タイヤモデル規定方法、タイヤモデル作成方法、及びプログラム
【課題】簡易に、補強材のモデルの角度の精度分布が良好なタイヤモデルを規定する。
【解決手段】成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定する際に、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定する。
【解決手段】成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定する際に、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモデル規定方法、タイヤモデル作成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FEMに代表されるシミュレーションにおけるタイヤのモデリングでは、傾斜角度付補強材のモデルに一定角度を用いることが多かった(例えば、1枚目の傾斜ベルトには幅方向一律に同じ角度を持たせて計算する)。ここで、現物のタイヤから実測したタイヤ幅方向の角度分布を適宜与えて解析を実施する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このように工夫を施す理由は、内圧後のタイヤの形状と補強層の張力を正しく見積もることがモデル精度として大切だからである。
【0003】
この傾斜ベルト層に角度分布を与える理由について説明すると、角度付補強層は通常、タイヤ現物の中では角度に分布を持つ。これはタイヤ製造工程において、角度付部材が作成されたあとにタイヤの形に成形(変形)されることに起因する。例えば、平面から曲面への加工によって部分的な伸縮があり、これが角度分布を作る。そして、次に加硫されるときには他の部材からの力や、ゴム流動が作用するので、さらに角度分布は複雑化する。そのために、従来は実際のタイヤから角度を実測して正確なモデル化を行うことがあり、これによって内圧後のタイヤ形状はタイヤ幅方向に見て実際のものに近づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−111229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のタイヤのモデリングでは、実際のタイヤから角度を実測しているため手間がかかる、という問題がある。また、従来の技術では角度付補強層の変形の度合(拡張率)を考慮せずに、幅方向に複数個に分割して角度の平均値を角度付補強層の周方向に対する角度としているため、従来の方法によって作成されたタイヤモデルの角度付補強層のタイヤの周方向に対する角度分布の精度が良好ではない、という問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを作成することができるタイヤモデル規定方法、タイヤモデル作成方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法は、成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定するタイヤモデル規定方法であって、前記成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定することを特徴とするタイヤモデル規定方法である。
【0008】
本発明によれば、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定する。
【0009】
このように、本発明によれば、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度の精度分布が良好なタイヤモデルを規定することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法において、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくようにしたものである。
【0011】
また、請求項3記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記コード角度分布条件を、計算に基づいて規定されると共に、該計算の方法は成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層の前記コードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されるようにしたものである。
【0012】
また、請求項4記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項3記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記幅方向分割領域を、赤道線を含むセンター部領域、補強層の端部領域、及び前記センター部領域と前記端部領域との間に形成される中間部領域を含んで構成され、前記コサイン則にて規定された計算の計算値を与える場合に、前記センター部領域には該計算値を与え、前記端部領域及び前記中間部領域にはそれぞれ該計算値を補正した値を与えるようにしたものである。
【0013】
また、請求項5記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項4記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記端部領域に与える前記計算値を補正した値を、コサイン則によって求められた前記センター部領域のコード角度と前記端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下であるようにしたものである。
【0014】
また、請求項6記載の発明のタイヤモデル設計方法は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載のタイヤモデル規定方法によって規定されたタイヤモデルを有限要素化して用いることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項7記載の発明のタイヤモデル設計方法は、前記有限要素化されたタイヤモデルを、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であるようにしたものである。
【0016】
また、請求項8記載の発明のプログラムは、請求項6または請求項7に記載のタイヤモデル設計方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】タイヤモデル作成装置としてのパーソナルコンピュータの概略図である。
【図2】タイヤモデル作成プログラムのメインルーチンのフローチャートである。
【図3】タイヤの断面図の一例である。
【図4】設計データに含まれている情報を説明するための図である。
【図5】暫定的に作成されたタイヤモデルの模式図である。
【図6】暫定的に作成されたタイヤモデルの断面図(半面)である。
【図7】分割する処理を説明するための図である。
【図8】他のベルトを分割した場合について説明するための図である。
【図9】コサイン則を説明するための図である。
【図10】コサイン則によって演算された角度と実測した角度とを比較するための図である。
【図11】本実施の形態の拡張率について説明するための図である。
【図12】本実施の形態の角度の演算方法について説明するための図である。
【図13】実験結果を説明するための図である。
【図14】実験結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、タイヤの挙動解析のためのタイヤモデル(解析モデル)の規定及び作成に本発明を適用したものである。
【0020】
図1にはタイヤモデルを規定及び作成するタイヤモデル作成装置としてのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤモデルを規定及び作成するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
【0021】
