説明

タッチペンのペン先

【課題】タッチパネルの操作面上に表示される文字や絵を確実にタッチして、しかも使いやすいタッチペンのペン先を提供すること。
【解決手段】タッチペンのペン先10は、ペン先元部11と、連結部12と、操作面に接触可能なタッチ部13と、を備えている。ペン先元部11を、タッチペン1の導電支持部3内に着脱可能に配置するとともに、タッチ部13より厚く形成する。タッチ部13をペン先元部11の軸心に対して傾斜するとともに薄板状に形成する。ペン先元部11とタッチ部13との間には、スリット14を形成して連結部12を変形可能とする。タッチ部13を操作面5にタッチする際、タッチ部13の一端部分132を撓ませて、一端部分132で画面上の文字や絵等にタッチする。連結部12が変形して、ペン先元部11の先端部111がタッチ部13の一端部分132の裏面側を押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネルに接触して情報をコンピュータに入力させるタッチペンのペン先に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルを利用して情報をコンピュータに入力させる装置が多く提供されてきた。当初、このタッチパネルへの入力は指を接触させて入力する手動操作で行われていた。しかし、指での入力は、指先の接触領域を狭くすることにならないから、正確な入力ができない虞があった。また、タッチパネルの操作面が指紋で汚れたり付け爪でタッチできなかったりすることから、指で入力することは操作性に対して限界があった。そのため、従来では、特許文献1に示すような入力ペンや特許文献2に示すようなタッチペンが開示されていた。特許文献1によると、この入力ペンは、静電容量検出型座標入力装置の操作面の操作に用いられるものであって、棒状の本体と、本体に連接されて本体の一端に設けられる導電部と、導電部の先端に導電部に対して回動可能に設けられる球状導電継手と、球状導電継手に一体的に結合されて導電部から突出する導電操作部と、導電部の先端に設けられた摺動型スイッチとを備えている。摺動型スイッチは、導電性操作部を操作面に接触した状態で本体をその一端側方向に押圧したとき、導電部と球状導電継手とを電気的に接続または切断するように構成されている。また、この入力ペンの先端部は、上述の球状導電継手と導電性操作部とを径小の円筒部で連結した構成となっている。入力ペンの導電部先端部においては、中空部の先端側の内径をやや小さく形成している。これにより中空部に挿入された球状導電継手が導電部に対して回動可能に配置されるとともに中空部から脱出できないようにしている。
【0003】
また、特許文献2では、静電容量型の入力装置に使用されて、導電性を有する入力ペンが開示されている。入力ペンの先端チップは、導電性金属からなる芯部材と、芯部材の先端部に外嵌する弾性体と、弾性体に被着する導電性弾性体とにより構成されている。これによると、先端チップを軽く押圧してなぞるだけで導電性弾性体が変形して所定の接触面積を得ることができる、ことが開示されている。明細書には「先端チップは50gの力で押圧した時、接触面積が直径3mmの円より大きくか直径8mmの円より小さくなるように構成すると、座標位置の精度及び電気容量を検出するのに適している。」と記載されている。つまり、先端チップを軽く押圧するだけで、弾性体、導電性弾性体が押し付けられて、弾性体、導電性弾性体が元の径より広がって希望の接触面積を得ることができ、好適に使用できるものである。
【0004】
さらに、特許文献3では、タッチパネルを傷つけることなく操作性を向上したタッチペンであって、文字を入力するために、タッチペン本体の先端を曲率半径0.5〜2mmに丸めた第1端部として形成している、ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−187329号公報
【特許文献2】特開2000−122799公報
【特許文献3】特開平09−282099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示されている従来の入力ペンは、導電部に対して回動可能に構成されているものの、球状導電継手が導電部の中空部に脱出できないように挿入されている。そのため、ペン先だけを交換することができないことから、導電性操作部が消耗した場合や損傷した場合に入力ペン自体を交換しなければならなく効率が悪くコストを高くする。また、入力ペンで操作面を操作する際、先端の円盤状部分全面を操作面に密着させるようにして接触させることになる。このことは、単に、操作面を押し付ける場合には効果があるものの、近年、操作面をスライドさせて画面を切り替えるようにした静電容量検出型座標入力装置の操作面では、密着された先端面全体をスライドさせる操作をしづらくしていた。
【0007】
