説明

タイヤアセンブリ

【課題】タイヤが全体的に振動しにくく、部品点数が少なく、組付工数が少ないタイヤアセンブリを提供する。
【解決手段】タイヤアセンブリ1は、ホイール2と、ホイール2の径方向外側に配置され、路面に接地するタイヤ3と、ホイール2とタイヤ3との間に介装され、ホイール2に周方向に離間して接続される一対の接続部、一対の接続部同士を連結しタイヤ3に当接する連結部、を有する複数のばね部40が周方向および車幅方向に並べられて成るサスペンション部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車、台車、ストレッチャー、カート、ロボットなどに用いられ、サスペンション機能を有するタイヤアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
空気を入れて使用する空気タイヤに対して、空気不要の非空気タイヤは、空気圧を適正圧に設定する必要がない。また、非空気タイヤは、設定した空気圧を維持する必要がない。また、非空気タイヤは、パンクが発生しない。一方、非空気タイヤは、空気タイヤと比較して、剛性が高い。このため、非空気タイヤは、路面からの振動などを吸収しにくい。そこで、空気タイヤと同等の性能を備えるべく、サスペンション機能を有する、非空気タイヤを用いたタイヤアセンブリの開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハブ部とタイヤ部と連結部とを備える台車用の車輪が開示されている。車輪の回転中心から径方向外側に向かって、ハブ部と連結部とタイヤ部とは、この順番で、同心円状に配置されている。タイヤ部は、ホイール部材とリム部材とゴム製のトレッド部材と、を備えている。連結部は多数のコイルばねを備えている。多数のコイルばねは、車輪の回転中心から、放射状に延在している。特許文献1の車輪によると、多数のコイルばねにより、サスペンション機能が確保されている。
【0004】
特許文献2には、取り付け体とリング状体と連結部材とを備える非空気タイヤが開示されている。タイヤの回転中心から径方向外側に向かって、取り付け体と連結部材とリング状体とは、この順番で、同心円状に配置されている。リング状体は、複数の分割体から成る。連結部材は、多数の弧状の板ばねを備えている。板ばねは周方向にC字状に湾曲している。板ばねの径方向内端は、取り付け体に揺動可能に取り付けられている。板ばねの径方向外端は、分割体に揺動可能に取り付けられている。複数の分割体は、周方向に並んでいる。車幅方向一方から見て、多数の弧状の板ばねは渦巻状に配置されている。一つの渦巻を構成する板ばね群を一層と数える場合、径方向外側から見て、板ばね群は、車幅方向に沿って、二層並んでいる。二層の板ばね群の渦巻方向は、互いに反対方向である。特許文献2のタイヤによると、多数の板ばねにより、サスペンション機能が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−173524号公報
【特許文献2】特開2010−132259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車輪の場合、剛性の低いトレッド部材の径方向内側に、剛性の高いホイール部材、リム部材が配置されている。ホイール部材、リム部材は、いずれも円筒状を呈している。ホイール部材、リム部材は、放射状のコイル部材の径方向外端を受けるために必要である。
【0007】
しかしながら、剛性の低いトレッド部材の径方向内側に、剛性の高いホイール部材、リム部材が配置されていると、トレッド部材に局所的に大きな荷重が入力された場合であっても、当該荷重が、ホイール部材、リム部材に伝達される際、分散してしまう。このため、局所的に大きな荷重が入力されても、全体的にホイール部材、リム部材が変位してしまう。したがって、車輪が全体的に振動しやすくなる。よって、乗り心地が悪くなる。
【0008】
この点、特許文献2の非空気タイヤの場合、板ばねの径方向外端は、分割体に揺動可能に取り付けられている。このため、トレッド部材に局所的に大きな荷重が入力された場合、荷重入力部に対応する分割体だけが変位する。したがって、特許文献1の車輪と比較して、非空気タイヤが全体的に振動しにくい。よって、乗り心地が良くなる。
【0009】
ところが、特許文献2の非空気タイヤの場合であっても、非空気タイヤの振動の大小は、分割体の大きさに依存してしまう。このため、分割体の大きさが大きい場合は、非空気タイヤが全体的に振動しやすくなる。したがって、非空気タイヤの振動が許容レベルに達しない場合がある。
【0010】
また、特許文献2のタイヤの場合、一層の板ばね群に着目すると、タイヤが渦巻方向前方に回転する場合、トルク伝達性が低下する。一方、タイヤが渦巻方向後方に回転する場合、トルク伝達性が向上する。このように、トルク伝達性に方向性がある。このため、タイヤの正転、逆転両方向のトルク伝達性を良好にするために、渦巻方向の異なる二層の板ばね群を配置する必要がある。したがって、不可避的に部品点数が多くなる。また、多数の板ばねを、一本ずつ、径方向内側の取り付け体と、径方向外側の分割体と、の間に揺動可能に取り付ける必要がある。また、任意の層において、弧状の板ばねの取り付け方向を、全て揃える必要がある。このため、組付工数が多くなる。
【0011】
本発明のタイヤアセンブリは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、タイヤが全体的に振動しにくく、部品点数が少なく、組付工数が少ないタイヤアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するため、本発明のタイヤアセンブリは、ホイールと、該ホイールの径方向外側に配置され、路面に接地するタイヤと、該ホイールと該タイヤとの間に介装され、該ホイールに周方向に離間して接続される一対の接続部、一対の該接続部同士を連結し該タイヤに当接する連結部、を有する複数のばね部が周方向および車幅方向に並べられて成るサスペンション部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のタイヤアセンブリは、径方向内側から径方向外側に向かって、ホイールと、サスペンション部と、タイヤと、を備えている。サスペンション部は、複数のばね部を備えている。複数のばね部は、各々、一対の接続部と、連結部と、を備えている。一対の接続部は、共に、サスペンション部よりも径方向内側の、ホイールに接続されている。連結部は、サスペンション部よりも径方向外側の、タイヤに当接している。このように、ばね部は、ホイールを始端および終端としている。また、ばね部の中間部がタイヤに当接している。このため、本発明のタイヤアセンブリの場合、特許文献1の車輪のホイール部材、リム部材や、特許文献2の非空気タイヤの分割体のような、ばね部の径方向外端を受ける部材を配置する必要がない。したがって、部品点数が少なくなる。
