タイヤ状態検出装置用アンテナシステム
【課題】1つのアンテナで4つのタイヤ方向へ指向性をもたせる。
【解決手段】車両ボディ6側には1つの車両搭載アンテナ10が設けられる。この車両搭載アンテナ10は、所定の条件を満たすことで4方向への指向性を実現するダイポールアンテナである。これにより1つの車両搭載アンテナ10のみで、4つのタイヤの無線センサ2全てと良好な無線通信が行えるように構成している。所定の条件は、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係で規定され、例えば「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」等を望ましい条件とする。
【解決手段】車両ボディ6側には1つの車両搭載アンテナ10が設けられる。この車両搭載アンテナ10は、所定の条件を満たすことで4方向への指向性を実現するダイポールアンテナである。これにより1つの車両搭載アンテナ10のみで、4つのタイヤの無線センサ2全てと良好な無線通信が行えるように構成している。所定の条件は、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係で規定され、例えば「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」等を望ましい条件とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧等を計測・表示するタイヤ状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行中に運転者がタイヤ空気圧やその他の異常を速やかに把握できるようにするため、近年、圧力センサやアンテナ素子等を組み込んだ無線センサを、タイヤ内に装着することによって、タイヤ空気圧が運転席で監視できるようにしたシステムが普及しつつある。このタイヤ空気圧監視システム(TPMS)においては、タイヤ内の無線センサが発信するタイヤ空気圧等の検出信号を、車体側に装着されたアンテナで受信して、通信装置を経由して表示・制御装置へ伝送されるようになっている。
【0003】
一般的に、車体側のアンテナは各タイヤの近傍のタイヤハウス等に装着されている。これについて、図12を参照して説明する。
図12は、従来のタイヤ空気圧監視システムの構成の一部を示す図(従来例1)である。
【0004】
図示の従来例1の構成では、タイヤ1内に無線センサ2が設けられている。また、車両ボディ6側には、車両搭載アンテナ3と送受信回路5等を有する無線通信ユニット4が設けられている。無線通信ユニット4(特にその車両搭載アンテナ3)は、タイヤ1の近傍に設けられている。また、図示していないが、上記送受信回路5と有線で(例えば同軸ケーブル)接続した上記通信装置(または表示・制御装置等)も、車両上に搭載されている。尚、送受信回路5は、車両搭載アンテナ3を介した無線通信を実現する回路であり、何らかの信号(データ)を任意の周波数で車両搭載アンテナ3から送信させたり、車両搭載アンテナ3での受信信号を増幅する等の一般的な無線送受信回路の機能を有する(一般的なものであるので、ここではこれ以上詳細には説明しない)。
【0005】
ここで、図では1つのタイヤに係る構成のみ示すが、他の3本のタイヤ(通常、タイヤは4本であるので)についても、略同様に、そのタイヤの近傍に上記無線通信ユニット4が設けられると共に、この無線通信ユニット4と上記通信装置(または表示・制御装置等)とが例えば同軸ケーブルで接続された構成となっている。
【0006】
したがって、4本のタイヤ1内の各無線センサ2から発信された無線信号(タイヤ空気圧データ等を含む)は、それぞれ、その近傍に位置する車体側の車両搭載アンテナ3で受信され、この受信信号が送受信回路5を経由して上記不図示の同軸ケーブル等を介して上記表示・制御装置等へ個別に伝送される。これより、表示・制御装置において、4本の各タイヤの状態(空気圧等)が表示されたり警告音が発せられるようになっている。
【0007】
尚、この様な従来例1は、例えば特許文献2において従来技術として(その図11)開示されている。
なお、金属製のホイールに装着されているタイヤは、そのトレッド側にスチールベルトが埋設されているため、タイヤ内の無線センサと車体側のアンテナとの間の通信は主にタイヤの側壁部を介して行われている。
【0008】
何れにしても、上記従来例1の場合、車両搭載アンテナ3が4本必要となり、更に4本の同軸ケーブルを配線する必要があり、複雑かつ、高価なものとなってしまうという課題がある。
【0009】
この様な課題に対して、例えば特許文献1,2,3に記載の従来技術が知られている。これらの従来技術は、少なくとも上記各アンテナから同軸ケーブルを配線する必要は無くなるものである。
【0010】
まず、特許文献1の従来技術を、従来例2と呼ぶものとする。
特許文献1の従来技術では、その図2〜図4に示す構成の「車体側アンテナ部と制御処理回路部とが一体化された」ユニットが、その図1に示すように車体の略中央部に設置されて、4方向(各タイヤがある方向)に指向性の強い放射ビームが放射されるように構成されている。上記車体側アンテナ部(アンテナユニット)は、上記図2〜図4に示すように、4区画に分離されており、各アンテナバー(モノポールアンテナ)を扇型の各区画に配置し、タイヤ方向の4方向へ指向性を持たせている。これにより通信装置まで同軸ケーブルを配線する手間が省ける。
【0011】
また、特許文献2,3には、車両側のアンテナが1本で済む構成が開示されている。
すなわち、まず、特許文献2の従来技術では、監視ユニットに接続された1つのアンテナによって、各タイヤに設けられたセンサ装置から送信される電波を高利得で受信できるようにしている。この1つのアンテナは、車両の窓ガラスに設けられ、上下方向に延びる部分を有する。
【0012】
特許文献2では、アンテナから電波を輻射し、各タイヤの位置における電界強度が最も高くなるようなアンテナの形状及び配置を実測によって求めることにより、各センサ装置から送信された微弱な電波を、アンテナによって高効率で受信できるようにしている。
【0013】
また、特許文献3の従来技術では、1つのアンテナで各センサ装置が取り付けられたタイヤ位置を識別できるようにしている。監視ユニットに対して同軸ケーブルを介して接続された上記1つのアンテナは、水平面内において一様な指向性を有している。監視ユニットは、アンテナを介して受信した電波の受信強度等に基づいて、各センサ装置が取り付けられたタイヤ位置を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−126805号公報
【特許文献2】特開2004−345364号公報
【特許文献3】特開2005−335654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、4つのタイヤ方向へ指向性をもたせるために、バーアンテナを4つ用意し、さらに金属板で区画を4つに区切り、コーナリフレクタとして作用させ、その反射を利用して電波の指向性をタイヤ方向へ向けている。
【0016】
このように、特許文献1では、4本のアンテナバーが必要であり、またアンテナユニットを4区画に分離すると共にそれぞれ指向性を持たせるための構成も必要となり、構造が複雑で高価なものとなってしまうという課題がある。
【0017】
また、上記特許文献2,3の従来技術では、4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることは行われていない。特許文献3の場合、上述したように、水平面内において一様な指向性(無指向性)を有している。特許文献2では、「λ/2ダイポールアンテナ」(段落0045)を用いるものであり、これはよく知られているように8の字型(例えば前後の2方向)の指向性を有するものである。
【0018】
よく知られているように、特定の方向(複数方向でも可)に対する指向性を有する場合、特定の方向に限っては、無指向性の場合に比べて、良好な無線通信が行えるようになる。これは、特定の方向に対しては、強く電波を放射できると共に、微弱な電波であっても受信し易くなることや、特定の方向以外の方向で発生する雑音に影響され難くなるからである。
【0019】
その意味で、特許文献2,3のような無指向性の場合に比べて、上記特許文献1のように4つのタイヤ方向へ指向性をもたせるようにすることが望ましい。しかしながら、上記の通り、特許文献1の構成では構造が複雑で高価なものとなってしまう。
【0020】
本発明の課題は、1つのアンテナで4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることができるようにし、簡単な構成で各タイヤの無線センサとの通信を良好に行うことができるようにするタイヤ状態検出装置用アンテナシステム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムは、少なくとも4本の各タイヤ毎に設けられ、そのタイヤの状態を検出して無線送信する少なくとも4つの無線センサを有するアンテナシステムであって、車両の任意の位置に1つのダイポールアンテナを設け、該ダイポールアンテナの全長が所定の条件を満たすようにすることで、該ダイポールアンテナが水平方向に4方向の指向性を有するように構成し、該1つのダイポールアンテナによって前記少なくとも4つの無線センサと電波を送受信する。