また、特許文献2の入力ペンでは、入力ペンを手で持ってタッチパネルの操作面を軽く押圧すると、先端チップの接触面積が大きく広がる。そのため、上方から操作面を見ると操作面に表示されてタッチされるべき文字や絵等の対象画像が先端チップで見にくく、隣の文字や絵をタッチしてしまう虞があった。
【0008】
さらに、特許文献3のタッチペンでは、第1端部の先端が細く形成されていることから特許文献2のタッチペンとは逆に文字を選択しやすいものの、入力する際の接触面積が小さいことから反応が悪く操作しづらいことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、消耗又は損傷したペン先だけを交換できるように構成するとともに、ペン先の先端を見やすくして、タッチすべき文字や絵等の対象画像を容易に判断でき、しかも、スライド式のタッチパネルであっても容易にスライド操作できるタッチペンのペン先を提供することを目的とする。そのため、本発明に係るタッチペンのペン先を以下のように構成する。すなわち、
請求項1記載の発明では、タッチパネルに接触させて情報をコンピュータに入力させるタッチペンのペン先であって、導電性を有する高分子材料で形成され、前記タッチペンの筒状に形成された導電支持部に挿入可能に形成され、前記導電支持部に挿入するペン先元部と、前記ペン先元部に連結されて前記タッチパネルに接触するタッチ部と、を有し、前記ペン先元部と前記タッチ部との間に、スリットが形成され、前記タッチ部が、前記ペン先元部に対して薄い板状に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明に係るものであって、前記ペン先元部と前記タッチ部との間には、前記タッチ部を前記ペン先元部の軸心から傾斜するように配設する連結部を有していることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明に係るものであって、前記連結部は、前記タッチ部の軸心に対して偏心した位置に前記タッチ部と連結されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3の発明に係るものであって、前記ペン先元部は、前記導電支持部に着脱可能に配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1の発明によれば、タッチペンのペン先は、導電性を有する高分子材料で形成されたペン先元部とタッチパネルに接触するタッチ部とを備えている。ペン先元部とタッチ部との間にはスリットが形成され、タッチ部はペン先元部より薄い板状に形成されている。ペン先元部の軸方向の厚みは厚く、タッチ部はペン先元部より薄いため、タッチ部をタッチパネルの操作面に接触させると、タッチ部は薄い板状に形成されているからタッチ部の一端を容易に撓ませることができる。これにより、タッチ部全体でタッチするのではなく、タッチ部の一部で必要な接触面積を有してタッチさせることができる。また、画面上でタッチされるべき文字や絵等の対象画像が小さくても、見間違えることが少なくなり確実に必要な文字や絵等の対象画像をタッチすることができる。この際、ペン先元部の一端がスリット内を通ってタッチ部の先端を押し付けることにより、狭い接触スペースでタッチすべき文字や絵等の対象画像を確実に押し付けることができ、タッチ部でタッチした後でも、タッチした位置から画面をスライドさせることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、タッチ部がペン先元部の軸心に対して傾斜して形成されていれば、通常、鉛筆やボールペンを持つように、タッチペンを傾けるようにして手で把持することができるとともに、タッチペンの上方から見てもペン先が操作面のタッチすべき文字や絵等の対象画像を確認することができ見間違いしない。
【0015】
請求項3の発明によれば、連結部が、前記タッチ部の軸心に対して偏心した位置で前記タッチ部と連結されていれば、連結部から遠く形成された側のタッチ部の先端を変形し易くすることができる。つまり、タッチすべき文字や絵に接触させるタッチ部の接触部を、タッチ部全面ではなく、変形した一部の接触面で容易にタッチできるから、見間違えることが少なく、画面操作を容易にすることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、ペン先元部は、タッチペンの導電支持部に着脱可能に挿入されているから、ペン先の消耗や損傷の場合に、ペン先だけを交換すればよく、タッチペンごと交換する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のペン先の断面図である。
【図2】図1における側面図である。
【図3】ペン先の変形状態の作用を示す断面図である。
【図4】ペン先の別の実施形態を示す断面図である。
【図5】タッチペンで操作パネルを操作する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明のタッチペンのペン先の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
