説明

タグシステム

【課題】質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小可能とする。
【解決手段】質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応した種類別しきい値(タイプA用のVthA又はタイプB用のVthB)以上のときにのみ、タグ1の制御部12がRF回路部11を制御して応答信号を送信させる。故に、リーダ/ライタ2から送信する質問信号の種類(タイプA又はタイプB)を変更することにより、送信電力を調整しなくても実質的に質問信号の受信可能範囲を拡大あるいは縮小することができる。その結果、質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ/ライタとタグとからなるタグシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リーダ/ライタ(質問器)とタグ(IDタグ、あるいはデータキャリア若しくは応答器とも呼ばれる)とからなるタグシステムが種々の分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1又は特許文献2には、タグが記憶している識別情報を非接触のデータ通信によってリーダ/ライタが取得し、取得した識別情報に基づいて、リーダ/ライタ(あるいはリーダ/ライタに接続されている上位装置)がタグを携帯している人が所定の建屋又は部屋に入ったか否かを検知するタグシステムが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−350861号公報
【特許文献2】特開2009−205205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、リーダ/ライタから送信する質問信号の受信範囲が人の存在を検知する検知範囲となるが、検知範囲を拡大あるいは縮小しようとすれば、質問信号(電波)の送信電力を調整しなければならなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小することができるタグシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、電波を媒体として質問信号を送信するリーダ/ライタと、人に対応付けられた固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を電波を媒体として送信するタグとを備え、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が所定の建屋又は部屋に入ったか否かを検知するタグシステムにおいて、リーダ/ライタは、質問信号を送信するとともに応答信号を受信する送受信手段と、複数種類の質問信号のうちの1種類を択一的に選択して設定する設定手段と、設定手段で設定される1種類の質問信号を送受信手段に送信させるとともに、送受信手段で受信する応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が所定の建屋又は部屋に入ったか否かを検知する制御手段とを具備し、タグは、質問信号を受信するとともに応答信号を送信する送受信手段と、送受信手段で受信する電波の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、送受信手段を制御して質問信号を受信するとともに応答信号を送信させる制御手段とを具備し、タグの制御手段は、信号レベル検出手段で検出する信号レベルが第1のしきい値以上のときにのみ、送受信手段に質問信号を受信させるとともに、受信した質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応して決められている種類別しきい値以上であれば送受信手段に応答信号を送信させ、受信した質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応して決められている種類別しきい値未満であれば送受信手段に応答信号を送信させないことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応した種類別しきい値以上のときにのみ、タグの制御手段が送受信手段を制御して応答信号を送信させるので、リーダ/ライタから送信する質問信号の種類を変更することにより、送信電力を調整しなくても実質的に質問信号の受信可能範囲を拡大あるいは縮小することができる。その結果、質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上の動作説明用のタイムチャートである。
【図3】同上の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のタグシステムは、図1に示すように人(所定の建屋又は部屋への進入が許可されている人。以下同じ。)に携帯される1乃至複数のタグ1と、対象領域(所定の建屋又は部屋。以下同じ。)に設置される1乃至複数のリーダ/ライタ2とを備えている。
【0012】
タグ1は、放射電磁波(UHF帯の電波)を送信並びに受信するためのアンテナ10及びRF回路部11と、RF回路部11を制御する制御部12と、後述する種類別しきい値を記憶した種類別しきい値記憶部13と、RF回路部11並びに制御部12に電源を供給する電池14とを具備している。尚、制御部12は固有の識別符号(ID)を内蔵メモリ(図示しない)に記憶している。
【0013】
リーダ/ライタ2は、放射電磁波(UHF帯の電波)を送信並びに受信するためのアンテナ20及びRF回路部21と、RF回路部21を制御する制御部22と、タグ1に割り当てられている識別符号(ID)と人との対応関係を記憶したメモリ部23と、複数種類の質問信号のうちの1種類を択一的に選択して設定する設定部24と、各部に電源を供給する電源部25とを具備している。メモリ部23に記憶する対応関係は、複数の人に個別に割り当てられる識別コードと、それぞれの人が携帯するタグ1の識別符号(ID)とを一対一に対応付けたものである。尚、電源部24は電池であってもよいし、商用交流電源から供給される交流電源を直流電源に変換する電源回路であってもよい。
【0014】
質問信号にはタイプAとタイプBの2種類があり、例えば、質問信号のフレームフォーマットにおけるデータフィールドの先頭に種類判別用のフラグが立っていればタイプA、当該フラグが立っていなければタイプBと判別できるようにしている。
【0015】
設定部24は、例えば、ディップスイッチからなり、タイプAとタイプBの2種類の質問信号のうちの一方を択一的に選択して設定するものである。つまり、リーダ/ライタ2の制御部22は、設定部24でタイプAに設定されていれば種類判別用のフラグを立てた質問信号をRF回路部21から送信させ、反対に設定部24でタイプBに設定されていれば種類判別用のフラグを立てない質問信号をRF回路部21から送信させるのである。
【0016】
一方、タグ1の種類別しきい値記憶部13にはタイプAの質問信号に対応したタイプA用のしきい値VthAと、タイプBの質問信号に対応したタイプB用のしきい値VthBとが記憶されている。但し、これら2種類のしきい値VthA,VthBは何れも電波の受信チェック(キャリアセンス)のためのしきい値(起動用しきい値)Vthよりも大きく、且つタイプB用のしきい値VthBがタイプA用のしきい値VthAよりも大きい値に設定されている(Vth<VthA<VthB)。
