説明

タッチパネル装置

【課題】電極指の交差幅を維持して表面弾性波の回折を防止しつつ、額縁部を狭くしたタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】本発明は、入力面10aを有する基板10と、入力面10aの外周に設けられた送信子12及び受信子とを有し、受信子が検出した表面弾性波に基づいて入力面10aに接触した物体の位置を計測するタッチパネル装置であって、送信子12及び受信子が、基板10上に設けられ、第1方向に対して垂直方向に延びる第1電極指30を有する第1電極16と、第1電極16上に設けられた第1圧電体層と、第1圧電体層上に設けられた共通電極と、共通電極上に設けられた第2圧電体層と、第2圧電体層上に共通電極に対向して設けられ、第1電極指30と平面視で交差すると共に、第2方向に対して垂直方向に延びる第2電極指32を有する第2電極24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、パーソナルコンピュータ等の小型情報電子機器の普及に伴い、表示画面上に指又はペンなどの物体を接触させることにより入力操作を行う、いわゆるタッチパネル機能が付加された表示装置が広く利用されている。
【0003】
ここで、指,ペンなどの物体の接触位置を検出する方法としては、抵抗膜を用いた装置と超音波を用いた方法が良く知られている。前者の抵抗膜を用いた装置では、抵抗膜に物体が接触することによって生じるその抵抗膜の抵抗値の変化を検知し、物体の接触位置を検出する。一方、後者の超音波を用いた装置では、表示画面上に弾性表面波を伝播させ、表示面に物体が接触する際の弾性表面波の減衰を検知して、物体の接触位置を検出する。両方法とも優れた面を有するが、特に超音波を用いたタッチパネル装置は、応答時間、検出性能、及び耐久性の面で、抵抗膜を用いた装置よりも優れている。
【0004】
以下に、超音波を用いたタッチパネル装置の構成について説明する。
タッチパネル装置は、ガラスからなる表面波が搬送される基板を有し、表面波が搬送される矩形状の基板上の周縁の額縁部には、2方向へ弾性表面波を励振する励振素子が対向する辺側にそれぞれ設けられている。さらに、2方向からの弾性表面波を受信する受信素子が励振素子が設けられていない対向する辺側にそれぞれ設けられている。励振素子又は受信素子は、櫛型電極と共通電極とに挟持された圧電素子から構成されている。櫛型電極は、途中で屈曲させてV字状をなす複数の電極指から構成されている。このような構成にあっては、励振素子にて弾性表面波が2方向に励振され、励振された弾性表面波が非圧電基板の対角2方向に伝播されて受信素子で受信され、その受信結果に基づいて、物体の接触の有無及びその接触位置が検出される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−30083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、櫛形電極は途中で屈曲させてV字状をなす複数の電極指から構成されている。これは、表面弾性波を基板面の2方向に分配することにより、基板上の入力面の全面に表面弾性波を伝播させるためである。
しかしながら、V字状の電極指の形状とした場合には、1個の電極指から2方向の表面弾性波を出力させるため、電極指を直線状に形成した場合と比較して、電極指の交差幅が広くなってしまう。そこで、電極指の交差幅を小さくすることで、タッチパネル装置の額縁部を狭くする方法も考えられる。しかし、V字状の電極指から2方向に伝播される表面弾性波同士の回折を防止するためには、電極指は一定の交差幅を有する必要があった。このように、従来のタッチパネル装置のように、V字状の櫛型電極とした場合には、電極指の交差幅が広くなり、タッチパネル装置の額縁部が広くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極指の交差幅を維持して表面弾性波の回折を防止しつつ、額縁部を狭くしたタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタッチパネル装置は、上記課題を解決するために、入力面を有する基板と、前記入力面において異なる方向に表面弾性波を発信させる送信子と、前記表面弾性波を検出する受信子とを有し、前記受信子が検出した前記表面弾性波に基づいて前記入力面に接触した物体の位置を計測するタッチパネル装置であって、前記送信子及び前記受信子の少なくとも一方が、前記基板上に設けられ、第1電極指を有する第1電極と、少なくとも前記第1電極を覆うように配置された第1圧電体層と、前記第1圧電体層上に設けられた共通電極と、前記共通電極上に設けられた第2圧電体層と、前記第2圧電体層上に、前記共通電極に対向して設けられ、前記第1電極指と平面視で交差する第2電極指を有する第2電極と、を備えていることを特徴とする。例えば、前記第1電極指は、前記第1電極全体の延在方向に対して斜めに配置され、前記第2電極指は、前記第2電極全体の延在方向に対して斜めに配置された構成とすることができる。
