説明

タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法

【課題】 本発明は、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とする場合においても、工程を複雑にする保護膜をタッチパネルセンサ部の表面に設けることなく、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することを可能とする製造方法を提供することを目的とする。ものである。
【解決手段】 タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、タッチパネルセンサ部の少なくとも連結透明電極を、シュウ酸を主成分とする弱酸では侵食されないようなITOで形成した後に、カラーフィルタ部の透明電極を、アモルファス状のITOとして成膜し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工し、その後、前記アモルファス状のITOをアニール処理して結晶化させることにより低抵抗な透明電極とすることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法に関し、より詳しくは、透明基板を挟んで、その一方の面にタッチパネルセンサ部が形成され、他方の面にカラーフィルタ部が形成され、前記カラーフィルタ部にはパターン加工された透明電極が形成されているタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、タッチパネル装置は、携帯電話、ゲーム機、タブレットPC、カーナビゲーション、自動券売機、ATM装置などへの入力手段として広く用いられてきている。タッチパネル装置は液晶ディスプレイやCRT等の表示装置の表示面上に組み込まれ、操作者は、指またはタッチペンを用いて、表示面上でのカーソル移動、選択などの入力操作を行うことが出来る。このタッチパネル装置は、タッチパネルセンサ、タッチパネルセンサへの接触位置を検出する制御回路、配線等を含んでいる。
【0003】
タッチパネルセンサは、操作者の入力操作、即ち、人の指やタッチペンの接近、接触を感知する面を備えた透明のパネルである。このタッチパネルセンサは、接近、接触感知面が表示装置の表示エリアを覆うように配置されており、操作者の指またはタッチペンの接近、接触の事象を検出し、これらの信号を制御装置へ送る。制御装置は、これらの信号を処理し、表示装置にて入力操作に対応した表示を行う様に、表示装置側の制御装置へ所定の信号を出力する。
【0004】
タッチパネル装置には、抵抗式、静電容量式、赤外線式、表面弾性波式、電磁式、近接場イメージング式などを含むいくつかのタイプがあるが、昨今では、タッチパネルセンサ上の複数の指等の接近、接触を検出できる方式(マルチタッチ)として、静電容量式のタッチパネル装置が注目されている。
静電容量式のタッチパネル装置においては、配列された透明電極と、操作者の指の間での静電気結合による静電容量の変化、並びに、それにより発生する誘導電流を利用してタッチパネル上の位置座標を検知する。
典型的には、静電容量式タッチパネルセンサは、X軸透明電極及びY軸透明電極により構成され、X、Y軸透明電極は互いに絶縁されてタッチパネルセンサ内に設置され、各々制御回路に接続される。
【0005】
従前のタッチパネルセンサでは、X軸透明電極とY軸透明電極が別々の2枚の基板上に形成され、絶縁材料を挟んで2枚の基板を貼り合わせて作成されていたが、この方式ではタッチパネルセンサの薄型化に不利であり、また、X軸、Y軸透明電極間の位置合わせを高精度に行うことも困難なため、タッチセンサの感度や位置精度の点でも不利であった。
そこで、このような欠点を解消するため、図5に示すように、X軸、Y軸の透明電極を同一平面上に配列した構造の静電容量式タッチパネルセンサが提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
図5は上述の静電容量式タッチパネルセンサの例を示す概略平面図である。
タッチパネルセンサ100は、ガラス基板や透明樹脂フィルム等からなる透明基板101、タッチパネルの表示画面に相当する有効領域102に配置される複数のX軸透明電極103およびY軸透明電極104、X軸透明電極103とY軸透明電極104を絶縁する絶縁層(図示せず)、透明基板101の周辺部に配設され、X軸透明電極103およびY軸透明電極104と制御回路(図示せず)とを接続する配線導体105を少なくとも含んで構成される。
なお、図5において、X軸透明電極103は同一平面上で連結されているが、Y軸透明電極104は、X軸透明電極103との短絡を避けるためにX軸透明電極103と交差する部位で分断されており、連結透明電極106により連結されている。
【0007】
図6は図5に示すタッチパネルセンサのA−A断面図である。上述のように、Y軸透明電極104は、X軸透明電極103と交差する部位で分断されており、X軸透明電極103とY軸透明電極104の間には、短絡防止のために第1絶縁層107が形成されている。第1絶縁層107は、X軸透明電極103と交差する部位に、X軸透明電極103を覆うように形成される。そして、連結透明電極106は、第1絶縁層107を跨ぐように形成され、分断されたY軸透明電極104を電気的に接続する。連結透明電極106は、通常、Y軸透明電極104と同じ材料、典型的には、多結晶ITO(インジウム錫酸化物)により形成される。
なお、図6における第2絶縁層108は、通常、第1絶縁層107と同じ材料であって、第1絶縁層107の形成工程で同時に形成されるものであり、X軸透明電極103およびY軸透明電極104を覆うように形成される。この第2絶縁層108は、除去されていても良い。
【0008】
ここで、X軸透明電極103およびY軸透明電極104は、透明な導電性材料により形成され、通常、多結晶ITOが用いられている。
そして上記のX軸透明電極103およびY軸透明電極104の製造方法は、通常、基板加熱しながら、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、多結晶ITOを成膜し、フォトリソグラフィ法で所望のパターンを形成後、王水で不要ITOをエッチングする方法が用いられる。ここで、上記の基板加熱の温度は、ITO結晶化のために、通常、200℃〜250℃である(特許文献2、3)。
【0009】
一方、基板加熱をより低い温度で行うか、あるいは基板加熱しないで、スパッタリング法によりアモルファス状のITOを成膜し、次に、アニール処理することによりITOを結晶化させ、その後、王水で不要ITOをエッチングして、多結晶ITOパターンを得る方法もある(特許文献4、5)。
【0010】
