説明

タバココナジラミのバイオタイプの判別方法

【課題】タバココナジラミにおけるバイオタイプQの新規な判別方法等を提供する。
【解決手段】バイオタイプQで特異的に高発現しているチトクロームP450またはその一部をコードする遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。そして、当該遺伝子の発現量を測定することによって、バイオタイプQの判別が可能であることを見出した。さらに、当該遺伝子のうちのいくつかは新規のポリヌクレオチドであること、および当該遺伝子がコードするタンパク質のうちのいくつかは新規のタンパク質である。特定の9遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定するタバココナジラミバイオタイプQの判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバココナジラミのバイオタイプの判別方法、特にタバココナジラミにおけるバイオタイプQの判別方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
タバココナジラミ(Bemisia tabaci)は成虫の大きさが0.8mm程度の微小な害虫で、日本の施設園芸においては主にトマト、キュウリ、及びナス等の施設栽培の作物に寄生する。タバココナジラミの幼虫及び成虫は、作物に吸汁害を与えることの他に、成虫はトマト黄化葉巻病等のウイルス病を媒介することが知られている。タバココナジラミには、形態的には区別できないが、遺伝的、及び生物学的に異なる約40種類のバイオタイプが存在する(例えば、非特許文献1を参照)。日本には在来のタバココナジラミが分布しているが、野外でサツマイモ等にわずかに寄生するだけで、作物栽培上それほど重要な害虫ではなかった。しかし、1989年頃に日本国外から薬剤の効きにくいタバココナジラミであるシルバーリーフコナジラミ(タバココナジラミバイオタイプB)が日本に侵入してきた。さらに、2003年頃に、九州で、これまで知られていなかったバイオタイプのタバココナジラミの発生が観察された。これはタバココナジラミバイオタイプBと遺伝的に異なり、日本国外では存在が知られていたバイオタイプQであることが判明した(非特許文献2)。バイオタイプQは、その後分布地域を拡大し、東北地方にまで分布するようになった。すなわち、日本では通常、バイオタイプB、およびバイオタイプQの2種類のバイオタイプのタバココナジラミが存在しているが、バイオタイプQはバイオタイプBに比べて、従来汎用されている薬剤による防除が困難なため、作物栽培上、深刻な問題となっている(例えば、非特許文献2、3を参照)。
したがって、作物栽培施設に発生したタバココナジラミがバイオタイプBであるかQであるかを判別することは、防除対策を立てる上で極めて重要である。形態的にバイオタイプBと区別できないタバココナジラミバイオタイプQを判別する方法としては、これまで、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による非特異的エステラーゼのバンドパターンによる方法、および特定の遺伝子における変異に基づく方法(非特許文献4)が提案されている。
しかしなお、タバココナジラミバイオタイプQの新規な判別方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Perring,Crop Protection,2001年,20,p.725−737
【0004】
【非特許文献2】松浦,今月の農業,2006年2月,p.57−61
【0005】
【非特許文献3】本多,植物防疫,2005年,59巻,p.299−304
【0006】
【非特許文献4】上田,九病虫研会報,2006年,52巻,p.44−48
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タバココナジラミにおけるバイオタイプQの新規な判別方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意検討した結果、バイオタイプQで特異的に高発現しているチトクロームP450またはその一部をコードする遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。そして、当該遺伝子の発現量を測定することによって、バイオタイプQの判別が可能であることを見出し、本発明に到った。
さらに、当該遺伝子のうちのいくつかは新規のポリヌクレオチドであること、および当該遺伝子がコードするタンパク質のうちのいくつかは新規のタンパク質であることが判明した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に記載の発明等を提供するものである。
[1]
(A)バイオタイプQであるか否かの判別に供されるタバココナジラミから試料を得ること、
(B)以下の(1)〜(11)の遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定すること、
(1)配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子
(2)配列番号2で示される塩基配列を含む遺伝子
(3)配列番号3で示される塩基配列を含む遺伝子
(4)配列番号4で示される塩基配列を含む遺伝子
(5)配列番号5で示される塩基配列を含む遺伝子
(6)配列番号6で示される塩基配列を含む遺伝子
(7)配列番号7で示される塩基配列を含む遺伝子
(8)配列番号8で示される塩基配列を含む遺伝子
(9)配列番号9で示される塩基配列を含む遺伝子
(10)配列番号10で示される塩基配列を含む遺伝子
(11)配列番号11で示される塩基配列を含む遺伝子
(C)バイオタイプQまたはBであることが判明しているタバココナジラミにおける前記(B)で選択した遺伝子の発現量を用意すること、および
(D)前記(B)で測定した発現量と前記(C)で用意した発現量とを比較すること
を含む、タバココナジラミバイオタイプQの判別方法。
[2]
遺伝子の発現量をリアルタイムPCRによって測定することを特徴とする、前記[1]に記載の判別方法。
[3]
以下の(1)〜(7)の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(1)配列番号1で示される塩基配列
(2)配列番号4で示される塩基配列
(3)配列番号5で示される塩基配列
(4)配列番号6で示される塩基配列
(5)配列番号7で示される塩基配列
(6)配列番号8で示される塩基配列
(7)配列番号9で示される塩基配列
[4]
以下の(1)〜(22)の塩基配列のいずれかからなるオリゴヌクレオチド。
(1)配列番号23で示される塩基配列
(2)配列番号24で示される塩基配列
(3)配列番号25で示される塩基配列
(4)配列番号26で示される塩基配列
(5)配列番号27で示される塩基配列
(6)配列番号28で示される塩基配列
(7)配列番号29で示される塩基配列
(8)配列番号30で示される塩基配列
(9)配列番号31で示される塩基配列
(10)配列番号32で示される塩基配列
(11)配列番号33で示される塩基配列
(12)配列番号34で示される塩基配列
(13)配列番号35で示される塩基配列
(14)配列番号36で示される塩基配列
(15)配列番号37で示される塩基配列
(16)配列番号38で示される塩基配列
(17)配列番号39で示される塩基配列
(18)配列番号40で示される塩基配列
(19)配列番号41で示される塩基配列
(20)配列番号42で示される塩基配列
(21)配列番号43で示される塩基配列
(22)配列番号44で示される塩基配列
[5]
以下の(1)〜(13)の塩基配列のいずれかからなるオリゴヌクレオチド。