【0014】
また、本発明のタイヤアセンブリの場合、ばね部で径方向外側と径方向内側とを繋ぐ必要がない。また、ばね部のトルク伝達性に方向性がない。このため、組付工数が少なくなる。
【0015】
また、本発明のタイヤアセンブリの場合、ばね部が直接タイヤに当接している。このため、タイヤに局所的に大きな荷重が入力された場合、荷重入力部に対応するばね部(単一でも複数でもよい)が主に弾性変形する。つまり、サスペンション部は、ばね部単位で弾性変形する。また、複数のばね部は、周方向および車幅方向に並んでいる(ただし、並び方は直線状に限定されない。)。このため、タイヤの接地面における任意の座標(周方向位置、車幅方向位置)に荷重が入力された場合、当該座標に対応するばね部が主に弾性変形する。
【0016】
このように、本発明のタイヤアセンブリによると、特許文献1の車輪、特許文献2の非空気タイヤと比較して、局所的に入力された荷重の影響が、タイヤアセンブリ全体に発現しにくい。このため、タイヤアセンブリが全体的に振動しにくい。したがって、本発明のタイヤアセンブリによると、乗り心地が良くなる。
【0017】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記タイヤはゴム製である構成とする方がよい。本構成によると、タイヤに局所的に大きな荷重が入力された場合、タイヤの当該部分が主に弾性変形しやすい。また、当該部分に対応するばね部が主に弾性変形しやすい。このため、タイヤアセンブリが全体的に振動しにくい。よって、乗り心地が良くなる。
【0018】
(1−2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記タイヤは、気体が充填されていない非気体タイヤである構成とする方がよい。本構成によると、気体(空気、窒素など)を入れて使用する気体タイヤに対して、気体圧を適正圧に設定する必要がない。また、設定した気体圧を維持する必要がない。また、パンクが発生しない。また、複数のばね部により、タイヤアセンブリの振動吸収性を自在に調整することができる。すなわち、気体タイヤのように非気体タイヤ全体の剛性のばらつきを小さくすることができる一方、意図的に、車幅方向あるいは周方向の剛性に、部分的な高低を設定することができる。なお、上記(1)の構成におけるタイヤには、非気体タイヤおよび気体タイヤが含まれる。
【0019】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ばね部の前記連結部は、一対の前記接続部に対して周方向に張り出す一対の張出部を有する構成とする方がよい。本構成によると、ばね部の展開長(連結部の全長)を長くすることができる。このため、ばね部のばね定数を小さくしやすい。したがって、タイヤアセンブリの剛性を小さくしやすい。
【0020】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記ばね部の一対の前記接続部は、各々、前記ホイールに揺動可能に支持される構成とする方がよい。
【0021】
本構成によると、ばね部が弾性変形する際、接続部が揺動することにより、ばね部に局所的に応力が集中するのを抑制することができる。また、接続部がホイールに揺動不可能に固定されている場合と比較して、ばね部が弾性変形しやすくなる。
【0022】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記ホイールは、車幅方向に離間して配置される一対の円板部と、一対の該円板部同士を連結し該円板部の周方向に並べられる複数のピンと、を有し、前記接続部は、該ピンの軸回りに揺動可能に、該ピンに環装される構成とする方がよい。本構成によると、簡単に接続部の揺動機構を確保することができる。
【0023】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記ホイールは、前記ピンに環装されるスペーサを有する構成とする方がよい。本構成によると、接続部の車幅方向に隙間が発生するのを抑制することができる。このため、ばね部が車幅方向にがたつきにくくなる。
【0024】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記タイヤは、前記ばね部の前記連結部が係合する係合部を有する構成とする方がよい。本構成によると、サスペンション部とタイヤとの間のトルク伝達性が向上する。また、サスペンション部に対して、タイヤがずれにくくなる。
【0025】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記ホイールと前記タイヤとの間に介装され、径方向に弾性変形可能な緩衝部材を備える構成とする方がよい。本構成によると、大きな荷重が入力された場合、ばね部が弾性限度を超えて変形するのを抑制することができる。このため、ばね部に永久歪みが残留しにくい。
【0026】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記サスペンション部は、周方向に並ぶ複数の前記ばね部からなる複数のばね層が、車幅方向に並べられて成り、隣接する該ばね層同士は、互いの前記連結部が周方向にずれるように配置される構成とする方がよい。
【0027】
連結部は、タイヤを介して、路面に接地している。このため、周方向に隣り合う連結部間の間隔が広いと、周方向に亘って剛性のばらつきが大きくなる。したがって、タイヤアセンブリががたつきやすくなる。
【0028】
この点、本構成によると、隣接するばね層同士は、互いの連結部が周方向にずれるように配置されている。このため、周方向に隣り合う連結部間の間隔を狭くすることができる。したがって、周方向に亘って剛性のばらつきが小さくなる。よって、タイヤアセンブリががたつきにくくなる。
