タイヤの状態を監視する方法
本発明は、トレッドであって、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、トレッドがその周方向溝中に配置されている所謂「サウンド」キャビティを含む1組の少なくとも1つの摩耗標識(120A,120B,121)の集成体を呈するよう構成されているトレッドに関する。監視プロセス中、所定のしきい値を超える音響信号を車両(12)に取り付けられている音響センサにより検出(100)し、音響信号は、少なくとも1つの摩耗標識(120A,120B,121)の集成体により生じる音響フットプリントノイズを含むことができ、音響信号に関する情報を自動車(12)に取り付けられていない遠隔サーバ(30)に送信(308)する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両(自動車)タイヤ及びこれらの状態の監視の分野に関する。
例えば、本発明は、タイヤの摩耗又は圧力状態の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
明らかな安全上の理由でタイヤに過剰の負荷を与えずしかもタイヤを摩耗しすぎないようにするためにタイヤを正確にインフレート(膨張)させることが重要である。これは、タイヤトレッドの顕著な摩耗、過負荷又はインフレーション不足による危険性により、パンク、破裂、濡れた路面上におけるハイドロプレーニング、耐久性の低下、過熱及び他の問題が生じるからである。
【0003】
タイヤの状態の監視を容易にするため、タイヤは、通常、状態標識又はインジケータを備えている。
【0004】
摩耗を監視するための状態標識の一例は、タイヤのトレッドパターンに設けられた溝の底部のところに設けられたリブから成り、リブの高さは、タイヤの正確且つ安全な動作に必要なタイヤの溝の最小深さに対応している。かくして、タイヤのタイヤトレッドが摩耗し、リブの頂部がタイヤトレッドの外面と面一をなすと、このことは、溝にとって許容された最小深さに達し又はそれどころかこれを超えていることを意味している。したがって、安全のためにタイヤを交換することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の状態標識の一欠点は、かかる状態標識では、自動車両の運転手の用心及びそのタイヤの状態の定期的な視覚監視が必要であるということにある。たまにあることとして、大抵の運転手は、かかる点検の実施を省いてしまい、自動車両の技術的点検の際、自動車整備修理士(メカニック)がタイヤの摩耗状態又はタイヤの圧力状態を点検したときには自分のタイヤを交換するのが遅すぎるようになる。
【0006】
本発明の目的は、特に、自動車両の運転手側での時期尚早な用心を必要としない自動車両のタイヤの状態を監視する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明の要旨は、少なくとも1台の自動車両の少なくとも1本のタイヤを監視する方法であって、タイヤがタイヤトレッドを備えている、方法において、タイヤトレッドは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、タイヤトレッドがタイヤトレッドの周方向溝中に配置されている所謂「サウンド」キャビティを含む1組の少なくとも1つの摩耗標識を呈するよう構成されており、各キャビティは、タイヤの半径方向外側に向かって開口し、各キャビティは、キャビティが路面とのタイヤの接触領域に入ると実質的に漏れ止め状態で路面によって封止されるよう構成されており、この方法は、
‐所定の半径方向摩耗しきい値を超える路面上におけるタイヤの走行中に1組の少なくとも1つの摩耗標識により生じる音響フットプリントノイズを含むことができる音響信号を自動車両に取り付けられている音響センサにより検出するステップと、
‐音響信号に関する情報を自動車両には取り付けられていない遠隔サーバに送信するステップと、を有することを特徴とする方法にある。
【0008】
キャビティは、実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されているので、空気は、キャビティから路面とのタイヤの接触領域中に進む際に一時的に閉じ込められる。今や、接触領域中のタイヤの変形の影響を受けて、キャビティ内に閉じ込められたこの空気は、圧縮され、次にタイヤトレッドがタイヤの後部で路面との接触状態から離脱する際に接触領域から出る際及びその結果キャビティが開く際、急に膨張する。
【0009】
空気のこの膨張は、約数ミリ秒間続き、その結果、特にキャビティの形状及び容積に応じて、ヒス音(サーという音)又は吸込み吐出しノイズと呼ばれる場合の多い特定の音響フットプリントノイズが生じる。
【0010】
タイヤがしきい値を超えて摩耗した場合にのみ生じるこの特徴的なノイズは、かくして、音(サウンド)警告手段となる。かくして、運転手が自分のタイヤの表面状態を定期的に目で点検していない場合であっても、この特徴的なヒス音の検出により、運転時、運転手に自分のタイヤの過度の摩耗が知らされる。
【0011】
組立体により生じる特徴的な音響フットプリントノイズを音響センサを有するシステム、特にマイクロホンによって検出することができる。
【0012】
この検出に続き、本発明は、検出した音響信号に関する情報を自動車両に取り付けられてはいない遠隔サーバに送信することを提案する。
【0013】
状態に関する情報が遠隔で利用できるので、自動車両の運転手以外の人によりかかる情報を視認し又は処理することができる。かくして、運転手が定期的な用心を行なうことはもはや必要ではない。というのは、遠隔システム又は第三者が運転手に適当な時期に運転手にタイヤの摩耗について知らせることができる。
【0014】
キャビティが溝の中に配置されているので、各キャビティにより放出されるノイズは、タイヤトレッド中のどこか他の場所に配置されているキャビティと比較して増幅される。この増幅により、音響フットプリントノイズと一緒になって音響信号を生じさせる周囲のノイズから識別するのが困難な場合のある音響フットプリントノイズの確実な検出が可能である。組立体によって放出されたノイズは又、キャビティが接触領域をいったん通過すると、タイヤ及び路面により形成されるホーンにより増幅される。ホーン効果によるこの増幅は、サウンドキャビティが好ましくはタイヤの接触領域の中央部分中に軸方向に配置されている場合にその最大状態にある。
【0015】
「接触領域の中央部分」という表現は、通常の荷重及び圧力条件においてこの接触領域の幅の実質的に半分にわたって軸方向に延びると共にタイヤの中央中間平面に対して心出しされた接触領域の部分を意味するものと理解されるべきである。
【0016】
空気がキャビティ内で圧縮され、次にこれから逃げ出ることにより膨張する場合にのみこのヒス音効果が生じると仮定すると、キャビティは、キャビティが接触領域に入った時に路面により実質的に封止されるような仕方で閉鎖されることが重要である。これは、頂部が路面によって覆われるが、外気と流体連通状態にある横方向チャネルを更に含む場合のあるキャビティがサウンドキャビティを形成することがないからである。というのは、キャビティが収容している空気を圧縮することができないからである。これは、特に、一般に種々のキャビティを互いに対して連通させると共に外気に連通させるチャネルのネットワークにより形成される技術の現状のタイヤのタイヤトレッドのパターンについていえる。
【0017】
同様に、キャビティが接触領域に入ったときに寸法が大きすぎて路面によって全体を覆うことができないキャビティ、例えば、長さが接触領域の長さよりも大きいキャビティは、本発明の意味におけるサウンドキャビティを形成することができない。
【0018】
本発明の方法は、以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有するのが良い。
【0019】
所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、各標識は、少なくとも1つの対をなす第1及び第2のサウンドキャビティ及び対に属する各サウンドキャビティを互いに結合する所謂「サウンド」チャネルを有し、第1及び第2のサウンドキャビティは各々、タイヤトレッドの第1及び第2の周方向溝中にそれぞれ配置され、チャネルは、タイヤトレッド中に形成され、対に属する各キャビティ及び関連のチャネルは、
‐タイヤの半径方向外側に向かって開口し、
‐対に属する各キャビティ及び関連のチャネルが路面とのタイヤの接触領域に入ると、実質的に漏れ止め状態で路面によって封止されるよう構成されている。
【0020】
サウンドキャビティは、かかるサウンドキャビティを備えていないタイヤと比較して、特に、溝を通る溝の排出の面で、タイヤの性能レベルを劣化させる場合がある。チャネルが各対のキャビティを互いに結合することにより、性能のこの低下を補償することができる一方で、タイヤの摩耗の検出を可能にする。
【0021】
オプションとして、タイヤが新品の場合、第1及び2の溝の各々が所定の深さを有するとき、タイヤトレッドは、第1及び第2の溝の各々の底部のところに横方向に形成された少なくとも2つのリブを有し、2つのリブは、タイヤが新品の場合、2つのリブを隔てる距離が所定の距離よりも小さい深さの差に実質的に等しい所定高さのものであり、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、第1及び第2の溝の各々により形成されると共に2つのリブによって画定された各キャビティは、音を発生するようになっている。
【0022】
技術の現状において、視覚的摩耗標識は又、タイヤの周方向溝の底部のところに設けられたリブによって形成される。しかしながら、これら視覚的摩耗標識は、リブが互いに極めて遠くに離れて位置するよう配置される。かくして、2つの隣り合うリブを隔てる距離は、路面とのタイヤの接触領域の長さよりも非常に長く、したがって、2つの隣り合うリブが同時に路面と接触関係をなす時点は存在しない。かくして、技術の現状においては、溝により画定されると共に2つの隣り合うリブにより境界付けられる容積部は、キャビティを形成するのが確かであるが、このキャビティは、サウンドキャビティではない。というのは、このキャビティは、路面により実質的に漏れ止め状態に封止できないからである。
【0023】
音響センサは、自動車両の乗員室内に設けられた電話の一部である。この電話は、例えば、自動車両の乗員室内に固定的に設けられた電話又は自動車両に乗っている人のうちの1人が所持している携帯電話であるのが良い。この解決策は、これにより既に内側に位置している装置を再使用することにより自動車両中に存在する装置の数を減少させるので特に有利である。さらに、電話は、遠隔サーバへのデータの送信を容易にする外部通信手段を有する。
【0024】
音響センサは、自動車両内に設けられた電子モジュール、例えば地理位置情報(ジオロケーション)電子モジュールの一部である。
【0025】
この方法は、音響信号から音響フットプリントノイズを抽出するよう音響信号を前処理するステップを更に有する。音響信号がタイヤの摩耗又は圧力に応じて変化すると仮定すると、前処理により、この信号を解釈してタイヤの摩耗レベルを推定し、かくして音響フットプリントノイズによってその状態を判定することができる。
【0026】
一実施形態では、前処理は、送信ステップの実施前に自動車両に取り付けられたシステムによって実施される。
別の実施形態では、前処理は、送信ステップの実施後に遠隔サーバによって実施される。
【0027】
好ましくは、音響フットプリントノイズは、幾つかの個々の音響フットプリント周波数成分を含み、音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、この方法では、前処理中、
‐個々の周波数成分の幾つかのシリーズを列挙し、列挙された各シリーズは、個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができ、
‐音響フットプリントシリーズと呼ばれる1つのシリーズを列挙されたシリーズから選択し、
‐所謂ローカル信頼性指標を音響フットプリントシリーズから求める。
【0028】
本発明の方法により、パラメータ、例えば自動車両の速度を必ずしも知る必要なく、タイヤのユーザにサウンド摩耗標識のレイアウトの幾何学的形状及びこれらの数を警告することができる。事実、音響フットプリントノイズの個々の周波数成分は、標識により放出されるノイズに特有である。かくして、タイヤの半径方向摩耗しきい値を超えると、標識により放出される音響フットプリントノイズは、パラメータに従って周波数が分布した幾つかの個々の周波数性能を含む。この周波数分布は、所定のパターンに従う。このパターンは、種々の個々の信号相互間の間隔比率によって定められる。
【0029】
かくして、収集されると共に個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部をなすことができ、即ち、所定のパターンに従う個々の周波数成分から成る幾つかのシリーズを列挙することによって、各々が1組のサウンド摩耗標識によって放出されるノイズに特有であるといえる個々の周波数成分のシリーズが列挙される。音響フットプリントノイズは、一義的であり、その所定のパターンにより顕著且つ明確に区別された特性を示すので、所定の基準によって列挙されたシリーズの中から音響フットプリントシリーズを選択することができる。
【0030】
この方法は、遠隔サーバが前処理の結果に従ってタイヤの状態及び経時的なその過去の動向の診断を行なう後処理ステップを更に有する。このために、サーバは、過去の状態を記憶する手段を有するのが良い。特に、診断により、タイヤの残りの寿命又は運転手の運転スタイルによるタイヤの使用形式を推定することができる。
【0031】
一実施形態では、
‐時間的に連続していて、音響フットプリントノイズを含むことができる幾つかの音響信号を必要とし、各音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択し、選択した音響フットプリントシリーズについてローカル信頼性指標を定め、
後処理後、
‐音響フットプリントシリーズのローカル信頼性指標に、基づいて所謂グローバル信頼性指標を求め、
‐グローバル信頼性指標が絶対値としてグローバル信頼性指標と関連した所定のしきい値以下である場合、タイヤの摩耗に関する警報を出す。
【0032】
周波数領域中の組み立てによって放出されたノイズの大きさは、特に、タイヤが走行している表面で決まる。例えば、比較的軟らかい路面は、多孔質の路面よりも標識からのノイズの放出に好都合である。しかしながら、検出が両方の場合に可能であることに変わりはない。したがって、検出に好都合な表面があればそれほど好都合ではない表面もあり、これら2種類の表面は、互いにランダムに続く可能性がある。かくして、第1のローカル指標は、第1の音響信号に関し、このローカル指標と関連したしきい値よりも大きい場合があり、次に、第2のローカル指標は、第1の音響信号に続く第2の音響信号に関し、かかるしきい値よりも小さい場合がある。この場合、半径方向摩耗しきい値を実際に超えているかどうか及び第2の指標が好ましくない表面に起因してしきい値を下回っているかどうか或いは半径方向摩耗しきい値を超えていないかどうか及び第1の指標が半径方向摩耗しきい値を誤って示しているかどうかをいうことが不可能である。
【0033】
誤った警告のこの恐れを減少させると共に検出方法を一層ロバストにするために、幾つかの時間的に連続した音響信号を処理する。連続した音響信号の幾つかの音響フットプリントシリーズが半径方向摩耗しきい値を越えたことを示すローカル信頼性指標を示した場合、半径方向摩耗しきい値を実際に超えた可能性が高く、これは、グローバル信頼性指標によって示される。
【0034】
別の実施形態では、時間的に連続して、音響フットプリントノイズを含むことができる幾つかの音響信号を収集し、各音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択し、
後処理中、
‐各選択した音響フットプリントシリーズの個々の周波数成分相互間の時間の連続性から所謂グローバル信頼性指標を求め、