(1)配列番号45で示される塩基配列
(2)配列番号46で示される塩基配列
(3)配列番号47で示される塩基配列
(4)配列番号48で示される塩基配列
(5)配列番号49で示される塩基配列
(6)配列番号50で示される塩基配列
(7)配列番号51で示される塩基配列
(8)配列番号52で示される塩基配列
(9)配列番号53で示される塩基配列
(10)配列番号54で示される塩基配列
(11)配列番号55で示される塩基配列
(12)配列番号56で示される塩基配列
[6]
以下の(1)〜(11)のプライマーセットから選択されるプライマーセット。
(1)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号1の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号1の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(2)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号2の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号2の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(3)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号3の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号3の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(4)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号4の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号4の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(5)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号5の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号5の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(6)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号6の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号6の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(7)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号7の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号7の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(8)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号8の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号8の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(9)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号9の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号9の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(10)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号10の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号10の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(11)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号11の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号11の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、タバココナジラミにおいてバイオタイプQを判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、配列番号1で示される塩基配列である。
【図2】図2は、配列番号2で示される塩基配列である。
【図3】図3は、配列番号3で示される塩基配列である。
【図4】図4は、配列番号4で示される塩基配列である。
【図5】図5は、配列番号5で示される塩基配列である。
【図6】図6は、配列番号6で示される塩基配列である。
【図7】図7は、配列番号7で示される塩基配列である。
【図8】図8は、配列番号8で示される塩基配列である。
【図9】図9は、配列番号9で示される塩基配列である。
【図10】図10は、配列番号10で示される塩基配列である。
【図11】図11は、配列番号11で示される塩基酸配列である。
【図12】図12は、配列番号12で示されるアミノ酸配列である。
【図13】図13は、配列番号13で示されるアミノ酸配列である。
【図14】図14は、配列番号14で示されるアミノ酸配列である。
【図15】図15は、配列番号15で示されるアミノ酸配列である。
【図16】図16は、配列番号16で示されるアミノ酸配列である。
【図17】図17は、配列番号17で示されるアミノ酸配列である。
【図18】図18は、配列番号18で示されるアミノ酸配列である。
【図19】図19は、配列番号19で示されるアミノ酸配列である。
【図20】図20は、配列番号20で示されるアミノ酸配列である。
【図21】図21は、配列番号21で示されるアミノ酸配列である。
【図22】図22は、配列番号22で示されるアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
[タバココナジラミバイオタイプQの判別方法]
本発明の一態様は、
(A)バイオタイプQであるか否かの判別に供されるタバココナジラミから試料を得ること、
(B)以下の(1)〜(11)の遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定すること、
(1)配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子
(2)配列番号2で示される塩基配列を含む遺伝子
(3)配列番号3で示される塩基配列を含む遺伝子
(4)配列番号4で示される塩基配列を含む遺伝子
(5)配列番号5で示される塩基配列を含む遺伝子
(6)配列番号6で示される塩基配列を含む遺伝子
(7)配列番号7で示される塩基配列を含む遺伝子
(8)配列番号8で示される塩基配列を含む遺伝子
(9)配列番号9で示される塩基配列を含む遺伝子
(10)配列番号10で示される塩基配列を含む遺伝子
(11)配列番号11で示される塩基配列を含む遺伝子
(C)バイオタイプQまたはBであることが判明しているタバココナジラミにおける前記(B)で選択した遺伝子の発現量を用意すること、および
(D)前記(B)で測定した発現量と前記(C)で用意した発現量とを比較すること