【0022】
上記所定の条件は、例えば、ダイポールアンテナの全長と、使用する電波の波長との関係で規定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムによれば、1つのアンテナで4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることができるようにし、簡単な構成で各タイヤの無線センサとの通信を良好に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例である。
【図2】(a),(b)は、L=2.0λ、L=2.2λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図3】(a),(b)は、L=2.4λ、L=2.6λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図4】(a),(b)は、L=2.8λ、L=3.0λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図5】L=3.2λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図6】(a),(b)は、L=1.8λ、L=1.6λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図7】L=1.4λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図8】メインローブの指向角について示す図(その1)である。
【図9】メインローブの指向角について示す図(その2)である。
【図10】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例1)である。
【図11】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例2)である。
【図12】(a),(b)は、従来のタイヤ空気圧監視システムの構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例である。
ここで、図1において、上記図12に示す従来例と略同一の構成であってよいものには同一符号を付してある。まず、車両ボディ6と各タイヤ1には(当然ながら)上記図12と同一符号を付してある。また、図示の通り、各タイヤ1内に設けられる各無線センサ2も、上記図12と同一符号を付してある。つまり、各タイヤ側の構成は従来と略同様であってよい。尚、タイヤは4つであり、従って無線センサ2も4個ある。
【0026】
一方、車両ボディ6側の構成は、従来とは異なる。すなわち、従来では、上記各無線センサ2にそれぞれ対応してその近傍に車両搭載アンテナ3が設けられていた。つまり、4つの車両搭載アンテナ3が設けられていた。更に、各車両搭載アンテナ3(無線通信ユニット4)と不図示の通信装置(または表示・制御装置等)とを接続する同軸ケーブル等が設けられていた。
【0027】
これに対して、図1に示す構成では、車両ボディ6側には、1つの車両搭載アンテナ10が設けられている。この車両搭載アンテナ10は、ダイポールアンテナである(但し、後述する所定の条件を満たすものである)。そして、所定の条件を満たしていることで、この1つの車両搭載アンテナ10のみで、上記4個の無線センサ2全てと良好な無線通信が行えるように構成している。これは、図1に点線で示すように各タイヤ1(各無線センサ2)への4方向への指向性を実現することで、可能としている。車両搭載アンテナ10は、例えば車両ボディ6のほぼ中央部に設置される(但し、この例に限らず、車両ボディ6の任意の位置に設置されていてよいが、上記4方向への指向性が、4つのタイヤへの方向に相当することになる位置とする必要がある)。また、車両搭載アンテナ10は、略水平方向(重力方向と直交する平面の方向)に張られている。
【0028】
尚、上記図12で説明した不図示の通信装置や不図示の表示装置や制御装置は、図1では省略している。車両搭載アンテナ10は、送受信回路11と接続しており、送受信回路11は例えば上記不図示の通信装置や表示装置や制御装置等と一体の構成であってもよいし、同軸ケーブル等で接続されていてもよい。尚、送受信回路11は、その機能・構成自体は、上記従来の送受信回路5と略同様であってよく、その説明は省略する。本構成では、車両側のアンテナは1本のみで済み、送受信回路も1台のみで済み、更に同軸ケーブルも必要ないか又は1本のみで済む。
【0029】
ここで、従来技術で述べたように、ダイポールアンテナによる水平面方向(重力方向と直交する平面;重力方向をz方向とするならばxy平面)での指向性は、典型的には8の字方向(前後方向)となる。また、上記特許文献3のように、ダイポールアンテナを略垂直方向に張った場合には水平面内において一様な指向性(無指向性)を有している。
【0030】
これに対して、本発明者は、ダイポールアンテナの長さ(全長)が、所定の条件を満たす場合には、上記4方向への指向性を実現できることを認識した。これは、特に、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係が、所定の条件を満たす場合に、上記4方向への指向性を実現できることを認識した。これは、後述するように、既存のシミュレーションソフトウェアを使用して様々な条件を用いてシミュレーションを行った結果、認識したものである。
【0031】
ここで、上記所定の条件(特にダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係)は、基本的には、上記4方向への指向性を実現できるものであれば、何でもよい。但し、後述することから、例えば下記の条件とすることが考えられる。
・サイドローブの利得がメインローブを基準としてαdBダウン未満とする。
・典型的には、上記αを10とする。すなわち、サイドローブの利得がメインローブを基準として10dBダウン未満とする。
【0032】
尚、例えば20dBダウンや30dBダウン等が上記条件(10dBダウン未満)に該当するものであり、例えば8dBダウンや5dBダウン等は10dBダウン以上を意味するものとなる。
【0033】
また、上記条件(10dBダウン未満)を、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に置き換えると、後述するシミュレーション結果に基づけば、以下の通りとなる。
【0034】
「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」
但し、この数値に厳密に限定されるわけではない。例えば、後述するシミュレーションは0.2λ刻みとなっているので、1.6λ、1.4λ、2.2λ、2.4λ等のシミュレーション結果はあっても、1.5λ、2.3λのシミュレーション結果はない。従って、仮に1.5λ、2.3λの両方とも上記条件(10dBダウン未満)を満たすのであれば、「1.5λ ≦ L ≦ 2.3λ」等となるかもしれない。
【0035】
更に、望ましい条件としては、例えば下記の条件とすることが考えられる。
・サイドローブが生じない。
上記条件(サイドローブが生じない)を、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に置き換えると、後述するシミュレーション結果に基づけば、以下の通りとなる。
【0036】
「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」
但し、この場合も、この数値に厳密に限定されるわけではない。上述した理由により、例えば「1.7λ ≦ L ≦ 2.1λ」等となる可能性もある。
【0037】
詳しくは後述する。
何れにしても、本手法では、1本のダイポールアンテナで4方向(4つのタイヤの方向)への指向性を実現できるので、簡単な構成で良質の無線通信を実現できる。すなわち、特許文献1のように構造が複雑で高価なものとなるようなことなく、4つのタイヤへの指向性を実現できる。よって、既に述べたように、4方向以外の方向で生じる雑音等の影響を受け難く、比較的少ない出力でも各無線センサ2へ送信できると共に、各無線センサ2から微弱な電波が送信される場合でも問題なく受信できる(すなわち、良質/良好な無線通信を実現できる)。
【0038】
尚、車両搭載アンテナ10の設置位置は、必ずしも車体中央に限るものではない。すなわち、車両搭載アンテナ10の設置位置は、上記4方向への指向性が、4つのタイヤの位置に対応するような位置とするものであり、通常は車体中央部が該当することになるが、この例に限らない。
【0039】
ここで、よく知られているように、ダイポールアンテナは、中央部分に給電点を設け、この給電点から両端までそれぞれλ/4ずつの長さで従って全長はλ/2であるものが、一般的である。このような典型例のダイポールアンテナの指向性は、よく知られているように、8の字型となる。
【0040】
これに対して、本発明者は、既に述べたように、既存のシミュレーションソフトを利用してシミュレーションを行ったことで、ダイポールアンテナの指向性が4方向になることや、その為の条件(ダイポールアンテナの長さに関する条件;そのなかでも特に望ましい指向性が得られる条件等)を見つけ出した。
