説明

タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ

【課題】操縦安定性およびハンドリング応答性を低下させることなく、耐セパレーション性を向上させることができるビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物およびビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物を用いたタイヤを提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴム成分100質量部に対して、(A)硫黄を1.5〜2.9質量部、(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を1〜4質量部、(C)ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物を0.7〜3質量部、(D)シリカを5〜30質量部、および(E)窒素吸着比表面積が38〜125m2/gのカーボンブラックを10〜55質量部含有するビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物、ならびにこのゴム組成物からなるビードエイペックス/プライ間ゴム層を有するタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードエイペックスとプライとの間に設けるゴム層用のゴム組成物およびそれを用いたゴム層を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両重量が重い電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車に用いられる乗用車タイヤにおいてタイヤを小型・軽量化できる技術の需要が高まっている。タイヤの耐久性の低下要因の1つとしてビードエイペックスとプライとのセパレーションが挙げられる。このセパレーションの発生原因としては、走行によるビード部位の変形に伴う歪みが、特定の箇所に集中(歪集中)することが挙げられ、この歪集中とそれに伴う発熱により特定の箇所でセパレーションが発生しやすくなるという現象が生じている。セパレーションが発生しやすい箇所として、従来のタイヤのビード部を示した図10に示すように、プライの巻上げ側とビードエイペックスとの間D1、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側との間D2、ビードエイペックスの先端とプライとの間D3が挙げられ、これらのセパレーション危険箇所に対する対策が必要となっている。
【0003】
従来、タイヤのビードエイペックスには、操縦安定性およびハンドリング応答性を高めるために、フェノールレジンおよびメチレンドナーとしてヘキサメチレンテトラミン(HMT)を含有させることで、複素弾性率(E*)を20〜70と高く設定したゴム組成物が用いられている。しかし、HMTはフェノールレジンの架橋に際し、ビードエイペックスとプライとの加硫接着特性を阻害するアンモニアも放出するために、得られたゴム組成物は接着性に劣り、耐セパレーション性が劣るという問題がある。
【0004】
この問題に対して、HMTに替えてアンモニアを放出しないメチレンドナーとしてヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物を用いることでビードエイペックスとプライとの加硫接着特性を改良する技術が知られているが、十分な耐久性を有するタイヤを得るには至っていない。
【0005】
また、フェノールレジンは加硫量の増加に伴い、ポリマー間の加硫による網目構造とは異なる独自の網目構造を形成し、ゴム硬度の上昇を引き起こす。ポリマー間の網目密度はピークを過ぎると低下し、いわゆるリバージョンが起こることが知られているが、これに対し、フェノールレジンの網目構造はリバージョンが起こらず、ゴム硬度が過度に上昇するという問題がある。
【0006】
一般にビードエイペックスは、ビードコア側を底辺とし、トレッド側に向けて先端が細くなる三角形の構造を有し、ビードコア側ほどゴム硬度が高く、先端側になるにつれゴム硬度が低くなる構造とすることが理想的であり、これにより操縦安定性、ハンドリング応答性および耐久性(プライとのセパレーション防止)に有利であることが知られている。しかしながら、前記三角形の構造を有するビードエイペックスを加硫すると、ゴム肉厚が薄い箇所、つまりビードエイペックスの先端ほど、単位ゴム体積あたりの加硫量が多くなり、ビードエイペックスに用いる熱硬化性樹脂の架橋が進行し、先端ほどゴム硬度が高くなる現象が起こるために理想的な構造を有するビードエイペックスを得ることは困難である。すなわち、操縦安定性を向上させることを目的としてビードエイペックスの硬度を高くすると、耐セパレーション性、耐久性が悪化するという問題が生じる。
【0007】
上記問題を解決することを目的とし、プライ配合と同じ配合の0.5〜1.0mm厚のインスレーションゴム層をビードエイペックスとケースとの間に設けることでセパレーションを防ぐことも行われている。しかし、このインスレーションゴム層はプライ配合と同じ配合であるために、十分な破断時伸び(EB%)、耐久性、接着性およびゴム硬度を有さず、また、一方のビードから他方のビードまで設けるため、タイヤ重量の増加、ハンドリング応答性の悪化という問題がある。
【0008】
特許文献1には、ビードエイペックスの先端部の形状を薄板状の翼部とすることで周方向共振周波数の上昇を抑えロードノイズの悪化を抑制しながら、操縦安定性を向上しうる空気入りタイヤについて開示されているが、ビードエイペックスとプライとのセパレーションの防止については検討されていない。
【0009】
特許文献2には、カーカスコードを被覆するトッピングゴムとしてとして用いられるゴム組成物が、また特許文献3には、ブレーカー/プライ間ストリップ層として用いられるゴム組成物が開示されているが、特許文献2および3記載のゴム組成物をビードエイペックス/プライ間ゴム層として適用することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−306742号公報
【特許文献2】特開2009−143486号公報
【特許文献3】特開2010−52724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、操縦安定性およびハンドリング応答性を低下させることなく、耐セパレーション性を向上させることができるビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物およびこのゴム組成物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、(A)硫黄を1.5〜2.9質量部、(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を1〜4質量部、(C)ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物を0.7〜3質量部、(D)シリカを5〜30質量部、および(E)窒素吸着比表面積が38〜125m2/gのカーボンブラックを10〜55質量部含有するビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物に関する。
【0013】
前記ジエン系ゴム成分が、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム40〜100質量%、ならびに他のジエン系ゴム0〜60質量%を含むゴム成分であることが好ましい。
【0014】
