を調整したゼオライトを用いた場合は800℃でもバインダーを入れないときの1000℃に相当する効果を得られることが確認されている。
【0049】
従って、ゼオライト同士を強固に連結して例えば建物内壁,トンネル覆工壁は勿論、耐候性の求められる建物外壁,防音壁等の壁面等に用いるに十分な強度を発揮できる。
【0050】
尚、上述のように炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム(重曹)のみではなく、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウム若しくは珪酸ナトリウム(水ガラス)とから成る無機系バインダーを採用しても良い。
【0051】
酸化マグネシウム,水酸化マグネシウムは結合機能を有し、ゼオライト同士を強固に連結する。また、融点降下機能を有する。尚、水酸化マグネシウムは焼成過程で酸化マグネシウムとなり、結合材として作用する。
【0052】
珪酸ナトリウムは、上記結合機能及び融点降下機能を有し、更に、高温焼成時にガラス化し、表面装飾として外観を良好にするという特性を有する。
【0053】
また、ゼオライトと無機系バインダーとの混合物には、強度を向上させるため、更に、繊維やベントナイト等を混入しても良い。繊維としては、有機質繊維若しくは無機質繊維を採用することができ、該繊維を混入することで引っ張り強度・靭性が向上する。繊維の配合割合は、加水前のゼオライト100重量部に対して1.0〜10重量部に設定すると良い。1.0重量部より少ないと強度向上に寄与せず、10重量部より多いと繊維凝集物(ダマ)ができ易く、混練作業の効率が悪くなり、また、材質の均一性が確保しにくくなると共にゼオライトの割合が少なくなり、ゼオライト効果が相対的に低下する。
【0054】
尚、有機質繊維としては、アラミド繊維,ビニロン繊維,ポリプロピレン繊維やパルプ繊維(セルロール)等を採用すると良い。また、無機質繊維としては、炭素繊維,ガラス繊維や鋼繊維等を採用すると良い。特に、焼成温度を高く設定する場合には、耐熱性,強度及び経済性等の面から、炭素繊維,ガラス繊維や鋼繊維等の無機質繊維を採用するのが好ましい。
【0055】
ゼオライトと無機系バインダーとの配合割合は、本実施例においては、加水前のゼオライト100重量部に対して、無機系バインダー0.5乃至10重量部を混合している。無機系バインダーの配合割合が0.5重量部未満では、バインダーとしての効果が小さく強度確保が困難となる。また、配合割合が10重量部を越えると、超えた分は強度向上に貢献しないだけでなく、ゼオライトの細孔を閉塞しゼオライト効果が低下してしまう。
【0056】
以下、本実施例を更に詳細に説明する。
【0057】
ゼオライトの重量比で10〜40%程度の水を加えることでスラリー化させる。具体的には、ある程度の水分を含ませ且つ乾燥を容易にするために25〜30%程度の水を加えてスラリー化させるのが好ましい。本実施例においては、炭酸ナトリウムを水に溶いて入れている。
【0058】
続いて、スラリー化させたゼオライトを所定の含水率になるまで乾燥させた後、粉末化する。本実施例においては、含水率が約28%になるまで乾燥させる。
【0059】
続いて、乾燥させ粉末化されたゼオライトに無機系バインダー(炭酸水素ナトリウム粉末)を混合して混合物を作製する。
【0060】
続いて、混合物を金型に入れて加圧成形する。具体的には、金型を用いて4〜30N/mm(=40〜300kgf/cm)で加圧して板状に成形する。加圧力が4N/mm未満ではゼオライトの結合力が小さく十分な結合強度を得られない。また、加圧力が30N/mmより大きいと圧縮力のかけ過ぎでゼオライトの細孔を閉塞するおそれがあり、且つ商業ベースから言っても設備が過大となり、好ましくない。
【0061】
続いて、板状の加圧成形体を炉に入れて約1000℃で焼成することでゼオライト成形体を得る。尚、1000℃以上で焼成した場合にはゼオライトの略全部が溶融化しゼオライト効果はほとんど発揮されなくなるが、遠赤外線放射率は高い状態で保持される。この場合、結晶性ゼオライトが有する吸水性が失われるため、例えば風呂場のタイルや直火焼調理器(炭等により加熱して肉等を内部から焼くための発熱体)等として好適な材料となる。
【0062】
尚、焼成されたゼオライト成形体は、温度35℃以上で、波長5〜7.5μmでの遠赤外線放射率が、黒体の遠赤外線放射率に比して0.8(80%)以上と高い遠赤外線放射率を有することを確認している(図1参照)。具体的には、5〜7.5μm付近の波長領域においては90〜95%と高放射率であり、浸透性が強い4〜14μm付近の育成光線の波長領域では、黒体に近い物質性状を示す。
