説明

ゼラチンと有機塩との化学的架橋から得られる新たな原材料ファミリーの合成及び適用

【課題】ゼラチンと有機塩との化学的架橋による新規原材料ファミリーの合成及び適用。
【解決手段】本発明は、物理学、化学、及び生物学分野における、新たな原材料の適用にも関し、化学反応における生体触媒の固定化、制御された薬物デリバリー、化学種の検出のためのセンサー/バイオセンサー、導体/半導体材料の製造、電気化学(ガルバニセル、若しくは電解セル)又はその一部の支援として当該新たな原材料の合成方法、及びその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、タンパク質と有機塩との架橋結合から得られる新規原材料ファミリーの合成及び適用に関する。本発明は、化学反応における生体触媒固定化、制御された薬物デリバリー、化学種の検出を目的としたセンサー/バイオセンサーの製造、導体/半導体材料、電気化学セル(ガルバニセル又は電解セル)、あるいはその一部の製造ための支援として、前記新規原材料の合成方法、及びその方法を開示する。
【0002】
化学及び生物学の分野、すなわち化学的反応及び生物学的反応は、本発明の適用の範囲内である。前記新規原材料の使用の標的となる産業部門は、化学工業、及びファインケミストリー、バイオテクノロジーの範疇内の生物転換方法、薬物、制御された薬物デリバリー、細胞増殖、組織再生の如き領域における生物学的方法、生体接着としての使用法、電子装置移植片としての使用法、ナノテクノロジー、バイオセンサーとしての使用法、導体/半導体材料としての使用法、電気化学セル又はセルの一部としての使用法を含む。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
タンパク質は、組織、及び生体システムの整合性において基本的な役割を担い、分子レベルでそれらの組織全体に関与する。タンパク質の役割は、環境変化に応答する能力に深く関連し、このことは、タンパク質の天然構造、並びにゲル化として知られる過程における3次元エラスチン網の凝集及び形成に見られる変化により反映される。
【0004】
工業的な点を考慮すると、ゲルは、いくつもの異なる化合物のためのコーティング剤として作用し得るので、非常に重要である。例えば、食品産業において、ゲルは、食品の構造、テクスチャー、及び安定性を与え、食物マトリクス中の多くの水及び他の小分子の保持をも提供する。これらのゲルの内最も一般的なものは、ゼラチンゲルである。
【0005】
ゼラチンは、アルカリ又は酸の前処理を用いてコラーゲンの熱変性から作られ得る天然のポリマーである。通常、ゼラチンは、その構造中に多くのアミノ酸、特にグリシン、プロリン、及び4−ヒドドキシプロリンを含む。ゼラチンは、300〜4000アミノ酸を含む三重らせん構造を有するもののうちの各々1つである(1)。
【0006】
ゼラチンは、遊離発熱性形態において商業的に入手可能であり、その機械的及び生分解性特性により医療及び薬学適用において幅広く使用される(2)。これらの特性は、製剤処方(3)、制御されたドラッグデリバリー、組織工学、及び生体接着(4)における成分としての使用のために、ゼラチンを非常に安全な原材料にさせる。
【0007】
ゼラチンのいくつかの特性、特に機械及び温度特性を増強するために、架橋結合が頻繁に必要とされる。架橋結合の2つの型は、化学的、あるいは物理的に形成され得る。その化学的なものは、アルデヒド(5)、エポキシド、イソシアン酸塩、アシルアジド、カルボイミド(6)、及び酸化糖(7)の如き有機分子とゼラチンを反応させることを含む。
【0008】
その物理学的なものは、熱処理又はUV領域における放射を含み、ここで脱水が実施される。さらに最近の手順は、組織中の制御ドラッグデリバリーに関連する文献に記載され、適度な度合いの架橋結合、及び原材料の生分解性の観点からの良好な反応を提供するマイクロ波照射技術を使用する(8)。
【0009】
ナノ繊維の製造における適用についての文献中に幅広く言及されている他の技術は、グルタルアルデヒド気体による架橋結合を伴った電気めっきである、ここで、当該架橋結合は、ナノ繊維の形成と同時に行われる(9)。
【0010】
これらの原材料は、イオン液体(IL)として一般的に知られる溶媒と架橋結合/混合され得る、なぜならばそれらは、通常有機性のものである陽イオン及び無機性又は有機性の陰イオンであるイオンを完全に含むからである(10)。それらがイオンからなるという事実に起因して、これらの溶液は、測定可能な不安定さはない(11)。それらの熱安定性(多くの既知の液体について300℃超である)、イオン伝導率、超臨界CO(scCO)中の不溶性、並びにヘキサン、エチルエーテル及び水中の難溶解性は、二相系(二相性)を作り出すことを可能とし、それらに広範な有機分子、及び無機分子、並びに遷移金属の複合体に関して溶解容易性を与える(選択された陽イオン及び陰イオンに依存して、それらが超臨界CO、カルボニル化合物、アルキルハリド、及びアルコールに可溶化することが特に知られる。)。これらの特性は、それらを従来の溶媒に代わる環境的にふさわしい代替物とする(10)。これらの液体の他の優位性は、それらが適切に調整される可能性である、すなわち、それらの特性は、反応必要条件に従って、調整され得る。
