説明

タイヤ騒音試験方法

【課題】室内評価による加速時タイヤ騒音試験方法を提供する。
【解決手段】ドラム4を一定速度で回転させ回転軸6をドラム4を超える回転速度で回転させたときの第1の騒音レベルを計測する工程と、ドラム4を一定速度で回転させ回転軸6をドラム4の回転速度で回転させたときの第2の騒音レベルを計測する工程と、ドラム4を一定速度で回転させタイヤ3をドラム4の回転に追従させて回転させたときの第3の騒音レベルを計測する工程と、第1の騒音レベルに基づく音圧レベルと第2の騒音レベルに基づく音圧レベルの差分に第3の騒音レベルに基づく音圧レベルを加算する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ騒音試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両加速時に発生する加速騒音の測定において、全開加速時では、エンジン及びトランスミッションを主とした車両本体からの騒音が支配的であって、タイヤ騒音が加速騒音全体に寄与する割合は20%〜40%程度である。しかしながら、エンジンの負荷が軽度である緩加速時では、タイヤが発する騒音の方が支配的で、タイヤが加速騒音全体に寄与する割合は、車種にもよるが、60%〜80%にも達する。このため、今まで以上に、加速時での静粛性が高いタイヤの開発が求められている。
【0003】
静粛性が高いタイヤの開発においては、タイヤが発する騒音を測定するタイヤ騒音試験が不可欠である。タイヤ騒音試験には、実車を走行させて計測したデータを評価して騒音値を算出する実車評価と、特許文献1に開示されているような、室内においてドラム状の擬似路面上でタイヤを回転させて計測したデータを評価して騒音値を算出する室内評価とがある。
【0004】
このうち、実車評価は、実際に車両を走行させて計測したデータを評価して騒音値を算出するものであるから、算出される騒音値は、他の評価方法による騒音値に比して、より実態に即している。しかしながら、実車評価で計測したデータには、エンジンやトランスミッション等のタイヤ以外から発生する車両騒音の影響が含まれていることから、タイヤから発生する騒音を確認するためには、車両騒音の影響を除外しタイヤ騒音を算出する必要がある。
【0005】
また、実車を走らせる広大な試験場を確保するのは容易ではないし、試験場が確保できても、屋外ゆえに試験の実施は天候に左右されやすい。
【0006】
そのため、車両騒音の影響を考慮する必要がなく、実車評価に比して短時間で計測を完了でき、広大な試験場が不要であり、屋外の天候に関係なく実施できる室内評価が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−55649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、室内評価は、一定速度で車両が進行している場合の騒音である惰行騒音を計測する惰行試験では種々の評価方法が開発されているが、加速時にタイヤから生じる騒音である加速時タイヤ騒音を計測する試験では評価方法が確立されていなかったという問題があった。
【0009】
室内評価では、上述の惰行騒音に、加速時に増加する騒音成分である加速増分量を加算することによって加速時タイヤ騒音を算出できるとされている。しかしながら、急加速時及び緩加速時では、加速増分量について実車評価での結果と室内評価での結果とを相関させる方法が確立されていなかったため、実走行の結果とも整合する室内評価による加速時タイヤ騒音の計測は実現できていなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、加速時タイヤ騒音を高精度に計測できる室内評価によるタイヤ騒音試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のタイヤ騒音試験方法は、床面に設けられ、タイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、前記ドラムとの接触による前記タイヤの回転とは別に、前記タイヤの回転軸を介して前記タイヤを回転させる回転手段と、回転された前記タイヤから発生する騒音レベルを測定するために配置される第1の測音手段及び第2の測音手段とを有するタイヤ騒音試験装置を用いたタイヤ騒音試験方法であって、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第1の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第2の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を回転させず、前記タイヤの回転軸を空転させ、前記タイヤを前記ドラムの回転に追従させて回転させたときのタイヤから発生する第3の騒音を前記第2の測音手段により複数位置で計測する工程と、前記第1の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第1の音圧レベルを算出する工程と、前記第2の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第2の音圧レベルと第1のオーバーオール値とを算出する工程と、前記第3の複数位置での騒音の平均値を算出し、該平均値を周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第3の音圧レベルと第2のオーバーオール値とを算出する工程と、前記第1の音圧レベルと前記第2の音圧レベル、第1のオーバーオール値、第3の音圧レベル、及び第2のオーバーオール値を使用し、加速時タイヤ騒音の各周波数成分を算出し、加速時タイヤ騒音のオーバーオール値を算出する工程と、を備えている。また、第1の音圧レベルを測定する際の前記ドラムの回転速度と前記回転手段の回転速度は、タイヤに発生する前後力が、実車加速騒音試験で実車のタイヤに発生する前後力相当の力になるように調整する。