次に、カラーフィルタについて説明する。図7は従来のカラーフィルタの例を示す概略断面図である。
図7に示すように、カラーフィルタ200は、ガラス基板や透明樹脂フィルム等からなる透明基板201、その上にマトリックス状に配設される遮光体(ブラックマトリックス)202、遮光体202の間に配設される複数色の着色体203、その上に配設される透明電極204を、少なくとも含んで構成される。
なお、着色体203と透明電極204の間には、各種プロセスにおいて着色体203を保護するための透明な保護膜が設けられていても良い(図示せず)。
【0011】
遮光体202は、液晶表示装置のバックライトの光もれや着色体203の混色防止のために形成される。着色体203は、カラーフィルタ画素として、液晶を通過したバックライトの色を調整するものであり、通常、赤色、青色、緑色の3種の着色体が形成される。
透明電極204は、液晶分子の配列を変更させて光の透過率を調節するための共通電極として機能するものである。典型的には、透明電極204は、多結晶ITOが用いられている。
【0012】
しかし、図7に示すようなカラーフィルタを用いた従前の液晶表示装置は、視野角が狭いという欠点を有していた。そこで、液晶分子をカラーフィルタ面に対し垂直に配向し、共通電極に一定の切開パターンを形成して視野角を広くする方法(Patterened Virtical Alignmentモード。以下、PVAモードと称する。)が提案されている(特許文献6)。
上述の方法(PVAモード)においては、通常、着色体上に透明な保護膜(オーバーコート)を形成し、その上にITOのような透明電極の薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法によって切開パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3144241号公報
【特許文献2】特開2001−311954号公報
【特許文献3】特開2005−290458号公報
【特許文献4】特開平2−194943号公報
【特許文献5】特開2004−149884号公報
【特許文献6】特開2003−287618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のタッチパネルセンサとカラーフィルタは、それぞれ個別の透明基板に形成して重ね合わせる場合、タッチパネル装置全体の薄型化や軽量化に対し不利である。
それゆえ、共通する透明基板を挟んで、その一方の面にタッチパネルセンサ部が形成され、他方の面にカラーフィルタ部が形成されているタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタが用いられてきている。
【0015】
しかし、上述のようなPVAモードの液晶表示装置に従来のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを用いる場合、タッチパネルセンサ部のX軸透明電極、Y軸透明電極、および連結透明電極と、カラーフィルタ部の透明電極が、いずれも同じ材料である多結晶ITOから形成されているため、片方の面のITOをエッチング加工すると、他方の面のITOに損傷を与えてしまうという問題がある。
【0016】
例えば、共通する透明基板を挟んで、その一方の面に図6に示すようなタッチパネルセンサが形成され、他方の面に図7に示すようなカラーフィルタが形成されているタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタにおいて、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを形成するため、王水でエッチング加工を行うと、タッチパネルセンサ部の露出している連結透明電極までもが王水でエッチングされてしまうことになる。
【0017】
それ故、例えば、タッチパネルセンサ部の表面に、王水エッチングに耐える保護膜を設ける等の対策が必要となる。しかしながら、保護膜を設ける方法では、工程が複雑となり、コストアップを招くことになるため好ましくない。
【0018】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、PVAモードの液晶表示装置のように、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とする場合においても、工程を複雑にする保護膜をタッチパネルセンサ部の表面に設けることなく、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することを可能とする製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、種々研究した結果、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、タッチパネルセンサ部の少なくとも連結透明電極を、シュウ酸を主成分とする弱酸では侵食されないようなITOで形成した後に、カラーフィルタ部の透明電極を、アモルファス状のITOとして成膜し、シュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工し、その後、前記アモルファス状のITOをアニール処理して結晶化させることにより低抵抗な透明電極とすることで、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成したものである。
【0020】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、透明基板の一方の主面上にタッチパネルセンサ部を有し、前記透明基板の他方の主面上にカラーフィルタ部を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、前記透明基板の一方の主面上に、多結晶ITO薄膜層を形成し、ハロゲン化水素酸を主成分とする強酸でエッチング加工して前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する工程と、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程と、を備えたことを特徴とするタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する多結晶ITO薄膜層が、200℃〜250℃の基板加熱を伴うスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0022】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記タッチパネルセンサ部の透明電極のエッチング加工に用いられるハロゲン化水素酸を主成分とする強酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、王水、塩酸にヨウ素を加えた水溶液、または塩酸に塩化第2鉄を加えた水溶液のいずれか一種を含む水溶液であり、前記カラーフィルタ部の透明電極のエッチング加工に用いられるシュウ酸を主成分とする弱酸が、シュウ酸水溶液であることを特徴とする請求項1〜2に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0023】