実施形態のタッチペンのペン先は、静電容量方式のタッチパネルのパネルに接触して、ソフトウェアをコントロールするものであり、パネル(操作面)に導体(指やペン先)を接触させることで、パネル表面の静電容量が変化して、この静電容量の差を検出し、ソフトウェアをコントロールすることができるものである。
【0020】
図1に示すように、実施形態のタッチペンのペン先(以下、ペン先と呼ぶ)10は、円筒棒状のタッチペン1の中空部に挿入される。タッチペン1の先端部には、中空状に形成された導電支持部3が形成されている。ペン先10は導電性を有する高分子材料で形成された円柱形状部材の先端を軸心に対して傾斜して形成するとともに、先端部を薄肉状に残してスリットを形成したものである。つまり、ペン先10は、タッチペン1の導電支持部3に挿入される厚肉状のペン先元部11と、ペン先元部11より細く形成された連結部12と、連結部12の先端に連結部12の軸心に対して傾斜して形成されるとともにタッチパネルの操作面5に接触可能な先端面131を有した薄肉状のタッチ部13と、を備えて形成されている。
【0021】
ペン先元部11は、円柱状に形成され導電支持部3に圧入して挿入されるために、導電支持部3の内径より僅かに大きく形成されている。しかし、ペン先元部11は導電支持部3より軟質の高分子材料であれば、材質の違いによりペン先元部11は導電支持部3に着脱可能に配置されることになる。
【0022】
なお、タッチペン1やペン先10の形状は上述の形態に限定するものではない。例えば、タッチペン1の導電支持部3の中空部が角筒状に形成されたもので、導電支持部3内に挿入されるペン先10が角柱状に形成されたものであってもよい。したがって、ペン先元部11及びタッチ部13も角柱状であってもよい。さらに、ペン先10の材料は、導電性を有する高分子材料であれば、詳細を限定するものではない。しかし導電支持部3より軟質のゴム材やエラストマー樹脂等で形成されているものであれば、タッチ部13が屈曲しやすいことから好適に使用することができる。
【0023】
図1〜2に示すように、連結部12は、ペン先元部11の先端において溝状に形成されたスリット14をペン先元部11の一端外周面から軸心に向かって細溝状に加工した残りの壁で形成されている。なお、連結部12のスリット14と反対の側においても、スリット状の空間部が形成されている。したがって、連結部12は、一端がペン先元部11の中心部に連結され他端がタッチ部13の端部に連結されて、ペン先元部11の軸心に対して傾斜した細幅直方体状の壁部で形成されていることになる。連結部12の形状も細幅直方体状ではなく円柱状に形成してもよい。
【0024】
タッチ部13は、タッチ部13の軸心から偏心した端部の位置においてペン先元部11の軸心から傾斜して形成された連結部12の先端に連結されて薄肉の板状に形成されている。タッチ部13の先端面131はペン先元部11の軸心に対して傾斜して形成されている。実施形態では、傾斜角度は、ペン先元部11の軸心に対して45°程度に形成されている。この傾斜角度は任意であるため、限定されるものではない。タッチ部13は、ペン先元部11より薄い板状に形成されていることから、図3(a)に示すように、タッチペン1を傾けた状態において、タッチペン1を手で握ってタッチパネルの操作面5にタッチ部13を接触させると、タッチ部13の先端面131における連結部12から遠い位置にある一端部分132が押し付けられて撓むことになる。この押し付けられた一端部分132は、撓むことによって、所定の面積を有して操作面5の文字や絵等の対象画像に接触することになる。この状態で、タッチペン1を操作面5側に押し付けると、図3(b)に示すように、連結部12が変形して、タッチ部13より厚く形成されたペン先元部11の一部の先端部、つまり、タッチ部13の一端部分132に対向している先端部111が、スリット14内を通って、タッチ部13の一端部分132の裏面部133を操作面5側に押し付けることになる。
【0025】
スリット14は、ペン先元部11とタッチ部13との間で連結部12の一方の側に細幅溝状に形成されている。
【0026】
なお、図4に示すように、タッチ部13をペン先元部11の軸心に対して傾斜させることなく直交して形成し、連結部12をペン先元部11の軸心と同方向に形成してもよい。
【0027】
この場合、図4(a)に示すように、連結部12Aの軸心とタッチ部13Aの軸心とを同一軸心上にしてもよい。スリット14Aは、連結部12Aを間にして連結部12Aの両側に形成されることになる。また、スリット14A、14Aが形成されているタッチ部13Aの外周縁部であれば、どの位置においても、操作面5に現れた文字や絵等の対象画像にタッチする一端部分132Aを好適に形成することができ、また、一端部分132Aの裏面部133Aを押すペン先元部11Aの先端部111Aがタッチ部13Aの一端部分132Aと対向する位置にあれば、先端部111Aをいずれの位置でも好適に設定することができる。