【0011】
イオン液体は、多くの異なる適用において使用され得る、すなわち、生体触媒及び化学触媒作用(10)を含む化学過程中の再利用可能な反応媒体として、CO捕獲のためのバイオセンサー(12)として、TOS水性型とscCOTOS水性型(14)の2相抽出における従来の有機溶媒(TOS)の代用に関して、クロマトグラフィー(14)における固定相として、支持された液体膜(16)を使用する選択的輸送のため、パーベーパレーション(17)において、セルロース溶解において(18)、電解質として、並びに燃料電池において(19)使用され得る。
【0012】
最も広範に使用されるイオン液体を考慮する際に、その引例は、陽イオンユニットのいくつかの型、特に、ホスホニウム(20)、アンモニウム(21){キラル(22)を含む}、スルホニウム(23)、ピリジニウム及び8−アルキル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン[アルキル−DBU](24)、アルキルグアニジウム(25)、異なるアミノ酸(26)である;しかしながら、最も一般的なユニットは、疑いようもなく、1,3−ジアルキルイミダゾリム(im)(27)である。陰イオンを考慮する限り、ClO、NO、BF、PF、アルキル(28)、及びアリールスルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、並びにさらにカルボランへの引例がある。
【0013】
他の化合物と溶質については言及されているけれども、ILとゼラチンの組み合わせに関してはいくつかの文献のみが両方の混合の可能性を言及しており、我々のアプローチとは異なる化学工程を使用している。
【0014】
特許データベースで実施されたサーチは、本発明に関するいくつかの文献を示した。Olsonら(EP1315033A1、EP1315032A1)は、フォトサーモグラフィーシステムのカップリング溶剤としてのILの使用、及び画像補正器としてのILの使用も記載する。
【0015】
Watanabeら(EP1675211A1)は、光電子コンバーターとして使用される電解質の開発のためにILの適用を記載する。この過程は、これらの電解質において使用されるILの1つとしてBMIMDCAを含む。
【0016】
Baroliら(US特許2006/0222677A1)は、光重合過程の間に活性化合物の保護剤として使用される材料の形成方法を開示する。本発明において、ゼラチンと有機塩との化合物が使用される。しかしながら、その方法とその材料の最終形成物の両方は、我々の原材料と明らかに異なる。我々の発明は、上述のものとは異なる。なぜならば、我々の方法においては原材料の製造のために重合は実施されないからである、というのは、われわれの原材料は、2つの種の架橋結合によりもたらされるからである。
【発明の開示】
【0017】
本発明は、両種の架橋構造によりもたらされる新規原材料ファミリーの合成、及び適用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の詳細説明
本発明は、タンパク質と有機塩との架橋結合による新規原材料のファミリーの合成、及び適用を含む。
【0019】
スキーム(I)は、前記原材料の合成機構を示す。
【化1】

【0020】
上記式中、Xは塩の陰イオンを示し、Yは塩の陽イオンを示し、有機塩の異なる型に関連していくつかの起源(動物、微生物、植物)のゼラチンが使用され得る。この型の原材料を得るための共通の手順は以下の通りである。
【0021】
塩溶液に、撹拌下、一部のゼラチンを添加し、固形の、均質な、及び弾性のゼラチンを生じさせる。添加するゼラチンの量は、各場合に使用される塩溶液の特性に関係する。それ故、添加されたゼラチンの量は、使用される有機塩の型に依存し、結果的にその水溶性に依存するだろう。
【0022】
前記使用される塩は、水に溶解されるだろう。その濃度は、塩の水溶性に依存し、4〜50%(w/v)となるだろう。この時点で、弾性及び固相を得るまで、前記ゼラチンは系に組み込まれる。ゼラチンの添加は、前記混合物がゼラチンを添加する各あいまに均質のままであるかどうかを確かめるために、少しずつ実施されるだろう。ある場合において、全相のよりよい均質化を提供するため、並びにゼラチンと塩との改良された相互作用を可能とするために、当該系に水を添加しなければならない。
【0023】
この方法の間、温度、イオン強度、及びpHの如きパラメーターが測定されるだろう。温度は、全過程において制御しなければならないパラメーターである。これは、前記塩溶液中のゼラチンの溶解性、並びに架橋結合に影響を与える。この方法は、60℃〜90℃の温度でより早く進むが、20℃〜90℃でも働くだろう。イオン強度は、前記ゼラチンと塩との架橋結合の度合いに直接的に関係する。それ故、イオン強度は、ゼラチンの量、及び原材料を製造するために使用される塩の型の両方に依存する。
【0024】
典型的な方法において、前記塩/ゼラチンの比率は、0.5〜10の幅であり、対応するイオン強度は1M〜60Mの幅だろう。当該塩の型は、前記混合物のpHに影響を与えるので、原材料を製造する前に前記溶液のpHを調べることが重要となる。原材料は、いずれかのpH値で製造され得るが、製造方法はpH値が5〜9だとよりよく実施されるだろう。考えられる他の態様は、前記混合物の撹拌である。この撹拌は、十分に均質化された全ての相を作るだろう。いくつかの型の撹拌(軌道撹拌、磁気撹拌、機械撹拌)を試した。それらの全ては非常に満足のいく結果をもたらした。