【0012】
また、請求項2に記載の発明のタイヤ騒音試験方法のように、床面に設けられ、タイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、前記ドラムとの接触による前記タイヤの回転とは別に、前記タイヤの回転軸を介して前記タイヤを回転させる回転手段と、回転された前記タイヤから発生する音圧レベルを測定するために配置される第1の測音手段及び第2の測音手段とを有するタイヤ騒音試験装置を用いたタイヤ騒音試験方法であって、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第1の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第2の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を回転させず、前記タイヤの回転軸を空転させ、前記タイヤを前記ドラムの回転に追従させて回転させたときのタイヤから発生する第3の騒音を前記第2の測音手段により複数位置で計測する工程と、前記第1の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルであるLFreq=i_加速_駆動力負荷を算出する工程と、前記第2の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルであるLFreq=i_加速_駆動力=0とオーバーオール値であるOA加速_駆動力=0とを算出する工程と、前記第3の複数位置での騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルの平均値であるLFreq=i_惰行とオーバーオール値の平均値であるOA惰行とを算出する工程と、前記LFreq=i_加速_駆動力負荷 、前記LFreq=i_加速_駆動力=0、前記OA加速_駆動力=0、前記LFreq=i_惰行及び前記OA惰行を以下の式(2)に代入して、加速時タイヤ騒音の各周波数成分であるLFreq=i_加速を算出する工程と、を備える。
【0013】
【数1】

【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のタイヤ騒音試験方法によれば、加速時タイヤ騒音を高精度に計測できる室内評価によるタイヤ騒音試験方法を提供することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態のタイヤ騒音試験装置における第1のマイクの配置を示す平面図である。
【図3】本実施の形態のタイヤ騒音試験装置における第2のマイクの配置を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験方法によって測定された結果と実車試験結果の関係グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験で使用するタイヤ騒音試験装置を示す。
本実施の形態に係るタイヤ騒音試験で使用するタイヤ騒音試験装置10は、床面Fに設けられ、回転手段であるドラム用モーター12によって回転し、当該回転によってドラム表面5に接触しているタイヤ3を回転させるドラム4と、ドラム4との接触によるタイヤ3の回転とは別に、タイヤの回転軸6を介してタイヤ3を回転させる回転手段であるタイヤ用モーター13と、回転されたタイヤ3から発生する音を測定するために配置される第1のマイク1及び第2のマイク2と、床面Fの一部分に音を吸収する吸音部材11と、実車でタイヤに加重される重力方向の力をタイヤ3に加えるため、タイヤの回転軸6を介してタイヤ3をドラム4に押圧する押圧手段(図示せず)と、ドラム用モーター12及びタイヤ用モーター13の各々の回転の有無及び回転速度並びに押圧手段を制御する制御部14と、タイヤ3の回転数及びドラム4の回転数等をモニターし制御部14への指示を入力する操作用PC(パーソナルコンピュータ)15と、第1のマイク1及び第2のマイク2が計測した騒音を電気信号に変換する騒音計器16と、該変換された電気信号を収録して該電気信号について周波数分析等の処理を制御部14を介した操作用PC15の指示に基づいて実行し、該処理の過程及び該処理の結果を表示・出力するための騒音計測用PC17と、を有する。
また、本実施の形態に係るタイヤ騒音試験で使用するタイヤ騒音試験装置10はドラム用モーター12及びタイヤ用モーター13から生じるノイズを遮断するために、吸音部材18が貼られた壁19が第1のマイク1及び第2のマイク2が設けられている側と、ドラム用モーター12及びタイヤ用モーター13との間に設けられている。
【0017】
後述する第1の騒音レベル及び第2の騒音レベル計測時に使用するドラム上の路面は路面Aとし、後述する第3の騒音レベル計測時に使用するドラム上の路面は路面Bとし、いずれの路面も、実車試験での実路と粗さ、吸音率などの規格が近いことが望ましい。また、前記路面Aと前記路面Bは、同一路面であっても、異なる路面であってもよい。