を含む、タバココナジラミバイオタイプQの判別方法である。
本明細中、当該判別方法を、本発明の判別方法と称する場合がある。
また、本明細書中、当該発現量を、本発明における遺伝子発現量と称する場合がある。
【0013】
本発明の判別方法に供される、タバココナジラミ由来の試料は、タバココナジラミのポリヌクレオチドを含有するものであり、タバココナジラミの細胞、組織、または全体(通常、虫体全体)から、測定する対象となる試料の種類に応じて、公知の方法で、抽出および処理することができる。
当該試料は、特に限定されるものではないが、(1)DNA試料、および(2)タバココナジラミから抽出したRNAから、逆転写酵素を用いて調製したcDNA試料などが好ましい。
タバココナジラミのDNAの抽出は、公知の方法で行えばよく、例えば、PrepMan UltraReagent(商品名、Applied Biosystems社)等を用いて行うことができる。
タバココナジラミのRNAの抽出は、例えば、RNeasyキット(商品名、Qiagen社)等を用いて行うことができる。
cDNAの調製に用いられる逆転写酵素としては、例えば、ReverTra Ace(商品名、TOYOBO社)、PrimrScript Reverse Transcriptase(商品名、タカラバイオ社)、Super Script III(商品名、invitrogen社)等が挙げられる。
【0014】
本明細書中、「遺伝子」とは、1つのポリペプチド鎖の産生に関与するポリヌクレオチドを意味する。当該「遺伝子」は、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。当該「二本鎖」には、二本鎖DNA 、二本鎖RNA、およびDNA:RNAのハイブリッドが包含される。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。当該遺伝子は、ポリヌクレオチドの1次配列を規定する構造遺伝子の塩基配列に加えて、構造遺伝子以外の配列、例えば、調節遺伝子(例、プロモーター)の塩基配列、および非翻訳領域の塩基配列等を含んでいてもよい。
配列番号1〜11で示される塩基配列を、図1〜図11に示す。図中、塩基配列は、5’末端から3’末端の方向に記載されている。
本明細書中、塩基配列中の塩基を表示する記号は、IUPAC−IUB ambiguity codeに従う。また、iはイノシンを表す。
下記においても記載しているように、これらの塩基配列は、cDNAの塩基配列である。したがって、ゲノム中では、これらの塩基配列は、イントロンによって分断されて存在している場合がある。
また、実施例でも記載しているように、配列番号7で示される塩基配列は、P450の構造遺伝子の完全長の塩基配列を含むものであり、その他の塩基配列(配列番号1〜6、および7〜11)は、P450の構造遺伝子の一部の塩基配列を含むものであると推定される。
【0015】
測定の簡便性の観点では、上記(1)〜(11)に示される遺伝子から選択される少数(好ましくは、1つ)の遺伝子の発現量を測定することが好ましい。
一方、バイオタイプQの判別の厳密性の観点では、上記(1)〜(11)に示される遺伝子から選択されるより多数(例、2つ〜9つ)の遺伝子の発現量を測定することが好ましい。
上記(1)〜(11)に示される遺伝子の中でも、好ましくは上記(1)、(2)、(4)、(5)、(7)、(8)、(10)、および(11)に示される遺伝子である。
いずれの場合も、本発明の判別方法は、好ましくは、配列番号4で示される塩基配列を含む遺伝子の発現の測定を含む。
【0016】
本発明の判別方法において、遺伝子の発現量の測定は、当該遺伝子の発現の産物、すなわち転写産物(mRNA)または翻訳産物(ポリペプチド)の量を測定することによって実施できる。なお、当業者に明らかなように、ある遺伝子の発現量を測定する目的においては、この遺伝子に特徴的な部分配列の発現量を測定すればよい。測定の容易さの観点から、転写産物の量を測定することが好ましい。その方法としては、特に限定されず、ノーザンハイブリダイゼーション法、マイクロアレイ法、および定量的PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)(例、リアルタイムPCR)等が挙げられるが、なかでもリアルタイムPCRが好ましい。
【0017】
リアルタイムPCRは、市販の装置ならびに市販のキットおよび試薬を用いて、その使用説明書に記載の方法および条件に従って実施する事ができる。
具体的には、配列番号1〜11で示される塩基配列のいずれかに基づいて設計したプライマーを用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行い、PCRによる増幅を経時的に測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるcDNAの定量を行なう。
PCRに用いるプライマー(センスプライマーおよびアンチセンスプライマー)は、配列番号1〜11で示される塩基配列のいずれかに基づいて設計し、慣用の化学合成方法によって調製できる。
【0018】
上記「配列番号1〜11で示される塩基配列のいずれかに基づいて設計したプライマー」として好ましくは、それぞれ以下のプライマーセットである。
なお、当業者に明らかなように、センスプライマーがセンス鎖に由来する塩基配列の場合、アンチセンスプライマーはアンチセンス鎖に由来する塩基配列である。
また、本明細書中、Tm値(Melting Temperature、融解温度、℃)は、Nearest Neighbor 法に基づき次の数式で計算された数値である。
Tm=[1000ΔH/{-10.8+ΔS+Rln(Ct/4)}]-273.15+16.6log[Na+]
ここで、数式中の記号および数値は下記を示す。
ΔH:ハイブリッドにおける最近接エンタルピー変化の合計[kcal/mol]
-10.8:ΔS(initiation)[cal/mol・K]
ΔS:ハイブリッドにおける最近接エントロピー変化の合計[cal/mol・K]
R:気体定数(1.987cal/deg・mol)
Ct:オリゴのtotalモル濃度[mol/l]。0.5μMで計算する。
Na+:Na+のモル濃度[mol/l]。50mMで計算する。
(1)配列番号1で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号1の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号1の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0019】
(2)配列番号2で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号2の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号2の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0020】
(3)配列番号3で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号3の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号3の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0021】
(4)配列番号4で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号4の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号4の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0022】