【0008】
この構成では、第1電極指と第2電極指とを平面視で交差(重畳)させて2層構造とするため、従来の2方向に延びるV字状の電極指を同一平面上に形成する場合と比較して、平面視で見た第1電極及び第2電極の交差幅が小さくなる。これにより、送信子及び受信子の小型化が図られ、非入力面(基板の額縁部)の幅を狭くすることができる。従って、タッチパネル装置全体の小型化を図ることができる。
また、この構成によれば、第1電極と第2電極とを2層構造とすることで、額縁部の幅を狭くしつつ、第1電極指及び第2電極指の交差幅を一定に維持することができる。これにより、第1方向及び第2方向の表面弾性波の回折を防止することができる。
【0009】
また本発明のタッチパネル装置は、前記第1圧電体層及び第2圧電体層の少なくとも一方が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、及びニオブ酸リチウム(LiNbO3)の群から選択される少なくとも一種以上の材料を有することも好ましい。
【0010】
また本発明のタッチパネル装置は、前記送信子に駆動信号を供給する制御手段を備え、前記制御手段が、前記送信子の前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに独立かつ異なる周期で前記駆動信号を供給することも好ましい。
【0011】
従来、2方向の表面弾性波を同時に発信させるV字状の電極指の場合には、電極指が連続して構成されている。そのため、駆動信号が同時に電極指に供給されるため、静電容量が大きくなってしまった。これに対し、本発明によれば、第1電極及び第2電極が2層構造で独立して構成されるため、駆動信号を異なる周期で供給することができる。従って、第1電極及び共通電極間、第2電極及び共通電極間の静電容量が同時に発生することがないため、同時に駆動信号を供給する場合と比較して、タッチパネル装置に生じる静電容量の総量を低減させることができる。これにより、瞬間的な消費電流の低減を図ることができ、携帯機器などの場合に問題となる電池の重放電を抑制する事が可能となり、長寿命化を図ることが可能となる。
【0012】
また本発明のタッチパネル装置は、前記制御手段が、前記第1電極に前記駆動信号を供給し、前記受信子が前記駆動信号に基づいた表面弾性波を検出した後、前記第2電極に前記駆動信号を供給することも好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1電極及び共通電極間に生じる静電容量と、第2電極及び共通電極に生じる静電容量とが重複して生じない。従って、タッチパネル装置に生じる静電容量の総量を低減させることができ、瞬間的な消費電流の低減を図ることができる。
【0014】
また本発明のタッチパネル装置は、前記入力面の外周には前記基板の辺方向に延びる電極基部が設けられ、前記第1電極指及び前記第2電極指の同じ端部側のそれぞれが前記電極基部に接続されていることも好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1電極の第1電極指と第2電極の第2電極指とは同一の電極基部に接続される。そのため、各第1電極及び第2電極毎に電極基部を形成する場合と比較して、非入力面(基板の額縁部)の幅を狭くすることができる。さらに、電極基部を共有化することで、静電容量の低減、及び瞬間的な消費電流の低減を図ることができる。
【0016】
また本発明のタッチパネル装置は、前記第1圧電体層の上面が平坦となっていることも好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1圧電体層の上面が平坦となっているため、第1圧電体層から発信する弾性表面波の反射が防止される。これにより、弾性表面波の損失を最小限に抑制することができ、送信子から弾性表面波を効率的に発信させることができる。
また、第1圧電体層の上面を平坦とすることで、第2圧電体層も平坦に形成することができる。
【0018】
また本発明のタッチパネル装置は、前記送信子から発信する表面弾性波の波長をλ、第1圧電体層の膜厚をH1、第2圧電体層の膜厚をH2、2π/λをkとしたとき、第1圧電体層のkH1が0.05〜0.5であり、第2圧電体層のkH2が0.05〜0.4であることも好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1圧電体層のkH1及び第2圧電体層のkH2を上記範囲とすることにより、電気機械結合係数(k)を大きくすることができ、より損失が少ない表面弾性波波形が得られる。従って、消費電極の低減や耐ノイズ性の向上を図ることができる。
【0020】