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフレキシブルディスク(FD)が挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフレキシブルディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述するプログラムや処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。
【0022】
また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらに対応する装置(例えば、CD−ROM装置、CD−RAM装置、DVD−ROM装置、DVD−RAM装置、MD装置、またはMO装置等)を用いればよい。
【0023】
また、パーソナルコンピュータの他に、ワークステーションやスーパーコンピュータをタイヤモデルの作成に用いてもよいことは勿論である。
【0024】
次に、本実施の形態の作用として、コンピュータ本体12で実行されるタイヤモデル作成プログラムの処理ルーチンについて図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0025】
図2は、タイヤモデル作成プログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、タイヤモデルの作成対象となるタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。例えば、コンピュータ本体12のハードディスクに、予め複数種類のタイヤのCADデータ(タイヤ形状、構造、材料などの設計データ)等の設計データを記憶しておき、タイヤモデルの作成対象となるタイヤの設計データを選択して読み込むことにより、タイヤモデルの作成対象となるタイヤを設定することができる。ここで、この設計データには、タイヤを加硫するためのプラダー(図示しない)等によって変形(拡張)される前の補強材(補強層)としてのベルト(以下、変形前ベルトと称する場合がある)の長さが含まれている。また、変形前ベルトはタイヤの周方向に対して所定の角度で設けられており、この設計データには、この所定の角度(所定角度)も含まれている。
【0026】
なお、タイヤを加硫するためのプラダー等によって変形される前の補強材としてのベルトは、成形前の部品状態に対応する。また、成形前の部品状態には、補強層の周方向の長さ(周方向長さ)、及び補強層を構成するコードの赤道線からの角度が規定されており、この周方向長さ及びこの角度も設計データに含まれている。
【0027】
ここで、タイヤモデルの対象となるタイヤのタイヤ断面の一例を図3を参照して説明する。タイヤ20は、タイヤの骨格となるカーカス22を有している。このカーカス22は、ビード26により折り返されている。このカーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24の延長上にはビードゴム36が配置されている。
【0028】
また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置されており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置されており、カーカス22のタイヤの軸方向外側にはサイドゴム34が配置されている。なお、図3に示す例ではベルト30は2枚のベルト30A及び30Bから構成された場合が図示されているが、ベルト30は1枚または3枚以上のベルトから構成されていてもよい。
【0029】
また、生タイヤが製造されてから最終的なタイヤが製造されるまでに、補強材としてのベルトが拡張し、ベルトの拡張率はタイヤの幅方向で異なるため、タイヤの幅方向の各位置でベルトの角度(タイヤの周方向に対するベルトの角度)が異なる。そこで、本実施の形態では、上記設計データには、更に、図4に示すように、最終的なタイヤの回転軸からの半径方向(径方向)の距離が最大の最終的なタイヤのベルト(変形後の補強材である変形補強材)の箇所Aの位置情報、最終的なタイヤの回転軸からの半径方向の距離が最小の最終的なタイヤのベルトの箇所Bの位置情報、最終的なタイヤの回転軸から上記箇所Aまでの距離Rmax、及び最終的なタイヤの回転軸から上記箇所Bまでの距離Rminが含まれていることとする。なお、説明の便宜上、ベルト30Bについてのみ図4に示したが、ベルト30Aに関する同様の情報も上記設計データに含まれている。
【0030】
次のステップ102では、上記設計データに基づいて、暫定的にタイヤモデルを作成する。ここで、「暫定的にタイヤモデルを作成する」とは、ステップ104以降の処理で定義される角度の情報が含まれていないタイヤモデル(暫定的なタイヤモデル)を作成することである。例えば、ステップ102では、図5に示すように、暫定的なタイヤモデルとしてモデル80を作成する。モデル80は、要素80a,80b,80c,・・・の集合体であり、各要素80a,80b,80c,・・・は数値解析が可能なデータである。例えば、各要素80a,80b,80c,・・・には2次元の3角形・4角形からなる膜要素、または3次元の四面体からなるソリッド要素などが挙げられる。また、各要素80a,80b,80c,・・・には、座標のデータが定義されている。なお、このタイヤモデルには変形後のベルトのモデル(変形補強材のモデル)が含まれている。
【0031】
次のステップ104では、上記ステップ102で暫定的に作成されたタイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の変形補強材のモデルの箇所から最小の変形補強材のモデルの箇所までの特定領域を分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、説明の便宜上、1枚のベルトについての処理について以下説明する。
【0032】
ステップ104の処理について具体的に説明する。図6は上記ステップ102で作成されたタイヤモデルの断面図(半面)である。まず、同図に示されるように、上記ステップ102で作成されたタイヤモデルのベルト32Bのモデル(変形補強材のモデル)50の上記箇所A及び上記箇所B、並びに上記Rmax及び上記Rminを抽出する。次に、図7に示すように、箇所Aから箇所Bまでの領域(特定領域)Sを半径方向にN(Nは2以上の整数)分割する。なお、図7にはN=3の場合が示されている。そして、半径方向にN分割された線とベルト50のモデルとの交点を分割点とし、この分割点でベルト50のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、箇所Aから箇所Bまでの領域Sを半径方向にN分割する場合には、例えば、等分割にすることが好ましい。
【0033】
なお、図7の例では、成形後の補強層(ベルト)の形状が形成するタイヤの赤道部と端部とのタイヤ径方向の寸法差(タイヤ径方向寸法差)に基づき、所定の分割条件(例えば等分割)にて径方向分割された点(分割点)を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と、成形後の補強層の形状との交点が図示されている。
【0034】
以上のようにしてステップ104では、上記ステップ102で暫定的に作成されたタイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大(距離Rmax)の変形補強材のモデルの箇所Aから最小(距離Rmin)の変形補強材のモデルの箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、N=3の場合、図7に示すようにタイヤモデルが半面のときには変形補強材のモデルは3分割されるが、タイヤモデルが両面のときには変形補強材のモデルは5分割される。また、分割されたN個の変形補強材のモデルの各々を分割領域(または分割モデル、幅方向分割領域)と称する場合がある。
【0035】
また、図8に示すように、ベルト50のラインが変わると、分割点の位置も変わることとなる。
【0036】
次のステップ106では、設計データに含まれる変形前ベルトの上記所定の角度、上記所定の長さ、予め定められた係数(所定係数)、及び上記ステップ104で分割されたN個の分割領域(分割モデル)の各々の所定箇所からタイヤモデルの回転軸までの距離の各々に基づいて、N個の分割領域の各々についてタイヤの周方向に対する角度を演算する。
