説明

タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システム、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリ

【課題】本発明の課題は、タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを低減できる高速ユニフォミティ調整システムを提供することにある。
【解決手段】本発明のタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システム11は、タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを計測する高速ユニフォミティマシン12と、計測した高速ユニフォミティのベクトルと、タイヤホイールアッセンブリに対して取り付けたバランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するようにバランスウエイトの質量及び取付け位相を演算する演算装置21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤをリム組みしたタイヤホイールアッセンブリにおける高速ユニフォミティ調整システム、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、その製造時における型へのゴムの流れや、ベルト、ビード、ライナ、トレッド、カーカス等の寸法の軽微な違いによって、ときおり不均一を生じさせる。例えば、質量的に不均一なタイヤがリム組みされてマスアンバランスを生じているタイヤホイールアッセンブリは、マスアンバランスを生じていないものよりも回転時に発生する振動及び騒音が大きい。
【0003】
従来、マスアンバランスを低減するようにタイヤホイールアッセンブリに対してバランスウエイトを取り付ける技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。マスアンバランスが低減されたタイヤホイールアッセンブリを装着した車両は、発生する振動等が低減されて乗り心地が良好となる。ちなみに、図1(b)は、タイヤホイールアッセンブリに対してマスアンバランスを低減するようにバランスウエイトを取り付ける従来技術の構成説明図である。
図1(b)に示すように、例えば、静的アンバランスを低減する場合には、静的アンバランスのベクトルUBに対して逆ベクトルを形成するように、バランスウエイトWがタイヤホイールアッセンブリ51のホイール52に取り付けられる。
【0004】
また、従来、振動等の小さいタイヤを得る技術としては、製造した個々のタイヤについてユニフォミティを計測すると共に、このユニフォミティが所定値よりも大きいタイヤについてはこれを廃棄し、所定値よりも小さいタイヤのみを選別する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
ユニフォミティは、タイヤを1回転させたときにタイヤに発生する力の偏差(力の変動)を意味し、このユニフォミティには、タイヤの半径方向に発生する力の偏差(RFV、Radial Force Variation)と、接線方向に発生する力の偏差(TFV、Tangential Force Variation)と、横方向(回転軸方向)に発生する力の偏差(LFV、Lateral Force Variation)とがある。
また、ユニフォミティには、タイヤを60rpm程度の低速で回転させる低速ユニフォミティマシンで計測する、いわゆる低速ユニフォミティと、タイヤをハイウェイスピードに相当する速度で回転させる高速ユニフォミティマシンで計測する、いわゆる高速ユニフォミティとがある。
ちなみに、高速ユニフォミティマシンは、低速ユニフォミティマシンと比較してその規模が大掛りになることから、前記した特許文献3の方法では、高速ユニフォミティマシンを使用せずに、低速ユニフォミティマシンで計測した低速ユニフォミティに基づいて高速ユニフォミティを推測すると共に、この推測値に基づいてタイヤを選別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−281175号公報
【特許文献2】特開2003−184958号公報
【特許文献3】特開2009−8506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、振動等の小さいタイヤホイールアッセンブリを得る技術のうち、バランスウエイトをタイヤホイールアッセンブリに取り付ける技術(例えば、特許文献1、特許文献2参照)によれば、低速でタイヤホイールアッセンブリが回転する場合には、ある程度の振動等を低減することはできる。このことは、低速回転時のタイヤホイールアッセンブリでは、ユニフォミティのうちTFVやLFVに比べてRFVが支配的になると共に、このRFVにはマスアンバランスやRRO(Radial Run−Out)が大きく関与するためと考えられる。