また本発明のタッチパネル装置は、入力面を有する基板と、前記入力面において異なる方向に表面弾性波を発信させる送信子と、前記表面弾性波を検出する受信子とを有し、前記受信子が検出した前記表面弾性波に基づいて前記入力面に接触した物体の位置を計測するタッチパネル装置であって、前記送信子及び前記受信子が、前記基板上に設けられ、第1電極指を有する第1電極と、少なくとも前記第1電極を覆うように配置された圧電体層と、前記圧電体層上に設けられ、前記第1電極と平面視で交差する第2電極指を有する第2電極と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
この構成では、第1電極指と第2電極指とを平面視で交差(重畳)させて2層構造とするため、従来の2方向に延びるV字状の電極指を同一平面上に形成する場合と比較して、平面視で見た第1電極及び第2電極の交差幅が小さくなる。これにより、送信子及び受信子の小型化が図られ、非入力面(基板の額縁部)の幅を狭くすることができる。従って、タッチパネル装置全体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、タッチパネル装置100の座標入力面10a側の概略構成を示す平面図である。
図1に示すように、タッチパネル装置100は、ガラス等の透明材料からなる平面視矩形状の基板10を有する。基板10の一面側には、ユーザが実際に指などで入力を行う座標入力面10a(図1中一点差線で囲まれた領域)が設けられている。
【0024】
基板10の座標入力面10aの外周の額縁部10bには、図1に示すように、第1方向D1及び第2方向D2の表面弾性波を座標入力面10a上に発信する送信側トランスデューサー12(送信子)と、送信側トランスデューサー12から発信された表面弾性波を検出する受信側トランスデューサー14(受信子)とが設けられている。送信側トランスデューサー12は基板10の左辺側及び右辺側のそれぞれに対向して設けられ、受信側トランスデューサー14は基板10の上辺側及び下辺側のそれぞれに対向して設けられている。なお、第1方向D1及び第2方向D2は、矩形状の座標入力面10aの隣接する辺の比率に基づいて規定される。本実施形態においては、座標入力面10aが正方形であり、隣接する辺の比率が1:1である。そのため、第1方向D1は基板10の下辺10cに対して−45°傾いた角度の方向であり、第2方向D2は基板10の下辺10cに対して+45°傾いた角度の方向である。
【0025】
次に、送信側トランスデューサー12と受信側トランスデューサー14の構成を説明する。
図2は、図1に示す領域S(図1中二点鎖線で囲まれた領域)を拡大した平面図である。図2のA−A’線に沿った断面図である。なお、図2においては、第1電極16及び第2電極24の構成を詳細に説明するため、第1圧電膜18及び第2圧電膜22については省略する。
【0026】
図2、図3に示すように、送信側トランスデューサー12及び受信側トランスデューサー14は、第1電極16と、第1圧電膜18(第1圧電体層)と、共通電極20と、第2圧電膜22(第2圧電体層)と、第2電極24とを備えている。
【0027】
平面的に見ると、図1及び図2に示すように、第1電極16は、基板10の各辺に沿って延びる第1バス電極26と、第1バス電極26から第1方向D1に対して垂直方向に延びる複数の第1電極指30とを有する。複数の第1電極指30は第1バス電極26の延びる方向に等間隔に配置され、隣接する第1電極指30,30同士が互いに平行となっている。このように、第1電極16は、第1バス電極26と第1電極指30とにより一体的に構成され、平面視櫛形構造を有する。
【0028】
第2電極24は、第1電極16と同様に、基板10の各辺に沿って延びる第2バス電極28と、第2バス電極28から第2方向D2に対して垂直方向に延びる第2電極指32とを有する。第2バス電極28は、第1バス電極26よりも座標入力面10a側に、略電極指30,32の長さLだけ間隔を空けて形成されている。本実施形態において、第2電極指32は、第1電極指30と平面視で交差するように形成されている。また、複数の第2電極指32は、第2バス電極28の延びる方向に第1電極指30と同じ間隔で配置され、隣接する第2電極指32,32同士が互いに平行となっている。このように、第2電極24は、第2バス電極28と第2電極指32とにより一体的に構成され、平面視櫛形構造を有する。
【0029】
共通電極20は、第1バス電極26と第2バス電極28との間に、第1電極指30と第2電極指32と平面視で重なるようにして形成されている。これにより、第1電極指30と共通電極20との重なる部分で一対の電極が構成され、第2電極指32と共通電極20との重なる部分で一対の電極が構成される。なお、共通電極20は第1バス電極26(第2バス電極28)と平面視で重ならないように設けられるため、この部分での静電容量の発生を低減させることができる。
【0030】
断面的に見ると、図3に示すように、ガラスからなる基板10上には、第1バス電極26及び第1電極指30を有する第1電極16が形成されている。第1電極16の材料としてはAl、Au、Pt、Mo、Ta、又はWおよびその合金群などが好適に用いられる。この第1電極指30は、基板10上にスパッタ法により金属材料を成膜し、この金属材料をフォトリソグラフィー法により櫛型にパターニングすることにより形成される。