【0025】
原材料の最終型は、ゲル化が生じる表面により決定される。それ故、形成された原材料の分散がある場合、薄膜、コンパクトブロック、若しくは粒子が得られる。色、不透明度、弾力性、及び伝導性の如き原材料の物理的特性は、使用されるイオン液体の型、及び当該原材料の最終型に依存する。
【0026】
それ故、本発明の第1の目的は、ゼラチンユニットと有機塩(I){式中、Xは塩の陰イオンを示し、Yは塩の陽イオンを示す}との架橋結合が、撹拌(磁気撹拌、軌道撹拌、機械撹拌など)の下、20〜90℃の温度で、使用されるゼラチン起源に依存して、異なるイオン強度(0.01〜1000M)及び/又は異なるpH(1−14)の水性溶液中で実施されることを特徴とする、ゼラチン及び前記有機塩ベースの新規原材料の合成である。
【0027】
【化2】

【0028】
前記ゼラチンは、A、B、I、II、III、IV型の異なる型からの動物、微生物又は植物由来のものとなり得る。
【0029】
前記有機塩は、液体又は固体状態となり得、キラル又はアキラルとなり得る。
【0030】
前記有機陰イオンは以下の:
(a)ハロゲン(Cl、Br、I、F)、亜リン酸塩及びリン酸塩(PF6、H2PO2、H2PO4、PO3)、ホウ酸塩(BF4、BO2、BO3)、亜硝酸塩及び硝酸塩(NO3、NO2)、硫酸塩(HSO)、シアン化物及びシアン酸塩(CN、SCN、CNO)、シアナミド(C)、ジシアナミド(N(CN))、アジド(N)、炭酸塩(HCO)、臭素酸塩(BrO)、ヨウ素酸塩(IO、IO)、亜塩素酸塩及び塩素酸塩(Cl、ClO、ClO、ClO);
(b)ZnCl、ZnBr、SnCl、SnBr、FeCl、FeBr、NiCl、AuBr、AuBr、AuCl、GaCl、AlCl、AlCl、AlCl10の如き金属ハロゲン化物;
(c)周期表、好ましくはIb〜VIIb群、IIIa〜VIa群、及びVIII群の他の元素、より好ましくはヒ素(AsF、HAsO、AsO)、アンチモン(SbF、SbO)、クロム(HCrO)、テルリウム(HTeO、HteO)、セレニウム(HSeO、SeCN)、ニオビウム(NbO)、タリウム(TaO)、ルテニウム(RuO)、マンガン(MnO)及びレニウム(ReO)、ビスマス(BiO)、バナジウム(VO)及び銀(Ag(CN))の如き成分を含む、化合物;
から選択され、
【0031】
(ii)有機陰イオンは、以下の:
(a)カルボン酸塩、チオカルボン酸塩、カルバミン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、スルホン酸塩、オルガノ硫酸塩、オルガノスルファミン酸塩、オルガノリン酸塩、ホスホン酸塩、チオホスホン酸塩、及び以下の一般式:
【化3】

{式中、ZはCY、SO、P(Y)R又はAs(Y)Rであり;
Yは、各存在と独立してO又はSであり;及び
とRは、以下:
(a1)H−又はE−、ここで、Eは、F、Cl、OH、NH又はSHである;
(a2)場合により二重又は三重結合、及び/又は1若しくは複数の飽和、不飽和又は芳香環を含む、1〜30の炭素原子の炭化水素基;
(a3)(a2)と同様の意味を有する基であって、ここで、1〜15CHユニットが、O、NR、S、SO、SO、CO、SiR、若しくはP(O)Rから選択される等しい若しくは異なるジラジカルにより置換され、R及びR基は、a1)、a2)、a3)、a4)、及びa5)に定義されるものであり;
(a4)(a2)又は(a3)と同様の意味を有する基であって、ここで、1〜15CHユニットが、N、SiR、若しくはPOから選択される等しい若しくは異なるトリラジカルにより置換され、R基は、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、及び(a5)に定義されるもの;
(a5)(a2)、(a3)又は(a4)と同様の意味を有する基であって、ここで、1若しくは複数のH原子が、F、Cl、Br、I、OH、SH又はNHにより置換されるもの、
として定義される様な等しい又は異なる基であり、ここで、式(II)中にR基がある場合、1又は複数の一重、二重又は三重共有結合によりRと結合し得、芳香環を含む1又は複数の環を形成すると理解される}
を有する他の化合物;
(b)イミド、チオイミド、スルホンイミド、N−アシル−スルホンアミド、N−アシル−リンアミド、及び一般式
【化4】

{式中、Zは、CY、SO、P(Y)R又はAs(Y)Rであり;
Yは、各々独立して、O又はSであり;及び
及びRは、各々独立して、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、及び(a5)に定義される等しい又は異なる基であって、ここで、式(III)中のR及びRが、もし存在するならば、1又は複数の一重結合、二重又は三重共有結合により互いにと結合し、芳香環を含む1又は複数の環を形成すると理解される}
の他の化合物;
(c)アスコルビン酸塩、バルビツール酸塩、フェロセンカルボン酸塩、イソシアヌレート、オキサロ酢酸、メタン−フラーレンカルボン酸塩、及び(a)及び(b)に述べられる化合物との混合物、
