説明

ソレノイド

【課題】可動鉄心に連結する可動ピンの強度を必要以上に弱くすることなく、また、可動ピンの軸方向における負荷に対応できるように可動ピンを可動鉄心に連結すること。
【解決手段】ソレノイド10は、励磁コイル13と固定鉄心17と固定鉄心17に対して接近離隔する方向に移動する可動鉄心18とを備える。可動鉄心18の一端に可動ピン用孔182を形成する。可動ピン25を可動鉄心用孔182に挿入した後、可動ピン25の軸心Pに対して偏心した位置を軸心P1とした連結ピン26を打ち込んで、可動鉄心18と可動ピン25とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソレノイドに関し、さらに可動鉄心と可動ピンとを連結することに関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドは、固定鉄心と固定鉄心に対して接近離隔する方向に移動する可動鉄心とを含んで構成され、励磁コイルを通電することによって磁界を発生させて可動鉄心が固定鉄心に対して移動するように構成されている。一般に、可動鉄心には可動鉄心の移動を外部に伝達するための可動ピンが装着されている。例えば、ソレノイドバルブで使用する場合、可動ピンは、バルブの弁体に連結されて、弁体の開閉を行うように構成されている。従って、可動ピンは可動鉄心の動きを確実に外部に伝達しなければならないので、可動鉄心に堅固に固定されている必要があった。可動ピンを可動鉄心に連結固定する場合、従来では以下のように構成されていた。
【0003】
図4(a)に示す従来のソレノイド1は、固定鉄心2と、固定鉄心2に対して接近離隔する方向に移動する可動鉄心3とを備え、可動鉄心3の一端には、可動ピン5が装着されていた。可動ピン5を可動鉄心3に固定する場合、第1の形態としては、図4(a)に示すように、可動ピン5の軸心P上にノックピン(又はスプリングピン)6を打ち込むことにより固定していた(特許文献1)。また、第2の形態では、図4(b)に示すように、可動鉄心3に可動ピン用孔3aを形成し、可動ピン用孔3aに接着剤4を塗布するか又は可動ピン5に接着剤4を塗布するかした後、可動ピン5を挿入することによって固定させていた。さらに、第3の形態としては、図4(c)に示すように、可動ピンを、小径部5aと大径部5bとを有する段付き可動ピン5Aに形成するとともに可動鉄心3に段付き可動ピン用孔3bを形成し、段付き可動ピン用孔3bに段付き可動ピン5Aの小径部5aを圧入して固定させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−307342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のソレノイドにおいて、図4(a)に示す第1の形態では、可動ピン5の軸心P上にノックピン(又はスプリングピン)6を打ち込んで固定させているから、可動ピン5に形成したノックピン孔の残りの肉厚が薄くなって可動ピン5の強度を弱くしてしまっていた。また、図4(b)に示す第2の形態では、接着剤4で可動鉄心3と可動ピン5とを固定しているから、可動ピン5を押し込むような負荷が掛かると、可動ピン5が可動鉄心3の可動ピン用孔3a内に陥没してしまう。さらに図4(c)に示す第3の形態では、段付き可動ピン5Aの可動ピン5の小径部5aが圧入状態で可動鉄心3の段付き可動ピン用孔3bに固定されているから、可動ピン5を押し込むには段つきピンの大径部5bで規制されるものの、逆に可動ピン5を引き抜く力が強いと、可動ピン5が可動鉄心3から抜け易い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、可動ピンを可動鉄心に連結して固定する際、可動ピンの強度を弱くすることなく連結固定するとともに、可動ピンを押す力と引き抜く力に対応できるソレノイドを提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係るソレノイドは、そのために、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、励磁コイルと、固定鉄心と、前記固定鉄心に対して接近離隔する方向に移動可能な可動鉄心と、前記可動鉄心の一端側に装着されて前記可動鉄心の移動を伝達する可動ピンと、を備えたソレノイドであって、前記可動鉄心と前記可動ピンとは、前記可動ピンの軸心から偏心した位置において、連結ピンが打ち込まれることによって連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動ピンを可動鉄心の一端に装着する際、可動ピンの軸心上から外れた位置において、可動鉄心と可動ピンとを挿通する連結ピンを打ち込んで連結固定している。これにより、可動ピンにおける連結ピンを挿入する孔の残りの肉厚を厚くすることができる。また、連結ピンは可動鉄心と可動ピンとを相互に連結しているから、可動ピンが、可動鉄心に形成された可動鉄心用孔に陥没することがなく、また、可動ピンが可動鉄心用孔から引き抜かれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態におけるソレノイドの構成を示す断面図である。
【図2】連結ピンを可動ピンに打ち込む際の一実施形態を示す図である。
【図3】連結ピンを可動ピンに打ち込む際の別の実施形態を示す図である。
【図4】従来のソレノイドの構成の3形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明のソレノイドの実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に説明するように、ソレノイド10はケース体としての円筒状の外パイプ11を備えている。外パイプ11内には、ボビン12上に巻装した励磁コイル13が配置されるとともに励磁コイル13の軸方向両端には、磁気回路を構成する第1のヨーク14、第2のヨーク15が配置されている。
【0011】