【0031】
第1電極16上には第1圧電膜18が形成されている。第1圧電膜18の材料としては、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)の群から選択される少なくとも一種以上の材料が好適に用いられる。このとき、第1圧電膜18の上面は、第1電極16の厚みが反映されて凹凸となる。そのため、第1圧電膜18の上面には平坦化処理が施されている。この第1圧電膜18は、パターニングされた第1電極指30上にスパッタ法により圧電材料を成膜し、この圧電材料をフォトリソグラフィー法により矩形状にパターニングすることにより形成される。
【0032】
平坦化された第1圧電膜18上の全面にはAl等からなる共通電極20及び酸化亜鉛からなる第2圧電膜22が順に積層されている。また、第2圧電膜22上には、第2バス電極28と第2電極指32とを有する第2電極24が形成されている。なお、第2圧電膜22及び第2電極24の形成方法及び材料については、上記第1圧電膜18及び第1電極16と同様である。
【0033】
図1に戻り、左辺側の送信側トランスデューサー12の第1バス電極26、第2バス電極28、及び共通電極20の下端部には引き廻し配線34が接続されている。引き廻し配線34の端部には駆動信号が入力及び出力される入力部及び出力部が設けられ、この入力部及び出力部には後述する駆動回路が接続されている。右辺側の送信側トランスデューサー12、上辺側及び下辺側の受信側トランスデューサー14についても同様である。なお、引き廻し配線34は基板10の周縁の一箇所に集約しても良い。
【0034】
次に、第1圧電膜18及び第2圧電膜22の最適な膜厚について図3、図4を参照して説明する。
図4は、第1圧電膜18及び第2圧電膜22のk(電気機械結合係数)とkHとの関係を示すグラフである。なお、横軸は第1圧電膜18及び第2圧電膜22のkHを示し、左側の縦軸は電気機械結合係数を示し、右側の縦軸は第1圧電膜18及び第2圧電膜22に印加する電圧を示す。
【0035】
本実施形態においては、図3に示すように、第1圧電膜18の膜厚をH1とし、第2圧電膜22の膜厚をH2とする。そして、第1圧電膜18及び第2圧電膜22から発信する表面弾性波の波長をλとし、2π/λをkとする。
一般的に、第1圧電膜18及び第2圧電膜22のk(電気機械結合係数)は、kとH1,H2との積に依存する。そのため、本実施形態においては、第1圧電膜18及び第2圧電膜22の膜厚Hや表面弾性波λの波長を制御することにより、最適な第1圧電膜18のkH1び第2圧電膜22のkH2を設定する。第1圧電膜18のkH1としては、図4に示すように、0.05〜0.5が最適であり、第2圧電膜22のkH2としては、図4に示すように、0.05〜0.4が最適である。このように、第1圧電膜kH1及び第2圧電膜kH2を上記範囲内に設定することにより、kを0.5%以上にすることができ、より挿入損失が少ない波形が得られ、消費電流の低減や耐ノイズ性の向上を図ることができる。
【0036】
次に、タッチパネル装置100の駆動回路50について図5及び図6を参照して説明する。
図5はタッチパネル装置100の駆動回路50のブロック図であり、図6は送信側トランスデューサー12が発信した包絡線波形及び受信側トランスデューサー14が検出した包絡線波形を示すグラフである。
【0037】
タッチパネル装置100の駆動回路50(制御手段)は、図5に示すように、CPU52と、第1発信器54と、第2発信器56と、マルチプレクサ58と、A/D変換器60とを有する。
【0038】
図5に示すように、CPU52は、第1発信器54及び第2発信器56のそれぞれに接続されている。第1発信器54は送信側トランスデューサー12の第1電極16に接続され、第2発信器56は送信側トランスデューサー12の第2電極24に接続されている。また、受信側トランスデューサー14の第1電極16及び第2電極24のそれぞれは、図5に示すように、マルチプレクサ58に接続され、マルチプレクサ58はA/D変換器60に接続され、A/D変換器60はCPU52に接続されている。
【0039】
まず、CPU52は、第1発信器54に駆動信号を供給する。第1発信器54は、CPU52から供給された駆動信号に基づいて、数MHz〜数十MHzの正弦波形のバースト駆動信号を第1電極16に供給する。このとき、マルチプレクサ58は、CPU52の第1発信器54への駆動信号の出力に基づいて、受信側トランスデューサー14の第1電極16側にスイッチを合わせる。
【0040】
第1電極16に駆動信号が供給されると、第1電極16及び共通電極20間に電圧が印加され、図6に示すように、第1圧電膜18から座標入力面10a上に第1方向D1の弾性表面波(発信信号S1)が発信される。第1方向D1の表面弾性波は、座標入力面10a上の対角方向に伝播され、受信側トランスデューサー14の第1電極16に検出される。
【0041】
