説明

タッチパネル用赤外近接センサ校正装置

【課題】赤外近接センサの経年劣化を確実に、且つ容易に検出すると共に、その検出結果によって赤外近接センサの赤外線照射を行うLEDに対する電流量を所定量自動的に増量可能とした「タッチパネル用赤外近接センサ校正装置」とする。
【解決手段】物体がタッチパネルの表面にタッチしたことを検出したとき、その検出開始時点を検出する。またタッチパネルの表面に物体が近接したことを赤外近接センサによって検出する。タッチパネルへのタッチ検出時に、そのタッチが赤外近接センサの近接検出範囲であるとき、タッチの検出開始時点よりも第1所定時間前の時点以降で、それよりも短い第2所定時間前の間に赤外近接センサが物体の近接を検出していないときには、赤外近接センサは経年劣化しているものと判別して、赤外近接センサの赤外線照射電流を所定量増量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等のディスプレイ表面にタッチパネルを貼付し、利用者の指や操作物体のタッチを検出して入力信号とするとき、そのタッチパネルの表面に利用者の指や手等が近付いたときにそれを検出して、タッチを検出する前の更なる信号とするためのタッチパネル用赤外近接センサに関し、特にその赤外近接センサの経年劣化等による誤作動を生じないようにする校正手段を備えた、タッチパネル用赤外近接センサ校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりパソコン、携帯情報端末、携帯電話、携帯オーディオ装置、ナビゲーション装置等々の各種機器において、それらの機器の情報を表示するディスプレイにはタッチパネルを貼付し、ディスプレイに表示されたメニュー等の各種設定画面にタッチすることによって、利用者の指示を入力することが行われている。
【0003】
このようなタッチパネルによって、利用者の指示を容易に入力することができ、極めて有効であるが、ほとんどのタッチパネルにおいては原則として利用者の指や指示部材をタッチパネルに接触し、また押圧力を付与するものが多い。そのため、特に指でタッチする場合には指の汚れがディスプレイに付着し、画面が次第に汚れてくることもある。そのため、タッチパネルの操作を行わずに、タッチパネルに手や指等が接近したことを検出することが望まれることが多い。そのような場合、タッチパネルの表面に物体が近付いたことを検出する近接センサを用いている。
【0004】
このような近接センサは、上記のような場合のほか、タッチパネルによって利用者が何らかの指示を入力しようとしたとき、タッチパネルを操作する前に利用者の指や手の接近を検出し、利用者が何らかの指示を行いたいということを予測して、通常の表示画面状態から例えばメニュー画面を表示する等の、利用者の意志を予測した作動を行うことも可能となる。
【0005】
更に近年の携帯電話ではスマートフォンのように、情報機器としての各種機能を備え、携帯情報端末と同様の機能を行うことができるようになっている。そのためこのようなスマートフォンで、例えば種々の機能を行うメニュー画面を表示しているとき、電話がかかってくるときにはそのまま電話を受信するために電話の受話口部分に耳を近づけることとなる。
【0006】
特にそのスマートフォンの送話口部分と受話口部分の距離が短いときには、受話口を耳から遠ざけることができないことが多く、受話口をできるだけ口に近づけようとすると、頬等がタッチパネル部分に当たり、タッチパネルのメニュー画面部分に頬等が当接することにより誤作動が開始されることがある。このような誤作動を防止するために、特に受話口及びその周辺のタッチパネル部分をカバーする前記のような近接センサを用い、受話口等の周辺に物体が近付いたことを検出したときには、タッチパネルの機能を停止する等の作動を行うようにするためにも、前記のような近接センサを用いている。
【0007】
このような近接センサとして、従来より種々のものが用いられており、磁界の変化を利用した誘導式、絶縁体を挟んだ電極間の静電容量の変化を検出する静電容量式、超音波の送信と、物体に当たって反射してくる電波を受信する超音波式、同様に赤外線を照射し、物体に当たって反射してくる赤外線を受信する赤外線式等が存在する。
【0008】
この中で赤外線式は、赤外線の照射部をLED素子化し、受光部も素子化するとともに、その制御回路及び物体近接検出回路等を全て1つにチップ化することができ、小型で安価であるため広く用いられている。このような赤外近接センサは、特に前記のような各種情報機器に広く用いられ、スマートフォン等の携帯電話にも用いられている。この赤外近接センサの使用例を図5(a)に模式化して示しており、図示の例では各種情報機器のディスプレイとしての液晶パネル35の表面にタッチパネル34を貼り、その表面に接近する指36等の物体を、タッチパネル34の表面をカバーする赤外近接センサ31で検出することができるようにしている。