‐グローバル信頼性指標が絶対値としてグローバル信頼性指標と関連した所定のしきい値以下である場合、タイヤの摩耗に関する警報を出す。
【0035】
この実施形態では、誤った警告の恐れも又減少する。グローバル信頼性指標は、グローバル信頼性指標がローカル信頼性指標に依存している先の実施形態とは異なり、局所信頼性指標とは独立して図形表示に基づいて定められる。かくして、タイヤの摩耗が互いに関連付けられないグローバル信頼性指標とグローバル信頼性指標によって正確に検出されることが保証され、それにより、本方法がロバストになる。
【0036】
この方法により、複数台の自動車両のタイヤを監視することが可能であり、この場合、診断は、複数台の自動車両のタイヤの全てについて行なわれる。事実、この方法は、有利には、自動車両レンタル代理店によって実施でき、自動車両レンタル代理店は、この場合、その所有する全自動車両のタイヤの状態をモニタすることができる。タイヤの状態の遠隔送信により、レンタル代理店は、自動車両の各々のところに行って調査する必要がない。遠隔サーバの役割は、この情報を全て集中管理することにある。
【0037】
遠隔サーバは、診断結果に従って、ユーザにタイヤの使用推奨内容を送信する。この使用推奨内容は、速度又はタイヤのうちの1本又は2本以上の交換前の残りの走行距離に関するのが良い。システムは又、運転手が即座に自分のタイヤを交換することを推奨することができる。
【0038】
かかる推奨内容は、SMS又は電子メッセージによってユーザに送信される。これは、特に、組立体に関する音響状態信号が運転手の携帯電話を用いて検出される場合に有利である。この推奨内容は又、任意他の情報手段、例えば電話、ポケットオーガナイザ(pocket organizer)、端末、ポータブルその他によって送信可能である。
【0039】
本発明の要旨は又、コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、コンピュータ上での実行時に上述の方法のステップの実施を制御することができるコード命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムにある。
【0040】
本発明は又、上述のプログラムを記憶形態で有するデータ記憶媒体に関する。
【0041】
本発明の要旨は又、上述のプログラムをダウンロードする目的での通信ネットワーク上へのプログラムの提供にある。
【0042】
本発明の内容は、添付の図を参照することにより一例として与えられているにすぎない以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の監視方法を実施するのに適した設備の略図である。
【図2】新品のタイヤのタイヤトレッドの略図である。
【図3】図2に示されたタイヤのタイヤトレッドを摩耗状態で示す図である。
【図4】図3に示されたタイヤのタイヤトレッドの半径方向断面図である。
【図5A】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5B】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5C】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5D】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5E】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6A】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6B】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6C】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6D】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6E】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図7】本発明の第1及び第2の実施形態としての監視方法のステップを示す図である。
【図8】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図9】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図10】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図11】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図12】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図13】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図14】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図15】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図16】連続して測定された幾つかの音響信号フレームを示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態としての方法の追加のステップを示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態としての方法の追加のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、自動車両12のタイヤを監視する本発明の方法を実施するのに適している全体として符号が10で示された設備を示している。
【0045】
図1では、自動車両12は、自動車である。本発明は又、タイヤを備えた任意形式の自動車両、例えば重量物運搬車両にも利用できる。
【0046】
各自動車12は、状態が監視されなければならないタイヤ14を有している。タイヤの状態は、例えば、その摩耗又はその圧力を特徴としている。
【0047】
このため、各タイヤ14は、サウンド状態標識16、即ち、タイヤの状態に従って、特にその摩耗に従って変化する音響フットプリントノイズを放出することができる標識16を備えている。
【0048】
車両12は、その乗員室内に、所定の半径方向摩耗しきい値を超える標識16の全てによって生じた音響フットプリントノイズを含む音響信号を検出するシステム18を更に有している。システム18は、音響センサ、例えばマイクロホン20、音響センサ20により検出された信号を処理する手段22及び遠隔処理の結果を送信する手段24を有している。
【0049】
システム18は、車両12内に、特に乗員室内に固定的に設けられたシステムであるのが良い。このシステムは、かくして音響センサ20が運転手の口の近くでフロントガラスに直立して固定され、処理手段22が車両のコンピュータ内に組み込まれた固定電話であるのが良い。このシステムは、GPS地理位置情報(ジオロケーション)の電子モジュール、携帯情報端末、緊急通報システムの形態をしていても良く又は他のかかる形式のものであって良い。この場合、音響センサ20は、モジュール内に組み込まれ又はその外部に設けられ、モジュールの処理手段22に接続されるのが良い。
【0050】
システム18は、車両12の乗員室内に永続的には取り付けられていないモバイルシステム、例えば、運転手28の携帯電話26であっても良い。この場合、音響センサ20、処理手段22及び送信手段24は、携帯電話26それ自体の中に組み込まれる。
【0051】
図1では、運転手28の携帯電話26は、システム18から別個のものとして示されている。上述したように、これら2つのシステムを合体させても良い。
【0052】
設備10は、遠隔データ送信及び受信手段32、データベース34及びユーザ38によりアクセス可能な指令及び制御端末36が結合された遠隔サーバ30を更に有する。
サーバ30は、送信手段24と送信及び受信手段32の協働により車両12内に組み込まれた監視システム18と相互作用することができる。
【0053】
図2は、タイヤ14の一部を新品状態で示している。
【0054】
タイヤ14は、実質的に円筒形のタイヤトレッド112を有し、その外面は、トレッドパターン114を備えている。特に、タイヤトレッド112は、第1及び第2の溝116A,116Bを有し、これら溝は、周方向且つ互いに平行であり、タイヤの表面をえぐった状態で形成され、タイヤ14が新品である場合には所定深さのものである。例えば、これら溝の深さは、自家用車の場合、8ミリメートルのオーダのものである。
【0055】
タイヤのタイヤトレッド112は、溝116A,116Bに横方向に溝116A,116Bの底部に形成された1組のリブ118を有し、リブ118の高さは、タイヤが新品である場合、あらかじめ定められている。例えば、これらリブの高さは、3ミリメートルのオーダのものである。図2に示されている例では、リブ118は、タイヤ14の周囲に沿ってぐるりと等間隔を置いて分布して配置されており、2つの隣り合うリブ相互間の距離は、20〜30ミリメートルのオーダのものである。
【0056】
タイヤトレッド112は、第1及び第2の溝116A,116B中にそれぞれ配置された1組の第1及び第2のキャビティ120A,120B及び1対のキャビティ120A,120Bと関連した横方向チャネル121を更に有している。チャネル121は、トレッド112中に形成され、このチャネルは、キャビティ120A,120Bを互いに結合している。キャビティ120A,120Bは、軸方向に整列している。変形例として、キャビティは、互いに対して軸方向にずれている。
【0057】
各溝160A,160B及び2つの隣り合うリブ118によりそれぞれ画定された容積部は、各々がタイヤ14の半径方向外側に向かって開口したキャビティ120A,120Bを形成している。チャネル121も又、タイヤ14の外側に向かって開口している。
【0058】
タイヤが新品である場合、図2に示されているように、リブ118の高さは、溝116の深さよりも小さく、したがって、2つの隣り合うキャビティ120A,120Bは、リブ118の上方に、即ちリブ118の頂部のところに位置した流体連通通路を有するようになっている。かくして、タイヤトレッドが平坦且つ滑らかな路面111と接触状態にあるときであっても、路面111は、キャビティ120A,120Bを完全に塞ぐことはない。というのは、リブの頂部は、路面111と接触状態にはないからである。この場合、種々の隣り合うキャビティ120A,120Bは、リブの頂部及びキャビティを覆っている路面111によって画定されたのど状チャネル又はチャネル121によって互いに流体連通状態にある。
【0059】
図3は、図2のタイヤ14を摩耗状態で示している。換言すると、このタイヤは、多くの距離を走行したタイヤであり、そのタイヤトレッド112は、数ミリメートル、約5mmが失われるまで次第に摩耗している。
【0060】
適例では、図3に示されているタイヤ14のタイヤトレッド112の摩耗は、6mmオーダのものであり、即ち、タイヤが新品であった場合のリブ118の頂部とタイヤトレッドの表面との間の距離よりも大きい。この顕著な摩耗が生じているとした場合、リブ118の頂部は、タイヤトレッド112の表面と同一高さ位置にある。かくして、各キャビティ120A,120B及びチャネル121の口は、タイヤトレッド上に形成された実質的に平坦な輪郭によって画定される。各対のキャビティ120A,120B及びこれと関連したチャネル121は、別々であり、互いに分離されている。
【0061】
各対をなすキャビティ120A,120Bは、2つの隣り合うリブ118相互間の周方向差に対応した20〜30ミリメートルのオーダの長さを有すると共にリブ118の初期高さ以下の2ミリメートルオーダの深さを有する。
【0062】
各対をなすキャビティ120A,120B及び関連のチャネル121は、サウンド摩耗標識16のうちの1つを形成している。タイヤ14は、タイヤ14の周囲に沿って等間隔を置いて分布して配置された8つで1組の標識16、即ち、1組をなす8つの対をなすサウンドキャビティ120A,120B及び8つの関連の横方向チャネル121を有する。かくして、標識16は、タイヤトレッド112に周方向に等間隔を置いて分布して配置されている。対をなすキャビティ120A,120B及びチャネル121は、同一の形状を有している。
【0063】
所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、対をなすサウンドキャビティ120A,120B及び関連のサウンドチャネル121の全容積は、4cm3、好ましくは5cm3以上である。
【0064】
各キャビティ120A,120B及びチャネル121の口は、実質的に平坦な輪郭によって画定されているので、この口は、走行時に滑らかで且つ平坦な路面により完全に気密封止可能である。換言すると、タイヤ14が摩耗すると、キャビティ120A,120B及びチャネル121は、これらが路面とタイヤ14の接触領域に入ると、実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されている。
【0065】
かかるキャビティ120A,120B及びかかる関連のチャネル121は、タイヤのタイヤトレッド112の表面上に形成され、一方において、タイヤの半径方向外側に向かって開口し、他方において、これらが接触領域に入ると、気密封止されるよう構成されており、かかるキャビティ及びかかる関連のチャネルは、「サウンド」キャビティ及びチャネルと称される。
【0066】
種々のキャビティサイズ又はタイヤに対するこれらキャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の種々の向きは、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
タイヤ14では、かかるサウンドキャビティは、タイヤが所定の半径方向摩耗しきい値を超えた場合にのみ現われ、このしきい値以下では、特にタイヤが新品の場合、見えない。
【0068】
図4は、路面上の走行時における図4のタイヤに類似したタイヤの半径方向断面図である。寸法形状は、説明を分かりやすくするために恣意的に変更されている。このタイヤ14は、摩耗状態にあり、その結果、1組の8つのサウンドキャビティ120A,120B及び8つの関連のチャネル121を有している。
【0069】
矢印122は、路面上における走行時のタイヤ14の回転方向を示している。所与の時点において、タイヤ14のタイヤトレッド112の一部は、路面と接触状態にある。この接触部は、接触領域124と呼ばれている。各対のキャビティ120A,120Bは、タイヤ14の周方向タイヤトレッドの一部により形成されたタイヤの接触領域124の中央部132中に軸方向に位置決めされている。
【0070】
図4に示されている例では、接触領域124は、3つの対をなすサウンドキャビティ126及び3つの関連のサウンドチャネルを有し、これらの半径方向外側口は、路面111で覆われている。かくして、これら3つの対をなすサウンドキャビティ126及びこれらと関連したサウンドチャネルは、気密封止される。
【0071】
タイヤの接触領域124は、対をなす封止キャビティ126及びこれらと関連したチャネルの上流側に位置した対をなすサウンドキャビティ128及びこれらと関連したサウンドチャネルを更に有しており、これらサウンドキャビティ128及びサウンドチャネルは、これらの口が接触領域には存在せず、したがって路面によっては覆われていないので開口している。タイヤが矢印122によって示された方向に走行しているとき、対をなす開口キャビティ128及びこれらと関連したチャネルは、これらの口が路面111によって塞がれるまで接触領域124に向かって進む。
【0072】
