タンク昇降式車両
【課題】荷室内にタンクを昇降可能に装備することによって、流体の輸送と一般貨物の輸送の両者に兼用可能で、運送業務の効率化を図ることの可能なタンク昇降式車両を提供する。
【解決手段】荷室2と、荷室内に設けられた流体収容タンク10と、流体収容タンク10を荷室2の床面3上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段20とを備えている。流体を運搬するときはタンク10を荷室床面3上に載置した状態とすることでタンク内に流体を収容可能である。貨物輸送の場合には、空きタンク10を荷室2の上部位置に引き上げておき、床面3から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに貨物を積み込むことができる。
【解決手段】荷室2と、荷室内に設けられた流体収容タンク10と、流体収容タンク10を荷室2の床面3上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段20とを備えている。流体を運搬するときはタンク10を荷室床面3上に載置した状態とすることでタンク内に流体を収容可能である。貨物輸送の場合には、空きタンク10を荷室2の上部位置に引き上げておき、床面3から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに貨物を積み込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷箱内に流体収容タンクを備えたタンク昇降式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種液体、ガス等の流体を運搬する車両としてタンクローリーが知られている。この場合、構造上運搬対象は流体に限定されるため、一般貨物の積載は不可能である。運搬対象が危険物、毒物等であれば、所定のタンクローリーの使用が法的に義務付けられるが、危険物でも毒物でもない液体(例えば食品関係等)の運搬には必ずしもタンクローリーの使用は義務づけられていない場合がある。タンクローリーの使用が義務付けられていない分野の流体を運搬する場合にタンクローリーを使用すると、往路はタンク内に流体を満たして輸送が可能であるが、復路は適当な流体輸送の需要が無い場合に空のタンクでタンクローリーを運行することになり、運送コストの面で効率が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、タンクローリーの使用が義務付けられていない分野の流体を運搬する場合にタンクローリーを使用すると、復路に何も積載しないで運行する機会が多くなり、効率が悪い問題があった。
【0004】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、荷室内にタンクを昇降可能に装備することによって、流体の輸送と一般貨物の輸送の両者に兼用可能で、運送業務の効率化を図ることの可能なタンク昇降式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るタンク昇降式車両の態様は、荷室と、前記荷室内に設けられた流体収容タンクと、前記流体収容タンクを前記荷室の床面上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
前記態様において、前記荷室が密閉可能な保冷室であって、前記流体収容タンクが前記保冷室内を昇降する構成でもよい。
【0007】
前記態様において、前記昇降駆動手段が、前記流体収容タンクに連結されるワイヤと、前記ワイヤの引き上げ、戻し動作を行う油圧シリンダとを有する構成でもよい。
【0008】
前記態様において、前記昇降駆動手段が、螺子軸を回転駆動するモータと、前記螺子軸に螺合するナットとを有し、前記ナット側が前記流体収容タンクに連結されて、前記ナットの昇降に伴い前記流体収容タンクが昇降する構成でもよい。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、荷室内に流体収納タンクを昇降自在に設けることにより、タンクを利用した流体の運搬だけでなく、一般貨物の運搬も可能である。すなわち、流体を運搬するときはタンクを荷室床面上に載置した状態とし、タンク内に流体を収容する。一方、一般貨物の輸送の場合には、タンクを荷室上部位置(天井に近接した位置)に引き上げておき、床面から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに一般貨物を積み込む。流体は重いため、積載重量の制限からタンクの高さは大きくできないのに加えて、最近の貨物自動車は低床車両が多くなっているため、タンクを荷室上部位置に引き上げておくことで、充分な空きスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るタンク昇降式車両の第1の実施の形態であって、(A)は概略平面図、(B)は概略側断面図、(C)は背面図である。