【0028】
また、図4(b)に示すように、連結部12Bの位置をペン先元部11Bとタッチ部13Bとの端部において、ペン先元部11Bとタッチ部13Bの軸心から偏心した位置に形成することもできる。この場合、スリット14Bは、溝の深さが長い方に形成され、文字や絵等の対象画像にタッチするタッチ部13Bの一端部分132Bは、タッチ部13Bにおけるスリット14B側の先端に形成されることになる。また、ペン先元部11Bの先端部111Bは、ペン先元部11Bにおけるタッチ部13Bの一端部分132Bの裏面部133Bに対向する位置に形成される。
【0029】
さらに、図4(a)における連結部12Aとタッチ部13Aを、ペン先元部11Aと別体で形成した上で組付あるいは接着にて装着してもよい。又は図4(b)における連結部12Bとタッチ部13Bにおいても、同様に、ペン先元部11Bと別体で形成して組み付け或いは接着にて装着してもよい。
【0030】
上述のように形成されたペン先10をタッチペン1の導電支持部3に挿入してタッチパネルの操作面5に接触させる作用について図5に基づいて説明する。
【0031】
図5において、タッチパネルの操作面5の画面上には、キーボードが表示されている。タッチペン1を手で握りタッチ部13の一端部分132を画面上のキーボードの一つのキーに接触させる。
【0032】
一端部分132は、タッチ部13の先端面131(図3参照)の一端に所定の接触面積を有して形成されているものであり、タッチ部13の先端面131の全面ではないから、画面上のキーボードの文字が小さくてもその位置を選択することができる。そして、タッチペン1を画面上のキーボードの文字に向かって接触させて押し付けると、連結部12(図3参照)が変形してペン先元部11の先端部111でタッチ部13の一端部分132を押えるように支持することになる。この状態においては、タッチ部13の一端部分132は、確実にタッチすべきキーをタッチしていることになり、その状態でタッチ部13を横にスライドさせれば、画面もスライドすることになる。この作用は、常時、鉛筆やボールペン等を操作するのと同様、極めて自然に行うことができる。
【0033】
上述のように、実施形態のタッチペン1のペン先10では、厚みのあるペン先元部11とスリット14を介して薄板状のタッチ部13を形成している。タッチパネルの操作面5に表示された文字や絵を選択してタッチする際、薄板状のタッチ部13の先端面全体ではなく一端部分132を撓ませて接触させるようにしたことから、対象画像の文字や絵等が小さく表示されていても、確実に対象文字や絵を選択してタッチすることができる。そして、タッチしたタッチ部13の一端部分132を厚みのあるペン先元部11の先端部111で押し付けることができることから、タッチ部13の一端部分132は強く支持されてタッチした文字や絵から離れることはない。そのため、縦や横にスライドさせれば、画面自体をスライドさせることができる。そのため、実施形態のタッチペンのペン先10を使用することにより、鉛筆やボールペン等を操作するのと同様、タッチペンを手で握る動作を自然状態で行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1、タッチペン
3、導電支持部
5、(タッチパネルの)操作面
10、ペン先
11、ペン先元部
111、先端部
12、連結部
13、タッチ部
132、一端部分
14、スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルに接触させて情報をコンピュータに入力させるタッチペンのペン先であって、
導電性を有する高分子材料で形成され、
前記タッチペンの筒状に形成された導電支持部に挿入可能に形成され、
前記導電支持部に挿入するペン先元部と、前記ペン先元部に連結されて前記タッチパネルに接触するタッチ部と、を有し、
前記ペン先元部と前記タッチ部との間に、スリットが形成され、
前記タッチ部が、前記ペン先元部に対して薄い板状に形成されていることを特徴とするタッチペンのペン先。
【請求項2】
前記ペン先元部と前記タッチ部との間には、前記タッチ部を前記ペン先元部の軸心から傾斜するように配設する連結部を有していることを特徴とする請求項1記載のタッチペンのペン先。
【請求項3】
前記連結部は、前記タッチ部の軸心に対して偏心した位置に前記タッチ部と連結されていることを特徴とする請求項2記載のタッチペンのペン先。
【請求項4】
前記ペン先元部は、前記導電支持部に着脱可能に配設されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のタッチペンのペン先。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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