(5)配列番号5で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号5の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号5の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0023】
(6)配列番号6で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号6の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号6の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0024】
(7)配列番号7で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号7の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号7の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0025】
(8)配列番号8で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号8の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号8の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0026】
(9)配列番号9で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号9の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号9の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(10)配列番号10で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号10の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号10の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(11)配列番号11で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 配列番号11の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号11の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基(好ましくは15〜26塩基)からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
【0027】
なかでも、塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入されていない塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが、それぞれ好ましい。
なかでも、特に好ましいプライマーセットを以下に示す。当該プライマーセットのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーは、いずれも新規なオリゴヌクレオチドであり、本発明の一態様である。
【0028】
(1)配列番号1で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(a)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 5'-CGCAAGACCACCGAAACC-3'(配列番号23)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 5'-AGGAGACTCCGGAGGAAGAAGA-3'(配列番号24)からなるオリゴヌクレオチド
【0029】
(2)配列番号2で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(b)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 5'-GGTGGCCGAGAAGCTTCAG-3'(配列番号25)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 5'-CTTGCCTCCTCGCGAATC-3'(配列番号26)からなるオリゴヌクレオチド
【0030】
(3)配列番号3で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(c)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-GCCCACAACGGCACTCTAGA-3'(配列番号27)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-AACTGCCTCCATGTAAACAAGCT-3'(配列番号28)からなるオリゴヌクレオチド
【0031】
(4)配列番号4で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(d)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-GAAGCACGAGGTGGAAAACT-3'(配列番号29)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-CGCACTCCATGTAACGCATCT-3'(配列番号30)からなるオリゴヌクレオチド
【0032】
(5)配列番号5で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(e)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-TGCCCGGAACGTATCTACCT-3'(配列番号31)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-GAATCGCATCCCCATACAGATC-3'(配列番号32)からなるオリゴヌクレオチド
【0033】
(6)配列番号6で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(f)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-TTGCACCACGACCCACAGT-3'(配列番号33)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-CCGTTCCGGGTCGAATTT-3'(配列番号34)からなるオリゴヌクレオチド
【0034】
(7)配列番号7で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(g)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-AGGTCCAGGAGAAACTCTTCAAAG-3'(配列番号35)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-TGATCTCCCCACCGGATTC-3'(配列番号36)からなるオリゴヌクレオチド
【0035】
