説明

タンデム仕上圧延機及びその動作制御方法、並びに、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法

【課題】超微細粒鋼の歩留まりを向上することが可能な、タンデム仕上圧延機の動作制御方法を提供する。
【解決手段】被圧延材の板厚変更点が第Nスタンドに到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の板厚目標値の変更を開始し、少なくとも第nスタンドの板厚目標値を変更している間において、第nスタンドの出側板厚を板厚目標値に一致させる第一の圧下位置修正量を求め、n>mの第nスタンドにおいて、第n−1スタンドの板厚偏差を求め、該板厚偏差の影響がn>mの第nスタンドの出側板厚に現れないようにする第二の圧下位置修正量を求め、第mスタンドの圧下位置を第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、n>mの第nスタンドの圧下位置を第一の圧下位置修正量と第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正する、タンデム仕上圧延機の動作制御方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデム仕上圧延機及びその動作制御方法、並びに、熱延鋼板の製造装置及び熱延鋼板の製造方法に関する。本発明は、特に、熱間圧延ラインのタンデム仕上圧延機で1本の粗バーを圧延している最中に板厚及び/又は圧延潤滑剤の使用不使用を変更するタンデム仕上圧延機及びその動作制御法、並びに、当該タンデム仕上圧延機を有する熱延鋼板の製造装置及び上記タンデム仕上圧延機の動作制御方法を用いた熱延鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延工程では、まずスラブを粗圧延機によって圧延して粗バーを生成し、その後、複数の圧延機(スタンド)を備えるタンデム仕上圧延機によって粗バーを目標板厚まで圧延する。仕上圧延での各スタンドの動作は、最終スタンド出側における被圧延材の板厚や板幅等が目標の条件を満たすように決定される。この各スタンドの動作条件は、ドラフトスケジュール(パススケジュール)と呼ばれ、製品の品質や生産性等に大きな影響を与える。そのため、製品に応じて適切なドラフトスケジュールを決定することが求められている。
【0003】
タンデム仕上圧延機のドラフトスケジュールは、通常、最終製品に近い後段(被圧延材の移動方向下流側)のスタンドほど、ワークロール表面の肌荒れを低減して製品の表面性状を良好に保つために、圧延荷重が軽くなるように決定している。ここで、前段(被圧延材の移動方向上流側)スタンド及び後段スタンドの圧下率を同一に設定しても、板厚が薄い被圧延材を圧延する後段スタンドは、大きな圧延荷重が必要になるという圧延上の特性がある。そのため、通常のドラフトスケジュールでは、後段スタンドほど、圧下率が小さくなっている。
【0004】
一方、自動車用や構造材用等として用いられる鋼材は、強度、加工性、靭性といった機械的特性に優れることが求められ、これらの機械的特性を総合的に高めるには、熱延鋼板の結晶粒を微細化することが有効である。また、結晶粒を微細化すれば、合金元素の添加量を削減しても優れた機械的性質を具備した高強度熱延鋼板を製造することが可能になる。
【0005】
熱延鋼板の結晶粒の微細化方法としては、熱間仕上圧延の特に後段において、高圧下圧延(後段スタンドの圧下率を高めた仕上圧延)をおこなってオーステナイト粒を微細化するとともに粒内に圧延歪を蓄積させ、仕上圧延直後に急冷することにより、得られるフェライト粒の微細化を図る方法が知られている。この方法で超微細結晶粒(例えば、平均粒径が2μm以下の結晶粒をいう。以下において同じ。)を有する熱延鋼板(以下において、「超微細粒鋼」という。)を製造するためには、熱間圧延ラインにおけるタンデム仕上圧延機の後段スタンドの圧下率を、従来よりも高める必要がある。それゆえ、微細粒鋼を製造するためには、従来とは異なるドラフトスケジュールを決定し、タンデム仕上圧延機の動作を従来とは異なる形態で制御することが必要になる。
【0006】
しかし、後段スタンドの圧下率を高くすると、後段スタンドの負荷(圧延荷重、圧延トルク等)が高くなり、先端の通板や尾端の尻抜きなどの非定常部の圧延が難しくなるため、先尾端部では後段スタンドの圧下率を下げて本来の製品の板厚目標値よりも厚く圧延することが必要になることがある。
【0007】
また、後段スタンドの負荷を設備上限値以内に抑えるとともに被圧延材の表面性状を良好にするためには圧延潤滑剤の使用が有効であるが、圧延潤滑剤の使用によってワークロールと被圧延材との間の摩擦係数が低下すると、被圧延材のワークロールへの噛み込み性が悪化するため、先端の通板時は圧延潤滑剤を用いず、先端の通板が完了した後に圧延潤滑剤を使用し始める必要がある。
【0008】
このような超微細粒鋼の製造において必要となる板厚の変更や圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう技術として、例えば特許文献1には、板厚変更点が、あるスタンドに到達すると同時に当該スタンドの板厚目標値を一定レートで変更し、その板厚目標値に一致するように当該スタンドの圧下位置を修正するという動作を、板厚変更の対象となる最上流スタンドから最終スタンドまで、順に繰り返す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2010−74195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されている技術によれば、板厚の変更中の張力変動や圧延潤滑剤の使用不使用の変更中の張力変動を抑制することができるが、それらの変更を変更の対象となっている最上流スタンドから最終スタンドまで順に繰り返しておこなうので、全ての変更が完了するまでの時間は長くなる。これにより、板厚が所望の値から外れる部分や被圧延材の表面性状が悪い部分が長くなり、そのような部分は製品とすることはできないため、歩留まりが悪いという課題が残った。
【0011】
そこで、本発明は、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更や圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう際に、歩留まりを向上することが可能な、タンデム仕上圧延機及びその動作制御方法、並びに、該タンデム仕上圧延機を有する熱延鋼板の製造装置及び該タンデム仕上圧延機を用いる熱延鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の第1の態様は、N個(Nは2以上の整数)のスタンド(1、2、…、7)を備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における板厚目標値が変更される、タンデム仕上圧延機(10)の動作を制御する方法であって、被圧延材の板厚変更点が第Nスタンド(7)に到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の板厚目標値の変更を開始し、少なくとも第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンド(5、6、7)の第一の圧下位置修正量を求めるとともに、n>mの第nスタンド(6、7)において、第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差を求め、第n−1スタンドの板厚偏差の影響がn>mの第nスタンドの出側における被圧延材の板厚に現れないようにするn>mの第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求め、第mスタンド(5)の圧下位置を第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、n>mの第nスタンド(6、7)の圧下位置を第一の圧下位置修正量と第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法である。
