説明

タイヤ用ゴム組成物並びにそれをベルトクッションに用いた空気入りタイヤ

【課題】加工性、発熱性、破断伸び及び耐熱老化性に優れたゴム組成物の提供。
【解決手段】(A)天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを少なくとも30重量部以上含むジエン系ゴム100重量部、
(B)式(I):


で表されるカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物0.5〜3重量部並びに
(C)カーボンブラック20重量部以上40重量部未満
を含んでなるタイヤ用ゴム組成物並びにそれをベルトクッションに用いた空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物並びにそれを用いた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは加工性、発熱性、破断伸び及び耐熱老化性が改良されたタイヤ用ゴム組成物並びにそれをベルトクッションに用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、ベルトクッションは空気入りタイヤのベルト及びカーカスの動きを吸収し、応力を緩和して、タイヤ走行中などのセパレーションを防止する役割を有する。そのためタイヤ走行中に大きな引張りと圧縮応力が加わり発熱しやすくなる。そのためコンパウンドの特性として、ベルトやカーカスコンパウンドよりやや小さめの硬さ、高破断伸び、低発熱、耐熱老化性、耐疲労性などの性質を満たすことが求められる。従来の方法として、シリカを配合して低発熱化する手法があるが(特許文献1参照)、これには加工性が悪化するという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平7−188461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、良好な加工性、低発熱性、高破断伸び及び耐熱老化性を高次にバランスさせたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、(A)天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを少なくとも30重量部以上含むジエン系ゴム100重量部、
(B)式(I):
【化1】

(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
で表されるカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物0.5〜3重量部並びに
(C)カーボンブラック20重量部以上40重量部未満
を含んでなるタイヤ用ゴム組成物並びにそれをベルトクッションに用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によればゴム組成物中に、カルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物を加硫促進剤として使用することで、良好な加工性、低発熱性、高破断伸び及び耐熱老化性を高次にバランスさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、前記カルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物(I)を加硫促進剤として使用することで、加工性、発熱性、破断伸び及び耐熱老化性を高次にバランスさせることに成功した。
【0008】
本発明のゴム組成物には、成分(A)として、天然ゴム(NR)及び/又はポリイソプレンゴム(IR)を少なくとも30重量部以上、好ましくは40〜90重量部を含むジエン系ゴム100重量部を配合する。このNR及び/又はIRの配合量が少ないと強度が不足するので好ましくない。本発明において使用する他のジエン系ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、具体的にはブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどをあげることができる。
【0009】
本発明によれば、前記一般式(I)のカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物を、加硫促進剤成分(B)として、ジエン系ゴム100重量部当り、0.5〜3重量部、好ましくは1.0〜2.5重量部配合する。カルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物(I)の配合量が少ないとゴムの硬度が不足するので好ましくなく、逆に多いとゴムが硬くなり過ぎて破断伸びが不足するので好ましくない。
【0010】
本発明において使用するカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物(即ち本発明のジスルフィドのアミン塩化合物)は、前記式(I)で表わされる化合物であり、その詳細は平成18年8月14日に出願の特願2006−221258号出願に記載の通りである(引用によりこの出願の内容を本明細書に組み入れるものとする)。具体的には、前記式(I)において、R1 ,R2 及びR3 は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の有機基であることができ、そのような有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ステアリル基などの鎖式炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基などの環式炭化水素基が挙げられる。それら有機基の鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい。そのような有機基の例としては、例えば、メトキシプロピル基、メトキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。R1 及びR2 は、それらが結合している窒素原子と共に、複素環基、例えばイミダゾール基、トリアゾール基、ピラゾール基、アジリジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルホリン基、チアモルホリン基等の基を形成していてもよい。R1 及びR2 がそれらが結合している窒素原子と共に複素環基を形成している場合には、さらにその複素環上に置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、例えばメチル、エチルなどのアルキル基;ブロモ、クロロなどのハロゲン基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基等が挙げられる。
【0011】
前記式(I)において、Xは、置換基を有していてもよい炭素数2〜20の、好ましくは炭素数2〜12の、鎖式炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基から選ばれる有機基である。この有機基の例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、チアゾール基、チアジアゾール基、ピルジルナフチレン基等が挙げられる。Xが鎖式炭化水素基又は脂環式炭化水素基である場合には、Xは、その炭素鎖内に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から成る群から選ばれるヘテロ原子を有していてもよく、メチル、エチルなどのアルキル基、ブロモ、クロロなどのハロゲン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基などを有してもよい。
【0012】
本発明に係るジスルフィドのアミン塩化合物(I)は、下記反応式(1)に示すように、前記式(II)で示される1つの分子にカルボン酸を有するジスルフィド化合物(式中、Xは前記定義の通りである)と前記式(III)のアミン類(式中、R1 ,R2 及びR3は前記定義の通りである)とを反応させることにより製造することができる。この反応には酸化剤や触媒などを必要とすることなく、適当な溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類など)中で式(II)及び式(III)の化合物を混合反応させることによって、製造することができる。
【0013】
【化2】