受信側トランスデューサー14の第1電極16は、図6に示すように、送信側トランスデューサー12の第1電極16から発信された表面弾性波(受信信号S1)を検出する。検出された表面弾性波は、マルチプレクサ58を介して増幅器により増幅された後、復調器によって交流成分が除去され、交流成分が除去された包絡線波形がA/D変換器60に供給される。A/D変換器60は、供給された包絡線波形をサンプリング化、及び量子化して電気信号に変換し、変換した電気信号をCPU52に供給する。
【0042】
CPU52は、第1電極16に対応する電気信号を検出すると、続けて、第2発信器56に正弦波形のバースト駆動信号を供給する。このとき、マルチプレクサ58は、CPU52の第2発信器56への駆動信号の出力に基づいて、受信側トランスデューサー14の第2電極24側にスイッチを合わせる。
【0043】
第2電極24に駆動信号が供給されると、第2電極24及び共通電極20間に電圧が印加され、図6に示すように、第2圧電膜22から座標入力面10a上に第2方向D2の弾性表面波(発信信号S2)が発信される。なお、第1電極16から発信される発信信号S1と第2電極24から発信される発信信号S2との間隔は例えば10msecである。第2方向D2の表面弾性波は、座標入力面10a上の対角方向に伝播され、受信側トランスデューサー14の第2電極24に検出される。
【0044】
受信側トランスデューサー14の第2電極24は、図6に示すように、送信側トランスデューサー12の第2電極24から発信された表面弾性波(受信信号S2)を検出する。検出された表面弾性波は、上述したように、電気信号に変換され、CPU52に供給される。
【0045】
このように、本実施形態に係るタッチパネル装置100の駆動回路50は、図6に示すように、送信側トランスデューサー12の第1電極16が発信した発信信号S1を受信側トランスデューサー14の第1電極16が受信信号S1として検出した後に、送信側トランスデューサー12の第2電極から発信信号S2を発信させる。つまり、駆動回路50は、各信号が互いに重複しないように異なる周期で制御する。
【0046】
なお、上記実施形態では、各信号が互いに重複しないように制御したが、これに限定されることはない。具体的には、送信側トランスデューサー12の発信信号S1及び受信信号S1と、受信側トランスデューサー14の発信信号S2及び受信信号S2とが一部重複しても位相がずれていれば良い。
【0047】
本実施形態によれば、第1電極指30と第2電極指32とを平面視で交差(重畳)させて2層構造とするため、従来の2方向に延びるV字状の電極指を同一平面上に形成する場合と比較して、平面視で見た第1電極16及び第2電極24の交差幅が小さくなる。これにより、送信側トランスデューサー12及び受信側トランスデューサー14の小型化が図られ、非入力面(基板10の額縁部)の幅を狭くすることができる。従って、タッチパネル装置100全体の小型化を図ることができる。
【0048】
また、従来、2方向の表面弾性波を同時に発信させるV字状の電極指の場合には、電極指が連続して構成されている。そのため、駆動信号が同時に電極指に供給されるため、静電容量が大きくなってしまった。これに対し、本実施形態によれば、第1電極16及び第2電極24が2層構造で独立して構成されるため、駆動信号を異なる周期で供給することができる。従って、第1電極16及び共通電極20間、第2電極24及び共通電極20間の静電容量が同時に発生することがないため、同時に駆動信号を供給する場合と比較して、タッチパネル装置100に生じる静電容量の総量を低減させることができる。これにより、消費電流の低減を図ることができる。
また、本実施形態によれば、第1電極16と第2電極24とを交差させて2層構造とすることで、額縁部10cの幅を狭くしつつ、第1電極指30及び第2電極指32の交差幅を一定に維持することができる。これにより、第1方向D1及び第2方向D2の表面弾性波の回折を防止することができる。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、第1電極16と第2電極24とが独立して構成されるため、第1電極16及び共通電極20間に生じる静電容量と、第2電極24及び共通電極20に生じる静電容量とが重複して生じない。従って、タッチパネル装置100に生じる静電容量の総量を低減させることができ、消費電流の低減を図ることができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本実施形態について図面を参照して説明する。
上記実施形態では、送信側トランスデューサー及び受信側トランスデューサーを、第1電極、第1圧電膜、共通電極、第2圧電膜、及び第2電極から構成していた。これに対し、本実施形態では、送信側トランスデューサー及び受信側トランスデューサーを、第1電極、圧電膜、及び第2電極から構成している点において上記実施形態と異なる。なお、その他のタッチパネル装置の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図7は、図1に示す領域T(図1中二点鎖線で囲まれた領域)を拡大した平面図である。図8のA−A’線に沿った断面図である。