【0041】
上記既存のシミュレーションソフトとは、例えば“MMANA”である。“MMANA”は、モーメント法によるアンテナ解析ソフトであり、直線のワイヤを任意形状に組み合わせたアンテナの特性を解析する事ができる。“MMANA”は、例えば、以下の機能を備えている。
・アンテナ定義のエディタ
・アンテナ形状表示、セグメント分割、電流分布表示
・水平パターン、垂直パターン表示と印刷
・複数の結果の比較
“MMANA”については、例えば下記のURLのサイトなどで紹介されている。
【0042】
http://n1yn.com/MMANA/MMANA.html
また、“MMANA”に限らず、例えば下記のURLのサイトのシミュレーションも利用している。
【0043】
http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/dipole/index-j.html
図2〜図7に、シミュレーション結果(水平方向の指向特性)を示す。
図2〜図7に示す利得(dB)は、最大値(メインローブの絶対利得)を基準‘0’とした、相対的な利得を意味する。よって、当然、全てが基準以下(10dBダウン(1/10)、20dBダウン(1/100)、30dBダウン(1/1000)等)の値となる。尚、図示の例えば‘−10’が上記10dBダウンを意味する。他も同様である。
【0044】
図2〜図7は、ダイポールアンテナの長さLを、1.4λ〜3.2λの範囲内で0.2λずつ変えてシミュレーションした結果を示すものである。
すなわち、ダイポールアンテナの長さLを、図2(a)は2.0λ、図2(b)は2.2λ、図3(a)は2.4λ、図3(b)は2.6λ、図4(a)は2.8λ、図4(b)は3.0λ、図5は3.2λ、図6(a)は1.8λ、図6(b)は1.6λ、図7は1.4λとした場合のシミュレーション結果を示している。
【0045】
尚、一例としては、使用する電波の波長λ=0.1224(m)(周波数f=2.45GHz)とするが、この例に限らない。
図2〜図7の全てにおいて、メインローブ(主ビーム)は、一応、4方向になっていると見做すことは可能である。従って、ダイポールアンテナの長さLを例えば1.4λ〜3.2λの範囲内とすることは、本発明の適用範囲として不適切であるとは言い切れない。
【0046】
但し、以下に述べる理由により、既に述べたように「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」等の範囲内とすることが望ましい。
すなわち、まず、図6(a)に示す「L=1.8λ」の場合には、図示のように、4方向のメインローブだけであり、サイドローブ(副ビーム)は現れていない。また、図2(a)に示す「L=2.0λ」の場合にも、図示のように、4方向のメインローブだけであり、サイドローブは殆ど現れていない(これもサイドローブが現れていないものと見做すものとする)。つまり、これらが好適/最適なものと見做すことができる。
【0047】
一方、例えば、図6(b)に示すように、「L=1.6λ」の場合には、上記「L=1.8λ」の場合と略同様の4方向のメインローブがあるが、それだけでなく、サイドローブが現れている。すなわち、図上では上下方向(実際には車体の前後方向)に、その利得(上記の通り、最大値(メインローブの絶対利得)を基準‘0’とした、相対的な利得)が凡そ13dBダウン程度のサイドローブが現れている。
【0048】
尚、図2〜図7において、図上に示す0、−10、−20、−30等は、メインローブを基準(0)として、10dBダウン、20dBダウン、30dBダウン等を意味している。
【0049】
また、図7に示すように、「L=1.4λ」の場合には、上記「L=1.6λ」の場合のように4方向のメインローブがあると共にサイドローブは現れているが、図示の通り、サイドローブは「L=1.6λ」の場合よりも大きくなっている(凡そ2dBダウン程度)。
【0050】
少なくとも図7に示すような大きなサイドローブが現れている場合、問題が生じる。すなわち、サイドローブの方向(図上では上下方向(実際には車体の前後方向))にあるエンジン等の雑音の影響を、大きく受けることになり、各無線センサ2との無線通信に悪影響がある。また、アンテナ出力が、メインローブ方向に集中せずに、サイドローブ方向にも分散することになるという悪影響も出る。
【0051】
一方、図6(b)のようにサイドローブが小さい(凡そ13dBダウン程度)場合には、上述したサイドローブによる悪影響は非常に小さくて済み、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できる。
【0052】
以上のことから、4方向以外の方向で生じる雑音等の影響を受け難く、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できる(各無線センサ2の方向に強く電波を放射できると共に、各無線センサ2から微弱な電波が送信される場合でも問題なく受信できる)という観点から考えた場合、上述した例では、「L=2.0λ」、「L=1.8λ」、「L=1.6λ」は適切であるが、「L=1.4λ」は不適切であると見做せる。この様な適切/不適切を判断するための1つの目安として、本発明者は経験等に基づいて「サイドローブが10dBダウン未満である場合は“適切”、10dBダウン以上の場合には“不適切”」を条件とすることを提案する。但し、この例に限るものではない。
【0053】
上述した例以外、すなわち図2(b)〜図5に示す2.2λ〜3.2λの例についても、上記条件に基づいて判断するならば、図2(b)に示す2.2λだけは“適切”となるが、それ以外は“不適切”と考えられる。
【0054】
従って、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できるという観点から考えた場合、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lを「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」の範囲内とすることが望ましい。但し、これは、図2〜図7に示す具体例に応じた定義であり、条件は上記の通り、「サイドローブが10dBダウン未満である」ことである。従って、図2〜図7の例は0.2λ刻みであるので分からないが、もし、例えば1.5λの場合に“サイドローブが10dBダウン以下”であったとするならば、「1.5λ ≦ L ≦ 2.2λ」となることになる。
【0055】
また、既に述べたように、更に望ましい条件は「サイドローブが生じない」ことであり、上記シミュレーション結果に基づく場合には、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lと、使用する電波の波長λとの関係が、「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」の範囲内とすることが、好適/最適なものと考えられる。但し、これも、1.7λや2.1λについてのシミュレーション結果次第では、1.7λや2.1λも上記好適/最適な範囲内に含まれるかもしれない。
【0056】
上記のように、望ましい条件(好適/最適な範囲内とする条件)は、例えば図2(a)や図6(a)に示すようにサイドローブが無い(もしくは殆ど無い)ことであると見做してよい。尚、この条件には上記10dBダウン以下のような具体的な数値による条件規定は無いが、例えば1つの目安としては“サイドローブが30dBダウン以下(無い場合も含まれる)”等としてもよい。
【0057】
ここで、言うまでもないが、上記メインローブの4方向には、それぞれ、タイヤ1の空気圧や温度などを測定して無線送信する無線センサ2が、存在するように構成する必要がある。
【0058】
これに関して、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に応じて、メインローブの指向角が変わることを利用することも考えられる。
【0059】
例えば図8、図9に示すように、前後方向に対するメインローブの指向角は、L=2.0λの場合には32度程度であり、L=1.8λの場合には37度程度となっている。これを利用して、上記メインローブの4方向の指向角を、調整・制御することが可能となる。例えば、設置後に微調整することが可能となる。
【0060】
すなわち、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長L自体は、設置後に変更することは、可能ではあるが非常に困難で手間が掛かる。しかしながら、上記の通り、指向角は、使用する電波の波長λとLとの関係によって決まる。従って、ある長さの車両搭載アンテナ10を使用して、L=2.0λとなる波長λの電波を使用していたときには、上記のことから指向角が32度程度となるが、これを例えば指向角は37度程度となるように変更(微調整)したい場合には、使用する電波の波長λ(周波数)を、L=1.8λの関係が成立するものへの変更すればよい。
【0061】
このように、指向角を制御することが可能となる。これより、例えば、設置時に上記メインローブの4方向に無線センサ2が存在しない(多少ずれている)状態となったとしても、後から、上記メインローブの4方向に、それぞれ、無線センサ2が存在する状態となるように調整することが可能となる。