前記ジエン系ゴム成分が、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム40〜80質量%、ならびに、スチレンブタジエンゴム15〜60質量%および/またはポリブタジエンゴム0〜30質量%を含むゴム成分であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、ビードエイペックス/プライ間ゴム層を有するタイヤであって、前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、前記ゴム組成物を含むタイヤであることが好ましい。
【0016】
前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、ビードエイペックスとプライとの間に設けられたストリップエイペックスであり、前記ストリップエイペックスの平均厚さが0.5〜2.0mmであるタイヤであることが好ましい。
【0017】
ビードエイペックスがビードエイペックスのタイヤ半径方向外側の先端を含む外層とビードコア側のベース層との2層構造からなるタイヤであって、前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、前記外層であり、該外層の平均厚さが0.2〜2.0mmであるタイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ジエン系ゴム成分に対して特定量の硫黄、変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物、シリカ、および特定のカーボンブラックを含有するゴム組成物とすることで、適度なゴム硬さ(複素弾性率)を有し、プライおよびビードエイペックスに対する接着性に優れ、また、破断時伸び、耐亀裂成長性に優れるビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物を提供することができ、また、このゴム組成物からなるビードエイペックス/プライ間ゴム層を有するタイヤとすることで、操縦安定性およびハンドリング応答性を低下させることなく、耐セパレーション性に優れ、耐久性に優れるタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部の部分断面図である。
【図2】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部の部分断面図である。
【図3】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図4】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図5】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図6】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図7】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図8】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図9】本発明にかかるビードエイペックス/プライ間ゴム層の一態様を示すタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。
【図10】従来のタイヤにおけるビード部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、(A)硫黄を1.5〜2.9質量部、(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を1〜4質量部、(C)ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物を0.7〜3質量部、(D)シリカを5〜30質量部、および(E)窒素吸着比表面積が38〜125m2/gのカーボンブラックを10〜55質量部含有することにより、適度な複素弾性率を有し、破断時伸び、耐亀裂成長性および接着性を向上させることができる。
【0021】
ジエン系ゴム成分としてはとくに限定はなく、ゴム工業で一般的に用いられる天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)および他のジエン系ゴムを用いることができる。特に破断強度および加工性において優れるという点から、NRおよび/またはIRを含有することが好ましい。
【0022】
前記NRとしては特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20などが挙げられる。
【0023】
ジエン系ゴム成分においてNRおよび/またはIRを含有する場合の含有量は、破断時伸びおよび加工性において優れるという点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。また、NRおよび/またはIRは単独で使用してもよいが、他のジエン系ゴムと併用してもよい。他のジエン系ゴムと併用する場合、NRおよび/またはIRの含有量は40〜80質量%とするのがリバージョン防止、低発熱性において優れるという点から好ましい。さらにリバージョン防止、低発熱性において優れるという点から75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
前記NRおよび/またはIR以外の他のジエン系ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、各種ブタジエンゴム(各種)などが挙げられる。各種SBRは、耐リバージョン性を、各種BRは耐亀裂成長性を向上させることができる。
【0025】
前記各種スチレンブタジエンゴムとしては、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)などが挙げられる。
【0026】
前記E−SBRは乳化重合により得られるスチレンブタジエンゴムである。
【0027】
前記S−SBRは溶液重合により得られるスチレンブタジエンゴムである。
【0028】
変性SBRとしては、乳化重合変性スチレンブタジエンゴム(変性E−SBR)と溶液重合変性スチレンブタジエンゴム(変性S−SBR)が挙げられるが、シリカとポリマー鎖の結合を強め、tanδを低減させることで低燃費性を向上させることができることから、変性S−SBRが好ましい。
【0029】
前記変性SBRとしては、スズやケイ素などでカップリングされたものが好ましく用いられる。変性S−SBRのカップリング方法としては、常法に従って、例えば、変性S−SBRの分子鎖末端のアルカリ金属(Liなど)やアルカリ土類金属(Mgなど)を、ハロゲン化スズやハロゲン化ケイ素などと反応させる方法などが挙げられる。
【0030】
変性SBRは、共役ジオレフィン単独、または共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物とを(共)重合して得られた(共)重合体であり、第1級アミノ基やアルコキシシリル基を有することが好ましい。
【0031】
第1級アミノ基は、重合開始末端、重合終了末端、重合体主鎖、側鎖のいずれに結合していてもよいが、重合体末端からエネルギー消失を抑制してヒステリシスロス特性を改良し得る点から、重合開始末端または重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0032】
変性SBRの結合スチレン量は、ゴム配合での耐リバージョン性に優れる点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。また、変性SBRの結合スチレン量は、低発熱性に優れる点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0033】