【図2】本発明に係るタンク昇降式車両の第2の実施の形態であって、(A)は概略平面図、(B)は概略側断面図、(C)は背面図である。
【図3】本発明に係るタンク昇降式車両の第3の実施の形態を示す概略側断面図である。
【図4】は各実施の形態におけるタンク構造の1例であって、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図5】は各実施の形態において、タンクを昇降させる昇降駆動手段の1例を示す縦断面図である。
【図6】は各実施の形態において、タンクを昇降させる昇降駆動手段の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1(A),(B),(C)は本発明に係るタンク昇降式車両の第1の実施の形態を示す。これらの図において、車両は箱形車体1を有する貨物自動車、いわゆるバン型車であり、箱形車体1の内部空間である荷室2内に流体収容タンク10が設けられている。流体収容タンク10は荷室2の床面3には固定されておらず、吊り上げ又は持ち上げにより上下に動かすことが可能な状態となっている。箱形車体1の4隅には流体収容タンク10を吊り上げ又は持ち上げにより荷室2内で昇降させるための昇降駆動手段20が配置されている。
【0014】
前記箱形車体1の荷室2は後面に開口を有し、例えば一般的な観音扉5で開閉自在となっている。
【0015】
図4(A),(B)に示すように、流体収容タンク10は、例えばステンレス、アルミ等で形成され、荷室2の床面3の面積よりも僅かに小さい底面積を有するものであり、底面に比較して高さの低い扁平な直方体形状である。底面積を充分大きく設定することで、高さが低くとも所要の重量の流体(液体、液化ガス等)を収容可能である。液体は重いため、貨物自動車の積載重量の法的制限値を超えないためにも必然的に高さは低くなる。タンク10の高さ寸法は、荷室2の高さ寸法の25%以下である。例えば、図1の場合、荷室2の内法高さ2650mmで、タンク10の高さ寸法は500mm程度である。
【0016】
タンク10の内部は複数の隔壁11で仕切られており、各隔壁11には小穴12が形成されている。これにより、車両走行時のタンク10内の流体移動を抑制するとともに、各隔壁11で仕切られたタンク内の室同士を各隔壁11の小穴12で相互に連通させている。タンク10の例えば背面には流体供給口15及び流体排出口16が設けられている。タンク10の重量はステンレスでは600kg程度、アルミでは300kg程度である。
【0017】
図5に示すように、昇降駆動手段20は、タンク10の側面(例えば前側2箇所と後ろ側2箇所、あるいは左側2箇所と右側2箇所)に固着された連結具13に連結されるワイヤ30と、ワイヤ30の引き上げ(吊り上げ)、戻し(吊り下げ)動作を行う油圧シリンダ40とを有している。すなわち、油圧シリンダ40の本体部は箱形車体1の4隅の床面上に垂直に枢支され、油圧シリンダ40のピストンロッド41の先端部にはシーブ42が回転自在に取り付けられている。また、ピストンロッド41の先端部には方形板状の摺動部材43が取り付けられている。摺動部材43は丈夫で摩擦の少ないナイロン(商品名)樹脂製等である。摺動部材43は箱形車体1側に固定のガイド体6によって床面3に垂直な方向に摺動自在に案内される。
【0018】
前記ワイヤ30の一端は例えば油圧シリンダ22の本体部近傍の床面側に固着されており、シーブ42に半周巻き掛けられた後に、ワイヤ他端はタンク10に固定の連結具13に連結されている。ワイヤ30の連結具13への連結は、締結固着であってもよいし、タンク10を外すことが可能なように連結具13に穴を開け、その穴にワイヤ30の他端に取り付けたフック35を引っ掛ける構成でもよい。
【0019】
以上の実施の形態において、流体収容タンク10を使用する場合、昇降駆動手段20の油圧シリンダ40を縮動させ、ワイヤ30を繰り出す。これにより、流体収容タンク10を降ろして、床面3に載置した状態(下降位置)とし、流体供給口15のバルブを開いて所定の流体をタンク10内に充填し、流体の輸送を行う。なお、流体排出口16のバルブを開くことで、外部への流体の排出が可能である。輸送時は流体供給口15及び流体排出口16のバルブを閉じてタンク10を密閉状態とする。
【0020】
流体収容タンク10を使用しないとき(タンク10が空のとき)は、昇降駆動手段20の油圧シリンダ40を伸長させ、ワイヤ30を引っ張ってタンク10を吊り上げて行き、タンク10を荷室2の天井に近接した状態(上昇位置)とする。近年の貨物自動車は低床車両が多くなってきており、扁平なタンク10を上に持ち上げた状態とすることで、床面3からタンク底面までの高さは充分大きく確保できる。この床面3からタンク底面までの空間を利用して、一般貨物の積載が可能である。
【0021】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0022】
(1) 荷室2内に流体収納タンク10を昇降自在に設けることにより、タンク10を利用した流体の運搬だけでなく、一般貨物の運搬も可能である。