【0014】
ここに、本発明の第1の態様及び以下に示す本発明の他の態様(以下において、これらをまとめて「本発明」ということがある。)において、「第Nスタンド(7)」とは、タンデム圧延機(10)の最終スタンド、すなわち、タンデム圧延機(10)によって圧延される被圧延材(8)の移動方向の下流端に配置されたタンデム圧延機のスタンド(7)をいう。
【0015】
本発明の第2の態様は、N個(Nは2以上の整数)(1、2、…、7)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機(10)の動作を制御する方法であって、同一のタイミングで第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更し、少なくとも第nスタンドの圧延潤滑剤の使用不使用によるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンド(5、6、7)の第一の圧下位置修正量を求めるとともに、n>mの第nスタンド(6、7)において、第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における板厚目標値との差である板厚偏差を求め、第n−1スタンドの板厚偏差の影響がn>mの第nスタンドの出側における被圧延材の板厚に現れないようにするn>mの第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求め、第mスタンド(5)の圧下位置を第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、n>mの第nスタンド(6、7)の圧下位置を第一の圧下位置修正量と第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法である。
【0016】
本発明の第3の態様は、N個(Nは2以上の整数)のスタンド(1、2、…、7)を備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機(10)の動作を制御する方法であって、被圧延材の板厚変更点が第Nスタンド(7)に到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更を開始し、少なくとも第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンド(5、6、7)の第一の圧下位置修正量を求めるとともに、n>mの第nスタンド(6、7)において、第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差を求め、第n−1スタンドの板厚偏差の影響がn>mの第nスタンドの出側における被圧延材の板厚に現れないようにするn>mの第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求め、第mスタンド(5)の圧下位置を第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、n>mの第nスタンド(6、7)の圧下位置を第一の圧下位置修正量と第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法である。
【0017】
上記本発明の第3の態様において、第nスタンド(5、6、7)の板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間は、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることが好ましい。
【0018】
本発明の第4の態様は、上記本発明の第1の態様乃至本発明の第3の態様のいずれかのタンデム仕上圧延機の動作制御方法によって制御されるタンデム仕上圧延機(10)を用いて鋼板(8)を仕上圧延する工程を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法である。
【0019】
本発明の第5の態様は、N個(Nは2以上の整数)のスタンド(1、2、…、7)を備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における板厚目標値が変更される、タンデム仕上圧延機(10)であって、被圧延材の板厚変更点が第Nスタンド(7)に到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の板厚目標値の変更を開始し、少なくとも第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める第mスタンドから第Nスタンド(5、6、7)の第一の板厚制御手段(15、16、17)と、n>mの第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの変更開始前の板厚目標値との差に基づいてn>mの第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求める第m+1スタンドから第Nスタンド(6、7)の第二の板厚制御手段(26、27)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する第mスタンドの圧下位置制御手段(5c)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量と第二の板厚制御手段で求められた第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段(6c、7c)と、を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機である。
【0020】
本発明の第6の態様は、N個(Nは2以上の整数)のスタンド(1、2、…、7)を備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機であって、第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更する潤滑剤供給手段(5e、6e、7e)と、少なくとも第nスタンドの圧延潤滑剤の使用不使用によるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める第mスタンドから第Nスタンド(5、6、7)の第一の板厚制御手段(15、16、17)と、n>mの第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における板厚目標値との差に基づいてn>mの第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求める第m+1スタンドから第Nスタンド(6、7)の第二の板厚制御手段(26、27)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する第mスタンドの圧下位置制御手段(5c)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量と第二の板厚制御手段で求められた第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段(6c、7c)と、を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機である。