最後に、タイヤ14のタイヤトレッド112は、対をなすキャビティ126及びタイヤの回転方向に関して関連のチャネルの下流側に位置した対をなすキャビティ130及びこれらと関連したチャネルを更に有し、これらキャビティ130及び関連のチャネルは、封止されている。図5に示された例では、図示の下流側の対をなすキャビティ130及び関連のチャネルは、路面111がこれらの口と接触していないので開口している。すぐ前の時点では、この対をなすキャビティ130及び関連のチャネルは、封止されていた。というのは、これらは、路面111とタイヤの接触領域124の付近に位置していたからである。
【0073】
かくして、タイヤが走行している間、所与の対をなすサウンドキャビティ120及び関連のサウンドチャネルは、これらが開口する上流側位置128を次々に占め、次にこれらが路面により覆われるのでこれらが封止される接触領域124に位置した位置125を占め、最後に、これらが路面によってもはや覆われない開口位置130を再び占める。
【0074】
換言すると、タイヤの回転により、所与の対をなすキャビティ及び関連のチャネルに関し、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内への空気の取り込みが生じ、対をなすキャビティ及び関連のチャネルが接触領域124で路面により封止されると、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入っている空気の圧縮が生じ、次に、対をなすキャビティ及び関連のチャネルが路面からのタイヤトレッドの分離により開口すると、対をなすキャビティ及び関連のチャネルに入っている空気の膨張が生じる。
【0075】
このように連続した取り込み/圧縮/膨張ステップは、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入った圧縮空気の膨張に起因して生じるヒス音又は吸込み吐出しノイズと呼ばれる場合が多い特徴的な音響フットプリントノイズの源である。
【0076】
次に、図5A〜図5E及び図6A〜図6Eを参照してサウンド摩耗標識16によって放出される吸込み吐出しノイズの検出原理について説明する。これらの図は、実質的に90km/hの一定速度で走行している図3の摩耗状態の乗用車用タイヤの理論的な吸込み吐出しノイズを示している。
【0077】
図5A〜図5Cは、時間領域内における理論的信号を示し、図6A〜図6Cは、フーリエ変換により各信号5A〜5Cからそれぞれ得られた周波数領域内における理論的信号を示している。
【0078】
図5Aは、標識16からのパルスと呼ばれる時間信号ST,Uを示し、これは、単位となっている。このパルスは、標識16により放出されたノイズの大きさ(単位Pa)を表すと共に固有周波数f0、最大振幅a0及び固有減衰時間t0の減衰正弦波の形態をしている。適例では、f0=1200Hz、a0=0.044Pa、t0=0.001秒である。
【0079】
図6Aの単位周波数信号SF,Uは、中心が固有周波数f0に位置したガウス曲線の形態をしている。注目されるように、単位パルスが短ければ短いほど、正弦波振動はそれだけ一層小さくなると共に周波数スペクトルがそれだけ一層広くなる。これとは逆に、単位パルスが長ければ長いほど、正弦波振動がそれだけ一層多くなると共に周波数スペクトルがそれだけ一層狭くなる。かくして、完全な非減衰正弦波に関し、図5Aのフーリエ変換は、周波数f0のディラックのスパイクの形態を取るであろう。
【0080】
図5Bは、図3のタイヤの標識16からの走行時間信号ST,Dを示している。タイヤは、8つの標識16を有しているので、走行時間信号は、接触領域中への各標識16の入り込みに対応した数個のスパイクを有する周期TTUS=0.019秒、振幅1のディラックの櫛の形態をしている。
【0081】
走行周波数信号SF,Dも又、ピッチFTUS=1/TTUSの等間隔を置いて位置した個々の周波数成分によって特徴付けられると共に振幅FTUS=1/TTUS=52.2のディラックの櫛の形態を取る。注目されるように、周波数信号SF,Dの振幅は、時間信号ST,Dの振幅よりも極めて大きい。
【0082】
図5Cは、図5Aの単位時間信号ST,Uと図5Bの走行時間信号ST,Dの畳み込み積に対応した標識16からの全時間信号ST,Tを示している。したがって、全時間信号ST,Tは、実質的に0.044Paに等しい最大振幅の一連の減衰正弦波の形態を取る。
【0083】
全周波数信号SF,Tは、図6Aの単位周波数信号SF,Uと図6Bの走行周波数信号SF,Dの積に対応している。したがって、全周波数信号SF,Tは、周波数FTUSでサンプリングされると共に単位時間信号ST,Uに対してファクタFTUSだけ増幅された単位周波数信号SF,Uの形態を取る。この増幅は、走行時間信号ST,Uの周波数反転に起因している。適例では、全周波数信号SF,Tの大きさは、実質的に2.28Paに等しい。
【0084】
実際には、標識16からの全信号ST,T、SF,Tは、周囲ノイズに対応した疑似信号Bにより覆い隠される。ノイズBは、標準タイヤを履いて90km/hで走行しているBMW車318dの乗員室内で記録された。
【0085】
図5Dは、乗員室内で測定したノイズに対応した時間信号BTを示している。かかるノイズBTの最大の大きさは、実質的に0.034Paに等しい。図6Dに示されている対応の周波数信号BFの最大振幅は、実質的に0.348Paに等しい。
【0086】
図5Eは、図5Cの全理論時間信号ST,Tと図5DのノイズBTに対応した時間信号の重ね合わせに対応した全時間信号ST,Tを示している。時間領域内における信号対雑音(SN比)は、実質的に1.04に等しい。図6Eは、図6Cの全理論周波数信号SF,Tと測定ノイズに対応した図6Dの周波数信号BFの重ね合わせに対応した全周波数信号SF,Tを示している。周波数領域におけるSN比は、実質的に13.4に等しい。
【0087】
これら信号の分析結果の特に示すところによれば、周波数領域内の信号で功を奏している。これら信号は、時間領域の信号よりも高いSN比を示すからである。摩耗の検出及びこの検出の信頼性は、かくして、大幅に向上している。
【0088】
図6Eの全周波数信号SF,Tは、特に所定の分布パターン、FTUSに等しい各スパイク相互間のピッチ、信号の最大振幅A及び信号の個々の周波数成分の数Nを含む幾つかの特徴を示している。
【0089】
FTUSは、タイヤ14の速度V、等距離間隔を置いた標識16の数NTUS及びタイヤ14の周長Cの関数である。
【0090】
最大振幅Aは、固有減衰時間t0、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS及びタイヤ14の速度Vの関数である。最大振幅Aは又、サンプリング周波数Fe及び時間信号収集周期Tを含む時間信号収集パラメータの関数である。
【0091】
個々の周波数成分の数Nは、各標識16からの個々のパルスの帯域幅の関数であり、この帯域幅は、固有減衰時間t0で決まる。Nは又、周波数FTUS、標識16からの全信号とノイズに対応した信号の相互作用及びサンプリング周波数Feと収集時間Tの比として定義される周波数分解能Δfで決まる。
【0092】
図7〜図16は、本発明の第1及び第2の実施形態に従って車両12のタイヤ14の状態を監視する方法の種々のステップを示している。
【0093】
図8は、図3の摩耗状態の右前のタイヤを履いたBMW車318dの乗員室内で測定された音響ノイズの生の全時間信号ST,Bを示している。収集パラメータは次の通りであり、即ちT=1秒、Fe=8000Hzである。しかしながら、タイヤ14の特性、例えば標識16の数NTUS、タイヤ14の周長C、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS又は車両の速度Vは未知である。
【0094】
第1ステップ90において、車両12が路面上を走行している。路面上における車両12のタイヤ14の走行により、音響フットプリントノイズSF,Tを含むことができる生の音響時間信号ST,Bが放出される。
【0095】
次のステップ100において、周囲ノイズ及び音響フットプリントノイズSF,Tを含むことができる音響信号を自動車に搭載した監視システム18の音響センサ20により検出する。
【0096】
次に、ステップ101〜306を含む前処理中、音響センサ20により検出された音響信号を処理して1組の標識16により生じた音響フットプリントノイズを隔離し、これから固有音響フットプリントを抽出する。これら前処理ステップを永続的に、定期的に又は要望に応じて実施できる。前処理は、システム18の手段22によって実施される。
【0097】
ステップ101において、フーリエ変換を図8の生の全時間信号ST,Bに適用して図9の対数周波数スケールで表された生の全周波数スペクトルSF,Bを得る。
【0098】
次に、ステップ102において、生のスペクトルSF,Bの周波数領域Dfを隔離し、この周波数領域は、図10の線形周波数スケールで表された500〜2500Hz、この場合1000〜2000Hzである。
【0099】
次に、ステップ104において、ノイズをなくし、周波数領域Df中の生のスペクトルSF,Bをオプションとして標準化する。適例において、生のスペクトルSF,Bの最小値を通るフィルタリング曲線を求め、次にフィルタリング曲線を生のスペクトルSF,Bから差し引く。すると、図11に示されているフィルタリング済みスペクトルが得られる。次に、必要ならば、標準化をこのフィルタリング済みスペクトルに対して行なうのが良い。
【0100】
最後に、ステップ106において、個々の周波数成分を所定の強度しきい値よりも大きな強度を示す図11のフィルタリング済みスペクトルから分離する。かくして、図12に示されているように、幾つかの個々の周波数成分を含む正味のスペクトルSAが得られる。したがって、正味のスペクトル又は処理済み音響信号SAは、処理された生の全時間信号ST,Bから得られる。変形例として、処理ステップは、行なわれなくても良く、或いは、他の追加のフィルタリングステップが実施される。
【0101】
適例において、処理済み音響信号SAは、図12に1〜30まで番号付けされた30個の個々の周波数成分を含む。タイヤが摩耗した場合、サウンドキャビティは、図6Cに示されている理論的信号に類似した信号を放出する。したがって、タイヤが摩耗しているかどうかを判定するため、即ち、標識16が吸込み吐出しノイズを放出しているかどうかを判定するため、信号SAが標識16により放出された理論的信号SF,Tに類似した信号を含むかどうかを判定することが有用である。
【0102】
利用できない特性が周波数FTUSを一部とすることができる基準周波数間隔Iを定めることが分かった。周長が1.3mから3mまで様々であり、標識の数が1つから10個まで様々であり、車両の速度が10km/hから130km/hまで様々な場合がある自動車用タイヤ群の場合、周波数FTUSは、1〜278Hzの間隔I内で様々な場合がある。重量型タイヤの場合、間隔Iは、ほぼ同じである。
【0103】
図12を参照すると、ステップ200において、処理済み音響信号SAの対をなす個々の周波数成分の全てが列挙され、各対の信号を互いに隔てる周波数の差を求める。次に、30個の個々の周波数成分に関し、435個の考えられる対が得られる。これらを隔てる周波数の差が間隔Iに属する対だけを保持する。かくして、317個の対だけが間隔1〜278Hz内で周波数の差を示す。一例として、以下の表1は、317個のうちから40個の対をなす個々の周波数成分を対応の周波数の差と一緒に示している。
【0104】
【表1】
表1:個々の周波数成分の対及び対応の周波数の差の例
【0105】
次に、ステップ202において、各対の個々の周波数成分の各周波数の差を族周波数差間隔σFにより定められた周波数差族と呼ばれる族で分類する。各族周波数差間隔は、間隔I内に位置し、間隔I及び音響信号SAの周波数分解能Δfの関数として定められる。適例では、26個の周波数差族が定められ、これらの周波数差間隔は、以下の表2に与えられており、これらの全ては、4Hz以下である。変形例として、間隔σFは全て、2Hz以下である。
【0106】
【表2】
表2:周波数差族
【0107】
以下において、ステップ204において族番号17の処理についてのみ説明し、他の族の処理は、必要な変化を加えることによってこれから演繹される。317個の対のうちこれらを隔てる周波数の差が族周波数差間隔番号17、この場合間隔102〜106Hzに属する対を表3に示すように求める。
【0108】
【表3】
表3:族番号17の対をなす個々の周波数成分
【0109】
次にステップ206において、族周波数差間隔σF内のシリアル周波数差と呼ばれる周波数差Esだけ離されている少なくとも2つの連続した個々の周波数成分を含む個々の周波数成分のシリーズの全てを列挙する。各列挙されたシリーズは、個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができる。ここでの目的は、事実、標識16からの全信号に特有なディラックの櫛を再構築することである。したがって、族番号17に関し、以下の表4でまとめられている3つのシリーズを列挙する。各列挙されたシリーズは、基準周波数間隔I、特に族周波数差間隔σF内の周波数差だけ1対ずつ互いに間隔を置いて位置する少なくとも2つの個々の周波数成分を含む。かくして、各音響フットプリントシリーズは、未知の特性、即ち、標識16の数NTUS、タイヤ14の周長C、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS及び車両の速度Vの互いに異なる値で標識16により生じた理論的信号を表すことができる。
【0110】
【表4】
表4:族1で列挙されたシリーズ
【0111】
次に、ステップ300において、各族に関し、シリアル信頼性指標Isを第1の所定の特性の関数として各列挙されたシリーズについて求める。これら第1の所定の特性は、シリーズの個々の周波数成分相互間の周波数差の分散度DE、音響信号とノイズの比R、シリーズ中の個々の周波数成分の数NS及びシリーズの密度D、即ち個々の周波数成分の総数とあり得る個々の周波数成分の最大数の比を含む。適例では、シリーズ番号2の場合、DE=0.5、R=13.4、NS=8、D=100%である。
【0112】
次に、ステップ302において、信頼性指標をR、D、NS及びDEの重心として計算する。各族の各シリーズの指標Isを計算する。次に、各族の各列記されたシリーズの指標Isを互いに比較する。ここで、指標Isが高ければ高いほど、対応のシリーズが求めた理論的信号を表している可能性がそれだけ一層高い。次に、最も高い指標Isを有する音響フットプリントシリーズを選択する。適例では、族番号17のシリーズ2は、3つの識別されたシリーズのうちで最も高い指標Is=0.994を有している。
【0113】
変形例として、各族の各列記されたシリーズの指標Isの計算後、第1の所定の特性の関数として26個の族の各々の中で1つのシリーズを選択する。したがって、26個の選択された選択されたシリーズが得られる。次に、各族の各選択されたシリーズに関し、各選択されたシリーズの第2の所定の特性の関数として族指数Ifを求める。第1の特性と第2の特性は、互いに同じであっても良く、互いに異なっていても良い。最後に、26個の選択されたシリーズの各族指数Ifを比較することにより音響フットプリントシリーズを選択する。
【0114】
族番号17の音響フットプリントシリーズ番号2は、列記されたシリーズの全ての中から標識によって放出されたノイズに対応したシリーズ番号を構成する可能性が最も高いシリーズ番号であるが、このシリーズの第1の特性は、タイヤの摩耗に関して警報を出すには不十分なままであるようにすることは不可能ではない。
【0115】
かくして、ステップ304において、各第1の特性に関し、適例において、比R(図13)、シリーズ中の個々の周波数成分の数NSの周波数差(図14)の分散度DE及びシリーズの密度D(図15)について適合指標Ipを求める。これらの図において、各適合指標を各第1の特性のS字形形式の変数関数によって定める。例えば、比R=7の音響フットプリントシリーズの場合、円と関連した適合指標Ipは、0.98に等しい。分散度DE=1.5の音響フットプリントシリーズの場合、DEと関連した適合指標Ipは、0.9に等しい。NS=4個の個々の周波数成分を含む音響フットプリントシリーズの場合、NSと関連した適合指標Ipは、0.5に等しい。
【0116】
