説明

タイヤ用ゴム組成物及びトラック・バス用タイヤ

【課題】耐オゾン性を改善でき、ゴム表面の変色(白色化、茶色化)を抑制できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたトラック・バス用タイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と、融点45〜60℃の脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び融点65〜75℃の脂肪酸多価アルコールエステル(2)の非イオン性界面活性剤とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたトラック・バス用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは走行中に発生する熱や空気中のオゾン、酸素、紫外線などによって劣化することが知られており、近年、工業化などの影響によりオゾン量は増加傾向にある。そのため、耐オゾン性を一層改善してゴムの劣化を抑制し、タイヤを長寿命化することが要求されている。
【0003】
耐オゾン性を高める方法として、老化防止剤やワックスなどを配合する方法が知られているが、かかる方法では老化防止剤及びワックスが、タイヤ表面に移行し、タイヤの美観を損ねてしまう。このような美観の悪化は、サイドウォールにおいて特に問題となるが、トレッドにおいても走行頻度が少ない車両などでは問題となる。
【0004】
特許文献1では、アミン系老化防止剤とチオウレア系老化防止剤を併用し、耐オゾン性、外観性(耐変色性)を向上したゴム組成物が開示されている。しかし、これらの性能を向上する点については、未だ改善の余地がある。また、トラック・バスなどに用いられるタイヤには、耐チップカット性などの破壊特性も重視されるが、このような性能の検討もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−62156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、耐オゾン性を改善でき、ゴム表面の変色(白色化、茶色化)を抑制できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたトラック・バス用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分と、融点45〜60℃の脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び融点65〜75℃の脂肪酸多価アルコールエステル(2)の非イオン性界面活性剤とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。ここで、上記ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が55質量%以上であることが好ましい。
【0008】
上記ゴム成分が天然ゴム又はジエン系合成ゴムを含み、該ゴム成分100質量部に対して、上記脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)の合計含有量が0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0009】
上記脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)は、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル又はトリメチロールプロパン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0010】
上記ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトラック・バス用タイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、それぞれ特定の融点を持つ脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)の非イオン性界面活性剤を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、耐オゾン性を改善でき、ゴム表面の変色(白色化、茶色化)を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、融点45〜60℃の脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び融点65〜75℃の脂肪酸多価アルコールエステル(2)の非イオン性界面活性剤とを含む。融点の異なる脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)を併用すると、ゴム成分などのポリマー基質を移動する速度がそれぞれ異なるため、耐オゾン性を相乗的に改善できる。更に、これらの併用によりゴム表面に非イオン性界面活性剤の被膜が形成されることで、老化防止剤やワックスが遮蔽され、大気に対する暴露の影響が和らげられるため、老化防止剤やワックスを使用した場合であってもゴム表面の変色(白色化、茶色化)も顕著に抑制できる。
【0014】
脂肪酸多価アルコールエステル(1)の融点は45〜60℃であるが、下限は46℃以上、上限は55℃以下であることが好ましい。45℃未満であると、ポリマー基質を移動する速度が速く、ポリマー基質での残存量が少なくなり、耐オゾン性、耐変色性を充分に改善できない傾向がある。60℃を超えると、上記エステル(2)との融点差が小さくなるため、耐オゾン性、耐変色性を充分に改善できない傾向がある。
【0015】
脂肪酸多価アルコールエステル(2)の融点は65〜75℃であるが、下限は68℃以上、上限は73℃以下であることが好ましい。65℃未満であると、上記エステル(1)との融点差が小さくなるため、耐オゾン性、耐変色性を充分に改善できない傾向がある。75℃を超えると、ポリマー基質を移動する速度が遅く、ゴム表面に被膜が形成されにくくなり、耐オゾン性、耐変色性を充分に改善できない傾向がある。
【0016】
脂肪酸多価アルコールエステル(2)の融点−脂肪酸多価アルコールエステル(1)の融点≧10℃の関係を満たすことが好ましく、≧15℃の関係を満たすことがより好ましい。また、脂肪酸多価アルコールエステル(2)の融点−脂肪酸多価アルコールエステル(1)の融点≦50℃の関係を満たすことが好ましく、≦35℃の関係を満たすことがより好ましい。上記関係を満たすことで耐オゾン性、耐変色性を改善できる。
【0017】
なお、本明細書において、融点は示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定した際のピークトップの温度である。例えば、示差走査熱量計(Thermo plus DSC8230, Rigaku製)を用い、5℃/minで昇温し、得られる融解のピークトップを融点とできる。
【0018】
脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)としては、炭素数8〜22の高級脂肪酸多価アルコールエステルが好ましい。また、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルなどを使用できる。上記エステル(1)及び(2)を構成する脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ベヘン酸などの飽和、不飽和脂肪酸が挙げられる。また、構成する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレンジオール、オクチレンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ソルビタン、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ポリオール、不飽和脂肪族ポリオールが挙げられる。
【0019】