【0021】
本発明の第7の態様は、N個(Nは2以上の整数)のスタンド(1、2、…、7)を備えるタンデム仕上圧延機(10)で1本の被圧延材(8)を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)(5)から第Nスタンド(7)における板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機(10)であって、被圧延材の板厚変更点が第Nスタンド(7)に到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)(5、6、7)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更する潤滑剤供給手段(5e、6e、7e)と、被圧延材の板厚変更点が第Nスタンド(7)に到達すると同時に第nスタンド(5、6、7)の板厚目標値の変更を開始し、少なくとも第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、第nスタンドの出側における被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める第mスタンドから第Nスタンド(5、6、7)の第一の板厚制御手段(15、16、17)と、n>mの第n−1スタンド(5、6)の出側における被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差に基づいて第nスタンド(6、7)の第二の圧下位置修正量を求める第m+1スタンドから第Nスタンド(6、7)の第二の板厚制御手段(26、27)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する第mスタンドの圧下位置制御手段(5c)と、第一の板厚制御手段で求められた第一の圧下位置修正量と第二の板厚制御手段で求められた第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段(6c、7c)と、を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機である。
【0022】
上記本発明の第7の態様において、第nスタンド(5、6、7)の板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間は、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることが好ましい。
【0023】
本発明の第8の態様は、上記本発明の第5の態様乃至本発明の第7の態様のいずれかのタンデム仕上圧延機(10)を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造装置(100)である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の態様では、板厚目標値の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての板厚目標値を同時に変更するので、すべての変更対象スタンドの変更が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の変更過程の板厚変化が下流スタンド(6、7)の入側板厚変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第1の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更をおこなう際にも、最終スタンド出側の板厚が変更された目標値に一致するまでの時間を短縮し、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機の動作制御方法を提供することができる。
【0025】
本発明の第2の態様では、圧延潤滑剤の使用不使用の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての使用不使用を同時に変更するので、すべての変更対象スタンドのワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数変化が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の摩擦係数変化過程の板厚変化が下流スタンド(6、7)の入側板厚変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第2の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう際にも、最終スタンド出側の板厚偏差が小さくなって板厚公差外れを起こすことがなくなり、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機の動作制御方法を提供することができる。
【0026】
本発明の第3の態様では、板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用変更を同時にするので、すべての変更対象スタンドの変更が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の変更過程の板厚変化が下流スタンド(6、7)の入側板厚変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第3の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう際にも、最終スタンド出側の板厚が変更された目標値に一致するまでの時間を短縮し、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機の動作制御方法を提供することができる。
【0027】
また、本発明の第3の態様において、板厚目標値の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)の板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間を、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることにより、歩留まりを向上させやすくなる。
【0028】
本発明の第4の態様は、上記本発明の第1の態様乃至本発明の第3の態様のいずれかのタンデム仕上圧延機の動作制御方法によって制御されるタンデム仕上圧延機(10)を用いて鋼板(8)を圧延する工程を有している。そのため、本発明の第4の態様によれば、歩留まりを改善して超微細粒鋼を製造することが可能な、熱延鋼板の製造方法を提供することができる。
【0029】
本発明の第5の態様では、板厚目標値の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての板厚目標値を同時に変更するので、すべての変更対象スタンドの変更が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の変更過程の板厚変化が下流スタンド(6、7)の入側板厚変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第5の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更をおこなう際にも最終スタンド出側の板厚が変更された目標値に一致するまでの時間を短縮し、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機(10)を提供することができる。