次に、指標Ipからローカル信頼性指標Iclを計算する。指標Iclは、指標Ipの積に等しい。変形例として、Iclは、指標Ipの算術又は加重平均に等しい。
【0117】
次に、ステップ308において、ローカル信頼性指標Iclを含む1組の標識16によって生じた音響信号に関する情報を遠隔サーバ30に接続された送信手段24及び受信手段32によって遠隔サーバ30に送信する。サーバ30は、全所有自動車両から、特に図1に示されている2台の車両からタイヤの状態に対する情報を集めるのに適している。
【0118】
次に、ステップ310を含む後処理を実施し、ステップ310では、サーバ30は、受け取った情報、特にローカル信頼性指標Iclを処理する。この後処理は、例えば、経時的な同一車両に関する情報の記憶をデータベース34内に有している。
【0119】
後処理は、経時的に記憶された互いに異なる情報を分析してその過去の動向に従ってタイヤの状態の診断を行なうステップ312を更に有する。実際には、周波数領域内の幾つかの連続した音響信号を取り出す。各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択する。連続した音響信号から選択された音響フットプリントシリーズS1〜S11の信号を例えば図16のように時間の関数としてグラフ表示する。注目されるように、シリーズS3、S8及びS9は、見えない。これは、例えば疑似ノイズに起因している場合がある。1つのシリーズから別のシリーズへの僅かな周波数のずれは、各音響フットプリントシリーズの2つの隣り合う個々の周波数成分を隔てる周波数FTUSを変化させる僅かな速度の変化に起因している。
【0120】
音響フットプリントシリーズの信号の時間的連続性からグローバル信頼性指標Icgを求める。この場合、一シリーズの信号の位置を次のシリーズの信号の位置と比較する。信号のグラフ表示を例えば画像認識アルゴリズムによって用いてグローバル信頼性指標Icgを求める。
【0121】
別の変形例では、グローバル信頼性指標Icgを例えば最後の5つのローカル指標の滑り(移動)平均によりこれらローカル指標Iclから求める。
【0122】
この診断により、特に車両のタイヤに関する将来の使用推奨内容を突き止めることができる。これら推奨内容は、例えば、運転手の運転スタイル(荒っぽい運転又は通常の運転等)で決まる場合がある。
【0123】
かくして、ステップ314において、遠隔サーバ30は、自動車のタイヤの使用に関してあらかじめ定められている推奨内容、例えば、超えるべきではない制限速度、タイヤを再インフレートさせる命令又は1本又は2本以上のタイヤを交換する助言を送る。この推奨内容は、運転手の運転に適したタイヤモデルを更に含むのが良い。上述の2つの変形例では、指標Icgが、絶対値として、このグローバル指標Icgと関連した所定のグローバルしきい値Sgを超える場合、サーバ30は、タイヤ14の摩耗に関する警告を出す。
【0124】
この使用推奨内容は、例えば、サーバ30に結合された送信手段32を介して自動車の運転手28にその運転手の携帯電話26により送るのが良い。かくして、運転手28は、自分のタイヤの状態について心配する必要はない。というのは、この運転手には自分のタイヤに対して適時取るべき行為について自動的に警告が行なわれるからである。
【0125】
使用推奨内容は又、サーバ30に結合されていて、必ずしも車両の運転手ではないユーザ38により利用可能な端末36でアクセス可能である。端末36からサーバ30への結合は、ワイヤードリンクであるのが良いが、リモートリンク、例えばインターネットを介してであっても良い。
【0126】
ユーザ38は、自分の端末36を介して1台又は2台以上の自動車12のタイヤの状態に関する情報及びこれらタイヤの使用推奨内容にアクセスすることができる。かくして、端末36により、全所有自動車両に関する情報を集中管理することができ、これは、自動車レンタル会社の場合に特に有用な場合がある。レンタル会社は、この情報を用いて自動車の運転手の運転形式に従って運転手に請求書を送ることができる。事実、これまでに利用された走行距離に関する情報は、不完全である。というのは、これにより、レンタル会社は、荒っぽい運転をする自動車の運転手と穏やかな運転をする運転手を識別することができない。
【0127】
本発明の方法の第2の実施形態では、ステップ100において選択された音響信号を遠隔サーバ30に直接送り、遠隔サーバ30は、前処理ステップ101〜306及び後処理ステップ310〜312を実施する。この第2の実施形態は、搭載されたシステム18の処理手段22のコンピュータ処理能力が限られている場合に有利である。
【0128】
図17及び図18は、第3の実施形態としての監視方法の追加のステップを示している。この第3の実施形態では、シリーズを再構築するステップが指標Isを求めるステップ前であって各族中のシリーズの列記ステップ5に実施される。これら再構築ステップは、ちょうど第1の実施形態と第2の実施形態の両方について同一の仕方で前処理中に実施されるのが良い。事実、恐らくは、列記されなかったシリーズの信号は、例えば移動の測定条件に起因して損なわれている。かくして、通常の測定条件下において、列記されると共に図18に示されているように8つの個々の周波数成分P1〜P8を含むシリーズは、図17に示されているように個々の周波数成分P1,P2及び個々の周波数成分P5〜P8を含む2つのシリーズに分割される。個々の周波数成分P3,P4は、検出されていない。シリーズ全体を再構築するため、各族中のシリーズを列記するステップの実施後に、シリーズの信号のうちの1つから族周波数差間隔σfの倍数である周波数差だけ離れた少なくとも1つの信号を求める。スパイクP5は、それぞれ族周波数差間隔σfの4倍及び3倍に実質的に等しい差だけP1,P2から離されていることが分かる。かくして、個々の周波数成分P1,P2から成る列挙されたシリーズには族周波数差σfの倍数である周波数差だけ信号P1,P2のうちの一方から離された個々の周波数成分P5〜P8から成るシリーズの信号が補充される。
【0129】
本発明は、上述の実施形態には限定されない。
【0130】
場合によっては、この方法は、周波数FTUSを求めるタイヤのパラメータのうちの全て又は幾つかを知ることによっても実施できる。かくして、例えばGPS(グローバルポジショニングシステム)から標識16の数NTUSを知ることにより、特に、この種の標識16を備えたタイヤの全てが同数の標識、タイヤ14の周長C及びタイヤ14の速度Vを有しているので、基準周波数間隔を減少させ、検出のロバストネスを向上させる。例えば、周長C=1.927m、NTUS=4のタイヤの±5km/hの精度で速度V=90km/hを知ることにより、基準周波数間隔は、49Hz〜55Hzである。したがって、ディラックの櫛は、タイヤのパラメータが正確に知られた場合、検出するのが一層一義的且つ容易である。
【0131】
さらに、この方法は、横方向チャネルにより互いに結合されていない対をなすキャビティを備えていない摩耗標識を有するタイヤについて実施できる。したがって、各摩耗標識は、タイヤトレッドの周方向溝中に配置されたサウンド摩耗キャビティを有し、各キャビティは、タイヤの半径方向外側に向かって開口すると共にこれが路面とのタイヤの接触領域に入ったときに実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両(自動車)タイヤ及びこれらの状態の監視の分野に関する。
例えば、本発明は、タイヤの摩耗又は圧力状態の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
明らかな安全上の理由でタイヤに過剰の負荷を与えずしかもタイヤを摩耗しすぎないようにするためにタイヤを正確にインフレート(膨張)させることが重要である。これは、タイヤトレッドの顕著な摩耗、過負荷又はインフレーション不足による危険性により、パンク、破裂、濡れた路面上におけるハイドロプレーニング、耐久性の低下、過熱及び他の問題が生じるからである。
【0003】
タイヤの状態の監視を容易にするため、タイヤは、通常、状態標識又はインジケータを備えている。
【0004】
摩耗を監視するための状態標識の一例は、タイヤのトレッドパターンに設けられた溝の底部のところに設けられたリブから成り、リブの高さは、タイヤの正確且つ安全な動作に必要なタイヤの溝の最小深さに対応している。かくして、タイヤのタイヤトレッドが摩耗し、リブの頂部がタイヤトレッドの外面と面一をなすと、このことは、溝にとって許容された最小深さに達し又はそれどころかこれを超えていることを意味している。したがって、安全のためにタイヤを交換することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の状態標識の一欠点は、かかる状態標識では、自動車両の運転手の用心及びそのタイヤの状態の定期的な視覚監視が必要であるということにある。たまにあることとして、大抵の運転手は、かかる点検の実施を省いてしまい、自動車両の技術的点検の際、自動車整備修理士(メカニック)がタイヤの摩耗状態又はタイヤの圧力状態を点検したときには自分のタイヤを交換するのが遅すぎるようになる。
【0006】
本発明の目的は、特に、自動車両の運転手側での時期尚早な用心を必要としない自動車両のタイヤの状態を監視する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明の要旨は、少なくとも1台の自動車両の少なくとも1本のタイヤを監視する方法であって、タイヤがタイヤトレッドを備えている、方法において、タイヤトレッドは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、タイヤトレッドがタイヤトレッドの周方向溝中に配置されている所謂「サウンド」キャビティを含む1組の少なくとも1つの摩耗標識を呈するよう構成されており、各キャビティは、タイヤの半径方向外側に向かって開口し、各キャビティは、キャビティが路面とのタイヤの接触領域に入ると実質的に漏れ止め状態で路面によって封止されるよう構成されており、この方法は、
‐所定の半径方向摩耗しきい値を超える路面上におけるタイヤの走行中に1組の少なくとも1つの摩耗標識により生じる音響フットプリントノイズを含むことができる音響信号を自動車両に取り付けられている音響センサにより検出するステップと、
‐音響信号に関する情報を自動車両には取り付けられていない遠隔サーバに送信するステップと、を有することを特徴とする方法にある。
【0008】
キャビティは、実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されているので、空気は、キャビティから路面とのタイヤの接触領域中に進む際に一時的に閉じ込められる。今や、接触領域中のタイヤの変形の影響を受けて、キャビティ内に閉じ込められたこの空気は、圧縮され、次にタイヤトレッドがタイヤの後部で路面との接触状態から離脱する際に接触領域から出る際及びその結果キャビティが開く際、急に膨張する。
【0009】
空気のこの膨張は、約数ミリ秒間続き、その結果、特にキャビティの形状及び容積に応じて、ヒス音(サーという音)又は吸込み吐出しノイズと呼ばれる場合の多い特定の音響フットプリントノイズが生じる。
【0010】
タイヤがしきい値を超えて摩耗した場合にのみ生じるこの特徴的なノイズは、かくして、音(サウンド)警告手段となる。かくして、運転手が自分のタイヤの表面状態を定期的に目で点検していない場合であっても、この特徴的なヒス音の検出により、運転時、運転手に自分のタイヤの過度の摩耗が知らされる。
【0011】
組立体により生じる特徴的な音響フットプリントノイズを音響センサを有するシステム、特にマイクロホンによって検出することができる。
【0012】
この検出に続き、本発明は、検出した音響信号に関する情報を自動車両に取り付けられてはいない遠隔サーバに送信することを提案する。
【0013】
状態に関する情報が遠隔で利用できるので、自動車両の運転手以外の人によりかかる情報を視認し又は処理することができる。かくして、運転手が定期的な用心を行なうことはもはや必要ではない。というのは、遠隔システム又は第三者が運転手に適当な時期に運転手にタイヤの摩耗について知らせることができる。
【0014】
キャビティが溝の中に配置されているので、各キャビティにより放出されるノイズは、タイヤトレッド中のどこか他の場所に配置されているキャビティと比較して増幅される。この増幅により、音響フットプリントノイズと一緒になって音響信号を生じさせる周囲のノイズから識別するのが困難な場合のある音響フットプリントノイズの確実な検出が可能である。組立体によって放出されたノイズは又、キャビティが接触領域をいったん通過すると、タイヤ及び路面により形成されるホーンにより増幅される。ホーン効果によるこの増幅は、サウンドキャビティが好ましくはタイヤの接触領域の中央部分中に軸方向に配置されている場合にその最大状態にある。
【0015】
「接触領域の中央部分」という表現は、通常の荷重及び圧力条件においてこの接触領域の幅の実質的に半分にわたって軸方向に延びると共にタイヤの中央中間平面に対して心出しされた接触領域の部分を意味するものと理解されるべきである。
【0016】
空気がキャビティ内で圧縮され、次にこれから逃げ出ることにより膨張する場合にのみこのヒス音効果が生じると仮定すると、キャビティは、キャビティが接触領域に入った時に路面により実質的に封止されるような仕方で閉鎖されることが重要である。これは、頂部が路面によって覆われるが、外気と流体連通状態にある横方向チャネルを更に含む場合のあるキャビティがサウンドキャビティを形成することがないからである。というのは、キャビティが収容している空気を圧縮することができないからである。これは、特に、一般に種々のキャビティを互いに対して連通させると共に外気に連通させるチャネルのネットワークにより形成される技術の現状のタイヤのタイヤトレッドのパターンについていえる。
【0017】
同様に、キャビティが接触領域に入ったときに寸法が大きすぎて路面によって全体を覆うことができないキャビティ、例えば、長さが接触領域の長さよりも大きいキャビティは、本発明の意味におけるサウンドキャビティを形成することができない。
【0018】
本発明の方法は、以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有するのが良い。
【0019】
所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、各標識は、少なくとも1つの対をなす第1及び第2のサウンドキャビティ及び対に属する各サウンドキャビティを互いに結合する所謂「サウンド」チャネルを有し、第1及び第2のサウンドキャビティは各々、タイヤトレッドの第1及び第2の周方向溝中にそれぞれ配置され、チャネルは、タイヤトレッド中に形成され、対に属する各キャビティ及び関連のチャネルは、
‐タイヤの半径方向外側に向かって開口し、
‐対に属する各キャビティ及び関連のチャネルが路面とのタイヤの接触領域に入ると、実質的に漏れ止め状態で路面によって封止されるよう構成されている。
【0020】
サウンドキャビティは、かかるサウンドキャビティを備えていないタイヤと比較して、特に、溝を通る溝の排出の面で、タイヤの性能レベルを劣化させる場合がある。チャネルが各対のキャビティを互いに結合することにより、性能のこの低下を補償することができる一方で、タイヤの摩耗の検出を可能にする。
【0021】
オプションとして、タイヤが新品の場合、第1及び2の溝の各々が所定の深さを有するとき、タイヤトレッドは、第1及び第2の溝の各々の底部のところに横方向に形成された少なくとも2つのリブを有し、2つのリブは、タイヤが新品の場合、2つのリブを隔てる距離が所定の距離よりも小さい深さの差に実質的に等しい所定高さのものであり、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、第1及び第2の溝の各々により形成されると共に2つのリブによって画定された各キャビティは、音を発生するようになっている。
【0022】