励磁コイル13の内周面には内パイプ16が配置され、内パイプ16内に、軸方向に沿って、固定鉄心17、可動鉄心18が挿入されている。可動鉄心18の固定鉄心17と反対側には、可動鉄心18の復帰移動する際に可動鉄心18の移動を規制するストッパ19が配置されている。ストッパ19の外周周りには内パイプ16を介してヨーク20が装着されている。ヨーク20は、第1のヨーク14との間にパッキン21を介在させてソレノイド10の一端に配置されることになる。
【0012】
固定鉄心17は、内パイプ16、第2のヨーク15に内嵌されて励磁コイル13の一端に当接して固定されている。
【0013】
可動鉄心18は、固定鉄心17との間に吸着移動する移動スペースを形成して、固定鉄心17に接近離隔する方向に移動可能に配置されている。可動鉄心18は、固定鉄心17との吸着が解除された場合の復帰位置が、ストッパ19の端面で規制されている。
【0014】
ストッパ19は、ネジ部19aを有し、ネジ部19aにナット部材22を螺合することにより、ヨーク20に固定される。
【0015】
可動鉄心18の固定鉄心17側端面には可動ピン25が連結されている。可動鉄心18の端面181には、可動鉄心18の軸方向に沿って端面181から反固定鉄心17側に向かって延設する可動ピン用孔182が形成されている。可動ピン用孔182に可動ピン25の一端部が挿入されている。可動ピン25の他端は固定鉄心17を貫通してソレノイド10の外方に延設されている。
【0016】
可動鉄心18と可動ピン25とは、連結ピン26で連結されている。図1に示すように、可動ピン25を可動鉄心18の可動ピン用孔182に挿入した後、可動ピン25の軸心Pから外れた偏心位置を軸心P1として、可動鉄心18と可動ピン25とを係合するように、連結ピン26を可動ピン25の軸方向と直交する方向に打ち込む。
【0017】
連結ピン26は、中実円柱状のノックピンを使用してもよく、また、円筒状に形成されたスプリングピンを使用してもよい。連結ピン26を可動ピン25に打ち込む際には、可動ピン25の残りの肉厚の寸法を考慮して連結ピン26の打ち込み位置を決定する。
【0018】
例えば、図2(a)(b)に示すように、連結ピン26の一部が可動ピン25の一部と係合する場合、可動鉄心18の一部と可動ピン25の一部に跨った位置、可動ピン25の軸心と直交する方向における可動ピン25の外周縁を略中心とした位置を軸心P1に連結ピン26を打ち込む。なお、図2(a)は、ソレノイド10の軸心に沿った断面の一部を示すものであり、図2(b)は、図2(a)における可動鉄心18部分を示すII-II断面図である。この場合では、可動ピン25の残りの片肉厚は大きくなるとともに、連結ピン26で可動鉄心18と、可動ピン25とを係合しているから、可動ピン25が可動鉄心18に対して連結されていることになる。これによって、可動ピン25の軸方向に押し込む負荷、又は引き抜く負荷があっても、可動ピン25が、可動鉄心18の可動ピン用孔182内に陥没したり、引き抜かれたりすることはない。
【0019】
また、図3(a)(b)に示すように、連結ピン26の全周部分が可動ピン25内に係合する場合、可動ピン25の軸心Pから外れた偏心位置を軸心P2として、連結ピン26全体を可動ピン25内に挿通するように、可動ピン25の軸方向と直交する方向に連結ピン26を打ち込む。この場合では、可動ピン25の残りの片肉厚は、前述の形態(図2の形態)と比べて小さくなるものの、図4(a)に示す従来の形態に比べると一方の片肉厚が大きくなってその強度を増すことができる。この場合、連結ピン26の径部分全体が可動ピン25内に貫通するため、可動ピン25と連結ピン26とは広い面積で連結されていることになる。また、連結ピン26は軸方向における可動ピン25以外の部分で可動鉄心18に貫通しているから、可動鉄心18と可動ピン25とは、やはり、広い面積で連結されていることになる。従って可動ピン25の軸方向への押し込む負荷、又は引き抜く負荷があっても、可動ピン25が、可動鉄心18の可動ピン用孔182内に陥没したり、引き抜かれたりすることはない。
【0020】
次に、上述のソレノイド10の作用を説明する。
【0021】
励磁コイル13が通電されると、励磁コイル13、第2のヨーク15、固定鉄心17、可動鉄心18、第1のヨーク14間に磁界が発生し、可動鉄心18が固定鉄心17に向かって吸着移動する。可動鉄心18の移動とともに可動ピン25が移動する。図2又は図3に示すように、可動ピン25と連結ピン26との係止状態において、連結ピン26が可動ピン25の軸方向両側に係止した状態で一体的に形成されているから可動鉄心18の移動距離と同じ移動距離が伝達されて移動することになる。可動ピン25の先端には、本ソレノイド10を使用して作業する所定物体の移動体に連結される。
【0022】
上述のように、実施形態のソレノイド10では、可動ピン25が可動鉄心18の可動ピン用孔182に挿通された状態で、連結ピン26を可動ピン25の軸心Pから偏心した位置を軸心P1(又はP2)として打ち込むことによって、可動ピン25の強度を弱くすることなく、また、可動ピン25の軸方向に沿って押し込む負荷や引き抜く負荷に対応できるように可動鉄心18と可動ピン25とを連結することができる。しかも、新たな部品を追加することもないのでコストを高くすることはない。
【符号の説明】
【0023】
10、ソレノイド
13、励磁コイル
17、固定鉄心
18、可動鉄心
25、可動ピン
26、連結ピン
P、(可動ピンの)軸心
P1、P2、(連結ピンの)軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、固定鉄心と、前記固定鉄心に対して接近離隔する方向に移動可能な可動鉄心と、前記可動鉄心の一端側に装着されて前記可動鉄心の移動を伝達する可動ピンと、を備えたソレノイドであって、
前記可動鉄心と前記可動ピンとは、前記可動ピンの軸心から偏心した位置において、連結ピンが打ち込まれることによって連結されていることを特徴とするソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169492(P2012−169492A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30032(P2011−30032)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】