ジエン系ゴム成分において前記各種スチレンブタジエンゴムを含有する場合の含有量は、リバージョンを防ぐという点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、前記各種スチレンブタジエンゴムの含有量は、発熱性において優れるという点から60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
前記各種ブタジエンゴムとしては、ハイシス1,4−ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)などが挙げられる。
【0035】
前記ハイシスBRとは、シス1,4結合含有率が90重量%以上のブタジエンゴムである。このようなハイシスBRとして、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150Bなどが挙げられる。
【0036】
前記SPB含有BRは、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが好ましい。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散することにより、複素弾性率が高く、耐亀裂成長性が向上する傾向がある。
【0037】
また、BR中に含有する1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶は充分な硬さを有するため、架橋密度が少なくても充分な複素弾性率を得ることができる。そのため、ゴム組成物の複素弾性率および耐亀裂成長性を向上させることができる。
【0038】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。融点が180℃未満では、プレスにおけるタイヤの加硫中に結晶が溶融し、硬度が低下する傾向がある。また、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましい。融点が220℃をこえると、BRの分子量が大きくなるため、ゴム組成物中において分散性が悪化する傾向がある。
【0039】
SPB含有BR(a)中において、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は,2.5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。含有量が2.5質量%未満では、ゴム組成物の充分な硬さが得られない傾向がある。また、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が22質量%をこえると、BR自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるBRおよびフィラーの分散性が悪化する傾向がある。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中における1,2−シンジオタクチックポリブタジエンを示す。
【0040】
SPB含有BR(a)中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、2.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上である。含有量が2.5質量%未満では、ゴム硬さが不充分である。また、BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下である。含有量は20質量%をこえると、BRがゴム組成物中に分散し難く、加工性が悪化する。
【0041】
ジエン系ゴム成分(A)中におけるSPB含有BR(a)の含有量は、ゴム硬さおよび亀裂成長性において優れるという点から、10質量%以上であり、12質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、ジエン系ゴム成分中におけるSPB含有BR(a)の含有量は、破断時伸びが向上し、かつtanδの悪化が防止できるという点から、60質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
【0042】
このようなシンジオタクチック結晶を含むポリブタジエンとしては、宇部興産(株)製のVCR−303、412、617などが挙げられる。
【0043】
前記変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されているものが好ましい。
【0044】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などがあげられる。前記リチウム開始剤を変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量の変性BRを作製できる。
【0045】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどが挙げられ、これらのスズ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
変性BR中のスズ原子の含有率は50ppm以上が好ましく、60ppm以上がより好ましい。スズ原子の含有率が50ppm未満では、変性BR中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さく、tanδが増大してしまう傾向がある。また、スズ原子の含有率は3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。スズ原子の含有率が3000ppmをこえると、混練り物のまとまりが悪く、エッジが整わないため、加工性が悪化する傾向がある。
【0047】
変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。変性BRのMw/Mnが2をこえると、カーボンブラックの分散性が悪化し、tanδが増大する傾向がある。
【0048】
変性BRのビニル結合量は5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましい。変性BRのビニル結合量が5重量%未満では、変性BRを重合(製造)することは困難な傾向がある。また、変性BRのビニル結合量は50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。変性BRのビニル結合量が50重量%をこえると、カーボンブラックの分散性が悪化し、tanδが増大する傾向がある。
【0049】
このような変性BRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性)、住友化学工業(株)製のS変性ポリマー(シリカ変性)などが挙げられる。
【0050】
これらの各種BRの中でも、特にカーボンブラックとの結合力が高く、低発熱性において優れるという点からBR1250Hなどのスズ変性BRを用いることが好ましい。
【0051】
ジエン系ゴム成分において前記各種ブタジエンゴムを含有する場合の含有量は、複素弾性率および加工性に優れ、リバージョンを防ぐという点から30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。また、耐亀裂成長性に優れるという点から15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0052】
本発明のゴム組成物は硫黄(A)を含有する。なお、本発明における硫黄(A)とは、加硫剤として含有する硫黄における純硫黄成分のことをいい、加硫促進剤などに含まれる硫黄成分は含まないものとする。また、硫黄(A)としては、ゴム工業において一般的に用いられる不溶性硫黄を好適に用いることができる。
【0053】