しかしながら、高速でタイヤホイールアッセンブリが回転する場合には、RFVに加えてTFV等の力の偏差も考慮しなければ、確実にタイヤホイールアッセンブリの振動等を低減することができない。つまり、バランスウエイトでマスアンバランスを打ち消す技術(例えば、特許文献1、特許文献2参照)では、高速回転するタイヤホイールアッセンブリの振動等を確実に低減することができない。
【0007】
したがって、高速ユニフォミティが低減するようにタイヤホイールアッセンブリを調整することができれば、高速回転するタイヤホイールアッセンブリの振動等を確実に低減することができる。
また、前記したタイヤを選別する技術(例えば、特許文献3参照)においては、タイヤの選別の許容幅が広がってタイヤの歩留まりを向上させることができる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを低減できる高速ユニフォミティ調整システム、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、タイヤホイールアッセンブリに取り付けるバランスウエイトの質量及び取付け位相を調節することによって、高速ユニフォミティを低減できることを見出して本発明に到達した。
すなわち、前記課題を解決した本発明のタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システムは、タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを計測する高速ユニフォミティマシンと、前記タイヤホイールアッセンブリに対して取り付けられるバランスウエイトの質量mを第1変数に設定すると共に、前記バランスウエイトの取付け位相θを第2変数に設定する工程と、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルと、前記バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するように前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程とを実行する演算装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システムは、計測した高速ユニフォミティのベクトルと、バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するように、バランスウエイトの質量m及び取付け位相θを決定する。
したがって、この質量mのバランスウエイトを、取付け位相θとなるように取り付けられたタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティは、このバランスウエイトによって低減される。
【0011】
また、このタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システムにおいては、計測した前記高速ユニフォミティは、高速RFVの1次成分(RH1)及び高速TFVの1次成分(TH1)であり、前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程では、下記式(1)で示される評価関数Jのm及びθを求める構成とするのがよい。
【0012】
【数1】

【0013】
また、以上のようなタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システムによれば、タイヤホイールアッセンブリに対して取り付けられるバランスウエイトの質量mを第1変数に設定すると共に、前記バランスウエイトの取付け位相θを第2変数に設定する工程と、高速ユニフォミティマシンで計測された前記タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティのベクトルと、前記バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測された前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するように前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程と、演算した前記第1変数mの質量を有するバランスウエイトを、演算した前記第2変数θの取付け位相となるようにタイヤホイールアッセンブリに対して取り付ける工程と、を有することを特徴とするタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整方法を提供することができる。
【0014】
また、このタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整方法によれば、バランスウエイトを取り付けたタイヤホイールアッセンブリであって、高速ユニフォミティマシンで計測した高速ユニフォミティのベクトルと、バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減する質量のバランスウエイトを選択し、このバランスウエイトを、前記和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減する位相となる位置に取り付けたことを特徴とするタイヤホイールアッセンブリを提供することができる。