【0062】
尚、図1ではダイポールアンテナを車両の進行方向(前後方向)に対して90度の向きで(直交するように)設置しているが、0度の向きに設置しても同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0063】
ここで、上記の通り図1には本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例を示したが、この例に限らない。例えば他の例として、図10、図11に示す構成であってもよい。
【0064】
図10は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例1)である。
図11は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例2)である。
【0065】
尚、図10、図11においても、図1と同様、各メインローブを点線で示している。図示の通り、メインローブは4方向にあり、換言すれば1本のダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)で4方向への指向性を持つものであり、この点では図1と同じである。
【0066】
ここで、図1の例ではタイヤ本数が4本であったが、この例に限らない。例えばトラック、トレーラーやバス等の大型の車両等の場合、タイヤ本数が4本より多い構成となっている場合が少なくない。図10、図11には、タイヤ本数が6本の車両に対して本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムを適用した場合の全体構成例を示している。
【0067】
図10、図11は両方とも図示の通り前輪が2本、後輪が4本となっているが、図10では後輪の左右それぞれに2本のタイヤが並列に配置されている。一方、図11では後輪の左右それぞれに2本のタイヤが直列に配置されている。この様なタイヤ本数が6本の構成に対しても、本手法は適用可能である。但し、図示の通り、この場合でも、1本のダイポールアンテナで4方向への指向性を実現する点では、図1等の構成と同様であり、6方向になるわけではない。また、6本に限らず、例えば8本や10本や12本などであってもよく、したがって本手法は少なくとも4本のタイヤが設けられた車両に適用できるものと言える。
【0068】
尚、上記8本の構成とは、例えば後輪タイヤだけでなく前輪タイヤも、左右それぞれにおいて並列に2本あるいは直列に2本の構成とすることで、前輪タイヤ4本、後輪タイヤ4本の計8本の構成とするものである。つまり、例えば「前輪:左右2本ずつ並列配置。後輪:左右2本ずつ並列配置」や、「前輪:左右2本ずつ直列配置。後輪:左右2本ずつ直列配置」等が一例として挙げられるが、8本の構成となるのはこれらの例に限らない。
【0069】
あるいは、例えば上記10本の場合とは、例えば後輪タイヤが図10と図11とを組み合わせたような構成、すなわち並列に2本、直列に2本の計4本が、後輪側の左右それぞれに設けられた構成である(よって、後輪は計8本となる。尚、前輪は左右1本ずつの計2本となる)。あるいは、後輪は上記のように8本であるが、前輪側の左右それぞれに2本のタイヤ1が並列または直列に配置された構成の場合、全体で12本となる。
【0070】
ここで、基本的には、無線センサ2は各タイヤ1毎に設けられるので、図10や図11のようにタイヤ本数が6本の車両の場合には、無線センサ2の個数は6個となる。同様に、タイヤ本数が8本、10本、12本の場合には、それぞれ、無線センサ2の個数は8個、10個、12個となる。
【0071】
図10、図11を参照した説明に戻る。
図10、図11の構成の場合、上述したことから、後輪側は左右それぞれに2個の無線センサ2が設けられていることになる。そして、1本のダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)で図示のように4方向への指向性を持つことから、後輪側に関しては1つのメインローブで2個の無線センサ2をカバーするように配置すればよい。例えば、左後輪側の2本のタイヤ1それぞれに設けられた計2個の無線センサ2が、何れも、左後輪側に対応するメインローブでカバーされるように配置すればよい。右後輪側についても同様である。つまり、この様な6本のタイヤ(6個の無線センサ2)より成る構成の場合でも、1本のダイポールアンテナのみでタイヤ方向の4方向(4つのタイヤ方向)への指向性を実現することができるものといえる。
【0072】
尚、言うまでもないが、上記“4つのタイヤ方向”は“4本のタイヤの方向”という意味ではなく、各方向それぞれに1以上のタイヤ1(1以上の無線センサ2)がある4方向を意味する。
【0073】
勿論、図10、図11の構成例に限らず、「1本のダイポールアンテナが水平方向に有する4方向の指向性」と対応するようなタイヤ配置であれば、本手法を適用可能となる。
よって、上記タイヤ本数が8本、10本、12本等の場合にも、「1本のダイポールアンテナが水平方向に有する4方向の指向性」と対応するようなタイヤ配置となっていれば、本手法が適用可能である。換言すれば、4方向の各メインローブ毎に、そのメインローブで1個または複数個の無線センサ2をカバーする等して、全体で全ての無線センサ2をカバーできるようなタイヤ配置であれば、本手法が適用可能である。但し、これが実現困難な場合であっても、例えば使用周波数を2種類以上用いて、使用周波数を切り換えることで、実質的に本手法が適用可能となるようにしてもよい。
【0074】
すなわち、図8、図9で説明したように、使用周波数とダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)のアンテナ長との関係により、指向角を制御できる。図8、図9で説明したことは、2種類の使用周波数を用いて何れか一方に切り換えることで、メインローブの指向角を32度程度と37度程度の2方向の何れか一方に切り換えることができることを意味している。
【0075】
尚、この場合には、無線センサ2の使用周波数も、2種類の使用周波数の何れか一方を用いることになる。例えば仮に、使用周波数f1のときに指向角が32度程度となり、使用周波数f2のときに指向角が37度程度となるとした場合には、32度方向にある無線センサ2の使用周波数はf1とし、37度方向にある無線センサ2の使用周波数はf2とすることになる。
【0076】
例えば、送受信回路11が、まず使用周波数f1で通信可能な全ての無線センサ2との通信を行い、続いて、使用周波数f2に切り換えて、使用周波数f2で通信可能な全ての無線センサ2との通信を行うことで、全ての無線センサ2と通信が行えるのであれば、実質的に本手法が適用可能であるといえる。
【0077】
尚、当然のことながら、上記「周波数」を「波長」、「使用周波数」を「使用する電波の波長」等と言い換えても良い。
尚、上記の例では指向角を2つの角度の何れか一方に切り換えるものとしたが、この例に限らず、例えば3つの角度の何れか1つに切り換えるものとしてもよい。
【0078】
以上説明したように、本発明では、ダイポールアンテナの長さが所定の条件を満たすようにすることによって(例えばダイポールアンテナの長さと電波の波長の関係として規定する)、1本のダイポールアンテナのみでタイヤ方向の4方向への指向性を実現することができる。つまり、簡単な構成で各タイヤ1の無線センサ2との通信を良好に行うことができるようになる。更に、使用する電波の周波数を変更することで指向性の微調整も可能となる利点を有する。これにより、例えば多様な車両への最適化が容易に行えるようになる。
【符号の説明】
【0079】
1 タイヤ
2 無線センサ
6 車両ボディ
10 車両搭載アンテナ
11 送受信回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧等を計測・表示するタイヤ状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行中に運転者がタイヤ空気圧やその他の異常を速やかに把握できるようにするため、近年、圧力センサやアンテナ素子等を組み込んだ無線センサを、タイヤ内に装着することによって、タイヤ空気圧が運転席で監視できるようにしたシステムが普及しつつある。このタイヤ空気圧監視システム(TPMS)においては、タイヤ内の無線センサが発信するタイヤ空気圧等の検出信号を、車体側に装着されたアンテナで受信して、通信装置を経由して表示・制御装置へ伝送されるようになっている。
【0003】
一般的に、車体側のアンテナは各タイヤの近傍のタイヤハウス等に装着されている。これについて、図12を参照して説明する。
図12は、従来のタイヤ空気圧監視システムの構成の一部を示す図(従来例1)である。
【0004】
図示の従来例1の構成では、タイヤ1内に無線センサ2が設けられている。また、車両ボディ6側には、車両搭載アンテナ3と送受信回路5等を有する無線通信ユニット4が設けられている。無線通信ユニット4(特にその車両搭載アンテナ3)は、タイヤ1の近傍に設けられている。また、図示していないが、上記送受信回路5と有線で(例えば同軸ケーブル)接続した上記通信装置(または表示・制御装置等)も、車両上に搭載されている。尚、送受信回路5は、車両搭載アンテナ3を介した無線通信を実現する回路であり、何らかの信号(データ)を任意の周波数で車両搭載アンテナ3から送信させたり、車両搭載アンテナ3での受信信号を増幅する等の一般的な無線送受信回路の機能を有する(一般的なものであるので、ここではこれ以上詳細には説明しない)。