(8)配列番号8で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(h)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-GAGTCTCCATCACGATCCAAAAT-3'(配列番号37)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-GAGAACCGTTCAGGGTCGAA-3'(配列番号38)からなるオリゴヌクレオチド
【0036】
(9)配列番号9で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(i)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-TGATGCTGATCGGACAACTGA-3'(配列番号39)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-AGAGGTCCAGAGCTTGTTTCCA-3'(配列番号40)からなるオリゴヌクレオチド
(10)配列番号10で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(j)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-CGCTCTCGACATCATTTGTGA-3'(配列番号41)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-GGTTTTTTCTTGCGCGTTAATT-3'(配列番号42)からなるオリゴヌクレオチド
(11)配列番号11で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセット(k)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー:塩基配列 5'-CGGTGGATGATCTGCGATCTA-3'(配列番号43)からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー:塩基配列 5'-AACAGCCGCAAGCTTTCCT-3'(配列番号44)からなるオリゴヌクレオチド
なかでも好ましくは、上記(1)プライマーセット(a)、(2)プライマーセット(b)、(4)プライマーセット(d)、(5)プライマーセット(e)、(7)プライマーセット(g)、(8)プライマーセット(j)、および(10)プライマーセット(k)、および(11)プライマーセット(k)に示される遺伝子である。
【0037】
供試されるタバココナジラミがバイオタイプQであるかどうかの判別は、測定した遺伝子の発現量を、バイオタイプQであることが判明しているタバココナジラミにおける前記遺伝子の発現量と比較することによって行われる。
また、別法として、供試されるタバココナジラミがバイオタイプQであるかどうかの判別は、測定した遺伝子の発現量を、バイオタイプBであることが判明しているタバココナジラミにおける前記遺伝子の発現量と比較することによって、行ってもよい。
バイオタイプQまたはBであることが判明しているタバココナジラミにおける遺伝子の発現量は、供試されるタバココナジラミの遺伝子の発現量と、同じ方法で、同時に測定されたものであってもよく、予め別に測定された発現量であってもよい。
これらの発現量の測定は、好ましくは、内部標準遺伝子を基準にした比較Ct法で供試個体群間の相対定量により行われる。内部標準遺伝子としては、例えば、β−アクチン等を挙げることができる。また、タバココナジラミバイオタイプQであることが確認されている個体群、およびタバココナジラミバイオタイプBであることが確認されている個体群の両方との、本発明における遺伝子発現量の比較を行うことが、より好ましい。
なお、タバココナジラミバイオタイプBは、タバココナジラミバイオタイプQに比べて本発明における遺伝子発現量が低いので、ネガティブコントロールとして使用される。
【0038】
本発明のタバココナジラミにおけるバイオタイプQの判別方法は、
(1)本発明の判別方法を用いてタバココナジラミバイオタイプQであるかどうかを判別することにより、有効な薬剤を選択する等の適切な防除対策を実施すること、
(2)本発明の判別方法を用いて各地から採集したタバココナジラミがバイオタイプQであるかどうかを判別することにより、すなわちモニタリングを実施しすることにより、タバココナジラミバイオタイプQの地理的分布を把握すること、
(3)選別したタバココナジラミバイオタイプQを用いることで、タバココナジラミバイオタイプQに有効な薬剤のスクリーニングに用いること
などに利用することができる。
【0039】
また、配列番号1〜11で示される塩基配列からなる遺伝子は、タバココナジラミの薬剤耐性に関与すると推測されるので、本発明の判別方法は、タバココナジラミバイオタイプQの判別とは無関係に、タバココナジラミの薬剤耐性の評価にも使用する事ができる。
なお、上記から明らかなように、本発明のバイオタイプQの判別方法は、そのままバイオタイプBの判別方法に適用できる。すなわち、バイオタイプBの判別方法は、本発明のバイオタイプQの判別方法の一側面である。
したがって、本発明は、
(A)バイオタイプBであるか否かの判別に供されるタバココナジラミから試料を得ること、
(B)以下の(1)〜(11)の遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定すること、
(1)配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子
(2)配列番号2で示される塩基配列を含む遺伝子
(3)配列番号3で示される塩基配列を含む遺伝子
(4)配列番号4で示される塩基配列を含む遺伝子
(5)配列番号5で示される塩基配列を含む遺伝子
(6)配列番号6で示される塩基配列を含む遺伝子
(7)配列番号7で示される塩基配列を含む遺伝子
(8)配列番号8で示される塩基配列を含む遺伝子
(9)配列番号9で示される塩基配列を含む遺伝子
(10)配列番号10で示される塩基配列を含む遺伝子
(11)配列番号11で示される塩基配列を含む遺伝子
(C)バイオタイプQまたはBであることが判明しているタバココナジラミにおける前記(B)で選択した遺伝子の発現量を用意すること、および
(D)前記(B)で測定した発現量と前記(C)で用意した発現量とを比較すること
を含む、タバココナジラミバイオタイプBもまた提供するものである。
【0040】
[本発明のポリヌクレオチド、およびその製造方法]
以下の(1)〜(7)に示されるいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドは、新規のポリヌクレオチドであり、本発明の一態様である。これらのポリヌクレオチドを、本発明のポリヌクレオチドと称する場合がある。
(1)配列番号1で示される塩基配列
(2)配列番号4で示される塩基配列
(3)配列番号5で示される塩基配列
(4)配列番号6で示される塩基配列
(5)配列番号7で示される塩基配列
(6)配列番号8で示される塩基配列
(7)配列番号9で示される塩基配列
【0041】
本発明のポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。当該「二本鎖」には、二本鎖DNA 、二本鎖RNA、およびDNA:RNAのハイブリッドが包含される。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。すなわち、配列番号1〜11で示される塩基配列の相補的配列からなるポリヌクレオチドも本発明の範囲内である。
