説明

タッチパネル入力装置およびジェスチャ検出方法

【課題】抵抗膜式のタッチパネル入力装置において、タッチされた2点による複雑な入力を検出可能とする。
【解決手段】微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜11、12と、一方の抵抗膜11の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた電極13、14からなる第1電極対と、他方の抵抗膜12の互いに向き合う2辺の縁部に、前記電極13、14と直角になる向きに各々設けられた電極15、16からなる第2電極対と、第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加する手段21と、一方の抵抗膜11を他方の抵抗膜12に接触させるようにタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧を測定する手段と、前記タッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定する手段と、測定された電圧および電流の値に基づいて、2つのタッチ点の軌跡を判別する判別手段22とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネル入力装置、特に詳細には、抵抗膜式のタッチパネル入力装置に関するものである。
【0002】
また本発明は、そのようなタッチパネル入力装置を用いたジェスチャ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば特許文献1、2および3に示されるように、2次元に広がるタッチ入力面を有し、その上に指等で接触された点(タッチ点)の位置を検出できるようにした抵抗膜式のタッチパネル入力装置が公知になっている。
【0004】
この種のタッチパネル入力装置は基本的に、微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜と、一方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた電極からなる電極対(X電極対)と、他方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に、上記電極と直角になる向きに各々設けられた電極からなる電極対(Y電極対)と、上記X電極対の間とY電極対の間に電圧を印加する手段と、一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるようにタッチがなされたとき、X電極対間およびY電極対間についてタッチ点で分圧された電圧を測定する手段とから構成されたものである。
【0005】
上記の構成において、X電極対間について測定される分圧された電圧は、該電極の一方からタッチ点までの間の抵抗膜の抵抗値、つまりはそれらの間の距離と対応しているので、この電圧を測定することによりタッチ点のX方向位置を検出することができる。これはY電極対間についても同様であって、それにより、タッチ点のY方向位置が検出される。こうしてタッチ点の2次元位置が検出可能となる。
【0006】
なお、上記構成を有するタッチパネル入力装置において、2点が同時にタッチされると、上述のように測定される電圧は、それら2点の一方のみがタッチされたときの値と、それら2点の他方のみがタッチされたときの値との中間的な値を示すので、2点のほぼ中間点が検出されることになる。この点は、特許文献1、2および3のいずれにも記載がなされている。
【0007】
他方、特に特許文献3には、上記構成のタッチパネル入力装置において2点が同時にタッチされた場合、その2点間の距離が検出可能であることも記載されている。すなわち、上記抵抗膜の一方における電極対間に電圧が印加されたとき、2点が同時にタッチされると、該電極間の抵抗値はこの抵抗膜の全抵抗値、2つの接触抵抗の値、および他方の抵抗膜における2点間の抵抗値とで決まることになる。したがって上記2点間の抵抗値と、電極対間に流れる電流値は対応することになり、また上記2点間の抵抗値は2点間の距離と比例しているので、この電極対間に流れる電流値を測定することにより2点間の距離を検出可能となる。
【0008】
特許文献3はさらに、以上のことに基づいて、2つのタッチ点が互いに遠ざかるようなジェスチャや、互いに近付くようなジェスチャ、さらには2つのタッチ点がそのほぼ中間点を中心にして回転するジェスチャを検出可能であることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−105645号公報
【特許文献2】特開2007−122522号公報
【特許文献3】米国特許公開2009/0322700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし特許文献3に示されたタッチパネル入力装置は、上述のもの以外のより複雑なジェスチャを検出可能としたものではなく、その点は、従来公知の抵抗膜式タッチパネル入力装置に共通して言えることである。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、タッチされた2点による複雑なジェスチャを検出することができる、抵抗膜式のタッチパネル入力装置を提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は、そのようなタッチパネル入力装置を用いて、タッチされた2点による複雑なジェスチャを検出できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるタッチパネル入力装置は、
微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜と、