【0015】
また、本発明のタイヤホイールアッセンブリは、高速ユニフォミティマシンで計測した高速ユニフォミティのベクトルに対して逆ベクトルを形成する当該逆ベクトルの位相位置にバランスウエイトを取り付ける際の目印となるマーキングを施した構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを低減できる高速ユニフォミティ調整システム、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリの構成説明図であり、(b)は、タイヤホイールアッセンブリに対してマスアンバランスを低減するようにバランスウエイトを取り付ける従来技術の構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る高速ユニフォミティ調整システムの構成説明図である。
【図3】高速ユニフォミティ調整システムの演算装置が実行する工程を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、高速RH1のベクトルと、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの合成図、(b)は、高速TH1のベクトルと、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの合成図である。
【図5】バランスウエイトを取り付ける際の目印となるマーキングを施したタイヤホイールアッセンブリの構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係るタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システム、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリについて適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、タイヤホイールアッセンブリ、高速ユニフォミティ調整システム、及び高速ユニフォミティ調整方法の順番で説明する。
【0019】
(タイヤホイールアッセンブリ)
図1(a)に示すように、本実施形態に係るタイヤホイールアッセンブリ1は、ホイール2と、このホイール2のリムに組み付けられたタイヤ3とを備えて構成されている。そして、ホイール2のリムフランジの外周縁には、バランスウエイトWが取り付けられている。
【0020】
このタイヤホイールアッセンブリ1は、次に説明する高速ユニフォミティ調整システム11(図2参照)の高速ユニフォミティマシン12(図2参照)を使用して計測した高速ユニフォミティのベクトルと、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさ(ベクトルの絶対値)が低減し、望ましくは最小になる質量m[g]のバランスウエイトWを選択し、このバランスウエイトWを、前記和で示されるベクトルの大きさ(ベクトルの絶対値)が低減し、望ましくは最小になる位相[θ]となる位置に取り付けたものである。
【0021】
更に詳しく説明すると、高速ユニフォミティとしての半径方向に発生する力の偏差(RFV、Radial Force Variation)における一次成分の計測値と、接線方向に発生する力の偏差(TFV、Tangential Force Variation)における一次成分の計測値との評価関数(後記する式(1)参照)における「J」が最小となるように、質量m[g]のバランスウエイトWを、位相[θ](以下では、取付け位相θという場合がある)の位置に取り付けたものである。
ちなみに、図1(a)中、高速RFVの一次成分の計測値は、Radial Harmonic 1stの意味で、単に「RH1」と略記したベクトルで示し、高速TFVの一次成分の計測値は、Tangential Harmonic 1stの意味で、単に「TH1」と略記したベクトルで示している。
また、前記した「一次成分」は、タイヤホイールアッセンブリ1の1回転当り1サイクルの周波数を有するフーリエ方程式の第1調波成分と同義である(以下に同じ)。
【0022】
以上のように、本実施形態に係るタイヤホイールアッセンブリ1は、図1(b)に示すマスアンバランス(ベクトルUB)を低減するようにバランスウエイトWを取り付けたタイヤホイールアッセンブリ51と異なって、高速ユニフォミティ(高速RH1及び高速TH1)を低減するようにバランスウエイトWを取り付けた構成となっている。
なお、図1(a)中、バランスウエイトWの取付け位相θの大きさ、ベクトルRH1の方向及び大きさ、並びにベクトルTH1の方向及び大きさは、現実のものを図示したものではなく、これらは、図2を参照して次に説明する高速ユニフォミティ調整システム11によって決定される。
【0023】
(高速ユニフォミティ調整システム)
図2に示すように、本実施形態に係る高速ユニフォミティ調整システム11は、高速ユニフォミティマシン12と、演算装置21とで構成されている。
【0024】
<高速ユニフォミティマシン>