技術の現状において、視覚的摩耗標識は又、タイヤの周方向溝の底部のところに設けられたリブによって形成される。しかしながら、これら視覚的摩耗標識は、リブが互いに極めて遠くに離れて位置するよう配置される。かくして、2つの隣り合うリブを隔てる距離は、路面とのタイヤの接触領域の長さよりも非常に長く、したがって、2つの隣り合うリブが同時に路面と接触関係をなす時点は存在しない。かくして、技術の現状においては、溝により画定されると共に2つの隣り合うリブにより境界付けられる容積部は、キャビティを形成するのが確かであるが、このキャビティは、サウンドキャビティではない。というのは、このキャビティは、路面により実質的に漏れ止め状態に封止できないからである。
【0023】
音響センサは、自動車両の乗員室内に設けられた電話の一部である。この電話は、例えば、自動車両の乗員室内に固定的に設けられた電話又は自動車両に乗っている人のうちの1人が所持している携帯電話であるのが良い。この解決策は、これにより既に内側に位置している装置を再使用することにより自動車両中に存在する装置の数を減少させるので特に有利である。さらに、電話は、遠隔サーバへのデータの送信を容易にする外部通信手段を有する。
【0024】
音響センサは、自動車両内に設けられた電子モジュール、例えば地理位置情報(ジオロケーション)電子モジュールの一部である。
【0025】
この方法は、音響信号から音響フットプリントノイズを抽出するよう音響信号を前処理するステップを更に有する。音響信号がタイヤの摩耗又は圧力に応じて変化すると仮定すると、前処理により、この信号を解釈してタイヤの摩耗レベルを推定し、かくして音響フットプリントノイズによってその状態を判定することができる。
【0026】
一実施形態では、前処理は、送信ステップの実施前に自動車両に取り付けられたシステムによって実施される。
別の実施形態では、前処理は、送信ステップの実施後に遠隔サーバによって実施される。
【0027】
好ましくは、音響フットプリントノイズは、幾つかの個々の音響フットプリント周波数成分を含み、音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、この方法では、前処理中、
‐個々の周波数成分の幾つかのシリーズを列挙し、列挙された各シリーズは、個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができ、
‐音響フットプリントシリーズと呼ばれる1つのシリーズを列挙されたシリーズから選択し、
‐所謂ローカル信頼性指標を音響フットプリントシリーズから求める。
【0028】
本発明の方法により、パラメータ、例えば自動車両の速度を必ずしも知る必要なく、タイヤのユーザにサウンド摩耗標識のレイアウトの幾何学的形状及びこれらの数を警告することができる。事実、音響フットプリントノイズの個々の周波数成分は、標識により放出されるノイズに特有である。かくして、タイヤの半径方向摩耗しきい値を超えると、標識により放出される音響フットプリントノイズは、パラメータに従って周波数が分布した幾つかの個々の周波数性能を含む。この周波数分布は、所定のパターンに従う。このパターンは、種々の個々の信号相互間の間隔比率によって定められる。
【0029】
かくして、収集されると共に個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部をなすことができ、即ち、所定のパターンに従う個々の周波数成分から成る幾つかのシリーズを列挙することによって、各々が1組のサウンド摩耗標識によって放出されるノイズに特有であるといえる個々の周波数成分のシリーズが列挙される。音響フットプリントノイズは、一義的であり、その所定のパターンにより顕著且つ明確に区別された特性を示すので、所定の基準によって列挙されたシリーズの中から音響フットプリントシリーズを選択することができる。
【0030】
この方法は、遠隔サーバが前処理の結果に従ってタイヤの状態及び経時的なその過去の動向の診断を行なう後処理ステップを更に有する。このために、サーバは、過去の状態を記憶する手段を有するのが良い。特に、診断により、タイヤの残りの寿命又は運転手の運転スタイルによるタイヤの使用形式を推定することができる。
【0031】
一実施形態では、
‐時間的に連続していて、音響フットプリントノイズを含むことができる幾つかの音響信号を必要とし、各音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択し、選択した音響フットプリントシリーズについてローカル信頼性指標を定め、
後処理後、
‐音響フットプリントシリーズのローカル信頼性指標に、基づいて所謂グローバル信頼性指標を求め、
‐グローバル信頼性指標が絶対値としてグローバル信頼性指標と関連した所定のしきい値以下である場合、タイヤの摩耗に関する警報を出す。
【0032】
周波数領域中の組み立てによって放出されたノイズの大きさは、特に、タイヤが走行している表面で決まる。例えば、比較的軟らかい路面は、多孔質の路面よりも標識からのノイズの放出に好都合である。しかしながら、検出が両方の場合に可能であることに変わりはない。したがって、検出に好都合な表面があればそれほど好都合ではない表面もあり、これら2種類の表面は、互いにランダムに続く可能性がある。かくして、第1のローカル指標は、第1の音響信号に関し、このローカル指標と関連したしきい値よりも大きい場合があり、次に、第2のローカル指標は、第1の音響信号に続く第2の音響信号に関し、かかるしきい値よりも小さい場合がある。この場合、半径方向摩耗しきい値を実際に超えているかどうか及び第2の指標が好ましくない表面に起因してしきい値を下回っているかどうか或いは半径方向摩耗しきい値を超えていないかどうか及び第1の指標が半径方向摩耗しきい値を誤って示しているかどうかをいうことが不可能である。
【0033】
誤った警告のこの恐れを減少させると共に検出方法を一層ロバストにするために、幾つかの時間的に連続した音響信号を処理する。連続した音響信号の幾つかの音響フットプリントシリーズが半径方向摩耗しきい値を越えたことを示すローカル信頼性指標を示した場合、半径方向摩耗しきい値を実際に超えた可能性が高く、これは、グローバル信頼性指標によって示される。
【0034】
別の実施形態では、時間的に連続して、音響フットプリントノイズを含むことができる幾つかの音響信号を収集し、各音響信号は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択し、
後処理中、
‐各選択した音響フットプリントシリーズの個々の周波数成分相互間の時間の連続性から所謂グローバル信頼性指標を求め、
‐グローバル信頼性指標が絶対値としてグローバル信頼性指標と関連した所定のしきい値以下である場合、タイヤの摩耗に関する警報を出す。
【0035】
この実施形態では、誤った警告の恐れも又減少する。グローバル信頼性指標は、グローバル信頼性指標がローカル信頼性指標に依存している先の実施形態とは異なり、局所信頼性指標とは独立して図形表示に基づいて定められる。かくして、タイヤの摩耗が互いに関連付けられないグローバル信頼性指標とグローバル信頼性指標によって正確に検出されることが保証され、それにより、本方法がロバストになる。
【0036】
この方法により、複数台の自動車両のタイヤを監視することが可能であり、この場合、診断は、複数台の自動車両のタイヤの全てについて行なわれる。事実、この方法は、有利には、自動車両レンタル代理店によって実施でき、自動車両レンタル代理店は、この場合、その所有する全自動車両のタイヤの状態をモニタすることができる。タイヤの状態の遠隔送信により、レンタル代理店は、自動車両の各々のところに行って調査する必要がない。遠隔サーバの役割は、この情報を全て集中管理することにある。
【0037】
遠隔サーバは、診断結果に従って、ユーザにタイヤの使用推奨内容を送信する。この使用推奨内容は、速度又はタイヤのうちの1本又は2本以上の交換前の残りの走行距離に関するのが良い。システムは又、運転手が即座に自分のタイヤを交換することを推奨することができる。
【0038】
かかる推奨内容は、SMS又は電子メッセージによってユーザに送信される。これは、特に、組立体に関する音響状態信号が運転手の携帯電話を用いて検出される場合に有利である。この推奨内容は又、任意他の情報手段、例えば電話、ポケットオーガナイザ(pocket organizer)、端末、ポータブルその他によって送信可能である。
【0039】
本発明の要旨は又、コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、コンピュータ上での実行時に上述の方法のステップの実施を制御することができるコード命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムにある。
【0040】
本発明は又、上述のプログラムを記憶形態で有するデータ記憶媒体に関する。
【0041】
本発明の要旨は又、上述のプログラムをダウンロードする目的での通信ネットワーク上へのプログラムの提供にある。
【0042】
本発明の内容は、添付の図を参照することにより一例として与えられているにすぎない以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の監視方法を実施するのに適した設備の略図である。
【図2】新品のタイヤのタイヤトレッドの略図である。
【図3】図2に示されたタイヤのタイヤトレッドを摩耗状態で示す図である。
【図4】図3に示されたタイヤのタイヤトレッドの半径方向断面図である。
【図5A】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5B】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5C】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5D】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図5E】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6A】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6B】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6C】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6D】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図6E】図3のタイヤのサウンド摩耗標識により放出された理論的音響フットプリントノイズ信号及びこの音響フットプリントノイズを含む音響信号を示す図である。
【図7】本発明の第1及び第2の実施形態としての監視方法のステップを示す図である。
【図8】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図9】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図10】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図11】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図12】図3のタイヤを備えた車両の乗員室内で検出された音響信号を示す図である。
【図13】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図14】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図15】特徴に応じた関連の指標の変化を示す図である。
【図16】連続して測定された幾つかの音響信号フレームを示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態としての方法の追加のステップを示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態としての方法の追加のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、自動車両12のタイヤを監視する本発明の方法を実施するのに適している全体として符号が10で示された設備を示している。
【0045】
図1では、自動車両12は、自動車である。本発明は又、タイヤを備えた任意形式の自動車両、例えば重量物運搬車両にも利用できる。
【0046】
各自動車12は、状態が監視されなければならないタイヤ14を有している。タイヤの状態は、例えば、その摩耗又はその圧力を特徴としている。
【0047】
このため、各タイヤ14は、サウンド状態標識16、即ち、タイヤの状態に従って、特にその摩耗に従って変化する音響フットプリントノイズを放出することができる標識16を備えている。
【0048】
車両12は、その乗員室内に、所定の半径方向摩耗しきい値を超える標識16の全てによって生じた音響フットプリントノイズを含む音響信号を検出するシステム18を更に有している。システム18は、音響センサ、例えばマイクロホン20、音響センサ20により検出された信号を処理する手段22及び遠隔処理の結果を送信する手段24を有している。
【0049】
システム18は、車両12内に、特に乗員室内に固定的に設けられたシステムであるのが良い。このシステムは、かくして音響センサ20が運転手の口の近くでフロントガラスに直立して固定され、処理手段22が車両のコンピュータ内に組み込まれた固定電話であるのが良い。このシステムは、GPS地理位置情報(ジオロケーション)の電子モジュール、携帯情報端末、緊急通報システムの形態をしていても良く又は他のかかる形式のものであって良い。この場合、音響センサ20は、モジュール内に組み込まれ又はその外部に設けられ、モジュールの処理手段22に接続されるのが良い。
【0050】
システム18は、車両12の乗員室内に永続的には取り付けられていないモバイルシステム、例えば、運転手28の携帯電話26であっても良い。この場合、音響センサ20、処理手段22及び送信手段24は、携帯電話26それ自体の中に組み込まれる。
【0051】
図1では、運転手28の携帯電話26は、システム18から別個のものとして示されている。上述したように、これら2つのシステムを合体させても良い。
【0052】
設備10は、遠隔データ送信及び受信手段32、データベース34及びユーザ38によりアクセス可能な指令及び制御端末36が結合された遠隔サーバ30を更に有する。
サーバ30は、送信手段24と送信及び受信手段32の協働により車両12内に組み込まれた監視システム18と相互作用することができる。
【0053】
図2は、タイヤ14の一部を新品状態で示している。
【0054】
タイヤ14は、実質的に円筒形のタイヤトレッド112を有し、その外面は、トレッドパターン114を備えている。特に、タイヤトレッド112は、第1及び第2の溝116A,116Bを有し、これら溝は、周方向且つ互いに平行であり、タイヤの表面をえぐった状態で形成され、タイヤ14が新品である場合には所定深さのものである。例えば、これら溝の深さは、自家用車の場合、8ミリメートルのオーダのものである。
【0055】
タイヤのタイヤトレッド112は、溝116A,116Bに横方向に溝116A,116Bの底部に形成された1組のリブ118を有し、リブ118の高さは、タイヤが新品である場合、あらかじめ定められている。例えば、これらリブの高さは、3ミリメートルのオーダのものである。図2に示されている例では、リブ118は、タイヤ14の周囲に沿ってぐるりと等間隔を置いて分布して配置されており、2つの隣り合うリブ相互間の距離は、20〜30ミリメートルのオーダのものである。
【0056】
タイヤトレッド112は、第1及び第2の溝116A,116B中にそれぞれ配置された1組の第1及び第2のキャビティ120A,120B及び1対のキャビティ120A,120Bと関連した横方向チャネル121を更に有している。チャネル121は、トレッド112中に形成され、このチャネルは、キャビティ120A,120Bを互いに結合している。キャビティ120A,120Bは、軸方向に整列している。変形例として、キャビティは、互いに対して軸方向にずれている。
【0057】