【0023】
(2) 流体を運搬するときはタンク10を荷室床面3上に載置した状態とすることで、タンク内に流体を収容することができる。
【0024】
(3) 一般貨物の輸送の場合には、タンク10を荷室2の上部位置(天井に近接した位置)に引き上げておき、床面3から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに一般貨物を積み込むことができる。流体は重いため、積載重量の制限からタンク10の高さは大きくできないのに加えて、最近の貨物自動車は低床車両が多くなっているため、タンクを荷室上部位置に引き上げておくことで、充分な空きスペースを確保することができる。例えば、作業者の身長以上の高さを有する空きスペースを形成可能である。
【0025】
(4) 流体及び一般貨物の輸送に兼用可能であるため、往路又は復路を空荷状態で車両を運行することが減り、輸送コストの低減に寄与できる。
【0026】
図2(A),(B),(C)は本発明に係るタンク昇降式車両の第2の実施の形態を示す。この場合、流体収容タンクは2分割されており、2つの流体収容タンク10A,10Bが箱形車体1内に吊り上げ又は持ち上げ可能に設けられている。昇降駆動手段20は各タンク10A,10Bを個別に昇降可能なように配置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。昇降駆動手段20は各タンク10A,10Bに対してそれぞれ4箇所設けてもよいが、1本の油圧シリンダで2個のシーブを昇降させ、各シーブにワイヤを巻き掛けすることで、2本のワイヤを同時に引っ張り、繰り出し可能とすれば、各タンクに対して2箇所の昇降駆動手段20を設置する構成も可能である。
【0027】
この第2の実施の形態の場合、2つの流体収容タンク10A,10Bを個別に昇降させ得ることから、前側のタンク10Aに流体を満たし、後ろ側のタンク10Bは荷室天井まで吊り上げて、荷室後半を一般貨物の積み込みに利用すること等が可能になり、積載方法が広がり、車両の利用効率をいっそう向上させることができる。
【0028】
図3は本発明に係るタンク昇降式車両の第3の実施の形態を示す。この場合、車両は保冷車であり、箱形車体1の荷室2内を冷却する冷却装置8が荷室上部に設置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0029】
箱形車体1に冷却装置8が設置されていることにより、荷室2内を保冷室として低温状態に維持でき、流体収容タンク10に収容する流体として、牛乳等の低温輸送が必要な液体の輸送にも使用可能となる。
【0030】
図6は、各実施の形態において流体収容タンク10(又は10A,10B)を昇降させるための昇降駆動手段の他の例を示す。この昇降駆動手段50は、ボール螺子軸52を回転駆動するモータ51と、螺子軸52に螺合するナット53とを有し、ナット53側が流体収容タンク10に連結されている。例えば、タンク10の側面(例えば前側2箇所と後ろ側2箇所、あるいは左側2箇所と右側2箇所)に固着された連結具13がナット53の上側に固定配置される。モータ51は車体1の上部(荷室2の天井)に固定である。
【0031】
この場合、モータ51で螺子軸52を回転させることにより、ナット53が螺子軸52に沿って昇降し、この結果、ナット53に連結されたタンク10が昇降駆動される。
【0032】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0033】
各実施の形態では、箱形車体1は後面が観音扉で開閉自在である構造としたが、いわゆるウイングボデーのように、車体の側面が開閉できる構造であっても本発明は適用可能である。また、流体収容タンクは昇降駆動手段との連結を外すことで、荷室から取り出し可能な構造とすることも可能であり、車両を一般貨物輸送用に切り替えるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 箱形車体
2 荷室
3 床面
8 冷却装置
10,10A,10B 流体収容タンク
11 隔壁
12 小穴
13 連結具
15 流体供給口
16 流体排出口
20,50 昇降駆動手段
30 ワイヤ
40 油圧シリンダ
42 シーブ
51 モータ
52 ボール螺子軸
53 ナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷箱内に流体収容タンクを備えたタンク昇降式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種液体、ガス等の流体を運搬する車両としてタンクローリーが知られている。この場合、構造上運搬対象は流体に限定されるため、一般貨物の積載は不可能である。運搬対象が危険物、毒物等であれば、所定のタンクローリーの使用が法的に義務付けられるが、危険物でも毒物でもない液体(例えば食品関係等)の運搬には必ずしもタンクローリーの使用は義務づけられていない場合がある。タンクローリーの使用が義務付けられていない分野の流体を運搬する場合にタンクローリーを使用すると、往路はタンク内に流体を満たして輸送が可能であるが、復路は適当な流体輸送の需要が無い場合に空のタンクでタンクローリーを運行することになり、運送コストの面で効率が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、タンクローリーの使用が義務付けられていない分野の流体を運搬する場合にタンクローリーを使用すると、復路に何も積載しないで運行する機会が多くなり、効率が悪い問題があった。