【0017】
次に、図2のタイムチャート並びに図3のフローチャートを参照して本実施形態の動作を説明する。尚、図2における2つの質問信号は各々異なるリーダ/ライタ2から送信されるものであって、一方(上段)の質問信号がタイプA、他方(下段)の質問信号がタイプBに設定されている。また、図3のフローチャートはタグ1の制御部12が行う処理を示している。
【0018】
タグ1の制御部12は、内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔Tsを繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔Tsのカウントが完了する毎にRF回路部11を起動して所望の電波(リーダ/ライタ2が送信した電波<質問信号>)が受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちにRF回路部11を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減し、電池13の長寿命化を図っている。なお、電波の受信チェックは、RF回路部11から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部12が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
【0019】
すなわち、制御部12はRF回路部11からRSSI信号を受け取ると(図3のステップS1)と、当該RSSI信号の信号レベルを起動用しきい値Vthと比較し(図3のステップS2)、RSSI信号の信号レベルが起動用しきい値Vth以上であれば、引き続きRF回路部11で質問信号を受信するが、RSSI信号の信号レベルが起動用しきい値Vth未満であれば、RF回路部11を停止して待機状態に移行させる。
【0020】
RSSI信号の信号レベルが起動用しきい値Vth以上の場合、制御部12は、RF回路部11で受信した質問信号の種類判別用のフラグを読み取り(図3のステップS3)、このフラグに基づいて当該質問信号の種類(タイプA又はタイプB)を判別する(図3のステップS4〜S5)。さらに制御部12は、質問信号がタイプAであれば当該質問信号の信号レベル(RSSI信号の信号レベル)を種類別しきい値記憶部13に記憶しているタイプA用のしきい値VthAと比較し(図3のステップS6)、信号レベルがタイプA用のしきい値VthA以上であれば応答処理(応答信号の返信)を実行するが(図3のステップS7)、信号レベルがタイプA用のしきい値VthA未満であれば応答処理を実行せずにRF回路部11を停止して待機状態に移行する(図3のステップS2)。同様に、制御部12は、質問信号がタイプBであれば当該質問信号の信号レベル(RSSI信号の信号レベル)を種類別しきい値記憶部13に記憶しているタイプB用のしきい値VthBと比較し(図3のステップS8)、信号レベルがタイプB用のしきい値VthB以上であれば応答処理を実行するが(図3のステップS9)、信号レベルがタイプB用のしきい値VthB未満であれば応答処理を実行せずにRF回路部11を停止して待機状態に移行する(図3のステップS2)。
【0021】
而して、図2のタイムチャートではタイプAの質問信号の信号レベルがタイプA用のしきい値VthA以上であるために応答処理が実行されるが、タイプBの質問信号の信号レベルはタイプB用のしきい値VthB未満であるために応答処理が実行されないので、タグ1の制御部12がタイプBの質問信号に対して応答処理を実行するためには、タイプBの質問信号の信号レベルがタイプB用のしきい値VthB以上となる距離までタグ1をタイプBの質問信号を送信するリーダ/ライタ2に近付ける必要がある。つまり、タイプBの質問信号の受信可能範囲(タイプBの質問信号を送信するリーダ/ライタ2の検知範囲)は、タイプAの質問信号の受信可能範囲(タイプAの質問信号を送信するリーダ/ライタ2の検知範囲)よりも狭くなる。このとき、リーダ/ライタ2から送信される質問信号の送信電力は質問信号の種類が違っても共通(一定)である。
【0022】
上述のように本実施形態によれば、質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応した種類別しきい値(タイプA用のVthA又はタイプB用のVthB)以上のときにのみ、タグ1の制御部12がRF回路部11を制御して応答信号を送信させるので、リーダ/ライタ2から送信する質問信号の種類(タイプA又はタイプB)を変更することにより、送信電力を調整しなくても実質的に質問信号の受信可能範囲を拡大あるいは縮小することができ、その結果、質問信号の送信電力を調整すること無しに人の検知範囲を容易に拡大及び縮小することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 タグ
2 リーダ/ライタ
11 RF回路部
12 制御部
13 種類別しきい値記憶部
21 RF回路部
22 制御部
24 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を媒体として質問信号を送信するリーダ/ライタと、人に対応付けられた固有の識別情報を有し、前記質問信号を受信したときに当該識別情報を含む応答信号を電波を媒体として送信するタグとを備え、タグから送信される応答信号をリーダ/ライタで受信し、当該応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が所定の建屋又は部屋に入ったか否かを検知するタグシステムにおいて、
リーダ/ライタは、質問信号を送信するとともに応答信号を受信する送受信手段と、複数種類の質問信号のうちの1種類を択一的に選択して設定する設定手段と、設定手段で設定される1種類の質問信号を送受信手段に送信させるとともに、送受信手段で受信する応答信号に含まれる識別情報に基づいて当該タグを携帯する人が所定の建屋又は部屋に入ったか否かを検知する制御手段とを具備し、
タグは、質問信号を受信するとともに応答信号を送信する送受信手段と、送受信手段で受信する電波の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、送受信手段を制御して質問信号を受信するとともに応答信号を送信させる制御手段とを具備し、
タグの制御手段は、信号レベル検出手段で検出する信号レベルが第1のしきい値以上のときにのみ、送受信手段に質問信号を受信させるとともに、受信した質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応して決められている種類別しきい値以上であれば送受信手段に応答信号を送信させ、受信した質問信号の信号レベルが当該質問信号の種類に対応して決められている種類別しきい値未満であれば送受信手段に応答信号を送信させないことを特徴とするタグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108038(P2011−108038A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263193(P2009−263193)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】