説明

タッチセンシング出力デバイス

タッチセンサ入力機能を有するデバイスであって、共通面内に第1と第2の制御電極を有する。デバイスは少なくとも2つのモード、第1と第2の制御電極に印加される制御信号の影響下で帯電粒子の動きを制御することにより、光透過特性を変化させる第1のモードと、第1と第2のピクセル制御電極が、検出対象が近くにあることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合される第2のモードとで動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチセンシング出力デバイスに、例えばタッチセンシングディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチ入力を検出する手段としてのキャパシタンスセンシングの利用は周知であり、目下発展中の主題である。
【0003】
スペクトルのより高度な機能側にあるアプリケーションは、アップルのiPhoneにより提供される高解像度機能であり、低機能側にあるのは、照明などの家電製品を操作するための簡単なオン・オフタッチセンサである。
【0004】
これらのキャパシタンスセンシングシステムのすべての中心にあるのは、入力「スイッチ」として設計されたセンスキャパシタを測定する検出システムである。各スイッチは、表面がそのスイッチの検知エリアに対応する、フラットな導体パッドとして設計されている。このセンスキャパシタの値は、ユーザの指や入力スタイラスの大きさ(proximity)に依存するように、設計されている。ユーザの指がスイッチに十分近くなるとすぐに、キャパシタンスの変化が閾値に達し、それがトリガーとなって、システムの変化が起きる。
【0005】
おそらくまだ周知というほどではないが、面内電気泳動(IPEP)ディスプレイ効果がある。これは、オイルセル中に浮遊させた有色色素でタグをつけた、又は固体顔料の粒子を、ピクセルの2つの領域間で動かすものである。オープンピクセル状態では、粒子はすべてピクセル内の小さなパッドに移動し、離れたところから見ているユーザには小さな黒い点として見える。透明なオイルによりピクセルは、この小さな黒い点とピクセル壁を除いて、ほとんど透明になる。クローズドピクセル状態では、有色粒子はピクセルの全面にわたってひろがり、ピクセルはその粒子中の色素により決まる色を反映する。グレイスケール透過率や混色も可能であり、多くの潜在的なディスプレイや「隠しパネル(hiding panel)」のアプリケーションに使える。この表示効果では、帯電有色粒子を、電場を用いて動かすものであり、このプロセスは「電気泳動」と呼ばれる。
【0006】
ディスプレイにタッチベースセンサ入力を付け加えるいろいろな方法が知られている。キャパシタンスベースのタッチセンシングへの優勢なアプローチには、ディスプレイ効果の少し前に配置された透明電極を用いて構成される入力スイッチのキャパシタンスの測定がある。これはオーバーレイスクリーンの使用が必要である。この方法では、タッチ入力の測定のため、このオーバーレイスクリーンの表面にキャパシタンス測定電極のアレイを分散させる。この電極は、透明にするために薄いITO(indium-tin-oxide)レイヤよりなり、そのためユーザはキャパシタンス測定電極の背後にあるディスプレイを見ることができる。ITO電極を利用するときの問題は、ITO電極は透過率が95%であるが、ディスプレイの明るさが低下し、電力が無駄になることである。
【0007】
ディスプレイのバックパネルにタッチ入力センサを組み込む方法も知られている。場合によっては、パネル内に配置したフォトダイオードへのバックライトパワーの小さい反射の変化を測定して、タッチ入力イベントを推測する。フォトダイオードは反射信号を継続的にモニターし、指が表面にタッチするとすぐに、反射率の変化により閾値がトリガーされ、その場所における「タッチ」イベントが特定される。この方法の問題は、フォトダイオードとその読み出し電極に必要な面積のためにピクセル開口が犠牲になり、ディスプレイの明るさが低下することである。
【0008】
さらに別の集積タッチ測定方法では、ディスプレイのバックプレーンにある2つのピクセル内電極間のキャパシタンスをモニターする。これらの電極間のキャパシタンスは、カバーグラスに物理的に取り付けられ、ディスプレイセル(一般的には液晶)まで伸びるバンプの対応するものからの離間による影響を受ける。ディスプレイにタッチすると、それは局所的に変形し、バンプと電極との間のギャップの変化によりキャパシタンスが変化し、「タッチ」イベントがトリガーされる。各ピクセルに1つのバンプを配置することにより、ピクセルスケールの解像度を実現できる。しかし、ピクセル開口は「バンプ」とそのキャパシタンスモニター電極とのために犠牲になり、ディスプレイの明るさが低下し、パワーが無駄になる。
【0009】
本発明は、ディスプレイの明るさを低下させずに、ディスプレイセルにタッチ入力検知を組み込むことを目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、タッチセンサ入力機能を有する出力デバイスを提供する。該デバイスは、前記デバイスの光透過特性を制御する、共通基板上の共通面内にある少なくとも第1と第2の制御電極と、前記共通基板上にあるレイヤ内の浮遊帯電粒子とを有する。前記デバイスは少なくとも2つのモード、前記第1と第2の制御電極に印加される制御信号の影響下で前記帯電粒子の動きを制御することにより、前記光透過特性を変化させる第1のモードと、第1と第2のピクセル制御電極が、検出対象が近くにあることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合される第2のモードとで動作可能である。
【0011】
本発明は、あるIPEP効果の場合において、IPEPのディスプレイ効果を変更する粒子はそのデバイス面に平行な電場により動かされるとの認識に基づく。
【0012】
本発明は、電極を好適にデザインすると、光透過(すなわちディスプレイ)効果を駆動し、タッチ入力キャパシタンス検知にも用いることができるとの認識に基づく。レイヤを追加する必要がないことに加え、大きな利点が得られ、それにはシステムの駆動の複雑性が低下し、製造の複雑性が低下することが含まれる。
【0013】
いくつかの面内スイッチングデザインによりグラウンド面は無くせる。これはタッチセンシング構成の感度がグラウンド面があっても妨げられないことを意味する。しかし、グラウンド面を有するデザインでは、グラウンド面をタッチセンサ回路の一部として用いて、異なるキャパシタンス検知を実施することができる。
【0014】