硫黄(A)の含有量は、ゴム硬さが向上し良好であるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、1.5質量部以上であり、2.0質量部以上が好ましく、2.2質量部以上がより好ましい。また、硫黄の含有量は、走行中の酸化劣化により架橋密度が上昇し、破断時伸びが低下することでゴム組成物の耐久性が低下することを防ぐという点、通常3.0質量部以下であるプライ配合の硫黄含有量よりも多く硫黄を含有すると、本発明のゴム組成物に含有する硫黄がプライに流入し、その結果、プライにおけるトッピングゴムと繊維コードとの接着が低下しタイヤの耐久性が低下することを防ぐという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、2.9質量部以下であり、2.8質量部以下が好ましく、2.7質量部以下がより好ましい。なお、硫黄(A)として不溶性硫黄を用いる場合、硫黄の含有量は、オイル分を除いた純硫黄分の含有量を示す。
【0054】
本発明のゴム組成物は(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。これらの樹脂(B)はゴム組成物の複素弾性率を向上させる役割、プライにおけるコード接着性の劣化を防止する役割を果たす。
【0055】
変性レゾルシン樹脂とは、式(1)のようにレゾルシン縮合物をアルキル化したものがあげられる。式中のRはアルキル基、例えば炭素数1〜12のアルキル基であり、また式中のnは1以上の整数である。変性レゾルシン樹脂としては、例えば、レゾルシン・アルキルフェノール・ホルマリン共重合体(住友化学工業(株)製のスミカノール620など)、レゾルシン・ホルマリン反応物ペナコライト樹脂(インドスペック社製の1319Sなど)などがあげられる。
【化1】

【0056】
クレゾール樹脂とは、式(2)で表される化合物をいう。式中のnは1以上の整数である。
【化2】

【0057】
クレゾール樹脂としては、前記式(2)中のメチル基が、オルト位にあるオルトクレゾール樹脂、メタ位にあるメタクレゾール樹脂、パラ位にあるパラクレゾール樹脂、および、オルト位、メタ位、パラ位の混合物であるクレゾール樹脂が挙げられる。なかでも、薬品軟化点が100℃付近(92〜107℃)であるため、常温では固体であるが、ゴム混練り時に液体であるため分散しやすい点、さらに本発明で用いられるヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物との反応開始温度が130℃付近とタイヤ加硫温度(145〜190℃)以下で適切であるという点からメタクレゾール樹脂が、また、高い複素弾性率が得られるという点からオルト位、メタ位、パラ位の混合物であるクレゾール樹脂が好ましい。
【0058】
変性クレゾール樹脂とは、クレゾール樹脂の末端のメチル基を水酸基に変性したもの、クレゾール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。
【0059】
(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、破断時伸びおよびコード接着性の防止において優れ、適度な複素弾性率が得られるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して1.0質量部以上であり、コード接着性の防止においてさらに優れるという点から1.2質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。また、変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、破断時伸びおよび低発熱性において優れるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して4.0質量部以下であり、破断時伸びがさらに優れるという点から3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましい。
【0060】
本発明のゴム組成物は、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物(C)を含有する。HMMPMEの部分縮合物とは、式(3)で表されるものをいう。また、HMMMの部分縮合物とは、式(4)で表されるものをいう。
【化3】

【化4】

式(3)および式(4)中のnは1〜3の整数である。
【0061】
HMMPMEの部分縮合物またはHMMMの部分縮合物(C)の含有量は、破断時伸びおよび複素弾性率において優れるという点から、ゴム成分100質量部に対して0.7質量部以上であり、1.0質量部以上が好ましく、1.2質量部以上がより好ましい。また、HMMPMEの部分縮合物またはHMMMの部分縮合物(C)の含有量は、破断時伸びおよび低発熱性において優れるという点から、ゴム成分100質量部に対して3質量部以下であり、2.5質量部以下が好ましく、2.0質量部以下がより好ましい。
【0062】
前記HMMPMEの部分縮合物またはHMMMの部分縮合物以外のメチレンドナーとしてヘキサメチレンテトラミン(HMT)が知られているが、HMTは加硫中に、ビードエイペックスおよびプライとの接着性を阻害するアンモニアを放出するため、本発明のゴム組成物においては含有しないことが好ましい。
【0063】
本発明のゴム組成物は(D)シリカを含有する。
【0064】
前記シリカ(D)の含有量は、破断時伸びにおいて優れ、耐久性に優れるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上であり、7質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、シリカ(D)の含有量は、複素弾性率およびシート圧延性(加工性)において優れるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、30質量部以下であり、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0065】
シリカ(D)の窒素吸着比表面積(N2SA)は、破断時伸びにおいて優れ、低発熱性に優れるという点から、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、80m2/g以上がさらに好ましい。また、シリカ(D)の窒素吸着比表面積(N2SA)は、低発熱性および破断時伸びにおいて優れるという点から、250m2/g以下が好ましく、240m2/g以下がより好ましく、230m2/g以下がさらに好ましい。
【0066】
本発明のゴム組成物は(E)特定のカーボンブラックを含有する。
【0067】
前記カーボンブラック(E)の含有量は、複素弾性率、破断時伸びおよび通電性において優れるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であり、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、破断時伸びおよび低発熱性において優れるという点から、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、50質量部以下であり、48質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
【0068】
カーボンブラック(E)の窒素吸着比表面積(N2SA)は、破断時伸びにおいて優れ、耐久性に優れるという点から、38m2/g以上であり、60m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラック(E)の窒素吸着比表面積(N2SA)は、低発熱性および加工性に優れるという点から、125m2/g以下であり、120m2/g以下が好ましく、110m2/g以下がより好ましい。