【0029】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、全ての前記ばね部は、各々、独立している構成とする方がよい。本構成によると、任意のばね部が弾性変形する際、当該変形の影響を、別のばね部が受けにくい。このため、タイヤに局所的に大きな荷重が入力された場合、当該部分に対応するばね部が主に弾性変形しやすい。また、任意のばね部が弾性変形する際、当該変形を別のばね部が拘束しにくい。
【0030】
(9−1)好ましくは、上記(1)の構成において、全ての前記ばね部は、同一物である構成とする方がよい。本構成によると、全てのばね部を共通化することができる。このため、タイヤアセンブリに用いる部品の種類を削減することができる。
【0031】
(10)好ましくは、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成において、全ての前記ばね部のうち、複数の該ばね部は、単一の線材から形成される構成とする方がよい。本構成によると、サスペンション部、延いてはタイヤアセンブリの部品点数が少なくなる。また、タイヤアセンブリの組付工数が少なくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、タイヤが全体的に振動しにくく、部品点数が少なく、組付工数が少ないタイヤアセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第一実施形態のタイヤアセンブリが配置された移動支援ロボットの左側面図である。
【図2】同タイヤアセンブリの左側面図である。
【図3】同タイヤアセンブリの分解斜視図である。
【図4】図2の透過図である。
【図5】図2のV−V方向断面図である。
【図6】図5の枠VI内の拡大図である。
【図7】図4のピンA15とピンA2との間に取り付けられるばね部の左側面図である。
【図8】図4のピンA14〜A4区間のピン左端付近の斜視図である。
【図9】第一実施形態のタイヤアセンブリのサスペンション部のばね部の配置状態の模式図である。
【図10】同タイヤアセンブリのサスペンション部の任意のばね部の左側面図である。
【図11】第二実施形態のタイヤアセンブリの透過左側面図である。
【図12】第三実施形態のタイヤアセンブリの左右方向断面図である。
【図13】図12の円XIII内の拡大図である。
【図14】第三実施形態のタイヤアセンブリのホイールのピンA1〜A4区間のピン左端付近の斜視図である。
【図15】同タイヤアセンブリのサスペンション部のばね部の配置状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のタイヤアセンブリの実施の形態について説明する。
【0035】
<第一実施形態>
[タイヤアセンブリの構成]
まず、本実施形態のタイヤアセンブリの構成について説明する。なお、以降の図においては、移動支援ロボットの進行方向、後方から前方を見た場合を基準に、方位を定義する。図1に、本実施形態のタイヤアセンブリが配置された移動支援ロボットの左側面図を示す。図1に示すように、移動支援ロボット9は、ベース90と、左右一対のステップ91と、ハンドル92と、左右一対のタイヤアセンブリ1と、を備えている。
【0036】
搭乗者Mは、左右一対のステップ91の上に立った状態で、ハンドル92を把持している。左右一対のタイヤアセンブリ1は、ベース90に配置されている。搭乗者Mの体重移動により、モータ(図略)は駆動される。モータの回転軸は、左右一対のタイヤアセンブリ1の車軸(図略)に連結されている。このため、搭乗者Mの体重移動により、左右一対のタイヤアセンブリ1のタイヤは、各々、正方向あるいは逆方向に回転する。すなわち、移動支援ロボット9は、搭乗者Mの体重移動により、前進、後進、左旋回、右旋回可能である。
【0037】
図2に、本実施形態のタイヤアセンブリの左側面図を示す。図3に、同タイヤアセンブリの分解斜視図を示す。図4に、図2の透過図を示す。図5に、図2のV−V方向断面図を示す。図6に、図5の枠VI内の拡大図を示す。
【0038】
なお、図3、図4においては、説明の便宜上、ボルト23、ナット24を省略して示す。また、図4においては、ピンA1〜A15にハッチングを施して示す。また、以降の図に示すのは、図1の移動支援ロボット9の左右一対のタイヤアセンブリ1のうち、左方のタイヤアセンブリ1である。左右両方のタイヤアセンブリ1の構成、動きは同様である。図2〜図5に示すように、タイヤアセンブリ1は、ホイール2と、タイヤ3と、サスペンション部4と、を備えている。
【0039】
(ホイール2)
ホイール2は、外輪部20と、内輪部21と、270個のスペーサ22と、15本のボルト23と、15個のナット24と、15個のウェーブワッシャ25と、十五本のピンA1〜A15と、を備えている。外輪部20、内輪部21は、本発明の「円板部」の概念に含まれる。
【0040】
外輪部20は、アルミニウム合金製であって、円板状を呈している。外輪部20の径方向中心には、車軸が連結されている。外輪部20には、15個のピン取付孔200が穿設されている。15個のピン取付孔200は、外輪部20の外縁に沿って、中心角24°ずつ離間して、周方向に並べられている。図5、図6に示すように、15個のピン取付孔200は、各々、左側に向かって縮径する段差を有している。
【0041】
内輪部21は、アルミニウム合金製であって、円環状を呈している。内輪部21は、外輪部20の右側(車幅方向内側)に並置されている。内輪部21には、15個のピン取付孔210が穿設されている。15個のピン取付孔210は、内輪部21の外縁に沿って、中心角24°ずつ離間して、周方向に並べられている。図5に示すように、15個のピン取付孔210は、各々、右側に向かって縮径する段差を有している。
【0042】
15本のピンA1〜A15は、各々、アルミニウム合金製であって、左右方向(車幅方向)に長い円筒状を呈している。15本のピンA1〜A15は、各々、外輪部20のピン取付孔200と、内輪部21のピン取付孔210と、を連結している。すなわち、15本のピンA1〜A15は、外輪部20および内輪部21の外縁に沿って、中心角24°ずつ離間して、周方向に並べられている。
【0043】
15本のボルト23は、各々、ステンレス鋼製であって、左右方向に延在している。15個のナット24は、各々、ステンレス鋼製である。これらのボルト23、ナット24は、外輪部20と内輪部21との間に、ピンA1〜A15を取り付けるために用いられる。
【0044】