一方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた電極からなる第1電極対と、
他方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に、前記電極と直角になる向きに各々設けられた電極からなる第2電極対と、
前記第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加する手段と、
一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるように2つの点でタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧を測定する手段と、
前記タッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定する手段と、
前記測定された電圧および電流の値に基づいて、2つのタッチ点の軌跡を判別する判別手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
なお上記第1および第2の電極対は、先に説明した従来装置におけるX電極対およびY電極対と同様のものである。
【0015】
なお上記判別手段は、上記分圧された電圧および/または上記電流の変化の方向に基づいて前記軌跡を判別するものとされるのが望ましい。さらに上記判別手段は、上記分圧された電圧および/または上記電流の単位時間当たりの変化量に基づいて前記軌跡を判別するものとされてもよい。
【0016】
また、本発明によるタッチパネル入力装置においては、上記分圧された電圧を測定する手段と上記電流を測定する手段とが、互いに異なる期間にそれぞれ測定を行うように構成されていることが望ましい。
【0017】
また、本発明によるジェスチャ検出方法は、
微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜と、
一方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた第1電極対と、
他方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に、上記電極と直角になる向きに各々設けられた第2電極対とを備えてなるタッチパネル入力装置において、
前記第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加し、
一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるように2つの点でタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧並びに、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定し、
それらの測定された電圧および電流の値に基づいて、2つのタッチ点の軌跡を判別することを特徴とするものである。
【0018】
なお、この本発明によるジェスチャ検出方法においては、上記軌跡を、上記分圧された電圧および/または上記電流の変化の方向に基づいて判別することが望ましい。さらに上記軌跡を、上記分圧された電圧および/または上記電流の単位時間当たりの変化量に基づいて判別するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明によるジェスチャ検出方法においては、上記分圧された電圧と上記電流とを、互いに異なる期間にそれぞれ測定することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタッチパネル入力装置は、上述の通りの2枚の抵抗膜と、第1電極対と、第2電極対と、電圧印加手段と、電圧測定手段と、電流測定手段と、判別手段とを備えたものであるので、この判別手段は抵抗膜に2点でタッチがなされたとき、上記電圧測定手段が測定した電圧つまり、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧に基づいて2つのタッチ点の略中間点の位置を求め、また上記電流測定手段が測定した電流つまり、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流に基づいて2つのタッチ点間の距離を知ることができる。このようにして、2つのタッチ点の略中間点の位置並びにそれらの点間の距離が分かれば、基本的に、2つのタッチ点が全体的にどのように移動しているか、そしてそのとき2つのタッチ点間の距離はどのように変化しているかを知ることができるので、従来装置では検出が不可能であった、2つのタッチ点による複雑なジェスチャを検出可能となる。
【0021】
また、本発明によるジェスチャ検出方法は、上述の通りの2枚の抵抗膜と、第1電極対と、第2電極対とを備えてなるタッチパネル入力装置において、第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加し、一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるように2つの点でタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧並びに、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定し、それらの測定された電圧および電流の値に基づいて2つのタッチ点の軌跡を判別するようにしているので、上記と同様にして、2つのタッチ点による複雑なジェスチャを検出可能となる。
【0022】
なお、上記の分圧された電圧と上記電流とを、互いに異なる期間にそれぞれ測定する場合は、それらをより高精度に測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるタッチパネル入力装置の概略構成を示す斜視図