【0037】
ここで、タイヤモデルの特性について説明する。タイヤは一方向強化材の組合わせを積層構造で持つため、タイヤの内圧時変形の幅方向分布は補強材(例えばベルト)の周方向に対する角度の分布(角度分布)に影響を受ける。これはタイヤの剛性が補強層への内圧時張力に大きく依存することから明らかである。本来は滑らかに変化させるために幅方向の要素一つ一つに異なる角度を与えたい。しかしながら、こうすることでモデリングの複雑化やポスト処理の煩雑化が生じることがある。
【0038】
そのため、詳細を後述するように、必要十分な分割の数値を把握する必要があり、この観点で補強層の幅方向分割数Nの適正数を調べた結果(実験結果1)、幅方向に5分割以上(半面で3分割)のグループ分けを施すことによって変形挙動を十分滑らかに模擬できることが分かった。これにより、大切なポイントはセンター(中心、赤道線)とショルダー端までの角度変化の大きさであり、その間の変化はある程度滑らかにそれを模擬できる程度にあればよいということが分かる。
【0039】
なお、幅方向分割領域(分割領域)は、赤道線を含む領域をセンター部領域、端部を含む領域を端部領域と称すると共に、当該センター部領域及び当該端部領域との間の領域(当該センター部領域及び当該端部領域との間に形成される領域)を中間部領域と称する。
【0040】
このとき、傾斜角度の分布は、部材角度からの変化で規定される。その変化の方法は良く用いられるコサイン則(例えば、タイヤ工学、グランプリ出版、ISBN4-87687-219-8、148ページ等)が代表的である(図9参照)。このコサイン則は、例えば、成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層のコードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたものである。
【0041】
しかしながら、実際のタイヤでは製造工程にてゴム流れやその他の部材からの力が作用するので、図10に示すように、コサイン則の式のとおりにならないことがある。
【0042】
本実施の形態では、このコサイン則にて規定された計算を用いてコード角度分布条件を幅方向分割領域のそれぞれに与える。
【0043】
図10に示すように、複数のタイヤから実際の角度を計測して比較したところ、このときの変化は主にショルダー部(端部)に現れ、コサイン則を利用して計算した角度を比較すると以下の2点の特徴があることが分かった。1点目は、「センター角度はコサイン則を利用して計算した角度に比較的近い」ということであり、2点目は、「センターからショルダーまでの角度変化はコサイン則を利用して計算した角度に比べて落差が大きくなる」ということである。これらのことから、コサイン則を利用して計算するだけでは不十分であり、ショルダー側になるにつれて大きく補正すればよいと分かった。また、センターでもショルダー端でもない部分についてはそれらの角度を拡張率に応じて滑らかに内挿しておけば良いと分かった。なお、この内挿方法は線形補間であってもよいし、その他の方法であってもよい。
【0044】
なお、拡張率とは、図11に示すように、最終的なタイヤの補強材の半径Qを、変形前の補強材の半径Uで割った値E(=Q/U)である。例えば、タイヤセンターのベルトの角度をT1、タイヤショルダのベルトの角度をT2としたとき、その間のある部分についてはこの拡張率の違いに応じた値を計算する。
【0045】
ここで、ステップ106の処理について具体的に説明する。なお、半面で3分割の場合について説明する。この場合、図12に示すように、3つの分割領域(分割モデル)M1、M2、M3の各々に定義するための角度を演算する必要がある。箇所Aを含む分割領域M1の角度θ1は、以下の式(1)から求められる。
【0046】
【数1】
ここで、上記所定の角度をα、上記所定の長さを2πで割った値をr(=(所定の長さ)/2π)とする。なお、上述したようにタイヤモデルの回転軸からベルトまでの距離が最大の箇所が箇所Aであり、その距離がRmaxである。
【0047】
また、箇所Bを含む分割領域M3の角度θ3は以下の式(2)から求められる。
【0048】
【数2】
ここで、βは所定の係数であり、タイヤの部材の種類毎に異なるが、このβの値としては、1.5〜4程度が考えられる。例えば、端部領域に与える角度の値は、コサイン則によって求められたセンター部領域のコード角度とコサイン則によって求められた端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下の値が考えられる。また、上述したようにタイヤモデルの回転軸からベルトまでの距離が最大の箇所が箇所Bであり、その距離がRminである。
【0049】
また、幅方向の両端の分割領域M1とM3との間の分割領域M2の角度θ2は以下の式(3)から求められる。
【0050】
【数3】
ここで、R´は、分割領域M2の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M2の所定箇所Cとした場合の当該所定箇所Cからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0051】
以上のように、ステップ106では、設計データに含まれる変形前ベルトの所定の角度α、上記所定の長さ、予め定められた係数(所定係数)β、及び上記ステップ104で分割されたN個の分割領域(分割モデル)の各々の所定箇所(A、B、C)からタイヤモデルの回転軸までの距離の各々(Rmax、Rmin、R´)に基づいて、N個の分割領域の各々についてタイヤの周方向に対する角度θ1、θ3、θ2を演算する。
【0052】
次のステップ108では、上記ステップ106で分割領域M1、M2、M3の各々について演算された角度θ1、θ3、θ2の各々を、分割領域M1、M2、M3のタイヤモデルの周方向に対する角度として定義する。これにより最終的なタイヤモデルが規定され作成される。
【0053】
以上、本実施の形態のタイヤモデル作成装置について説明した。本実施の形態のタイヤモデル作成装置によれば、タイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の箇所Aから最小の箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割し、所定の角度α、所定長さ、所定係数β、及び分割された変形補強材のモデルのN個の分割領域の各々の所定箇所から回転軸までの距離の各々に基づいて、分割領域の各々について周方向に対する角度を演算するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し、作成することができる。
【0054】
本実施の形態では、コード角度分布条件は、計算に基づいて規定されると共に、この計算の方法は、成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層のコードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されている。
【0055】
このように、本実施の形態のタイヤモデル作成装置は、成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定する際に、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定し、作成する。
【0056】
このように、本実施の形態のタイヤモデル作成装置によれば、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し作成することができる。
【0057】
なお、ステップ106で、分割領域M1、M3の角度を演算する際に、所定箇所A、Bから回転軸までの距離Rmax、Rminを用いた例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、分割領域M1の角度を演算する際に分割領域M1の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M1の所定箇所Dとした場合の当該所定箇所Dからタイヤモデルの回転軸までの距離RDを用いても良い。また、分割領域M3の角度を演算する際に分割領域M3の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M3の所定箇所Eとした場合の当該所定箇所Eからタイヤモデルの回転軸までの距離REを用いても良い。