【0009】
この赤外近接センサ31は、液晶パネル35のフレームにおいて、タッチパネルの表面に沿って所定の高さで赤外線を照射する赤外線照射部32を備え、そこで照射した赤外線が指36等に当たって反射してきたものを、赤外線照射部32に隣接して設けた赤外線受光部33で受光することによって、タッチパネルに利用者の指等の物体が近接したことを検出している。
【0010】
赤外近接センサは、前記のようにワンチップ化した素子を適宜の間隔で並べて配置することにより、赤外近接センサ全体のカバー範囲の幅を任意に設定することができ、液晶パネル全体、即ちタッチパネル全体をカバーすることができると共に、任意の位置に任意の幅で近接センサのカバー範囲を設定することができる。
【0011】
前記のような赤外近接センサを用いると、パルス状に照射する赤外光が物体に当たって反射してきた赤外光の時間を経時的に検出することによって、物体の移動をほぼ正確に検出することができる。そのため、例えばディプレイ画面に書籍の任意のページを表示しているとき、次のページを表示させたいときにはタッチパネルに指等を接触させることなく、タッチパネルに手のひら等を接近させて特定の方向に横移動させることによるページめくりを行う操作を検出し、次ページ表示を行う、等の作動も可能となる。したがってこのような作動を行うためにも、近接赤外センサは広範囲に用いられるようになっている。
【0012】
なお、前記のような赤外近接センサを用いて、タッチパネルに触ることなく赤外近接センサで手のひらの動き等を検出し、特定の作動を行わせる技術は特許文献1に開示されている。また、赤外近接センサの赤外線照射を止めた状態で外部からの赤外線を検出して記憶しておき、赤外近接センサの赤外線照射による近接センサ作動時には、物体から反射してくる赤外光の受光量から記憶していた外部の赤外線光量を減算して、その値が所定以上か否かを判別することにより赤外近接センサの経年変化を判別する技術は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−191288号公報
【特許文献2】特開2003−337657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
赤外近接センサは前記のような種々の特性を用いて広く用いられているが、これを長期間使用していると、特に赤外線照射LED部分が劣化し、赤外線の照射量が次第に低下してくる。そのため、通常は例えば図5(b)に示すように、赤外近接センサが液晶パネル全体を覆うタッチパネルの全幅に亘ってセンサ域をカバーしているとき、この赤外近接センサの物体近接検出距離、即ち赤外近接センサ正常カバー範囲L1は、タッチパネルを超えて処置距離になるように設定している。
【0015】
このように初期設定している赤外近接センサについて、その後の長時間の使用による経年劣化等によって、赤外近接センサのカバー範囲は図5(c)に赤外近接センサ経年劣化カバー範囲L2として示すようにカバー範囲が狭くなり、それによってカバー不足部分L3を生じることとなる。
【0016】
同様に、図5(d)に示すスマートフォンのように、特に受話口37に耳等が接近したことを検出する赤外近接センサの場合は、受話口37付近に耳等の物体が接近したことを検出するため、受話口37付近を覆う程度の検出設定範囲Wだけ、赤外近接センサで検出するように配置するものも用いられている。それにより、カバー範囲L4となるように初期設定しているとき、経年劣化によって同図(e)に示すようにカバー範囲L5となり、タッチパネルに対するカバー不足部分L6を生じることがある。
【0017】
図5(c)及び(e)に示すように、経年劣化によってカバー不足部分が生じるときには、それらの赤外近接センサの作動が不完全となる。その際にはこれらの機器の誤作動や、特定の機能が行われない作動不能を生じることがある。このような赤外近接センサの経年劣化に対応するため、前記特許文献2に開示されている技術では前記のように、赤外光の受光量から周囲の赤外線光量を減算した受光量によって、その値が所定以上か否かを判別することにより赤外近接センサの経年劣化を判別するため、周囲が特に明るい環境下では物体から反射してくる赤外光の受光量の変化割合は少なく、正確に劣化を検出することができない。特に、赤外近接センサの劣化による受光量の減少に応じて赤外近接センサの赤外線照射の光量を増量しようとして、供給電流量を増加させるときには、適切な値の電流増加は期待できず、別途正確な調整作業を行う必要が生じる。
