説明

ゼリー状炭酸飲料用組成物、容器詰炭酸ゼリー飲料および凍結炭酸ゼリー飲料

【課題】温度に応じて性状が変化し、且つ、0℃以下でも噴きこぼれずに炭酸性状を維持している容器詰炭酸ゼリー飲料を提供する。
【解決手段】単糖類を主成分とする糖質を含有し、ゲル化剤を配合してなる炭酸飲料用組成物において、そのゲル化剤にはカラギナンとキサンタンガムが配合されるものであり、且つ、飲料組成物の可溶性固形分であるBrix度A(%)、カラギナンの配合量B(重量%)、キサンタンガムの配合量C(重量%)、液温26℃における飲料組成物の粘度D(mPa・s)が、以下の(イ)、(ロ)および(ハ)の関係式で示される条件を満足するゼリー状炭酸飲料用組成物及び、炭酸飲料用組成物を容器詰した炭酸ゼリー飲料とする。
(イ)B+C=0.05〜0.25
(ロ)B/C=2〜5
(ハ)D/A=7〜20
(ニ)A≧10

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度に応じて性状が変化しても離水が少ないゼリー状炭酸飲料用組成物、容器詰炭酸ゼリー飲料、凍結炭酸ゼリー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清涼飲料水用の容器に充填されたゼリー飲料が種々市販されており、最近では炭酸ガス含有のゼリー飲料が市場に現れている。
これらのゼリー飲料において共通なことは、容器の中で液体がゼリー状に固まっており、数回振って固まりを崩し、柔らかいゼリー状にしてから飲用するというものである。
【0003】
例えば、冷水不溶性のカッパーカラギナンおよび/またはアイオータカラギナンを水溶液中に均一分散したものに、炭酸ガスを封入したのち容器に充填密封し、加熱殺菌した後、冷却して炭酸ガス含有ゼリー状食品としているものがある(特許文献1)。しかしながら、このように製造されたゼリー飲料は、例外なく、上記のように容器を振らなければ飲用できないものであった。
【0004】
また、その他の炭酸ガス含有ゼリー状食品として、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、マンナンから選択される1種又は2種類以上を主成分とするゲル化剤を0.001〜1.0重量%配合し、粘弾性測定装置を使用して特定の物性に調整することで、やわらかくて伸びのあるゼリー状飲食品を得るものがある(特許文献2)。しかし、このようなゼリー状飲食品は、伸びのある性状であるため、柔軟性を有する容器を押圧して押し出さなければ飲用するのは困難なものであった。
【0005】
一方、炭酸ガス含有の飲料中に、細片状(チップ状)のゼリーを加えた飲料もある。例えば、2種類以上の増粘多糖類の混合物と多価金属塩の反応により作られたゲルをカットして、細片状のゲルを含んだことを特徴とする密閉容器入りゲル入り炭酸飲料がある(特許文献3)。しかし、このようなゲル入り飲料は、細片状のゲル食感はよいものであるが、飲料全体にボディ感のあるゼリー状のテクスチャーを与えることはできないものであった。
【0006】
さらに、PETボトル入り飲料を冷凍して、凍結した飲料を解凍しながら飲用に供する凍結飲料がある(特許文献4)。しかしながら、このような凍結可能な飲料は、非炭酸飲料に限られていた。
【0007】
【特許文献1】特開平04−252156号公報
【特許文献2】特開2001−299241号公報
【特許文献3】特開平09−103271号公報
【特許文献4】特開2005−29181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、ゼリー飲料は、製品として保管、出荷されている時からゼリー状に固まっており、振らなければ飲用することができないものとして市場で販売されていた。しかしながら、振るのを忘れたり、振り方が不充分な状態で開封したりすると、ゼリーの固まりが崩れておらず、容器の内部にゼリーの固まりが詰まってゼリー飲料を飲用することができないという問題点があった。特に、パーシャルオープンエンドのプルトップ缶などの再封できない容器に詰められたゼリー飲料は、一度開封すると再封して振ることができないため、飲用者は、缶切りで蓋を完全に開ける等しなければ飲用することができず、非常に面倒であった。
【0009】