【0063】
具体的には、ゼオライト成形体は、建物の内外壁,防音壁,トンネル覆工壁等の壁面に効果的に用いるため、20cm×20cm×5〜10mm程度の板状となるように成形している。この板状ゼオライト成形体は、ゼオライトを用いるため、軽量で運搬や取り付けの利便性にも富むことになる。尚、本実施例は板状に形成しているが、球状(粒状)等、他の形状に形成しても良いのは勿論である。
【0064】
また、本実施例においては、上述のようにゼオライトに加水してスラリー化せしめて成形体を形成しているが、加水しなくても良い。例えば、無機系バインダーとして炭酸水素ナトリウムのみを用いた場合等には、ゼオライトと炭酸水素ナトリウムとを混合せしめ、続いて、金型で加圧成形した後、炉で焼成することで形成する。炭酸水素ナトリウムは加水すると発泡する性質があるためである。
【0065】
また、ゼオライトに、銀,銅,亜鉛若しくは錫のうちの1種若しくは複数種のイオンを担持させると、結晶性ゼオライトが吸着した雑菌を殺菌する作用を発揮するため、これらを担持させる構成としても良い。
【0066】
上記金属イオンを担持させる方法としては、例えば粉末化前の天然ゼオライト原石を常温で硝酸銀の溶液中に浸け込んでイオン交換したりすることで行うことができる。
【0067】
また、炭化物(備長炭等の木炭,竹炭若しくは石炭などの燻煙炭または石炭,ヤシ殻若しくはオガクズから製造した活性炭)を添着せしめる構成としても良い。具体的には、ゼオライト成形体に接着材で接着したり、表面に適量の炭素原料を振りかけてゼオライトが溶融した段階でゼオライト内部に溶け込むようにしたり、釉薬として表面に塗布したりして添着せしめることができる。尚、焼成の際に炭素が燃えないように、還元焼成若しくは酸化焼成では炉内を窒素雰囲気として行うのが好ましい。
【0068】
この場合、上記炭化物が、遠赤外線放射率平準化効果,有害物質の吸着効果及びマイナスイオン効果を発揮することで、遠赤外線放射効果及びゼオライト効果と相俟って一層良好な遠赤外線放射効果及び有害物質除去効果を発揮できることになる。尚、遠赤外線放射率平準化効果とは、炭化物は育成光線の波長領域では放射率が75〜85%程度とフラットな状態を維持することから、ゼオライト石材の遠赤外線放射率が落ちる波長領域を補完する効果をいう。
【0069】
また、1000℃以上で焼成したゼオライト成形体は硬質製に富むがクリストバライトが多く存在するため、加熱して冷却する過程の573℃及び220℃付近でさめ割れを起こす。即ち、熱膨張に弱い性質を持つ。そこで、ゼオライトは、アルミニウム若しくはマグネシウムを加えて1000℃以上で焼成すると相転移してコージェライト(2MgO・2Al・5SiO)となることを利用しても良い。コージェライトは熱膨張性が小さいことから、1000℃以上で焼成したゼオライト石材のさめ割れを防止することができる。
【0070】
具体的には、1000℃以上で焼成する際には、アルミニウム及びマグネシウムを混入せしめて1200℃以上の温度(好ましくは1300〜1350℃)で焼成・溶融化せしめることで、ゼオライトをコージェライトに相転移せしめても良い。例えば、コージェライトの成分である、SiOはゼオライト(SiO・Al・NaO・KO・CaO・MgO)から得ることができ、Mgはタルク(滑石)などから得ることができ(粉末状)、Alは水酸化アルミニウムなどから得ることができる(粉末状)。従って、ゼオライトに化学理論組成に応じた量のアルミニウム及びマグネシウムを混入せしめて焼成することで、化学理論組成のコージェライトを得られることになる。
【0071】
また、本実施例は、溶融化していないゼオライト粉末を用いて混練・成形の後、焼成して形成しているが、予めゼオライトが溶融化せしめられた溶融化ゼオライト粉末を(一部若しくは全部に)用いて混練・成形することで形成しても良い。この場合には、バインダーとして上記のものを採用しても良いし、上記バインダーに限らず、例えば、消石灰を採用しても良い。また、成形後、焼成しても良いし焼成しなくても良い。尚、焼成する場合には、既に溶融化せしめられたゼオライト粉末を用いている関係上、350〜850℃程度の低温焼成でも良い。
【0072】