【図2】上記タッチパネル入力装置の電気的構成を示す回路図
【図3】上記タッチパネル入力装置における2枚の抵抗膜の状態を示す概略側面図
【図4】上記抵抗膜に1点でタッチがなされた状態を示す概略側面図
【図5】上記抵抗膜に2点でタッチがなされた状態を示す概略側面図
【図6】上記タッチパネル入力装置にタッチがなされないときの抵抗膜等の等価回路図
【図7】上記タッチパネル入力装置に1点でタッチがなされたときの抵抗膜等の等価回路図
【図8】上記タッチパネル入力装置に2点でタッチがなされたときの抵抗膜等の等価回路図
【図9】上記タッチパネル入力装置におけるタッチ点の軌跡例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるタッチパネル入力装置1の概略構成を示すものである。このタッチパネル入力装置1は、基板10上に配置された四辺形状の抵抗膜11と、この抵抗膜11の上に微小間隔を置いて配置されたカバーシートとしての抵抗膜12と、抵抗膜11の図中左右の辺の縁部に各々該抵抗膜11と電気的に導通する状態にして固定された電極13、14と、抵抗膜12の図中上下の辺の縁部に各々該抵抗膜12と電気的に導通する状態にして固定された電極15、16とを有している。上記電極13〜16は制御回路20に接続され、この制御回路20には直流電源21および判別部22が接続されている。
【0025】
抵抗膜11、12は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる薄いフィルム状の支持体上に、一様な電気抵抗率を有する導電性膜が層状に形成されてなるものである。これらの抵抗膜11、12は、上記導電性膜が形成された面が対面する状態に配され、図示外の絶縁性スペーサを両者の間に介設する等により、常時は上述のように互いに微小間隔を置いて向き合うように配設されている。なお抵抗膜11の方は、上述の支持体は用いずに、基板10上の上に直接塗膜として形成されてもよい。
【0026】
また、基板10が例えばその上面に液晶表示素子等の表示素子を形成しているものである場合は、そこに表示される内容と、タッチパネル入力装置1による入力とを連係させることができる。そうする場合は、抵抗膜11、12を透明材料から形成することが望まれるが、そのような透明な抵抗膜11、12は例えば酸化インジウムスズ(ITO)、導電性ポリマー、炭素ナノチューブ含有膜等を用いて構成することができる。
【0027】
上記の電極13および14は図1のX方向、つまり抵抗膜11、12の図中上下の辺と平行な方向に向き合っており、これらの電極13および14の対をX電極対(第1電極対)と称する。他方電極15および16は上記X方向と直角なY方向、つまり抵抗膜11、12の図中左右の辺と平行な方向に向き合っており、これらの電極15および16の対をY電極対(第2電極対)と称する。
【0028】
次に図2を参照して、制御回路20について詳しく説明する。ここに示される通り制御回路20は、後述する分圧された直流電圧を測定する電圧計30と、この電圧計30の出力を所定の範囲内の電圧信号に変換する変換回路31と、この変換回路31が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器32とを有している。またこの制御回路20は、後述する直流電流を測定する電流計40と、この電流計40の出力を所定の範囲内の電圧信号に変換する変換回路41と、この変換回路41が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器42とを有している。
【0029】
さらにこの制御回路20は、一方の抵抗膜11に固定された電極13を直流電源21に接続する経路に設けられたスイッチSW1と、他方の抵抗膜12に固定された電極15を直流電源21に接続する経路に設けられたスイッチSW2と、それら2つの経路のいずれかを選択的に前記電圧計30に接続する状態および、該経路のいずれをも電圧計30に接続しない状態(中間位置)を取り得るスイッチSW3と、一方の抵抗膜11に固定された電極14を電流計40に接続する経路に設けられたスイッチSW4と、他方の抵抗膜12に固定された電極16を電流計40に接続する経路に設けられたスイッチSW5と、これらのスイッチSW4、SW5を電流計40に接続する状態と、接地させる状態とを選択的に取り得るスイッチSW6とを有している。
【0030】
以上の通りの制御回路20は、ディスクリート回路から構成されてもよいし、あるいは集積回路から構成されてもよい。また図1に示した判別部22は、一般にはマイクロコンピュータ等から構成される。
【0031】
次に、このタッチパネル入力装置1の作用について説明する。このタッチパネル入力装置1の表側の抵抗膜11にタッチがなされていない状態を、図3の概略断面図に示す。また図4には、上記抵抗膜11に1つの点50でタッチがなされた状態を概略的に示し、そして図5には、上記抵抗膜11に2つの点51、52でタッチがなされた状態を概略的に示す。
【0032】
上述のようなタッチ点は、以下の通りにして検出される。図2に示した制御回路20はタッチ入力を検出する際、次の(a)〜(d)の期間に、包含するスイッチ類を以下の通りに設定する。
【0033】
(a)スイッチSW1:閉、スイッチSW2:開、スイッチSW3:電極15と接続、スイッチSW4:閉、スイッチSW5:開、スイッチSW6:接地側と接続
(b)スイッチSW1、SW2、SW4およびSW5は(a)期間と同じ状態、スイッチSW3:中間位置(電極13、15のいずれにも接続しない状態)、スイッチSW6:電流計40側と接続
(c)スイッチSW1:開、スイッチSW2:閉、スイッチSW3:電極13と接続、スイッチSW4:開、スイッチSW5:閉、スイッチSW6:接地側と接続