さらに、上記のゼリー飲料を製造する場合にも問題点があった。通常、清涼飲料水の製造ラインには、内圧検査機、真空度測定機、内容量測定機等の検査機器が存在し、調合時、充填時、加熱殺菌時、冷却時等に食品衛生法で必要不可欠な検査を行っている。しかしながら、これらの検査機器を通過する際、製品は常温まで冷却されており、既に内容組成物はゼリー状に固まっている。そのため、検査機器が液体としての入り身線を検知できず、缶蓋の裏に張り付いた組成物を検知する等して誤作動を起こし、良品であるにも関わらず排斥してしまうという不具合が生じていた。したがって、本来の製造ラインを型替えして、検査機を通過後に製品を反転させたり、本来とは逆向きで加熱殺菌冷却を行ったりする等、生産効率が落ちる無駄な手間をかけなければならなかった。
【0010】
また、冷凍させてから飲用に供する凍結飲料は、非炭酸飲料では容易に製造可能であるが、炭酸飲料では製造が困難であった。炭酸ガスを含有した炭酸飲料を凍結させると、最初に液体である水分が凍るため、最終的に液体中に溶解している炭酸ガスが液体と分離し、容器内の空寸容積に炭酸ガスが逃げ込む。そして、開栓時に炭酸ガスが抜けるため、飲食するときには既に炭酸ガスを含有していない非炭酸飲料となっている。このように、過去に炭酸ガスを含有している凍結飲料は存在し得なかった。
【0011】
そこで、この発明は、上記の問題点を解決して、温度に応じて性状が変化し、且つ、0℃以下でも噴きこぼれずに炭酸性状を維持している容器詰炭酸ゼリー飲料を提供することを目的とする。また、飲用時に口の中で氷と共に炭酸ガスの刺激が味わえる、過去に存在し得なかった新規な凍結容器詰飲料を提供することを目的とする。さらに、通常の清涼飲料水の製造ラインで、検査機器を誤作動させることなく通過でき、生産効率のよい容器詰炭酸ゼリー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、単糖類を主成分とする糖質を含有し、ゲル化剤としてカラギナンおよびキサンタンガムを配合してなる炭酸飲料用組成物であって、飲料組成物の可溶性固形分であるBrix度A(%)、カラギナンの配合量B(重量%)、キサンタンガムの配合量C(重量%)、液温26℃における飲料組成物の粘度D(mPa・s)が、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の関係式で示される条件を満足するゼリー状炭酸飲料用組成物とした。
(イ)B+C=0.05〜0.25
(ロ)B/C=2〜5
(ハ)D/A=7〜20
(ニ)A≧10
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のゼリー状炭酸飲料用組成物において、さらに、ローカストビーンガムE:0.03〜0.1(重量%)、グアガム:F0.01〜0.03(重量%)の一方または両方を配合することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載のゼリー状炭酸飲料用組成物において、ゲル化剤の使用割合が、前記E、Fの両方を配合して、F<C<E<Bであることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のゼリー状炭酸飲料用組成物において、単糖類はグルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、マンノースまたはそれらの混合物を使用したことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のゼリー状炭酸飲料用組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、スチール缶容器、パウチ容器に充填し封入してなる容器詰炭酸ゼリー飲料である。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載の容器詰炭酸ゼリー飲料を凍結させた凍結容器詰飲料である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、Brix度、カラギナンの配合量、キサンタンガムの配合量、飲料組成物の粘度を一定の関係式で満たされる数値に調整したので、常温、冷蔵、冷凍のあらゆる温度帯で、様々な性状の容器詰炭酸ゼリー飲料を飲用できる。具体的には、常温ではそのまま液体として飲める炭酸飲料となり、冷蔵することにより、ソフトな食感のあるゲル状組成物を容器の飲み口からそのまま飲用できるゲル状炭酸飲料となり、冷凍することにより、飲用時に口の中で氷と共に炭酸ガスの刺激が味わえる凍結炭酸飲料となる。