各溝160A,160B及び2つの隣り合うリブ118によりそれぞれ画定された容積部は、各々がタイヤ14の半径方向外側に向かって開口したキャビティ120A,120Bを形成している。チャネル121も又、タイヤ14の外側に向かって開口している。
【0058】
タイヤが新品である場合、図2に示されているように、リブ118の高さは、溝116の深さよりも小さく、したがって、2つの隣り合うキャビティ120A,120Bは、リブ118の上方に、即ちリブ118の頂部のところに位置した流体連通通路を有するようになっている。かくして、タイヤトレッドが平坦且つ滑らかな路面111と接触状態にあるときであっても、路面111は、キャビティ120A,120Bを完全に塞ぐことはない。というのは、リブの頂部は、路面111と接触状態にはないからである。この場合、種々の隣り合うキャビティ120A,120Bは、リブの頂部及びキャビティを覆っている路面111によって画定されたのど状チャネル又はチャネル121によって互いに流体連通状態にある。
【0059】
図3は、図2のタイヤ14を摩耗状態で示している。換言すると、このタイヤは、多くの距離を走行したタイヤであり、そのタイヤトレッド112は、数ミリメートル、約5mmが失われるまで次第に摩耗している。
【0060】
適例では、図3に示されているタイヤ14のタイヤトレッド112の摩耗は、6mmオーダのものであり、即ち、タイヤが新品であった場合のリブ118の頂部とタイヤトレッドの表面との間の距離よりも大きい。この顕著な摩耗が生じているとした場合、リブ118の頂部は、タイヤトレッド112の表面と同一高さ位置にある。かくして、各キャビティ120A,120B及びチャネル121の口は、タイヤトレッド上に形成された実質的に平坦な輪郭によって画定される。各対のキャビティ120A,120B及びこれと関連したチャネル121は、別々であり、互いに分離されている。
【0061】
各対をなすキャビティ120A,120Bは、2つの隣り合うリブ118相互間の周方向差に対応した20〜30ミリメートルのオーダの長さを有すると共にリブ118の初期高さ以下の2ミリメートルオーダの深さを有する。
【0062】
各対をなすキャビティ120A,120B及び関連のチャネル121は、サウンド摩耗標識16のうちの1つを形成している。タイヤ14は、タイヤ14の周囲に沿って等間隔を置いて分布して配置された8つで1組の標識16、即ち、1組をなす8つの対をなすサウンドキャビティ120A,120B及び8つの関連の横方向チャネル121を有する。かくして、標識16は、タイヤトレッド112に周方向に等間隔を置いて分布して配置されている。対をなすキャビティ120A,120B及びチャネル121は、同一の形状を有している。
【0063】
所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、対をなすサウンドキャビティ120A,120B及び関連のサウンドチャネル121の全容積は、4cm3、好ましくは5cm3以上である。
【0064】
各キャビティ120A,120B及びチャネル121の口は、実質的に平坦な輪郭によって画定されているので、この口は、走行時に滑らかで且つ平坦な路面により完全に気密封止可能である。換言すると、タイヤ14が摩耗すると、キャビティ120A,120B及びチャネル121は、これらが路面とタイヤ14の接触領域に入ると、実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されている。
【0065】
かかるキャビティ120A,120B及びかかる関連のチャネル121は、タイヤのタイヤトレッド112の表面上に形成され、一方において、タイヤの半径方向外側に向かって開口し、他方において、これらが接触領域に入ると、気密封止されるよう構成されており、かかるキャビティ及びかかる関連のチャネルは、「サウンド」キャビティ及びチャネルと称される。
【0066】
種々のキャビティサイズ又はタイヤに対するこれらキャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の種々の向きは、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
タイヤ14では、かかるサウンドキャビティは、タイヤが所定の半径方向摩耗しきい値を超えた場合にのみ現われ、このしきい値以下では、特にタイヤが新品の場合、見えない。
【0068】
図4は、路面上の走行時における図4のタイヤに類似したタイヤの半径方向断面図である。寸法形状は、説明を分かりやすくするために恣意的に変更されている。このタイヤ14は、摩耗状態にあり、その結果、1組の8つのサウンドキャビティ120A,120B及び8つの関連のチャネル121を有している。
【0069】
矢印122は、路面上における走行時のタイヤ14の回転方向を示している。所与の時点において、タイヤ14のタイヤトレッド112の一部は、路面と接触状態にある。この接触部は、接触領域124と呼ばれている。各対のキャビティ120A,120Bは、タイヤ14の周方向タイヤトレッドの一部により形成されたタイヤの接触領域124の中央部132中に軸方向に位置決めされている。
【0070】
図4に示されている例では、接触領域124は、3つの対をなすサウンドキャビティ126及び3つの関連のサウンドチャネルを有し、これらの半径方向外側口は、路面111で覆われている。かくして、これら3つの対をなすサウンドキャビティ126及びこれらと関連したサウンドチャネルは、気密封止される。
【0071】
タイヤの接触領域124は、対をなす封止キャビティ126及びこれらと関連したチャネルの上流側に位置した対をなすサウンドキャビティ128及びこれらと関連したサウンドチャネルを更に有しており、これらサウンドキャビティ128及びサウンドチャネルは、これらの口が接触領域には存在せず、したがって路面によっては覆われていないので開口している。タイヤが矢印122によって示された方向に走行しているとき、対をなす開口キャビティ128及びこれらと関連したチャネルは、これらの口が路面111によって塞がれるまで接触領域124に向かって進む。
【0072】
最後に、タイヤ14のタイヤトレッド112は、対をなすキャビティ126及びタイヤの回転方向に関して関連のチャネルの下流側に位置した対をなすキャビティ130及びこれらと関連したチャネルを更に有し、これらキャビティ130及び関連のチャネルは、封止されている。図5に示された例では、図示の下流側の対をなすキャビティ130及び関連のチャネルは、路面111がこれらの口と接触していないので開口している。すぐ前の時点では、この対をなすキャビティ130及び関連のチャネルは、封止されていた。というのは、これらは、路面111とタイヤの接触領域124の付近に位置していたからである。
【0073】
かくして、タイヤが走行している間、所与の対をなすサウンドキャビティ120及び関連のサウンドチャネルは、これらが開口する上流側位置128を次々に占め、次にこれらが路面により覆われるのでこれらが封止される接触領域124に位置した位置125を占め、最後に、これらが路面によってもはや覆われない開口位置130を再び占める。
【0074】
換言すると、タイヤの回転により、所与の対をなすキャビティ及び関連のチャネルに関し、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内への空気の取り込みが生じ、対をなすキャビティ及び関連のチャネルが接触領域124で路面により封止されると、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入っている空気の圧縮が生じ、次に、対をなすキャビティ及び関連のチャネルが路面からのタイヤトレッドの分離により開口すると、対をなすキャビティ及び関連のチャネルに入っている空気の膨張が生じる。
【0075】
このように連続した取り込み/圧縮/膨張ステップは、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入った圧縮空気の膨張に起因して生じるヒス音又は吸込み吐出しノイズと呼ばれる場合が多い特徴的な音響フットプリントノイズの源である。
【0076】
次に、図5A〜図5E及び図6A〜図6Eを参照してサウンド摩耗標識16によって放出される吸込み吐出しノイズの検出原理について説明する。これらの図は、実質的に90km/hの一定速度で走行している図3の摩耗状態の乗用車用タイヤの理論的な吸込み吐出しノイズを示している。
【0077】
図5A〜図5Cは、時間領域内における理論的信号を示し、図6A〜図6Cは、フーリエ変換により各信号5A〜5Cからそれぞれ得られた周波数領域内における理論的信号を示している。
【0078】
図5Aは、標識16からのパルスと呼ばれる時間信号ST,Uを示し、これは、単位となっている。このパルスは、標識16により放出されたノイズの大きさ(単位Pa)を表すと共に固有周波数f0、最大振幅a0及び固有減衰時間t0の減衰正弦波の形態をしている。適例では、f0=1200Hz、a0=0.044Pa、t0=0.001秒である。
【0079】
図6Aの単位周波数信号SF,Uは、中心が固有周波数f0に位置したガウス曲線の形態をしている。注目されるように、単位パルスが短ければ短いほど、正弦波振動はそれだけ一層小さくなると共に周波数スペクトルがそれだけ一層広くなる。これとは逆に、単位パルスが長ければ長いほど、正弦波振動がそれだけ一層多くなると共に周波数スペクトルがそれだけ一層狭くなる。かくして、完全な非減衰正弦波に関し、図5Aのフーリエ変換は、周波数f0のディラックのスパイクの形態を取るであろう。
【0080】
図5Bは、図3のタイヤの標識16からの走行時間信号ST,Dを示している。タイヤは、8つの標識16を有しているので、走行時間信号は、接触領域中への各標識16の入り込みに対応した数個のスパイクを有する周期TTUS=0.019秒、振幅1のディラックの櫛の形態をしている。
【0081】
走行周波数信号SF,Dも又、ピッチFTUS=1/TTUSの等間隔を置いて位置した個々の周波数成分によって特徴付けられると共に振幅FTUS=1/TTUS=52.2のディラックの櫛の形態を取る。注目されるように、周波数信号SF,Dの振幅は、時間信号ST,Dの振幅よりも極めて大きい。
【0082】
図5Cは、図5Aの単位時間信号ST,Uと図5Bの走行時間信号ST,Dの畳み込み積に対応した標識16からの全時間信号ST,Tを示している。したがって、全時間信号ST,Tは、実質的に0.044Paに等しい最大振幅の一連の減衰正弦波の形態を取る。
【0083】
全周波数信号SF,Tは、図6Aの単位周波数信号SF,Uと図6Bの走行周波数信号SF,Dの積に対応している。したがって、全周波数信号SF,Tは、周波数FTUSでサンプリングされると共に単位時間信号ST,Uに対してファクタFTUSだけ増幅された単位周波数信号SF,Uの形態を取る。この増幅は、走行時間信号ST,Uの周波数反転に起因している。適例では、全周波数信号SF,Tの大きさは、実質的に2.28Paに等しい。
【0084】
実際には、標識16からの全信号ST,T、SF,Tは、周囲ノイズに対応した疑似信号Bにより覆い隠される。ノイズBは、標準タイヤを履いて90km/hで走行しているBMW車318dの乗員室内で記録された。
【0085】
図5Dは、乗員室内で測定したノイズに対応した時間信号BTを示している。かかるノイズBTの最大の大きさは、実質的に0.034Paに等しい。図6Dに示されている対応の周波数信号BFの最大振幅は、実質的に0.348Paに等しい。
【0086】
図5Eは、図5Cの全理論時間信号ST,Tと図5DのノイズBTに対応した時間信号の重ね合わせに対応した全時間信号ST,Tを示している。時間領域内における信号対雑音(SN比)は、実質的に1.04に等しい。図6Eは、図6Cの全理論周波数信号SF,Tと測定ノイズに対応した図6Dの周波数信号BFの重ね合わせに対応した全周波数信号SF,Tを示している。周波数領域におけるSN比は、実質的に13.4に等しい。
【0087】
これら信号の分析結果の特に示すところによれば、周波数領域内の信号で功を奏している。これら信号は、時間領域の信号よりも高いSN比を示すからである。摩耗の検出及びこの検出の信頼性は、かくして、大幅に向上している。
【0088】
図6Eの全周波数信号SF,Tは、特に所定の分布パターン、FTUSに等しい各スパイク相互間のピッチ、信号の最大振幅A及び信号の個々の周波数成分の数Nを含む幾つかの特徴を示している。
【0089】
FTUSは、タイヤ14の速度V、等距離間隔を置いた標識16の数NTUS及びタイヤ14の周長Cの関数である。
【0090】
最大振幅Aは、固有減衰時間t0、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS及びタイヤ14の速度Vの関数である。最大振幅Aは又、サンプリング周波数Fe及び時間信号収集周期Tを含む時間信号収集パラメータの関数である。
【0091】
個々の周波数成分の数Nは、各標識16からの個々のパルスの帯域幅の関数であり、この帯域幅は、固有減衰時間t0で決まる。Nは又、周波数FTUS、標識16からの全信号とノイズに対応した信号の相互作用及びサンプリング周波数Feと収集時間Tの比として定義される周波数分解能Δfで決まる。
【0092】
図7〜図16は、本発明の第1及び第2の実施形態に従って車両12のタイヤ14の状態を監視する方法の種々のステップを示している。
【0093】
図8は、図3の摩耗状態の右前のタイヤを履いたBMW車318dの乗員室内で測定された音響ノイズの生の全時間信号ST,Bを示している。収集パラメータは次の通りであり、即ちT=1秒、Fe=8000Hzである。しかしながら、タイヤ14の特性、例えば標識16の数NTUS、タイヤ14の周長C、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS又は車両の速度Vは未知である。
【0094】
第1ステップ90において、車両12が路面上を走行している。路面上における車両12のタイヤ14の走行により、音響フットプリントノイズSF,Tを含むことができる生の音響時間信号ST,Bが放出される。
【0095】
次のステップ100において、周囲ノイズ及び音響フットプリントノイズSF,Tを含むことができる音響信号を自動車に搭載した監視システム18の音響センサ20により検出する。
【0096】
次に、ステップ101〜306を含む前処理中、音響センサ20により検出された音響信号を処理して1組の標識16により生じた音響フットプリントノイズを隔離し、これから固有音響フットプリントを抽出する。これら前処理ステップを永続的に、定期的に又は要望に応じて実施できる。前処理は、システム18の手段22によって実施される。
【0097】
ステップ101において、フーリエ変換を図8の生の全時間信号ST,Bに適用して図9の対数周波数スケールで表された生の全周波数スペクトルSF,Bを得る。
【0098】
次に、ステップ102において、生のスペクトルSF,Bの周波数領域Dfを隔離し、この周波数領域は、図10の線形周波数スケールで表された500〜2500Hz、この場合1000〜2000Hzである。
【0099】
次に、ステップ104において、ノイズをなくし、周波数領域Df中の生のスペクトルSF,Bをオプションとして標準化する。適例において、生のスペクトルSF,Bの最小値を通るフィルタリング曲線を求め、次にフィルタリング曲線を生のスペクトルSF,Bから差し引く。すると、図11に示されているフィルタリング済みスペクトルが得られる。次に、必要ならば、標準化をこのフィルタリング済みスペクトルに対して行なうのが良い。
【0100】
最後に、ステップ106において、個々の周波数成分を所定の強度しきい値よりも大きな強度を示す図11のフィルタリング済みスペクトルから分離する。かくして、図12に示されているように、幾つかの個々の周波数成分を含む正味のスペクトルSAが得られる。したがって、正味のスペクトル又は処理済み音響信号SAは、処理された生の全時間信号ST,Bから得られる。変形例として、処理ステップは、行なわれなくても良く、或いは、他の追加のフィルタリングステップが実施される。
【0101】