図7及び図8に示すように、送信側トランスデューサー12及び受信側トランスデューサー14は、第1電極16と、圧電膜36(圧電体層)と、第2電極24とを備えている。なお、以下の説明において、平面構造は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0052】
断面的に見ると、図8に示すように、ガラスからなる基板10上には、第1バス電極26と第1電極指30とを有する第1電極16が形成されている。第1電極16上には圧電膜36が形成されている。このとき、圧電膜36の上面は、第1電極指30の厚みが反映されて凹凸となる。そのため、圧電膜36の上面には平坦化処理が施されている。平坦化された圧電膜36上には第2バス電極28と第2電極指32とを有する第2電極24が形成されている。
【0053】
本実施形態においては、第1電極指30と第2電極指32との互いに交差する部分で一対の電極が構成される。そして、第1電極16と第2電極24とに駆動信号を供給すると、第1電極指30と第2電極指32とに挟持される圧電膜36に電圧が印加され、この圧電膜36から第1方向D1及び第2方向D2に表面弾性波が発信される。
【0054】
本実施形態によれば、第1電極指30と第2電極指32とを平面視で交差(重畳)させて2層構造とするため、従来の2方向に延びるV字状の電極指を同一平面上に形成する場合と比較して、平面視で見た第1電極16及び第2電極24の交差幅が小さくなる。これにより、送信側トランスデューサー12及び受信側トランスデューサー14の小型化が図られ、非入力面(基板10の額縁部10b)の幅を狭くすることができる。従って、タッチパネル装置100全体の小型化を図ることができる。
【0055】
[第3の実施の形態]
次に、本実施形態について図面を参照して説明する。
上記実施形態では、第1電極及び第2電極のそれぞれにバス電極を設けていた。これに対し、本実施形態では、1本のバス電極に第1電極と第2電極とが接続されている点において上記実施形態と異なる。なお、その他のタッチパネル装置の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
図9は、送信側トランスデューサー12及び受信側トランスデューサー14の要部構成を拡大した平面図である。
図9に示すように、基板10の各辺に沿って共通バス電極40(電極基部)が形成されている。共通バス電極40の座標入力面10a側には、第1電極指30と第2電極指32とが互いに交差するようにして形成されている。第1電極指30及び第2電極指32の左辺側の端部のそれぞれは共通バス電極40に接続されている。つまり、1本の共通バス電極40に第1電極指30と第2電極指32との両方が接続されている。
【0057】
本実施形態によれば、第1電極16の第1電極指30と第2電極24の第2電極指32とは同一の共通バス電極40に接続される。そのため、各第1電極16及び第2電極24毎に共通バス電極40を形成する場合と比較して、非入力面(基板10の額縁部)の幅を狭くすることができる。さらに、共通バス電極40を共有化することで、静電容量の低減、及び消費電流の低減を図ることができる。
【0058】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の一例について説明する。
図10は、上述したタッチパネル装置を備える携帯電話(電子機器)を示した斜視図である。
図10に示すように、携帯電話600は、ヒンジ122を中心として折り畳み可能な第1ボディ106aと第2ボディ106bとを備えている。そして、第1ボディ106aには、タッチパネル装置を有する液晶装置601と、複数の操作ボタン127と、受話口124と、アンテナ126とが設けられている。また、第2ボディ106bには、送話口128が設けられている。
本実施形態に係る電子機器によれば、額縁部を狭くすることができるため、電子機器の小型化を図ることができる。
【0059】
なお、上述したタッチパネル機能を有するタッチパネル装置100は、上記携帯電話以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上記実施形態では、送信側トランスデューサー及び受信側トランスデューサーを第1電極と第2電極とが交差した2層構造を採用した。これに対し、送信側トランスデューサーを本実施形態のように2層構造とし、受信側トランスデューサーを従来のように第1電極と第2電極とが同一平面上に連続して形成されたV字状の電極としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態に係るタッチパネル装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】同、トランスデューサーの要部を示す拡大平面図である。
【図3】同、トランスデューサーの構成を示す拡大断面図である。
【図4】同、圧電膜のkとkHとの関係を示すグラフである。
【図5】同、駆動回路の構成ブロック図である。