【0014】
本発明の別の態様によれば、前記ジスルフィドのアミン塩化合物(I)は、下記反応式(2)に示すように、1つの分子にカルボン酸を含有するチオール化合物(IV)とアミン(III)との反応を酸化剤の存在下で反応させることによって製造することができる。
【0015】
【化3】

【0016】
前記反応式(1)及び(2)において、アミン(III)は、ジスルフィド化合物(II)又はチオール化合物(IV)に対して、化学量論的に過剰量(例えば1.01〜1.15当量)で反応させるのが好ましい。
【0017】
前記反応式(1)において、出発原料として用いられるカルボン酸含有ジスルフィド化合物(II)の具体例としては、例えば、ジチオジグリコール酸、ジチオジプロピオン酸、ジチオサリチル酸、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)などがあげられる。一方、反応式(2)で用いられる式(IV)で表わされるチオール化合物としてはメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、チオニコチン酸などがあげられる。
【0018】
一方、上記式(III)で表されるアミンの具体例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン,ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、exo−2−アミノノルボルナン、2−メトキシエチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、テトラフルフリルアミン、モルホリン、チオモルホリン、1−メチルピペラジン、2−メチルイミダゾール、エタノールアミン、2−アミノシクロヘキサノール、ピペラジン、2−ピペラジンメタノール、2−ピペラジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどが挙げられる。
【0019】
前記反応式(2)に使用することができる酸化剤としては、特に制限はないが、次の化合物が挙げられる。塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウムなどの塩素酸塩類;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなどの過塩素酸塩類;過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウムなどの無機過酸化物;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸塩類;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩類;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩類;ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸カルシウムなどのヨウ素酸塩類;過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムなどの過マンガン酸塩類;重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウムなどの重クロム酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩類;メタ過ヨウ素酸などの過ヨウ素酸;無水クロム酸(三酸化クロム)などのクロム酸化物;二酸化鉛などの鉛酸化物;五酸化二ヨウ素などのヨウ素酸化物;亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩類;次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩類;三塩素化イソシアヌル酸などの塩素化イソシアヌル酸;ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどのペルオキソ二硫酸塩類;ペルオキソホウ酸アンモニウムなどのペルオキソホウ酸塩類;過塩素酸;過酸化水素;硝酸;フッ化塩素、三フッ化臭素、五フッ化臭素、五フッ化ヨウ素、ヨウ素などのハロゲン化化合物;エチレンジアミンテトラ酢酸銅、ニトリロトリプロピオン酸銅などの銅の水溶性キレート化合物;ジメチルスルホキシドなどの有機化合物;酸素など。酸化剤として酸素を使用する場合、酸素源として空気を用いることもできる。これらは単独で用いてもよく、危険のない限り複数を組合せて用いてもよい。これらのうち、反応が容易で効率が高い点で、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、ヨウ素、エチレンジアミンテトラ酢酸銅、ニトリロトリプロピオン酸銅および酸素が好ましい。
【0020】
前記反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの含窒素有機溶媒などがあげられる。これらの溶媒は単独または混合溶媒の形で使用しても良い。これらのうち、ジスルフィド類、チオール類とアミン類への溶解性が高く、反応生成物から取り除きやすい点から、脂肪族アルコール類、エーテル類、ケトン類が好ましい。
【0021】
前記反応の反応温度には特に限定はないが、0℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。0℃未満では反応時間が遅くなり、100℃を超える温度では生成物の望ましくない副反応が起こるおそれがある。この反応温度は、さらに好ましくは20℃〜70℃の範囲内である。
【0022】
本発明のゴム組成物において使用する加硫促進剤はカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物のみから成っていても、そのカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物に加えて当該技術分野において未加硫ゴムの加硫促進剤として一般的に使用されているものを含むものであってもよい。本発明のカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物は、当該カルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物の加硫促進作用を妨げずに所望の加硫促進効果並びに耐熱老化性の向上を達成できる限り、他の加硫促進剤の合計量に対して、任意の割合で使用することができる。
【0023】
本発明に係るゴム組成物に含めることのできる加硫剤の具体例としては、例えば、硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム、金属酸化物、及びアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明に係るゴム組成物には、他の加硫促進剤として、例えばスルフェンアミド系またはチウラム系の加硫促進剤を併用してもよく、スルフェンアミド系又はチウラム系の加硫促進剤を用いることにより、ゴム成分の加硫をさらに促進することができる。スルフェンアミド系の加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。チウラム系の加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが挙げられる。
【0025】
本発明によれは、カーボンブラックを20重量部以上40重量部未満、好ましくは25〜35重量部配合する。使用するカーボンブラックは破断物性の観点から、よう素吸着量(JIS K 6217−1に準拠して測定)が70〜140(g/kg)であるのが好ましく、DBP吸収量(JIS K6217−4に準拠して測定)が60〜180(cm3/100g)であるのが好ましい。
【0026】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラック以外の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で汎用のゴム用混練機、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて、混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0027】
本発明に係るゴム組成物は図1に模式的に示す典型的な空気入りタイヤのベルトクッションに好適に用いることができ、従来の一般的な空気入りタイヤの製造ラインにそのまま使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0029】
調製例1:ジスルフィドのアミン塩化合物Aの合成:
メタノール1000g中、ジチオサリチル酸306.4g(1mol)とシクロヘキシルアミン218.2g(2.2mol)を入れ、室温で30分反応させた。反応終了後、減圧下でメタノールを除いてからろ過し、アセトンで2回洗浄・乾燥後、下記式で示される白色粉末の化合物Aを499.2g(収率99%)得た。
【0030】
【化4】