【0058】
また、上記では所定係数βを用いて分割領域M2、M3の角度を演算する例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、所定係数βを用いずに、以下の式(4)から分割領域M2の角度θ2を演算してもよい。
【0059】
【数4】
ただし、Rm2は、分割領域M2の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M2の所定箇所Fとした場合の当該所定箇所Fからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0060】
同様に、所定係数βを用いずに、以下の式(5)から分割領域M3の角度θ3を演算してもよい。
【0061】
【数5】
ただし、Rm3は、分割領域M3の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M3の所定箇所Gとした場合の当該所定箇所Gからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0062】
この場合、タイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の箇所Aから最小の箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割し、所定の角度α、所定長さ、及び分割された変形補強材のモデルのN個の分割領域の各々の所定箇所から回転軸までの距離の各々に基づいて、分割領域の各々について周方向に対する角度を演算するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し、作成することができる。ただし、所定係数βを用いたほうがより好ましい。これは、所定係数βを用いない場合には、特定領域Sを分割するメリットが小さくなるからである。
【0063】
また、上記では、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算に基づいて規定された数値に基づいた例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、実測に基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。また、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、予め取得された統計(統計データ)に基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。また、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。
【0064】
また、補強層の中間部領域に与える補正計算値は、端部領域に与える補正計算値と同様に求めることが出来る。その際、中間部領域に与える補正計算値は、端部領域と同様、コサイン則によって求められたセンター部領域のコード角計算値とコサイン則によって求められた中間部領域のコード角計算値との差の1.5倍以上4倍以下となる。
【0065】
また、端部領域に与える補正計算値と中間部領域に与える補正計算値は、全体のアンバランス及び誤差を抑えるべく、極力近い補正値(係数)を与えることが好ましい。
【0066】
また、本実施の形態では、成形後の補強層のコード角度分布条件が各幅方向分割領域に与えられたタイヤモデルを有限要素化して用いている。
【0067】
また、詳細を以下で説明する周方向のメッシュ比と内圧時の変形比との関係を調べた実験2の実験結果が示すように、タイヤ周方向には不等分割のメッシュを用い、最も細かい周方向メッシュと最も粗い周方向メッシュの比が最大/最小で2から10であるようにしてもよい(更に好ましくはメッシュの比は、2から6である)。
【実施例】
【0068】
次に、実施例について説明する。本実施例としてモデル化・試作したタイヤは、タイヤサイズ:225/45R17であり、このタイヤを幅7.5インチのリムに組み、内圧無負荷時(定義:一度リムフィット後にバルブコアを除去した状態から30kPa程度の内圧の間)と内圧時(今回は230kPaを使用)にて比較し、その内圧変形をFEMシミュレーションにて計算した。タイヤは全部で5種類用い、いずれも二枚のボディプライ、角度付スチールベルト二枚、その外層に周方向ナイロン補強層を二層持つ。実験1の実験結果を図13に示し、実験2の実験結果を図14に示す。図13では、1.0に近づくほど実測に近いことが示されており、ショルダー側になるにつれて角度を大きく補正すればよいことが分かる。また、図14に示すように、最も細かい周方向メッシュと最も粗い周方向メッシュの比が最大/最小で2から10であることが望ましく、更に望ましくは2から6であることが分かる。
【0069】
このように、タイヤモデルを、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であるようにしている。なお、内圧時の変形比とは、最も周方向メッシュが粗い位置の内圧時半径方向変形を、最も周方向メッシュが細かい位置の内圧時変形で割った値であり、1に近づくほど好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモデル規定方法、タイヤモデル作成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FEMに代表されるシミュレーションにおけるタイヤのモデリングでは、傾斜角度付補強材のモデルに一定角度を用いることが多かった(例えば、1枚目の傾斜ベルトには幅方向一律に同じ角度を持たせて計算する)。ここで、現物のタイヤから実測したタイヤ幅方向の角度分布を適宜与えて解析を実施する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このように工夫を施す理由は、内圧後のタイヤの形状と補強層の張力を正しく見積もることがモデル精度として大切だからである。
【0003】
この傾斜ベルト層に角度分布を与える理由について説明すると、角度付補強層は通常、タイヤ現物の中では角度に分布を持つ。これはタイヤ製造工程において、角度付部材が作成されたあとにタイヤの形に成形(変形)されることに起因する。例えば、平面から曲面への加工によって部分的な伸縮があり、これが角度分布を作る。そして、次に加硫されるときには他の部材からの力や、ゴム流動が作用するので、さらに角度分布は複雑化する。そのために、従来は実際のタイヤから角度を実測して正確なモデル化を行うことがあり、これによって内圧後のタイヤ形状はタイヤ幅方向に見て実際のものに近づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−111229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のタイヤのモデリングでは、実際のタイヤから角度を実測しているため手間がかかる、という問題がある。また、従来の技術では角度付補強層の変形の度合(拡張率)を考慮せずに、幅方向に複数個に分割して角度の平均値を角度付補強層の周方向に対する角度としているため、従来の方法によって作成されたタイヤモデルの角度付補強層のタイヤの周方向に対する角度分布の精度が良好ではない、という問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを作成することができるタイヤモデル規定方法、タイヤモデル作成方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法は、成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定するタイヤモデル規定方法であって、前記成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定することを特徴とするタイヤモデル規定方法である。