消石灰を用いる場合には、例えば、溶融化ゼオライト粉末,ゼオライト粉末,(混練に必要な)少量の水,消石灰,二酸化珪素,繊維材(すさ)及び糊材を混練し、固化せしめることで所定寸法に形成する。具体的には、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH))は、炭酸ガスと常温で経時的に反応して炭酸カルシウムの硬化体を作る(Ca(OH)+CO→CaCO+HO:発熱反応)。この反応は、長期間にわたり上記反応は徐々に続行されるため、経時的に強度低下を阻止できることになる。尚、炭酸カルシウムの硬化体は吸湿性を有し、また、ゼオライトの細孔を塞がない。
【0073】
この消石灰は、ゼオライト粉末100重量部に対して30〜150重量部程度混入すると良い。常温で固化させるため、加熱する場合より多少多めに入れる。また、消石灰が30重量部未満であると常温での結合が不十分となりひび割れ等が発生し易くなり、150重量部より多いと、ゼオライト量が少なくなり、ゼオライト効果が不十分となる。
【0074】
また、更に二酸化珪素(SiO)を混入しても良い。二酸化珪素は、消石灰と常温でゆっくりと反応することにより(ポゾラン反応)、結合力を持つ珪酸カルシウム化合物を生成する。このため、消石灰の炭酸固化反応と合わせて結合力を高めることができる。尚、二酸化珪素は長石・珪砂の粉末から得られるため、たとえ余剰があっても骨材としてそのまま活用できる。
【0075】
即ち、消石灰による結合は、空気中の炭酸ガスに基づくため直ぐには起こらず、また、炭酸化反応により水が生成される。そのため、消石灰のみで結合する場合、初期強度が不十分となり易く、微細なクラックが発生し易い。初期の結合を補完する目的でポゾラン反応を利用しても良い。
【0076】
この二酸化珪素は、消石灰100重量部に対して5〜30重量部程度混入するのが好ましい。30重量部より多いと、ゼオライト量が少なくなり、ゼオライト効果が不十分となる。
【0077】
糊材としては、海藻糊(角又),米粥,MC(メチルセルロース),CMC(カルボキシメチルセルロース)等を用いることができる。特に、海藻糊(角又)はセメントや焼石膏と異なり、ゼオライトの細孔を塞ぐことがなく、また、自然にやさしい材料である。
【0078】
繊維材としては、有機質繊維若しくは無機質繊維またはその双方を用いることができる。この繊維材を混入せしめることで、強度(引っ張り強度及び靭性)を向上させることができる。具体的には、有機質繊維としては、ゼオライト成形体に空隙を形成する麻すさ,藁すさ若しくはパルプ繊維(セルロース)等か、より強度向上に貢献するアラミド繊維,ビニロン繊維若しくはポリプロピレン繊維等を用いると良い。また、無機質繊維としては、炭素繊維,ガラス繊維若しくは鋼繊維等を用いると良い。
【0079】
これら繊維材の混合割合は、ゼオライト粉末100重量部(加水前)に対して1.0〜10重量部とするのが好ましい。ゼオライト粉末に比し1%以下では強度向上に寄与しない。また、10%以上では、繊維凝集物であるダマができやすく、混練作業の効率が悪くなり、材料の均一性が確保しにくくなるほか、主要材料のゼオライトの割合が少なくなり、ゼオライト効果が相対的に低下する。
【0080】
尚、上述のように、溶融化ゼオライト粉末とゼオライト粉末とを用いて350〜850℃程度で焼成した場合には、ゼオライトの全てが溶融化する訳ではないから、一部に結晶性を有するゼオライトも残存しており、この残存する結晶性ゼオライトにより上記ゼオライト効果が発揮される。従って、このゼオライト効果と遠赤外線放射効果とにより、ゼオライトが吸着した有機物(雑菌等)を分解できることになり、例えば建築物の内装材として用いた場合に室内の雑菌や臭い等を良好に除去できる。
【0081】
本実施例は、上述のように構成したから、ゼオライトを溶融化せしめて結晶性を失わせる(細孔を塞ぐ)ことで、非吸水性,硬質性,耐熱性,遠赤外線放射性及びデザイン性に秀れ、特に、高い遠赤外線放射率を有し、温熱効果(身体を芯から温めたり、風呂の湯をまろやかにしたり、魚肉・獣肉を内部から焼いたりする効果)や、有機物分解効果(外部からエネルギーを得て水分子を励起させ、反応性が高く酸化分解力を有する活性酸素を創出して臭気分子や雑菌等を分解する効果)を良好に発揮することになる。
【0082】
また、全てのゼオライトが溶融化せず、細孔が塞がれていないゼオライトが残存する場合には、この結晶性を有するゼオライトにより物質の吸着機能,イオン交換機能及び触媒機能(所謂ゼオライト効果)も発揮される。
【0083】
従って、本実施例は、建築物の内装材等として用いる建材,岩盤浴装置の遠赤外線放射体として用いる岩盤浴用敷材若しくは炭等により加熱して肉等を内部から焼くための直火焼調理器として特に有用なゼオライト成形体となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施例の遠赤外線放射率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、少なくともゼオライトの一部が溶融化せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項2】