【0018】
したがって本発明は、赤外近接センサの経年劣化を確実に、且つ容易に検出することができ、また、その検出結果によって赤外近接センサの赤外線照射を行うLEDに対して、適切な電流量の増量を自動的に行うことができるようにしたタッチパネル用赤外近接センサ校正装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るタッチパネル用赤外近接センサ校正装置は、前記課題を解決するため、物体がタッチパネルの表面にタッチしたことを検出するタッチ検出手段と、前記タッチパネルの表面に物体が近接したことを、照射した赤外線の物体からの反射を受光することにより検出する赤外近接センサと、前記タッチパネルに物体がタッチしたことを検出したとき、当該タッチの検出開始時点を検出するタッチ検出開始時点検出手段と、前記赤外近接センサで物体の近接を検出したとき、当該物体の近接検出開始時点を検出する赤外近接センサ検出開始時点検出手段と、前記タッチ検出開始時点検出手段で検出したタッチ検出開始時点と、前記赤外近接センサ検出開始時点検出手段で検出した物体近接検出開始時点とを比較する検出開始時点比較手段と、前記検出開始時点比較手段で、タッチ検出開始時点より第1所定時間前の時点以降に赤外近接センサ検出開始時点が存在しないことを検出したとき、赤外近接センサが不適正であると判別する赤外近接センサ不適正判別手段と、前記赤外近接センサ不適正判別手段で赤外近接センサが不適正であると判別したとき、赤外近接センサの赤外線照射電流を増量する赤外線照射電流調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置は、前記タッチパネル用赤外近接センサ校正装置において、前記赤外近接センサ不適正判別手段では、前記検出開始時点比較手段で、タッチ検出開始時点より、前記第1所定時間より短い第2所定時間前の時点以降に赤外近接センサ検出開始時点が存在するとき、赤外近接センサが不適正であると判別することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る他のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置は、前記タッチパネル用赤外近接センサ校正装置において、赤外近接センサの予め設定した検出範囲内のタッチパネルにタッチしたか否かを検出する赤外近接センサ設定検出範囲タッチ検出手段を備え、前記赤外近接センサ不適正判別手段では、前記赤外近接センサ設定検出範囲タッチ検出手段でタッチパネルへの物体のタッチは赤外近接センサの設定検出範囲外であることを検出したとき、赤外近接センサの不適正判別処理を行わないようにしたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る他のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置は、前記タッチパネル用赤外近接センサ校正装置において、前記赤外線照射電流調整手段には、前記赤外近接センサ不適正判別手段で赤外近接センサが不適正であると判別したとき、赤外線照射電流を所定量ずつ増量する電流所定量増量手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る他のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置は、前記タッチパネル用赤外近接センサ校正装置において、前記赤外近接センサをスマートフォンに適用し、当該赤外近接センサにより受話口近傍の範囲のみに物体の近接を検出するように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のように構成したので、赤外近接センサの経年劣化を確実に、且つ容易に検出することができ、また、その検出結果によって赤外近接センサの赤外線照射を行うLEDに対して、適切な電流量の増量による校正処理を、自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例の機能ブロック図である。
【図2】同実施例の作動フロー図である。
【図3】同実施例の作動態様を説明する図である。
【図4】同実施例の他の作動態様を説明する図である。
【図5】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1は本発明におけるタッチパネル用赤外近接センサにおいて、特に経年劣化に応じて校正処理を行うための機能ブロック図を主として示しており、本発明を各種の態様で実施することができるようにした機能ブロック図を示している。なお、同図において、各機能を行う機能部は、それぞれ各機能を行う手段ということができる。