【0004】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、荷室内にタンクを昇降可能に装備することによって、流体の輸送と一般貨物の輸送の両者に兼用可能で、運送業務の効率化を図ることの可能なタンク昇降式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係るタンク昇降式車両の態様は、荷室と、前記荷室内に設けられた流体収容タンクと、前記流体収容タンクを前記荷室の床面上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
前記態様において、前記荷室が密閉可能な保冷室であって、前記流体収容タンクが前記保冷室内を昇降する構成でもよい。
【0007】
前記態様において、前記昇降駆動手段が、前記流体収容タンクに連結されるワイヤと、前記ワイヤの引き上げ、戻し動作を行う油圧シリンダとを有する構成でもよい。
【0008】
前記態様において、前記昇降駆動手段が、螺子軸を回転駆動するモータと、前記螺子軸に螺合するナットとを有し、前記ナット側が前記流体収容タンクに連結されて、前記ナットの昇降に伴い前記流体収容タンクが昇降する構成でもよい。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、荷室内に流体収納タンクを昇降自在に設けることにより、タンクを利用した流体の運搬だけでなく、一般貨物の運搬も可能である。すなわち、流体を運搬するときはタンクを荷室床面上に載置した状態とし、タンク内に流体を収容する。一方、一般貨物の輸送の場合には、タンクを荷室上部位置(天井に近接した位置)に引き上げておき、床面から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに一般貨物を積み込む。流体は重いため、積載重量の制限からタンクの高さは大きくできないのに加えて、最近の貨物自動車は低床車両が多くなっているため、タンクを荷室上部位置に引き上げておくことで、充分な空きスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るタンク昇降式車両の第1の実施の形態であって、(A)は概略平面図、(B)は概略側断面図、(C)は背面図である。
【図2】本発明に係るタンク昇降式車両の第2の実施の形態であって、(A)は概略平面図、(B)は概略側断面図、(C)は背面図である。
【図3】本発明に係るタンク昇降式車両の第3の実施の形態を示す概略側断面図である。
【図4】は各実施の形態におけるタンク構造の1例であって、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図5】は各実施の形態において、タンクを昇降させる昇降駆動手段の1例を示す縦断面図である。
【図6】は各実施の形態において、タンクを昇降させる昇降駆動手段の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1(A),(B),(C)は本発明に係るタンク昇降式車両の第1の実施の形態を示す。これらの図において、車両は箱形車体1を有する貨物自動車、いわゆるバン型車であり、箱形車体1の内部空間である荷室2内に流体収容タンク10が設けられている。流体収容タンク10は荷室2の床面3には固定されておらず、吊り上げ又は持ち上げにより上下に動かすことが可能な状態となっている。箱形車体1の4隅には流体収容タンク10を吊り上げ又は持ち上げにより荷室2内で昇降させるための昇降駆動手段20が配置されている。
【0014】
前記箱形車体1の荷室2は後面に開口を有し、例えば一般的な観音扉5で開閉自在となっている。
【0015】
図4(A),(B)に示すように、流体収容タンク10は、例えばステンレス、アルミ等で形成され、荷室2の床面3の面積よりも僅かに小さい底面積を有するものであり、底面に比較して高さの低い扁平な直方体形状である。底面積を充分大きく設定することで、高さが低くとも所要の重量の流体(液体、液化ガス等)を収容可能である。液体は重いため、貨物自動車の積載重量の法的制限値を超えないためにも必然的に高さは低くなる。タンク10の高さ寸法は、荷室2の高さ寸法の25%以下である。例えば、図1の場合、荷室2の内法高さ2650mmで、タンク10の高さ寸法は500mm程度である。
【0016】