また、本発明の請求項4に係る発明は、透明基板の一方の主面上にタッチパネルセンサ部を有し、前記透明基板の他方の主面上にカラーフィルタ部を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、前記透明基板の一方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する工程と、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程と、を備えたことを特徴とするタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0024】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成するアモルファス状のITO薄膜層が、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用いて、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0025】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を結晶化させるためにアニール処理する温度が、140〜250℃であることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0026】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記カラーフィルタ部の透明電極を形成するアモルファス状のITO薄膜層が、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用いて、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【0027】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記カラーフィルタ部の透明電極を結晶化させるためにアニール処理する温度が、140〜250℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、装置全体の薄型化や軽量化に有利なタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを、PVAモードの液晶表示装置のように、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とする場合においても、工程を複雑にする保護膜をタッチパネルセンサ部の表面に設けることなく製造することが可能となる。
すなわち、本発明によれば、カラーフィルタ部の透明電極はシュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工されるため、タッチパネルセンサ部の表面に露出している結晶化したITO(例えば、連結透明電極)に浸食が生じることはなく、それゆえ保護膜を設ける工程を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図3】図2に続く本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図4】図3に続く本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図5】従来のタッチパネルセンサの例を示す概略平面図である。
【図6】図5に示すタッチパネルセンサのA−A断面図である。
【図7】従来のカラーフィルタの例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0031】
[タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタ]
まず、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタについて説明する。
図1は、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの例を示す概略断面図である。図1に示されるタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタ1においては、ガラス基板等からなる透明基板2を挟んで、その一方の面にタッチパネルセンサ部20が形成され、他方の面にカラーフィルタ部30が形成され、前記カラーフィルタ部にはパターン加工された第3透明電極34が形成されている。
【0032】
[タッチパネルセンサ部]
本発明に係るタッチパネルセンサ部20の構成は、基本的に、従来のタッチパネルセンサの構成と同じであってよい。ここでは、X軸透明電極に相当する第1透明電極とY軸透明電極に相当する第2透明電極の透明電極を同一平面上に配列した構造の静電容量式タッチパネルセンサの例に基づいて説明する。この場合、タッチパネルセンサ部の平面図は上述の図5に示したものと同様であってよい。
【0033】
ただし、本発明に係るタッチパネルセンサ部の透明電極(少なくとも連結透明電極)は、従来のように、200℃〜250℃の基板加熱を伴うスパッタリング成膜により形成された多結晶ITO薄膜からなる透明電極である場合の他に、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜により形成されたアモルファス状のITO薄膜を、アニール処理することにより結晶化したITO薄膜からなる透明電極である場合もある。
【0034】
上述の多結晶ITOや、アニール処理することにより結晶化したITOは、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸ではエッチングされない。それゆえ、後述するカラーフィルタ部の透明電極(第3透明電極)をシュウ酸水溶液等でエッチングする工程においても、タッチパネルセンサ部の透明電極(少なくとも連結透明電極)はエッチングされず、タッチパネルセンサ部の表面に保護膜を設ける等の工程を省くことができる。
【0035】