【0019】
また、この容器詰炭酸ゼリー飲料は、従来の振らなければ飲用できない製品とは異なり、室温でも流出しやすいため、振らなくても飲用することができ、飲用者に手間がかからない。さらに、従来の検査機器で検知できるため、良品排斥率が少なくなり、製造工場の生産性が上がる。そして、これまで存在し得なかった、凍結後も炭酸ガスが含有されたままの凍結炭酸飲料を味わうこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施形態としてゼリー状炭酸飲料用組成物の成分とその調整について、以下に説明する。
【0021】
この発明は、単糖類を主成分とする糖質を含有し、飲料組成物の可溶性固形分であるBrix度A(%)、カラギナンの配合量B(重量%)、キサンタンガムの配合量C(重量%)、液温26℃における飲料組成物の粘度D(mPa・s)が、以下の(イ)、(ロ)および(ハ)の関係式で示される条件を満足するゼリー状炭酸飲料用組成物である。
(イ)B+C=0.05〜0.25
(ロ)B/C=2〜5
(ハ)D/A=7〜20
(ニ)A≧10
【0022】
この発明では、飲料組成物が(イ)B+C=0.05〜0.25、(ロ)B/C=2〜5、(ハ)D/A=7〜20、(ニ)A≧10の数値範囲の条件を満足することが適切である。このようなバランスの組成とすることで、振っても振らなくても楽しめるゼリー状炭酸飲料の性状を満足するだけでなく、味覚や食感をも満足することができる。
【0023】
Brix度(%)とは、光琳社刊の「最新ソフトドリンクス」に記載があるように、飲料液体中の可溶性固形分全体の濃度を糖用屈折計を用いて測定した値のことを示し、20℃におけるBrix度をもって可溶性固形分とする。
【0024】
単糖類とは、ぶどう糖(グルコース)、果糖(フラクトース)あるいはそれらの混合物が主成分である果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、ガラクトース、キシロース、マンノースなどをいう。
【0025】
Brix度Aは、(ニ)A≧10%であることが好ましく、Brix度が10%未満では、冷凍状態において飲食組成物が完全に固化し、手で揉めるようになるまでに時間を要するので好ましくない。
【0026】
そして、(イ)B+C=0.05〜0.25であり、0.05未満では、ゼリー食感が弱くなり好ましくなく、また0.25を超える数値では、常温でも振らなければいけないゼリー飲料となるので好ましくない。
【0027】
なお、より好ましくは(イ)B+C=0.08〜0.2であり、さらに好ましくは0.1〜0.18である。これらの所定の数値によって、炭酸ゼリー飲料としての食感を好ましくすることが可能である。
【0028】
また、(ロ)B/Cの数値が2未満では、ゼリー状を呈しないので好ましくなく、また5を超える数値では、常温で固まっているので好ましくない。
【0029】
なお、より好ましくは(ロ)B/C=2.5〜4.5であり、さらに好ましくは3〜4である。これらの所定の数値によって、各温度帯でのゼリー食感をコントロールすることが可能である。
【0030】
さらに、(ハ)D/Aの数値が7未満では、ゼリーが弱くなる一方で濃味が多くなり好ましくなく、20を超える数値では、ゼリーが硬くなる一方で濃味が少なくなり好ましくない。
【0031】
なお、より好ましくは(ハ)D/A=7〜15であり、さらに好ましくは8〜13である。これらの所定の数値によって、振っても炭酸ガスがゼリーの内部に包括されたままであり、凍結後も炭酸ガスがゼリーの内部に包括されたまま炭酸飲料としての刺激味を保持することができる。
【0032】
また、室温とは、25℃以上の温度範囲で調節が行われない自然のなりゆきの温度を示す。冷蔵とは、0℃から10℃程度の温度範囲に調節された温度条件下(冷蔵庫)に保存することを示し、冷凍とは−25℃から0℃程度の温度範囲に調節された温度条件下(冷凍庫)に保存することを示す。
