説明

タンクにシールドを組み付ける装置、シールド、組み付け方法及びタンク

少なくとも1つの穴を有するシールドをタンクに組み付けるための装置(1)であって、タンクの壁にしっかりと取付けられるように意図されたべース(Z)と、下部(3’)側面及び上部(3”)側面がタンクの壁(9)にほぼ垂直な装置(1)の軸線と交差する溝(3)を有し、該溝(3)にシールドの穴の縁部が滑入するように使用されるヘッド(4)とを含む。該装置は、装置(1)の外側表面から突出してシールドがタンクから外れるのを防ぐ非リターンスタブ(5)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドをタンクに組み付けるための装置に関する。本発明はまた、この装置向けのシールド及びこの装置を用いた組み付け方法に関する。更に本発明は、この装置を含むタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、エンジン室から車両の後部へ延びる排気システムは、一般的には燃料タンクの下を通過する。エンジン作動中、排気システム(サイレンサー、パイプなど)の全ての構成要素の中を、その壁の温度を最大600度まで(或いは車両によっては更に高い温度となり、更に運転状態にも依存する)上昇させるのに必要な熱をその壁に伝える高温排気ガスが通過する。従って、これらの構成要素は、周囲に放熱する大きな熱源である。これらの構成要素に対して燃料タンクが近接していることを考慮し、タンクをどのような損傷からも保護するために、排気システムとタンクの間に熱シールド(例えばのアルミ波板又はアルミナイズ鋼で製造された)を配置することが知られている。この熱シールドは、実際にタンクのレベルで温度を約80度まで低下させることを可能にする。
【0003】
他のタイプのシールドもタンクに固定することができる。これらは例えば、特に車両の移動中にタンクの周りの周囲空気の偏向を改善することを意図した空気偏向シールドである。
【0004】
熱シールドをタンクと排気システムとの間に固定することは、従来技術において、具体的には米国特許第4,909,530号及び米国特許第4、930、811号で公知であり、熱シールドはタンクに直接ではなく車両のシャーシにネジにより固定されている。米国特許第5,193,262号では、ピンを含む1つの要素がその製造の直後で冷却する前にタンクの壁に直接埋め込まれ、ボルトを含む別の要素が第1要素のハウジング内に滑入される複数部品取付け装置が公表されている。シールドに形成された穴にボルトが嵌合され、次いでボルトにナットがねじ込まれてロックされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の装置には、複数パーツであり、すなわち複雑な構造で且つあまり経済的ではない、或いはシールドをタンクに直接取付けることができないといった不利な点がある。次に、車体の下の空きスペース及び場合によってはタンクの複雑な形状により、シールドを挿入できる可能性がほんのわずかしか残らない。本発明の目的は、上記で説明された不利点に対する簡素且つ最適な解決策を提供すると同時に、シールドの組み付け及びその自動化を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、少なくとも1つの穴を有するシールドをタンクに組み付けるための装置であって、
(a)タンクの壁にしっかりと取付けられるように構成されたベースと、
(b)その上部側面及び下部側面がタンクの壁にほぼ垂直な装置の軸線と交差する溝を有し、該溝にシールドの穴の縁部が滑入する、シールドを固定するのに使用されるヘッドと、
(c)装置の外側表面から突出してシールドがタンクから外れるのを防ぐ非リターンスタブと、を備えている装置に関する。
【0007】
用語「シールド」は、あらゆる形状のプレートを指す。
【0008】
詳細には、熱シールドの場合、該熱シールドは、熱シールドの片側に位置する発生源により放射される熱を反射し、該発生源とタンクとの間の障壁として作用する特性を熱シールドに与える1つ又は2以上の構成材料から成る。
【0009】
空気偏向シールドの具体的な事例では、シールドの形状は、シールドが固定されたタンクが移動するときに、該シールドの周りに流れる周囲空気が偏向されるように定められる。
【0010】
用語「タンク」は、閉鎖された様々な形状のチャンバを意味するものと解釈される。タンクは、ガスタンク、液体タンク、或いはガス及び液体の両方を収容するように設計されたタンクとすることができる。好ましくは、液体タンク或いは気相も含む液体用タンクである。更に好ましい様態では、タンクは自動車用の燃料タンクである。