【0069】
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分、硫黄(A)、変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物(C)、シリカ(D)およびカーボンブラック(E)以外にも、通常ゴム工業で使用される配合剤、例えば、シランカップリング剤、オイルなどの各種軟化剤、各種老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0070】
本発明のゴム組成物には、さらにシランカップリング剤を併用することが好ましい。特に前記シリカの含有量がジエン系ゴム成分100質量部に対して15質量部を超える場合は、シリカの凝集を抑えることができる点から併用することが好ましい。
【0071】
シランカップリング剤としては、とくに制限はなく、タイヤ工業で従来からゴム組成物中にシリカとともに配合されているものであれば使用することができ、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられ、これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが好適に用いられる。
【0072】
シランカップリング剤を配合する場合、シランカップリング剤の含有量は、加工性および発熱性に優れる点から、シリカ100質量部に対して6質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、シランカップリング剤を過剰に配合すると、余剰カップリング剤が硫黄を放出し、ゴムを過剰に架橋するためゴム組成物が硬くなりすぎ、破断時伸びが低下する傾向があり、またコストも高くなるためシリカ100質量部に対して12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0073】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記ゴム成分、必要に応じてその他の配合剤を混練りし、その後加硫することにより、本発明のビードエイペックス/プライ間ストリップ層用ゴム組成物を製造することができる。
【0074】
本発明のゴム組成物は、適度なゴム硬さ(複素弾性率)を有し、破断時伸び、耐亀裂成長性に優れるゴム組成物であり、さらにポリエステル製プライコードとプライトッピングゴムとの接着の劣化を防止できるゴム組成物であることから、タイヤ部材の中でも、ビードエイペックス/プライ間ゴム層に使用することで、ビードエイペックスの硬度を高くすることにより得られるタイヤの操縦安定性およびハンドリング安定性を低下させることなく、歪集中とそれに伴う発熱によるビードエイペックスとプライとのセパレーションを防止することができ、耐久性に優れるタイヤを得ることができる。
【0075】
以下、図面を用いて、本発明のタイヤにおけるビードエイペックス/プライ間ゴム層について説明する。
【0076】
本発明におけるビードエイペックス/プライ間ゴム層のタイヤにおける代表的な態様としては、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックスがビードエイペックスとプライの間に配設された態様(図1〜4)もしくは、ビードエイペックスがビードエイペックスのタイヤ半径方向外側の先端を含む外層とビードコア側のベース層との2層構造からなるビードエイペックスであり、該外層が本発明のゴム組成物からなる態様(図5〜9)が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0077】
本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックスがビードエイペックスとプライの間に配設された態様(図1〜4)について説明する。
【0078】
図1は、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックス11をビードエイペックス4のインナーライナー6側の側面と第1プライ1の間に配設したタイヤのビード部の部分断面図である。ここで、図1におけるストリップエイペックス11は、ビードエイペックス4のインナーライナー6側に配設されており、ビードコア5のリムR側の端からビードエイペックス4のタイヤ半径方向外側の先端Aまでの高さHを100とした場合のストリップエイペックス11の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)は5以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。また、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)が5未満の場合は、ビードエイペックスの先端とプライとのセパレーション発生箇所(図10のD3)におけるセパレーションを防止できない傾向がある。
【0079】
なお、図1に示すビード部位の構造は、トレッド方向から延伸されビードエイペックス4のインナーライナー6側を経由してビードコア5を周回し、ビードエイペックス4のクリンチ9側の側面途中まで折り返した構造を有する第1プライ1と、この第1プライ1の外側に配され、トレッド方向から延伸されビードエイペックス4のインナーライナー6側を経由してビードコア5を周回し、さらにクリンチ9およびサイドウォール8に沿ってタイヤの最大幅位置まで延伸された第2プライ2の2プライ構造の場合である。プライの構造は特に限定されるものではなく、前記いずれかのプライのみからなる1プライ構造などとすることもできる。
【0080】
図2は、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックス12をビードエイペックス4のクリンチ9側の側面と第1プライ1の間に配設したタイヤのビード部の部分断面図である。ここで、図2におけるストリップエイペックス12は、ビードエイペックス4のクリンチ9側に配設されており、上記の高さHを100とした場合のストリップエイペックス12の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)は5以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのクリンチ側(巻上げ側)とのセパレーション発生箇所(図10のD1)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。また、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)が5未満の場合は、ビードエイペックスの先端とプライとのセパレーション発生箇所(図10のD3)におけるセパレーションを防止できない傾向がある。
【0081】
なお、図2におけるプライは前記図1のプライと同様であるが、図2に示すようにビードエイペックス4に隣接するプライ1が、ビードコア5を周回し、ビードエイペックス4のクリンチ9側の側面途中まで折り返した構造を有する場合、該プライの終端部にストリップエイペックス12が配設されていることが、ビードエイペックスとプライのクリンチ側とのセパレーション発生箇所(図10のD1)におけるセパレーションを効果的に防止できるという点から好ましい。
【0082】
