説明

タイヤトレッド用ゴム組成物

【課題】タイヤトレッド用ゴム組成物として有用なシリカ多量配合系ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積100〜300m2/gのシリカを10重量部以上含む補強性充填剤30〜100重量部、シランカップリング剤をシリカ配合量に対して0.1〜15重量%配合してなるゴム組成物において、レシチンを0.1〜20重量部配合したことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
【効果】シリカの多量配合に伴う加硫遅延や粘度増加等の問題を解消すると共に、種々の加硫物性を改善し、同時に生産性を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に関し、更に詳細には、シリカの多量配合に伴う加硫遅延や粘度増加等の問題を解消すると共に、種々の加硫物性を改善し、同時に生産性を向上させたシリカ配合系のタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ多量配合系のキャップコンパウンドについては、シリカ自体の凝集性の高さを回避して、加硫ゴムにおけるゴム物性を向上させることが課題であり、従来、各種の加工助剤の提案がある。例えば、ポリシロキサン(特許文献1)、n‐アルキルアミン化合物(特許文献2)、3級アミン化合物(特許文献3)、アミノシラン化合物(特許文献4)およびオルガノシラン化合物(特許文献5)等を配合する技術が提案されている。しかしながら、シリカ配合時に不可避的に発生する加硫速度遅延の問題を含めた解決策としては、未だ十分とは言えず、更なる改善の余地がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9‐111044号公報
【特許文献2】特開2000‐17107号公報
【特許文献3】特開平10‐120828号公報
【特許文献4】特開平10‐67884号公報
【特許文献5】特開平9‐208749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明では、シリカ配合系ゴムコンパウンドにレシチンを所定量配合することにより、当該シリカ配合系ゴム組成物の諸加硫物性を改善し、同時に生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積100〜300m2/gのシリカを10重量部以上含む補強性充填剤30〜100重量部、シランカップリング剤をシリカ配合量に対して0.1〜15重量%配合してなるゴム組成物において、レシチンを0.1〜20重量部配合したタイヤトレッド用ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では、シリカ配合系ゴム組成物、特にシリカ高配合のシリカ配合系ゴム組成物に所定のレシチンを所定量配合すると、上記目的が達成できることを見出したものである。
【0007】
本発明におけるジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系合成ゴムを単独で、あるいはこれら二種以上を併用して用いることができる。
【0008】
本発明では、当該ジエン系ゴム100重量部に対して、BET比表面積100〜300m2/gのシリカを10重量%以上含む補強性充填剤30〜100重量部、シランカップリング剤をシリカ配合量に対して0.1〜15重量%配合してなるゴム組成物に、更にレシチンを0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部配合することを特徴とするものである。当該レシチンの配合量が0.1重量部未満では、所期の効果を発揮することができず、逆に20重量部を超えると、ブリードしてしまうので、好ましくない。
【0009】
一般に、レシチンは、大豆、卵黄などに多く含まれているリン脂質であり、本発明で使用するレシチンには、粗製レシチンあるいは精製レシチンのいずれをも用いることが可能である。粗製レシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジル酸、ホスファチジルエタノールアミンおよびホルファチジルイノシトールなどのリン脂質を主成分とし、トリグリセリド、糖脂質、ステロールおよびトコフェロールおよび炭水化物などを含むものである。精製レシチンは、前記粗製レシチンに含まれるリン脂質以外の成分を、レシチンの金属塩複合体の溶解度を利用した精製法、あるいは酸化アルミニウムやケイ酸を用いたカラムクロマトグラフィーによる方法などによって可及的少量となるように取り除いた前記リン脂質の混合物からなる。
【0010】
本発明のゴム組成物に使用される補強性充填剤のシリカとしては、特に制限はないが、例えば、乾燥法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および特開昭62−62838号公報に開示される沈降シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカの比表面積は、特に、窒素吸着比表面積(BET法)で、100〜300m2/g、更に好ましくは120〜220m2/gの範囲であるときに、補強性、耐摩耗性および発熱性等の改善が十分に達成されるので、好適である。ここで、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じBET法で測定される値である。本発明のゴム組成物では、ゴム成分100重量部に対して当該シリカを10〜100重量部の範囲で配合することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物に配合される補強性充填剤には、上記のシリカに加えて、更にカーボンブラック、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、メタケイ酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムなどが所定の配合量で配合されてもよい。
【実施例】
【0012】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例によって限定するものでないことは言うまでもない。
【0013】
試験サンプルの作製
以下の表1に示すゴム配合系における硫黄と加硫促進剤を除く成分を1.7Lの密閉型ミキサーで3〜5分間混練し、165±5℃に達した時に放出したマスターバッチに、硫黄と加硫促進剤を加えて8インチのオープンロールで混練してゴム組成物を得た。このゴム組成物の一部を粘度試験(ムーニー粘度)に供した。次いで、このゴム組成物の残部を15cm×15cm×0.2cmの金型中で、160℃、20分間プレス加硫して試験片(ゴムシート)を作製し、硬度、粘弾性試験およびシリカ分散性試験に供した。
【0014】
試験・評価法
1)ムーニー粘度(ML1+4): JIS K 6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件下で測定した。比較例1を100として、結果を指数で示す。数値が小さい程、良好であることを示す。
2)硬度: JIS K 6253に準拠して、スプリング式A型硬さ試験機を用いて、20℃での硬度を測定した。比較例1を100として、結果を指数で示す。数値が大きい程、良好であることを示す。
3)tanδ(0℃、60℃): JISK 6394に準拠して測定した。加硫ゴムシートは、2mm厚のゴムシートを打抜き、幅5mm×厚さ2mm×長さ20mmの短冊状物とし、東洋精機製作所製のレオログラフソリッドを用いて、初期歪=10%、動的歪=±2%、周波数=20Hzで、0℃および60℃におけるtanδ(0℃)およびtanδ(60℃)を測定した。比較例1を100として、結果を指数で示す。tanδ(0℃)では、数値が大きい程、良好であることを示す。tanδ(60℃)では、数値が小さい程、良好であることを示す。
4)シリカ分散性: (株)東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメーターを用いて、室温において初期歪を10%とし、振幅を0.1〜9.5%まで0.2%毎に測定した貯蔵弾性率E′および損失弾性率E″を測定し、cole−coleプロットによりE′(0)−E′(∞)を算出した。比較例1を100として、結果を指数で示す。数値が大きい程、良好であることを示す。
【0015】
実施例1〜3および比較例1
結果を、以下の表1に示す。
【表1】

【0016】
表1の結果よりみて、シリカ配合系ゴム組成物にレシチンを所定量配合すると、加工性およびシリカ分散性に優れ、かつ硬度および粘弾性に優れたゴム組成物が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
よって、本発明のゴム組成物は、これをタイヤトレッド用ゴム組成物として利用すると極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積100〜300m2/gのシリカを10重量部以上含む補強性充填剤30〜100重量部、シランカップリング剤をシリカ配合量に対して0.1〜15重量%配合してなるゴム組成物において、レシチンを0.1〜20重量部配合したことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記レシチンを0.5〜10重量部配合したことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。

【公開番号】特開2008−150554(P2008−150554A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342732(P2006−342732)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】