【0018】
第1の騒音レベル及び第2の騒音レベルの計測では第1のマイク1を使用し、第3の騒音レベルの計測では第2のマイクを使用する。ここで図2は、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置における第1のマイクの配置を示す平面図である。この図2に示すように、第1のマイク1は、図2中の矢印で示した方向にタイヤ3が回転し、タイヤ3がドラムから蹴り出される側の斜め後ろの位置、実車に見立てた場合であれば前進している車両の斜め後方に相当する位置に設置される。本実施の形態では、タイヤ3の中心から1m離れ、かつタイヤ3の赤道面7に対して45度の位置であるMBにドラム表面5からの高さを0.25m程度にして第1のマイク1を設置した。このMB以外にもタイヤ3の赤道面7に対して90度の位置であるMA、またはタイヤ3の赤道面7の延長方向であるMBに第1のマイク1を設置してもよく、さらには前記第1の騒音レベルと前記第2の騒音レベルから実車加速時の騒音に相当する音圧レベルが算出可能となる位置であれば、MAからMB、MCに至るタイヤ3の中心から1m離れた位置及びドラム表面5からの高さ0.25m程度であってもよいし、それ以外の位置でもよい。
【0019】
図3は、本実施の形態のタイヤ騒音試験装置における第2のマイクの配置を示す平面図であり、第2のマイク2がどのように配置されるかを示したものである。
【0020】
実車評価では、マイクを試験走路の傍らに固定し、試験走路を通過する実車の騒音レベルを測定しているので、第2のマイク2を用いて室内評価で実車評価と相関する騒音レベルを測定するには、タイヤ騒音試験装置上で回転しているタイヤ3の赤道面7に平行な位置の複数箇所に第2のマイク2を設置して各々の位置で騒音レベルを測定する必要がある。
【0021】
第2のマイク2は複数本使用し、タイヤから発生する騒音を計測可能な複数の位置の各々に固定してもよいが、本実施の形態では、第2のマイク2をタイヤ3の赤道面7から平行な位置であり、かつタイヤ3の前後方向例えば2mの区間における複数K箇所の位置に移動させ、それぞれの位置で騒音レベルを測定することにより、複数のマイクを異なる位置に配置して騒音レベルを測定した場合と同様の結果を得た。
【0022】
本実施の形態では、具体的には、第2のマイク2を図示しない移動機構で例えば4cm刻みに移動させて、都合51箇所の各位置で騒音レベルを測定している。
【0023】
また、タイヤ3の赤道面7から第2のマイク2までの回転軸6と平行な距離は1m程度であり、ドラム表面5からの第2のマイク2の高さは0.25m程度である。なお、この距離及び高さの値は一例であり、上記で説明した値に限定されない。
【0024】
K箇所の位置で騒音レベルを測定した場合、K個の騒音レベルP〜P(dB(A))が測定される。これらK個の騒音レベルP〜P(dB(A))の平均値を以下の式(1)を用いて算出し、算出された平均値を評価値とすることにより、マイクを試験走路の傍らに固定し、試験走路を通過する実車惰行騒音の騒音レベルを測定する実車評価の結果に近似した騒音レベルを取得する。
【数2】

【0025】
実車加速騒音試験においてアクセル全開で車両を走行させたとき、当該車両のタイヤ接地面には、車両進行方向の向きに「前後力相当の力」が発生する。
【0026】
この「前後力相当の力」がタイヤに加重されると、惰行時と比べて音圧レベルが増加することが判明しており、騒音スペクトルとしては、一般的に惰行騒音のスペクトルに対して高周波の音圧レベルが増加する。
【0027】
そこで、室内評価においては、ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転を上回る回転速度で回転させることにより、惰行時と比べて音圧レベルの増加する状況を再現できる。
【0028】
また、「車両加速時にタイヤから生じる騒音である加速時タイヤ騒音」は、「惰行時に発生する惰行騒音の騒音レベル」と、「加速時に惰行時と比べて増加する騒音成分である加速増分量」とで構成されている。
【0029】
本試験方法では、「加速時に増加する騒音成分である加速増分量」は、「実車加速騒音試験で実車のタイヤに発生する前後力相当の力を室内試験でタイヤに負荷したときの騒音レベル」と、「前後力をタイヤに負荷しないときの騒音レベル」の差分から算出する。
【0030】
「実車加速騒音試験で実車のタイヤに発生する前後力相当の力を室内試験でタイヤに負荷したときの騒音レベル」は、上記のように、ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転を上回る回転速度で回転させることにより測定した騒音レベルから算出できる。
【0031】
また、「前後力をタイヤに負荷しないときの騒音レベル」は、ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転速度で回転させることにより計測した騒音レベルから算出でき、上記「実車加速騒音試験で実車のタイヤに発生する前後力相当の力を室内試験でタイヤに負荷したときの騒音レベル」との差分が「加速時に増加する騒音成分である加速増分量」となる。
【0032】
なお、上記において、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13の回転方向は、ドラム4の回転によってタイヤ3が回転する方向と同一である。