【0033】
実施形態の飲料組成物には可溶性固形分として、ぶどう糖固形分、果糖固形分、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖の少なくとも1種以上の固形分が含まれているのが好ましく、これにより、可溶性固形分量が多くても、飲食物として適した味わいに調節でき、凍結後においても柔らかい触感を保持することができる。その他の可溶性固形分としては、発明の効果に影響を及ぼさない補助的な範囲内において麦芽糖固形分、糖アルコール固形分、デキストリン固形分、乳固形分、砂糖固形分を含有してもよい。
【0034】
さらに、ローカストビーンガム0.03〜0.1重量%、グアガム0.01〜0.03重量%の一方または両方を配合することが好ましく、最も好ましくは、グアガム<キサンタンガム<ローカストビーンガム<カラギナンの使用割合であることが好ましい。これにより、炭酸ガスを保持しやすくなるので、炭酸ガスの刺激味が好適となる。
【0035】
より詳細に説明すれば、金属容器と違いガス透過性という特性を持つPETボトルは、長期間保管中に炭酸ガス容積が徐々に減少していく性質がある。ローカストビーンガムが0.03未満、グアガムが0.01未満であれば、組成物がゼリー状にならず炭酸ガスを放出しやすいので炭酸ガスが徐々に抜けてゆくので好ましくなく、ローカストビーンガムが0.1を超える数値、グアガムが0.03を超える数値では、ゼリー状組成物を振らなければ飲用できなくなるので好ましくない。特に、グアガム<キサンタンガム<ローカストビーンガム<カラギナンの使用割合であれば、上記の特質が際だって良好となるので好ましい。
【0036】
この実施形態の飲料組成物には、その他の安定剤として、発明の効果に影響を及ぼさない範囲内において、大豆多糖類、ペクチン、発酵セルロース、微結晶セルロース、寒天、ゼラチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、カゼインナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルを含有してもよい。例えば、市販の大豆多糖類としては、三栄源エフエフアイ社製の「大豆多糖類」、ペクチンとしては、CP kelco Aps製の「GENUペクチン」等が挙げられる。
【0037】
また、この実施形態の飲料組成物には、乳化剤として、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンを含有してもよい。例えば、市販の蔗糖脂肪酸エステルとしては、三菱化学フーズ社製の「菱糖エステル」、第一工業社製の「DKエステル」等が挙げられる。
【0038】
また、この実施形態の飲料組成物には、乳製品を使用することもできる。乳製品としては、牛乳、濃縮乳、クリーム、バター、全粉乳、脱脂粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、全脂加糖練乳、無糖練乳が挙げられる。
【0039】
さらに、この実施形態の飲料組成物には、酸味料を添加してもよく、そのような酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、りんご酸、乳酸、フマル酸、リン酸等が挙げられる。これらを添加することにより、飲料組成物のpHを好ましく調整することができる。
【0040】
上記で説明した糖類、安定剤、乳化剤、乳製品、酸味料の他に、この実施形態の飲料組成物には、果汁、コーヒー、緑茶、烏龍茶、紅茶、香料、ビタミン類、ミネラル類およびアミノ酸類から選ばれる1種以上を添加しても良く、これらの添加により飲食物として、風味の向上、飲食者の健康補助効果など付加価値を高めることができる。
【0041】
このような飲料組成物を充填する容器は、再封可能なキャップ付きのPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル、ボトル缶が好ましい。これにより、振らないで炭酸飲料を楽しんだ後は、振ってからゼリー飲料を楽しむという2重の味わい方を提供できる。その他の容器としては、スチール缶、アルミニウム缶、パウチ容器を使用してもよい。