図3は、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックス13および14を、ビードエイペックス4のインナーライナー6側の側面と第1プライ1の間(ストリップエイペックス13)およびクリンチ9側の側面とプライの間(ストリップエイペックス14)に配設したタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。ここで、図3におけるストリップエイペックス13は、ビードエイペックス4のインナーライナー6側に配設されており、上記の高さHを100とした場合のストリップエイペックス13の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)は5以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。また、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)が5未満の場合は、ビードエイペックスの先端とプライとのセパレーション発生箇所(図10のD3)におけるセパレーションを防止できない傾向がある。また、図4におけるストリップエイペックス14は、ビードエイペックスのクリンチ9側に配設されており、上記の高さHを100とした場合のストリップエイペックス14の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)は5以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのクリンチ側(巻上げ側)とのセパレーション発生箇所(図10のD1)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。また、先端Aからトレッド方向への高さ(h2)が5未満の場合は、ビードエイペックスの先端とプライとのセパレーション発生箇所(図10のD3)におけるセパレーションを防止できない傾向がある。
【0083】
図4は、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックス15および16を、ビードエイペックスのインナーライナー6側の側面とプライの間(ストリップエイペックス15)およびクリンチ9側の側面とプライの間(ストリップエイペックス16)に配設したタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。ここで、図4に示すストリップエイペックス15は、ビードエイペックス4のインナーライナー6側に配設されており、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向外側の先端A部分には配設されていない。また、ストリップエイペックス16は、ビードエイペックス3のクリンチ9側に配設されており、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向外側の先端A部分には配設されていない。この場合でも、ビードエイペックスとプライのクリンチ側(巻上げ側)とのセパレーション発生箇所(図10のD1)およびビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)におけるセパレーションについては防止できるため、タイヤの耐久性を向上させることができる。なお、一方のストリップエイペックスを図1または図2に示すストリップエイペックスのようにしてもよい。
【0084】
なお、図3および図4におけるプライは前記図1のプライと同様であり、また、図3および図4においてもビードエイペックスに隣接するプライの構造が、ビードコア5を周回し、ビードエイペックスのクリンチ側の側面途中まで折り返した構造を有する場合、該プライの終端部にストリップエイペックス14または16が配設されていることが、歪集中するプライの終端部をビードエイペックスに直接接着させず、歪分散できるという点から好ましい。
【0085】
本発明のビードエイペックス/プライ間ゴム層を、本発明のゴム組成物からなるストリップエイペックスとする態様の場合、前記ストリップエイペックスの平均厚さは歪緩和ができ、かつプライトッピングゴムとコードに対する接着性を向上するという点から0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。また、ストリップエイペックスの平均厚さは発熱性を抑え、操縦安定性を損なわないという点から2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。
【0086】
以上の態様は、従来のビードエイペックスにそのまま適用する態様であるが、次にビードエイペックス自体を2つ以上のパーツ(2層構造、多層構造)とし、外層を本発明のゴム組成物で形成する態様について説明する。すなわち、ビードエイペックスをビードエイペックスのタイヤ半径方向外側の先端部を含む外層とビードコア側のベース層との2層構造からなるビードエイペックスをデュアル押出し機で作成し、この外層に本発明のゴム組成物を使用する態様である(図5〜9)。
【0087】
図5〜7は、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向外側の先端Aを含み、インナーライナー6側の側面に沿って形成される外層17a〜cとビードコア側のベース層4bとの2層構造からなるビードエイペックス4とし、この外層17a〜cに本発明のゴム組成物を使用したタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。ここで、図5〜7におけるビードエイペックスの外層17a〜cは、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向の先端Aから、インナーライナー6側の側面に沿って形成されており、上記の高さHを100とした場合の外層17の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。
【0088】
図6における外層17bはビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)における層厚を厚くした場合を示す。また、図7における外層17cはビードエイペックスとプライのクリンチ側とのセパレーション発生箇所(図10のD1)における層厚を厚くした場合を示す。このように特定の箇所における外層の厚さを厚くした場合、低発熱性を悪化させることなく、厚くした箇所におけるセパレーションの発生を効果的に抑制することができる点から好ましい。
【0089】
図8は、インナーライナー6側の側面に沿って形成される外層17dとビードコア側のベース層4bとの2層構造からなるビードエイペックス4とし、この外層17dに本発明のゴム組成物を使用したタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。この外層17dは、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向外側の先端Aを含まない。この場合でも、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)におけるセパレーションについては防止できるため、タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0090】
なお、図5〜8におけるプライは前記図1のプライと同様である。
【0091】
図9は、ビードエイペックス3のタイヤ半径方向外側の先端Aを含み、インナーライナー側の側面およびクリンチ側の側面の両側面に沿って形成された外層18とビードエイペックス4をビードコア側のベース層4bとの2層構造からなるビードエイペックスとし、この外層18に本発明のゴム組成物を使用したタイヤのビード部におけるビードおよびプライの部分断面図である。ここで、図9におけるビードエイペックス4の外層19は、ビードエイペックス4のタイヤ半径方向の先端Aから、インナーライナー6側の側面およびクリンチ9側の側面の両側面に沿って形成されている。上記の高さHを100とした場合のインナーライナー6側の層の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのインナーライナー側とのセパレーション発生箇所(図10のD2)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。また、上記の高さHを100とした場合のクリンチ9側の層の先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)は40以上とすることが好ましい。先端Aからビードコア5方向への高さ(h1)が40未満の場合は、ビードエイペックスとプライのクリンチ側(巻上げ側)とのセパレーション発生箇所(図10のD1)をカバーできず、耐久性を向上させることができない傾向がある。