【0030】
本発明の第6の態様では、圧延潤滑剤の使用不使用の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての使用不使用を同時に変更するので、すべての変更対象スタンドのワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数変化が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の摩擦係数変化過程の板厚変化が下流スタンドの入側変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第6の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう際にも、最終スタンド出側の板厚偏差が小さくなって板厚公差外れを起こすことが少なくなり、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機(10)を提供することができる。
【0031】
本発明の第7の態様では、板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)すべての板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用変更を同時にするので、すべての変更対象スタンドの変更が終了するまでの時間が従来法より短くなる。また、上流スタンド(5、6)の変更過程の板厚変化が下流スタンド(6、7)の入側板厚変動外乱として作用する影響を第二の圧下位置修正量によって抑制する。したがって、本発明の第7の態様によれば、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更をおこなう際にも、最終スタンド出側の板厚が変更された目標値に一致するまでの時間を短縮し、歩留まりを向上させることが可能なタンデム仕上圧延機(10)を提供することができる。
【0032】
また、本発明の第7の態様において、板厚目標値の変更の対象となっているスタンド(5、6、7)の板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間を、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロール(5a、6a、7a)と被圧延材(8)との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることにより、歩留まりを向上させやすくなる。
【0033】
本発明の第8の態様にかかる熱延鋼板の製造装置(100)は、上記本発明の第5の態様乃至本発明の第7の態様のいずれかのタンデム仕上圧延機(10)を備えている。したがって、本発明の第8の態様によれば、歩留まりを改善して超微細粒鋼の製造時に張力変動を抑制することが可能な、熱延鋼板の製造装置(100)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のタンデム仕上圧延機の動作制御方法が適用されるタンデム仕上圧延機10の形態例を示す図である。
【図2】本発明にかかる熱延鋼板の製造装置100の形態例を簡略化して示す図である。
【図3】本発明のタンデム仕上圧延機の動作制御方法によって制御した場合の圧延状態を示すグラフである。
【図4】本発明のタンデム仕上圧延機の動作制御方法によって制御した場合の圧延状態を示すグラフである。
【図5】本発明以外の方法によって制御した場合の圧延状態を示すグラフである。
【図6】本発明以外の方法によって制御した場合の圧延状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明にかかるタンデム仕上圧延機の動作制御方法が適用されるタンデム仕上圧延機10の形態例を示す図である。図1に示したように、タンデム仕上圧延機10は、第1スタンド1、第2スタンド2、…、及び、第7スタンド7の7つのスタンドを有しており、第1スタンド1から第7スタンド7までの7つのスタンドによって、被圧延材8(以下において、「鋼板8」ということがある。)を連続圧延可能なように構成されている。これら7つのスタンド1〜7は、それぞれ、一対のワークロール1a、1a〜7a、7a一対のバックアップロール1b、1b〜7b、7b、圧下位置制御装置1c〜7c、及び、速度制御装置1d〜7dを備えている。すなわち、例えば第1スタンド1は、一対のワークロール1a、1a、一対のバックアップロール1b、1b、圧下位置制御装置1c、及び、速度制御装置1dを備え、同様に、例えば第7スタンド7は、一対のワークロール7a、7a、一対のバックアップロール7b、7b、圧下位置制御装置7c、及び、速度制御装置7dを備えている。また、各スタンド1〜7には潤滑剤供給手段1e〜7eが備えられている。潤滑剤供給手段1e〜7eは、それぞれ、ワークロール1a〜7aに向けて圧延潤滑剤(例えば、圧延潤滑油又は圧延潤滑油水溶液等)を噴射する装置であり、加圧された圧延潤滑剤を供給する配管とワークロールへ向けて圧延潤滑剤を噴射するノズルとを備えている。圧下位置制御装置1cは第1スタンド1の圧下位置を調整する装置であり、これにより一対のワークロール1a、1aの間隙が調節され鋼板8の板厚が調整される。圧下位置制御装置2c〜7cも同様である。速度制御装置1dは速度指令装置30から与えられるワークロール1a、1aのロール速度の指令値にワークロール1a、1aのロール速度が一致するように作動する装置であり、これによりワークロール1a、1a及びバックアップロール1b、1bの回転速度が調整される。速度制御装置2d〜7dも同様である。
【0037】
第1スタンド1〜第7スタンド7には、それぞれのスタンド1〜7における鋼板8の出側板厚を目標値に一致させるようにフィードバック的に動作する第一板厚制御装置11〜17が備えられており、第2スタンド2〜第7スタンド7には、それぞれのスタンド2〜7における鋼板8の入側板厚変動の影響が出側板厚に現れないようにフィードフォワード的に動作する第二板厚制御装置22〜27が備えられている。第1板厚制御装置11〜17によって板厚目標値を変更する時間は、板厚目標値変更時間決定装置28によって決定される。また、タンデム仕上圧延機10には、鋼板8上に定められた点がタンデム仕上圧延機10のどの位置にあるかをトラッキングする機能を有するタイミング指示装置40が備えられており、タイミング指示装置40を用いて得られたトラッキング情報に基づき、タイミング指示を第一板厚制御装置11〜17、第二板厚制御装置22〜27、速度指令装置30、及び、潤滑剤供給手段1e〜7eに与えるように構成されている。
【0038】
第1スタンド1では、第一板厚制御装置11から第1スタンド1の出側板厚を目標値に一致させる第一の圧下位置修正量が圧下位置制御装置1cに与えられることによって、第1スタンド1の圧下位置が調節され、第1スタンド1における鋼板8の板厚(出側板厚)が調整される。第2スタンド2では、第一板厚制御装置12から第2スタンド2の出側板厚を目標値に一致させる第一の圧下位置修正量が圧下位置制御装置2cに与えられるとともに、第二板厚制御装置22から第2スタンド2の入側板厚の影響が第2スタンド2の出側板厚に現れないようにする第二の圧下位置修正量が圧下位置制御装置2cに与えられ、圧下位置制御装置2cによって第一の圧下位置修正量と第二の圧下位置修正量との加算値だけ第2スタンド2の圧下位置が調節されて、第2スタンド2における鋼板8の板厚(出側板厚)が調整される。第3スタンド3〜第7スタンド7については第2スタンド2と同様である。