動作は2つのフェーズで行う。駆動フェーズでは、電極により発生する電場が粒子を依然と同様に動かす。キャパシティブタッチセンシングフェーズ中に、電極間のキャパシタンスを又はグラウンド面に対するキャパシタンス差を測定するが、このキャパシティブタッチセンシングフェーズに切り換えることにより、タッチ入力を検知する。これらの2つのフェーズは順次的であってもよいが、同時に行うように組み合わせることもできる。
【0015】
本デバイスは、前記共通基板上に配置されたディスプレイピクセルの複数の行と列よりなる配列を有する電気泳動パッシブ又はアクティブマトリックスディスプレイデバイスを有し、各ピクセルは第1と第2の制御電極と不要得帯電粒子とを有する。
【0016】
本発明のシステムは、ディスプレイの上に追加的なタッチセンサハードウェアを必要とするシステムと比較して表示の明るさが明るくなり、パワーの無駄が減る。駆動電極と検知電極を統合することにより、製造上の利点もある。
【0017】
好ましくは、絶縁カバーレイヤが前記帯電粒子レイヤ上に設けられる。特に、帯電粒子レイヤとユーザに提示されるデバイス表面との間には電極構造はない。つまり、制御電極により発生する電気力線は、デバイス上の自由空間に延在できる。このように、前記第2のモードにおいて、前記第1と第2の制御電極間の電気力線が前記カバーレイヤを越えて延在する。
【0018】
時分割多重方式で前記第1と第2のモード間の切り換えを制御する制御回路を設けることができる。これにより、複数の動作モードが得られる。前記制御回路は、前記第1のモードにおいて前記制御電極にDC制御電圧を印加し、前記第2のモードにおいて前記制御電極の間にパルス状の又はACの検知電圧を印加することができる。
【0019】
別の構成では、前記第2のモードのパルス状又はAC検知電圧に前記第1のモードのDCオフセットを重畳した制御電圧を、前記制御電極に印加する制御回路を設け、前記第1と第2のモードを同時に実施する。
【0020】
第2のモードでは、検出したキャパシタンス変化は、第1と第2の電極間のキャパシタンス、又は各電極とグラウンドとの間のキャパシタンスに関するものである。
【0021】
後者のオプションはマトリックスアレイで実施できる。指の在否を判断しそのx、y座標を決定するために、各行と列の負荷キャパシタンスを測定することにより。
【0022】
本発明は、出力デバイスの光透過特性を制御し、前記出力デバイスを用いてタッチセンサ機能を実現する方法も提供する。前記出力デバイスは、前記デバイスの光透過特性を制御する、共通基板上の共通面内にある少なくとも第1と第2の制御電極と、前記共通基板上にあるレイヤ内の浮遊帯電粒子とを有し、前記方法は、第1のモードにおいて、前記第1と第2の制御電極に印加される制御信号の影響下で前記帯電粒子の動きを制御することにより、前記光透過特性を変化させる段階と、第2のモードにおいて、第1と第2のピクセル制御電極を、検出対象が近くにあることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合する段階とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付した図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図1(a)】典型的なディスプレイの断面を示す図である。
【図1(b)】図1(a)の設計においてタッチセンサ電極により発生する電気力線を示す図である。
【図2】既知のディスプレイデザインを示す図である。これは、本発明による機能するために好適な制御システムにより修正できる。
【図3】セルが五角形のIPEPディスプレイの動作を示す平面図(上図)と断面図(下図)である。
【図4A】指が無いときに、センスモードにおけるディスプレイ駆動電極からの電気力線を示す図である。
【図4B】指が在るときに、センスモードにおけるディスプレイ駆動電極からの電気力線を示す図である。
【図5】両方のフェーズで動作するのに適した回路の一例を示す図である。
【図6】DCオフセットを有するパルスキャパシティブセンス信号を発生する、より高度なアプローチを示す図である。
【図7】図6を参照して説明したアプローチを実施するより完全な駆動回路を示す図である。
【図8】本発明をピクセルの行と列のマトリックスにいかに適用できるかを示す図である。
【図9】第2の既知のディスプレイデザインを示す図である。これは、本発明による機能するために好適な制御システムにより修正できる。
【図10】本発明による図9のデバイスの動作を示す図である。
【図11】利用可能な別のキャパシタンスセンシングアプローチを説明するための図である。
【図12】パネル機能を隠すことも実施できることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初にディスプレイデバイスに関して本発明を説明するが、言うまでもなく本発明はより一般的に光透過特性が可変な他のデバイスに適用できる。
【0025】
既存の一般的なディスプレイでは、特に液晶(LC)、有機LED(OLED)、及び既存のほとんどの電気泳動ディスプレイ技術では、キャパシタンスタッチ測定電極のアレイをディスプレイの前表面から話しておく必要があるのは、その前表面上に連続したグラウンドプレーンがあるからである。
【0026】
これは図1に示した。図1(a)は、グラウンドプレーン10がLCセル12に重なっている典型的なディスプレイの断面を示す。カラーフィルタレイヤを14で示し、カバーガラスを16で示した。バックライト18からの光はディスプレイピクセルにより変調される。
【0027】
カバーガラス上にはキャパシティブベースのタッチセンシティブレイヤ20が設けられ、追加の透明(ITO)電極22が使われている。
【0028】
図1(b)は、図1(a)の設計においてタッチセンサ電極により発生する電気力線30を示している。電極とグラウンドプレーンの間の間隔は大きくなくてはならないので、近くに指が来るとこれらの電気力線は遮断される。対照的に、ディスプレイ電極(図示せず)により生成される電気力線はグラウンドプレーンで終端され、指までは届かない。
【0029】
グラウンドプレーンはすべての一般的なディスプレイ効果で本来備わっているもの(inherent)である。いくつかの例では、強さを変調する必要がある電場は、ディスプレイ面に直交(垂直)な方向にかかる。既知の電気泳動ディスプレイにはグラウンドプレーンを用いるものもあり、それは電気泳動で駆動される粒子がディスプレイ面に垂直な方向に動き、駆動電場はディスプレイ面に直交する方向になければならないからである。
【0030】