(d)スイッチSW1、SW2、SW4およびSW5は(c)期間と同じ状態、スイッチSW3:中間位置、スイッチSW6:電流計40側と接続
そしてこれらの期間(a)〜(d)の長さはそれぞれ所定の微小時間とされ、期間(a)、(b)、(c)、(d)、(a)、(b)・・・・というように周期的に繰り返して設定される。なお図2は、上記(a)の期間における状態を示している。
【0034】
上記(a)、(b)の期間ではそれぞれ、X方向に関してタッチ点の位置、タッチ点の間隔が求められ、(c)、(d)の期間ではそれぞれ、Y方向に関してタッチ点の位置、タッチ点の間隔が求められる。
【0035】
すなわち、まず(a)の期間では、図4のように1点のタッチ入力であると、そのときの抵抗膜11、12等の等価回路は図6に示すものとなる。なお同図において、Rxは抵抗膜11の抵抗、Ryは抵抗膜12の抵抗、Rtは接触抵抗を示している(以下、同様)。このとき直流電源21によって、抵抗膜11の電極13および14の間に印加されている直流電圧は、タッチ点50において分圧され、接触抵抗Rtおよび抵抗膜12の抵抗Ryを介して、その分圧された電圧が電圧計30によって測定される。上記分圧された電圧は、電極13からタッチ点までの間の抵抗膜11の抵抗、つまりはその間の距離に対応するので、電圧計30が測定した電圧に基づいて電極13からタッチ点までの距離、つまりタッチ点のX方向位置を求めることができる。
【0036】
一方、(a)の期間において、図5のように2点のタッチ入力がなされていると、そのときの抵抗膜11、12等の等価回路は図7に示すものとなる。なお同図において、Rt1、Rt2は接触抵抗を示している。このとき2つのタッチ点で分圧された電圧は、一方のタッチ点のみで分圧された場合の電圧と、他方のタッチ点のみで分圧された場合の電圧とのほぼ中間的な値を取るので、この場合は、電圧計30が測定した電圧に基づいて、電極13から2つのタッチ点のほぼ中間点までの距離、つまり概略その中間点のX方向位置を求めることができる。
【0037】
次に上記(b)の期間において、図5のように2点のタッチ入力がなされていると、そのときの抵抗膜11、12等の等価回路は図8に示すものとなる。したがってこの場合は、電極13と電極14との間に流れる直流電流が、電流計40によって測定される。このとき、電極13と電極14との間の抵抗は、抵抗膜11自身の抵抗Rxと、その一部に対して並列に接続している接触抵抗Rt1、接触抵抗Rt2並びに、抵抗膜12のタッチ点間の抵抗Ry0との合成抵抗となる。そして上記タッチ点間の抵抗Ry0は、2つのタッチ点間のX方向距離に比例するので、上記電流計40によって測定される電流に基づいて、2つのタッチ点間のX方向距離を知ることができる。
【0038】
なお、前述した特許文献3にも記載されているように、2点でタッチ入力がなされたときの上記合成抵抗は、1点でタッチ入力がなされたとき、あるいはタッチがなされていないときの合成抵抗と比べて、明らかに低い値を取る。そこで、上記電流計40の出力信号を閾値処理することにより、タッチ入力無しあるいは1点タッチの状態か、あるいは2点タッチの状態であるかを判別することも可能である。
【0039】
以上、期間(a)および(b)において、X方向に関する1つのタッチ点の位置、2つのタッチ点のほぼ中間点の位置、および2つのタッチ点間の距離の検出について説明したが、期間(c)および(d)においては、Y方向に関して同様に1つのタッチ点の位置、2つのタッチ点のほぼ中間点の位置、および2つのタッチ点間の距離が検出される。それらの検出の仕方は、上述したX方向に関する場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0040】
電圧計30の出力信号は、図2に示す変換回路31によって所定の範囲内の電圧信号に変換され、次いでA/D変換器32によりA/D変換され、1つのタッチ点の位置あるいは2つのタッチ点のほぼ中間点のXおよびY方向位置を示すデジタル信号Dvとして出力される。また電流計40の出力信号は、図2に示す変換回路41によって所定の範囲内の電圧信号に変換され、次いでA/D変換器42によりA/D変換され、2つのタッチ点間のXおよびY方向に関する距離を示すデジタル信号Diとして出力される。
【0041】
上述したように2つのタッチ点のほぼ中間点の位置を示すデジタル信号Dvおよび、2つのタッチ点間の距離を示すデジタル信号Diは判別部22に入力され、該判別部22はそれらの信号DvおよびDiの時間経過に伴う変化に基づいて、2つのタッチ点51、52の軌跡を判別する。
【0042】
すなわち、デジタル信号Dvは2つのタッチ点のほぼ中間点のX方向位置を示す成分と、Y方向位置を示す成分とが所定の周期で繰り返すものとなるので、判別部22はそれらの各成分の値、および各成分の変化の方向に基づいて、上記中間点つまりは2つのタッチ点がXおよびY方向に関して、どの位置からどの方向に移動しているかを検出することができる。このとき、2つのタッチ点の移動速度がより大であれば、上記各成分の単位時間当たりの変化量もより大きくなるので、この単位時間当たりの変化量に基づいてタッチ点の移動速度も検出可能である。
【0043】
また、デジタル信号Diは2つのタッチ点間のX方向距離を示す成分と、Y方向距離を示す成分とが所定の周期で繰り返すものとなるので、判別部22はそれらの各成分の値、および各成分の変化の方向に基づいて、2つのタッチ点間のX方向距離およびY方向距離が、どれだけの値からどのように増大あるいは減少しているかを検出することができる。このとき、2つのタッチ点間の距離の変化速度がより大であれば、上記各成分の単位時間当たりの変化量もより大きくなるので、この単位時間当たりの変化量に基づいて、2つのタッチ点間の距離の変化速度も検出可能である。
【0044】