【0008】
本発明によれば、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定する。
【0009】
このように、本発明によれば、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度の精度分布が良好なタイヤモデルを規定することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法において、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくようにしたものである。
【0011】
また、請求項3記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項1記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記コード角度分布条件を、計算に基づいて規定されると共に、該計算の方法は成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層の前記コードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されるようにしたものである。
【0012】
また、請求項4記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項3記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記幅方向分割領域を、赤道線を含むセンター部領域、補強層の端部領域、及び前記センター部領域と前記端部領域との間に形成される中間部領域を含んで構成され、前記コサイン則にて規定された計算の計算値を与える場合に、前記センター部領域には該計算値を与え、前記端部領域及び前記中間部領域にはそれぞれ該計算値を補正した値を与えるようにしたものである。
【0013】
また、請求項5記載の発明のタイヤモデル規定方法は、請求項4記載の発明のタイヤモデル規定方法において、前記端部領域に与える前記計算値を補正した値を、コサイン則によって求められた前記センター部領域のコード角度と前記端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下であるようにしたものである。
【0014】
また、請求項6記載の発明のタイヤモデル設計方法は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載のタイヤモデル規定方法によって規定されたタイヤモデルを有限要素化して用いることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項7記載の発明のタイヤモデル設計方法は、前記有限要素化されたタイヤモデルを、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であるようにしたものである。
【0016】
また、請求項8記載の発明のプログラムは、請求項6または請求項7に記載のタイヤモデル設計方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】タイヤモデル作成装置としてのパーソナルコンピュータの概略図である。
【図2】タイヤモデル作成プログラムのメインルーチンのフローチャートである。
【図3】タイヤの断面図の一例である。
【図4】設計データに含まれている情報を説明するための図である。
【図5】暫定的に作成されたタイヤモデルの模式図である。
【図6】暫定的に作成されたタイヤモデルの断面図(半面)である。
【図7】分割する処理を説明するための図である。
【図8】他のベルトを分割した場合について説明するための図である。
【図9】コサイン則を説明するための図である。
【図10】コサイン則によって演算された角度と実測した角度とを比較するための図である。
【図11】本実施の形態の拡張率について説明するための図である。
【図12】本実施の形態の角度の演算方法について説明するための図である。
【図13】実験結果を説明するための図である。
【図14】実験結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、タイヤの挙動解析のためのタイヤモデル(解析モデル)の規定及び作成に本発明を適用したものである。
【0020】
図1にはタイヤモデルを規定及び作成するタイヤモデル作成装置としてのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤモデルを規定及び作成するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
【0021】
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフレキシブルディスク(FD)が挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフレキシブルディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述するプログラムや処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。
【0022】
また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらに対応する装置(例えば、CD−ROM装置、CD−RAM装置、DVD−ROM装置、DVD−RAM装置、MD装置、またはMO装置等)を用いればよい。
【0023】
また、パーソナルコンピュータの他に、ワークステーションやスーパーコンピュータをタイヤモデルの作成に用いてもよいことは勿論である。
【0024】
次に、本実施の形態の作用として、コンピュータ本体12で実行されるタイヤモデル作成プログラムの処理ルーチンについて図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0025】
図2は、タイヤモデル作成プログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、タイヤモデルの作成対象となるタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。例えば、コンピュータ本体12のハードディスクに、予め複数種類のタイヤのCADデータ(タイヤ形状、構造、材料などの設計データ)等の設計データを記憶しておき、タイヤモデルの作成対象となるタイヤの設計データを選択して読み込むことにより、タイヤモデルの作成対象となるタイヤを設定することができる。ここで、この設計データには、タイヤを加硫するためのプラダー(図示しない)等によって変形(拡張)される前の補強材(補強層)としてのベルト(以下、変形前ベルトと称する場合がある)の長さが含まれている。また、変形前ベルトはタイヤの周方向に対して所定の角度で設けられており、この設計データには、この所定の角度(所定角度)も含まれている。
【0026】
なお、タイヤを加硫するためのプラダー等によって変形される前の補強材としてのベルトは、成形前の部品状態に対応する。また、成形前の部品状態には、補強層の周方向の長さ(周方向長さ)、及び補強層を構成するコードの赤道線からの角度が規定されており、この周方向長さ及びこの角度も設計データに含まれている。
【0027】
ここで、タイヤモデルの対象となるタイヤのタイヤ断面の一例を図3を参照して説明する。タイヤ20は、タイヤの骨格となるカーカス22を有している。このカーカス22は、ビード26により折り返されている。このカーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24の延長上にはビードゴム36が配置されている。
【0028】
また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置されており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置されており、カーカス22のタイヤの軸方向外側にはサイドゴム34が配置されている。なお、図3に示す例ではベルト30は2枚のベルト30A及び30Bから構成された場合が図示されているが、ベルト30は1枚または3枚以上のベルトから構成されていてもよい。