【0033】
この「加速時に増加する騒音成分である加速増分量」に、「惰行時に発生する惰行騒音の騒音レベル」を加算することにより、「加速時にタイヤから発生する騒音である加速時タイヤ騒音」が原則として算出できる。
【0034】
「惰行時に発生する惰行騒音の騒音レベル」は、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13は回転させず、ドラム4を一定速度で回転させ、タイヤの回転軸6は空転させて、タイヤ3をドラム4の回転に追従させて回転させて測定した騒音レベルから算出できる。
【0035】
以上より、本実施の形態に係るタイヤ騒音試験方法では、タイヤの回転軸を回転させるタイヤ用モーター13の回転速度を変化させて、以下の3種類の騒音レベルを測定する。
【0036】
(1)ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときの第1の騒音レベル。
【0037】
(2)ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転速度で回転させたときの第2の騒音レベル。
【0038】
(3)タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13は回転させず、ドラム4を一定速度で回転させ、タイヤの回転軸6は空転させて、タイヤ3をドラム4の回転に追従させて回転させたときの第3の騒音レベル。
【0039】
上記(1)の場合の、ドラム4の回転速度と、タイヤの回転軸6を回転させるタイヤ用モーター13の回転速度は、実験を通じて統計的に決定される。
【0040】
上記(2)の場合、ドラム4の回転速度と、タイヤの回転軸6を回転させるタイヤ用モーター13の回転速度は、上記(1)のドラム4の回転速度と一致させる。
【0041】
上記(1)〜(3)のいずれの場合も、押圧手段によって、実車試験でタイヤに負荷される重力方向の力をタイヤに加重している。
【0042】
また、上記(3)での第3の騒音レベルの測定は、上記のように、第2のマイク2をタイヤ3の前後方向2mの区間で移動させ、都合K箇所の位置で騒音レベルを測定する。測定によって得られたK個の騒音レベルP〜P(dB(A))を上記式(1)に代入して平均値を算出し、算出された平均値を評価値とする。
【0043】
なお、上記(3)の場合に測定される第3の騒音レベルは、実車での惰行騒音との対応が良好であることが、これまでの試験結果で保証されている。
【0044】
次に、図4を参照しながら、本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験方法の手順について説明する。ここで、図4は、本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験方法のフローチャートである。
【0045】
まず、ステップ4011において、上記(1)で述べた、ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときの第1の騒音レベルを計測する。
【0046】
続いて、ステップ4012において、上記(2)で述べた、ドラム4を一定速度で回転させ、ドラム4の回転とは別に、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13をドラム4の一定速度の回転速度で回転させたときの第2の騒音レベルを計測する。
【0047】
ステップ4021において、ステップ4011で計測した第1の騒音レベルを周波数分析し、その周波数分析した結果から各周波数成分(LFreq=i_加速_駆動力負荷)を算出する。
【0048】
ステップ4022において、ステップ4012で計測した第2の騒音レベルを周波数分析し、その周波数分析した結果からオーバーオール値(OA加速_駆動力=0)と各周波数成分(LFreq=i_加速_駆動力=0)を算出する。
【0049】
続いて、上記(3)の場合の計測に係る手順を行う。まず、ステップ4031では、タイヤの回転軸6のタイヤ用モーター13は回転させず、ドラム4を一定速度で回転させ、タイヤの回転軸6は空転させて、タイヤ3をドラム4の回転に追従させて回転させたときの複数位置での第3の騒音レベルを計測し、ステップ4032において、上記式(1)を用いて算出した第3の騒音レベルの平均値の各周波数成分(LFreq=i_惰行)とオーバーオール値(OA惰行)を算出する。
【0050】
また、上記(3)で計測された、OA惰行は、実車の惰行騒音との対応が良好であるから、実車での惰行時の騒音との相関が保証されているものとする。
【0051】
なお、図4に示した、ステップ4011、4012及び4031は試験順を選ばない。
【0052】
ステップ4041では、ステップ4021〜4022並びにステップ4032で算出したLFreq=i_加速_駆動力負荷 、LFreq=i_加速_駆動力=0、OA加速_駆動力=0、LFreq=i_惰行及びOA惰行を以下の式(2)に代入して、加速時タイヤ騒音の各周波数成分であるLFreq=i_加速を算出して、LFreq=i_加速を使用し、加速時タイヤ騒音のオーバーオール値を算出することで、本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験を終了する。
【0053】
【数3】

【0054】
上記の式(2)によって算出された、本発明の実施の形態に係るタイヤ騒音試験方法によって測定された結果と実車試験結果の関係グラフを図5に示す。