【0005】
ここで、図では1つのタイヤに係る構成のみ示すが、他の3本のタイヤ(通常、タイヤは4本であるので)についても、略同様に、そのタイヤの近傍に上記無線通信ユニット4が設けられると共に、この無線通信ユニット4と上記通信装置(または表示・制御装置等)とが例えば同軸ケーブルで接続された構成となっている。
【0006】
したがって、4本のタイヤ1内の各無線センサ2から発信された無線信号(タイヤ空気圧データ等を含む)は、それぞれ、その近傍に位置する車体側の車両搭載アンテナ3で受信され、この受信信号が送受信回路5を経由して上記不図示の同軸ケーブル等を介して上記表示・制御装置等へ個別に伝送される。これより、表示・制御装置において、4本の各タイヤの状態(空気圧等)が表示されたり警告音が発せられるようになっている。
【0007】
尚、この様な従来例1は、例えば特許文献2において従来技術として(その図11)開示されている。
なお、金属製のホイールに装着されているタイヤは、そのトレッド側にスチールベルトが埋設されているため、タイヤ内の無線センサと車体側のアンテナとの間の通信は主にタイヤの側壁部を介して行われている。
【0008】
何れにしても、上記従来例1の場合、車両搭載アンテナ3が4本必要となり、更に4本の同軸ケーブルを配線する必要があり、複雑かつ、高価なものとなってしまうという課題がある。
【0009】
この様な課題に対して、例えば特許文献1,2,3に記載の従来技術が知られている。これらの従来技術は、少なくとも上記各アンテナから同軸ケーブルを配線する必要は無くなるものである。
【0010】
まず、特許文献1の従来技術を、従来例2と呼ぶものとする。
特許文献1の従来技術では、その図2〜図4に示す構成の「車体側アンテナ部と制御処理回路部とが一体化された」ユニットが、その図1に示すように車体の略中央部に設置されて、4方向(各タイヤがある方向)に指向性の強い放射ビームが放射されるように構成されている。上記車体側アンテナ部(アンテナユニット)は、上記図2〜図4に示すように、4区画に分離されており、各アンテナバー(モノポールアンテナ)を扇型の各区画に配置し、タイヤ方向の4方向へ指向性を持たせている。これにより通信装置まで同軸ケーブルを配線する手間が省ける。
【0011】
また、特許文献2,3には、車両側のアンテナが1本で済む構成が開示されている。
すなわち、まず、特許文献2の従来技術では、監視ユニットに接続された1つのアンテナによって、各タイヤに設けられたセンサ装置から送信される電波を高利得で受信できるようにしている。この1つのアンテナは、車両の窓ガラスに設けられ、上下方向に延びる部分を有する。
【0012】
特許文献2では、アンテナから電波を輻射し、各タイヤの位置における電界強度が最も高くなるようなアンテナの形状及び配置を実測によって求めることにより、各センサ装置から送信された微弱な電波を、アンテナによって高効率で受信できるようにしている。
【0013】
また、特許文献3の従来技術では、1つのアンテナで各センサ装置が取り付けられたタイヤ位置を識別できるようにしている。監視ユニットに対して同軸ケーブルを介して接続された上記1つのアンテナは、水平面内において一様な指向性を有している。監視ユニットは、アンテナを介して受信した電波の受信強度等に基づいて、各センサ装置が取り付けられたタイヤ位置を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−126805号公報
【特許文献2】特開2004−345364号公報
【特許文献3】特開2005−335654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、4つのタイヤ方向へ指向性をもたせるために、バーアンテナを4つ用意し、さらに金属板で区画を4つに区切り、コーナリフレクタとして作用させ、その反射を利用して電波の指向性をタイヤ方向へ向けている。
【0016】
このように、特許文献1では、4本のアンテナバーが必要であり、またアンテナユニットを4区画に分離すると共にそれぞれ指向性を持たせるための構成も必要となり、構造が複雑で高価なものとなってしまうという課題がある。
【0017】
また、上記特許文献2,3の従来技術では、4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることは行われていない。特許文献3の場合、上述したように、水平面内において一様な指向性(無指向性)を有している。特許文献2では、「λ/2ダイポールアンテナ」(段落0045)を用いるものであり、これはよく知られているように8の字型(例えば前後の2方向)の指向性を有するものである。
【0018】
よく知られているように、特定の方向(複数方向でも可)に対する指向性を有する場合、特定の方向に限っては、無指向性の場合に比べて、良好な無線通信が行えるようになる。これは、特定の方向に対しては、強く電波を放射できると共に、微弱な電波であっても受信し易くなることや、特定の方向以外の方向で発生する雑音に影響され難くなるからである。
【0019】
その意味で、特許文献2,3のような無指向性の場合に比べて、上記特許文献1のように4つのタイヤ方向へ指向性をもたせるようにすることが望ましい。しかしながら、上記の通り、特許文献1の構成では構造が複雑で高価なものとなってしまう。
【0020】
本発明の課題は、1つのアンテナで4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることができるようにし、簡単な構成で各タイヤの無線センサとの通信を良好に行うことができるようにするタイヤ状態検出装置用アンテナシステム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムは、少なくとも4本の各タイヤ毎に設けられ、そのタイヤの状態を検出して無線送信する少なくとも4つの無線センサを有するアンテナシステムであって、車両の任意の位置に1つのダイポールアンテナを設け、該ダイポールアンテナの全長が所定の条件を満たすようにすることで、該ダイポールアンテナが水平方向に4方向の指向性を有するように構成し、該1つのダイポールアンテナによって前記少なくとも4つの無線センサと電波を送受信する。
【0022】
上記所定の条件は、例えば、ダイポールアンテナの全長と、使用する電波の波長との関係で規定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムによれば、1つのアンテナで4つのタイヤ方向へ指向性をもたせることができるようにし、簡単な構成で各タイヤの無線センサとの通信を良好に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例である。
【図2】(a),(b)は、L=2.0λ、L=2.2λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図3】(a),(b)は、L=2.4λ、L=2.6λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図4】(a),(b)は、L=2.8λ、L=3.0λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図5】L=3.2λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図6】(a),(b)は、L=1.8λ、L=1.6λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図7】L=1.4λの場合の水平方向の指向特性を示す図である。
【図8】メインローブの指向角について示す図(その1)である。
【図9】メインローブの指向角について示す図(その2)である。
【図10】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例1)である。
【図11】本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例2)である。
【図12】(a),(b)は、従来のタイヤ空気圧監視システムの構成の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例である。
ここで、図1において、上記図12に示す従来例と略同一の構成であってよいものには同一符号を付してある。まず、車両ボディ6と各タイヤ1には(当然ながら)上記図12と同一符号を付してある。また、図示の通り、各タイヤ1内に設けられる各無線センサ2も、上記図12と同一符号を付してある。つまり、各タイヤ側の構成は従来と略同様であってよい。尚、タイヤは4つであり、従って無線センサ2も4個ある。
【0026】
一方、車両ボディ6側の構成は、従来とは異なる。すなわち、従来では、上記各無線センサ2にそれぞれ対応してその近傍に車両搭載アンテナ3が設けられていた。つまり、4つの車両搭載アンテナ3が設けられていた。更に、各車両搭載アンテナ3(無線通信ユニット4)と不図示の通信装置(または表示・制御装置等)とを接続する同軸ケーブル等が設けられていた。