タッチパネルセンサ部20は、図1に示すように、例えばX軸透明電極に相当する第1透明電極22、および、例えばY軸透明電極に相当する第2透明電極23、第1透明電極22と第2透明電極23を絶縁する第1絶縁層24、透明基板2の周辺部に配設され、第1透明電極22および第2透明電極23と制御回路(図示せず)とを接続する配線導体21を少なくとも含んで構成される。
【0036】
第2透明電極23は、第1透明電極22と交差する部位で分断されており、第1透明電極22と第2透明電極23の間には、短絡防止のために第1絶縁層24が形成されている。第1絶縁層24は、第1透明電極22と第2透明電極23が交差する部位に、第1透明電極22を覆うように形成される。そして、連結透明電極26は、第1絶縁層24を跨ぐように形成され、分断された第2透明電極23を電気的に接続する。
なお、図1における第2絶縁層25は、第1絶縁層24と同じ材料であって、第1絶縁層24の形成工程で同時に形成されるものであり、第1透明電極22および第2透明電極23を覆うように形成される。この第2絶縁層25は、除去されていても良い。
【0037】
[第1及び第2透明電極、連結透明電極]
第1透明電極22、第2透明電極23、連結透明電極26は、通常、同じ材料により形成される。第1透明電極22と第2透明電極23は同一平面に同時に形成されるため同じ材料であることが好ましく、また、均一な透明性や導電性を得るために、連結透明電極26も、第1透明電極22、第2透明電極23と同じ材料であることが好ましいからである。
【0038】
上記の材料としては、透明性を有するとともに、所要の導電性を有する材料が用いられる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物や、これらの金属酸化物が2種以上複合された材料が挙げられる。
【0039】
しかしながら、材料及び加工技術の信頼性、汎用性を考慮すると、上記の材料は限定され、具体的には、第1透明電極22、第2透明電極23、連結透明電極26は結晶化して低抵抗となったITOから構成されることになる。第1透明電極22、第2透明電極23、連結透明電極26を結晶化して低抵抗となったITOから構成するためには、従来の方法のように高温成膜により多結晶ITOを成膜し、ハロゲン化水素酸を主成分とする強酸でエッチング加工する方法と、本発明に係るカラーフィルタ部の第3透明電極を形成する方法と同様に、低温成膜によりアモルファス状のITOを成膜し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工した後にアニール処理してITOを結晶化させる方法を用いることができる。
【0040】
より具体的に説明すると、前者の高温成膜を用いる方法では、透明基板の一方の主面上に、200℃〜250℃に基板加熱しながら、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法を用いて多結晶ITOを成膜し、フォトリソグラフィ工程で所望のパターンを形成後、ハロゲン化水素酸を主成分とする強酸で不要ITOをエッチングする方法により、第1透明電極22、第2透明電極23、連結透明電極26が形成される。
【0041】
なお、上述のハロゲン化水素酸とは、例えば、塩化水素(HCl)の水溶液である塩酸や、臭化水素(HBr)の水溶液である臭化水素酸、ヨウ化水素(HI)の水溶液であるヨウ化水素酸などを挙げることができ、ハロゲン化水素酸を主成分とする強酸とは、前述の水溶液の他に、例えば、王水(HCl:HNO3:H2O=1:0.08:1、体積比)や、塩酸にヨウ素(I2)または塩化第2鉄(FeCl3)を加えた水溶液を挙げることができる。一般的には、王水や、塩酸に塩化第2鉄(FeCl3)を加えた水溶液を用いることが多い。
【0042】
一方、後者の低温成膜を用いる方法では、透明基板の一方の主面上に、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜によりアモルファス状のITOを成膜し、フォトリソグラフィ工程で所望のパターンを形成後、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸で不要ITOをエッチング加工した後に、140〜250℃でアニール処理してITOを結晶化させる方法により、第1透明電極22、第2透明電極23、連結透明電極26が形成される。
【0043】
アモルファス状のITOは、例えば、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜することができる。ここで、ITOターゲットのSnO2比率が過度に低いとターゲットの密度を高めることができないため、SnO2比率は1重量%以上であることが好ましい。また、ITOターゲットのSnO2比率が10重量%を超えるものであると、低温短時間のアニールで結晶化可能なアモルファスITO薄膜を成膜することはできないため、SnO2比率は10重量%以下であることが好ましい。
【0044】
上述のような、基板加熱を行わずに成膜したITO薄膜はアモルファスの状態であり、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工が可能である。ただし、アモルファス状のITO薄膜は高抵抗であるため、このままでは、透明電極として好ましくない。そこで、エッチング加工後にアニール処理してITOを結晶化させ、低抵抗な透明電極を得る。上述の方法で成膜したアモルファスITOは、アニール処理として、例えば、140〜250℃で5〜40分で容易に結晶化させることができる。
【0045】
[配線導体]
配線導体21は、第1透明電極22および第2透明電極23と制御回路とを電気的に接続するためのものであり、透明基板2の周辺部に配設される。
配線導体21は表示領域外に形成されるので透明性は必要ないが、抵抗値の小さい材料から形成される必要がある。それゆえ、配線導体21の材料として、好ましくは、前述の透明電極材料より高い導電性を有する材料が用いられる。例えば、配線導体21は、アルミニウム、銀や銅またはそれらの合金等による金属薄膜や、銀ペースト等の導電性ペーストにより形成される。
【0046】
[第1及び第2絶縁層]
第1絶縁層24は、第1透明電極22と、第2透明電極23および連結透明電極26を絶縁するために設けられるものである。第1絶縁層24は、第1透明電極22と第2透明電極23が交差する部位に、第1透明電極22を覆うように形成される。そして、連結透明電極26は、第1絶縁層24を跨ぐように形成され、分断された第2透明電極23を電気的に接続する。
【0047】