【0011】
本発明による装置は、一般に、外表面が全体的又は部分的に円錐台形、円筒形、又はこれら2つの幾何形状のあらゆる組合せであり、必要であればタンクへの堅牢な(しっかりした)取付けに適合するような輪郭を有するベースにより形成されている。タンクの壁にベースを取付けた場所において、該タンクの壁に垂直な軸線は、ベースの外表面の回転軸とほぼ一致している。
【0012】
このベースは中空又は中実とすることができる。
【0013】
更にこの装置は好ましくは円周方向の溝を含み、溝の下部側面及び上部側面が装置の軸線と交差する。以下の文中、装置の用語「ヘッド」は、溝を含みシールドを取付けるのに使用される装置の一部を指すのに用いられる。
【0014】
装置はまた、外側非リターンスタブを含む。この非リターンスタブは、ヘッドの一部を形成し、装置の外表面から突出するのが好ましい。スタブの一部は装置の外表面に対しほぼ平行であり、他の部分は装置に対しほぼ垂直である。
【0015】
非リターンスタブは、ほとんどの場合、その輪郭がシールドの関連する穴の輪郭と緊密に嵌合するような大きさにされている。一般に、表面の輪郭は、シールドの関連する穴の外形部分と一致する。輪郭表面の好ましい事例は、シールドの穴の周辺に形成された形状の非リターンストップ部の形に一致する。この場合、非リターンスタブは、シールドの関係する穴の周辺に形成された非リターンストップ部と協働する。
【0016】
或いは、非リターンスタブは、非永久的な方法で穴の縁部と当接するために、可撓性があり、シールドをタンクに取付ける際に変位することができる。
【0017】
本発明の1つの好ましい実施形態では、タンク上の各組み付け装置のヘッドは、ファスナーを挿入することができるオリフィスを更に含む。この場合、シールドは、該シールドの各穴を通って横断して対応する組み付け装置のオリフィスに挿入されるファスナーでタンク上に組み付けられる。実際、取付け装置が破損し、もはやシールドを取付けることができない場合、或いはシールドに形成された穴の輪郭が取付け装置のヘッドの輪郭と一致しない場合が起こり得る。この場合、ファスナーにより、簡単且つ効果的にシールドを取付け装置のヘッドに取付けることが可能となる。
【0018】
車両の寿命期間において、本発明による組み付け装置に適合しないシールドをタンクに組み付けることが求められる場合も起こり得る。この特別な場合では、ファスナーを使用することで、組み付け装置を別の方法で用いることができる。
【0019】
本発明によれば、当該装置は、例えばプラスチックで且つ好ましい方法において射出成形により作られる。装置が2つの部分から成る場合、第1の部分、例えば装置のヘッドの部分は第1の型で射出成形され、次いで第2段階で、この部分は、別の部分を形成する材料でオーバーモールドされる。
【0020】
用語「プラスチック」は、周囲条件で固体状態にあるあらゆる合成ポリマー材料、熱可塑性樹脂材料、或いは熱硬化性材料であり、並びにこれらの材料の少なくとも2つの混合物と理解される。
【0021】
装置は、少なくとも1つの熱可塑性樹脂材料から成るのが好ましい。
【0022】
装置は、少なくとも2つの部分を含むのが好ましい。
【0023】
更により好ましい方法では、一般的にHDPEから成る外側表面の壁のタンクに溶接によってしっかりと取り付けることができるために、一方の装置の部分が高密度ポリエチレン(HDPE)で作られると共に、他の部分はポリアミド(PA)で作られる。
【0024】
従って、装置が2つの部分から成る場合、該装置はHDPEで作られたベースとPAで作られたヘッドとを含む。この2つの部分を組み付けるために、例えば、PAで作られた部分(例えばヘッド)の上にHDPEで作られた部分(例えばベース)をオーバーモールドすることができ、HDPEの溶解温度はPAの溶解温度より低いので、従ってこれによりPAで作られた部分が溶融するのが防止される。
【0025】
当業者に公知のどのような他の組み付け技術も、本発明による装置の部分を組み付けるのに使用することができる。
【0026】
本発明において考察される幾つかの装置は、シールドをタンクに組み付けるのに使用することができる。
【0027】
熱シールドの詳細な事例では、組み付けが完了すると、熱シールドとタンクとの間で空気の層の領域が定められ、すなわち、これが断熱体として作用し、熱シールド自体の効果を補完する。
【0028】