【0029】
また、生タイヤが製造されてから最終的なタイヤが製造されるまでに、補強材としてのベルトが拡張し、ベルトの拡張率はタイヤの幅方向で異なるため、タイヤの幅方向の各位置でベルトの角度(タイヤの周方向に対するベルトの角度)が異なる。そこで、本実施の形態では、上記設計データには、更に、図4に示すように、最終的なタイヤの回転軸からの半径方向(径方向)の距離が最大の最終的なタイヤのベルト(変形後の補強材である変形補強材)の箇所Aの位置情報、最終的なタイヤの回転軸からの半径方向の距離が最小の最終的なタイヤのベルトの箇所Bの位置情報、最終的なタイヤの回転軸から上記箇所Aまでの距離Rmax、及び最終的なタイヤの回転軸から上記箇所Bまでの距離Rminが含まれていることとする。なお、説明の便宜上、ベルト30Bについてのみ図4に示したが、ベルト30Aに関する同様の情報も上記設計データに含まれている。
【0030】
次のステップ102では、上記設計データに基づいて、暫定的にタイヤモデルを作成する。ここで、「暫定的にタイヤモデルを作成する」とは、ステップ104以降の処理で定義される角度の情報が含まれていないタイヤモデル(暫定的なタイヤモデル)を作成することである。例えば、ステップ102では、図5に示すように、暫定的なタイヤモデルとしてモデル80を作成する。モデル80は、要素80a,80b,80c,・・・の集合体であり、各要素80a,80b,80c,・・・は数値解析が可能なデータである。例えば、各要素80a,80b,80c,・・・には2次元の3角形・4角形からなる膜要素、または3次元の四面体からなるソリッド要素などが挙げられる。また、各要素80a,80b,80c,・・・には、座標のデータが定義されている。なお、このタイヤモデルには変形後のベルトのモデル(変形補強材のモデル)が含まれている。
【0031】
次のステップ104では、上記ステップ102で暫定的に作成されたタイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の変形補強材のモデルの箇所から最小の変形補強材のモデルの箇所までの特定領域を分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、説明の便宜上、1枚のベルトについての処理について以下説明する。
【0032】
ステップ104の処理について具体的に説明する。図6は上記ステップ102で作成されたタイヤモデルの断面図(半面)である。まず、同図に示されるように、上記ステップ102で作成されたタイヤモデルのベルト32Bのモデル(変形補強材のモデル)50の上記箇所A及び上記箇所B、並びに上記Rmax及び上記Rminを抽出する。次に、図7に示すように、箇所Aから箇所Bまでの領域(特定領域)Sを半径方向にN(Nは2以上の整数)分割する。なお、図7にはN=3の場合が示されている。そして、半径方向にN分割された線とベルト50のモデルとの交点を分割点とし、この分割点でベルト50のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、箇所Aから箇所Bまでの領域Sを半径方向にN分割する場合には、例えば、等分割にすることが好ましい。
【0033】
なお、図7の例では、成形後の補強層(ベルト)の形状が形成するタイヤの赤道部と端部とのタイヤ径方向の寸法差(タイヤ径方向寸法差)に基づき、所定の分割条件(例えば等分割)にて径方向分割された点(分割点)を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と、成形後の補強層の形状との交点が図示されている。
【0034】
以上のようにしてステップ104では、上記ステップ102で暫定的に作成されたタイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大(距離Rmax)の変形補強材のモデルの箇所Aから最小(距離Rmin)の変形補強材のモデルの箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割する。なお、N=3の場合、図7に示すようにタイヤモデルが半面のときには変形補強材のモデルは3分割されるが、タイヤモデルが両面のときには変形補強材のモデルは5分割される。また、分割されたN個の変形補強材のモデルの各々を分割領域(または分割モデル、幅方向分割領域)と称する場合がある。
【0035】
また、図8に示すように、ベルト50のラインが変わると、分割点の位置も変わることとなる。
【0036】
次のステップ106では、設計データに含まれる変形前ベルトの上記所定の角度、上記所定の長さ、予め定められた係数(所定係数)、及び上記ステップ104で分割されたN個の分割領域(分割モデル)の各々の所定箇所からタイヤモデルの回転軸までの距離の各々に基づいて、N個の分割領域の各々についてタイヤの周方向に対する角度を演算する。
【0037】
ここで、タイヤモデルの特性について説明する。タイヤは一方向強化材の組合わせを積層構造で持つため、タイヤの内圧時変形の幅方向分布は補強材(例えばベルト)の周方向に対する角度の分布(角度分布)に影響を受ける。これはタイヤの剛性が補強層への内圧時張力に大きく依存することから明らかである。本来は滑らかに変化させるために幅方向の要素一つ一つに異なる角度を与えたい。しかしながら、こうすることでモデリングの複雑化やポスト処理の煩雑化が生じることがある。
【0038】
そのため、詳細を後述するように、必要十分な分割の数値を把握する必要があり、この観点で補強層の幅方向分割数Nの適正数を調べた結果(実験結果1)、幅方向に5分割以上(半面で3分割)のグループ分けを施すことによって変形挙動を十分滑らかに模擬できることが分かった。これにより、大切なポイントはセンター(中心、赤道線)とショルダー端までの角度変化の大きさであり、その間の変化はある程度滑らかにそれを模擬できる程度にあればよいということが分かる。
【0039】
なお、幅方向分割領域(分割領域)は、赤道線を含む領域をセンター部領域、端部を含む領域を端部領域と称すると共に、当該センター部領域及び当該端部領域との間の領域(当該センター部領域及び当該端部領域との間に形成される領域)を中間部領域と称する。
【0040】
このとき、傾斜角度の分布は、部材角度からの変化で規定される。その変化の方法は良く用いられるコサイン則(例えば、タイヤ工学、グランプリ出版、ISBN4-87687-219-8、148ページ等)が代表的である(図9参照)。このコサイン則は、例えば、成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層のコードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたものである。
【0041】
しかしながら、実際のタイヤでは製造工程にてゴム流れやその他の部材からの力が作用するので、図10に示すように、コサイン則の式のとおりにならないことがある。
【0042】
本実施の形態では、このコサイン則にて規定された計算を用いてコード角度分布条件を幅方向分割領域のそれぞれに与える。
【0043】
図10に示すように、複数のタイヤから実際の角度を計測して比較したところ、このときの変化は主にショルダー部(端部)に現れ、コサイン則を利用して計算した角度を比較すると以下の2点の特徴があることが分かった。1点目は、「センター角度はコサイン則を利用して計算した角度に比較的近い」ということであり、2点目は、「センターからショルダーまでの角度変化はコサイン則を利用して計算した角度に比べて落差が大きくなる」ということである。これらのことから、コサイン則を利用して計算するだけでは不十分であり、ショルダー側になるにつれて大きく補正すればよいと分かった。また、センターでもショルダー端でもない部分についてはそれらの角度を拡張率に応じて滑らかに内挿しておけば良いと分かった。なお、この内挿方法は線形補間であってもよいし、その他の方法であってもよい。
【0044】
なお、拡張率とは、図11に示すように、最終的なタイヤの補強材の半径Qを、変形前の補強材の半径Uで割った値E(=Q/U)である。例えば、タイヤセンターのベルトの角度をT1、タイヤショルダのベルトの角度をT2としたとき、その間のある部分についてはこの拡張率の違いに応じた値を計算する。