第2絶縁層25は、第1絶縁層24と同じ材料であって、第1絶縁層24の形成工程で同時に形成されるものであり、第1透明電極22および第2透明電極23を覆うように形成される。そして、第2絶縁層25は、連結透明電極26が第2透明電極23と接する面積を規定し、連結透明電極26同士の短絡を防ぐ機能を有する。なお、この第2絶縁層25は、最終形態において除去されていても良い。
【0048】
第1絶縁層24及び第2絶縁層25は、透明性および電気絶縁性を有する樹脂材料やSOG(塗布型のSiO2系材料)等の無機材料を用いて、スクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法で形成される。例えば、UV硬化性のアクリル樹脂を用い、塗布、マスク露光、現像、ベーク等の工程を行うことで形成される。
【0049】
[カラーフィルタ部]
次にカラーフィルタ部30について説明する。
カラーフィルタ部30は、図1に示すように、透明基板2を挟んで、タッチパネルセンサ部20が形成された面とは反対側の面に形成されており、マトリックス状に配設される遮光体(ブラックマトリックス)31、遮光体31の間に配設される複数色の着色体32、パターン加工された第3透明電極34を、少なくとも含んで構成される。
また、着色体32と透明電極34の間には、第3透明電極34をパターン加工する際のエッチングから着色体32を保護するために、透明な保護膜33が設けられていることが好ましい。
【0050】
[遮光体]
遮光体31は、液晶表示装置のバックライトの光もれや着色体32の混色防止のために設けられるものである。
遮光体31は、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み100〜200nm程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングして形成したもの、および、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングして形成したもの等、遮光性を有するものを用いることができる。
【0051】
[着色体]
着色体32は、カラーフィルタ画素として、液晶を通過したバックライトの色を調整するものであり、通常、赤色、青色、緑色の3種の着色体が形成される。
赤色の着色体に用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色の着色体に用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色の着色体に用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
[保護膜]
着色体32と第3透明電極34の間には、第3透明電極34をパターン加工する際のエッチングから着色体32を保護するために、透明な保護膜33が設けられていることが好ましい。
保護膜の材料としては、珪素、アルミニウム、亜鉛またはスズの酸化物または酸窒化物からなる透明材料、あるいはアクリル樹脂等の有機絶縁膜を挙げることができる。
【0053】
[第3透明電極]
第3透明電極34は、液晶分子の配列を変更させて光の透過率を調節するための共通電極として機能するものである。図1に示すように、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタにおいては、液晶分子をカラーフィルタ面に対し垂直に配向し、共通電極に一定の切開パターンを形成して視野角を広くする方法(PVAモード)に対応するため、第3透明電極34に切開パターンが形成されている。
【0054】
ここで、従来の製造方法では、透明電極は、通常、基板加熱しながら、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、多結晶ITOを成膜し、フォトリソグラフィ工程でITOパターンを形成後、王水で不要ITOをエッチングする方法が用いられていた。なお、上記の基板加熱の温度は、ITO結晶化のために、通常、200℃〜250℃である。
【0055】
しかしながら、共通する透明基板2を挟んで、その一方の面にタッチパネルセンサ部20が形成され、他方の面にカラーフィルタ部30が形成されているタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタにおいては、上述の方法では、カラーフィルタ部30の第3透明電極34に切開パターンを形成するため王水でエッチング加工を行うと、タッチパネルセンサ部20の露出している連結透明電極26までもが王水でエッチングされてしまうことになる。
【0056】
そこで、本発明においては、カラーフィルタ部30の第3透明電極34を、まず、アモルファス状のITO薄膜として成膜し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工し、その後、前記アモルファス状のITO薄膜をアニール処理して結晶化させることにより低抵抗な透明電極とすることで、上記課題を解決する。
アモルファス状のITOはシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチングできるが、多結晶ITOや、アニール処理して結晶化したITOはシュウ酸を主成分とする弱酸ではエッチングされないという特性を利用するものである。
【0057】
アモルファス状のITOは、例えば、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜することができる。ここで、ITOターゲットのSnO2比率が過度に低いとターゲットの密度を高めることができないため、SnO2比率は1重量%以上であることが好ましい。また、ITOターゲットのSnO2比率が10重量%を超えるものであると、低温短時間のアニールで結晶化可能なアモルファスITO薄膜を成膜することはできないため、SnO2比率は10重量%以下であることが好ましい。
【0058】
上述のような、基板加熱を行わずに成膜したITO薄膜はアモルファスの状態であり、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工が可能である。ただし、アモルファス状のITO薄膜は高抵抗であるため、このままでは、透明電極として好ましくない。そこで、エッチング加工後にアニール処理してITOを結晶化させ、低抵抗な透明電極を得る。上述の方法で成膜したアモルファスITOは、アニール処理として、例えば、140〜250℃で5〜40分で容易に結晶化させることができる。
【0059】
[タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法]
次に、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法について説明する。
1.第1の実施形態