本発明はまた、事前に穴が穿孔されたシールドに関し、その穴の数は少なくともタンク上の装置の数と同じであり、穴の形状は、タンクと排気システムの構成要素との間の利用可能なスペースに可能な限り一致して嵌合するように適合され、該シールドがタンクを排気システムから保護する。シールドの中の穴の形状は、シールドをタンクに組み付けるための装置に適合するように設計されており、すなわち、この事例では、各穴の輪郭が狭窄化を示し、これが穴を異なる領域の2つの部分に境界付ける。最大領域を有する部分は、有利には装置のヘッドの形状を含む形状であると共に、最小領域を有する部分は、好ましくはシールドをタンクへ組み付ける際に装置の溝を係留することができる形状である。
【0029】
本発明はまた、シールドをタンクに組み付ける方法に関する。シールドは、以下の方法でタンクに組み付けられる。すなわち、最初に、各装置のベースをタンクの壁にしっかりと取付ける。次いで、タンク上の装置を、シールドの穴と一致するようにタンクの装置に対して位置付ける。次に、シールドを2段階の移動によりタンクに組み付ける。すなわち、最初に、シールドをタンクの壁に対し垂直方向で変位させ、各装置のヘッドをその装置に対応するシールドの穴の2つの部分のうちの最大部分に通し、次いで、各装置のヘッドが穴の部分で最小部分に係留され、各装置の溝が穴の最小部分により定められた縁部と協働するように、シールドをタンクの壁と平行な方向で滑らせる。最後に、非リターンスタブを、穴の最小部分により定められた縁部から各装置の溝が外れないように、最大のセクションを有する穴の部分の穴の縁部に当接させる。非リターンスタブと穴の縁部との間の接触は必ずしも永久的でなく、詳細には、寸法上のすき間が2つの要素の間に与えられている。この寸法上のすき間により、固定点に対するシールドの小さな動きを可能にし、その動きは、タンクの突然の動きがシールドのタンクへの固定に応力を印加する場合に役に立つ。
【0030】
上記で説明された方法において、溶接により各装置のベースをタンクの壁にしっかりと取付けることが好ましい。
【0031】
本発明はまた、シールドをタンクに組み付けるための少なくとも1つの装置、又は上記のシールド或いは上述の方法の1つによってタンクに組み付けられるシールドなどのシールドを備えるタンクに関する。
【0032】
本発明の自動車用燃料タンクへの適用は良好な結果をもたらした。
【0033】
用語「自動車」は、トラック、自動車及びモーターサイクルなど熱機関により駆動される車両を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下の図は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明を例証する目的で与えられている。
【0035】
図1は、装置(1)の3次元図であり、ベース(2)と、(下部(3’)側面と上部(3”)側面を有する)溝(3)と、装置(1)のヘッド(4)と、非リターンスタブ(5)と、突起部(6)とが示されている。
【0036】
図2は、穴を示しており、この穴は、狭窄部を有する輪郭を備え、狭窄部は、穴を異なる領域の2つの部分、すなわち、装置(1)のヘッド(4)の形状を含む形状の大きな領域(8)と、シールド(10)がタンクに組み付けられたときに溝(3)が係留される小さな領域(7)とに分けている。
【0037】
図3は、装置(1)に組み付けられたときのシールド(10)を装置(1)の軸線(13)を含み且つ非リターンスタブ(5)を通る断面図で示している。軸線(13)は、タンクの壁(9)に垂直で、ベース(2)からヘッド(4)に装置(1)を縦断する軸線に相当する。この軸線(13)は、溝(3)の下部(3’)側面と上部(3”)側面と交差する。一方では、ベース(2)は、タンクの壁(9)にしっかりと連結されている。他方では、シールド(10)は、シールド(10)の穴(図2に示された穴に類似した形状を有する)の縁部(11)が溝(3)に係留され、非リターンスタブ(5)がシールド(10)の同じ穴の縁部(12)(縁部(11)と完全に反対側であるが)に当接し、すなわちシールド(10)が装置(1)から外れるのを防ぐような方法で装置(1)に組み付けられる。
【0038】
図4は、ヘッド(4)がベース(2)上にオーバーモールドされ、オリフィス(15)を含むシールドなしの固定装置を示す。ファスナー(14)がオリフィス(15)に挿入される。
【0039】
図5は、シールド(10)がファスナー(14)を介してベース(2)とヘッド(4)を含む装置に固定された状態を示す。
【0040】