脂肪酸多価アルコールエステル(1)を構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは14〜22、より好ましくは16〜20であり、構成する多価アルコールの炭素数は、好ましくは3〜9、より好ましくは5〜7である。一方、脂肪酸多価アルコールエステル(2)を構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは12〜20、より好ましくは14〜18であり、構成する多価アルコールの炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは4〜6である。上記の場合、良好な耐オゾン性、耐変色性が得られる。
【0020】
脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)としては、例えば、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル又はトリメチロールプロパン脂肪酸エステルなどがある。具体的な化合物としては、ソルビトール、ソルビタン、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンの前述の脂肪酸のモノ、ジ、トリ、テトラ及びそれ以上のポリエステルが挙げられる。
【0021】
良好な耐オゾン性、耐変色性が得られるという点から、脂肪酸多価アルコールエステル(1)としては、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステルがより好ましく、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジステアレートが更に好ましい。
【0022】
また、脂肪酸多価アルコールエステル(2)としては、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルが好ましく、ペンタエリスリトールジ脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールトリ脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルがより好ましく、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが更に好ましい。
【0023】
ゴム成分100質量部に対して、脂肪酸多価アルコールエステル(1)の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下である。5質量部を超えると、ゴム表面の変色を充分に抑制できないおそれがある。
【0024】
ゴム成分100質量部に対して、脂肪酸多価アルコールエステル(2)の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.1質量部未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下である。5質量部を超えると、ゴム表面の変色を充分に抑制できないおそれがある。
【0025】
ゴム成分100質量部に対して、脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)の合計含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。0.1質量部未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。10質量部を超えると、ゴム表面の変色を充分に抑制できないおそれがある。
【0026】
本発明のゴム組成物は、通常、ゴム成分として天然ゴム、ジエン系合成ゴムなどのジエン系ゴムを含む。ジエン系合成ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。なかでも、耐チップカット性に優れるという理由から、NRが好ましく、NR及びBRの併用がより好ましい。
【0027】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0028】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。55質量%未満であると、耐チップカット性が低下する傾向がある。該含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。90質量%を超えると、耐オゾン性が悪化する傾向がある。
【0029】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、耐オゾン性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。45質量%を超えると、充分な耐チップカット性が得られないおそれがある。
【0030】
NR及びBRを併用する場合、ゴム成分100質量%中のNR及びBRの合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。70質量%未満であると、充分な耐チップカット性、低発熱性が得られないおそれがある。
【0031】
本発明のゴム組成物は、通常、カーボンブラックを含む。これにより、ゴムの強度を向上させることができる。
【0032】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは20m/g以上、より好ましくは30m/g以上である。20m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは180m/g以下、より好ましくは160m/g以下である。180m/gを超えると、発熱が増大し、転がり抵抗が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
【0033】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、破壊強度が低下し、充分な耐チップカット性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。100質量部を超えると、転がり抵抗が悪化する傾向がある。
【0034】
本発明のゴム組成物は、通常、老化防止剤を含む。老化防止剤としては特に限定されず、例えば、ナフチルアミン系、キノリン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、ヒドロキノン誘導体、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系)、チオビスフェノール系、ベンゾイミダゾール系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系老化防止剤などが挙げられる。
【0035】
ナフチルアミン系老化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルドール−α−トリメチル1,2−ナフチルアミンなどが挙げられる。
【0036】
キノリン系老化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
【0037】
ジフェニルアミン系老化防止剤としては、p−イソプロポキシジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0038】
p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0039】
ヒドロキノン誘導体老化防止剤としては、2,5−ジ−(tert−アミル)ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンなどが挙げられる。
【0040】
フェノール系老化防止剤に関し、モノフェノール系老化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、ブチルヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノールなどが挙げられる。ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系老化防止剤としては、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0041】