【0092】
なお、図9におけるプライは前記図1のプライと同様であるが、図9に示すようにビードエイペックス4に隣接するプライ1の構造が、ビードコア5を周回し、ビードエイペックス4のクリンチ9側の側面途中まで折り返した構造を有する場合、該プライの終端部にクリンチ側の側面の層が設けられていることが、ビードエイペックスとプライのクリンチ側とのセパレーション発生箇所(図10のD1)におけるセパレーションを効果的に防止できるという点から好ましい。
【0093】
本発明のビードエイペックス/プライ間ゴム層を2層構造のビードエイペックスの外層とする場合、該外層の平均厚さは歪分散およびプライコードとの接着性において優れるという点から0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。また、前記厚さは低発熱性において優れるという点から2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。
【0094】
本発明のタイヤは、本発明のブレーカー/プライ間ゴム層用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、本発明のビードエイペックス/プライ間ゴム層をビードエイペックスとして適用する場合、必要に応じて前記配合剤を含有した本発明のゴム組成物を、未加硫の段階で前述の各ストリップエイペックスの形状、にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。また、本発明のビードエイペックス/プライ間ゴム層を2層構造のビードエイペックスの外層とする場合、ビードエイペックスの外層の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて成形すること等により、未加硫タイヤを形成する。これらの未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧し、乗用車用などの通常タイヤや、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車、トラック・バス用などの高荷重タイヤ、高内圧タイヤなどを製造する。
【実施例】
【0095】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0096】
以下に実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
天然ゴム(NR):TSR20
イソプレンゴム(IR):日本ゼオン(株)製のNipol IR2200
乳化重合SBR(E−SBR):日本ゼオン(株)製のNipol 1502(スチレン単位量:23質量%)
溶液重合変性スチレンブタジエンゴム(変性S−SBR):JSR(株)製のHPR340(結合スチレン量10重量%、ビニル量42重量%、アルコキシシランでカップリングし、末端に導入)
ハイシス1,4−ポリブタジエンゴム(ハイシスBR):宇部興産(株)製のBR150B(シス−1,4結合含量:96%)
変性ブタジエンゴム(変性BR):日本ゼオン(株)製のBR1250H(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有量:250ppm)
シリカ1:ローディアジャパン(株)製のシリカZ115Gr(N2SA:115m2/g)
シリカ2:デグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
カーボンブラック1:Jiangxi Black Cat社製のCarbon black N326(N326、N2SA:78m2/g)
カーボンブラック2:OCI Company製のDush Black N219(N219、N2SA:105m2/g)
カーボンブラック3:Jiangxi Black Cat社製のCarbon Black N660(N660、N2SA:35m2/g)
カーボンブラック4:Columbian Carbon社製のStatex N121(N121、N2SA:137m2/g)
シランカップリング剤:デグサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:H&R社製のVIVATEC400(TDAEオイル)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製の老化防止剤224
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
不溶性硫黄:フレキシス社製のクリステックスOT20(純硫黄分80質量%およびオイル分20質量%含む不溶性硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
変性レゾルシン樹脂:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(化学式を以下に示す)
【化5】

(式中、Rはオクチル基である。)
メタクレゾール樹脂(1):田岡化学工業(株)製のスミカノール610(化学式を以下に示す)
【化6】

(式中、n=16〜17である)
クレゾール樹脂(2):住友ベークライト株式会社製のPR−X11061(化学式を以下に示す)

(式中、n=5〜15であり、メチル基はオルト位、メタ位、パラ位の混合物である)
ヘキサメトキシメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物:田岡化学工業(株)製のスミカノール507A(シリカとオイル35質量%含有、原料が液体のため、シリカに吸着させている)
ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物:住友化学工業(株)製のスミカノール508(シリカとオイル35質量%含有)
ヘキサメチレンテトラミン(HMT):大内新興化学工業(株)製のノクセラーH
【0097】
実施例1〜22および比較例1〜14
表1および表2に示す配合内容のうち、不溶性硫黄および加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて混練りした。得られた混練り物を180℃で排出し、これに不溶性硫黄および加硫促進剤を加え、オープンロールにて混練りし、105℃で排出することで未加硫ゴム組成物を得た。未加硫ゴム組成物を170℃、12分間加硫することにより試験片を作製し、得られた試験片を用いて以下に示す試験をおこなった。また、前記未加硫ゴム組成物を図3に示すストリップエイペックスの形状(平均厚さ:1.0mm、ストリップエイペックス13のh1:60、h2:15、ストリップエイペックス14のh1:60、h2:15)に単一ゴム押出し機を用いて成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で35分間プレス加硫し、実施例1〜17および比較例1〜16の試験用タイヤ(サイズ:225/40R18 92Y XL)を製造し、以下に示す試験をおこなった。なお、各試験用タイヤにおけるプライは図3に示す2プライ構造とし、第1プライに用いたトッピングゴム組成物における純硫黄成分のゴム成分100質量部に対する含有量は3.0質量部であり、該ゴム組成物のE*は3.5とし、また、ビードエイペックスに用いたゴム組成物における純硫黄成分のゴム成分100質量部に対する含有量は5.0質量部であり、該ゴム組成物のE*は40とした。