【0045】
ここで、ステップ106の処理について具体的に説明する。なお、半面で3分割の場合について説明する。この場合、図12に示すように、3つの分割領域(分割モデル)M1、M2、M3の各々に定義するための角度を演算する必要がある。箇所Aを含む分割領域M1の角度θ1は、以下の式(1)から求められる。
【0046】
【数1】
ここで、上記所定の角度をα、上記所定の長さを2πで割った値をr(=(所定の長さ)/2π)とする。なお、上述したようにタイヤモデルの回転軸からベルトまでの距離が最大の箇所が箇所Aであり、その距離がRmaxである。
【0047】
また、箇所Bを含む分割領域M3の角度θ3は以下の式(2)から求められる。
【0048】
【数2】
ここで、βは所定の係数であり、タイヤの部材の種類毎に異なるが、このβの値としては、1.5〜4程度が考えられる。例えば、端部領域に与える角度の値は、コサイン則によって求められたセンター部領域のコード角度とコサイン則によって求められた端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下の値が考えられる。また、上述したようにタイヤモデルの回転軸からベルトまでの距離が最大の箇所が箇所Bであり、その距離がRminである。
【0049】
また、幅方向の両端の分割領域M1とM3との間の分割領域M2の角度θ2は以下の式(3)から求められる。
【0050】
【数3】
ここで、R´は、分割領域M2の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M2の所定箇所Cとした場合の当該所定箇所Cからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0051】
以上のように、ステップ106では、設計データに含まれる変形前ベルトの所定の角度α、上記所定の長さ、予め定められた係数(所定係数)β、及び上記ステップ104で分割されたN個の分割領域(分割モデル)の各々の所定箇所(A、B、C)からタイヤモデルの回転軸までの距離の各々(Rmax、Rmin、R´)に基づいて、N個の分割領域の各々についてタイヤの周方向に対する角度θ1、θ3、θ2を演算する。
【0052】
次のステップ108では、上記ステップ106で分割領域M1、M2、M3の各々について演算された角度θ1、θ3、θ2の各々を、分割領域M1、M2、M3のタイヤモデルの周方向に対する角度として定義する。これにより最終的なタイヤモデルが規定され作成される。
【0053】
以上、本実施の形態のタイヤモデル作成装置について説明した。本実施の形態のタイヤモデル作成装置によれば、タイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の箇所Aから最小の箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割し、所定の角度α、所定長さ、所定係数β、及び分割された変形補強材のモデルのN個の分割領域の各々の所定箇所から回転軸までの距離の各々に基づいて、分割領域の各々について周方向に対する角度を演算するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し、作成することができる。
【0054】
本実施の形態では、コード角度分布条件は、計算に基づいて規定されると共に、この計算の方法は、成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層のコードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されている。
【0055】
このように、本実施の形態のタイヤモデル作成装置は、成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定する際に、成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定し、作成する。
【0056】
このように、本実施の形態のタイヤモデル作成装置によれば、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し作成することができる。
【0057】
なお、ステップ106で、分割領域M1、M3の角度を演算する際に、所定箇所A、Bから回転軸までの距離Rmax、Rminを用いた例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、分割領域M1の角度を演算する際に分割領域M1の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M1の所定箇所Dとした場合の当該所定箇所Dからタイヤモデルの回転軸までの距離RDを用いても良い。また、分割領域M3の角度を演算する際に分割領域M3の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M3の所定箇所Eとした場合の当該所定箇所Eからタイヤモデルの回転軸までの距離REを用いても良い。
【0058】
また、上記では所定係数βを用いて分割領域M2、M3の角度を演算する例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、所定係数βを用いずに、以下の式(4)から分割領域M2の角度θ2を演算してもよい。
【0059】
【数4】
ただし、Rm2は、分割領域M2の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M2の所定箇所Fとした場合の当該所定箇所Fからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0060】
同様に、所定係数βを用いずに、以下の式(5)から分割領域M3の角度θ3を演算してもよい。
【0061】
【数5】
ただし、Rm3は、分割領域M3の幅方向の中間位置であり、かつ半径方向の中間位置を分割領域M3の所定箇所Gとした場合の当該所定箇所Gからタイヤモデルの回転軸までの距離である。
【0062】
この場合、タイヤモデルの回転軸からの半径方向の距離が最大の箇所Aから最小の箇所Bまでの特定領域Sを分割した分割点で、変形補強材のモデルをタイヤの幅方向に分割し、所定の角度α、所定長さ、及び分割された変形補強材のモデルのN個の分割領域の各々の所定箇所から回転軸までの距離の各々に基づいて、分割領域の各々について周方向に対する角度を演算するので、従来技術と比較して、簡易に、補強材のモデルの角度分布の精度が良好なタイヤモデルを規定し、作成することができる。ただし、所定係数βを用いたほうがより好ましい。これは、所定係数βを用いない場合には、特定領域Sを分割するメリットが小さくなるからである。
【0063】
また、上記では、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算に基づいて規定された数値に基づいた例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、実測に基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。また、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、予め取得された統計(統計データ)に基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。また、幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件が、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくものであってもよい。
【0064】
また、補強層の中間部領域に与える補正計算値は、端部領域に与える補正計算値と同様に求めることが出来る。その際、中間部領域に与える補正計算値は、端部領域と同様、コサイン則によって求められたセンター部領域のコード角計算値とコサイン則によって求められた中間部領域のコード角計算値との差の1.5倍以上4倍以下となる。
【0065】