請求項1記載のゼオライト成形体において、ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形した後、1000℃以上の温度で焼成してゼオライトを溶融化せしめたことを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項3】
請求項2記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,酸化マグネシウム,水酸化マグネシウム若しくは珪酸ナトリウムのうちの1種若しくは複数種の無機系バインダーが採用されていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項4】
建材,岩盤浴用敷材若しくは直火焼調理器材等として用いるゼオライト成形体であって、ゼオライトが溶融化せしめられた溶融化ゼオライト粉末とバインダーとを混合し、所定形状に成形して成ることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項5】
請求項4記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、消石灰が採用されていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項6】
請求項4記載のゼオライト成形体において、前記バインダーとして、炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,酸化マグネシウム,水酸化マグネシウム若しくは珪酸ナトリウムのうちの1種若しくは複数種の無機系バインダーが採用されていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項7】
請求項6記載のゼオライト成形体において、前記溶融化ゼオライト粉末とバインダーとの混合物にゼオライト粉末を混合して成るものであることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項8】
請求項7記載のゼオライト成形体において、前記混合物にゼオライト粉末を混合して成るものを350〜850℃の温度で焼成したものであることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、前記ゼオライト(溶融化したものを除く)に銀,銅,亜鉛若しくは錫のうちの1種若しくは複数種のイオンが担持されていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、炭化物が添着せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項11】
請求項1記載のゼオライト成形体において、前記ゼオライト粉末とアルミニウム若しくはマグネシウムとの混合物を所定形状に成形した後、1200℃以上の温度で焼成してゼオライトを溶融化せしめて成るものであることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、有機質若しくは無機質の繊維が混入せしめられていることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、板状体若しくは球状体であることを特徴とするゼオライト成形体。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか1項に記載のゼオライト成形体において、温度35℃以上で、少なくとも波長5〜7.5μmでの遠赤外線放射率が、黒体の遠赤外線放射率に比して0.8以上であることを特徴とするゼオライト成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−320807(P2007−320807A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152802(P2006−152802)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000154565)株式会社福田組 (34)
【Fターム(参考)】