本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の第1の実施形態は、透明基板の一方の主面上に多結晶ITO薄膜層を形成し、王水等のハロゲン化水素酸を主成分とする強酸でエッチング加工してタッチパネルセンサ部に透明電極を形成する工程と、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上にアモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程を備えたことを特徴とするものであり、アモルファス状のITOはシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチングできるが、多結晶ITOはシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸ではエッチングされないという特性を利用するものである。
その他の構成要素の製造方法については、上述した構成を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。
【0060】
図2〜図4に、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の一例を示す。まず、ガラス等の材料からなる透明基板2を準備し、その一方の面に金属材料からなる配線導体21を形成する(図2(a))。配線導体21を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、透明基板2上にスパッタリング法により金属薄膜を成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状の配線導体21を形成する。
【0061】
次に、図2(b)に示すように、上記の配線導体21を形成した面に、多結晶ITOからなる第1透明電極22および第2透明電極23を形成する。
第1透明電極22、第2透明電極23を形成する多結晶ITOは、200℃〜250℃に基板加熱しながら、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜される。そして、フォトリソグラフィ法でパターンを形成後、王水等のハロゲン化水素酸を主成分とする強酸で不要ITOをエッチングする方法により、所望の形状に加工される。
【0062】
次に、上記の第1透明電極22および第2透明電極23を被覆するように、第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成するための絶縁膜を成膜し(図2(c))、パターン加工して所望の形状の第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成する(図2(d))。
第1透明電極22および第2透明電極23を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、UV硬化性のアクリル樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により所望の形状の第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成することができる。
【0063】
次に、図3(e)に示すように、上記の第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成した面に、多結晶ITOからなる連結透明電極26を形成する。
連結透明電極26を形成する多結晶ITOは、上記の第1透明電極22および第2透明電極23と同様に、200℃〜250℃に基板加熱しながら、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜される。そして、フォトリソグラフィ法でパターンを形成後、王水等のハロゲン化水素酸を主成分とする強酸で不要なITOをエッチングする方法により、所望の形状に加工される。
以上の工程により、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタのタッチパネルセンサ部が形成される。
【0064】
次に、図3(f)に示すように、上記のタッチパネルセンサ部を形成した面とは反対側の透明基板2の面に、遮光体31を形成する。
遮光体31を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、スパッタリング法により厚み100〜200nm程度のクロムの金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして所望の形状の遮光体31を形成することができる。
【0065】
次に、図3(g)に示すように、上記の遮光体31の間に、複数色の着色体32を形成する。
着色体32を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、各色の顔料を含んだ着色感光性樹脂を塗布し、パターン露光、現像、ベークして、所望の着色体32を形成することができる。赤色、青色、緑色の3種の着色体を形成する場合は、上記の工程を3回行う。
【0066】
次に、図4(h)に示すように、上記の着色体32を被覆するように、保護膜33を形成する。保護膜33を形成する方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、アクリル系エポキシ樹脂を塗布、ベークして所望の保護膜33を形成する。
【0067】
次に、上記の保護膜33を形成した面に、アモルファス状のITO薄膜を成膜し(図4(i))、パターン加工した後に、アニール処理して第3透明電極34を形成する(図4(j))。第3透明電極34を形成するアモルファス状のITO薄膜は、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜する。続いて、フォトリソグラフィ法でパターンを形成し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸で不要ITOをエッチングする方法により、所望の形状に加工する。最後に、140〜250℃で5〜40分アニール処理して前記ITOを結晶化させ、低抵抗な第3透明電極34を得る。
以上により、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタ1を得ることが出来る。
【0068】