【図6】同、受信側トランスデューサーが検出した包絡線波形を示すグラフである。
【図7】第2実施形態に係るトランスデューサーの構成を示す拡大平面図である。
【図8】同、トランスデューサーの構成を示す拡大断面図である。
【図9】第3実施形態に係るトランスデューサーの構成を示す拡大平面図である。
【図10】携帯電話の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
10…基板、 10a…座標入力面、 12…送信側トランスデューサー(送信子)、 14…受信側トランスデューサー(受信子)、 16…第1電極、 18…第1圧電膜(第1圧電体層)、 20…共通電極、 22…第2圧電膜(第2圧電体層)、 24…第2電極、 26…第1バス電極、 28…第2バス電極、 30…第1電極指、 32…第2電極指、 34…引き廻し配線、 36…圧電膜(圧電体層)、 40…共通バス電極(電極基部)、 50…駆動回路(制御手段)、 100…タッチパネル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力面を有する基板と、前記入力面において異なる方向に表面弾性波を発信させる送信子と、前記表面弾性波を検出する受信子とを有し、前記受信子が検出した前記表面弾性波に基づいて前記入力面に接触した物体の位置を計測するタッチパネル装置であって、
前記送信子及び前記受信子の少なくとも一方が、
前記基板上に設けられ、第1電極指を有する第1電極と、
少なくとも前記第1電極を覆うように配置された第1圧電体層と、
前記第1圧電体層上に設けられた共通電極と、
前記共通電極上に設けられた第2圧電体層と、
前記第2圧電体層上に、前記共通電極に対向して設けられ、前記第1電極指と平面視で交差する第2電極指を有する第2電極と、
を備えていることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記第1電極指は、前記第1電極全体の延在方向に対して斜めに配置され、前記第2電極指は、前記第2電極全体の延在方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記第1圧電体層及び第2圧電体層の少なくとも一方が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、及びニオブ酸リチウム(LiNbO)の群から選択される少なくとも一種以上の材料を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記送信子に駆動信号を供給する制御手段を備え、
前記制御手段が、前記送信子の前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに独立かつ異なる周期で前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記第1電極に前記駆動信号を供給し、前記受信子が前記駆動信号に基づいた表面弾性波を検出した後、前記第2電極に前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記入力面の外周には前記基板の辺方向に延びる電極基部が設けられ、
前記第1電極指及び前記第2電極指の同じ端部側のそれぞれが前記電極基部に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記第1圧電体層の上面が平坦となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記送信子から発信する表面弾性波の波長をλ、第1圧電体層の膜厚をH1、第2圧電体層の膜厚をH2、2π/λをkとしたとき、
第1圧電体層のkH1が0.05〜0.5であり、第2圧電体層のkH2が0.05〜0.4であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項9】
入力面を有する基板と、前記入力面において異なる方向に表面弾性波を発信させる送信子と、前記表面弾性波を検出する受信子とを有し、前記受信子が検出した前記表面弾性波に基づいて前記入力面に接触した物体の位置を計測するタッチパネル装置であって、
前記送信子及び前記受信子が、
前記基板上に設けられ、第1電極指を有する第1電極と、
少なくとも前記第1電極を覆うように配置された圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられ、前記第1電極と平面視で交差する第2電極指を有する第2電極と、
を備えていることを特徴とするタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−15586(P2008−15586A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183123(P2006−183123)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】