【0027】
これに対して、図1に示す構成では、車両ボディ6側には、1つの車両搭載アンテナ10が設けられている。この車両搭載アンテナ10は、ダイポールアンテナである(但し、後述する所定の条件を満たすものである)。そして、所定の条件を満たしていることで、この1つの車両搭載アンテナ10のみで、上記4個の無線センサ2全てと良好な無線通信が行えるように構成している。これは、図1に点線で示すように各タイヤ1(各無線センサ2)への4方向への指向性を実現することで、可能としている。車両搭載アンテナ10は、例えば車両ボディ6のほぼ中央部に設置される(但し、この例に限らず、車両ボディ6の任意の位置に設置されていてよいが、上記4方向への指向性が、4つのタイヤへの方向に相当することになる位置とする必要がある)。また、車両搭載アンテナ10は、略水平方向(重力方向と直交する平面の方向)に張られている。
【0028】
尚、上記図12で説明した不図示の通信装置や不図示の表示装置や制御装置は、図1では省略している。車両搭載アンテナ10は、送受信回路11と接続しており、送受信回路11は例えば上記不図示の通信装置や表示装置や制御装置等と一体の構成であってもよいし、同軸ケーブル等で接続されていてもよい。尚、送受信回路11は、その機能・構成自体は、上記従来の送受信回路5と略同様であってよく、その説明は省略する。本構成では、車両側のアンテナは1本のみで済み、送受信回路も1台のみで済み、更に同軸ケーブルも必要ないか又は1本のみで済む。
【0029】
ここで、従来技術で述べたように、ダイポールアンテナによる水平面方向(重力方向と直交する平面;重力方向をz方向とするならばxy平面)での指向性は、典型的には8の字方向(前後方向)となる。また、上記特許文献3のように、ダイポールアンテナを略垂直方向に張った場合には水平面内において一様な指向性(無指向性)を有している。
【0030】
これに対して、本発明者は、ダイポールアンテナの長さ(全長)が、所定の条件を満たす場合には、上記4方向への指向性を実現できることを認識した。これは、特に、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係が、所定の条件を満たす場合に、上記4方向への指向性を実現できることを認識した。これは、後述するように、既存のシミュレーションソフトウェアを使用して様々な条件を用いてシミュレーションを行った結果、認識したものである。
【0031】
ここで、上記所定の条件(特にダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係)は、基本的には、上記4方向への指向性を実現できるものであれば、何でもよい。但し、後述することから、例えば下記の条件とすることが考えられる。
・サイドローブの利得がメインローブを基準としてαdBダウン未満とする。
・典型的には、上記αを10とする。すなわち、サイドローブの利得がメインローブを基準として10dBダウン未満とする。
【0032】
尚、例えば20dBダウンや30dBダウン等が上記条件(10dBダウン未満)に該当するものであり、例えば8dBダウンや5dBダウン等は10dBダウン以上を意味するものとなる。
【0033】
また、上記条件(10dBダウン未満)を、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に置き換えると、後述するシミュレーション結果に基づけば、以下の通りとなる。
【0034】
「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」
但し、この数値に厳密に限定されるわけではない。例えば、後述するシミュレーションは0.2λ刻みとなっているので、1.6λ、1.4λ、2.2λ、2.4λ等のシミュレーション結果はあっても、1.5λ、2.3λのシミュレーション結果はない。従って、仮に1.5λ、2.3λの両方とも上記条件(10dBダウン未満)を満たすのであれば、「1.5λ ≦ L ≦ 2.3λ」等となるかもしれない。
【0035】
更に、望ましい条件としては、例えば下記の条件とすることが考えられる。
・サイドローブが生じない。
上記条件(サイドローブが生じない)を、ダイポールアンテナの全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に置き換えると、後述するシミュレーション結果に基づけば、以下の通りとなる。
【0036】
「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」
但し、この場合も、この数値に厳密に限定されるわけではない。上述した理由により、例えば「1.7λ ≦ L ≦ 2.1λ」等となる可能性もある。
【0037】
詳しくは後述する。
何れにしても、本手法では、1本のダイポールアンテナで4方向(4つのタイヤの方向)への指向性を実現できるので、簡単な構成で良質の無線通信を実現できる。すなわち、特許文献1のように構造が複雑で高価なものとなるようなことなく、4つのタイヤへの指向性を実現できる。よって、既に述べたように、4方向以外の方向で生じる雑音等の影響を受け難く、比較的少ない出力でも各無線センサ2へ送信できると共に、各無線センサ2から微弱な電波が送信される場合でも問題なく受信できる(すなわち、良質/良好な無線通信を実現できる)。
【0038】
尚、車両搭載アンテナ10の設置位置は、必ずしも車体中央に限るものではない。すなわち、車両搭載アンテナ10の設置位置は、上記4方向への指向性が、4つのタイヤの位置に対応するような位置とするものであり、通常は車体中央部が該当することになるが、この例に限らない。
【0039】
ここで、よく知られているように、ダイポールアンテナは、中央部分に給電点を設け、この給電点から両端までそれぞれλ/4ずつの長さで従って全長はλ/2であるものが、一般的である。このような典型例のダイポールアンテナの指向性は、よく知られているように、8の字型となる。
【0040】
これに対して、本発明者は、既に述べたように、既存のシミュレーションソフトを利用してシミュレーションを行ったことで、ダイポールアンテナの指向性が4方向になることや、その為の条件(ダイポールアンテナの長さに関する条件;そのなかでも特に望ましい指向性が得られる条件等)を見つけ出した。
【0041】
上記既存のシミュレーションソフトとは、例えば“MMANA”である。“MMANA”は、モーメント法によるアンテナ解析ソフトであり、直線のワイヤを任意形状に組み合わせたアンテナの特性を解析する事ができる。“MMANA”は、例えば、以下の機能を備えている。
・アンテナ定義のエディタ
・アンテナ形状表示、セグメント分割、電流分布表示
・水平パターン、垂直パターン表示と印刷
・複数の結果の比較
“MMANA”については、例えば下記のURLのサイトなどで紹介されている。
【0042】
http://n1yn.com/MMANA/MMANA.html
また、“MMANA”に限らず、例えば下記のURLのサイトのシミュレーションも利用している。
【0043】
http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/dipole/index-j.html
図2〜図7に、シミュレーション結果(水平方向の指向特性)を示す。
図2〜図7に示す利得(dB)は、最大値(メインローブの絶対利得)を基準‘0’とした、相対的な利得を意味する。よって、当然、全てが基準以下(10dBダウン(1/10)、20dBダウン(1/100)、30dBダウン(1/1000)等)の値となる。尚、図示の例えば‘−10’が上記10dBダウンを意味する。他も同様である。
【0044】
図2〜図7は、ダイポールアンテナの長さLを、1.4λ〜3.2λの範囲内で0.2λずつ変えてシミュレーションした結果を示すものである。
すなわち、ダイポールアンテナの長さLを、図2(a)は2.0λ、図2(b)は2.2λ、図3(a)は2.4λ、図3(b)は2.6λ、図4(a)は2.8λ、図4(b)は3.0λ、図5は3.2λ、図6(a)は1.8λ、図6(b)は1.6λ、図7は1.4λとした場合のシミュレーション結果を示している。
【0045】
尚、一例としては、使用する電波の波長λ=0.1224(m)(周波数f=2.45GHz)とするが、この例に限らない。
図2〜図7の全てにおいて、メインローブ(主ビーム)は、一応、4方向になっていると見做すことは可能である。従って、ダイポールアンテナの長さLを例えば1.4λ〜3.2λの範囲内とすることは、本発明の適用範囲として不適切であるとは言い切れない。
【0046】
但し、以下に述べる理由により、既に述べたように「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」等の範囲内とすることが望ましい。
すなわち、まず、図6(a)に示す「L=1.8λ」の場合には、図示のように、4方向のメインローブだけであり、サイドローブ(副ビーム)は現れていない。また、図2(a)に示す「L=2.0λ」の場合にも、図示のように、4方向のメインローブだけであり、サイドローブは殆ど現れていない(これもサイドローブが現れていないものと見做すものとする)。つまり、これらが好適/最適なものと見做すことができる。
【0047】