キャパシタンスモニター電極がディスプレイグラウンド面に近すぎると、ディスプレイグラウンド面がシールドとして機能し、キャパシタンスモニター電極からこのグラウンド面まで放射するキャパシタンス検知信号を押しのけ、それによりキャパシタンスモニタータッチスクリーンが有効に動作できなくなる。その結果、すべての一般的なディスプレイ効果にはグラウンド面があるので、そのグラウンド面とキャパシタンスモニター電極アレイとの間を近づけるには限界がある。実際、検知動作の場合、典型的なフィールドフリンジジオメトリ(field-fringing geometries)のため、グラウンド面と検知電極との間の間隔(Z1)は、「タッチ」イベントをトリガーする点におけるグラウンド面と指との間の最小間隔(Z2)より大きいことが必要である。そのため、例えば、700μmのカバーガラスレイヤの前表面にタッチしている指を、そのカバーガラスの反対側の電極を用いて検出するには、この反対側はディスプレイのグラウンド面の前少なくとも700μmのところになければならない。
【0031】
ディスプレイグラウンド面があるため、それにより、光学的効果を駆動するのと同じ電極をタッチ入力キャパシティブ検知電極として用いることができないと考えられる。これはグラウンド面がスクリーンとして機能するという前述の説明の帰結である。残念ながら、ディスプレイのグラウンド面は、ディスプレイをアセンブルする都合上、その前表面にないとならない。そのため、すべての一般的なディスプレイ効果では、タッチ入力キャパシティブセンシング電極はグラウンド面の前にあり、離れていなければならない。もしタッチセンシティブ電極がグラウンド面の後に配置されていると、その検知電気力線は単純にこのグラウンドで終端されるだろう。
【0032】
結論として、連続したグラウンド面を有するディスプレイ効果は、LC、OLED、及び既存の電気泳動ディスプレイ(SiPixやEインクなど)などのすべての一般的効果を含むが、その駆動電極をキャパシティブタッチセンシング電極として再利用できない。その結果、タッチセンサは別のレイヤとして用いられ、図1(a)に示したように、ディスプレイのカラーフィルタプレートの前表面に配置されることが多い。
【0033】
本発明は、ディスプレイ効果を発生するのに用いられる電極をタッチセンシングの提供に用いることができるディスプレイデザインを提供するものである。本発明は、いくつかの態様では、グラウンド面を用いないディスプレイデバイスに関する。本発明は、別の態様では、ディスプレイのグラウンド面をタッチセンシング回路内で有効に用いる。
【0034】
特に、本発明は、キャパシタンスベースのタッチセンサを面内電気泳動(IPEP)ディスプレイ効果と一体化するものである。ディスプレイの各ピクセルは、共通面内にある少なくとも第1と第2のピクセル制御電極と、共通基板に重なるレイヤ内の荷電粒子サスペンション(suspension of charged particles)とを有する。本発明では、デバイスは、ノーマルディスプレイモードとセンシングモードとを含む少なくとも2つのモードで動作可能である。センシングモードでは、第1と第2のピクセル制御電極は、検出するオブジェクトが近くに来ることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合されている。
【0035】
このように本発明では、キャパシティブタッチセンシングをIPEPディスプレイ効果と統合し、ディスプレイ駆動電極をタッチセンシング電極として用いる。一態様では、本発明は、IPEPディスプレイ効果のいくつかの実施形態(「横移動だけのIPEPディスプレイ」と呼ぶ)にはグラウンド面が無いので、このタイプのセンシングの統合が可能であるとの気づきに基づく。実際、これらは補完的な技術である。本発明の主要な利点は、ディスプレイの明るさが高くなり、そのためパワーの無駄が少なくなることである。別の利点は、現在のところキャパシティブタッチセンサを作るのに用いられている壊れやすいITO電極を無くすことにより、インターラクティブディスプレイを、フレキシビリティや強さ(increased robustness)が必要なアプリケーションで使えることである。この問題は、フレキシブルディスプレイで特に深刻である。上述の通り、キャパシティブ電極がディスプレイ表面上に無ければならず、そこでの曲げ半径が最大となり、歪みが最大となるからである。駆動電極と検知電極を統合することにより、製造上の利点もある。他の態様では、本発明は、タッチセンシングを、面内スイッチングと縦方向の粒子位置の制御とを組み合わせたディスプレイとを統合する。
【0036】
横運動だけのIPEPディスプレイでは、粒子は、ディスプレイ面と並行な方向に、電場により動く。そのため、電極は、ディスプレイ面に平行な電場を発生するように配置すればよい。そのため、連続した「グラウンド面」は不要である。
【0037】
図2を参照して、横運動だけのIPEPディスプレイ効果の動作を詳細に説明する。図2は既知のディスプレイデザインを示しているが、本発明により機能させるために、好適な制御システムにより修正できる。
【0038】
このタイプの典型的なIPEPディスプレイピクセルセルでは、名目的には、各セルのベースに配置された2つの電極40、42がある。各セルはセル壁44により画定され、セル壁44は着色粒子が他の電極に広がるのを防いでいる。
【0039】
図2は、セルが四角形であるIPEPディスプレイ効果の動作を示し、ピクセルが「開いている」ディスプレイの断面(上図)と、ピクセルが「閉じている」ディスプレイの断面(中図)と、セルの平面図(下図)である。
【0040】
図2のセルデザインでは、セルの一端に沿って1つの電極40が走っており、そのセルの平行短に沿って他の電極42が走っている。ディスプレイの利用(反射、透過、又は純粋な光変調)に応じて、セルの後にはレイヤ46があり、これはバックライト、反射パターン、または透明レイヤである。カバーレイヤ16はガラスなどの絶縁体であり、グラウンド面電極は必要ない。
【0041】
中図は、電気力線48を示し、その電気力線48がカバーレイヤ16を通ることを示している。
【0042】
下図は、荷電粒子50が、印加された電圧に応じて異なる位置の間でどう動くかを示している。
【0043】
図3は、セルが五角形である、横移動だけのIPEPディスプレイの動作(上図)と、ピクセルが「閉じた(closing)」ディスプレイの断面(下図)を示す。
【0044】
図3のセルデザインでは、各セルの中心に電極42があり、他の電極40はセルの周囲を囲んでいる。
【0045】