以下、ピンA1〜A15を代表して、ピンA1の取付構造について説明する。図5に示すように、ホイール2の最上部において、外輪部20のピン取付孔200と、ピンA1と、内輪部21のピン取付孔210と、は左右方向に直線状に並んでいる。ピンA1の左端(車幅方向外端)は、ピン取付孔200内の右向きの段差に当接している。ピンA1の右端は、ピン取付孔210内の左向きの段差に当接している。ボルト23は、左方から右方に、ピン取付孔200、ピンA1の径方向内側、ピン取付孔210を貫通している。ナット24は、ボルト23の先端(右端)に螺着されている。このように、ボルト23、ナット24により、外輪部20と内輪部21との間に、ピンA1〜A15が取り付けられている。
【0045】
15個のウェーブワッシャ25は、各々、ステンレス鋼製であって、左方または右方から見て円環状を、前方または後方から見て波板状を呈している。図6に示すように、ウェーブワッシャ25は、ピンA1〜A15の左端付近に環装されている。後述するように、ウェーブワッシャ25は、外輪部20の右面とばね部40との間、または外輪部20の右面とスペーサ22の左面との間に介装されている。
【0046】
270個のスペーサ22は、各々、POM(ポリアセタール)製であって、円環状を呈している。270個のスペーサ22は、18個ずつ、ピンA1〜A15に環装されている。後述するように、スペーサ22は、左右方向に隣接するばね部40間、またはウェーブワッシャ25とばね部40との間に介装されている。
【0047】
(タイヤ3)
タイヤ3は、ホイール2の径方向外側に配置されている。タイヤ3は、中実のゴム製である。すなわち、タイヤ3は、空気や窒素などの気体が充填されていない、非気体タイヤである。タイヤ3は、トレッド部30と、左右一対のサイドウォール部31と、を備えている。トレッド部30は、短軸円筒状であって、路面Fに接地している。左右一対のサイドウォール部31は、各々、円環状であって、トレッド部30の左右両縁から径方向内側に立設されている。
【0048】
(サスペンション部4)
サスペンション部4は、ホイール2の外周面とタイヤ3の内周面との間に介装されている。サスペンション部4は、270個の、独立したばね部40を備えている。270個のばね部40は、各々、ステンレス鋼製であって、C字状を呈している。ばね部40は、板材にせん断加工(打ち抜き加工)を施すことにより、作製される。ばね部40の短手方向断面は、四角形状を呈している。
【0049】
図7に、図4のピンA15とピンA2との間に取り付けられるばね部の左側面図を示す。図8に、図4のピンA14〜A4区間のピン左端付近の斜視図を示す。なお、図8では、説明の便宜上、ピンA14〜A4を透過して示す。また、スペーサ22にハッチングを施して示す。
【0050】
図4、図7、図8に示すように、ばね部40は、C字開口が径方向内側を向くように、配置されている。ばね部40は、一対の接続部400、401と、連結部402と、を備えている。
【0051】
一対の接続部400、401は、ばね部40のC字両端に配置されている。図1に示す移動支援ロボット9が前進する場合のタイヤアセンブリ1の回転方向(上→前→下→後)を正転方向として、接続部400は、ばね部40の正転方向端に配置されている。接続部401は、ばね部40の逆転方向端に配置されている。すなわち、一対の接続部400、401は、周方向に離間して配置されている。一対の接続部400、401は、各々、円環状を呈している。
【0052】
例えば、図7に示すばね部40の場合、接続部400は、ピンA15に揺動可能に環装されている。接続部401は、ピンA2に揺動可能に環装されている。接続部400と接続部401との間には、ピンA1が介在している。このように、接続部400、401は、ピンA1一本を挟んで、周方向両側のピンA15、A2に取り付けられている。
【0053】
連結部402は、一対の接続部400、401間を連結している。連結部402は、一対の張出部402a、402bと、当接部402cと、を備えている。
【0054】
当接部402cは、径方向外側に膨らむ弧状を呈している。当接部402cは、図3に示すタイヤ3のトレッド部30の内周面に弾接している。
【0055】
張出部402aは、当接部402cと接続部400とを連結している。張出部402aは、接続部400に対して、周方向外側(正転方向)に膨らむ弧状を呈している。張出部402aは、接続部400に対して、周方向外側から繋がっている。張出部402aの曲率は、当接部402cの曲率よりも大きい。
【0056】
張出部402bは、当接部402cと接続部401とを連結している。張出部402bは、接続部401に対して、周方向外側(逆転方向)に膨らむ弧状を呈している。張出部402bは、接続部401に対して、周方向外側から繋がっている。張出部402bの曲率は、当接部402cの曲率よりも大きい。
【0057】
[ばね部の配置状態]
次に、本実施形態のタイヤアセンブリ1のサスペンション部4の270個のばね部40の配置状態について説明する。図9に本実施形態のタイヤアセンブリのサスペンション部のばね部の配置状態の模式図を示す。なお、図9は、サスペンション部を径方向外側から見た展開図である。図9においては、ばね部40を、両端に丸印が付いた直線で示す。また、ウェーブワッシャ25を、波線で示す。また、スペーサ22を、ハッチング付きの四角で示す。
【0058】
270個のばね部40は、十五本のピンA1〜A15により、整列されている。サスペンション部4には、周方向に一列に並ぶ五個のばね部40により、ばね層Lが形成されている。ばね層Lは、左右方向に合計54層並んでいる。十五本のピンA1〜A15の左端には、各々、ウェーブワッシャ25が配置されている。ウェーブワッシャ25は、左端のばね層Lと、図6に示す外輪部20と、の間に介装されている。ウェーブワッシャ25は、54層のばね層Lを、右方に付勢している。
【0059】
左端のばね層Lに着目すると、五個のばね部40は、各々、ピンA1〜A3間、ピンA4〜A6間、ピンA7〜A9間、ピンA10〜A12間、ピンA13〜A15間に配置されている(図8参照)。つまり、五個のばね部40は、ピン一本を径方向外側から跨いで配置されている。このうち、ピンA1、A4、A7、A10、A13には、各々、正転方向の接続部400が環装されている。また、ピンA3、A6、A9、A12、A15には、各々、逆転方向の接続部401が環装されている。ばね部40に跨がれたピンA2、A5、A8、A11、A14には、各々、スペーサ22が環装されている。
【0060】