適例において、処理済み音響信号SAは、図12に1〜30まで番号付けされた30個の個々の周波数成分を含む。タイヤが摩耗した場合、サウンドキャビティは、図6Cに示されている理論的信号に類似した信号を放出する。したがって、タイヤが摩耗しているかどうかを判定するため、即ち、標識16が吸込み吐出しノイズを放出しているかどうかを判定するため、信号SAが標識16により放出された理論的信号SF,Tに類似した信号を含むかどうかを判定することが有用である。
【0102】
利用できない特性が周波数FTUSを一部とすることができる基準周波数間隔Iを定めることが分かった。周長が1.3mから3mまで様々であり、標識の数が1つから10個まで様々であり、車両の速度が10km/hから130km/hまで様々な場合がある自動車用タイヤ群の場合、周波数FTUSは、1〜278Hzの間隔I内で様々な場合がある。重量型タイヤの場合、間隔Iは、ほぼ同じである。
【0103】
図12を参照すると、ステップ200において、処理済み音響信号SAの対をなす個々の周波数成分の全てが列挙され、各対の信号を互いに隔てる周波数の差を求める。次に、30個の個々の周波数成分に関し、435個の考えられる対が得られる。これらを隔てる周波数の差が間隔Iに属する対だけを保持する。かくして、317個の対だけが間隔1〜278Hz内で周波数の差を示す。一例として、以下の表1は、317個のうちから40個の対をなす個々の周波数成分を対応の周波数の差と一緒に示している。
【0104】
【表1】
表1:個々の周波数成分の対及び対応の周波数の差の例
【0105】
次に、ステップ202において、各対の個々の周波数成分の各周波数の差を族周波数差間隔σFにより定められた周波数差族と呼ばれる族で分類する。各族周波数差間隔は、間隔I内に位置し、間隔I及び音響信号SAの周波数分解能Δfの関数として定められる。適例では、26個の周波数差族が定められ、これらの周波数差間隔は、以下の表2に与えられており、これらの全ては、4Hz以下である。変形例として、間隔σFは全て、2Hz以下である。
【0106】
【表2】
表2:周波数差族
【0107】
以下において、ステップ204において族番号17の処理についてのみ説明し、他の族の処理は、必要な変化を加えることによってこれから演繹される。317個の対のうちこれらを隔てる周波数の差が族周波数差間隔番号17、この場合間隔102〜106Hzに属する対を表3に示すように求める。
【0108】
【表3】
表3:族番号17の対をなす個々の周波数成分
【0109】
次にステップ206において、族周波数差間隔σF内のシリアル周波数差と呼ばれる周波数差Esだけ離されている少なくとも2つの連続した個々の周波数成分を含む個々の周波数成分のシリーズの全てを列挙する。各列挙されたシリーズは、個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができる。ここでの目的は、事実、標識16からの全信号に特有なディラックの櫛を再構築することである。したがって、族番号17に関し、以下の表4でまとめられている3つのシリーズを列挙する。各列挙されたシリーズは、基準周波数間隔I、特に族周波数差間隔σF内の周波数差だけ1対ずつ互いに間隔を置いて位置する少なくとも2つの個々の周波数成分を含む。かくして、各音響フットプリントシリーズは、未知の特性、即ち、標識16の数NTUS、タイヤ14の周長C、キャビティ120A,120B及び関連のチャネル121の全容積VTUS及び車両の速度Vの互いに異なる値で標識16により生じた理論的信号を表すことができる。
【0110】
【表4】
表4:族1で列挙されたシリーズ
【0111】
次に、ステップ300において、各族に関し、シリアル信頼性指標Isを第1の所定の特性の関数として各列挙されたシリーズについて求める。これら第1の所定の特性は、シリーズの個々の周波数成分相互間の周波数差の分散度DE、音響信号とノイズの比R、シリーズ中の個々の周波数成分の数NS及びシリーズの密度D、即ち個々の周波数成分の総数とあり得る個々の周波数成分の最大数の比を含む。適例では、シリーズ番号2の場合、DE=0.5、R=13.4、NS=8、D=100%である。
【0112】
次に、ステップ302において、信頼性指標をR、D、NS及びDEの重心として計算する。各族の各シリーズの指標Isを計算する。次に、各族の各列記されたシリーズの指標Isを互いに比較する。ここで、指標Isが高ければ高いほど、対応のシリーズが求めた理論的信号を表している可能性がそれだけ一層高い。次に、最も高い指標Isを有する音響フットプリントシリーズを選択する。適例では、族番号17のシリーズ2は、3つの識別されたシリーズのうちで最も高い指標Is=0.994を有している。
【0113】
変形例として、各族の各列記されたシリーズの指標Isの計算後、第1の所定の特性の関数として26個の族の各々の中で1つのシリーズを選択する。したがって、26個の選択された選択されたシリーズが得られる。次に、各族の各選択されたシリーズに関し、各選択されたシリーズの第2の所定の特性の関数として族指数Ifを求める。第1の特性と第2の特性は、互いに同じであっても良く、互いに異なっていても良い。最後に、26個の選択されたシリーズの各族指数Ifを比較することにより音響フットプリントシリーズを選択する。
【0114】
族番号17の音響フットプリントシリーズ番号2は、列記されたシリーズの全ての中から標識によって放出されたノイズに対応したシリーズ番号を構成する可能性が最も高いシリーズ番号であるが、このシリーズの第1の特性は、タイヤの摩耗に関して警報を出すには不十分なままであるようにすることは不可能ではない。
【0115】
かくして、ステップ304において、各第1の特性に関し、適例において、比R(図13)、シリーズ中の個々の周波数成分の数NSの周波数差(図14)の分散度DE及びシリーズの密度D(図15)について適合指標Ipを求める。これらの図において、各適合指標を各第1の特性のS字形形式の変数関数によって定める。例えば、比R=7の音響フットプリントシリーズの場合、円と関連した適合指標Ipは、0.98に等しい。分散度DE=1.5の音響フットプリントシリーズの場合、DEと関連した適合指標Ipは、0.9に等しい。NS=4個の個々の周波数成分を含む音響フットプリントシリーズの場合、NSと関連した適合指標Ipは、0.5に等しい。
【0116】
次に、指標Ipからローカル信頼性指標Iclを計算する。指標Iclは、指標Ipの積に等しい。変形例として、Iclは、指標Ipの算術又は加重平均に等しい。
【0117】
次に、ステップ308において、ローカル信頼性指標Iclを含む1組の標識16によって生じた音響信号に関する情報を遠隔サーバ30に接続された送信手段24及び受信手段32によって遠隔サーバ30に送信する。サーバ30は、全所有自動車両から、特に図1に示されている2台の車両からタイヤの状態に対する情報を集めるのに適している。
【0118】
次に、ステップ310を含む後処理を実施し、ステップ310では、サーバ30は、受け取った情報、特にローカル信頼性指標Iclを処理する。この後処理は、例えば、経時的な同一車両に関する情報の記憶をデータベース34内に有している。
【0119】
後処理は、経時的に記憶された互いに異なる情報を分析してその過去の動向に従ってタイヤの状態の診断を行なうステップ312を更に有する。実際には、周波数領域内の幾つかの連続した音響信号を取り出す。各音響信号に関し、音響フットプリントシリーズを選択する。連続した音響信号から選択された音響フットプリントシリーズS1〜S11の信号を例えば図16のように時間の関数としてグラフ表示する。注目されるように、シリーズS3、S8及びS9は、見えない。これは、例えば疑似ノイズに起因している場合がある。1つのシリーズから別のシリーズへの僅かな周波数のずれは、各音響フットプリントシリーズの2つの隣り合う個々の周波数成分を隔てる周波数FTUSを変化させる僅かな速度の変化に起因している。
【0120】
音響フットプリントシリーズの信号の時間的連続性からグローバル信頼性指標Icgを求める。この場合、一シリーズの信号の位置を次のシリーズの信号の位置と比較する。信号のグラフ表示を例えば画像認識アルゴリズムによって用いてグローバル信頼性指標Icgを求める。
【0121】
別の変形例では、グローバル信頼性指標Icgを例えば最後の5つのローカル指標の滑り(移動)平均によりこれらローカル指標Iclから求める。
【0122】
この診断により、特に車両のタイヤに関する将来の使用推奨内容を突き止めることができる。これら推奨内容は、例えば、運転手の運転スタイル(荒っぽい運転又は通常の運転等)で決まる場合がある。
【0123】
かくして、ステップ314において、遠隔サーバ30は、自動車のタイヤの使用に関してあらかじめ定められている推奨内容、例えば、超えるべきではない制限速度、タイヤを再インフレートさせる命令又は1本又は2本以上のタイヤを交換する助言を送る。この推奨内容は、運転手の運転に適したタイヤモデルを更に含むのが良い。上述の2つの変形例では、指標Icgが、絶対値として、このグローバル指標Icgと関連した所定のグローバルしきい値Sgを超える場合、サーバ30は、タイヤ14の摩耗に関する警告を出す。
【0124】
この使用推奨内容は、例えば、サーバ30に結合された送信手段32を介して自動車の運転手28にその運転手の携帯電話26により送るのが良い。かくして、運転手28は、自分のタイヤの状態について心配する必要はない。というのは、この運転手には自分のタイヤに対して適時取るべき行為について自動的に警告が行なわれるからである。
【0125】
使用推奨内容は又、サーバ30に結合されていて、必ずしも車両の運転手ではないユーザ38により利用可能な端末36でアクセス可能である。端末36からサーバ30への結合は、ワイヤードリンクであるのが良いが、リモートリンク、例えばインターネットを介してであっても良い。
【0126】
ユーザ38は、自分の端末36を介して1台又は2台以上の自動車12のタイヤの状態に関する情報及びこれらタイヤの使用推奨内容にアクセスすることができる。かくして、端末36により、全所有自動車両に関する情報を集中管理することができ、これは、自動車レンタル会社の場合に特に有用な場合がある。レンタル会社は、この情報を用いて自動車の運転手の運転形式に従って運転手に請求書を送ることができる。事実、これまでに利用された走行距離に関する情報は、不完全である。というのは、これにより、レンタル会社は、荒っぽい運転をする自動車の運転手と穏やかな運転をする運転手を識別することができない。
【0127】
本発明の方法の第2の実施形態では、ステップ100において選択された音響信号を遠隔サーバ30に直接送り、遠隔サーバ30は、前処理ステップ101〜306及び後処理ステップ310〜312を実施する。この第2の実施形態は、搭載されたシステム18の処理手段22のコンピュータ処理能力が限られている場合に有利である。
【0128】
図17及び図18は、第3の実施形態としての監視方法の追加のステップを示している。この第3の実施形態では、シリーズを再構築するステップが指標Isを求めるステップ前であって各族中のシリーズの列記ステップ5に実施される。これら再構築ステップは、ちょうど第1の実施形態と第2の実施形態の両方について同一の仕方で前処理中に実施されるのが良い。事実、恐らくは、列記されなかったシリーズの信号は、例えば移動の測定条件に起因して損なわれている。かくして、通常の測定条件下において、列記されると共に図18に示されているように8つの個々の周波数成分P1〜P8を含むシリーズは、図17に示されているように個々の周波数成分P1,P2及び個々の周波数成分P5〜P8を含む2つのシリーズに分割される。個々の周波数成分P3,P4は、検出されていない。シリーズ全体を再構築するため、各族中のシリーズを列記するステップの実施後に、シリーズの信号のうちの1つから族周波数差間隔σfの倍数である周波数差だけ離れた少なくとも1つの信号を求める。スパイクP5は、それぞれ族周波数差間隔σfの4倍及び3倍に実質的に等しい差だけP1,P2から離されていることが分かる。かくして、個々の周波数成分P1,P2から成る列挙されたシリーズには族周波数差σfの倍数である周波数差だけ信号P1,P2のうちの一方から離された個々の周波数成分P5〜P8から成るシリーズの信号が補充される。
【0129】
本発明は、上述の実施形態には限定されない。
【0130】
場合によっては、この方法は、周波数FTUSを求めるタイヤのパラメータのうちの全て又は幾つかを知ることによっても実施できる。かくして、例えばGPS(グローバルポジショニングシステム)から標識16の数NTUSを知ることにより、特に、この種の標識16を備えたタイヤの全てが同数の標識、タイヤ14の周長C及びタイヤ14の速度Vを有しているので、基準周波数間隔を減少させ、検出のロバストネスを向上させる。例えば、周長C=1.927m、NTUS=4のタイヤの±5km/hの精度で速度V=90km/hを知ることにより、基準周波数間隔は、49Hz〜55Hzである。したがって、ディラックの櫛は、タイヤのパラメータが正確に知られた場合、検出するのが一層一義的且つ容易である。
【0131】
さらに、この方法は、横方向チャネルにより互いに結合されていない対をなすキャビティを備えていない摩耗標識を有するタイヤについて実施できる。したがって、各摩耗標識は、タイヤトレッドの周方向溝中に配置されたサウンド摩耗キャビティを有し、各キャビティは、タイヤの半径方向外側に向かって開口すると共にこれが路面とのタイヤの接触領域に入ったときに実質的に漏れ止め状態で路面により封止されるよう構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の自動車両(12)の少なくとも1本のタイヤ(14)を監視する方法であって、前記タイヤがタイヤトレッドを備えている、方法において、前記タイヤトレッドは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記タイヤトレッドが前記タイヤトレッドの周方向溝中に配置されている所謂「サウンド」キャビティを含む1組の少なくとも1つの摩耗標識を呈するよう構成されており、各キャビティ(120A,120B,121)は、前記タイヤ(14)の半径方向外側に向かって開口し、各キャビティ(120A,120B,121)は、該キャビティが路面(111)との前記タイヤ(14)の接触領域(124)に入ると実質的に漏れ止め状態で前記路面(111)によって封止されるよう構成されており、前記方法は、
‐前記所定の半径方向摩耗しきい値を超える路面上における前記タイヤ(14)の走行中に前記1組の少なくとも1つの摩耗標識により生じる音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる音響信号(SF,B)を前記自動車両(12)に取り付けられている音響センサにより検出(100)するステップと、
‐前記音響信号(SF,B)に関する情報を前記自動車両(12)には取り付けられていない遠隔サーバ(30)に送信(308)するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、各標識は、少なくとも1つの対をなす第1及び第2のサウンドキャビティ(120A,120B)及び前記対に属する各サウンドキャビティを互いに結合する所謂「サウンド」チャネル(121)を有し、第1及び第2のサウンドキャビティ(120A,120B)は各々、前記タイヤトレッド(112)の第1及び第2の周方向溝(160A,160B)中にそれぞれ配置され、前記チャネル(121)は、前記タイヤトレッド(112)中に形成され、前記対に属する各キャビティ(120A,120B)及び前記関連のチャネル(121)は、
‐前記タイヤ(14)の半径方向外側に向かって開口し、