【0027】
図1の実施例においては前記図5(a)と同様の構成からなる赤外近接センサの実施例を示しており、図示の例では各種情報機器のディスプレイとしての液晶パネル4の表面にタッチパネル5を貼り、その表面に接近する指6等の物体を、タッチパネル5の表面をカバーする赤外近接センサ1で検出することができるようにしている。
【0028】
この赤外近接センサ1は、液晶パネル4のフレームにおいて、タッチパネル5の表面に沿って所定の高さで赤外線を照射する赤外線照射部2を備え、そこで照射した赤外線が指6等に当たって反射してくる赤外線を、赤外線照射部2に隣接して設けた赤外線受光部3で受光することによって、タッチパネルに利用者の指6等の物体が近接したことを検出している。
【0029】
前記赤外近接センサ1については更に詳細にブロック図に示しており、赤外線照射部2に赤外線照射電流調整部7を備え、赤外線を照射するLEDの電流を調整可能としている。特にその中の電流所定量増加部8においては、後述する赤外近接センサ経年劣化校正処理部14で赤外近接センサが経年劣化により不適正な作動を行っていることを検出したとき、その信号を入力して赤外近接センサの赤外線照射電流を、予め設定した所定量だけ増加する作動を行う。
【0030】
また、赤外近接センサ1の赤外線受光部3は、指6等に当たって反射してくる赤外光を受光し、それにより近接物体検出部9は物体の近接を検出して、近接物体検出出力部10からその信号を外部に出力する。この出力信号は、通常の作動に際しては例えばメニュー画面の表示信号とし、或いはスマートフォンにおける受話口に対する耳や顔の接近によるタッチパネル非作動信号等に用いる。本発明においてはこの物体検出出力部10の信号は、赤外近接センサ経年劣化校正処理部14の、赤外近接センサ検出開始時点検出部15にも出力している。
【0031】
タッチパネル5については、従来から用いられているタッチパネルを用いるものであり、そこには従来のものと同様にタッチ検出部11を備え、タッチ位置検出部2では従来のものと同様に液晶パネルの表面におけるX−Y座標の位置を検出する。その信号はタッチ検出出力部13から外部に出力され、液晶画面に表示された例えばメニュー画面における特定の機能の指示信号等に用いる。本発明においてはその出力信号を、赤外近接センサ経年劣化校正処理部14におけるタッチセンサ検出開始時点検出部16にも出力している。
【0032】
赤外近接センサ経年劣化校正処理部14においては、本発明の赤外近接センサ1の経年劣化を校正するための処理を行うものであり、これは赤外近接センサを用いる各機器の一機能として備えることができるが、赤外センサ1のチップにソフトウエアと共に組み込むこともできる。
【0033】
赤外近接センサ経年劣化校正処理部14における赤外近接センサ検出開始時点検出部15、及びタッチセンサ検出開始時点検出部16では、図示の実施例においては、それぞれの検出信号の検出開始時点を示す信号を形成している。
【0034】
この作動は例えば図3に示すように、最初同図(a)のようなタッチパネル表面に沿って赤外近接センサにより赤外線を照射しているとき、同図(b)に示すように操作者の指がタッチパネルに近接して、赤外線照射領域にはいると、前記のように赤外近接センサの受光部が指に当たって反射した赤外線を受光し、指等の物体が接近したことを検出する。その時、図1の赤外近接センサ1は前記のように物体検出出力部10から検出信号を出力する。
【0035】
その後図3(c)に示すように、指が更にタッチパネルに近付き、タッチパネルに接触し、或いは更にタッチパネルを押圧すると、図1のタッチパネル5のタッチ検出出力部13はタッチ信号を出力する。この時のタッチ信号は、特定の部分を一瞬だけ押す場合と、それを引きずるようにタッチする場合等、種々の態様が存在する。
【0036】
図3(d)には前記赤外近接センサ検出信号と、タッチセンサ検出信号の検出例を示しており、赤外近接センサ検出信号は時刻t1で検出を開始し、タッチセンサは時刻t2で検出を開始している。その後タッチセンサは指等による短時間のタッチを検出した後、時刻t3でタッチの検出を終了している。この期間中において、赤外近接センサは物体からの反射波により物体の近接を検出している。更にその後時刻t4において赤外近接センサは指等の物体がそのセンサの検出範囲外となり、検出を終了している。
【0037】
このような赤外近接センサとタッチセンサの各検出信号について、図示の実施例では図3(e)に示すように、各信号の検出開始時期に対応した信号である、赤外近接センサ検出開始信号と、タッチセンサ検出開始信号を形成している。これらの信号は図1の赤外近接センサ検出開始時点検出部15と、タッチセンサ検出開始時点検出部16で行うことができる。