から選択され;
【0032】
(iii)有機陽イオンは、以下:
(a1)ホスホニウム、アンモニウム(キラルを含む)、スルホニウム、ピリジニウム、8−アルキル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウム[アルキル−DBU]、1,2−ジアルキルイミダゾリウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウム、1,2,3−トリアルキルイミダゾリウム、モノアルキル−ジアルキルグアニジウム、トリアルキルジアルキルグアニジウム、テトラアルキルジアルキルグアニジウム、ペンタアルキルジアルキルグアニジウム、ヘキサアルキルジアルキルグアニジウムの如き、硫黄、リン、窒素、酸素原子の中心にある電荷の複素環;
(a2)周期表の他の元素、好ましくはアルカリ土類金属を含む化合物、
から選択される。
【0033】
前記ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料は、以下:
(i)固体(特に、繊維、ナノ繊維、粒子、ナノ粒子、フィルム、ナノフィルム);
(ii)液体;
(iii)コロイド(特に、エマルジョン、発泡体、ゲル、エアロゾル、エアロゲル)
の形態である。
【0034】
本発明の第2態様は、上記のように合成されるゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用であって、以下の:
(a)細胞成長培地としての使用;
(b)生物電気化学適用のためのバイオセンサー、及び電極の製造における使用;
(c)化学反応を実施するための化学的及び生物学的触媒の固定化における使用;
【0035】
(d)薬理学的特性をもつ物質の含浸、及び/又はカプセル化のための使用;
(e)水性溶媒、及び非水性溶媒中の化学変換反応のための触媒としての使用;
(f)繊維製品への電子装置の組み入れのための繊維の製造、及び改良のための使用;
(g)導体又は半導体として作用し得るように、燃料電池を含む電気化学的セル(ガルバニセル又は電解セル)又はセルの一部における使用;
【0036】
(h)光合成細胞、導体又は半導体、あるいは電解セルの原材料のための固定化マトリクスとして作用し得る太陽電池セルの製造のための使用;
(i)異なる有機分子(例えば、アルコール、アミン、エーテル、エステル、カルボン酸)、ペプチド、アミノ酸、糖、アントシアニン、核酸、及び化学、生物化学、医薬に関する他の化合物の選択的輸送において使用される新型の膜としての使用;並びに、
(j)化学的、生化学的又は医薬的に着目の化合物の製造における細胞(微生物、植物、及び動物由来の細胞)のための固定化マトリクスとしての使用、
から選択される上記使用である。
【実施例】
【0037】
実施例1
ゼラチンと1−ブチル3−メチルイミダゾリウムクロライド塩(BMIMCl)との架橋結合
40〜90℃の温度、最も好ましくは65℃で、磁気撹拌下、540mgのBMIMClに、100mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは30分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、20℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が1〜250M、最も好ましくは155Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10、最も好ましくは1.4に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0038】
実施例2
ゼラチンと1−ブチル3メチルイミダゾリウムジシアナミド塩(BMIMDCA)との架橋結合
40〜90℃、最も好ましくは70℃の温度で、磁気撹拌下、300μLのBMIMDCAに、30mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは30分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、20℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が1〜250M、最も好ましくは24Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10、最も好ましくは1.4に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0039】
実施例3
ゼラチンと1−ブチル3−メチルイミダゾリウムサッカリン塩(BMIMサッカリン)との架橋結合
40〜90℃、最も好ましくは70℃の温度で、磁気撹拌下、300μLのBMIMサッカリンに、30mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは45分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、20℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が1〜250M、最も好ましくは14Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10、最も好ましくは0.8に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0040】