一方、例えば、図6(b)に示すように、「L=1.6λ」の場合には、上記「L=1.8λ」の場合と略同様の4方向のメインローブがあるが、それだけでなく、サイドローブが現れている。すなわち、図上では上下方向(実際には車体の前後方向)に、その利得(上記の通り、最大値(メインローブの絶対利得)を基準‘0’とした、相対的な利得)が凡そ13dBダウン程度のサイドローブが現れている。
【0048】
尚、図2〜図7において、図上に示す0、−10、−20、−30等は、メインローブを基準(0)として、10dBダウン、20dBダウン、30dBダウン等を意味している。
【0049】
また、図7に示すように、「L=1.4λ」の場合には、上記「L=1.6λ」の場合のように4方向のメインローブがあると共にサイドローブは現れているが、図示の通り、サイドローブは「L=1.6λ」の場合よりも大きくなっている(凡そ2dBダウン程度)。
【0050】
少なくとも図7に示すような大きなサイドローブが現れている場合、問題が生じる。すなわち、サイドローブの方向(図上では上下方向(実際には車体の前後方向))にあるエンジン等の雑音の影響を、大きく受けることになり、各無線センサ2との無線通信に悪影響がある。また、アンテナ出力が、メインローブ方向に集中せずに、サイドローブ方向にも分散することになるという悪影響も出る。
【0051】
一方、図6(b)のようにサイドローブが小さい(凡そ13dBダウン程度)場合には、上述したサイドローブによる悪影響は非常に小さくて済み、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できる。
【0052】
以上のことから、4方向以外の方向で生じる雑音等の影響を受け難く、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できる(各無線センサ2の方向に強く電波を放射できると共に、各無線センサ2から微弱な電波が送信される場合でも問題なく受信できる)という観点から考えた場合、上述した例では、「L=2.0λ」、「L=1.8λ」、「L=1.6λ」は適切であるが、「L=1.4λ」は不適切であると見做せる。この様な適切/不適切を判断するための1つの目安として、本発明者は経験等に基づいて「サイドローブが10dBダウン未満である場合は“適切”、10dBダウン以上の場合には“不適切”」を条件とすることを提案する。但し、この例に限るものではない。
【0053】
上述した例以外、すなわち図2(b)〜図5に示す2.2λ〜3.2λの例についても、上記条件に基づいて判断するならば、図2(b)に示す2.2λだけは“適切”となるが、それ以外は“不適切”と考えられる。
【0054】
従って、各無線センサ2との良好な無線通信を実現できるという観点から考えた場合、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lを「1.6λ ≦ L ≦ 2.2λ」の範囲内とすることが望ましい。但し、これは、図2〜図7に示す具体例に応じた定義であり、条件は上記の通り、「サイドローブが10dBダウン未満である」ことである。従って、図2〜図7の例は0.2λ刻みであるので分からないが、もし、例えば1.5λの場合に“サイドローブが10dBダウン以下”であったとするならば、「1.5λ ≦ L ≦ 2.2λ」となることになる。
【0055】
また、既に述べたように、更に望ましい条件は「サイドローブが生じない」ことであり、上記シミュレーション結果に基づく場合には、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lと、使用する電波の波長λとの関係が、「1.8λ ≦ L ≦ 2.0λ」の範囲内とすることが、好適/最適なものと考えられる。但し、これも、1.7λや2.1λについてのシミュレーション結果次第では、1.7λや2.1λも上記好適/最適な範囲内に含まれるかもしれない。
【0056】
上記のように、望ましい条件(好適/最適な範囲内とする条件)は、例えば図2(a)や図6(a)に示すようにサイドローブが無い(もしくは殆ど無い)ことであると見做してよい。尚、この条件には上記10dBダウン以下のような具体的な数値による条件規定は無いが、例えば1つの目安としては“サイドローブが30dBダウン以下(無い場合も含まれる)”等としてもよい。
【0057】
ここで、言うまでもないが、上記メインローブの4方向には、それぞれ、タイヤ1の空気圧や温度などを測定して無線送信する無線センサ2が、存在するように構成する必要がある。
【0058】
これに関して、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長Lと、使用する電波の波長λとの関係に応じて、メインローブの指向角が変わることを利用することも考えられる。
【0059】
例えば図8、図9に示すように、前後方向に対するメインローブの指向角は、L=2.0λの場合には32度程度であり、L=1.8λの場合には37度程度となっている。これを利用して、上記メインローブの4方向の指向角を、調整・制御することが可能となる。例えば、設置後に微調整することが可能となる。
【0060】
すなわち、車両搭載アンテナ10(ダイポールアンテナ)の全長L自体は、設置後に変更することは、可能ではあるが非常に困難で手間が掛かる。しかしながら、上記の通り、指向角は、使用する電波の波長λとLとの関係によって決まる。従って、ある長さの車両搭載アンテナ10を使用して、L=2.0λとなる波長λの電波を使用していたときには、上記のことから指向角が32度程度となるが、これを例えば指向角は37度程度となるように変更(微調整)したい場合には、使用する電波の波長λ(周波数)を、L=1.8λの関係が成立するものへの変更すればよい。
【0061】
このように、指向角を制御することが可能となる。これより、例えば、設置時に上記メインローブの4方向に無線センサ2が存在しない(多少ずれている)状態となったとしても、後から、上記メインローブの4方向に、それぞれ、無線センサ2が存在する状態となるように調整することが可能となる。
【0062】
尚、図1ではダイポールアンテナを車両の進行方向(前後方向)に対して90度の向きで(直交するように)設置しているが、0度の向きに設置しても同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0063】
ここで、上記の通り図1には本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例を示したが、この例に限らない。例えば他の例として、図10、図11に示す構成であってもよい。
【0064】
図10は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例1)である。
図11は、本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムの全体構成例(他の例2)である。
【0065】
尚、図10、図11においても、図1と同様、各メインローブを点線で示している。図示の通り、メインローブは4方向にあり、換言すれば1本のダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)で4方向への指向性を持つものであり、この点では図1と同じである。
【0066】
ここで、図1の例ではタイヤ本数が4本であったが、この例に限らない。例えばトラック、トレーラーやバス等の大型の車両等の場合、タイヤ本数が4本より多い構成となっている場合が少なくない。図10、図11には、タイヤ本数が6本の車両に対して本例のタイヤ状態検出装置用アンテナシステムを適用した場合の全体構成例を示している。
【0067】
図10、図11は両方とも図示の通り前輪が2本、後輪が4本となっているが、図10では後輪の左右それぞれに2本のタイヤが並列に配置されている。一方、図11では後輪の左右それぞれに2本のタイヤが直列に配置されている。この様なタイヤ本数が6本の構成に対しても、本手法は適用可能である。但し、図示の通り、この場合でも、1本のダイポールアンテナで4方向への指向性を実現する点では、図1等の構成と同様であり、6方向になるわけではない。また、6本に限らず、例えば8本や10本や12本などであってもよく、したがって本手法は少なくとも4本のタイヤが設けられた車両に適用できるものと言える。
【0068】
尚、上記8本の構成とは、例えば後輪タイヤだけでなく前輪タイヤも、左右それぞれにおいて並列に2本あるいは直列に2本の構成とすることで、前輪タイヤ4本、後輪タイヤ4本の計8本の構成とするものである。つまり、例えば「前輪:左右2本ずつ並列配置。後輪:左右2本ずつ並列配置」や、「前輪:左右2本ずつ直列配置。後輪:左右2本ずつ直列配置」等が一例として挙げられるが、8本の構成となるのはこれらの例に限らない。
【0069】
あるいは、例えば上記10本の場合とは、例えば後輪タイヤが図10と図11とを組み合わせたような構成、すなわち並列に2本、直列に2本の計4本が、後輪側の左右それぞれに設けられた構成である(よって、後輪は計8本となる。尚、前輪は左右1本ずつの計2本となる)。あるいは、後輪は上記のように8本であるが、前輪側の左右それぞれに2本のタイヤ1が並列または直列に配置された構成の場合、全体で12本となる。
【0070】