また、配列番号1〜11で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドがイントロンで分断されているもの、およびベクター等に連結されているものも、本発明のポリヌクレオチドの範囲内である。
これらのDNAは、例えば、タバココナジラミバイオタイプQの細胞、組織または全体から慣用の遺伝子工学的手法に従って調製したcDNAライブラリーを用いて、配列番号1〜11で示される塩基配列に基づいて設計したプライマーセットを用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行うことにより調製することができる。当該プライマーは、慣用の化学合成方法によって合成することができる。
また、別法として、配列番号1〜11で示される塩基配列に基づき、慣用の化学合成方法によって、これらの遺伝子を調製することができる。
また、配列番号1〜11で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつP450としての性質を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも本発明のポリヌクレオチドに含まれる。ストリンジェントな条件とは、ポリヌクレオチド同士がハイブリダイズすることができる条件であれば特に限定されない。ストリンジェントな条件については、田村隆明編「改訂遺伝子工学実験ノート」羊土社(2004)、特に下巻4章に記載されており、ここに記載の条件を使用し得る。具体的には、例えば、100%(v/v)ホルムアミド、20×SSC(3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム)、100×デンハルト溶液(2%(w/v)ウシ血清アルブミン、2%(w/v)フィコール、2%(w/v)ポリビニルピロリドン)、1Mリン酸ナトリウム、10%(w/v)SDS、および10mg/mlのDNAを含む溶液中、ハイブリダイゼーション温度42℃、を挙げることができるが、これに限定されない。
【0042】
[本発明のタンパク質、およびその製造方法]
配列番号1〜11で示される塩基配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号12〜22)を図12〜22に示す。図中、アミノ酸配列は、N末端からC末端の方向に記載されている。これらのアミノ酸配列からなるタンパク質のうち、配列番号12、および15〜20で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は新規であり、本発明の一態様である。本明細書中、これらのタンパク質を、本発明のタンパク質と称する場合がある。
本発明のタンパク質は、例えば、本発明のポリヌクレオチドを用い、慣用の遺伝子工学的手法に従って調製することができる。
また、別法として、慣用のP450タンパク質の抽出および精製方法に従い、タバココナジラミバイオタイプQの細胞、組織または全体から本発明のタンパク質を抽出および精製することにより、調製することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
(タバココナジラミ個体群のP450遺伝子の取得)
日本各地から採集したタバココナジラミ9個体群(1:兵庫県加西市、2:愛知県愛西市、3:愛知県愛西市、4:京都府精華町、5:高知県安芸市、6:三重県桑名郡、7:茨城県神栖市、8:熊本県八代市、9:福岡県柳川市)の虫体全体から、RNeasy Mini Kit(商品名、Qiagen社)を用いてRNAを抽出した。得られたTotal RNAからReverTra Ace qPCR RT Kit(商品名、TOYOBO社)を用いてcDNAを合成した。
上記cDNAを鋳型とし、ディジェネレートプライマーを用いてディジェネレートPCRを行った。
ディジェネレートプライマーとしては、下記のセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーのセットを用いた。これらのプライマーは、新規のポリヌクレオチドであり、本発明の一態様である。
プライマーセット(A)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-TTCTWYNTKGCYGGNTTTGAGAC-3'(配列番号45) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-CCAATRCADWTSCKTGGACCATCNCCAAA-3' (配列番号46) からなるオリゴヌクレオチド
プライマーセット(B)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-YTTCRTBGSKGGYTTYGAGACGAC-3' (配列番号47) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-WGCRAAYCKCAKYCCDATRCA-3' (配列番号48) からなるオリゴヌクレオチド
プライマーセット(C)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-YTTCRTBGSKGGYTTYGAGACGAC-3' (配列番号47) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-BARRTAVGWBCCDGGVACDATYTT-3' (配列番号49) からなるオリゴヌクレオチド
プライマーセット(D)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-ATGCGNWSNACNYTRAGTCC-3' (配列番号50) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-GGTCCHRCNCCRAANGG-3' (配列番号51) からなるオリゴヌクレオチド
プライマーセット(E)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-GAYATGATIMAIHTKYTGWTGGA-3' (配列番号52) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'- CCIATRCARTTICKIGGICC-3' (配列番号53)
プライマーセット(F)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-AARATNMTYRCNCCBRCSTTCCA-3' (配列番号54) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-CKNGGTCCDGCVSWRAAVGG-3' (配列番号55)
プライマーセット(G)
次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット。
センスプライマー: 塩基配列 5'-ABNNTBTBNGMAACYGCHATGGG-3' (配列番号56) からなるオリゴヌクレオチド
アンチセンスプライマー: 塩基配列 5'-CKNGGTCCDGCVSWRAAVGG-3' (配列番号55)
からなるオリゴヌクレオチド