本実施形態での高速ユニフォミティマシン12における「高速」の用語は、60rpm程度のタイヤの回転速度におけるユニフォミティ(いわゆる低速ユニフォミティ)を計測するものよりも、高速の回転速度のタイヤのユニフォミティを計測するものを意味する。更に詳しくは、前記した高速ユニフォミティのうち、TFV(Tangential Force Variation)を無視できる程度の「低速」に対して、TFVを考慮しなければならない回転速度を意味する。
【0025】
この高速ユニフォミティマシンは、タイヤに係る技術分野においては、「高速ユニフォミティマシン」の名称で周知の計測装置であり、本実施形態での高速ユニフォミティマシンは、振動等を低減しようとするタイヤホイールアッセンブリ1(図1(a)参照)の目標の回転速度帯域(望ましくは1000rpm以上)における高速ユニフォミティを計測できるものを想定している。
本実施形態での高速ユニフォミティマシン12としては、例えば、HSU−1064(アクロンスタンダード社製)、100D26−PH(神戸製鋼社製)等の市販品を使用することができる。
このような高速ユニフォミティマシン12は、目標の高速の回転速度で回転するタイヤホイールアッセンブリ1(図1(a)参照)について、高速RH1及び高速TH1を計測して出力する。具体的には、高速RH1のベクトルの大きさ(絶対値)及び方向(後記する位相α(式(1)及び図4(a)参照))、並びに高速TH1のベクトルの大きさ(絶対値)及び方向(後記する位相β(式(1)及び図4(b)参照))を出力する。
【0026】
<演算装置>
演算装置21は、高速ユニフォミティマシン12が計測して出力した高速ユニフォミティ(高速RH1及び高速TH1)に基づいて後記する工程を実行することによって、計測した高速ユニフォミティが低減するバランスウエイトWの質量m、及びバランスウエイトWの取付け位相θを演算し、出力するように構成されている。
【0027】
(高速ユニフォミティ調整方法)
次に、本実施形態に係る高速ユニフォミティ調整システム11の動作について、主に演算装置21が実行する工程に基づいて具体的に説明すると共に、本実施形態に係る高速ユニフォミティ調整方法について詳細に説明する。図3は、高速ユニフォミティ調整システムの演算装置が実行する工程を示すフローチャートである。
【0028】
本実施形態に係る高速ユニフォミティ調整方法においては、前記したように、高速ユニフォミティマシン(図2参照)が、タイヤホイールアッセンブリ1(図1(a)参照)の高速ユニフォミティ(高速RH1及び高速TH1)を計測すると、演算装置21(図2参照)は、図3に示すように、計測された高速ユニフォミティを取得する(ステップS101)。
なお、本実施形態での高速ユニフォミティ調整方法の工程においては、高速ユニフォミティマシン12でタイヤホイールアッセンブリ1の高速ユニフォミティを計測する工程を含んでいるが、予め計測した高速ユニフォミティ(第三者が計測したものを含む)が準備されていれば、本発明は、高速ユニフォミティの計測工程を必須の構成要件としないことは言うまでもない。
【0029】
次に、演算装置21は、タイヤホイールアッセンブリ1に対して取り付けられるバランスウエイトW(図1(a)参照)の質量mを第1変数に設定すると共に、バランスウエイトの取付け位相θを第2変数に設定する(ステップS102)。
【0030】
そして、演算装置21は、取得したタイヤホイールアッセンブリ1の高速ユニフォミティのベクトル(高速RH1及び高速TH1のベクトル)と、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの和(3つのベクトルの和)で示されるベクトルの大きさが低減するバランスウエイトWの質量m、及びバランスウエイトWの取付け位相θを演算し、出力する(ステップS103)。
具体的には、演算装置21は、次式(1)で示される評価関数Jのm及びθを演算する。
【0031】
【数2】

【0032】
なお、式(1)中の角速度ωは、高速ユニフォミティマシン12(図2参照)で高速ユニフォミティを計測した際のタイヤホイールアッセンブリ1(図1(a)参照)の角速度に等しい。通常、式(1)中の角速度ωは、前記した振動等を低減しようとするタイヤホイールアッセンブリ1の目標の回転速度帯域内で適宜に設定される。
【0033】
また、式(1)中のAは、本実施形態に係るタイヤホイールアッセンブリ1を装着する車両の特性(高速RH1及び高速TH1を起因とした車体振動特性)に応じて設定され、高速RH1と、高速TH1との間でユニフォミティを低減する比率を調節するためのパラメータである。
【0034】
次に、式(1)で示される評価関数と、高速ユニフォミティ(高速RH1及び高速TH1)との関係について説明する。
次に参照する図4(a)は、計測した高速RH1のベクトルと、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの合成図、図4(b)は、計測した高速TH1のベクトルと、バランスウエイトWの遠心力のベクトルとの合成図である。
【0035】