実施例4
ゼラチンとトリオクチルメチルアンモニウムジシアナミド塩(ALiqDCA)との架橋結合
40〜90℃、最も好ましくは60℃の温度で、磁気撹拌下、200μLのALiqDCAに、20mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは45分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が0.5〜800M、最も好ましくは150Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を1〜50に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0041】
実施例5
ゼラチンと1−オクチル3−メチルイミダゾリウムジシアナミド塩(OMIMDCA)との架橋結合
20〜90℃の温度で、磁気撹拌下、200μLのOMIMDCAに、20mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは30分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が0.5〜500M、最も好ましくは30Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を1〜50、最も好ましくは5に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0042】
実施例6
ゼラチンと1−オクチル3−メチルイミダゾリウムクロライド塩(OMIMCl)との架橋結合
20〜90℃の温度で、磁気撹拌下、210μLのOMIMDCAに、20mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは30分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が1〜250M、最も好ましくは6Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続け、次いで、固化を可能とする。
【0043】
実施例7
ゼラチンとソジウムジシアナミド塩(NaDCA)との架橋結合
20〜90℃、最も好ましくは35℃の温度で、磁気撹拌下、100mgのNaDCAを、190μLの水に溶解させ、11.2Mの溶液を準備する。完全に均質溶液になるまで、この混合物を撹拌下のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜100、最も好ましくは0.9に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続ける。所望の適用に従って、当該原材料を乾かす。それ故、真空、凍結乾燥又は超臨界抽出下、20〜90℃、最も好ましくは35℃の温度での熱風乾燥により実施され得る。
【0044】
実施例8
ゼラチンとソジウムサッカリン塩(Naサッカリン)との架橋結合
20〜90℃、最も好ましくは35℃の温度で、磁気撹拌下、500mgのNaサッカリンを、450μLの水に溶解させ、11.2Mの溶液を準備する。完全に均質溶液になるまで、この混合物を撹拌下のまま維持する。この混合物を、20℃〜40℃の温度に冷却する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10、最も好ましくは1.7に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続ける。所望の適用に従って、当該原材料を乾かす。それ故、真空、凍結乾燥又は超臨界抽出下、25〜90℃、最も好ましくは35℃の温度での熱風乾燥により実施され得る。
【0045】
実施例9
ゼラチンとトリオクチルメチルアンモニウムクロライド塩(AliqCl)との架橋結合
20〜90℃、最も好ましくは60℃の温度で、磁気撹拌下、200μLのAliquat336(登録商標)に、20mgのゼラチンの一部を添加する。完全に均質になるまで、60分以上、最も好ましくは30分、この混合物をその状態のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。塩濃度が0.5〜800M、最も好ましくは150Mとなるように、水を添加する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を1〜50に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。この混合物が均質になるまで撹拌を続ける。
【0046】
実施例10
ゼラチンと、ソジウムサッカリン(Naサッカリン)及び1−ブチル3−メチルイミダゾリウムジシアナミド塩(BMIMDCA)の混合物との架橋結合
