説明

タワー型アンテナ、無線通信システム、及びタワー型アンテナの製造方法

【課題】漏洩同軸ケーブルを捻れ無しに真っ直ぐ直立させることができ、通信の安定化に寄する。
【解決手段】漏洩同軸ケーブルを用いたタワー型アンテナであって、外皮にケーブル長方向に沿った直線状のライン23が描かれた漏洩同軸ケーブル22と、漏洩同軸ケーブル22を囲むように設けられ、漏洩同軸ケーブル22を直立させて保持するためのタワーカバー21と、タワーカバー21内に配置され、漏洩同軸ケーブル22の上端部を固定する第1の固定治具26と、タワーカバー21内に配置され、漏洩同軸ケーブル22の下端部を固定する第2の固定治具27と、を具備している。第2の固定治具27は、ライン23が直線となるように漏洩同軸ケーブル22のねじれを補正し、且つ漏洩同軸ケーブル22の下端部を下側に引っ張った状態でタワーカバー21に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、漏洩同軸ケーブルを用いたタワー型アンテナに関する。さらに、タワー型アンテナを用いた無線通信システム及びタワー型アンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漏洩同軸ケーブル(LCXケーブル)を用いた無線通信システムは、無線基地局のアンテナ端子に接続されたLCXケーブルをトンネルや工場内に数十〜数百m以上の長さに配置し、ケーブルに沿った細長い通信可能エリアを作っている。
【0003】
一方、最近では、会議室やテーブル上などの狭い範囲での用途として、LCXケーブルの長さを短くした簡易型の無線通信システムが注目されている。例えば、LCXケーブルをテーブル上に鉛直方向に建てて敷設し、“タワー型アンテナ”として使用した場合、通信可能エリアをテーブル上のみに規制することができる。
【0004】
しかし、この種の用途に用いるLCXケーブルは、アンテナとしては通常のモノポールアンテナと比べてアンテナ長が長く、その取り扱いが難しい。特に、テーブル上に設けるLCXケーブルは設置面積の制約等から細くする必要があり、このような細いLCXケーブルを自立させるのは容易ではない。さらに、LCXケーブルからの均一な放射を実現するには、LCXケーブルを真っ直ぐ直立させると共に捻れを無くす必要があるが、これを実現するのは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−236745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、漏洩同軸ケーブルを捻れ無しに真っ直ぐ直立させることができ、通信の安定化に寄与し得るタワー型アンテナ、無線通信システム、及びタワー型アンテナの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のタワー型アンテナは、外皮にケーブル長方向に沿った直線状のラインが描かれた漏洩同軸ケーブルと、前記漏洩同軸ケーブルを囲むように設けられ、前記漏洩同軸ケーブルを直立させて保持するためのタワーカバーと、前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの上端部を固定する第1の固定治具と、前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの下端部を固定する第2の固定治具と、を具備してなる。前記第2の固定治具は、前記ラインが直線となるように前記漏洩同軸ケーブルの捻れを補正し、且つ前記漏洩同軸ケーブルの下端部を下側に引っ張った状態で前記タワーカバーに固定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係わる無線通信装置の概略構成を示す斜視図
【図2】図1の無線通信装置に用いたアンテナ部の構成を示す模式図。
【図3】LCXケーブルの両端に取り付けられる同軸コネクタの構成を示す斜視図。
【図4】LCXケーブルの上端側の第1の固定治具の構成を示す断面図。
【図5】LCXケーブルの下端側の第2の固定治具の構成を示す斜視図。
【図6】LCXケーブルの下端側の第2の固定治具の構成を示す平面図。
【図7】LCXケーブルの下端側の第2の固定治具の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の無線通信システムを、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図である。
【0011】
円形のテーブル10の中央部にLCXケーブルを用いたタワー型アンテナ20が設けられ、このアンテナ20にはアプローチケーブル30を介して無線LANのアクセスポイント(無線基地局)40が接続されている。
【0012】