質量mのバランスウエイトW(図1(a)参照)を、取付け位相θで取り付けたタイヤホイールアッセンブリ1が、角速度ωで回転すると、図4(a)及び(b)に示すように、バランスウエイトWの遠心力のベクトルは、大きさがmrω、位相[θ]のベクトルで表すことができる。なお、mrω中のrは、タイヤホイールアッセンブリ1の回転中心からバランスウエイトWまでの距離である。
【0036】
そして、角速度ωで回転するタイヤホイールアッセンブリ1の高速RH1は、図4(a)に示すように、大きさRH1、位相α(一定値)のベクトルで表すことができる。つまり、角速度ωで回転するタイヤホイールアッセンブリ1におけるバランスウエイトW(図1(a)参照)の遠心力のベクトルと、高速RH1のベクトルとの和で示されるベクトルは、ベクトルRH1´として表すことができる。また、ベクトルRH1´の成分は、次式(2)で表すことができる。
【0037】
ベクトルRH1´=(RH1cosα+mrωcosθ,RH1sinα+mrωsinθ)
・・・・・式(2)
但し、式(2)中、RH1は、RH1のベクトルの大きさであり、α、m、r、ω、及びθは前記した通りである。
【0038】
ちなみに、このベクトルRH1´の大きさは、式(1)中の{ }1/2で括られる2つの要素のうち、前(一番目)に位置する{ }1/2の要素で表すことができる。
【0039】
その一方で、図4(b)に示すように、タイヤホイールアッセンブリ1の接線方向の力である高速TH1(図4(b)中、破線で示す)は、大きさTH1、位相β(一定値)のベクトルで表すことができる。そして、このベクトルは、タイヤホイールアッセンブリ1の中心を始点とするように変換すると、図4(b)中、実線で示すベクトルTH1のように、大きさTH1、位相(β−90°)のベクトルで表すことができる。つまり、角速度ωで回転するタイヤホイールアッセンブリ1におけるバランスウエイトWの遠心力のベクトルと、高速TH1のベクトルとの和で示されるベクトルは、ベクトルTH1´として表すことができる。また、ベクトルTH1´の成分は、次式(3)で表すことができる。
【0040】
ベクトルTH1´=
(TH1cos(β−90°)+mrωcosθ,TH1sin(β−90°)+mrωsinθ)
・・・・・式(3)
但し、式(3)中、TH1は、TH1のベクトルの大きさであり、β、m、r、ω、及びθは前記した通りである。
【0041】
ちなみに、このベクトルTH1´の大きさは、式(1)中の{ }1/2で括られる2つの要素のうち、後(二番目)に位置する{ }1/2の要素で表すことができる。
つまり、このステップS103では、演算装置21が、いわゆるミニマックス法によって、前記式(1)で示される評価関数Jのm及びθを演算し、出力する(図2参照)。
【0042】
そして、演算装置21が出力したm及びθに基づいて、図1(a)に示すように、タイヤホイールアッセンブリ1に対して、質量mのバランスウエイトWを取付け位相θで取り付けることで、本実施形態に係る高速ユニフォミティ調整方法の一連の工程が終了する。
【0043】
以上のような高速ユニフォミティ調整システム11、高速ユニフォミティ調整方法、及び高速ユニフォミティ調整を施したタイヤホイールアッセンブリ1によれば、バランスウエイトWを取り付けることによって、タイヤホイールアッセンブリ1の高速ユニフォミティが低減するので、高速回転するタイヤホイールアッセンブリ1の振動や騒音を確実に低減することができる。
【0044】
また、本発明によれば、タイヤホイールアッセンブリ1の高速ユニフォミティが低減するので、高速ユニフォミティに基づいてタイヤを選別する技術(例えば、特許文献3参照)においては、タイヤの選別の許容幅が広がってタイヤの歩留まりを向上させることができる。
【0045】
また、本発明によれば、高速ユニフォミティを高速ユニフォミティマシン12(図2参照)で実際に計測するので、計測した低速ユニフォミティに基づいて高速ユニフォミティを推定する技術(例えば、特許文献3参照)と異なって、より正確な現実の値として高速ユニフォミティを得ることができる。
【0046】
また、高速ユニフォミティを推定する技術(例えば、特許文献3参照)では、低速ユニフォミティに基づいて高速ユニフォミティを推定する際に、低速ユニフォミティの計測値と高速ユニフォミティの計測値とを関連付けるための伝達関数を予め求めておく必要があるところ、本発明によれば、高速ユニフォミティを実際に計測するので伝達関数の必要がない。その結果、本発明によれば、高速ユニフォミティを推定する技術と異なって、低速ユニフォミティマシンと高速ユニフォミティマシンの両方を使用する必要がなく、前記したように、高速ユニフォミティを計測する高速ユニフォミティマシン21(図2参照)のみを用意すればよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、計測した高速ユニフォミティのベクトルの大きさを低減するようにバランスウエイトWを取り付けたタイヤホイールアッセンブリ1(図1(a)参照)について説明したが、本発明は計測した高速ユニフォミティのベクトルに対して逆ベクトルを形成する当該逆ベクトルの位相位置にバランスウエイトを取り付ける際の目印となるマーキングを施した構成とすることができる。次に参照する図5は、バランスウエイトを取り付ける際の目印となるマーキングを施したタイヤホイールアッセンブリの構成説明図である。