本発明は両方のデザインに適用でき、その他の多くのデザインに適用できる。確かに、ピクセルごとに2つの電極のみを使うのは、ただの一例である。もっと複雑な駆動スキームでは、より多くの電極を用いて応答速度を上げることができる。1つのピクセルのみを描いたが、本発明はもちろん、ピクセル電極への接続が行と列の標準的なフォーマットで構成されたピクセルセルジオメトリにも、不規則なピクセルセルジオメトリにも、適用可能である。これらの手段(measures)は当業者には周知である。本発明を、少なくとも2つの電極を有し、それをキャパシタンスセンシング機能に用いるディスプレイを構成するピクセルについて説明する。本発明は、近くに指が来たことを判断するために2つの電極の間のキャパシタンスを測定する場合について説明するが、ピクセル電極と外部のグラウンドとの間のキャパシタンスを測定する測定方法にも適用可能である。さらに例を挙げる。
【0046】
電極の上で大幅な電場のシールドが起こらなければ、具体的な電極の構成やノーマルディスプレイ駆動に必要な駆動スキームでは本発明の適用可能性は変わらない。
【0047】
「駆動」フェーズにおいて、2つの電極40、42の間にDC電位差を印加し、その結果できるディスプレイ面に平行な電場成分により荷電着色粒子が電気泳動により駆動される。これはディスプレイ効果の通常動作である。
【0048】
本発明では、これらの電極間のキャパシタンスを測定する、別の「検知」フェーズがある。第1と第2のピクセル制御電極は、検知対象が近くに来ることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合される。
【0049】
図4Aは、指が無い場合に、センスモードにおけるディスプレイ駆動電極40、42からの電気力線52を示す。図4Bは、指がある場合に、センスモードにおけるディスプレイ駆動電極からの電気力線52を示す。
【0050】
制御回路54は、キャパシタンス検知手段56と、ノーマルディスプレイ駆動電圧を印加する駆動手段58として示されている。回路54はモード間の切替をこれらの回路間の切替により行う。
【0051】
検知フェーズはグラウンドが近くにあると、より具体的には、ユーザの指や入力スタイラスがディスプレイの前面近くにあると、影響を受ける。図4Aと図4Bには、それぞれ指がディスプレイの前面にタッチしている場合としていない場合における、X−Z平面における電場パターンを示した。IPEPディスプレイ効果にはグラウンド面は必要ないので、セル内の電極間に電場が印加されると、電場の一部は垂直方向成分を有し、それが図示したようにディスプレイカバーガラスの前面を貫通する。
【0052】
その結果、指でディスプレイの前面にタッチすると、一方の電極プレートに印加されたチャージがその指により部分的にグラウンドにそれるので、電極間のキャパシタンスが変化する。この作用により、電気力線がディスプレイセルを貫通し、カバーガラスを貫通する。合理的な近似の範囲で、電気力線の横方向(X又はY)のセパレーションがカバーガラスの前面までの距離より大きければ、多くの電気力線がカバーガラスを貫通する。これにより、図4AではX1>Z1となる。
【0053】
もちろん、特定の電極パターンを用い、セルサンドイッチ中の材料とその誘電率をうまく選択すれば、さらに最適化することも可能である。かかる最適化は当業者には周知である。留意点として、既存のデザインでは、ピクセルサイズは典型的には700μm×700μmであり、カバーガラスの厚みも700μmであり、上記の条件は満たされ、修正無しに感度のよいタッチセンシングが可能である。
【0054】
タッチに対する感度は下がるが、X1/Z1の比率が1より大幅に小さいタッチ入力セルデザインも可能である。この効果が機能することを示すため、総ディスプレイ面積が約25mm×25mmのIPEPパネルを例として解析した。このディスプレイの全幅にわたる平行な互いに入り込んだ電極のストリップとして構成した、面積が約4mm×25mmのセグメントを駆動した。
【0055】
電極間スペーシング(X1)は100μmであり、電極幅は100μmであり、電極からディスプレイの前面までの全距離(Z1)は160μmであった。このとき、X1/Z1比率は100/160=0.625であり、タッチイベントは容易に検出可能である。この最適化していないテストセットアップを用いて、標準的な実験用キャパシタンスメータを用いてキャパシタンスを測定した結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
タッチ入力検知のためにまったく最適化されていないセルデザインにおいて、約8%のキャパシタンス変化が測定された。その結果として、セルデザインを改良すれば変化がもっと大きくなることが期待できる。それにもかかわらず、約8%の変化は、パネルに直接電気的に接続された市販のキャパシティブタッチ検知ICを用いて容易に検出できる。
【0058】
上記の説明では、システムが動作する2つのフェーズ(駆動フェーズと検知フェーズ)を説明した。ディスプレイを駆動するのと同じ電極を、タッチ検知電極としても用いる。
【0059】
可能性のある駆動スキームの例をここでより詳細に説明する。しかし、本発明は、検知フェーズにおける特定のキャパシタンス測定手法の使用には依存しない。例として、パルス波形を用いたチャージ検出によるキャパシタンス測定を仮定する。このアプローチでは、送信電極にパルス電圧を印加し、関連する受信電極におけるチャージの変調を検出する。受信電極におけるチャージ変調量は、2つの電極間のキャパシタンスに依存し、指が近くに在るか否か(proximity of the finger)に依存する。検知フェーズにおける粒子のネットの移動を回避するために、駆動信号はAC結合されていなければならないが、上記の通り、もっと複雑な駆動スキームであってもよい。
【0060】
両方のフェーズを行う好適な回路図を図5に示した。図5は、駆動及び検知フェーズにおけるIPEPディスプレイ効果の時分割多重(TDM)駆動のタイミング図と回路図である。
【0061】
この回路はTDM方式で動作し、1つのタイムスロット60がディスプレイ中の粒子の駆動に割り当てられ、その後のタイムスロット62が電極間キャパシタンスの検知に割り当てられている。
【0062】
この回路は、従来のDC電圧源58とパルス電圧源66とを選択するスイッチ構成64を有する。2つの可能な構成を図5に示した。
【0063】
スイッチ64の動作により、駆動フェーズにおいて、DC電圧をセルに印加する。キャパシタンス検知フェーズにおいて、このDC電圧を切断し、別のパルス検知電圧をセルの一方の電極に印加する。
【0064】
一例では、セルの他方の電極は、チャージセンシティブ(トランスインピーダンス)アンプ68に接続される。これは検知目的で電流を測定するものである。このアンプの仮想アースにより、その電極における電圧は一定に保たれる。
【0065】