【0038】
図1の検出開始信号比較部17では、前記図3(e)に示すような赤外近接センサ検出開始信号の信号立ち上がり時刻t1と、タッチセンサ検出開始信号の立ち上がり時刻t2とを比較し、それらの信号の各種態様によって、赤外近接センサ不適正判別部19と赤外近接センサ適正判別部22が判別処理を行っている。
【0039】
図1に示す例においては赤外近接センサ経年劣化校正処理部14に、赤外近接センサ設定検出範囲内タッチ検出部18を備え、前記のようにタッチパネル5におけるタッチ検出部11のタッチ位置検出部12で、タッチした位置を検出したとき、そのタッチした位置が赤外近接センサが初期設定している赤外線照射範囲内であるか否かを検出している。
【0040】
即ち、前記図5(d)に示すスマートフォンの場合、赤外近接センサ検出設定範囲はタッチパネルの一部である場合があり、このような場合も本発明において確実に作動できるように、タッチ位置が同図の赤外近接センサ検出設定範囲内であることを検出したときに、図1の各適正、不適正判別部19、22で判別を行うようにしている。
【0041】
赤外近接センサ不適正判別部19では、ここで赤外近接センサが不適正であると判別したときには経年劣化していると判別するものであり、図1に示す例では所定時間内(Ta)赤外近接センサ非検出判別部20で、例えば図4(b)に示すように、タッチセンサ検出信号が入力するよりも所定時間(Ta)前の時刻以降に赤外近接センサ検出信号が入力していなかったとき、赤外近接センサは不適正であると判別する、
【0042】
即ち図4に示す例においては、同図(a)に示すように、スマートフォンの受話口37近傍に耳等の物体が存在するときにはタッチパネルのメニュー画面等の操作信号の入力をキャンセルするため、赤外近接センサ検出設定範囲を設定している場合において、前記図5(e)のように経年劣化によってカバー不足部分が生じているときには、そのカバー不足部分にタッチした際には、この時の赤外近接センサではタッチを行った指等を検出することができない。
【0043】
そのため、図4(b)のように、タッチセンサ検出信号が入力した時刻t2より所定時間(Ta)前の時点以降には、赤外近接センサは非検出となる。この時の所定時間(Ta)は、通常のタッチパネルへのタッチ操作、或いは前記のようなスマートフォンにおいて、受話口を耳に当ててから電話を傾けてタッチパネルが頬等に当たる時間等の各種態様を考慮して決定する。
【0044】
図1の赤外近接センサ不適正判別部19における赤外近接センサ入力信号不適正判別部21では、図4(c)に示すように、タッチセンサ検出信号よりも前に赤外近接センサ検出信号が存在していても、予め設定した非検出設定最小時間幅Tbよりも短い時間幅Tであるときには、この赤外近接センサの検出信号はタッチセンサで検出したタッチの時の物体近接物とは別の物体の検出信号であると判別し、これは赤外近接センサ入力信号が不適正であると判別する。
【0045】
即ち、図3(a)に示す状態から同図(b)のように赤外近接センサが指等を検出し、その後タッチセンサにタッチするまでの時間は、定常作動状態で最も早い場合でも所定時間Tbが必要であるのに対して、それよりも短い時間で赤外近接センサによる物体検出が行われていたということは、このときの赤外近接センサで検出した信号は、別の信号である、とすることが適切である。そのため、この実施例では前記のような最小時間幅Tbを設定し、これよりも短い時間幅Tの赤外近接センサの信号検出では不適正であると判別する。
【0046】
前記のように、図1の赤外近接センサ経年劣化校正処理部14における、所定時間内赤外近接センサ非検出判別部20で、タッチセンサでタッチ信号を検出したときそれよりも前の所定時間(Ta)内に、赤外近接センサの信号を検出していないとき、及び赤外近接センサ入力信号不適正判別部21で、タッチセンサでタッチを検出してから時間幅Tだけ前に赤外近接センサの信号を検出していても、その時間幅Tが最小時間幅Tbよりも短いときには、それぞれ赤外近接センサは不適正であると判別し、その判別信号を赤外近接センサ1における赤外線照射電流調整部7に出力する。赤外線照射電流調整部7では電流所定量増加部8において、赤外線を照射しているLEDが劣化したものとして電流を所定量だけ増量する。
【0047】
それに対して図1の赤外近接センサ適正判別部22では、図4(d)に示すように、同図(b)の前記非検出設定最大時間幅Taと、同図(c)の非検出設定最小時間幅Tbの間に赤外近接センサの検出信号が存在するときには、赤外近接センサで物体の接近を検出した後、適正な時間にタッチセンサが物体によるタッチを検出したと判別する。その時には前記の赤外近接センサ不適正判別部での判別結果による赤外近接センサの電流量調整は行わない。