また、端部領域に与える補正計算値と中間部領域に与える補正計算値は、全体のアンバランス及び誤差を抑えるべく、極力近い補正値(係数)を与えることが好ましい。
【0066】
また、本実施の形態では、成形後の補強層のコード角度分布条件が各幅方向分割領域に与えられたタイヤモデルを有限要素化して用いている。
【0067】
また、詳細を以下で説明する周方向のメッシュ比と内圧時の変形比との関係を調べた実験2の実験結果が示すように、タイヤ周方向には不等分割のメッシュを用い、最も細かい周方向メッシュと最も粗い周方向メッシュの比が最大/最小で2から10であるようにしてもよい(更に好ましくはメッシュの比は、2から6である)。
【実施例】
【0068】
次に、実施例について説明する。本実施例としてモデル化・試作したタイヤは、タイヤサイズ:225/45R17であり、このタイヤを幅7.5インチのリムに組み、内圧無負荷時(定義:一度リムフィット後にバルブコアを除去した状態から30kPa程度の内圧の間)と内圧時(今回は230kPaを使用)にて比較し、その内圧変形をFEMシミュレーションにて計算した。タイヤは全部で5種類用い、いずれも二枚のボディプライ、角度付スチールベルト二枚、その外層に周方向ナイロン補強層を二層持つ。実験1の実験結果を図13に示し、実験2の実験結果を図14に示す。図13では、1.0に近づくほど実測に近いことが示されており、ショルダー側になるにつれて角度を大きく補正すればよいことが分かる。また、図14に示すように、最も細かい周方向メッシュと最も粗い周方向メッシュの比が最大/最小で2から10であることが望ましく、更に望ましくは2から6であることが分かる。
【0069】
このように、タイヤモデルを、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であるようにしている。なお、内圧時の変形比とは、最も周方向メッシュが粗い位置の内圧時半径方向変形を、最も周方向メッシュが細かい位置の内圧時変形で割った値であり、1に近づくほど好ましい。
【符号の説明】
【0070】
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定するタイヤモデル規定方法であって、
前記成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定することを特徴とするタイヤモデル規定方法。
【請求項2】
前記幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件は、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくことを特徴とする請求項1記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項3】
前記コード角度分布条件は、計算に基づいて規定されると共に、該計算の方法は成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層の前記コードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されたことを特徴とする請求項1記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項4】
前記幅方向分割領域は、赤道線を含むセンター部領域、補強層の端部領域、及び前記センター部領域と前記端部領域との間に形成される中間部領域を含んで構成され、前記コサイン則にて規定された計算の計算値を与える場合に、前記センター部領域には該計算値を与え、前記端部領域及び前記中間部領域にはそれぞれ該計算値を補正した値を与えることを特徴とする請求項3記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項5】
前記端部領域に与える前記計算値を補正した値は、コサイン則によって求められた前記センター部領域のコード角度と前記端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下であることを特徴とする請求項4記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項記載のタイヤモデル規定方法によって規定されたタイヤモデルを有限要素化して用いることを特徴とするタイヤモデル設計方法。
【請求項7】
前記有限要素化されたタイヤモデルは、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であることを特徴とする請求項6記載のタイヤモデル設計方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のタイヤモデル設計方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
成形前の部品状態に基づいて、補強層の周方向長さ、および補強層を構成するコードの赤道線からの角度を規定すると共に、成形後かつ無負荷状態におけるタイヤ幅方向の断面形状に基づき補強層の形状を規定することにより、成形後の補強層におけるコード角度分布を定めてタイヤモデルを規定するタイヤモデル規定方法であって、
前記成形後の補強層の形状が形成する赤道部と端部とのタイヤ径方向寸法差に基づき、所定の分割条件にて径方向分割された点を通過する少なくとも1以上の水平方向規定線と前記成形後の補強層の形状との交点を基準に、成形後の補強層のコード角度分布条件を与える幅方向分割領域を規定してタイヤモデルを規定することを特徴とするタイヤモデル規定方法。
【請求項2】
前記幅方向分割領域毎に与えられるコード角度分布条件は、計算、実測、または予め取得された統計の少なくとも1つに基づいて規定された数値に基づくことを特徴とする請求項1記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項3】
前記コード角度分布条件は、計算に基づいて規定されると共に、該計算の方法は成形前の補強層の周方向長さ、成形前の補強層の前記コードの赤道線からの角度、及び成形後の補強層の形状を用いたコサイン則にて規定されたことを特徴とする請求項1記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項4】
前記幅方向分割領域は、赤道線を含むセンター部領域、補強層の端部領域、及び前記センター部領域と前記端部領域との間に形成される中間部領域を含んで構成され、前記コサイン則にて規定された計算の計算値を与える場合に、前記センター部領域には該計算値を与え、前記端部領域及び前記中間部領域にはそれぞれ該計算値を補正した値を与えることを特徴とする請求項3記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項5】
前記端部領域に与える前記計算値を補正した値は、コサイン則によって求められた前記センター部領域のコード角度と前記端部領域のコード角度との差の1.5倍以上で、かつ4倍以下であることを特徴とする請求項4記載のタイヤモデル規定方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項記載のタイヤモデル規定方法によって規定されたタイヤモデルを有限要素化して用いることを特徴とするタイヤモデル設計方法。
【請求項7】
前記有限要素化されたタイヤモデルは、周方向に不等分割のメッシュを用いると共に、最も細かい周方向メッシュのメッシュサイズに対する最も粗い周方向メッシュのメッシュサイズの割合が2以上10以下であることを特徴とする請求項6記載のタイヤモデル設計方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のタイヤモデル設計方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−136657(P2011−136657A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298528(P2009−298528)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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