【0042】
飲料組成物は、上記容器に充填された状態で、室温、冷蔵、冷凍のいずれの温度条件に保存した場合においても、少なくとも12ヶ月は安定に品質を維持することが可能である。なお、ゼリー状として、食感良く飲むことができる温度帯は飲料組成物の内部温度として0℃〜25℃、好ましくは5℃〜15℃、特に7℃〜10℃であることが好ましい。
【0043】
この実施形態の容器詰炭酸ゼリー飲料は、通常の炭酸飲料の製造工程と同じように、カーボネーターで炭酸ガスを吸収させた後に充填を行い、パストライザーで加熱殺菌・冷却し、所定の検査機器を通過した後で製品となるものである。
【0044】
このように製造された容器詰炭酸ゼリー飲料は、室温、冷蔵、冷凍において液体状、ゼリー状またはシャーベット状となり、そのまま飲食できる飲料組成物が密封容器に充填されているため、常温、冷蔵、冷凍のいずれの流通温度帯によっても流通可能であり、また、家庭で手軽に、炭酸飲料、ゼリー状炭酸飲料、シャーベット状炭酸飲料を楽しむことが可能である。
【実施例】
【0045】
Brix度は、アタゴ社製の「デジタル屈折計RX−5000」又はその同等品を用いて測定する。上記したように、Brix度(%)とは、飲料液体中の可溶性固形分全体の濃度を糖用屈折計を用いて測定した値のことを示し、20℃におけるBrix度をもって可溶性固形分とする。
【0046】
粘度(mPa・s)は、飲料組成物の液温を26℃に調整し、東機産業社製の「VISCOMETER BL型」又はその同等品を用いて測定する。
【0047】
[試料a〜l]
下記の処方に示す組成の内、ぶどう糖・クエン酸以外に水を加え溶解した後、クエン酸にてpHを3.8に調整し、ぶどう糖にてBxを表Aに示す所定のBx値に調整し、炭酸ガスを吸収させた後に、ボトル缶(大和製罐社製300ml)に充填し、70℃で10分間加熱殺菌後に冷却し、試料a〜lの容器詰炭酸ゼリー飲料を得た。このうち試料f〜lが本発明の実施例に該当する。
(処方1)
メロン果汁 1.0重量%
香料(高砂香料社製:メロンフレーバー) 0.1重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
カラギナン 0.15重量%
キサンタンガム 0.03重量%
ローカストビーンガム 0.07重量%
グアガム 0.02重量%
ぶどう糖 Bx所定の数値まで
純水(残部)にて全量100重量%とする。
【0048】
得られた容器詰炭酸ゼリー飲料について、−10℃、7℃、15℃、26℃となるように、冷凍庫、冷蔵庫、恒温槽に24時間保持し、以下に段階評価の詳細を示すように、振らないで飲食、10回振ってから飲食時のゼリー性状を評価し、最後に冷凍製品としての適正評価を行い、これらの結果をまとめて表A中に示した。
【0049】
[ゼリー性状評価]
26℃は振らないで液体、15℃は振らないでゼリー食感を楽しめる、7℃は振ってゼリー食感を楽しめることを基準とした。
1 予定どおりの良好なゼリー性状である
2 若干不満はあるが、とりあえずゼリー性状を保っている
3 まったく予想していない劣悪な性状である
【0050】
[冷凍適正評価]
−10℃は凍結飲料として炭酸ガスを適度に保持していることを基準とした。
1 凍結後にも、飲料組成物には良好な炭酸ガスを保持している
2 炭酸ガスは保持しているが、凍結飲料としては飲みづらい
3 炭酸ガスが抜けて炭酸飲料ではない
【0051】
【表A】

【0052】
表Aの結果からも明らかなように、Bx10未満では、各温度帯でのゼリー性状が好ましくなく、凍結炭酸飲料としての適正も好ましくないという評価が得られた。
【0053】
[試料m〜x]
下記の処方に示す組成の内、果糖・クエン酸以外に水を加え溶解した後、クエン酸にてpHを3.8に調整し、果糖にてBxを表Bに示す所定のBx値に調整し、炭酸ガスを吸収させた後に、ボトル缶(大和製罐社製300ml)に充填し、70℃で10分間加熱殺菌後に冷却し、試料m〜xの容器詰炭酸ゼリー飲料を得た。このうち試料r〜xが本発明の実施例に該当する。
(処方2)
メロン果汁 1.0重量%
香料(高砂香料社製:メロンフレーバー) 0.1重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