【0048】
なお、図1に示す例においては、赤外近接センサの信号入力時期と、タッチセンサの信号入力時期との関係を確実に判別するため、それぞれの信号が入力したときの検出開始信号を形成した例を示したが、それ以外に例えばそれぞれの検出開始信号入力時刻のt1、t2、t3等をRAMに記憶しておき、その時刻による前記各時間幅を演算することによって、赤外近接センサが入力してから所定時間幅内にタッチセンサの検出開始信号が存在するか否かを判別することにより実施することもできる。
【0049】
図1に示す機能ブロックからなる実施例においては、例えば図2に示す作動フローにより順に作動させることによって実施することができる。図2に示す赤外近接センサ経年劣化校正処理の例においては、最初に赤外近接センサとタッチパネルの信号入力を検出している(ステップS1)。即ち、本発明は図4に示すようにタッチパネルの表面に赤外近接センサの検出部分を配置し、その信号を検出することによって作動するものであるため、最初に赤外近接センサとタッチパネルの信号入力を検出する作動を継続して行っている。
【0050】
次いでタッチセンサが物体のタッチを検出したか否かを判別する(ステップS2)。ここで未だタッチセンサが物体のタッチを検出していないと判別したときには、ステップS1に戻って前記各信号の入力の検出を継続する。ステップS2でタッチセンサが物体のタッチを検出したと判別したときには、ステップS3において、タッチした位置は赤外近接センサの物体近接検出設定範囲か否かを判別する。この判別に際しては、例えば図4(a)、及び前記図5(d)(e)に示すように、スマートフォン等において受話口37近辺に赤外近接センサの検出設定範囲があるとき、図4(a)のタッチポイントCのように赤外近接センサ検出設定範囲外であるときには、本発明による赤外近接センサの校正処理を行うことは適切ではない。したがってそのような場合はステップS1に戻って前記作動を繰り返す。
【0051】
それに対して図4(a)のタッチポイントBについては、図5(d)に示すように本来の近接センサ検出設定範囲であるため、本発明における赤外近接センサの校正処理を行うことが可能な範囲である。そのためステップS3では、タッチした位置は赤外近接センサの物体近接検出設定範囲であると判別する。
【0052】
また、このステップS3においてタッチした位置は赤外近接センサの物体近接検出設定範囲であると判別したとき、即ち図4(a)に示すタッチポイントAにタッチしていた際には、ステップS4に進んで第1所定時間幅(Ta)前の時点以降に赤外近接センサが物体の接近を検出したか否かを判別する。
【0053】
ステップS4で例えば図4(b)に示すように、非検出設定最大時間幅である第1所定時間幅(Ta)前の時点以降に、赤外近接センサの信号を入力していなかったと、前記ステップS1で検出していた信号によって判別したときには、ステップS7に進んで、赤外近接センサの経年劣化と判別し、それによりステップS8で赤外近接センサの赤外線発光用電流値を所定量増量する。この時に増量する電流は、現在供給している電流の10%増、或いは予め定めた一定量等、種々の態様で増量することができる。
【0054】
この作動は図1の赤外線近接センサ経年劣化校正処理部14における赤外近接センサ不適正判別部19の、所定時間内(Ta)赤外近接センサ非検出判別部20でこれを判別し、赤外近接センサ1における赤外線照射部2の赤外線照射電流調整部7で、電流を所定量増量することにより行っている。
【0055】
ステップS4で第1所定時間幅(Ta)前の時点以降に赤外タッチセンサが物体の接近を検出していたと判別したときには、ステップS5に進んで、物体の近接検出は第2の所定時間幅(Tb)より後か否かを判別する。ここで物体の近接検出は第2所定時間幅(Tb)より後であると判別したとき、即ち図4(c)に示すように、タッチセンサ検出信号の入力の前に赤外近接センサの信号が入力していたものの、その信号は非検出設定最小時間幅、即ち第2所定時間幅(Tb)より後に検出していたと判別したときには、ステップS7に進み、今回検出していた赤外近接センサの信号は、今回検出したタッチセンサのタッチ操作とは関係のない検出信号であると判別する。
【0056】
その結果、ここでは実質的に前記ステップS4と同様に、今回のタッチパネルのタッチ検出の前の第1所定時間幅(Ta)の時点以降に、赤外近接センサが物体の接近を検出していなかったことと同様と見なして、ステップS7において赤外近接センサが経年劣化したものと判別する。そのため、ステップS8において赤外近接センサの赤外線発光用電流値を所定量増量し、ステップS1に戻って前記作動を繰り返す。