他の例70では、他方の電極を、チャージが蓄積されるスイッチドストレージ(switched storage)キャパシタCintegに接続する。この例では、パルス方形波源を2つの電極の一方に印加した時に、2つのピクセル電極間で移動する電荷量を決定することにより、電極間キャパシタンスを測定する。ストレージキャパシタCintegは、方形波源66の1つ以上のサイクル時間にわたり移動した電荷を蓄積する。信号のインテグリティを改善するため、蓄積(integration)は1サイクルより長い時間にわたり行う必要がある。この場合、スイッチS1とS2は、充電によりCintegにかかる電圧(Vintegで示した)が一方向に(正方向または負方向に)増えるように、Cintegへの接続を同期させる必要がある。パルス源66の正方向電圧遷移の間に、スイッチは例えばポジションAにあり、Vintegを正方向に増加させる。パルス源66の負方向遷移の間に、パルス源66からの基準信号により、スイッチはポジションBにされ、Vintegは正方向に上昇し続け、ネット電圧が上昇する。パルス源66からの所定数のサイクルのサンプリングに続き、電圧Vintegを測定し、回路による(図示せず)次の電極間キャパシタンスサンプリング期間62の前にCintegを放電する。
【0066】
Cintegへの蓄積による電圧は、移動した電荷量を表し、電極間キャパシタンスを表す。
【0067】
簡略化したデザインでは、1サイクルだけの後に電圧Vintegを測定するが、長いサンプリング時間62をかけてパルス源66の多くのサイクルにわたってサンプリングすることにより、感度を高くできる。当業者には明らかだが、電極間キャパシタンスを測定する代替的な方法はたくさんあり、これはそのうちの1つである。また、当業者には明らかだが、電極間キャパシタンスを測定する上記の手法の代替的手法は、同様の手法を用いて、どちらかのピクセル電極と外界のグラウンドとの間のキャパシタンスを測定することである。
【0068】
両方のアプローチにおいて、ディスプレイ駆動時間はタッチ検知時間のために犠牲になる。
【0069】
センシングに必要な時間的オーバーヘッドは、タッチ入力を検出しなければならない頻度に依存する。例えば、駆動時間の検知時間に対する比率が10:1の場合、ディスプレイが光学的状態を変更するのに必要な時間にはほとんど影響しないだろう。
【0070】
しかし、図6に示した、もっと高度な駆動スキームでは、DCオフセットを有するパルスキャパシティブ検知信号を用いる。
【0071】
図6は、加算アンプ76を用いて、DC駆動電圧Vdcとパルスキャパシタンス検知電圧72とを加算する回路図と波形とを示す図である。出力74は(図5の)電極の一方に供給され、DCオフセットを有する。
【0072】
駆動信号のネットDC値は、ディスプレイを駆動するのに必要なDC値と等しく、キャパシタンスをモニターしている間に、着色粒子も移動する。そのさい、検知フェーズには追加的時間的オーバーヘッドは必要ない。
【0073】
検知時間オーバーヘッドを回避する、より完全な駆動回路を図7に示した。
【0074】
図7は、駆動フェーズと検知フェーズが合成されたIPEPディスプレイの動作を示す回路図と波形図を示している。時刻t0で「入力された」VDC電圧波形に示したトランジェントパルスは、ディスプレイ駆動電圧の変化中に生じる。ロックイン方法を用いて連続動作を行わせる。
【0075】
このように、このアプローチでは、駆動と検知は同時に起こる。図6に示したように、DC駆動信号は加算アンプ76を用いてパルス検知信号と加算され、この加算アンプ76が送信電極を駆動する。受信電極は、セルの一電極の電圧を既知の基準電圧に保つために、トランスインピーダンスアンプ68の仮想接地入力に接続されている。トランスインピーダンスアンプの出力は、振幅が駆動電極と検知電極の間のキャパシタンスに依存するパルス信号である。この信号の振幅は、例えばロックイン手法を用いて決定でき、指が近くに在るか否かを示す。
【0076】
この他の、より最適化されたスイッチドキャパシタチャージヌリング(switched-capacitor charge-nulling)手法を用いて、信号振幅を決定でき、当業者には周知である。
【0077】
再度、簡略化したデザインでは、キャパシタンス測定に必要なパルスは1つだけである。
【0078】
1つの電極について駆動スキームを説明したが、同様に電極のアレイを駆動することもできる。電極のレイアウトに応じて、タッチセンシング電極のキャパシタンスは、マトリックス状の1つ以上のピクセルのグループに対してサンプリングされ、このキャパシタンスは図8に示したように連続する行で測定され、またはキャパシタンスを順次測定できるカスタム電極レイアウトに対してサンプリングされる。ディスプレイ電極が規則的な行と列のマトリックスに配置されているとき、タッチイベントの位置を示すために、各行と各列の間のキャパシタンスは連続した行で測定できる。
【0079】
図8に示したように、行と列のピクセルはグループ80で配置できる。
【0080】
キャパシタンスセンシングは、面内電極を用いた分析に基づき、一般的に、これらの電極は行電極と列電極を含む。タッチセンシングは、セルの変形には依存せず、ディスプレイの近くの電場パターンの変化に依存するので、物理的接触は必要としない。この目的において、電気力線はユーザに向かって出るようにデザインされ、投影キャパシタンス検出アプローチを用いる。ディスプレイの構造は、必要なら完全に硬いものであってもよいが、フレキシブルディスプレイも実施できる。
【0081】
上記の実施形態はグラウンド電極が無い面内ディスプレイデザインに基づく。いわゆる「ハイブリッド」電気泳動ディスプレイでは、電気泳動ディスプレイの面内運動は、横方向の粒子の運動と組み合わせることができる。このタイプのディスプレイは(上記の例のように)面内電極を有するが、追加的にグラウンド面を用いて、より多くのピクセルディスプレイ状態を提供する。このように、本発明の他の一態様は、このハイブリッドディスプレイデザインをタッチセンシング機能と組み合わせ、同じ電極を用いる。
【0082】
ハイブリッド電気泳動ディスプレイは排他的に面内でも排他的に面外でもない。純粋な面内電気泳動及び面外電気泳動と比較して、この構成には多くの利点がある。面外電気泳動とは異なり、ハイブリッド電気泳動は透明状態を提供する。透明状態は(スタッキングができるので)明るいフルカラーに必須であり、ウィンドウや隠蔽(hiding)が関連するすべてのアプリケーションにも、及び発光体を含むほとんどのアプリケーションにも必要である。また、ハイブリッドアプローチは組み込みグレイスケールも提供する。組み込みとは、グレイスケールが駆動電源へのポテンシャルの印加のみに依存することを意味する。複雑な駆動スキームは必要ない。面内電気泳動と比較して、ハイブリッド電気泳動は、レイアウトが簡単であり、製造/アライメント、駆動の要件が低く、(粒子が動く必要のある距離が短いため)切替時間が潜在的に短い。