タンク10の内部は複数の隔壁11で仕切られており、各隔壁11には小穴12が形成されている。これにより、車両走行時のタンク10内の流体移動を抑制するとともに、各隔壁11で仕切られたタンク内の室同士を各隔壁11の小穴12で相互に連通させている。タンク10の例えば背面には流体供給口15及び流体排出口16が設けられている。タンク10の重量はステンレスでは600kg程度、アルミでは300kg程度である。
【0017】
図5に示すように、昇降駆動手段20は、タンク10の側面(例えば前側2箇所と後ろ側2箇所、あるいは左側2箇所と右側2箇所)に固着された連結具13に連結されるワイヤ30と、ワイヤ30の引き上げ(吊り上げ)、戻し(吊り下げ)動作を行う油圧シリンダ40とを有している。すなわち、油圧シリンダ40の本体部は箱形車体1の4隅の床面上に垂直に枢支され、油圧シリンダ40のピストンロッド41の先端部にはシーブ42が回転自在に取り付けられている。また、ピストンロッド41の先端部には方形板状の摺動部材43が取り付けられている。摺動部材43は丈夫で摩擦の少ないナイロン(商品名)樹脂製等である。摺動部材43は箱形車体1側に固定のガイド体6によって床面3に垂直な方向に摺動自在に案内される。
【0018】
前記ワイヤ30の一端は例えば油圧シリンダ22の本体部近傍の床面側に固着されており、シーブ42に半周巻き掛けられた後に、ワイヤ他端はタンク10に固定の連結具13に連結されている。ワイヤ30の連結具13への連結は、締結固着であってもよいし、タンク10を外すことが可能なように連結具13に穴を開け、その穴にワイヤ30の他端に取り付けたフック35を引っ掛ける構成でもよい。
【0019】
以上の実施の形態において、流体収容タンク10を使用する場合、昇降駆動手段20の油圧シリンダ40を縮動させ、ワイヤ30を繰り出す。これにより、流体収容タンク10を降ろして、床面3に載置した状態(下降位置)とし、流体供給口15のバルブを開いて所定の流体をタンク10内に充填し、流体の輸送を行う。なお、流体排出口16のバルブを開くことで、外部への流体の排出が可能である。輸送時は流体供給口15及び流体排出口16のバルブを閉じてタンク10を密閉状態とする。
【0020】
流体収容タンク10を使用しないとき(タンク10が空のとき)は、昇降駆動手段20の油圧シリンダ40を伸長させ、ワイヤ30を引っ張ってタンク10を吊り上げて行き、タンク10を荷室2の天井に近接した状態(上昇位置)とする。近年の貨物自動車は低床車両が多くなってきており、扁平なタンク10を上に持ち上げた状態とすることで、床面3からタンク底面までの高さは充分大きく確保できる。この床面3からタンク底面までの空間を利用して、一般貨物の積載が可能である。
【0021】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0022】
(1) 荷室2内に流体収納タンク10を昇降自在に設けることにより、タンク10を利用した流体の運搬だけでなく、一般貨物の運搬も可能である。
【0023】
(2) 流体を運搬するときはタンク10を荷室床面3上に載置した状態とすることで、タンク内に流体を収容することができる。
【0024】
(3) 一般貨物の輸送の場合には、タンク10を荷室2の上部位置(天井に近接した位置)に引き上げておき、床面3から所定高さの空きスペースを形成し、この空きスペースに一般貨物を積み込むことができる。流体は重いため、積載重量の制限からタンク10の高さは大きくできないのに加えて、最近の貨物自動車は低床車両が多くなっているため、タンクを荷室上部位置に引き上げておくことで、充分な空きスペースを確保することができる。例えば、作業者の身長以上の高さを有する空きスペースを形成可能である。
【0025】
(4) 流体及び一般貨物の輸送に兼用可能であるため、往路又は復路を空荷状態で車両を運行することが減り、輸送コストの低減に寄与できる。
【0026】
図2(A),(B),(C)は本発明に係るタンク昇降式車両の第2の実施の形態を示す。この場合、流体収容タンクは2分割されており、2つの流体収容タンク10A,10Bが箱形車体1内に吊り上げ又は持ち上げ可能に設けられている。昇降駆動手段20は各タンク10A,10Bを個別に昇降可能なように配置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。昇降駆動手段20は各タンク10A,10Bに対してそれぞれ4箇所設けてもよいが、1本の油圧シリンダで2個のシーブを昇降させ、各シーブにワイヤを巻き掛けすることで、2本のワイヤを同時に引っ張り、繰り出し可能とすれば、各タンクに対して2箇所の昇降駆動手段20を設置する構成も可能である。
【0027】
この第2の実施の形態の場合、2つの流体収容タンク10A,10Bを個別に昇降させ得ることから、前側のタンク10Aに流体を満たし、後ろ側のタンク10Bは荷室天井まで吊り上げて、荷室後半を一般貨物の積み込みに利用すること等が可能になり、積載方法が広がり、車両の利用効率をいっそう向上させることができる。
【0028】