【0039】
以下、図1を参照しつつ、本発明の一実施形態であるN=7及びm=5の場合について、板厚目標値の変更を開始するとともに圧延潤滑剤を使用し始める本発明の動作制御方法を具体的に説明する。なお、ロール速度とはワークロールの回転速度を指すものとし、以下の説明では、ドラフトスケジュール変更前後の板厚、及び、板厚目標値変更時間が、圧延開始前に決定されると仮定している。
【0040】
板厚目標値変更時間決定装置28は、第5スタンド5から第7スタンド7に共通する板厚目標値変更時間Tを求める。Tは小さすぎると板厚目標値の変更レートが速くなりすぎ、板厚制御の追従遅れによって圧下位置の変更とロール速度の変更とがミスマッチとなり、張力が変動する。また、Tは大きすぎると板厚の変更にかかる時間が長くなるので、板厚が本来得たい変更後の板厚目標値に一致していない部分が長くなる。したがって、板厚目標値変更時間Tは、板厚制御の追従遅れが問題とならない範囲で最小となるように決定することが望ましい。例えば、第nスタンドの板厚変更量をΔhとし、第nスタンドの板厚目標値に対する板厚制御の追従遅れ時間をtとすると、板厚目標値をΔh/Tの変更レートで変更する際の板厚制御誤差は(Δh/T)・tであるので、Δh(n=5〜7)が予め定めておいた既定値α以下になるように、下式(1)で板厚目標値変更時間Tを決定し、第一板厚制御装置15〜17に与えておく。
T=max Δh・t/α …式(1)
【0041】
さらに、圧延潤滑剤の使用不使用も変更する際には、Tが圧延潤滑剤の使用不使用の変更による摩擦係数変化に要する時間以上となるようにすることが望ましい。
【0042】
タイミング指示装置40は、鋼板8の板厚変更点をトラッキングし、板厚変更点が第7スタンド7に到達したときに、速度指令装置30にそのタイミングを通知する。速度指令装置30は、タイミング指示装置40からの通知を受け、板厚目標値の変更や圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じる張力変動を抑制するような制御(例えば、特願2010−57300に開示されている制御方法)を開始し、第1スタンド1〜第7スタンド7に対するロール速度変更指令を速度制御装置1d〜7dに与える。速度制御装置1d〜7dは、速度指令装置30からのロール速度変更指令に各スタンド1〜7のロール速度が一致するようにロール速度を調節する。
【0043】
また、タイミング指示装置40は、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達したときに、第一板厚制御装置15〜17にそのタイミングを通知する。第5スタンド5の第一板厚制御装置15は、通知を受けると、第5スタンド5の板厚変更量Δhと、第5スタンド5から第7スタンド7に共通する板厚目標値変更時間Tに基づき、板厚目標値の変更レートΔh/Tを決定する。そして、第5スタンド5の板厚目標値の変更をΔh/Tの変更レートで開始し、第5スタンド5における鋼板8の板厚(出側板厚)がその板厚目標値に一致するような第5スタンド5の第一の圧下位置修正量ΔS5aを求め、圧下位置制御装置5cに与える。第5スタンド5の板厚目標値の変更は、その変更を開始してから時間Tだけ経過後に終了する。同様に、第6スタンド6の第一板厚制御装置16は、タイミング指示装置40から、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達した通知を受けると、第6スタンド6の板厚変更量Δhと、板厚目標値変更時間Tに基づき、板厚目標値の変更レートΔh/Tを決定する。そして、第6スタンド6の板厚目標値の変更をΔh/Tの変更レートで開始し、第6スタンド6における鋼板8の板厚(出側板厚)がその板厚目標値に一致するような第6スタンド6の第一の圧下位置修正量ΔS6aを求め、圧下位置制御装置6cに与える。第6スタンド6の板厚目標値の変更は、その変更を開始してから時間Tだけ経過後に終了する。同様に、第7スタンド7の第一板厚制御装置17は、タイミング指示装置40から、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達した通知を受けると、第7スタンド7の板厚変更量Δhと、板厚目標値変更時間Tに基づき、板厚目標値の変更レートΔh/Tを決定する。そして、第7スタンド7の板厚目標値の変更をΔh/Tの変更レートで開始し、第7スタンド7における鋼板8の板厚(出側板厚)がその板厚目標値に一致するような第7スタンド7の第一の圧下位置修正量ΔS7aを求め、圧下位置制御装置7cに与える。第7スタンド7の板厚目標値の変更は、その変更を開始してから時間Tだけ経過後に終了する。上記において、出側板厚を板厚目標値に一致させる第一の圧下位置修正量ΔS5a、ΔS6a、ΔS7aを求める具体的な方法は、公知のフィードバックAGC(Automatic Gauge Control)と同様であるので詳細な説明を省略する。また、出側板厚は板厚計を用いた測定値を用いてもよいし、公知のゲージメータ式を用いて計算したゲージメータ板厚を用いてもよい。
【0044】
また、タイミング指示装置40は、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達したときに、第二板厚制御装置26、27にそのタイミングを通知する。第6スタンド6の第二板厚制御装置26は、タイミング指示装置40から、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達した通知を受けると、第5スタンド5における鋼板8の板厚(出側板厚)と第5スタンド5における変更開始前の板厚目標値との差を第6スタンド6の入側板厚偏差として求め、この入側板厚偏差の影響が第6スタンド6の出側板厚に現れないようにする第6スタンド6の第二の圧下位置修正量ΔS6bを求め、圧下位置制御装置6cに与える。同様に、第7スタンド7の第二板厚制御装置27は、タイミング指示装置40から、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達した通知を受けると、第6スタンド6における鋼板8の板厚(出側板厚)と第6スタンド6における変更開始前の板厚目標値との差を第7スタンド7の入側板厚偏差として求め、この入側板厚偏差の影響が第7スタンド7の出側板厚に現れないようにする第7スタンド7の第二の圧下位置修正量ΔS7bを求め、圧下位置制御装置7cに与える。上記において、入側板厚偏差の影響が出側板厚に表れないようにする第二の圧下位置修正量ΔS6b、ΔS7bを求める具体的な方法は、公知のフィードフォワードAGC(Automatic Gauge Control)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0045】
第5スタンド5の圧下位置制御装置5cは、第一板厚制御装置15から与えられる第一の圧下位置修正量ΔS5aに従い、第5スタンド5の圧下位置を修正する。第6スタンド6の圧下位置制御装置6cは、第一板厚制御装置16から与えられる第一の圧下位置修正量ΔS6aと、第二板厚制御装置26から与えられる第二の圧下位置修正量ΔS6bとの加算値に従い、第6スタンド6の圧下位置を修正する。第7スタンド7の圧下位置制御装置7cは、第一板厚制御装置17から与えられる第一の圧下位置修正量ΔS7aと、第二板厚制御装置27から与えられる第二の圧下位置修正量ΔS7bとの加算値に従い、第7スタンド7の圧下位置を修正する。
【0046】
ここで、第一板厚制御装置15〜17及び第二板厚制御装置26、27による板厚制御は、各スタンド5〜7の板厚目標値の変更開始前から始めておいてもよいし、板厚目標値の変更終了後も継続してもよいが、少なくとも板厚目標値の変更中と圧延潤滑剤の使用不使用の変更による摩擦係数の変化中は、第一板厚制御装置15〜17及び第二板厚制御装置26、27による圧下位置修正動作がおこなわれるようにする。