【0083】
図9を用いて、かかるハイブリッドディスプレイの機能のしかたを説明する。画像の各列は、上面図(画像の上段)、側面図(画像の中断)、及び顕微鏡画像(画像の下段)である。
【0084】
ディスプレイはセル90に分割されている。図示した例では、各セルは4つの面内制御電極を有し、2つの制御信号で制御されている。電極92の1つのペアは、1つの駆動信号により制御され、電極94のインターリーブされたペアは、他の駆動信号により制御されている。セルの(垂直の)逆側にはグラウンド電極96がある。
【0085】
セルは、透明媒体中に吸光粒子(absorbing particles)を有する。
【0086】
ブラック状態(列A)では、粒子はセル内に一様に分布していて、すべての電極はグラウンド電位にある。
【0087】
第1のグレイ状態(列B)では、すべての粒子は制御電極に集まっている。すべての制御電極には同じ誘引電位(attractive potential)が印加され、例えば負に帯電した粒子を引きつけるために正の電位が印加されている。
【0088】
第2のグレイ状態(列C)では、すべての粒子は、制御電極間の横位置にあるグラウンド電極に集まっている。すべての制御電極には同じ反発電位(repulsive potential)が印加され、例えば負に帯電した粒子を反発するために負の電位が印加されている。これはよりくらい状態である。電極からの距離が大きいため、粒子の集まり方がゆるいからである。
【0089】
第3のグレイ状態(列D)では、すべての粒子は一組の制御電極に集まっている。一組の制御電極には誘引電位が印加され、他の制御電極はグラウンドされている。これは列Bより明るい状態である。粒子が小数の場所にしっかりと集まっているからである。
【0090】
第4のグレイ状態(列E)では、すべての粒子は逆の一組の制御電極に集まっている。一組の制御電極には反発する電位が印加され、粒子はグラウンドされた他の電極に集まる。これは列Dより暗い状態である。粒子がしっかりと集まっていないからである。
【0091】
本発明のタッチセンシングアプローチはこのタイプのディスプレイデバイスにも適用できる。上述の通り、注意しなければならない点は、グラウンド面はシールドとしては機能せず、これは共通グラウンド面と(ディスプレイのユーザ側にある)少なくとも2つのパターン化した電極をタッチセンシング回路の一部として再利用することにより実現できる。
【0092】
図9の例は、電気泳動サスペンションで満たしたセルの一方の側に2つのパターン電極を有し、他方の側に非パターン電極を有する。図10は、構成の2つの側面図を示し、電気力線とタッチ入力の効果とを示している。基本的な電気回路も示し、作動キャパシタンスタッチングセンシング(differential capacitance touching-sensing)検出回路の動作原理を示す。グレイスケールの駆動レベルによらず、電気力線はカバーを超えて突出し、2つのパターン駆動電極間を流れていなければならない。
【0093】
2つの電極は好ましくは位相が90°ずれて駆動される。指がハイブリッド電気泳動スキンに近づくと、電極間の測定される浮遊キャパシタンス(クロストーク)が影響を受ける。この変化の検出は、回路図に示したように、時分割多重された検知/駆動サイクルにより行われる。しかし、浮遊キャパシタンスは、DC駆動電場の上にAC検知成分を入れ、駆動中にも継続的にタッチセンシングを可能とすることにより、継続的に検知できる。
【0094】
図10に示したように、少なくとも2つのパターン電極はユーザ(viewer)に近い側に配置される。パターン電極は独立に駆動でき、共通の非パターングラウンドの反対に配置される。
【0095】
パターン電極は例えば平行線を形成する。一般的に、粒子は負に帯電しており、非パターン電極はグラウンドされているが、正に帯電した粒子を用いることもでき、共通電極の電圧を非ゼロにすることも可能である。タッチ検出は、少なくとも2つのパターン駆動電極の間のクロストークキャパシタンスの変化の検出に基づく。このクロストークは、図10の下図に示したように、指で表した寄生グラウンド面がAC駆動検知キャパシタに近づくと、影響を受ける。第1のパターン電極の電位と第2のパターン電極の電位の間の位相差が90°のときに、電気力線が大きく突出する。それゆえ、位相検出またはインピーダンス分析により、タッチ入力を検出できる(別のキャパシタンスセンシングについては、例えば米国特許第7368923号を参照)。
【0096】
ユーザから遠い側に非パターングラウンドがあると、作動キャパシティブセンシングと組み合わせて、非常に高いレベルの本来的ロバストネスを保証することできる。
【0097】
ロバストネスが改善する理由は、コロイド分散の電気特性は変化し、それによりタッチイベントの迅速かつ信頼性の高い検出が非常に難しいという事実による。また、コロイド分散の電気特性は、駆動、温度、又はエージングによっても変化する。電気泳動分散は、電場を印加されると移動する、耐電したスピーシズ(charged species)を有するので、信頼性が高いタッチ入力の検出は定常状態の電気特性に大きく依存する。したがって、電荷密度が非駆動状態とは異なる駆動状態では、検知したキャパシタンスの絶対値の小さな変化を測定する必要に加えて、駆動、サンプル、ホールド、及び比較のスキームを用いなければならない。
【0098】
ハイブリッド電気泳動の組み込みタッチセンシングの利点は、コロイド分散の電気特性に対する要求が少なく、ロバスト性が高いことである。さらに、ロバスト性がよいのは、ハイブリッド電気泳動に本来的なものであり、ハイブリッド電気泳動では作動検知方法を用いることができる。作動検知方法を用いる主要な利点は、従来のタッチセンシング方法よりも高速かつ感度がよいことである。特に、駆動、エージング、または温度によるコロイド分散の電気特性の変化は、パターン電極と共通グラウンド間のキャパシタンスの値に等しく影響する。それゆえ、作動タッチセンシング方法は、ベクトル、閾値、又はウィンドウ比較法などに基づき利用でき、作動タッチセンシング(AC駆動)を連続的又は時間的に順次に利用できる。位置較正の必要もない。
【0099】
作動キャパシタンス測定の替わりに、電極を共通グラウンドで終端されたキャパシタのネットワークと考えて、いわゆる2端子Sパラメータ測定を実行してもよい。これを図11に示した。図11では、電極間のキャパシタンスは浮遊キャパシタンスである。この場合、浮遊キャパシタンスの値は、第1のAC信号を一方の電極に注入し、戻り信号を他方の電極で検知し、次にその逆を行うことにより決定できる。次に、相互キャパシタンスの値を計算する。ディスプレイへのタッチによる測定値の変化を検出できる。