【0098】
実施例23および24
未加硫ゴム組成物を図5(実施例23)および図9(実施例24)に示す2層構造のビードエイペックスとなるように、ビードエイペックス配合の未加硫ゴム組成物と共に、デュアル2層押出し機を用いて成形したこと以外は、前記実施例1と同様に試験用タイヤを製造し、以下に示す試験をおこなった。
【0099】
<粘弾性試験>
作製した試験片を幅4mm、長さ40mm、厚さ2mmに切り出し、(株)岩本製作所製の粘弾性測定機にて複素弾性率(E*)および損失正接(tanδ)の粘弾性物性を測定した。測定条件は、初期歪み10%、動歪み2%、振動周波数10Hz、温度70℃とした。E*の値は4〜8MPaであることが操縦安定性および耐セパレーション性(歪分散性)において優れることを示す。また、tanδの値が小さいほど、低発熱性において優れていることを示す。
【0100】
<引張り試験(破断時伸び)>
JIS K6251に準じ、3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、試験片の破断時伸び(EB%)を測定した。破断時伸びの数値が高いほど、ゴム組成物の破断強度および耐亀裂成長性が良好であることを示す。
【0101】
<シート圧延性試験>
未加硫ゴム組成物を厚さ0.5mmのゴムシートに押し出す際の、シートの平坦性、焼け性およびエッジの凹凸性を、比較例1を100としてそれぞれ指数表示した。シート圧延性指数が高いほど、シートが平坦かつ、シートエッジがスムースで、ゴム焼けがなく加工性において良好であることを示す。
【0102】
複素弾性率(E*)、損失正接(tanδ)、破断時伸び(EB%)硬度およびシート圧延性指数の評価結果をそれぞれ表1〜5に示す。
【0103】
<ビード耐久性試験>
試験用タイヤを、JIS規格リムに最大許容内圧に対応する内圧でリム組みし、規格最大荷重の230%で荷重し、試験速度60km/時間、試験環境30℃の条件で、ドラム試験機を走行させた。ビード外観ふくれ(幅15cm程度の盛り上がり)が検知されるまで走行させ、ビード外観ふくれが検知されるまでの走行距離を、比較例1を100としてそれぞれ指数表示した。指数が大きいほどビード耐久性において良好であることを示す。
【0104】
ビード耐久性指数の評価結果を表1〜5に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
表1、表2および表3より、ジエン系ゴム、ならびに特定量の硫黄(A)、特定の樹脂(B)、HMMPMEまたはHMMMの部分縮合物(C)、シリカ(D)および特定のカーボンブラック(E)を含有する実施例では、ビード耐久性を向上させることができた。
【0111】
一方、表4および表5より、シリカ(D)を配合していない比較例1〜3では、破断時伸びおよびビード耐久性が劣ることがわかる。
【0112】
ゴム成分100質量部に対する硫黄(A)の含有量が純硫黄成分として3.0質量部である比較例4では、ビード耐久性が劣ることがわかる。
【0113】
ゴム成分100質量部に対する(C)成分の含有量が0.6質量部である比較例5では、特にビード耐久性に劣り、4.0質量部である比較例6では、特に加工性が劣ることがわかる。
【0114】
ゴム成分100質量部に対するシリカ(D)成分の含有量が2質量部である比較例7では、特にビード耐久性が劣り、35質量部である比較例8では、特に加工性が劣ることがわかる。
【0115】
特定のカーボンブラック(E)を満たさないカーボンブラックであるカーボンブラック3(N2SA:35m2/g)を含有する比較例9では、特にビード耐久性が劣り、同様にカーボンブラック4(N2SA:130m2/g)を含有する比較例11では、低発熱性、加工性およびビード耐久性が劣り、8質量部である比較例12では、特にビード耐久性が劣ることがわかる。
【0116】
シリカ(D)を含有せず、また(C)成分に替えてHMTを含有する比較例15では、ビード耐久性が劣ることがわかる。
【0117】
また、ゴム成分100質量部に対する硫黄(A)の含有量が純硫黄成分として1.3質量部、(C)成分の含有量が3.6質量部である比較例16でも、ビード耐久性において劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0118】
1 第1プライ
2 第2プライ
3 ビード
4 ビードエイペックス
4a ビードエイペックスのベース層
5 ビードコア
6 インナーライナー
7 チェーファー
8 サイドウォール
9 クリンチ
11、12、13、14、15、16 ストリップエイペックス
17a、17b、17c、17d、18 ビードエイペックスの外層
R リム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム成分100質量部に対して、
(A)硫黄を1.5〜2.9質量部、
(B)変性レゾルシン樹脂、クレゾール樹脂および変性クレゾール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を1〜4質量部、
(C)ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物またはヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物を0.7〜3質量部、
(D)シリカを5〜30質量部、および
(E)窒素吸着比表面積が38〜125m2/gのカーボンブラックを10〜55質量部含有するビードエイペックス/プライ間ゴム層用ゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴム成分が、
天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム40〜100質量%、ならびに
他のジエン系ゴム0〜60質量%を含むゴム成分である請求項1記載の用ゴム組成物。
【請求項3】
ジエン系ゴム成分が、
天然ゴムおよび/またはイソプレンゴム40〜80質量%、ならびに、
スチレンブタジエンゴム15〜60質量%および/または
ポリブタジエンゴム0〜30質量%を含むゴム成分である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
ビードエイペックス/プライ間ゴム層を有するタイヤであって、
前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、請求項1〜3記載のゴム組成物からなるタイヤ。
【請求項5】
前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、ビードエイペックスとプライとの間に設けられたストリップエイペックスであり、
前記ストリップエイペックスの平均厚さが0.5〜2.0mmである請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
ビードエイペックスがビードエイペックスのタイヤ半径方向外側の先端を含む外層とビードコア側のベース層との2層構造からなるタイヤであって、
前記ビードエイペックス/プライ間ゴム層が、前記外層であり、
該外層の平均厚さが0.2〜2.0mmである請求項4記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−224678(P2012−224678A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91326(P2011−91326)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】