左端から二層目のばね層Lに着目すると、五個のばね部40は、各々、ピンA2〜A4間、ピンA5〜A7間、ピンA8〜A10間、ピンA11〜A13間、ピンA14〜A1間に配置されている。ばね部40に跨がれたピンA3、A6、A9、A12、A15には、各々、スペーサ22が環装されている。
【0061】
左端から三層目のばね層Lに着目すると、五個のばね部40は、各々、ピンA3〜A5間、ピンA6〜A8間、ピンA9〜A11間、ピンA12〜A14間、ピンA15〜A2間に配置されている。ばね部40に跨がれたピンA4、A7、A10、A13、A1には、各々、スペーサ22が環装されている。
【0062】
左端から四層目のばね層Lのばね部40、スペーサ22の配置は、左端のばね層Lのばね部40、スペーサ22の配置と、同様である。
【0063】
このように、サスペンション部4には、ばね層Lの三層を一組とするばね群Gが、左右方向に合計18群並んでいる。また、任意のばね群Gを構成する隣り合う二層のばね層L間においては、ばね部40、スペーサ22の配置が、周方向にピン一本分だけずれて配置されている。
【0064】
[タイヤアセンブリを構成する各部材の機能]
次に、本実施形態のタイヤアセンブリ1を構成する各部材の機能について説明する。ホイール2は、車軸の駆動力をタイヤ3に伝達する、駆動力伝達部材としての機能を有している。また、ホイール2は、サスペンション部4のばね部40を固定する、ばね部固定部材としての機能を有している。ピンA1〜A15は、270個のばね部40を整列させる、整列部材としての機能を有している。また、ピンA1〜A15は、接続部400、401を揺動可能に支持する、揺動機構部としての機能を有している。ボルト23、ナット24は、外輪部20と内輪部21との間に、ピンA1〜A15を取り付ける、ピン取付部材としての機能を有している。また、ボルト23、ナット24は、ウェーブワッシャ25に付勢力を蓄積させる、付勢力蓄積部としての機能を有している。ウェーブワッシャ25は、270個のばね部40が左右方向にがたつくのを抑制する、がたつき抑制部材としての機能を有している。また、ウェーブワッシャ25は、左右方向に隣接する一対のばね層L間の摺接力を調整する、摺接力調整部材としての機能を有している。
【0065】
タイヤ3は、車軸の駆動力を受け路面Fを転がる、転動体としての機能を有している。タイヤ3のトレッド部30は、サスペンション部4のばね部40との間でトルクの伝達を行う、トルク伝達部としての機能を有している。タイヤ3の左右一対のサイドウォール部31は、車幅方向にサスペンション部4からタイヤ3が脱落するのを抑制する、脱落抑制部としての機能を有している。また、左右一対のサイドウォール部31は、外部からサスペンション部4を保護する、保護部としての機能を有している。また、左右一対のサイドウォール部31は、外部からサスペンション部4に異物(小石など)が入るのを抑制する、異物侵入抑制部としての機能を有している。
【0066】
サスペンション部4は、路面Fからの振動を吸収する、振動吸収部としての機能を有している。また、サスペンション部4は、タイヤ3の熱を放熱する、放熱部としての機能を有している。連結部402は、弾性変形することにより路面Fからの振動を吸収する、弾性変形部としての機能を有している。
【0067】
[タイヤアセンブリの動き]
次に、本実施形態のタイヤアセンブリ1の動きについて説明する。図1に示す搭乗者Mがステップ91上で体重を移動させると、モータが駆動し、車軸が回転する。このため、搭乗者Mの体重の移動方向に移動支援ロボット9が動くように、タイヤアセンブリ1は回転する。
【0068】
図10に、本実施形態のタイヤアセンブリのサスペンション部の任意のばね部の左側面図を示す。なお、当該ばね部40は、図7のばね部40に対応している。また、図10において、実線は荷重が入力されていない状態を、細線は荷重が入力されている状態を、それぞれ示す。
【0069】
図10に示すように、走行時においては、下方のばね部40には、タイヤ3を介して、路面Fから上向きの荷重が入力される。このため、当接部402cは、矢印Y1で示すように、径方向に潰れるように(曲率が小さくなるように)変形する。また、当接部402cが径方向に潰れると、その分、当接部402cの周方向長さが長くなる。このため、一対の張出部402a、402bは、矢印Y2、Y3で示すように、周方向外側に膨出するように(曲率が大きくなるように)変形する。並びに、一対の張出部402a、402bは、矢印Y4、Y5で示すように、径方向内側に入り込むように、接続部400、401を中心に揺動する。これら一連のばね部40の変形により、サスペンション部4は路面Fからの振動を吸収している。
【0070】
なお、路面に凸部がある場合は、図中細線で示す状態に対して、更に当接部402cが径方向に潰れる方向に、凸部に対応するばね部40が弾性変形する。一方、路面に凹部がある場合は、図中細線で示す状態に対して、当接部402cが径方向に膨らむ方向に、凹部に対応するばね部40が弾性変形する。
【0071】
なお、路面の凸部、凹部に対応しないばね部40には、当該弾性変形に伴う摺接力が、ばね部40同士の接触界面(図3参照)を介して伝達される。しかしながら、ばね部40同士は独立しているので、路面の凸部、凹部に対応しないばね部40は弾性変形しにくい。
【0072】
[作用効果]
次に、本実施形態のタイヤアセンブリ1の作用効果について説明する。本実施形態のタイヤアセンブリ1によると、図7に示すように、ばね部40は、ピンA1〜A15を始端(接続部400)および終端(接続部401)としている。また、ばね部40の中間部(連結部402)がタイヤ3に当接している。このため、本実施形態のタイヤアセンブリ1の場合、ばね部40の径方向外端を受ける部材を配置する必要がない。したがって、部品点数が少なくなる。
【0073】
また、本実施形態のタイヤアセンブリ1の場合、ばね部40で径方向外側と径方向内側とを繋ぐ必要がない。また、ばね部40のトルク伝達性に方向性がない。このため、組付工数が少なくなる。
【0074】
また、本実施形態のタイヤアセンブリ1の場合、ばね部40が直接タイヤ3に当接している。このため、タイヤ3に局所的に大きな荷重が入力された場合、図10に示すように、荷重入力部に対応するばね部40(単一でも複数でもよい)が主に弾性変形する。つまり、サスペンション部4は、ばね部40単位で弾性変形する。また、図9に示すように、複数のばね部40は、周方向および車幅方向に並んでいる。このため、タイヤの接地面における、任意の座標(周方向位置、車幅方向位置)に荷重が入力された場合、当該座標に対応するばね部40が主に弾性変形する。
【0075】