20〜90℃、最も好ましくは35℃の温度で、磁気撹拌下、1gのNaサッカリン及び1mLのBMIMDCAを1mLの水に溶解させ、5.4M溶液を用意する。完全に均質溶液になるまで、この混合物を撹拌下のまま維持する。この混合物を、10℃〜40℃の温度に冷却する。pHが5〜9の値であるかどうか調べる。塩/ゼラチン比率(w/w)を0.1〜10、最も好ましくは1.7に保つために、ゼラチンを少しずつ添加する。所望の適用に従って、当該原材料を乾かす。それ故、当該乾燥は、真空又は超臨界抽出下、室温で実施され得る。当該原材料の最終態様は、当該乾燥過程に依存するだろう。
【0047】
引用文献
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンユニットと式(I):
【化1】

{式中、Xは塩の陰イオンを示し、Yは塩の陽イオンを示す}の有機塩との架橋結合が、撹拌下(磁気撹拌、軌道撹拌、機械撹拌など)、20〜90℃の温度で、使用されるゼラチン起源に依存して、異なるイオン強度(0.01〜1000M)及び/又は異なるpH(1−14)の水性溶液中で実施されることを特徴とする、ゼラチン及び前記有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項2】
前記ゼラチンが、A、B、I、II、III、IV型の異なる型からの動物、微生物又は植物由来のものであることを特徴とする、請求項1に記載のゼラチン及び前記有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項3】
前記有機塩が液体又は固体状態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項4】
前記有機塩がキラル又はアキラルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項5】
陰イオンX、及び陽イオンが存在し、
(i)有機陰イオンは以下の:
(a)ハロゲン(Cl、Br、I、F)、亜リン酸塩及びリン酸塩(PF6、H2PO2、H2PO4、PO3)、ホウ酸塩(BF4、BO2、BO3)、亜硝酸塩及び硝酸塩(NO3、NO2)、硫酸塩(HSO)、シアン化物及びシアン酸塩(CN、SCN、CNO)、シアナミド(C)、ジシアナミド(N(CN))、アジド(N)、炭酸塩(HCO)、臭素酸塩(BrO)、ヨウ素酸塩(IO、IO)、亜塩素酸塩及び塩素酸塩(Cl、ClO、ClO、ClO);
(b)ZnCl、ZnBr、SnCl、SnBr、FeCl、FeBr、NiCl、AuBr、AuBr、AuCl、GaCl、AlCl、AlCl、AlCl10の如き金属ハロゲン化物;
(c)周期表、好ましくはIb〜VIIb群、IIIa〜VIa群、及びVIII群の他の元素を含む、より好ましくはヒ素(AsF、HAsO、AsO)、アンチモン(SbF、SbO)、クロム(HCrO)、テルリウム(HTeO、HteO)、セレニウム(HSeO、SeCN)、ニオビウム(NbO)、タリウム(TaO)、ルテニウム(RuO)、マンガン(MnO)及びレニウム(ReO)、ビスマス(BiO)、バナジウム(VO)及び銀(Ag(CN))の如き成分を含む、化合物;
から選択され、
(ii)有機陰イオンは、以下の:
(a)カルボン酸塩、チオカルボン酸塩、カルバミン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、スルホン酸塩、オルガノ硫酸塩、オルガノスルファミン酸塩、オルガノリン酸塩、ホスホン酸塩、チオホスホン酸塩、及び以下の一般式:
【化2】

{式中、ZはCY、SO、P(Y)R又はAs(Y)Rであり;
Yは、各々独立してO又はSであり;及び
とRは、以下:
(a1)H−又はE−、ここで、Eは、F、Cl、OH、NH又はSHである;
(a2)場合により二重又は三重結合、及び/あるいは1若しくは複数の飽和、不飽和又は芳香環を含む、1〜30の炭素原子の炭化水素基;
(a3)(a2)と同様の意味を有する基であるが、ここで、1〜15CHユニットが、O、NR、S、SO、SO、CO、SiR、若しくはP(O)Rから選択される等しい若しくは異なるジラジカルにより置換され、R及びR基が、a1)、a2)、a3)、a4)、及びa5)に定義されるもの;
(a4)(a2)又は(a3)と同様の意味を有する基であって、ここで、1〜15CHユニットが、N、SiR、又はPOから選択される等しい若しくは異なるトリラジカルにより置換され、R基が、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、及び(a5)に定義されるもの;
(a5)(a2)、(a3)又は(a4)と同様の意味を有する基であって、1若しくは複数のH原子が、F、Cl、Br、I、OH、SH又はNHにより置換されるもの、
として定義される等しい又は異なる基であり、ここで、式(II)中にR基がある場合、1若しくは複数の一重、二重又は三重共有結合によりRと結合し得、芳香環を含む1若しくは複数の環を形成すると理解される}
を有する他の化合物;
(b)イミド、チオイミド、スルホンイミド、N−アシル−スルホンアミド、N−アシル−リンアミド、及び一般式:
【化3】

{式中、Zは、CY、SO、P(Y)R又はAs(Y)Rであり;
Yは、各々独立して、O又はSであり;及び