【0100】
あるいは、1端子アプローチを用いて、2端子S行列をリニアシミュレータにかけて、浮遊キャパシタンスを分析する。次に、一方の端子をグラウンドに短絡することにより、1端子回路が実現する。これはS11をR+jXフォーマットでプロットすることにより分析できる。ここで、虚部はリアクタンス(第1と第2のパターン電極の間の浮遊容量C11)である。また、ここで、C11の変化はタッチ入力として解釈できる。
【0101】
さらに独立に駆動されるパターン電極を付け加えることにより、グレイ状態の数が2倍になり、作動キャパシタンスセンシング法を拡張するのに用いることができる。それゆえ、独立にアドレッシングできる電極が3、4、5、・・・ある較正は、それぞれ9、17、33、・・・個のグレイスケールを生成できる。作動キャパシタンスセンシングの場合、電極を2つの(時分割された)グループにバンドルできる。これらのグループは、駆動電場のDC値を異ならせるために、時分割多重されて検知される。
【0102】
異なる電極形状を用いても良い。最適なSパラメータ測定を目的として、共通のグラウンド抵抗を選択してもよい。電極の幅は同じでもよいが、第1と第2の電極で異なる幅を用いることもできる。同様に、第1と第2のパターン電極間のスペーシングは対称でも非対称でもよい。固定周波数での検知でなく、周波数スイープを用いることもできる。
【0103】
本発明は、液体ベースのデバイスでなく、(例えば、ブリジストントリボのロジカル帯電粒子を用いた)気体ベースの電気泳動システムにも適用できる。ブリジストン(のQuick Response Liquid Powder)アプローチでは、光学的外観が異なり符号が逆の2つの粒子タイプが、液体ではなくガス中で移動する。そのため、移動が非常に高速である。このタイプのデバイスの駆動に用いる電圧は、一般的に、液体ベースの電気泳動システムで用いるものよりも非常に高く、そのため、電場はディスプレイ面の外へさらに突出するので、キャパシタンスの変化の検出が一層容易である。
【0104】
上記の実施形態は、ピクセルセルが規則正しいマトリックス構造で構成され、独立に駆動されるピクセル化したディスプレイにおける本発明の利用を説明している。本発明は、ピクセルが規則的な又は不規則なパターンで電気的にグループ化され、セグメント化されたディスプレイを構成する1つ以上の大型ピクセルを構成するディスプレイデバイスとのインターラクション手段を提供するのにも用いることができる。かかるセグメント化されたディスプレイデバイスにおいて、例えば、面内電気泳動効果を用いるものにおいて、サブピクセル(最小単位セル)が規則的なグリッド構造で構成され、ディスプレイの動作の一様性を確保し、製造上の要求に従うことは一般的である。
【0105】
しかし、サブピクセルをグループ化して、それを大型ピクセルとして駆動することにより、その制御が簡単になるだけでなく、他のアプリケーションが可能になる。この機能を用いる典型的なアプリケーションは、いわゆる「隠蔽パネル」であり、それにおいてオブジェクトをその隠蔽パネルの後から露出するか(光学的透過を許す)又は隠す(光学スペクトルの一部をブロック)することが望ましい。かかる隠蔽パネルを用いて、例えば、ロゴの一部を隠す又は見せることができる。
【0106】
ピクセルの駆動を一ブロックのピクセルに電気的にグループ化すると、タッチセンサのインターラクティブ性は、その土台にある規則的アレイ中の各サブピクセルにわたる解像度に制約されず、インターラクティブ性の空間的解像度が大型ピクセルを画定する電気的グルーピングにより決まる。前述の通り、ディスプレイ効果を駆動する電極からの同じ電気力線は、隠蔽パネルの前に突き出て、ユーザとインターラクティブになる。このように電気的にグループ化すると、測定するキャパシタンスの変化は、大型ピクセル中のすべてのサブピクセルにわたって加算したものである。大型ピクセルサイズが大きくなると、固定サイズのグラウンドされた指の導入により生じるキャパシタンスのパーセンテージ変化が小さくなる。これは、検出可能なインターラクティブ性を実現できる大型ピクセルのサイズに対する現実的な限度を与える。
【0107】
この「隠蔽パネル」アプリケーションは、ディスプレイデバイス自体ではなく、光透過特性が異なる出力デバイスである。それゆえ、本発明は通常はディスプレイと考えられないデバイスにも適用できることが分かる。しかし、IPEP効果はディスプレイデバイスと同じ効果である。
【0108】
複数の大型ピクセルをパネル内で画定して、例えば同じロゴの個別セクションを見せられる。これを用いて、例えばクレジットカードの別々の大型ピクセルの背後にあるセキュリティ情報を見せてもよい。他の一実施形態では、ディスプレイ効果を用いて、ユーザがインターラクティブパネルに近づくと、制御ボタンとなって見せ、ユーザがある制御入力をアクティブ化すると、個々の制御ボタンが外観を変えさせる。
【0109】
一例を図12に示す。ここでは、ユーザの指が無い時には、写真フレームのベゼル全体が一色である(左図)。(右図に示したように)ユーザの指がそのベゼルのある領域の制御入力のどれかに近づくと、隠蔽パネルは制御入力を見せる。ユーザが所定時間にわたりある制御入力の前に指を保持すると、それによりその制御がアクティブ化され、例えば写真がシーケンス中の次のものに進む。例えば、その制御の外観を点滅させ(急速に隠したり見せたりし)、隠蔽パネルの後にある照明デバイスの明るさや色を変化させることにより、ユーザにアクティブ化を示すことができる。テレビジョンディスプレイのベゼルも同様に動作させることができる。
【0110】
サブピクセルは上記の例のように規則的なものである必要はない。それより、各タッチセンサのアクティブ化領域は、所望の形状の単一ピクセルであってもよい。
【0111】
本発明は、会議室のガラス壁のような大型パネルに適用できる。この壁には、プライバシを制御するために、タッチ制御可能な隠蔽パネル機能を設けることができる。このように、ガラス壁のある領域を、不透明状態と透明状態の間で切り換えられる。透明状態でも、会社のロゴなどの画像を示しておくことは可能である。
【0112】
本発明の隠蔽パネルを用いて、プロジェクションシステムの光スペクトルの一部を遮ることもできる。かかる隠蔽パネルを用いて、離れたところの画面にプロジェクションされた画像の、または発光体の表面にある画像の時間的及びスペクトル的強度を空間的に変調して、インターラクティブ性に照明効果を与えることもできる。後者の場合、投影面もタッチインターラクティブ面である。
【0113】