図3は本発明に係るタンク昇降式車両の第3の実施の形態を示す。この場合、車両は保冷車であり、箱形車体1の荷室2内を冷却する冷却装置8が荷室上部に設置されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0029】
箱形車体1に冷却装置8が設置されていることにより、荷室2内を保冷室として低温状態に維持でき、流体収容タンク10に収容する流体として、牛乳等の低温輸送が必要な液体の輸送にも使用可能となる。
【0030】
図6は、各実施の形態において流体収容タンク10(又は10A,10B)を昇降させるための昇降駆動手段の他の例を示す。この昇降駆動手段50は、ボール螺子軸52を回転駆動するモータ51と、螺子軸52に螺合するナット53とを有し、ナット53側が流体収容タンク10に連結されている。例えば、タンク10の側面(例えば前側2箇所と後ろ側2箇所、あるいは左側2箇所と右側2箇所)に固着された連結具13がナット53の上側に固定配置される。モータ51は車体1の上部(荷室2の天井)に固定である。
【0031】
この場合、モータ51で螺子軸52を回転させることにより、ナット53が螺子軸52に沿って昇降し、この結果、ナット53に連結されたタンク10が昇降駆動される。
【0032】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0033】
各実施の形態では、箱形車体1は後面が観音扉で開閉自在である構造としたが、いわゆるウイングボデーのように、車体の側面が開閉できる構造であっても本発明は適用可能である。また、流体収容タンクは昇降駆動手段との連結を外すことで、荷室から取り出し可能な構造とすることも可能であり、車両を一般貨物輸送用に切り替えるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 箱形車体
2 荷室
3 床面
8 冷却装置
10,10A,10B 流体収容タンク
11 隔壁
12 小穴
13 連結具
15 流体供給口
16 流体排出口
20,50 昇降駆動手段
30 ワイヤ
40 油圧シリンダ
42 シーブ
51 モータ
52 ボール螺子軸
53 ナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室と、前記荷室内に設けられた流体収容タンクと、前記流体収容タンクを前記荷室の床面上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段とを備えたことを特徴とするタンク昇降式車両。
【請求項2】
前記荷室が密閉可能な保冷室であって、前記流体収容タンクが前記保冷室内を昇降する、請求項1記載のタンク昇降式車両。
【請求項3】
前記昇降駆動手段が、前記流体収容タンクに連結されるワイヤと、前記ワイヤの引き上げ、及び戻し動作を行う油圧シリンダとを有する、請求項1又は2記載のタンク昇降式車両。
【請求項4】
前記昇降駆動手段が、螺子軸を回転駆動するモータと、前記螺子軸に螺合するナットとを有し、前記ナット側が前記流体収容タンクに連結されて、前記ナットの昇降に伴い前記流体収容タンクが昇降する、請求項1又は2記載のタンク昇降式車両。
【請求項1】
荷室と、前記荷室内に設けられた流体収容タンクと、前記流体収容タンクを前記荷室の床面上に載置された状態と荷室天井に近接した状態との間で昇降させる昇降駆動手段とを備えたことを特徴とするタンク昇降式車両。
【請求項2】
前記荷室が密閉可能な保冷室であって、前記流体収容タンクが前記保冷室内を昇降する、請求項1記載のタンク昇降式車両。
【請求項3】
前記昇降駆動手段が、前記流体収容タンクに連結されるワイヤと、前記ワイヤの引き上げ、及び戻し動作を行う油圧シリンダとを有する、請求項1又は2記載のタンク昇降式車両。
【請求項4】
前記昇降駆動手段が、螺子軸を回転駆動するモータと、前記螺子軸に螺合するナットとを有し、前記ナット側が前記流体収容タンクに連結されて、前記ナットの昇降に伴い前記流体収容タンクが昇降する、請求項1又は2記載のタンク昇降式車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−188138(P2012−188138A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53011(P2011−53011)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(501337409)中央輸送株式会社 (3)
【出願人】(000230445)日本リフト株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(501337409)中央輸送株式会社 (3)
【出願人】(000230445)日本リフト株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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