【0031】
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ in ppm:1.0−1.3,1.5,1.7,1.9,2.9,7.1,7.2,7.5,7.8
元素分析値(%):C26H36N204S2
計算値:C,61.87;H,7.19;N,5.55;S,12.71
測定値:C,61.54;H,7.28;N,5.56;S,12.72
【0032】
標準例、実施例1〜4及び比較例1〜2
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、160℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。
【0033】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で150℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。
【0034】
ゴム物性評価試験法
加工性:JIS K 6200に準拠し、100℃におけるムーニー粘度を測定した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この数値が高いほど加工性が良いことを示す。
破断伸び:JIS 6251に準拠し、ダンベル3号型のサンプルを速度500mm/minで伸張し、20℃における破断伸長を測定した。また、80℃で96時間の老化後の破断伸張も同様に測定した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この数値が大きいほど強度が大きいことを示す。
発熱性:JIS 6394に準拠し、初期歪10%、振幅2%、周波数20Hzにて20℃におけるtan δを測定した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この数値が大きいほど発熱性が低いことを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表I脚注
※1:TSR−20
※2:ショウブラックN330(昭和キャボット(株)製)
※3:ULTRASIL VN−3G(UNITED SILICA INDUSTRIAL社製)
※4:Si−69(デグッサ社製)
※5:エキストラクト4号(昭和シェル(株)製)
※6:FLECTOL TMQ(FLEXSYS社製)
※7:銀嶺R(東邦亜鉛(株)製)
※8:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業(株)製)
※9:ノクセラー NS−P(大内新興化学工業(株)製)
※10:前記調製例1で合成した化合物A
※11:SANTOGARD PVI(FLEXSYS社製)
【0037】
表Iに示す通り、比較例1は従来のシリカ配合を示す例で、発熱性が良くなるものの、加工性が悪化するので好ましくない。これに対し、実施例1〜3は本発明の範囲内の配合で、加工性、破断伸び、耐熱老化性及び発熱性がいずれも良好であった。しかしながら、比較例2のように本発明に係る加硫促進剤が多過ぎると、破断伸びが低下するので好ましくない。実施例4は他の加硫促進剤と組み合わせた例で、これも好ましい結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上の通り、本発明に従ってカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物(I)を含む加硫促進剤を使用することによってゴム組成物の加工性、発熱性、破断伸び及び耐熱老化性を高次にバランスさせることができるので、空気入りタイヤのベルトクッションなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るゴム組成物を用いるベルトクッションを他の部位と共に模式的に示す典型的な空気入りタイヤの子午線半断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムを少なくとも30重量部以上含むジエン系ゴム100重量部、
(B)式(I):
【化1】

(式中、R1 ,R2 及びR3 は、独立に、水素又は炭素数1〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基であり、Xは炭素数2〜20のヘテロ原子及び/又は置換基を有してもよい有機基である。)
で表されるカルボン酸含有ジスルフィドのアミン塩化合物0.5〜3重量部並びに
(C)カーボンブラック20重量部以上40重量部未満
を含んでなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
カーボンブラックのよう素吸着量が70〜140(g/kg)で、DBP吸収量が60〜180(cm3/100g)である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をベルトクッションに用いた空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50450(P2008−50450A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227031(P2006−227031)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】