【0047】
さらに、圧延潤滑剤の使用不使用も変更する際には、タイミング指示装置40は、鋼板8の板厚変更点が第7スタンド7に到達したときに、潤滑剤供給手段5e〜7eにそのタイミングを通知し、潤滑剤供給手段5e〜7eは圧延潤滑剤の使用不使用を変更する。このようにすることで、第5スタンド5〜第7スタンド7の板厚目標値の変更開始タイミングと圧延潤滑剤の使用不使用の変更タイミングとを合わせることができる。
【0048】
なお、圧延潤滑剤の使用不使用を変更せずに板厚目標値のみを変更する場合は、潤滑剤供給手段5e〜7eに関する動作制御をおこなわないだけであり、上記と同様の動作制御方法を適用できる。また、板厚目標値を変更せずに圧延潤滑剤の使用不使用のみを変更する場合は、板厚変更点を圧延潤滑剤の使用不使用の変更点とし、板厚目標値の変更量を0とおけば、上記と同様の動作制御方法を適用できる。
【0049】
図2は、本発明の熱延鋼板の製造装置100の形態を簡略化して示す図である。図2では、複数のスタンド1〜7を備えたタンデム仕上圧延機10の上流側に配設される粗圧延機や、冷却装置50の下流側に配設される巻き取り機のほか、図1に示した圧下位置制御装置1c〜7c、速度制御装置1d〜7d、潤滑剤供給手段1e〜7e、第一板厚制御装置11〜17、第二板厚制御装置12〜17、板厚目標値変更時間決定装置28、速度指令装置30、及び、タイミング指示装置40の記載も省略しており、タンデム仕上圧延機10も簡略化して示している。図2において、被圧延材8は紙面左側から右側へと移動する。図2に示したように、本発明の熱延鋼板の製造装置100は、複数のスタンド1〜7を具備するタンデム仕上圧延機10と、該タンデム仕上圧延機10の下流側に隣接して配設された冷却装置50と、を備えている。製造装置100では、例えば、タンデム仕上圧延機10を構成するスタンド1〜7のうち、下流側の3つのスタンド5〜7で圧下率が30%以上の高圧下圧延を行った後、当該3つのスタンド5〜7のうち最も下流側に配設されているスタンド7による仕上圧延が終了してから0.2秒以内に、冷却装置50を用いて、600℃/s以上(好ましくは1000℃/s以上)の冷却速度で被圧延材8を急冷する。このようにすることで、超微細粒鋼を製造することが可能になる。そして、製造装置100には、タンデム仕上圧延機10が備えられているので、超微細粒鋼を製造する際に必要となる板厚の変更や圧延潤滑剤の使用不使用の変更時に、被圧延材8の板厚を制御することができる。そのため、本発明によれば、超微細粒鋼の製造時に歩留まりを向上させることが可能な、熱延鋼板の製造装置100を提供することができる。
【実施例】
【0050】
シミュレーションの結果を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
【0051】
板厚32mm、板幅1000mmの粗バーを、表1のドラフトスケジュールで圧延潤滑剤を使用せずにタンデム仕上圧延している最中に、第5スタンド5から第7スタンド7の板厚を変更するとともに、第5スタンド5から第7スタンド7の圧延潤滑剤の使用を開始して表2のドラフトスケジュールに変更するシミュレーションをおこなった。なお、表2のドラフトスケジュールは、超微細粒鋼の製造を目的としたドラフトスケジュールである。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1及び表2において、第1〜第7は、第1スタンド1〜第7スタンド7を意味している。
【0055】
本発明にかかるタンデム仕上圧延機の動作制御方法を適用した場合(実施例1)の圧延状態を図3に示す。実施例1では、時間0において第5スタンド5から第7スタンド7の板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用を開始し、第5スタンド5の板厚を板厚目標値に一致させる第5スタンド5の第一の圧下位置修正量ΔS5a、第6スタンド6の板厚を板厚目標値に一致させる第6スタンド6の第一の圧下位置修正量ΔS6a、及び、第7スタンド7の板厚を板厚目標値に一致させる第7スタンド7の第一の圧下位置修正量ΔS7aを求めた。また、これとともに、第5スタンドの出側板厚と変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差に基づき第6スタンド6の第二の圧下位置修正量ΔS6bを求め、第6スタンドの出側板厚と変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差に基づき第7スタンド7の第二の圧下位置修正量ΔS7bを求めた。そして、第5スタンド5の圧下位置を第一の圧下位置修正量ΔS5aだけ修正し、第6スタンド6の圧下位置を第一の圧下位置修正量ΔS6aと第二の圧下位置修正量ΔS6bとの加算値だけ修正し、第7スタンド7の圧下位置を第一の圧下位置修正量ΔS7aと第二の圧下位置修正量ΔS7bとの加算値だけ修正した。実施例1において、板厚目標値変更時間Tは圧延潤滑剤の使用開始による摩擦係数の変化に要する時間と等しくなるように3秒とした。
【0056】
また、実施例1において3秒とした板厚目標値変更時間Tを、圧延潤滑剤の使用による摩擦係数の変化に要する時間より短い2秒としたほかは、実施例1と同様にした場合(実施例2)の圧延状態を図4に示す。
【0057】
一方、比較例1として、板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用の開始を、変更対象の最上流スタンドである第5スタンド5から最終スタンドである第7スタンド7まで、板厚目標値の変更点をトラッキングしながら順におこなうようにした場合の圧延状態を図5に示す。比較例1では、時間0において板厚変更点を第5スタンド5に作成して第5スタンド5の板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用を開始し、第5スタンド5の板厚を板厚目標値に一致させる第5スタンド5の圧下位置修正量ΔS5a’を求めて第5スタンド5の圧下位置を修正した。また、その板厚変更点が第6スタンド6に到達したときに第6スタンド6の板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用を開始し、第6スタンド6の板厚を板厚目標値に一致させる第6スタンド6の圧下位置修正量ΔS6a’を求めて第6スタンド6の圧下位置を修正した。さらに、その板厚変更点が第7スタンド7に到達したときに第7スタンド7の板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用を開始し、第7スタンド7の板厚を板厚目標値に一致させる第7スタンド7の圧下位置修正量ΔS7a’を求めて第7スタンド7の圧下位置を修正した。
【0058】
また、板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用の開始は、実施例1と同様に、第5スタンド5から第7スタンド7まで一斉におこなうが、第二の圧下位置修正量は用いずにΔS6b=ΔS7b=0とした場合(比較例2)の圧延状態を図6に示す。
【0059】
図3〜図6において、最終スタンドである第7スタンド7の変更後の板厚目標値に対する板厚偏差が±0.05mm以下に収まる時間をオフゲージ時間、時間0からその時間までに圧延された被圧延材の圧延後の長さをオフゲージ長として集計した結果を、表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