ここで、基本的には、無線センサ2は各タイヤ1毎に設けられるので、図10や図11のようにタイヤ本数が6本の車両の場合には、無線センサ2の個数は6個となる。同様に、タイヤ本数が8本、10本、12本の場合には、それぞれ、無線センサ2の個数は8個、10個、12個となる。
【0071】
図10、図11を参照した説明に戻る。
図10、図11の構成の場合、上述したことから、後輪側は左右それぞれに2個の無線センサ2が設けられていることになる。そして、1本のダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)で図示のように4方向への指向性を持つことから、後輪側に関しては1つのメインローブで2個の無線センサ2をカバーするように配置すればよい。例えば、左後輪側の2本のタイヤ1それぞれに設けられた計2個の無線センサ2が、何れも、左後輪側に対応するメインローブでカバーされるように配置すればよい。右後輪側についても同様である。つまり、この様な6本のタイヤ(6個の無線センサ2)より成る構成の場合でも、1本のダイポールアンテナのみでタイヤ方向の4方向(4つのタイヤ方向)への指向性を実現することができるものといえる。
【0072】
尚、言うまでもないが、上記“4つのタイヤ方向”は“4本のタイヤの方向”という意味ではなく、各方向それぞれに1以上のタイヤ1(1以上の無線センサ2)がある4方向を意味する。
【0073】
勿論、図10、図11の構成例に限らず、「1本のダイポールアンテナが水平方向に有する4方向の指向性」と対応するようなタイヤ配置であれば、本手法を適用可能となる。
よって、上記タイヤ本数が8本、10本、12本等の場合にも、「1本のダイポールアンテナが水平方向に有する4方向の指向性」と対応するようなタイヤ配置となっていれば、本手法が適用可能である。換言すれば、4方向の各メインローブ毎に、そのメインローブで1個または複数個の無線センサ2をカバーする等して、全体で全ての無線センサ2をカバーできるようなタイヤ配置であれば、本手法が適用可能である。但し、これが実現困難な場合であっても、例えば使用周波数を2種類以上用いて、使用周波数を切り換えることで、実質的に本手法が適用可能となるようにしてもよい。
【0074】
すなわち、図8、図9で説明したように、使用周波数とダイポールアンテナ(車両搭載アンテナ10)のアンテナ長との関係により、指向角を制御できる。図8、図9で説明したことは、2種類の使用周波数を用いて何れか一方に切り換えることで、メインローブの指向角を32度程度と37度程度の2方向の何れか一方に切り換えることができることを意味している。
【0075】
尚、この場合には、無線センサ2の使用周波数も、2種類の使用周波数の何れか一方を用いることになる。例えば仮に、使用周波数f1のときに指向角が32度程度となり、使用周波数f2のときに指向角が37度程度となるとした場合には、32度方向にある無線センサ2の使用周波数はf1とし、37度方向にある無線センサ2の使用周波数はf2とすることになる。
【0076】
例えば、送受信回路11が、まず使用周波数f1で通信可能な全ての無線センサ2との通信を行い、続いて、使用周波数f2に切り換えて、使用周波数f2で通信可能な全ての無線センサ2との通信を行うことで、全ての無線センサ2と通信が行えるのであれば、実質的に本手法が適用可能であるといえる。
【0077】
尚、当然のことながら、上記「周波数」を「波長」、「使用周波数」を「使用する電波の波長」等と言い換えても良い。
尚、上記の例では指向角を2つの角度の何れか一方に切り換えるものとしたが、この例に限らず、例えば3つの角度の何れか1つに切り換えるものとしてもよい。
【0078】
以上説明したように、本発明では、ダイポールアンテナの長さが所定の条件を満たすようにすることによって(例えばダイポールアンテナの長さと電波の波長の関係として規定する)、1本のダイポールアンテナのみでタイヤ方向の4方向への指向性を実現することができる。つまり、簡単な構成で各タイヤ1の無線センサ2との通信を良好に行うことができるようになる。更に、使用する電波の周波数を変更することで指向性の微調整も可能となる利点を有する。これにより、例えば多様な車両への最適化が容易に行えるようになる。
【符号の説明】
【0079】
1 タイヤ
2 無線センサ
6 車両ボディ
10 車両搭載アンテナ
11 送受信回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4本の各タイヤ毎に設けられ、そのタイヤの状態を検出して無線送信する少なくとも4つの無線センサを有するアンテナシステムであって、
車両の任意の位置に1つのダイポールアンテナを設け、
該ダイポールアンテナの全長が所定の条件を満たすようにすることで、該ダイポールアンテナが水平方向に4方向の指向性を有するように構成し、該1つのダイポールアンテナによって前記少なくとも4つの無線センサと電波を送受信することを特徴とするタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じた場合でも、該サイドローブの利得が前記メインローブを基準としてαdBダウン(α;任意の実数)未満となるように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じた場合でも、該サイドローブの利得が前記メインローブを基準として10dBダウン未満となるように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記ダイポールアンテナの全長Lと前記電波の波長λとの関係が、
1.6λ≦L≦2.2λ
の範囲内となるようにすることを特徴とする請求項1または3に記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じないように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記ダイポールアンテナの全長Lと前記電波の波長λとの関係が、
1.8λ≦L≦2.0λ
の範囲内となるようにすることを特徴とする請求項1または5に記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項7】
前記ダイポールアンテナの全長が前記所定の条件を満たす任意の長さに固定されている状態で、前記電波の波長λを変更することで、前記4方向の指向性に対応するメインローブの指向角を、変更することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項1】
少なくとも4本の各タイヤ毎に設けられ、そのタイヤの状態を検出して無線送信する少なくとも4つの無線センサを有するアンテナシステムであって、
車両の任意の位置に1つのダイポールアンテナを設け、
該ダイポールアンテナの全長が所定の条件を満たすようにすることで、該ダイポールアンテナが水平方向に4方向の指向性を有するように構成し、該1つのダイポールアンテナによって前記少なくとも4つの無線センサと電波を送受信することを特徴とするタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じた場合でも、該サイドローブの利得が前記メインローブを基準としてαdBダウン(α;任意の実数)未満となるように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じた場合でも、該サイドローブの利得が前記メインローブを基準として10dBダウン未満となるように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記ダイポールアンテナの全長Lと前記電波の波長λとの関係が、
1.6λ≦L≦2.2λ
の範囲内となるようにすることを特徴とする請求項1または3に記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記4方向の指向性に対応するメインローブに対して、サイドローブが生じないように、前記ダイポールアンテナの全長を設定することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記ダイポールアンテナの全長Lと前記電波の波長λとの関係が、
1.8λ≦L≦2.0λ
の範囲内となるようにすることを特徴とする請求項1または5に記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【請求項7】
前記ダイポールアンテナの全長が前記所定の条件を満たす任意の長さに固定されている状態で、前記電波の波長λを変更することで、前記4方向の指向性に対応するメインローブの指向角を、変更することを特徴とする請求項1記載のタイヤ状態検出装置用アンテナシステム。
【図1】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−95337(P2013−95337A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241624(P2011−241624)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
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