カラギナン 0.15重量%
キサンタンガム 0.03重量%
ローカストビーンガム 0.07重量%
グアガム 0.02重量%
果糖 Bx所定の数値まで
純水(残部)にて全量100重量%とする。
これらの結果をまとめて、表B中に示した。
【0054】
【表B】

【0055】
表Bの結果からも明らかなように、ぶどう糖と同じく単糖類である果糖を使用しても、Bx10未満では、各温度帯でのゼリー性状が好ましくなく、凍結炭酸飲料としての適正も好ましくないという評価が得られた。
【0056】
[比較例a〜h]
一方、比較例として、処方1の単糖類に代えて二糖類である砂糖、麦芽糖、その他の糖質として糖アルコール、デキストリンで同様な実験を行ったところ、Bxを10以上に調整しても容器詰炭酸ゼリー飲料としては適さない結果が出た。糖アルコールとしては、林原商事社製の「粉末マビット」、デキストリンとしては、松谷化学工業社製の「TK−16」を使用した。結果は、表C中に示した。
【0057】
【表C】

【0058】
[実施例1〜10]
[比較例1〜10]
表1、表2に示す組成で各成分を配合し混合して飲食組成物を製造した。ここでいうゲル化剤とは、市販のカラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガムを使用した。ぶどう糖はサンエイ糖化社製の「含水結晶ぶどう糖」、果糖はダニスコ社製の「純果糖」、果糖ぶどう糖液糖は加藤化学社製の「HF−55」を使用した。
【0059】
ボトル缶容器の洗浄を行い、配合した組成物に炭酸ガスを吸収させ、容器に充填、密封後に、67℃の温度にて10分間維持した後、冷水にて30℃まで冷却を行った。ボトル缶容器は大和製罐社製の300mlアルミニウムボトル缶を使用し、300g重量を充填した。
【0060】
得られた容器詰飲料のB+C値、B/C値、D/A値を表1、表2中に示した。
得られた容器詰飲料に対して、同様に26℃、15℃、7℃、−10℃における評価を、成人男女多数のパネラーに判定させ、多数意見を考慮してその点数を表1、表2中に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
[実験例1(流出試験)]
容器の開口部を下に向けたときの内容物である飲料の流出量を以下の要領で試験した。
【0064】
試験用の試料の組成は以下とおりである。
下記の処方3〜5に示す組成に水を加え溶解した後、炭酸ガスを吸収させてガスボリューム2.2とした飲料組成物を、ボトル缶(大和製罐社製300ml)に充填した。さらに、加熱殺菌後冷却し、試料である容器詰炭酸ゼリー(本発明品、比較例1、比較例8)を得た。
【0065】
(処方3(本発明品))
果糖ぶどう糖液糖 20.6重量%
香料 0.1重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
カラギナン 0.15重量%
キサンタンガム 0.04重量%
ローカストビーンガム 0.09重量%
グアガム 0.03重量%
純水(残部)にて全量100重量%とする。
【0066】
(処方4(比較例1))
果糖ぶどう糖液糖 12.6重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
カラギナン 0.03重量%
キサンタンガム 0.01重量%
ローカストビーンガム 0.05重量%
純水(残部)にて全量100重量%とする。
【0067】
(処方5(比較例8))
果糖ぶどう糖液糖 21.1重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
カラギナン 0.15重量%
キサンタンガム 0.08重量%
ローカストビーンガム 0.08重量%
グアガム 0.02重量%
純水(残部)にて全量100重量%とする。
【0068】
試験の手順は以下のとおりである。
各試料(本発明品、比較例1、比較例8)を冷蔵庫にて静置し、十分に冷却する。
冷却後、室温にて、5、10、15、20、25℃になるまで静置する。
所定の温度になった試料を振る。振り方は、いわゆる回転振とうである。回転振とうとは、缶のほぼ中心を軸として180度回転させて上下を反転した後、すばやく再度逆向きに180度回転させて元の姿勢に戻す動作である。この一連の動作を0.3秒間で行う。これを1回振りとして、(1)振らない、(2)5回振り、(3)10回振りの3パターン行う。