チオビスフェノール系老化防止剤としては、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−チオビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)などが挙げられる。ベンゾイミダゾール系老化防止剤としては、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。チオウレア系老化防止剤としては、トリブチルチオウレアなどが挙げられる。亜リン酸系老化防止剤としては、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。有機チオ酸系老化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリルなどが挙げられる。
【0042】
なかでも、耐オゾン性を顕著に改善できるという点から、p−フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0043】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。該含有量は、好ましくは7質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
【0044】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。これにより、耐オゾン性を向上できる。
【0045】
ワックスとしては、パラフィン系ワックスなどの石油系ワックスや、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ジャパンワックス、ウルシロウ、サトウキビロウ、パームロウなどの植物性ワックスなどがあげられる。なかでも、優れた耐オゾン性が得られるという理由から、石油系ワックスが好ましく、パラフィン系ワックスがより好ましい。
【0046】
ゴム成分100質量部に対して、ワックスの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5量部以上である。0.1質量部未満では、ワックスの含有量が少なすぎて有効な膜を形成できないおそれがある。該含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。5質量部を超えると、ゴム表面の変色を充分に抑制できないおそれがある。
【0047】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
【0048】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下であり、オイルを含まなくてもよい。これにより、充分なゴム強度が得られ、本発明の効果を良好に得られる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの混練機で前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。本発明のゴム組成物は、トレッドなどのタイヤ部材に使用でき、トラック・バス用タイヤのトレッドに好適に使用できる。
【0050】
本発明のトラック・バス用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0051】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製BR150B
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックE(N550)(NSA:41m/g)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:日油(株)製の椿
界面活性剤A:東京化成工業(株)製のソルビタンモノステアレート(融点:52℃)
界面活性剤B:花王(株)製のペンタエリスリトールテトラパルミテート(融点:67〜72℃)
界面活性剤C:東京化成工業(株)製のペンタエリスリトールジステアレート(融点:72℃)
界面活性剤D:花王(株)製のソルビタンモノパルミテート(融点:46℃)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のオゾエース0355(パラフィン系)
硫黄(不溶性硫黄):日本乾溜工業(株)製のセイミサルファー(二硫化炭素による不溶分60%、オイル分10%)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
【0053】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た(工程1)。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た(工程2)。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物(試験片)を得た。
【0054】
得られた加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(変色)
試験片(長さ150mm×幅150mm×厚み2.0mm)を60℃に温度調節したギアーオーブン中に入れて30日間放置し、その後、試験片の表面を目視により観察して、下記の基準で変色を評価した。
5:変色なし
4:若干変色
3:変色部位が全体の半分未満
2:変色部位が全体の半分以上
1:全面的に変色
【0056】
(耐オゾン性)
JIS K6259に準拠し、試験片(長さ60mm×幅10mm×厚み2.0mm)を30%伸張させ、オゾン濃度50pphmにて24時間放置させる静的オゾン劣化試験を行った(雰囲気温度40℃)。また、同JIS規格に準拠し、オゾン濃度50pphm、雰囲気温度40℃にて、24時間、0〜20%で往復運動伸長させて動的オゾン劣化試験を行った。試験後のクラックの発生状態を目視により観察し、比較例1を100として、耐オゾン性をそれぞれ指数表示した。指数が大きいほど耐オゾン性に優れることを示す。
【0057】
(耐チップカット性)
上記加硫ゴム組成物を用いて3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、ゴム強度(TB×EB)を算出した。比較例1の耐チップカット性を100とし、下記計算式により、各配合の耐チップカット性を指数表示した。指数が大きいほど、耐チップカット性に優れることを示す。
(耐チップカット性指数)=(各配合のTB×EB)/(比較例1のTB×EB)×100
【0058】
【表1】

【0059】
表1から、融点の異なる2種の脂肪酸多価アルコールエステルを使用した実施例は、耐オゾン性を顕著に改善でき、ゴム表面の変色(白色化、茶色化)を抑制できた。一方、比較例は、実施例に比べて性能が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、融点45〜60℃の脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び融点65〜75℃の脂肪酸多価アルコールエステル(2)の非イオン性界面活性剤とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が55質量%以上である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分が天然ゴム又はジエン系合成ゴムを含み、
該ゴム成分100質量部に対して、前記脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)の合計含有量が0.1〜10質量部である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸多価アルコールエステル(1)及び(2)は、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル又はトリメチロールプロパン脂肪酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトラック・バス用タイヤ。

【公開番号】特開2012−149146(P2012−149146A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8089(P2011−8089)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】