このように、本実施形態のタイヤアセンブリ1によると、局所的に入力された荷重の影響が、タイヤアセンブリ1全体に発現しにくい。このため、タイヤアセンブリ1が全体的に振動しにくい。したがって、乗り心地が良くなる。
【0076】
また、タイヤ3はゴム製である。このため、タイヤ3に局所的に大きな荷重が入力された場合、タイヤ3の当該部分が主に弾性変形しやすい。また、当該部分に対応するばね部40が主に弾性変形しやすい。このため、タイヤアセンブリ1が全体的に振動しにくい。
【0077】
また、タイヤ3は、気体が充填されていない非気体タイヤである。このため、気体(空気、窒素など)を入れて使用する気体タイヤに対して、気体圧を適正圧に設定する必要がない。また、設定した気体圧を維持する必要がない。また、パンクが発生しない。また、複数のばね部40により、タイヤアセンブリ1の振動吸収性を自在に調整することができる。すなわち、気体タイヤのように非気体タイヤ全体の剛性のばらつきを小さくすることができる一方、意図的に、車幅方向あるいは周方向の剛性に、部分的な高低を設定することができる。
【0078】
また、タイヤ3に気体が充填されていないため、タイヤ3の温度が上昇しにくい。また、タイヤ3はゴム製である。一方、ばね部40は、全てステンレス鋼製である。このため、ばね部40の方が、タイヤ3よりも、熱伝導率が高い。したがって、タイヤ3の温度が上昇しても、ばね部40を介して放熱することができる。
【0079】
また、図7に示すように、ばね部40の連結部402は、一対の張出部402a、402bを備えている。このため、ばね部40の展開長(連結部402の全長)を長くすることができる。したがって、ばね部40のばね定数を小さくしやすい。よって、タイヤアセンブリ1の剛性の調整幅の下限値を下げることができる。
【0080】
また、図10に示すように、ばね部40の一対の接続部400、401は、各々、ピンA1〜A15に揺動可能に支持されている。このため、ばね部40が弾性変形する際、接続部400、401が揺動することにより、ばね部40に局所的に応力が集中するのを抑制することができる。また、接続部400、401がピンA1〜A15に揺動不可能に固定されている場合と比較して、ばね部40が弾性変形しやすくなる。
【0081】
また、図9に示すように、ピンA1〜A15における、接続部400、401が環装されていない部分には、接続部400、401と左右方向肉厚が等しい、スペーサ22が環装されている。このため、接続部400、401の左右方向に隙間が発生するのを抑制することができる。したがって、ばね部40が車幅方向にがたつきにくくなる。
【0082】
また、図9に示すように、左右方向に隣接するばね層L同士は、互いの連結部402が周方向にずれるように配置されている。このため、左方または右方から見た場合、複数の連結部402が円環状に連なることになる。したがって、周方向に亘って剛性のばらつきが小さくなる。よって、タイヤアセンブリ1ががたつきにくくなる。
【0083】
また、図3に示すように、全てのばね部40は、各々、独立している。このため、任意のばね部40が弾性変形する際、当該変形の影響を、別のばね部40が受けにくい。したがって、タイヤ3に局所的に大きな荷重が入力された場合、当該部分に対応するばね部40が主に弾性変形しやすい。また、任意のばね部40が弾性変形する際、当該変形を別のばね部40が拘束しにくい。
【0084】
また、全てのばね部40は、同一物である。このため、全てのばね部40を共通化することができる。したがって、タイヤアセンブリ1に用いる部品の種類を削減することができる。
【0085】
また、図9に示すように、左右方向に隣り合うばね層L同士は、部分的に接触している。このため、ウェーブワッシャ25の付勢力を変えることにより、左右方向に隣り合うばね層L間の摺接力を調整することができる。摺接力を小さくすると、左右方向に隣り合うばね層L同士が互いに独立して弾性変形しやすくなる。また、弾性変形するばね部40が少なくなる分、タイヤアセンブリ1の剛性が低くなる。摺接力を大きくすると、左右方向に隣り合うばね層L同士が一緒に弾性変形しやすくなる。また、弾性変形するばね部40が多くなる分、タイヤアセンブリ1の剛性が高くなる。
【0086】
また、図10に示すように、荷重が入力される際、一対の張出部402a、402bには応力が集中しやすい。この点、当接部402cの短手方向断面形状が略正方形状を呈しているのに対して、一対の張出部402a、402bの短手方向断面形状は、周方向長さの方が左右方向長さよりも長い、長方形状を呈している。このため、応力集中部である張出部402a、402bを強化することができる。
【0087】
また、タイヤアセンブリ1にサスペンション部4が配置されているため、図1に示す移動支援ロボット9の本体に、別途、サスペンション装置を配置する必要がない。このため、移動支援ロボット9を軽量化、小型化することができる。また、空いたスペースに他の装置を配置することができる。
【0088】
<第二実施形態>
本実施形態のタイヤアセンブリと第一実施形態のタイヤアセンブリとの相違点は、ホイールとタイヤとの間に、緩衝部材が介装されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0089】
図11に、本実施形態のタイヤアセンブリの透過左側面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に示すように、サスペンション部4を構成する複数のばね部40間には多数の隙間が介在している。図11にハッチングで示すように、多数の緩衝部材50、51は、当該隙間を充填している。緩衝部材50、51は、各々、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製であって、左右方向に長い柱状を呈している。路面から荷重が入力される際、緩衝部材50、51は、ばね部40の弾性変形に追従して弾性変形する。
【0090】
本実施形態のタイヤアセンブリ1と、第一実施形態のタイヤアセンブリとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のタイヤアセンブリ1によると、緩衝部材50、51が配置されている。このため、大きな荷重が入力された場合、ばね部40が弾性限度を超えて変形するのを抑制することができる。このため、ばね部40に永久歪みが残留しにくい。
【0091】
<第三実施形態>