製品を開栓もしくは開缶し、ビーカー上で開口部を下にする。なお、このビーカーはあらかじめ重量計の上に設置する。
反転状態を1分間維持し、ビーカーに流出した組成物の量(流出液量)を重量計により読み取る。
反転状態をさらに4分間維持し、ビーカーに流出した組成物の量を重量計により読み取る。
【0069】
試験にて得た流出液量と充填量(300g)を用いて、流出割合(%)を求めた。結果を表4に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
以上の試験の結果、以下のことが分かった。
本発明品は、室温では振らなくても流出しやすく、冷蔵(5〜10℃)では振れば支障なく流出させることができる。
比較例1は、室温・冷蔵いずれの場合でも流出しやすいが、単に粘度のある液体でありゼリーではない。
比較例8は、室温でも振らないと流出に支障がある場合があり、冷蔵では十分に振れば流出するが、振りが足りないと流出に支障が生じる。
今回の結果により、本発明品は、冷蔵では既存のゼリー炭酸と同様に振って飲用するが常温では振らなくてもソフトゼリー炭酸飲料として飲用できることが示された。また、比較例1の場合振らなくても飲用できるがゲルが弱すぎてゼリーではなく、比較例8の場合はゲルが強すぎて常温でも振る必要があった。
【0072】
[実験例2(離水試験)]
ゼリー状の組成物から水分がどの程度離水するかを以下の要領で試験した。
【0073】
試験用の試料として上記処方3の本発明品、処方4の比較例1、処方5の比較例8を用いた。
【0074】
試験の手順は以下のとおりである。
試料を冷蔵庫にて静置し、10℃になるまで冷却する。
冷却した試料の一部室温(25℃)にて、25℃になるまで静置する。
所定の温度(10℃、25℃)になった試料の缶上部を缶切りで開け、ブフナーロート上に静かに移す。
3分間経過後、ブフナーロートを通った通過液量(g)を量る。なお、ブフナーロートは、マルミヤ製陶製(適合ろ紙寸法:直径150mm)を用いた。
【0075】
試験にて得た通過液量(g)と充填量(本発明品は280g、C社製品は200g)とを用いて、通過割合(%)を求めた。結果は以下の表5に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表6の結果に示すように、冷蔵したもの(10℃)を比較すると、本発明品は0.8%とかなり通過割合が少なかった。これは試作試料の方がゲルの構造が安定しており、離水が少なかったためである。また、比較例1の場合はゲルが非常に弱くほぼ液状であったので、ロート上に留まることなく全量が通過した。
【0078】
一方、室温のもの(25℃)では本発明品および比較例1の通過割合は89.3%、100%と高く、大部分がブフナーロートの孔(直径2〜2.5mm)を通過した。ただし、本発明品の場合は、離水したのではなく、ゲルが弱いために構造が崩れ液状化していたからであり、比較例1の場合は初めからほぼ液体であったからであって原因が異なる。また、比較例8の場合は室温では若干量だが通過した。こちらは温度が上がってゲルの安定性が下がり離水が増えたためだと考えられる。
【0079】
よって、本発明品は、冷蔵では離水の少ないゲル、室温ではソフトゼリー状のやわらかいゲルになった。また、本発明品は比較例1、比較例8よりも離水が少ない良質なゲルであった。
【0080】
[実験例3(冷凍試験)]
ゼリー状の組成物を冷凍したとき性状がどのように変化するかを以下の要領で試験した。
【0081】
試験用の試料として上記処方3の本発明品を用い、比較用試料として上記処方4の比較例1、上記処方5の比較例8、および、下記非ゼリー比較例を用いた。
【0082】
(処方6(非ゼリー比較例))
果糖ぶどう糖液糖 12.6重量%
無水クエン酸 0.26重量%
クエン酸ナトリウム 0.21重量%
純水(残部)にて全量100重量%とする
上記処方6の組成を水に溶解した後、炭酸ガスを吸収させてガスボリューム2.2とした飲料組成物をボトル缶(大和製罐社製300ml)に充填して非ゼリー状の炭酸飲料である非ゼリー比較例を得た。
【0083】
実験手順は以下のとおりである。