タワー型アンテナ20は、プラスチック等からなるタワーカバー21内にLCXケーブル22を直立して保持したものである。タワーカバー21は、円筒体を中心軸に沿って2分割したものであり、カバー21a,21bでLCXケーブル22を挟み込むようになっている。
【0013】
図2は、タワーカバー21の一方のカバー21aを外した状態を示している。LCXケーブル22の外皮には、ケーブルの捻れを認識できるようにケーブル長方向に沿って直線状のライン23が描かれている。タワーカバー21内には、LCXケーブル22の曲がりを抑制するためのガイド体29が設けられている。
【0014】
LCXケーブル22の一端(基端)及び他端(終端)には、図3に示すような同軸コネクタ24がそれぞれ接続されている。同軸コネクタ24は、断面六角形の部分でLCXケーブル22を固定するようになっている。
【0015】
LCXケーブル22の終端側の同軸コネクタ24には終端抵抗25が接続されている。また、LCXケーブル22の終端側の同軸コネクタ24は、タワーカバー21内に設置される第1の固定治具26に固定される。即ち、図4に示すように、同軸コネクタ24の六角形部分を2つの金具26a,26bで挟み、ネジで金具同士を結合することにより、同軸コネクタ24が金具26a,26bに固定される。そして、この状態で、固定治具26をタワーカバー21内に設置することにより、LCXケーブル22の先端側が固定されることになる。
【0016】
なお、図には示さないが、タワーカバー21内には第1の固定治具26が嵌め込まれる凹部が形成され、カバー21a,21bを一体化した状態で第1の固定治具26を所定の位置に固定できるようになっている。また、タワーカバー21内で第1の固定治具26を固定する上下方向の位置を変えられるようにしておけば、長さの異なるLCXケーブルに対応することも可能となる。
【0017】
LCXケーブル22の基端側の同軸コネクタ24は、図5〜図7に示すような第2の固定治具27に挟み込まれて固定されるようになっている。第2の固定治具27を形成する金具は、図5の斜視図に示すように、同軸コネクタ24の六角形部分が挿入される穴51を有すると共に、2分割されたリング体27a,27bからなる。リング体27a,27bの周面には、軸方向に沿った歯車状の溝52が形成されて、リング体27a,27bの上端側の面には中心側が凸のテーパ53が形成されている。
【0018】
タワーカバー21の下部には図6に示すように、第2の固定治具27の周面の溝52に対応する溝55が形成されている。そして、これらの溝52,55の結合により、LCXケーブル22の下部の回転方向の位置が定められるようになっている。
【0019】
また、タワーカバー21の下部には図7に示すように、第2の固定治具27のテーパ53に合わせたテーパ56が形成されている。このテーパ56は、タワーカバー21を一体化した際に第2の固定治具27のテーパ53と接するようになっている。これにより、2分割されたタワーカバー21を一体化する際に、第2の固定治具27が下方向に引っ張られることになる。
【0020】
つまり、LCXケーブル22に形成したライン23を参照しながら、第2の固定治具27の溝52をタワーカバー21の溝55に合わせて回転方向の位置決めを行うことにより、LCXケーブル22の捻れを防止することができる。さらに、カバー21a,21bを一体化してタワーカバー21を形成することにより、LCXケーブル22の下端部を下方向に引っ張ることになり、LCXケーブル22に一定の張力を付与することができる。これにより、LCXケーブル22を捻れ無しに真っ直ぐ直立させることが可能となる。
【0021】
なお、LCXケーブル22は、上記のように上端部及び下端部がタワーカバー21に固定された後に、基端側の同軸コネクタア24にアプローチケーブル30が接続される。そして、このアプローチケーブル30を介してアクセスポイント40のアンテナ端子等に接続されるものとなっている。
【0022】
このように本実施形態によれば、LCXケーブル22を用いたタワー型アンテナ20をテーブル10上に直立して設けることができる。このため、通信可能エリアをテーブル10上のみに規制することができる。そしてこの場合、LCXケーブル22を捻れ無しに一定の張力を持って一直線に固定できるため、通信の信頼性の向上をはかることができる。
【0023】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0024】
LCXケーブルの上端部をタワーカバー内に固定する第1の固定治具は、前記図4に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。LCXケーブルの上端部を固定し、タワーカバー21内に固定できるものであればよい。
【0025】