本実施形態のタイヤアセンブリと第一実施形態のタイヤアセンブリとの相違点は、タイヤのトレッド部に、係合部が形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0092】
図12に、本実施形態のタイヤアセンブリの左右方向断面図を示す。図13に、図12の円XIII内の拡大図を示す。なお、図5、図7と対応する部位については、同じ符号で示す。図12、図13に示すように、タイヤ3のトレッド部30には、凹部300と凸部301とが形成されている。凹部300、凸部301は、本発明の「係合部」の概念に含まれる。凹部300と凸部301とは、周方向に部分的に延在している。凹部300には、ばね部40の当接部402cが係合している。凸部301は、周方向に隣り合う当接部402c間に介在している。
【0093】
本実施形態のタイヤアセンブリ1と、第一実施形態のタイヤアセンブリとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のタイヤアセンブリ1によると、タイヤ3に凹部300と凸部301とが配置されている。このため、タイヤ3とばね部40とが相対的に空転するのを抑制することができる。したがって、トルク伝達性が高くなる。また、サスペンション部4に対して、タイヤ3が左右方向にずれにくくなる。このため、サスペンション部4からタイヤ3が脱落するのを抑制することができる。
【0094】
また、当接部402cは、ばね部40の弾性力により径方向外側に付勢されている。これに対して、凹部300は、ゴム製のタイヤ3の弾性力により径方向内側に付勢されている。このため、当接部402cは凹部300にしっかりと係合している。また、凸部301は、周方向に隣り合う一対の当接部402c間に介在している。このため、一対の当接部402c同士が干渉しにくい。
【0095】
<第四実施形態>
本実施形態のタイヤアセンブリと第一実施形態のタイヤアセンブリとの相違点は、270個のばね部が、合計10本の線材から形成されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0096】
図14に、本実施形態のタイヤアセンブリのホイールのピンA1〜A4区間のピン左端付近の斜視図を示す。なお、図8と対応する部位については、同じ符号で示す。図15に、本実施形態のタイヤアセンブリのサスペンション部のばね部の配置状態の模式図を示す。なお、図9と対応する部位については、同じ符号で示す。また、説明の便宜上、左端のばね層Lから、右端から二層目のばね層Lまで、延在する線材60〜64を、実線で示す。また、左端から二層目のばね層Lから、右端のばね層Lまで、延在する線材70〜74を、点線で示す。
【0097】
まず、線材60〜64を代表して、線材60の配線構造について説明する。図15に太実線で示すように、線材60の左端600は、左端のばね層LにおいてピンA1に巻装されている。一方、線材60の右端601は、右端から二層目のばね層LにおいてピンA10に巻装されている。
【0098】
図14に示すように、線材60は、断面円形のステンレス鋼線である。ピンA1とピンA3との間には、線材60により、ばね部40が形成されている。すなわち、一対の接続部400、401は、線材60がピンA1、A3に巻き付けられることにより形成されている。ただし、接続部400、401は、ピンA1、A3の軸回りに揺動可能である。連結部402は、線材60が一対の接続部400、401間を連結することにより形成されている。
【0099】
線材60は、ピンA1(左端600)→A3→A5・・・A6→A8→A10(右端601)の順に、ピン一本おきに巻き付けられている。線材60がピンに巻き付けられるたびに、線材60は、左端から一層目→左端から三層目→左端から五層目・・・右端から六層目→右端から四層目→右端から二層目の順に、一層おきに右方のばね層Lに移動する。このようにして、線材60により、合計27個のばね部40が形成される。すなわち、5本の線材60〜64により、合計135個(27個/本×5本)のばね部40が形成される。
【0100】
次に、線材70〜74を代表して、線材72の配線構造について説明する。図15に太点線で示すように、線材72の左端720は、左端から二層目のばね層LにおいてピンA8に巻装されている。一方、線材72の右端721は、右端のばね層LにおいてピンA2に巻装されている。
【0101】
線材72は、線材60同様に、断面円形のステンレス鋼線である。また、線材72の配線方法は、線材60の配線方法と同様である。すなわち、線材72は、ピンA8(左端720)→A10→A12・・・A13→A15→A2(右端721)の順に、ピン一本おきに巻き付けられている。線材72がピンに巻き付けられるたびに、線材72は、左端から二層目→左端から四層目→左端から六層目・・・右端から五層目→右端から三層目→右端から一層目の順に、一層おきに右方のばね層Lに移動する。このようにして、線材72により、合計27個のばね部40が形成される。すなわち、5本の線材70〜74により、合計135個(27個/本×5本)のばね部40が形成される。なお、これらの線材60〜64、70〜74は、上記配線構造になるように予め曲げ加工を施された後、ピンA1〜A10に装着される。
【0102】
本実施形態のタイヤアセンブリと、第一実施形態のタイヤアセンブリとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のタイヤアセンブリによると、10本の線材60〜64、70〜74により、270個のばね部を形成することができる。このため、サスペンション部延いてはタイヤアセンブリの部品点数が少なくなる。また、タイヤアセンブリの組付工数が少なくなる。また、ばね部40の配置作業が簡単になる。また、スペーサを配置する必要がない。
【0103】
<その他>
以上、本発明のタイヤアセンブリの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0104】
例えば、上記実施形態においては、本発明のタイヤアセンブリを移動支援ロボット9に用いたが、他のロボット、自動車、自転車、三輪車、一輪車、台車、ストレッチャー、カート、無限軌道車(建設機械、農作業機など)など、タイヤのような転動体を有するあらゆる移動体に、用いることができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、本発明のタイヤアセンブリを移動支援ロボット9の駆動輪として用いたが、従動輪として用いてもよい。