ディジェネレートPCRはApplied Biosystems社のGene Amp PCR System 2400上で、TaKaRa Ex taq(商品名、タカラバイオ社)を用いて行った。反応液の組成はEx Taq:0.1μL、dNTP:1.6μL、10×Buffer:2μL、センスプライマー(10μM):0.2μL、アンチセンスプライマー(10μM):0.2μL、サンプル(各個体群由来のcDNA):2μLおよび滅菌蒸留水:32.75μLとした。なお、プライマー、サンプルおよび滅菌蒸留水以外はすべて上記Ex Taqに付属のものである。反応条件は、94℃/2分に引き続き、94℃/30秒および50℃/30秒、72℃/1分の反応を35サイクル行い、最後に72℃/5分の反応を行った。PCR後、1.5%アガロースゲル上で電気泳動を100Vで35分間行い、SYBR Greenで染色後、予想される大きさと同程度のバンドを切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(商品名、Qiagen社)を用いてゲル抽出を行った。ゲル抽出後、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(商品名、invitrogen社)を用いてライゲーションを行った。この際、当該PCR産物はそのままクローニングベクターに組み込むか、または適宜、制限酵素で処理することにより付着末端を付与し、これを当該付着末端に対して相補的な付着末端を有するクローニングベクターにライゲーションさせることにより組み込んだ。付属のコンピテントセルへ導入後、LB寒天培地(50μL/ml カナマイシン、X−gal添加)へ塗布し37℃で一晩培養した。培養後、コロニーをいくつかピックアップしインサートが確認されたものについて、シーケンス反応を行った。
シーケンス反応はApplied Biosystems社製の9800 Fast Thermal Cycler上で、Big Dye Terminator v3.1 Cycle Sequence Kit(商品名、Applied Biosystems社)を用いて行った。反応条件は96℃/1分に引き続き、96℃/10秒、50℃/5秒、60℃/1分30秒を30サイクル行った。
シーケンス反応後、Dye Ex 2.0 Spin Kit(商品名、Qiagen社)を用いて精製を行い、アプライドバイオシステムズ社製のABI PRISM 3100 Genetic Analyzerで塩基配列の解析を行った。塩基配列を明らかにしたPCR産物がP450か否かは、塩基配列をアミノ酸配列に翻訳したペプチドがP450モチーフを有するかにより判別した。すなわち、WxxxR、GxE/DTT、ExxR、PxxFxPE/DRF、PFxxGxRxCxG/A(各アルファベットはアミノ酸の一文字記号を示す。また、xは不特定のアミノ酸を示す。「/」は「または」を意味する。すなわち、PxxFxPE/DRFは、PxxFxPERFまたはPxxFxPDRFを意味する。)のアミノ酸配列を持ち、かつ、BLASTにより他の生物のP450と相同性が高いPCR産物を選択した。
プライマーセット(A)により、配列番号1〜3でそれぞれ示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(B)により、配列番号4で示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(C)により、配列番号5で示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(D)により、配列番号6〜8でそれぞれ示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(E)により、配列番号9で示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(F)により、配列番号10で示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
プライマーセット(G)により、配列番号11で示される塩基配列からなる遺伝子が得られた。
こうして得られた11種のP450遺伝子の塩基配列を配列番号1〜11として図1〜11に示す。
P450のモチーフ検索から、このうち配列番号7で示される塩基配列は、P450の構造遺伝子の完全長の塩基配列を含むものであり、その他の塩基配列(配列番号1〜6、および8〜11)は、P450の構造遺伝子の一部の塩基配列を含むものであると推定された。
【実施例2】
【0045】
(タバココナジラミ個体群のP450遺伝子の発現量の測定)
実施例1で得られた11種類のタバココナジラミチトクロームP450遺伝子(配列番号1〜11)について、リアルタイムPCR用に個々の遺伝子の特異的プライマーを設計した(上記プライマーセット(a)〜(k)、配列番号23〜44)。
上記cDNAを鋳型とし、当該特異的プライマーを用いてリアルタイムPCR行った。リアルタイムPCRは、アプライドバイオシステムズ社製のApplied Biosystems 7500 Fast リアルタイムPCRシステム上で、SYBR Premix Ex Taq(商品名、タカラバイオ)を用いて行った。
反応液の組成は、SYBR Premix Ex Taq:10μL、ROX Reference Dye:0.4μL、センスプライマー(10μM):0.4μL、アンチセンスプライマー(10μM):0.4μL、サンプル(各個体群由来のcDNA):1μLおよび滅菌蒸留水:7.8μLとした。なお、プライマー、サンプルおよび滅菌蒸留水以外はすべて上記SYBR Premix Ex Taqに付属のものである。反応条件は、95度/20秒に引き続き、95度/3秒および60℃/30秒の反応を40サイクル行った。
リアルタイムPCRで測定した遺伝子発現量を表1および表2に示した。各個体群の遺伝子発現量は感受性の加西個体群の発現量を1として相対的に示した。
表中、「従来法」とは、当該分野での標準的な方法であり、具体的には、次のように実施した。タバココナジラミ成虫1頭よりPrepMan Ultra Reagent (商品名、Applied Biosystems社)を用いてDNAを抽出した。プライマーを用いてPCRによりミトコンドリアチトクロームcサブユニットI DNA(COI)の増幅を行なった。PCR産物を制限酵素(EcoT14 IとStu I)で消化し、1%アガロースゲルを用い電気泳動した。エチジウムブロマイド処理後トランスイルミネーターで断片を確認した。なお、バイオタイプQはEcoT14 IでPCR産物は切断され、バイオタイプBはStu Iで切断される。
[表1]

発現量:個体群1における発現量を1として相対値で示した。
(非特許文献2参照)。
[表2]

発現量:個体群1における発現量を1として相対値で示した。
(非特許文献2参照)。
以上のように、バイオタイプBおよびバイオタイプQの間では、プライマーセット(a)〜(k)を用いた遺伝子発現量の測定値に差が見られた。これにより、本発明の遺伝子の発現量を測定することにより、バイオタイプQを判別できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、タバココナジラミバイオタイプQを判別することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0047】
配列番号23〜56で示される塩基配列は、それぞれプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バイオタイプQであるか否かの判別に供されるタバココナジラミから試料を得ること、
(B)以下の(1)〜(11)の遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子の発現量を測定すること、
(1)配列番号1で示される塩基配列を含む遺伝子
(2)配列番号2で示される塩基配列を含む遺伝子
(3)配列番号3で示される塩基配列を含む遺伝子
(4)配列番号4で示される塩基配列を含む遺伝子
(5)配列番号5で示される塩基配列を含む遺伝子
(6)配列番号6で示される塩基配列を含む遺伝子
(7)配列番号7で示される塩基配列を含む遺伝子
(8)配列番号8で示される塩基配列を含む遺伝子
(9)配列番号9で示される塩基配列を含む遺伝子