【0048】
図5に示すように、タイヤホイールアッセンブリ1aは、ホイール2にマーキングMが施されている。
このマーキングMは、計測したタイヤホイールアッセンブリ1aの高速RH1のベクトル(図5中のベクトルRH1)と高速TH1のベクトル(図5中のベクトルTH1)との和のベクトルV1に対して逆ベクトルV2を形成する当該逆ベクトルV2の位相位置に施されている。なお、ホイール2の中心からマーキングMまでの距離は、特に制限はなく、ホイール2の中心でなければよい。また、マーキングMは、ホイール2の領域に施されていても、タイヤ3の領域に施されていても構わない。また、逆ベクトルV2の位相位置であれば、つまりホイール2の位相半径上であれば、マーキングMは複数施すこともできる。
このようなタイヤホイールアッセンブリ1aによれば、ホイール2の中心からマーキングMを通過する線上、つまり逆ベクトルV2の位相位置にバランスウエイトWが配置されることによって、そのバランスウエイトWの質量mの大きさに応じて、高速回転時の高速RH1のベクトルと高速TH1のベクトルとの和のベクトルV1は低減されることとなる。
なお、バランスウエイトWの質量mについては、バランスウエイトWの遠心力mrω(但し、rはバランスウエイトWの取付け位置(半径)であり、ωはタイヤホイールアッセンブリ1aの角速度である)がベクトルV1の大きさ以下、望ましくは等しくなるように調節されなければならないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 タイヤホイールアッセンブリ
2 ホイール
3 タイヤ
11 高速ユニフォミティ調整システム
12 高速ユニフォミティマシン
21 演算装置
W バランスウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティを計測する高速ユニフォミティマシンと、
前記タイヤホイールアッセンブリに対して取り付けられるバランスウエイトの質量mを第1変数に設定すると共に、前記バランスウエイトの取付け位相θを第2変数に設定する工程と、
計測した前記高速ユニフォミティのベクトルと、前記バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するように前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程とを実行する演算装置と、
を備えることを特徴とするタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システムにおいて、
計測した前記高速ユニフォミティは、高速RFVの1次成分(RH1)及び高速TFVの1次成分(TH1)であり、
前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程では、下記式(1)で示される評価関数Jのm及びθを求めることを特徴とするタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整システム。
【数3】

【請求項3】
タイヤホイールアッセンブリに対して取り付けられるバランスウエイトの質量mを第1変数に設定すると共に、前記バランスウエイトの取付け位相θを第2変数に設定する工程と、
高速ユニフォミティマシンで計測された前記タイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティのベクトルと、前記バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測された前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減するように前記第1変数m及び前記第2変数θを演算する工程と、
演算した前記第1変数mの質量を有するバランスウエイトを、演算した前記第2変数θの取付け位相となるようにタイヤホイールアッセンブリに対して取り付ける工程と、
を有することを特徴とするタイヤホイールアッセンブリの高速ユニフォミティ調整方法。
【請求項4】
バランスウエイトを取り付けたタイヤホイールアッセンブリであって、
高速ユニフォミティマシンで計測した高速ユニフォミティのベクトルと、バランスウエイトの遠心力のベクトルとの和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減する質量のバランスウエイトを選択し、このバランスウエイトを、前記和で示されるベクトルの大きさが、計測した前記高速ユニフォミティのベクトルの大きさよりも低減する位相となる位置に取り付けたことを特徴とするタイヤホイールアッセンブリ。
【請求項5】
高速ユニフォミティマシンで計測した高速ユニフォミティのベクトルに対して逆ベクトルを形成する当該逆ベクトルの位相位置にバランスウエイトを取り付ける際の目印となるマーキングを施したことを特徴とするタイヤホイールアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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