及びRは、各々独立して、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、及び(a5)に定義される基と等しい又は異なる基であって、ここで、式(III)中のR、及びもし存在するならばRが、1若しくは複数の一重、二重又は三重共有結合により互いに結合し、芳香環を含む1若しくは複数の環を形成すると理解される}
の他の化合物;
(c)アスコルビン酸塩、バルビツール酸塩、フェロセンカルボン酸塩、イソシアヌレート、オキサロ酢酸、メタン−フラーレンカルボン酸塩、並びに(a)及び(b)に述べられる化合物との混合物、
から選択され、
(iii)有機陽イオンは、以下:
(a1)ホスホニウム、アンモニウム(キラルを含む)、スルホニウム、ピリジニウム、8−アルキル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウム[アルキル−DBU]、1,2−ジアルキルイミダゾリウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウム、1,2,3−トリアルキルイミダゾリウム、モノアルキル−ジアルキルグアニジウム、トリアルキルジアルキルグアニジウム、テトラアルキルジアルキルグアニジウム、ペンタアルキルジアルキルグアニジウム、ヘキサアルキルジアルキルグアニジウムの如き、硫黄、リン、窒素、酸素原子を電荷中心とする複素環;
(a2)周期表の他の元素、好ましくはアルカリ土類金属を含む化合物、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項6】
前記原材料が、以下:
(i)固体(特に、繊維、ナノ繊維、粒子、ナノ粒子、フィルム、ナノフィルム);
(ii)液体;
(iii)コロイド(特に、エマルジョン、発泡体、ゲル、エアロゾル、エアロゲル)、
の形態であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の合成方法。
【請求項7】
前記原材料が細胞成長培地として使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項8】
前記原材料が生物電気化学適用のための生体センサー及び電極の製造において使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項9】
前記原材料が化学反応を実施するために前記原材料が化学的及び生物学的触媒の固定化に使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項10】
前記原材料が薬理学的特性を有する基質の含浸及び/又はカプセル化のために使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項11】
前記原材料が水性及び非水性媒体における化学変換反応のための触媒として使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項12】
前記原材料が、繊維製品への電子装置の組み入れのために繊維の製造及び改良において使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のように合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項13】
導体又は半導体として作用し得るように、前記原材料が、燃料電池を含む電気化学セル(ガルバニセル又は電解セル)又はセルの一部において使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項14】
前記原材料が、光合成細胞、導体又は半導体、あるいは電解材料のための固定化マトリクスとして作用し得る太陽電池セルの製造のために使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項15】
前記原材料が、異なる有機分子(例えば、アルコール、アミン、エーテル、エステル、カルボン酸)、ペプチド、アミノ酸、糖、アントシアニン、核酸、及び化学的、生化学的又は医薬的関心のある他の化合物の選択的輸送に用いられる新型の膜として使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。
【請求項16】
前記原材料が、化学的、生化学的又は医薬的に着目の化合物の製造において(微生物、植物、及び動物由来の)細胞の固定化マトリクスとして使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のように合成される、ゼラチン及び有機塩ベースの新規原材料の使用。

【公開番号】特開2009−1797(P2009−1797A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−160947(P2008−160947)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(508185432)ユニベルシダデ ノバ デ リスボア (3)
【出願人】(505150903)インスティテュート スペリオール テクニコ (4)
【Fターム(参考)】