【0057】
ステップS5で物体の近接検出は第2所定時間幅(Tb)より後ではないと判別したときには、図2の例ではステップS6に進んで赤外近接センサは正常と判定し、以降はステップS1に戻って前記作動を繰り返す。したがって、赤外近接センサが正常の時にはこのステップS6を通る処理が繰り返されることとなる。
【0058】
また、ステップS7で赤外近接センサの経年劣化と判別することにより、ステップS8で赤外近接センサの赤外線発光用電流値を所定量増大した後において、ステップS1に戻って前記作動を繰り返すとき、そのときの電流値の増大量を小さくすると、複数回の電流増量処理によって徐々に校正される結果、あまり大きな増量を行わなくても、最低限の増量によって赤外近接センサの校正処理を行うことができ、無駄な増量、或いは過剰な赤外近接センサの範囲の拡大設定がなされることがなく、赤外近接センサの作動が安定する。
【符号の説明】
【0059】
1 赤外近接センサ
2 赤外線照射部
3 赤外線受光部
4 液晶パネル
5 タッチパネル
6 指
7 赤外線照射電流調整部
8 電流所定量増加部
9 近接物体検出部
10 近接物体検出出力部
11 タッチ検出部
12 タッチ位置検出部
13 タッチ検出出力部
14 赤外近接センサ経年劣化校正処理部
15 赤外近接センサ検出開始時点検出部
16 タッチセンサ検出開始時点検出部
17 検出開始時点比較部
18 赤外近接センサ設定検出範囲内タッチ検出部
19 赤外近接センサ不適正判別部
20 所定時間内(Ta)赤外近接センサ非検出判別部
21 赤外近接センサ入力信号不適正判別部
22 赤外近接センサ適正判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体がタッチパネルの表面にタッチしたことを検出するタッチ検出手段と、
前記タッチパネルの表面に物体が近接したことを、照射した赤外線の物体からの反射を受光することにより検出する赤外近接センサと、
前記タッチパネルに物体がタッチしたことを検出したとき、当該タッチの検出開始時点を検出するタッチ検出開始時点検出手段と、
前記赤外近接センサで物体の近接を検出したとき、当該物体の近接検出開始時点を検出する赤外近接センサ検出開始時点検出手段と、
前記タッチ検出開始時点検出手段で検出したタッチ検出開始時点と、前記赤外近接センサ検出開始時点検出手段で検出した物体近接検出開始時点とを比較する検出開始時点比較手段と、
前記検出開始時点比較手段で、タッチ検出開始時点より第1所定時間前の時点以降に赤外近接センサ検出開始時点が存在しないことを検出したとき、赤外近接センサが不適正であると判別する赤外近接センサ不適正判別手段と、
前記赤外近接センサ不適正判別手段で赤外近接センサが不適正であると判別したとき、赤外近接センサの赤外線照射電流を増量する赤外線照射電流調整手段とを備えたことを特徴とするタッチパネル用赤外近接センサ校正装置。
【請求項2】
前記赤外近接センサ不適正判別手段では、前記検出開始時点比較手段で、タッチ検出開始時点より、前記第1所定時間より短い第2所定時間前の時点以降に赤外近接センサ検出開始時点が存在するとき、赤外近接センサが不適正であると判別することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置。
【請求項3】
赤外近接センサの予め設定した検出範囲内のタッチパネルにタッチしたか否かを検出する赤外近接センサ設定検出範囲タッチ検出手段を備え、
前記赤外近接センサ不適正判別手段では、前記赤外近接センサ設定検出範囲タッチ検出手段でタッチパネルへの物体のタッチは赤外近接センサの設定検出範囲外であることを検出したとき、赤外近接センサの不適正判別処理を行わないようにしたことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置。
【請求項4】
前記赤外線照射電流調整手段には、前記赤外近接センサ不適正判別手段で赤外近接センサが不適正であると判別したとき、赤外線照射電流を所定量ずつ増量する電流所定量増量手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置。
【請求項5】
前記赤外近接センサをスマートフォンに適用し、当該赤外近接センサにより受話口近傍の範囲のみに物体の近接を検出するように設定したことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用赤外近接センサ校正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate