説明

ソイルセメント柱構築装置

【課題】ソイルセメント柱構築装置の攪拌翼周囲にまとわりついた土を振るい落として、攪拌効率を高める。
【解決手段】動力によって回転する回転軸1に、外周方向に向って突出する攪拌翼4・5が配されている。複数の攪拌翼4・5のうち、少なくとも一つの攪拌翼4・5は回転軸1と一体には回転せず、ワイヤロープ10・14などによって、前記回転軸1と回転開始時がズレて回転する。回転開始にタイムラグがあることで、攪拌翼4・5周りにまとわりついた土塊が崩れ、細かくされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に削孔を形成し、掘削土と凝固材とを攪拌してソイルセメント柱を構築する構築装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、攪拌翼によって地盤を攪拌し、かつ引き上げながら、地盤中にセメントミルクなどの固化材を吐出して、地盤中にセメントミルクと土との攪拌状態のソイルセメント柱を形成する工法が知られている。
そのためのソイルセメント柱の構築装置としては、例えば特開2000−28253号公報に記載されたような装置が一般的に使用されている。
このような装置を図7に示す。
すなわち、モーターなどの動力によって回転する回転軸aの周りに、外周方向に突出する攪拌翼bが取り付けられているもので、回転軸aの先端から削孔c底部に向けて固化材を注入し、一緒に回転する攪拌翼bで固化材と土砂を攪拌して固化材を掘削土砂全体に行き渡らせてソイルセメント柱として構築するものである。
【0003】
このような回転軸aと常に一緒に回転する攪拌翼bにあっては、粘土のような粘性の高い土dなどの場合、図7に示すように、攪拌翼bの周りに土dが団子状にまとわりついて攪拌効率が非常に低下することがある。
【特許文献1】特開2000−282453号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、攪拌翼周囲にまとわりついた土を振るい落として、攪拌効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるソイルセメント柱構築装置は、動力によって回転する回転軸に、外周方向に向って突出する攪拌翼が配されたソイルセメント柱構築装置であって、
複数段の攪拌翼のうち、少なくとも一段の攪拌翼は回転軸と一体には回転せず、前記回転軸の回転の開始と開始時がズレて回転するものである。
本発明にかかる他のソイルセメント柱構築装置は、 前記回転軸と一体に回転する攪拌翼と、他の攪拌翼との間には、スペーサーが配置されている。
本発明にかかる他のソイルセメント柱構築装置は、前記スペーサーがコイルスプリングである。
本発明にかかる他のソイルセメント柱構築装置は、 回転軸と一体に回転しない攪拌翼は、回転軸に突設した突出部、若しくはスペーサー又は攪拌翼の円筒回転体に設けた突起部によって回転方向に押されて回転する。
本発明にかかる他のソイルセメント柱構築装置は、回転軸と一体に回転しない攪拌翼は、前記回転軸或いは他の攪拌翼と、連結材によって連結されている。
更に、本発明にかかる他のソイルセメント柱構築装置は、 前記連結材が、僅かに弛みを持たせたワイヤロープである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上のような構成を有し、以下の効果のうち少なくともいずれか一つを達成する。
<イ>攪拌翼のうち、少なくとも一つの攪拌翼は回転軸と一体には回転しない。したがってその攪拌翼は、回転軸とはズレて回転するため、回転軸を正逆回転をするだけで、攪拌翼の周りにまとわりついた土が崩されてバラけて振りほどかれる。
<ロ>攪拌翼の周りにまとわりついた土が振りほどかれ、再度回転軸を回転することで、塊が細かく砕かれて、固化材と良好に混ぜることができ、良好な攪拌効率を得ることができる。
<ハ>回転軸と一体に回転しない攪拌翼が複数ある場合は、複数段階にズレて回転を始めるため、土塊がより良好に砕かれることになる。
<ニ>連結材として僅かに弛みを持たせたワイヤロープを使用することで、攪拌翼の回転開始時をズラすことが容易に行える。
<ホ>スペーサーとしてコイルスプリングを使用することで、回転軸が回転して連結材が、回転軸と一体でない攪拌翼を上下に引き寄せ、その攪拌翼が上下することになる。
この上下移動が伴うことによって、攪拌翼にまとわりついた土の塊がより崩されて、より良好に土塊を振りほどくことが可能である。
【実施例1】
【0007】
<1> 回転軸
図1において1は回転軸であって、モーター(図示せず)によって回転駆動する。
回転軸1は円柱形状であるが、先端に開口した固化材注入口2まで達する固化材注入路が内部の上下方向に貫通している。
【0008】
<2> 掘削翼
回転軸1の外周に、掘削翼3とその上の攪拌翼4・5が上下に離隔して三段に配置されている。
一番下の掘削翼3は、回転軸1と一体に回転する掘削部材であって、左右に突出した翼3の下には、ビット6が複数個づつ固定されている。
【0009】
<3>下段の攪拌翼
下段の攪拌翼4は、回転軸1の外周に挿嵌された円筒回転体7の外周に、攪拌棒8が四方に向って突出するよう取付けられている。
各攪拌棒8は、円筒回転体7の外周に突設した筒状の取付部に着脱可能となっている。
円筒回転体7は回転軸1とは縁切れており、回転軸1とは一体に回転しない。
攪拌翼4と一番下に位置する攪拌翼3との間には、円筒形状のスペーサー24が挿嵌されている。
円筒回転体4と回転軸1の下端近傍にはピン9がそれぞれ突設されており、そのピン9・9に無端状に繋いだワイヤロープ10がかけられている。
ワイヤロープ10は、ピン9・9にかけたとき、若干たるむように掛けられている。
【0010】
<4>上段の攪拌翼
上段の攪拌翼5も、円筒回転体11の外周に、四方に突出する攪拌棒12が突設され、回転軸1とは一体に回転しない。
各攪拌棒12は、円筒回転体11の外周方向に突設した取付部に着脱自在である。
円筒回転体11に突設されたピン13と、下段の攪拌翼4の攪拌棒8との間には、無端状の輪っかとなったワイヤロープ14が掛けられている。
円筒回転体11と、その下段の攪拌翼4の円筒回転体7との間にもスペーサー25が挿嵌されている。
【0011】
<5>操作方法
回転軸1を回転して下端の掘削翼3により、地盤を掘削して削孔15を掘削する。
回転軸1下端の固化材注入口2から、セメントミルク16などの固化材を削孔15内に注入する。
回転軸1の回転に伴い、ワイヤロープ14・10に引張られて攪拌翼5・4も回転して、掘削土砂と固化材16を混ぜ合わせる。
【0012】
<6>土塊崩し作業
構築装置を操作するオペレーターが、回転軸1の回転が重いと感じたとき、攪拌翼4・5の周りに土がまとわりついている可能性が高い。
このとき、回転軸1を反対方向に180度ほど回転し、正逆回転を数回行う。
回転軸1の回転とは同時に回転しないが、ワイヤロープ10が引張られることで、攪拌翼4が回転を開始し、続いてワイヤロープ14が引張られることで攪拌翼5が回転を開始する。
各攪拌翼4・5の回転の開始は、僅かに弛みがあるワイヤロープ10・14が伸びきった時点であり、その回転開始時にタイムラグが生じる。
つまりは、最初に掘削翼3、続いて攪拌翼4、最後に攪拌翼5が回転を開始することになり、そのタイムラグによって土塊が、まず下側部分、次に上側部分と別個に押されることになる。
従って、土塊が上半分と下半分に分けられるように砕かれて、細かくなる。
その後、再び攪拌・掘削を続ければよい。
【実施例2】
【0013】
図3に示すのは、ワイヤロープ10・14として一本物のワイヤロープを使用した例である。
【実施例3】
【0014】
図4に示すのは、スペーサー24・25の代わりに、コイルスプリング19を使用して、スペーサーの役目を兼用させた例である。
回転軸1が回転すると、ワイヤロープ10が引張られ、攪拌翼4の円筒回転体7を引張って廻すとともに、下方へ引き下げる力が作用する。
このとき、コイルスプリング19を縮め、攪拌翼4が下降する。
その上下の位置の変位が、回転のタイムラグと相まって、攪拌翼4の周りの土塊を砕くように作用する。
その上の攪拌翼5も、同じくワイヤロープ14が引張られて、回転開始が遅れるとともに、下降して、周りの土塊を砕くように作用する。
【実施例4】
【0015】
図5に示すのは、円筒回転体7・11の一部に切り欠き20・21を形成したものである。
それら切り欠き20・21には、それぞれ回転軸1の外周に突設した突出部であるキー22・23が位置している。
前記切り欠き20・21は、下段の攪拌翼4の切り欠き20の幅w1よりも、上端の攪拌翼5の切り欠き21の横幅w2の方が大きくなっている。