図6は、装置(1)の3つの異なる図であり、装置のヘッド(4)は、そこにファスナーを挿入するためのオリフィス(15)を有する。装置(1)のベース(2)は中空である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの穴を有するシールド(10)をタンクに組み付けるための装置(1)であって、
(a)前記タンクの壁(9)にしっかりと取付けられるよう構成されたベース(2)と、
(b)上部側面(3’)及び下部側面(3”)が前記タンクの壁(9)とほぼ直交する前記装置(1)の軸線と交差する溝(3)を有し、該溝に前記シールド(10)の穴の縁部が滑って入る、前記シールド(10)を固定するのに使用されるヘッド(4)と、
(c)前記装置(1)の外側表面から現れ、前記シールド(10)が前記タンクから外れるのを防ぐ非リターンスタブ(5)と、を備えている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ヘッド(4)が更にオリフィス(15)を含む、
請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの熱可塑性材料で作られている、
前記請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
少なくとも2つの部分を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
1つの部分が高密度ポリエチレン(HDPE)で作られ、他の部分がポリアミド(PA)で作られている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置(1)のためのシールド(10)であって、
少なくとも1つの穴を有し、該穴の輪郭が前記穴を面積の異なる2つの部分(7)及び(8)に境界付ける狭窄部を有するシールド(10)。
【請求項7】
前記穴(10)が非リターンストップ部を備える、
請求項6に記載のシールド(10)。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項による少なくとも1つの装置(1)を利用して請求項6又は7に記載のシールド(10)をタンクに組み付ける方法であって、
(a)各装置(1)の前記ベース(2)を前記タンクの壁(9)にしっかりと取り付け、
(b)前記シールド(10)を、前記タンク上の各装置(1)が前記シールド(10)の穴と一致するように前記タンクに対して位置決めし、
(c)前記シールド(10)を、最初に、前記シールド(10)を前記タンクの壁(9)に垂直な方向で変位させて、各装置(1)の前記ヘッド(4)を対応する前記穴の2つの部分のうちの最大部分(8)に通し、各装置(1)の前記溝(3)が前記穴の最大部分(8)により定められた縁部と協働するようにし、次いで、各装置(1)の前記ヘッド(4)が前記穴の最小セクションである部分(7)に係留されるように、前記シールド(10)を前記タンクの壁(9)と平行な方向で滑らせる、2段階の動きにより前記タンクに固定し、
(d)前記非リターンスタブ(5)を、各装置(1)の前記溝(3)が前記穴の最小部分(7)により定められる縁部から外れないように、非永久的な方法で前記最大セクション(8)を有する前記穴の縁部を当接させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
各装置(1)の前記ベース(2)が溶接により前記タンクの壁(9)にしっかりと取付けられる、
請求項8に記載の組み付け方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置(1)、又は請求項6又は7のいずれか1項に記載のシールド(10)、或いは請求項8又は9のいずれか1項に記載の方法によりタンクに組み付けられるシールド(10)を含む自動車用燃料タンク。

【公表番号】特表2007−514596(P2007−514596A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544449(P2006−544449)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053540
【国際公開番号】WO2005/059375
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(502294138)イネルジー オートモーティヴ システムズ リサーチ (41)
【Fターム(参考)】