【0106】
また、ばね部40の材質、形状、配置数、大きさなどは特に限定しない。また、ばね部40の剛性の調整方法は特に限定しない。例えば、連結部402の断面形状、断面積、展開長、ばね部40の材質、配置数などにより、ばね部40の剛性を調整してもよい。
【0107】
また、ウェーブワッシャ25の付勢力により、左右方向に隣接する一対のばね層L間の摺接力を調整してもよい。ウェーブワッシャ25の付勢力が大きくなると、ばね層L間の摺接力が大きくなる。このため、サスペンション部4の剛性が高くなる。
【0108】
また、ばね部40に対するスペーサ22の摩擦力により、左右方向に隣接する一対のばね層L間の摺接力を調整してもよい。スペーサ22の摩擦力が大きくなると、ばね部40が変形しにくくなる。このため、サスペンション部4の剛性が高くなる。
【0109】
また、タイヤ3として、空気や窒素が充填された気体タイヤを用いてもよい。こうすると、サスペンション部4に加えて、気体圧によりタイヤアセンブリ1の剛性を調整することができる。このため、タイヤアセンブリ1の剛性の調整幅が広くなる。
【0110】
また、図6に示すウェーブワッシャ25の配置数は特に限定しない。例えば、ピンA1〜A15の右端や中央などに配置してもよい。また、ウェーブワッシャ25の代わりに、他の弾性部材(板ばね、ゴム、発泡体など)により、複数のばね層Lに、車幅方向から圧縮荷重を加えてもよい。また、図3に示すように、サイドウォール部31の径方向内側への張出量を大きくしてもよい。こうすると、サスペンション部4に異物が入りにくい。
【0111】
また、タイヤ3の材質は特に限定しない。ゴムは勿論、金属、発泡体などであってもよい。また、タイヤ3には、ポリアミド、レーヨン、ポリエステル、スチールなどの材質の、補強部材を配置してもよい。
【0112】
また、ばね部40の剛性を、車幅方向に亘って変化させてもよい。例えば、車幅方向中央に対して車幅方向両端のばね部40の剛性を高くすると、旋回時に、タイヤ3に対してホイール2が変位しにくくなる。
【0113】
また、上記実施形態においては、スペーサ22をPOM製としたが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)などのフッ素樹脂など、耐摩耗性、耐熱性に優れた材質製であればよい。
【0114】
また、上記実施形態においては、緩衝部材50、51をEPDM製としたが、緩衝部材50、51の材質は特に限定しない。例えば、NR(天然ゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、U(ウレタンゴム)、ACM(アクリルゴム)、Q(シリコーンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)などのゴムを用いてもよい。好ましくは、環境温度80℃以下でゴム弾性を確保できるゴムである方がよい。また、緩衝部材50、51の材質は、ゴムや樹脂の発泡体でもよい。
【符号の説明】
【0115】
1:タイヤアセンブリ、2:ホイール、3:タイヤ、4:サスペンション部、9:移動支援ロボット。
20:外輪部(円板部)、21:内輪部(円板部)、22:スペーサ、23:ボルト、24:ナット、25:ウェーブワッシャ、30:トレッド部、31:サイドウォール部、40:ばね部、50:緩衝部材、60〜64:線材、70〜74:線材、90:ベース、91:ステップ、92:ハンドル。
200:ピン取付孔、210:ピン取付孔、300:凹部(係合部)、301:凸部(係合部)、400:接続部、401:接続部、402:連結部、402a:張出部、402b:張出部、402c:当接部、600:左端、601:右端、720:左端、721:右端。
A1〜A15:ピン、F:路面、G:ばね群、L:ばね層、M:搭乗者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールと、
該ホイールの径方向外側に配置され、路面に接地するタイヤと、
該ホイールと該タイヤとの間に介装され、該ホイールに周方向に離間して接続される一対の接続部、一対の該接続部同士を連結し該タイヤに当接する連結部、を有する複数のばね部が周方向および車幅方向に並べられて成るサスペンション部と、
を備えるタイヤアセンブリ。
【請求項2】
前記ばね部の前記連結部は、一対の前記接続部に対して周方向に張り出す一対の張出部を有する請求項1に記載のタイヤアセンブリ。
【請求項3】
前記ばね部の一対の前記接続部は、各々、前記ホイールに揺動可能に支持される請求項1または請求項2に記載のタイヤアセンブリ。
【請求項4】
前記ホイールは、車幅方向に離間して配置される一対の円板部と、一対の該円板部同士を連結し該円板部の周方向に並べられる複数のピンと、を有し、
前記接続部は、該ピンの軸回りに揺動可能に、該ピンに環装される請求項3に記載のタイヤアセンブリ。
【請求項5】
前記ホイールは、前記ピンに環装されるスペーサを有する請求項4に記載のタイヤアセンブリ。
【請求項6】
前記タイヤは、前記ばね部の前記連結部が係合する係合部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のタイヤアセンブリ。
【請求項7】
前記ホイールと前記タイヤとの間に介装され、径方向に弾性変形可能な緩衝部材を備える請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のタイヤアセンブリ。
【請求項8】
前記サスペンション部は、周方向に並ぶ複数の前記ばね部からなる複数のばね層が、車幅方向に並べられて成り、
隣接する該ばね層同士は、互いの前記連結部が周方向にずれるように配置される請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のタイヤアセンブリ。
【請求項9】
全ての前記ばね部は、各々、独立している請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のタイヤアセンブリ。
【請求項10】
全ての前記ばね部のうち、複数の該ばね部は、単一の線材から形成される請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のタイヤアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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