比較例1は、板厚目標値の変更と圧延潤滑剤の使用の開始を第5スタンド5から第7スタンド7までトラッキングしながら順におこなっているので、表3に示したように、オフゲージ時間及びオフゲージ長がいずれも長くなった。
【0062】
これに対して比較例2は、第5スタンド5から第7スタンド7の板厚目標値の変更及び圧延潤滑剤の使用の開始を一斉におこなっているので、表3に示したように、オフゲージ時間及びオフゲージ長はいずれも比較例1よりは短くなるが、短縮量は小さい。これは、図6に示したように、板厚目標値の変更が終了する3秒以降の時間において、第5スタンド5の変更過程の板厚が第6スタンド6の入側板厚変動として外乱となり、さらに第5スタンド5及び第6スタンド6の変更過程の板厚が第7スタンド7の入側板厚変動として外乱になることにより、板厚目標値の変更よりも過剰に板厚が変更されてしまうオーバーシュート部が発生したためである。
【0063】
一方、本発明の実施例1では、上流スタンド5、6の変更過程の板厚変動が下流スタンド6、7の入側板厚変動として外乱となる影響を、第二の圧下位置修正量を用いて打ち消すことによりオーバーシュートを抑制した結果、表3に示したように、オフゲージ時間及びオフゲージ長が、いずれも比較例1及び比較例2から大幅に短縮された。
【0064】
また、板厚目標値変更時間を圧延潤滑剤の使用開始による摩擦係数の変化に要する時間より短くした実施例2では、板厚のオーバーシュート部が残存し、オフゲージ時間及びオフゲージ長は比較例1並びに比較例2より短いが、実施例1には及ばない。また、張力の変動も実施例1よりも大きい。これは、表1に示した厚い板厚から表2に示した薄い板厚への目標値変更が終了した2秒から3秒の時間で、さらに板厚を薄くするように作用する摩擦係数の低下が生じたためである。板厚目標値変更時間を圧延潤滑剤の使用による摩擦係数の変化に要する時間と等しくした実施例1では、摩擦係数の低下が生じる0〜3秒の間は、板厚目標値が表2の変更後の値よりも厚くなっているため、摩擦係数の低下によって板厚が薄くなる影響が相殺され、板厚目標値変更時間は実施例2より長いにもかかわらず、オフゲージ時間及びオフゲージ長が実施例2よりも短くなった。
【0065】
以上より、本発明によれば、板厚及び/又は圧延潤滑剤の使用不使用を変更する際のオフゲージ時間、オフゲージ長を短縮することができ、歩留まりが向上する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、超微細結晶粒を有する熱延鋼板の製造等に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…第1スタンド
1a…ワークロール
1c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
1e…潤滑剤供給手段
2…第2スタンド
2a…ワークロール
2c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
2e…潤滑剤供給手段
3…第3スタンド
3a…ワークロール
3c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
3e…潤滑剤供給手段
4…第4スタンド
4a…ワークロール
4c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
4e…潤滑剤供給手段
5…第5スタンド
5a…ワークロール
5c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
5e…潤滑剤供給手段
6…第6スタンド
6a…ワークロール
6c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
6e…潤滑剤供給手段
7…第7スタンド
7a…ワークロール
7c…圧下位置制御装置(圧下位置制御手段)
7e…潤滑剤供給手段
8…被圧延材
10…タンデム仕上圧延機
11、12、13、14、15、16、17…第一板厚制御装置(第一の板厚制御手段)
22、23、24、25、26、27…第二板厚制御装置(第二の板厚制御手段)
28…板厚目標値変更時間決定装置
30…速度指令装置
40…タイミング指示装置
50…冷却装置
100…熱延鋼板の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける板厚目標値が変更される、タンデム仕上圧延機の動作を制御する方法であって、
前記被圧延材の板厚変更点が前記第Nスタンドに到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の板厚目標値の変更を開始し、
少なくとも前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を前記板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求めるとともに、
n>mの第nスタンドにおいて、第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差を求め、前記第n−1スタンドの前記板厚偏差の影響が前記n>mの第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚に現れないようにする、前記n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求め、
前記第mスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、前記n>mの第nスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量と前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法。
【請求項2】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機の動作を制御する方法であって、
同一のタイミングで第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更し、
少なくとも前記第nスタンドの圧延潤滑剤の使用不使用によるワークロールと前記被圧延材との間の摩擦係数の変化に要する時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求めるとともに、
n>mの第nスタンドにおいて、第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における前記板厚目標値との差である板厚偏差を求め、前記第n−1スタンドの前記板厚偏差の影響が前記n>mの第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚に現れないようにする、前記n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求め、
前記第mスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、前記n>mの第nスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量と前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法。
【請求項3】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機の動作を制御する方法であって、
前記被圧延材の板厚変更点が前記第Nスタンドに到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用の変更を開始し、