【0055】
この図5において、横軸は室内評価による加速時タイヤ騒音のオーバーオール値であり、縦軸は実車評価による加速時タイヤ騒音のオーバーオール値である。実車評価による加速時タイヤ騒音のオーバーオール値と、室内評価による加速時タイヤ騒音のオーバーオール値との標準誤差は0.51dB(A)であり高精度に実車評価による加速時タイヤ騒音を予測可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0056】
1 第1のマイク
2 第2のマイク
3 タイヤ
4 ドラム
5 ドラム表面
6 回転軸
7 赤道面
10 タイヤ騒音試験装置
11 吸音部材
12 ドラム用モーター
13 タイヤ用モーター
14 制御部
15 操作用PC
16 騒音計器
17 騒音計測用PC
18 吸音部材
19 壁
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設けられ、タイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、前記ドラムとの接触による前記タイヤの回転とは別に、前記タイヤの回転軸を介して前記タイヤを回転させる回転手段と、回転された前記タイヤから発生する騒音レベルを測定するために配置される第1の測音手段及び第2の測音手段とを有するタイヤ騒音試験装置を用いたタイヤ騒音試験方法であって、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第1の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第2の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を回転させず、前記タイヤの回転軸を空転させ、前記タイヤを前記ドラムの回転に追従させて回転させたときのタイヤから発生する第3の騒音を前記第2の測音手段により複数位置で計測する工程と、前記第1の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第1の音圧レベルを算出する工程と、前記第2の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第2の音圧レベルと第1のオーバーオール値とを算出する工程と、前記第3の複数位置での騒音の平均値を算出し、該平均値を周波数分析した結果の各周波数バンドに対する第3の音圧レベルと第2のオーバーオール値とを算出する工程と、前記第1の音圧レベルと前記第2の音圧レベル、第1のオーバーオール値、第3の音圧レベル、及び第2のオーバーオール値を使用し、加速時タイヤ騒音の各周波数成分を算出し、加速時タイヤ騒音のオーバーオール値を算出する工程と、を備えることを特徴とするタイヤ騒音試験方法。
【請求項2】
床面に設けられ、タイヤを外周面に接触させて回転させるドラムと、前記ドラムとの接触による前記タイヤの回転とは別に、前記タイヤの回転軸を介して前記タイヤを回転させる回転手段と、回転された前記タイヤから発生する音圧レベルを測定するために配置される第1の測音手段及び第2の測音手段とを有するタイヤ騒音試験装置を用いたタイヤ騒音試験方法であって、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転を上回る回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第1の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を前記ドラムの該一定速度の回転速度で回転させたときのタイヤから発生する第2の騒音を前記第1の測音手段により計測する工程と、前記ドラムを一定速度で回転させ、前記回転手段を回転させず、前記タイヤの回転軸を空転させ、前記タイヤを前記ドラムの回転に追従させて回転させたときのタイヤから発生する第3の騒音を前記第2の測音手段により複数位置で計測する工程と、前記第1の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルであるLFreq=i_加速_駆動力負荷を算出する工程と、前記第2の騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルであるLFreq=i_加速_駆動力=0とオーバーオール値であるOA加速_駆動力=0とを算出する工程と、前記第3の複数位置での騒音を、周波数分析した結果の各周波数バンドに対する音圧レベルの平均値であるLFreq=i_惰行とオーバーオール値の平均値であるOA惰行とを算出する工程と、前記LFreq=i_加速_駆動力負荷 、前記LFreq=i_加速_駆動力=0、前記OA加速_駆動力=0、前記LFreq=i_惰行及び前記OA惰行を以下の式(2)に代入して、加速時タイヤ騒音の各周波数成分であるLFreq=i_加速を算出する工程と、を備えることを特徴とするタイヤ騒音試験方法。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145421(P2012−145421A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3430(P2011−3430)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】