以上のようにして判別部22によれば、例えば図9の(1)、(2)、(3)および(4)に矢印で示すような2つのタッチ点51、52の軌跡、つまり例えば2本の指で抵抗膜12上においてなされるジェスチャを判別可能となる。判別部22は、そのようにして検出したジェスチャを示す判別信号Doutを出力する。
【0045】
なお図9における53は、上記デジタル信号Dvにより、2つのタッチ点51、52のほぼ中間の点として示される点を示している。また、判別部22が判別可能であるタッチ点51、52の軌跡は、勿論、図9に示したものに限られる訳ではない。
【0046】
図9に示すようなジェスチャは、何らかの処理を行う上でのトリガとして利用することができる。一例として、基板10がいわゆる電子ブックを表示する表示素子を表面に備えたものである場合は、例えば同図(1)のジェスチャは表示範囲を下方向にスクロールするためのトリガとして、(2)のジェスチャはページを一時閉じるためのトリガとして、(3)のジェスチャはページ送りをロックするためのトリガとして、(4)のジェスチャはページ送りをするためのトリガとして使用することができる。
【0047】
また、基板10がいわゆる電子ゲームの表示画面となる表示素子を表面に備えたものである場合は、2つのタッチ点の軌跡をそのまま表示素子に表示させて、例えば砂の上に2本の指で文字や図形を描かせるようなシーンを作り出すことができる。
【0048】
なお、以上説明した実施形態においては、電圧計30による電圧検出と、電流計40による電流検出とを時間を分けて別個に行っているが、それらの検出は同時に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 タッチパネル入力装置
10 基板
11、12 抵抗膜
13、14、15、16 電極
20 制御回路
21 直流電源
22 判別部
30 電圧計
31、41 変換回路
32、42 A/D変換器
51、52 タッチ点
53 中間点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜と、
一方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた電極からなる第1電極対と、
他方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に、前記電極と直角になる向きに各々設けられた電極からなる第2電極対と、
前記第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加する手段と、
一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるように2つの点でタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧を測定する手段と、
前記タッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定する手段と、
前記測定された電圧および電流の値に基づいて、2つのタッチ点の軌跡を判別する判別手段とを有することを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項2】
前記判別手段が、前記分圧された電圧および/または前記電流の変化の方向に基づいて前記軌跡を判別するものであることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル入力装置。
【請求項3】
前記判別手段が、前記分圧された電圧および/または前記電流の単位時間当たりの変化量に基づいて前記軌跡を判別するものであることを特徴とする請求項1または2記載のタッチパネル入力装置。
【請求項4】
前記分圧された電圧を測定する手段と前記電流を測定する手段とが、互いに異なる期間にそれぞれ測定を行うように構成されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のタッチパネル入力装置。
【請求項5】
微小間隔を置いて対面する状態に配置された2枚の抵抗膜と、
一方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に各々設けられた第1電極対と、
他方の抵抗膜の互いに向き合う2辺の縁部に、上記電極と直角になる向きに各々設けられた第2電極対とを備えてなるタッチパネル入力装置において、
前記第1電極対の間および第2電極対の間に電圧を印加し、
一方の抵抗膜を他方の抵抗膜に接触させるように2つの点でタッチがなされたとき、第1電極対間および第2電極対間についてタッチ点で分圧された電圧並びに、第1電極対間および第2電極対間に流れる電流を測定し、
それらの測定された電圧および電流の値に基づいて、2つのタッチ点の軌跡を判別することを特徴とするジェスチャ検出方法。
【請求項6】
前記軌跡を、前記分圧された電圧および/または前記電流の変化の方向に基づいて判別することを特徴とする請求項5記載のジェスチャ検出方法。
【請求項7】
前記軌跡を、前記分圧された電圧および/または前記電流の単位時間当たりの変化量に基づいて判別することを特徴とする請求項5または6記載のジェスチャ検出方法。
【請求項8】
前記分圧された電圧と前記電流とを、互いに異なる期間にそれぞれ測定することを特徴とする請求項5から7いずれか1項記載のジェスチャ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88762(P2012−88762A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232410(P2010−232410)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(500549870)タッチパネル・システムズ株式会社 (7)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】