本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の第1の実施形態によれば、カラーフィルタ部の透明電極はシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工されるため、タッチパネルセンサ部の表面に露出している多結晶ITO(例えば、連結透明電極)に浸食が生じることはなく、PVAモードの液晶表示装置のように、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とする場合においても、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することができる。
【0069】
2.第2の実施形態
次に、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の第2の実施形態について説明する。
本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の第2の実施形態は、透明基板の一方の主面上にアモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する工程と、前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上にアモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程を備えたことを特徴とするものであり、アモルファス状のITOはシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸でエッチングできるが、アニール処理して結晶化したITOはシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸ではエッチングされないという特性を利用するものである。
その他の構成要素の製造方法については、上述した構成を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。
【0070】
この第2の実施形態においては、タッチパネルセンサ部の第1透明電極22、第2透明電極23および連結透明電極26の形成方法が、上述の第1の実施形態と相違するが、その他の構成要素の製造方法は上述の第1の実施形態と同じ方法を用いて良い。
【0071】
第2の実施形態においては、図2(b)に示す、第1透明電極22および第2透明電極23の形成は、配線導体21を形成した面の上に、アモルファス状のITO薄膜を成膜し、パターン加工した後に、アニール処理して形成する。
第1透明電極22および第2透明電極23を形成するアモルファス状のITO薄膜は、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により成膜する。続いて、フォトリソグラフィ法でパターンを形成し、シュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸で不要ITOをエッチングする方法により、所望の形状に加工する。最後に、140〜250℃で5〜40分アニール処理して前記ITOを結晶化させ、低抵抗な第1透明電極22および第2透明電極23を得る。
【0072】
同様に、第2の実施形態においては、図3(e)に示す、連結透明電極26の形成は、第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成した面の上に、アモルファス状のITO薄膜を成膜し、パターン加工した後に、アニール処理して形成する。
【0073】
本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法の第2の実施形態によれば、カラーフィルタ部の透明電極はシュウ酸水溶液等のシュウ酸を主成分とする弱酸を用いてエッチング加工されるため、タッチパネルセンサ部の表面に露出しているアニール処理して結晶化したITO(例えば、連結透明電極)に浸食が生じることはなく、PVAモードの液晶表示装置のように、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とする場合においても、タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
上述で説明した製造方法に従って、図1に示すような構成の本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造した。
まず、透明基板2として旭硝子株式会社製ANガラスを準備し、その一方の面にアルミニウムをスパッタリング法により成膜し、燐酸、酢酸、水を4:1:4:4の割合で配合してなる燐硝酢酸水でエッチング加工して配線導体21を形成した。
【0076】
次に、上記の配線導体21を形成した面に、基板温度230℃で、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、20nm厚さの多結晶ITO薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法で所望のパターンを作り、王水で不要なITOをエッチングして第1透明電極22および第2透明電極23を形成した。
【0077】
次に、上記の第1透明電極22および第2透明電極23を被覆するように、住友化学株式会社製ポジ型感光性材料PFI−27を塗布し、フォトリソグラフィ法により所望の形状の第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成した。
【0078】
次に、上記の第1絶縁層24および第2絶縁層25を形成した面に、基板温度230℃で、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、20nm厚さの多結晶ITO薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法で所望のパターンを作り、王水で不要ITOをエッチングして連結透明電極26を形成した。
【0079】
次に、透明基板2の反対側の面に、スパッタリング法により150nm厚さのクロムを成膜し、フォトリソグラフィ法で所望の遮光体31を形成した。続いて、赤色顔料を含んだ着色感光性樹脂を塗布し、パターン露光、現像、ベークして、赤色の着色体32を形成した。青色、緑色の着色体32も同様に形成した。さらに、上記の着色体32を被覆するように、アクリル系エポキシ樹脂を塗布、ベークして所望の保護膜33を形成した。
【0080】
次に、上記の保護膜33を形成した面に、SnO2比率5重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、130nm厚さのアモルファスITO薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により所望のパターンを作り、シュウ酸水溶液で不要ITOをエッチングした後、150℃で30分間アニール処理してITOを結晶化し、第3透明電極34を形成した。