LCXケーブルの下端部をタワーカバー内に固定する第2の固定治具は、前記図5〜図7に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。LCXケーブルの下端部の回転方向位置を規定する機構、LCXケーブルの下端部を下側に引っ張る機構を有するものであればよい。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
10…テーブル
20…タワー型アンテナ
30…アプローチケーブル
40…アクセスポイント(無線基地局)
21…タワーカバー
22…LCXケーブル
23…ライン
24…同軸コネクタ
25…終端抵抗
26…第1の固定治具
27…第2の固定治具
29…ガイド体
51…穴
52,55…溝
53,56…テーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮にケーブル長方向に沿った直線状のラインが描かれた漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルを囲むように設けられ、前記漏洩同軸ケーブルを直立させて保持するためのタワーカバーと、
前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの上端部を固定する第1の固定治具と、
前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの下端部を固定する第2の固定治具と、
を具備してなり、
前記第2の固定治具は、前記ラインが直線となるように前記漏洩同軸ケーブルの捻れを補正し、且つ前記漏洩同軸ケーブルの下端部を下側に引っ張った状態で前記タワーカバーに固定されるものであることを特徴とするタワー型アンテナ。
【請求項2】
前記第2の固定治具は、前記漏洩同軸ケーブルと同軸的に設けられて該ケーブルを固定するリング状の金具の周面に歯車状の溝が形成され、且つ前記金具の上面にテーパが形成されたものであり、
前記タワーカバーは、内面に前記第2の固定治具の金具の溝に係合する溝が形成され、且つ前記金具のテーパに接するテーパが形成されたものであり、
前記各溝の係合位置により前記漏洩同軸ケーブルの捻れを補正し、前記各テーパの接触により前記漏洩同軸ケーブルの下端部を下方向に引っ張ることを特徴とする請求項1記載のタワー型アンテナ。
【請求項3】
前記タワーカバーは、円筒体を軸心方向に沿って2分割したものであり、前記第1及び第2の固定治具を所定の位置に嵌め込んで固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のタワー型アンテナ。
【請求項4】
外皮にケーブル長方向に沿った直線状のラインが描かれた漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルを囲むように設けられ、前記漏洩同軸ケーブルを直立させて保持するためのタワーカバーと、
前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの上端部を固定する第1の固定治具と、
前記漏洩同軸ケーブルの上端に接続された終端抵抗と、
前記タワーカバー内に配置され、前記ラインが直線となるように前記漏洩同軸ケーブルの捻れを補正すると共に、前記漏洩同軸ケーブルに張力を付与した状態で、前記漏洩同軸ケーブルの下端部を固定する第2の固定治具と、
前記漏洩同軸ケーブルの下端にアプローチケーブルを介して接続された無線基地局と、
を具備したことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
外皮にケーブル長方向に沿った直線状のラインが描かれた漏洩同軸ケーブルと、前記漏洩同軸ケーブルを囲むように設けられ、前記漏洩同軸ケーブルを直立させて保持するためのタワーカバーと、前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの上端部を固定する第1の固定治具と、前記タワーカバー内に配置され、前記漏洩同軸ケーブルの下端部を固定する第2の固定治具と、を具備したタワー型アンテナの製造方法であって、
前記第1の固定治具により、前記漏洩同軸ケーブルの上端部を前記タワーカバー内に固定する工程と、
次いで、前記第2の固定治具により、前記ラインが直線となるように前記漏洩同軸ケーブルの下端部の回転方向の位置決めを行うと共に、前記漏洩同軸ケーブルの下端部を下方向に引っ張った状態で前記漏洩同軸ケーブルを前記タワーカバー内に固定する工程と、
を含むことを特徴とするタワー型アンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−31002(P2013−31002A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165893(P2011−165893)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】