回転軸1を回転すると、掘削翼3は回転するが、攪拌翼4・5は、キー22・23がそれぞれ切り欠き20・21の端に当たらなければ回転しない。
正逆回転を数回繰り返せば、掘削翼3、攪拌翼4、攪拌翼5の順で回転開始にタイムラグが生じながら回転する。
【実施例5】
【0016】
図6に示すのは、下段の攪拌翼4の円筒回転体7の上下端に、円周方向の一部が上方或いは下方に突出する突起部26・27が設けられている。
回転軸1の掘削翼3近傍には、突出部であるキー28が設けられている。
その上のスペーサー29の上下端にも、円周方向の一部が上方或いは下方に突出する突起部30・31が設けられている。
スペーサー29は、回転軸1と一体ではなく、回転軸1とは別個に回転可能である。
その上の上段の攪拌翼5の円筒回転体11の下端にも円周方向の一部が下方に突出する突起部32が設けられている。
攪拌翼5の円筒回転体11の上に位置するのは、回転軸1と一体になったリング33である。
回転軸1が回転して、キー28も一体に回転し、下段の円筒回転体7の下端の突起部26に当たって、回転方向に押し、攪拌翼4も回転を開始する。
攪拌翼4が回転し、上端の突起部27がスペーサー29の下方の突起部30に当たると、スペーサー29も回転を開始する。
次にスペーサー29の上方の突起部31が、上段の攪拌翼5の円筒回転体11の下方の突起部32に当たって、攪拌翼5が回転を開始する。
リング33は、攪拌翼5らが回転軸1に対して相対的に上下するのを止めている。




































【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】構築装置の下端部の側面図
【図2】回転軸と攪拌翼の断面図
【図3】構築装置の他の実施例の一部側面図
【図4】構築装置の他の実施例の一部側面図
【図5】構築装置の他の実施例の一部斜視図
【図6】構築装置の他の実施例の一部斜視図
【図7】従来の構築装置による施工状態の一部側面図
【符号の説明】
【0018】
1:回転軸
2:固化材注入口
3:掘削翼
4:攪拌翼
5:攪拌翼
6:ビット
7:円筒回転体
8:攪拌棒
9:ピン
10:ワイヤロープ
11:円筒回転体
12:攪拌棒
13:ピン
14:ワイヤロープ
15:削孔
16:セメントミルク
19:コイルスプリング
20:切り欠き
21:切り欠き
22:キー
23:キー
24:スペーサー
25:スペーサー
26:突起部
27:突起部
28:キー
29:スペーサー
30:突起部
31:突起部
32:突起部
33:リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力によって回転する回転軸に、外周方向に向って突出する攪拌翼が配されたソイルセメント柱構築装置であって、
単数若しくは複数の攪拌翼のうち、少なくとも一つの攪拌翼は、回転軸と一体には回転せず、前記回転軸の回転の開始と開始時がズレて回転することを特徴とする
ソイルセメント柱構築装置。
【請求項2】
前記回転軸と一体に回転する攪拌翼と、他の攪拌翼との間には、スペーサーが配置されていることを特徴とする
請求項1に記載のソイルセメント柱構築装置。
【請求項3】
前記スペーサーがコイルスプリングであることを特徴とする
請求項2記載のソイルセメント柱構築装置。
【請求項4】
回転軸と一体に回転しない攪拌翼は、回転軸に突設した突出部、若しくはスペーサー又は攪拌翼の円筒回転体に設けた突起部によって回転方向に押されて回転することを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のソイルセメント柱構築装置。
【請求項5】
回転軸と一体に回転しない攪拌翼は、前記回転軸或いは他の攪拌翼と、連結材によって連結されていることを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のソイルセメント柱構築装置。
【請求項6】
前記連結材が、僅かに弛みを持たせたワイヤロープであることを特徴とする
請求項5記載のソイルセメント柱構築装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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