(10)配列番号10で示される塩基配列を含む遺伝子
(11)配列番号11で示される塩基配列を含む遺伝子
(C)バイオタイプQまたはBであることが判明しているタバココナジラミにおける前記(B)で選択した遺伝子の発現量を用意すること、および
(D)前記(B)で測定した発現量と前記(C)で用意した発現量とを比較すること
を含む、タバココナジラミバイオタイプQの判別方法。
【請求項2】
遺伝子の発現量をリアルタイムPCRによって測定することを特徴とする、請求項1に記載の判別方法。
【請求項3】
以下の(1)〜(7)の塩基配列のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(1)配列番号1で示される塩基配列
(2)配列番号4で示される塩基配列
(3)配列番号5で示される塩基配列
(4)配列番号6で示される塩基配列
(5)配列番号7で示される塩基配列
(6)配列番号8で示される塩基配列
(7)配列番号9で示される塩基配列
【請求項4】
以下の(1)〜(22)の塩基配列のいずれかからなるオリゴヌクレオチド。
(1)配列番号23で示される塩基配列
(2)配列番号24で示される塩基配列
(3)配列番号25で示される塩基配列
(4)配列番号26で示される塩基配列
(5)配列番号27で示される塩基配列
(6)配列番号28で示される塩基配列
(7)配列番号29で示される塩基配列
(8)配列番号30で示される塩基配列
(9)配列番号31で示される塩基配列
(10)配列番号32で示される塩基配列
(11)配列番号33で示される塩基配列
(12)配列番号34で示される塩基配列
(13)配列番号35で示される塩基配列
(14)配列番号36で示される塩基配列
(15)配列番号37で示される塩基配列
(16)配列番号38で示される塩基配列
(17)配列番号39で示される塩基配列
(18)配列番号40で示される塩基配列
(19)配列番号41で示される塩基配列
(20)配列番号42で示される塩基配列
(21)配列番号43で示される塩基配列
(22)配列番号44で示される塩基配列
【請求項5】
以下の(1)〜(13)の塩基配列のいずれかからなるオリゴヌクレオチド。
(1)配列番号45で示される塩基配列
(2)配列番号46で示される塩基配列
(3)配列番号47で示される塩基配列
(4)配列番号48で示される塩基配列
(5)配列番号49で示される塩基配列
(6)配列番号50で示される塩基配列
(7)配列番号51で示される塩基配列
(8)配列番号52で示される塩基配列
(9)配列番号53で示される塩基配列
(10)配列番号54で示される塩基配列
(11)配列番号55で示される塩基配列
(12)配列番号56で示される塩基配列
【請求項6】
以下の(1)〜(11)のプライマーセットから選択されるプライマーセット。
(1)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号1の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号1の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(2)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号2の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号2の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(3)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号3の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号3の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(4)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号4の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号4の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(5)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号5の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号5の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(6)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号6の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号6の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(7)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号7の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号7の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(8)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号8の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号8の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(9)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号9の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号9の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(10)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号10の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号10の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
(11)次のセンスプライマーとアンチセンスプライマーからなるプライマーセット:
センスプライマー: 配列番号11の塩基配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。
アンチセンスプライマー: 配列番号11の塩基配列の相補配列のうち連続する少なくとも15塩基からなる塩基配列、または当該塩基配列において1もしくは2個の塩基が欠失、置換 、付加もしくは挿入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであって、Tm値が65から68を示すオリゴヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−68797(P2010−68797A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40961(P2009−40961)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18〜20年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】