‐前記対に属する各キャビティ(120A,120B)及び前記関連のチャネル(121)が前記路面(111)との前記タイヤ(14)の接触領域(124)に入ると、実質的に漏れ止め状態で前記路面(111)によって封止されるよう構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤ(14)が新品の場合、前記第1及び前記2の溝(116A,116B)の各々が所定の深さを有するとき、前記タイヤトレッド(112)は、前記第1及び前記第2の溝(116A,116B)の各々の底部のところに横方向に形成された少なくとも2つのリブ(118)を有し、前記2つのリブ(118)は、前記タイヤ(14)が新品の場合、前記2つのリブ(118)を隔てる距離が所定の距離よりも小さい深さの差に実質的に等しい所定高さのものであり、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記第1及び前記第2の溝(116A,116B)の各々により形成されると共に前記2つのリブ(118)によって画定された各キャビティ(120A,120B)は、音を発生するようになっている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記音響センサ(20)は、前記自動車両(12)の乗員室内に設けられた電話の一部である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記音響センサ(20)は、前記自動車両内に設けられた電子モジュール、例えば地理位置情報電子モジュールの一部である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記音響信号から前記音響フットプリントノイズを抽出するよう前記音響信号を前処理(100〜306)するステップを更に有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記前処理(100〜306)は、前記送信ステップ(308)の実施前に前記自動車両に取り付けられたシステム(18)によって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記前処理(100〜306)は、前記送信ステップ(308)の実施後に前記遠隔サーバ(30)によって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記音響フットプリントノイズ(SF,T)は、幾つかの個々の音響フットプリント周波数成分を含み、前記音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、前記方法において、前記前処理(100〜306)中、
‐個々の周波数成分の幾つかのシリーズを列挙し、列挙された各シリーズは、前記個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができ、
‐音響フットプリントシリーズと呼ばれる1つのシリーズを前記列挙されたシリーズから選択し、
‐所謂ローカル信頼性指標(Icl)を前記音響フットプリントシリーズから求める、請求項6〜8のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記遠隔サーバ(30)が前記前処理(100〜306)の結果に従って前記タイヤ(14)の状態及び経時的なその過去の動向の診断を行なう後処理(310〜312)ステップを更に有する、請求項6〜9のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
‐時間的に連続していて、前記音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる幾つかの音響信号(SF,B)を必要とし、各音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号(SF,B)に関し、音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)を選択し、前記選択した音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)についてローカル信頼性指標(Icl)を定め、
前記後処理(310〜312)後、
‐前記音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)の前記ローカル信頼性指標(Icl)に、基づいて所謂グローバル信頼性指標(Icg)を求め、
‐前記グローバル信頼性指標(Icg)が絶対値として前記グローバル信頼性指標(Icg)と関連した所定のしきい値(Sg)以下である場合、前記タイヤ(14)の摩耗に関する警報を出す、請求項10記載の方法。
【請求項12】
時間的に連続して、音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる幾つかの音響信号(SF,B)を収集し、各音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号(SF,B)に関し、音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)を選択し、
前記後処理(310〜312)中、
‐各選択した音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)の個々の周波数成分相互間の時間の連続性から所謂グローバル信頼性指標(Icg)を求め、
‐前記グローバル信頼性指標(Icg)が絶対値として前記グローバル信頼性指標(Icg)と関連した所定のしきい値(Sg)以下である場合、前記タイヤ(14)の摩耗に関する警報を出す、請求項10記載の方法。
【請求項13】
複数台の自動車両(12)の前記タイヤ(14)の監視に関し、前記複数台の自動車両(12)の前記タイヤ(14)の全てについて診断を行なう、請求項10〜12のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項14】
前記遠隔サーバ(30)は、前記診断に従って、タイヤ使用推奨内容をユーザ(28,38)に伝える、請求項10〜13のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
前記推奨内容をSMS又は電子メッセージにより前記ユーザ(28)に伝える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上での実行時に請求項1〜10のうちいずれか一に記載の方法の前記ステップの実施を制御することができるコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16記載のプログラムを記憶形態で有するデータ記憶媒体。
【請求項18】
請求項15記載のプログラムをダウンロードする目的での通信ネットワーク上への前記プログラムの提供。
【請求項1】
少なくとも1台の自動車両(12)の少なくとも1本のタイヤ(14)を監視する方法であって、前記タイヤがタイヤトレッドを備えている、方法において、前記タイヤトレッドは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記タイヤトレッドが前記タイヤトレッドの周方向溝中に配置されている所謂「サウンド」キャビティを含む1組の少なくとも1つの摩耗標識を呈するよう構成されており、各キャビティ(120A,120B,121)は、前記タイヤ(14)の半径方向外側に向かって開口し、各キャビティ(120A,120B,121)は、該キャビティが路面(111)との前記タイヤ(14)の接触領域(124)に入ると実質的に漏れ止め状態で前記路面(111)によって封止されるよう構成されており、前記方法は、
‐前記所定の半径方向摩耗しきい値を超える路面上における前記タイヤ(14)の走行中に前記1組の少なくとも1つの摩耗標識により生じる音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる音響信号(SF,B)を前記自動車両(12)に取り付けられている音響センサにより検出(100)するステップと、
‐前記音響信号(SF,B)に関する情報を前記自動車両(12)には取り付けられていない遠隔サーバ(30)に送信(308)するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、各標識は、少なくとも1つの対をなす第1及び第2のサウンドキャビティ(120A,120B)及び前記対に属する各サウンドキャビティを互いに結合する所謂「サウンド」チャネル(121)を有し、第1及び第2のサウンドキャビティ(120A,120B)は各々、前記タイヤトレッド(112)の第1及び第2の周方向溝(160A,160B)中にそれぞれ配置され、前記チャネル(121)は、前記タイヤトレッド(112)中に形成され、前記対に属する各キャビティ(120A,120B)及び前記関連のチャネル(121)は、
‐前記タイヤ(14)の半径方向外側に向かって開口し、
‐前記対に属する各キャビティ(120A,120B)及び前記関連のチャネル(121)が前記路面(111)との前記タイヤ(14)の接触領域(124)に入ると、実質的に漏れ止め状態で前記路面(111)によって封止されるよう構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤ(14)が新品の場合、前記第1及び前記2の溝(116A,116B)の各々が所定の深さを有するとき、前記タイヤトレッド(112)は、前記第1及び前記第2の溝(116A,116B)の各々の底部のところに横方向に形成された少なくとも2つのリブ(118)を有し、前記2つのリブ(118)は、前記タイヤ(14)が新品の場合、前記2つのリブ(118)を隔てる距離が所定の距離よりも小さい深さの差に実質的に等しい所定高さのものであり、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記第1及び前記第2の溝(116A,116B)の各々により形成されると共に前記2つのリブ(118)によって画定された各キャビティ(120A,120B)は、音を発生するようになっている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記音響センサ(20)は、前記自動車両(12)の乗員室内に設けられた電話の一部である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記音響センサ(20)は、前記自動車両内に設けられた電子モジュール、例えば地理位置情報電子モジュールの一部である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記音響信号から前記音響フットプリントノイズを抽出するよう前記音響信号を前処理(100〜306)するステップを更に有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記前処理(100〜306)は、前記送信ステップ(308)の実施前に前記自動車両に取り付けられたシステム(18)によって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記前処理(100〜306)は、前記送信ステップ(308)の実施後に前記遠隔サーバ(30)によって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記音響フットプリントノイズ(SF,T)は、幾つかの個々の音響フットプリント周波数成分を含み、前記音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、前記方法において、前記前処理(100〜306)中、
‐個々の周波数成分の幾つかのシリーズを列挙し、列挙された各シリーズは、前記個々の音響フットプリント周波数成分の少なくとも一部を形成することができ、
‐音響フットプリントシリーズと呼ばれる1つのシリーズを前記列挙されたシリーズから選択し、
‐所謂ローカル信頼性指標(Icl)を前記音響フットプリントシリーズから求める、請求項6〜8のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
前記遠隔サーバ(30)が前記前処理(100〜306)の結果に従って前記タイヤ(14)の状態及び経時的なその過去の動向の診断を行なう後処理(310〜312)ステップを更に有する、請求項6〜9のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
‐時間的に連続していて、前記音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる幾つかの音響信号(SF,B)を必要とし、各音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号(SF,B)に関し、音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)を選択し、前記選択した音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)についてローカル信頼性指標(Icl)を定め、
前記後処理(310〜312)後、
‐前記音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)の前記ローカル信頼性指標(Icl)に、基づいて所謂グローバル信頼性指標(Icg)を求め、
‐前記グローバル信頼性指標(Icg)が絶対値として前記グローバル信頼性指標(Icg)と関連した所定のしきい値(Sg)以下である場合、前記タイヤ(14)の摩耗に関する警報を出す、請求項10記載の方法。
【請求項12】
時間的に連続して、音響フットプリントノイズ(SF,T)を含むことができる幾つかの音響信号(SF,B)を収集し、各音響信号(SF,B)は、幾つかの個々の周波数成分を含み、
‐各音響信号(SF,B)に関し、音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)を選択し、
前記後処理(310〜312)中、
‐各選択した音響フットプリントシリーズ(S1〜S11)の個々の周波数成分相互間の時間の連続性から所謂グローバル信頼性指標(Icg)を求め、
‐前記グローバル信頼性指標(Icg)が絶対値として前記グローバル信頼性指標(Icg)と関連した所定のしきい値(Sg)以下である場合、前記タイヤ(14)の摩耗に関する警報を出す、請求項10記載の方法。
【請求項13】
複数台の自動車両(12)の前記タイヤ(14)の監視に関し、前記複数台の自動車両(12)の前記タイヤ(14)の全てについて診断を行なう、請求項10〜12のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項14】
前記遠隔サーバ(30)は、前記診断に従って、タイヤ使用推奨内容をユーザ(28,38)に伝える、請求項10〜13のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
前記推奨内容をSMS又は電子メッセージにより前記ユーザ(28)に伝える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ上での実行時に請求項1〜10のうちいずれか一に記載の方法の前記ステップの実施を制御することができるコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16記載のプログラムを記憶形態で有するデータ記憶媒体。
【請求項18】
請求項15記載のプログラムをダウンロードする目的での通信ネットワーク上への前記プログラムの提供。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−520793(P2012−520793A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500301(P2012−500301)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050495
【国際公開番号】WO2010/106297
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050495
【国際公開番号】WO2010/106297
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
[ Back to top ]