【0081】
上述の製造方法により、タッチパネルセンサ部の表面に露出している連結透明電極に浸食を生じさせることなく、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とするPVAモードの液晶表示装置に適したタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することができた。
【0082】
(実施例2)
タッチパネルセンサ部の第1透明電極22、第2透明電極23および連結透明電極26の形成を、アモルファス状のITO薄膜を成膜し、パターン加工した後にアニール処理して形成した以外は実施例1と同様にして、本発明に係るタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造した。
【0083】
タッチパネルセンサ部の第1透明電極22、第2透明電極23および連結透明電極26は、SnO2比率5重量%のITOターゲットを用い、基板加熱を行わずに、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたスパッタリング法により、20nm厚さのアモルファスITO薄膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により所望のパターンを作り、シュウ酸水溶液で不要ITOをエッチングした後、150℃で30分間アニール処理してITOを結晶化し、第1透明電極22、第2透明電極23および連結透明電極26を形成した。
【0084】
上述の製造方法により、タッチパネルセンサ部の表面に露出している連結透明電極に浸食を生じさせることなく、カラーフィルタ部の透明電極に切開パターンを必要とするPVAモードの液晶表示装置に適したタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタを製造することができた。
【符号の説明】
【0085】
1 タッチパネルセンサ一体型カラーフィルタ
2 透明基板
20 タッチパネルセンサ部
21 配線導体
22 第1透明電極
23 第2透明電極
24 第1絶縁層
25 第2絶縁層
26 連結用透明電極
30 カラーフィルタ部
31 遮光体
32 着色体
33 保護膜
34 第3透明電極
100 タッチパネルセンサ
101 透明基板
102 有効領域
103 X軸透明電極
104 Y軸透明電極
105 配線導体
106 連結透明電極
107 第1絶縁層
108 第2絶縁層
200 カラーフィルタ
201 透明基板
202 遮光体
203 着色体
204 透明電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の主面上にタッチパネルセンサ部を有し、前記透明基板の他方の主面上にカラーフィルタ部を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、
前記透明基板の一方の主面上に、多結晶ITO薄膜層を形成し、ハロゲン化水素酸を主成分とする強酸でエッチング加工して前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する工程と、
前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する多結晶ITO薄膜層が、200℃〜250℃の基板加熱を伴うスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記タッチパネルセンサ部の透明電極のエッチング加工に用いられるハロゲン化水素酸を主成分とする強酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、王水、塩酸にヨウ素を加えた水溶液、または塩酸に塩化第2鉄を加えた水溶液のいずれか一種を含む水溶液であり、前記カラーフィルタ部の透明電極のエッチング加工に用いられるシュウ酸を主成分とする弱酸が、シュウ酸水溶液であることを特徴とする請求項1〜2に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
透明基板の一方の主面上にタッチパネルセンサ部を有し、前記透明基板の他方の主面上にカラーフィルタ部を有するタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法において、
前記透明基板の一方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成する工程と、
前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成した後に、前記透明基板の他方の主面上に、アモルファス状のITO薄膜層を形成し、シュウ酸を主成分とする弱酸でエッチング加工し、その後、アニール処理することにより、前記アモルファス状のITOを結晶化させて前記カラーフィルタ部に透明電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記タッチパネルセンサ部の透明電極を形成するアモルファス状のITO薄膜層が、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用いて、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記タッチパネルセンサ部の透明電極を結晶化させるためにアニール処理する温度が、140〜250℃であることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記カラーフィルタ部の透明電極を形成するアモルファス状のITO薄膜層が、SnO2比率が1〜10重量%のITOターゲットを用いて、基板加熱を伴わないスパッタリング成膜により形成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記カラーフィルタ部の透明電極を結晶化させるためにアニール処理する温度が、140〜250℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタッチパネルセンサ一体型カラーフィルタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−204037(P2011−204037A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71154(P2010−71154)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】