このように、本発明は、既存のすべてのディスプレイシステムやタッチセンシングシステムに適用でき、その他の、コンシューマプロダクト用のタッチインターラクティブパネルなどのデバイスや、ある状態ではiPhoneなどの高解像度ディスプレイの表面をカバーし、他の状態ではアクティブディスプレイとなって見せる隠蔽パネルにも適用できる。
【0114】
例えば、エキサイティングな視覚効果を生じるシームレスに組み込まれたタッチ入力制御を有するガラス壁の大型プライバシ画面など、より大きなエリアをインターラクティブにするアプリケーションも可能である。
【0115】
請求項に記載した発明を実施する際、図面、本開示、及び添付した特許請求の範囲を研究して、開示した実施形態のその他のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの("a" or "an")」という表現は複数ある場合を排除するものではない。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサ入力機能を有する出力デバイスであって、
前記デバイスの光透過特性を制御する、共通基板上の共通面内にある少なくとも第1と第2の制御電極と、
前記共通基板上にあるレイヤ内の浮遊帯電粒子とを有し、
前記デバイスは少なくとも2つのモード、
前記第1と第2の制御電極に印加される制御信号の影響下で前記帯電粒子の動きを制御することにより、前記光透過特性を変化させる第1のモードと、
第1と第2のピクセル制御電極が、検出対象が近くにあることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合される第2のモードとで動作可能であるデバイス。
【請求項2】
前記共通基板上に配置されたディスプレイピクセルの複数の行と列よりなる配列を有する電気泳動パッシブ又はアクティブマトリックスディスプレイデバイスを有し、各ピクセルは第1と第2の制御電極と不要得帯電粒子とを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
絶縁カバーレイヤが前記帯電粒子レイヤ上に設けられた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2のモードにおいて、前記第1と第2の制御電極間の電気力線が前記カバーレイヤを越えて延在する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
さらに、時分割多重方式で前記第1と第2のモード間の切り換えを制御する制御回路を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第1のモードにおいて前記制御電極にDC制御電圧を印加し、前記第2のモードにおいて前記制御電極の間にパルス状の検知電圧を印加する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
さらに、前記第2のモードのパルス状又はAC検知電圧に前記第1のモードのDCオフセットを重畳した制御電圧を、前記制御電極に印加する制御回路を有し、前記第1と第2のモードは同時に実施される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2のモードにおいて、検出されるキャパシタンス変化は前記第1と第2の電極間のキャパシタンスに、又は各電極とグラウンドとの間のキャパシタンスに関するものである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
さらに前記第1と第2の電極の前記共通面から離間したグランド面を有し、前記検出されるキャパシタンス変化は前記第1と第2の電極の前記グランド面とのキャパシタンス差を含む、請求項1乃至8いずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
出力デバイスの光透過特性を制御し、前記出力デバイスを用いてタッチセンサ機能を実現する方法であって、前記出力デバイスは、前記デバイスの光透過特性を制御する、共通基板上の共通面内にある少なくとも第1と第2の制御電極と、前記共通基板上にあるレイヤ内の浮遊帯電粒子とを有し、前記方法は、
第1のモードにおいて、前記第1と第2の制御電極に印加される制御信号の影響下で前記帯電粒子の動きを制御することにより、前記光透過特性を変化させる段階と、
第2のモードにおいて、第1と第2のピクセル制御電極を、検出対象が近くにあることにより生じるキャパシタンスの変化を検出するキャパシタンス検知手段に結合する段階とを有する、方法。
【請求項11】
前記第2のモードにおいて、前記デバイスのカバーレイヤを越えて延在する前記第1と第2の制御電極間の電気力線を発生する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
時分割多重方式で前記第1と第2のモードを切り換える段階を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のモードにおいて前記制御電極にDC制御電圧を印加し、前記第2のモードにおいて前記制御電極間にパルス状又はAC検知電圧を印加し、
前記第2のモードのパルス状又はAC検知電圧に前記第1のモードのDCオフセットを重畳した制御電圧を、前記制御電極に印加し、前記第1と第2のモードは同時に実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のモードにおいて、検出されるキャパシタンス変化は前記第1と第2の電極間のキャパシタンスに、又は各電極とグラウンドとの間のキャパシタンスに関するものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記共通基板上に配置されたディスプレイピクセルの複数の行と列よりなる配列を有する電気泳動パッシブ又はアクティブマトリックスディスプレイデバイスを動作させる段階を有し、各ピクセルは第1と第2の制御電極と不要得帯電粒子とを有する、請求項10に記載の方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−504110(P2013−504110A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527422(P2012−527422)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053832
【国際公開番号】WO2011/027265
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】