少なくとも前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を前記板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求めるとともに、
n>mの第nスタンドにおいて、第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差である板厚偏差を求め、前記第n−1スタンドの前記板厚偏差の影響が前記n>mの第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚に現れないようにする、前記n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求め、
前記第mスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量だけ時々刻々修正し、前記n>mの第nスタンドの圧下位置を前記第一の圧下位置修正量と前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ時々刻々修正することを特徴とする、タンデム仕上圧延機の動作制御方法。
【請求項4】
前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間は、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロールと前記被圧延材との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることを特徴とする、請求項3に記載のタンデム仕上圧延機の動作制御方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンデム仕上圧延機の動作制御方法によって制御されるタンデム仕上圧延機を用いて鋼板を仕上圧延する工程を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
【請求項6】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける板厚目標値が変更される、タンデム仕上圧延機であって、
前記被圧延材の板厚変更点が前記第Nスタンドに到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の板厚目標値の変更を開始し、
少なくとも前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を前記板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める、第mスタンドから第Nスタンドの第一の板厚制御手段と、
n>mの第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの変更開始前の板厚目標値との差に基づいて、n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求める、第m+1スタンドから第Nスタンドの第二の板厚制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する前記第mスタンドの圧下位置制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量と前記第二の板厚制御手段で求められた前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段と、
を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機。
【請求項7】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機であって、
第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更する潤滑剤供給手段と、
少なくとも前記第nスタンドの圧延潤滑剤の使用不使用によるワークロールと前記被圧延材との間の摩擦係数の変化に要する時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める、第mスタンドから第Nスタンドの第一の板厚制御手段と、
n>mの第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における前記板厚目標値との差に基づいて、n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求める、第m+1スタンドから第Nスタンドの第二の板厚制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する前記第mスタンドの圧下位置制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量と前記第二の板厚制御手段で求められた前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段と、
を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機。
【請求項8】
N個(Nは2以上の整数)のスタンドを備えるタンデム仕上圧延機で1本の被圧延材を圧延している最中に、第mスタンド(mは1以上N−1以下の整数)から第Nスタンドにおける板厚目標値及び圧延潤滑剤の使用不使用が変更される、タンデム仕上圧延機であって、
前記被圧延材の板厚変更点が前記第Nスタンドに到達すると同時に第nスタンド(nはm以上N以下のすべての整数)の圧延潤滑剤の使用不使用を変更する潤滑剤供給手段と、
前記被圧延材の板厚変更点が前記第Nスタンドに到達すると同時に前記第nスタンドの板厚目標値の変更を開始し、少なくとも前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間帯において、前記第nスタンドの出側における前記被圧延材の板厚を前記板厚目標値に一致させる前記第nスタンドの第一の圧下位置修正量を求める、第mスタンドから第Nスタンドの第一の板厚制御手段と、
n>mの第n−1スタンドの出側における前記被圧延材の板厚と該第n−1スタンドの出側における変更開始前の板厚目標値との差に基づいて、n>mの第nスタンドの第二の圧下位置修正量を求める、第m+1スタンドから第Nスタンドの第二の板厚制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量だけ圧下位置を時々刻々修正する第mスタンドの圧下位置制御手段と、
前記第一の板厚制御手段で求められた前記第一の圧下位置修正量と前記第二の板厚制御手段で求められた前記第二の圧下位置修正量との加算値だけ圧下位置を時々刻々修正する第m+1スタンドから第Nスタンドの圧下位置制御手段と、
を有することを特徴とする、タンデム仕上圧延機。
【請求項9】
前記第nスタンドの板厚目標値の変更開始から変更終了までの時間は、圧延潤滑剤の使用不使用の変更によって生じるワークロールと前記被圧延材との間の摩擦係数の変化に要する時間以上にすることを特徴とする、請求項8に記載のタンデム仕上圧延機。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載のタンデム仕上圧延機を有することを特徴とする、熱延鋼板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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