試料(本発明品、各比較例)を冷凍庫(庫内温度−20℃)にて静置し、凍結させる。
凍結後、室温(25℃)にて1時間静置(解凍)する。
解凍した試料を10回振る。振り方は、実験例1(流出試験)と同様の振り方(回転振とう)である。
試料を開栓もしくは開缶し、静置して状態を観察する。
【0084】
上記観察の結果、以下のような結果を得た。
本発明品:噴き出しは無かった。−3〜−6℃で押し出すと、内容液が炭酸を含んだシャーベット状になって出てきた。
通常炭酸飲料:激しく泡が噴き上がり、飲み口から内容液があふれ続けた。
比較例1:開栓直後から内容液が飲み口から噴きこぼれた。−3〜−6℃で押し出すと、内容液が炭酸を含んだシャーベット状になって出てきたが、離水が多かった。
比較例8:内容液が飲み口からこぼれることは無く、そのまま反転させても出てこなかった。−3〜−6℃で押し出すと、内容液が炭酸を含んだシャーベット状になって出てきた。ただし、粘度が高く飲用しにくかった。
【0085】
ともにゼリー状炭酸飲料である本発明品と比較例1とを比較すると、本発明品では離水が少なく噴きこぼれなかったのに対し、比較例1では離水が多く開栓後すぐに噴きこぼれた。
【0086】
一方、通常炭酸飲料では、飲料組成物から炭酸ガスが殆ど析出してしまっているため、激しく噴き出し続けた。比較例8は粘度が高いため噴き出しはしなかったが、流動性が低く飲用には適さなかった。
【0087】
以上のように、本発明品は、通常炭酸飲料や比較例に比べて、冷凍しても炭酸ガスが抜けにくく且つ飲用しやすいため、凍結容器詰飲料としての適正が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖類を主成分とする糖質を含有し、ゲル化剤としてカラギナンおよびキサンタンガムを配合してなる炭酸飲料用組成物であって、飲料組成物の可溶性固形分であるBrix度A(%)、カラギナンの配合量B(重量%)、キサンタンガムの配合量C(重量%)、液温26℃における飲料組成物の粘度D(mPa・s)が、以下の(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の関係式で示される条件を満足するゼリー状炭酸飲料用組成物。
(イ)B+C=0.05〜0.25
(ロ)B/C=2〜5
(ハ)D/A=7〜20
(ニ)A≧10
【請求項2】
さらに、E=0.03〜0.1(重量%)のローカストビーンガム、F=0.01〜0.03(重量%)のグアガムのうち、一方または両方を配合することを特徴とする請求項1に記載のゼリー状炭酸飲料用組成物。
【請求項3】
前記ローカストビーンガム、グアガムの両方を配合し、前記B,C,E,Fの関係が、F<C<E<Bであることを特徴とする請求項2に記載のゼリー状炭酸飲料用組成物。
【請求項4】
前記単糖類として、グルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、マンノースまたはそれらの混合物を使用したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のゼリー状炭酸飲料用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のゼリー状炭酸飲料用組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、スチール缶容器、パウチ容器に充填し封止してなる容器詰炭酸ゼリー飲料。
【請求項6】
請求項5に記載の容器詰炭酸ゼリー飲料を凍結させた凍結炭酸ゼリー飲料。

【公開番号】特開2010−68747(P2010−68747A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238877(P2008−238877)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【特許番号】特許第4339391号(P4339391)
【特許公報発行日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(393000375)株式会社日本サンガリアベバレッジカンパニー (8)
【Fターム(参考)】